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【とらドラ!】大河×竜児【アマアマ妄想】Vol17

1 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/13(火) 21:03:19 ID:Q4piT/w4
ここは とらドラ! の主人公、逢坂大河と高須竜児のカップリングについて様々な妄想をするスレです。
どんなネタでも構いません。大河と竜児の二人のラブラブっぷりを勝手に想像して勝手に語って下さい。
自作のオリジナルストーリーを語るもよし、妄想シチュエーションで悶えるもよし、何でもOKです。
次スレは>>970が立ててください。 もしくは容量が480KBに近づいたら。
    / _         ヽ、
   /二 - ニ=-     ヽ`
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  ∧    〈 ∨ ∨ ヽ冫l∨
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/ ==',∧     ̄ ∧ 、\〉∨|         /.: : :′. : : : : : : : . 「∨ / / ヘ
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まとめサイト
ttp://tigerxdragon.web.fc2.com/

前スレ
【とらドラ!】大河×竜児【ハフハフ妄想】Vol16
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1253001418/

2 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/13(火) 21:04:44 ID:Q4piT/w4
過去スレ
【とらドラ!】大河×竜児【ラブラブ妄想】(1スレ目)
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1231122796/
【とらドラ!】大河×竜児【ニヤニヤ妄想】(2スレ目)
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1234443246/
【とらドラ!】大河×竜児【デレデレ妄想】(3スレ目)
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1236695653/
【とらドラ!】大河×竜児【イチャイチャ妄想】Vol4
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1237819701/
【とらドラ!】大河×竜児【ベタベタ妄想】Vol5
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1238865504/
【とらドラ!】大河×竜児【スキスキ妄想】Vol6
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1240317270/
【とらドラ!】大河×竜児【ドキドキ妄想】Vol7
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1241386432/
【とらドラ!】大河×竜児【アツアツ妄想】Vol8
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1242374673/
【とらドラ!】大河×竜児【フワフワ妄想】Vol9
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1243354181/
【とらドラ!】大河×竜児【クネクネ妄想】Vol10
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1244280781/
【とらドラ!】大河×竜児【ワクワク妄想】Vol11
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1245146459/
【とらドラ!】大河×竜児【モフモフ妄想】Vol12
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1246704738/
【とらドラ!】大河×竜児【ナツナツ妄想】Vol13
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1248388647/
【とらドラ!】大河×竜児【ユラユラ妄想】Vol14
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1249487623/
【とらドラ!】大河×竜児【モグモグ妄想】Vol15
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1251296860/

3 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/13(火) 21:10:42 ID:Q4piT/w4
【※CAUTION※超重要事項!※CAUTION※】

非エロ(ギシアンレベルまで)はここに投下

ガチエロは新避難所に投稿、ここへは告知誘導のみ

アク禁に巻き込まれたなど直接投下できなかった非エロ作品の代理投稿は作者が望んだ場合に可

大河×竜児ラブラブ妄想スレ 新避難所
http://jbbs.livedoor.jp/anime/7850/

★関連スレ
竹宮ゆゆこ105
http://love6.2ch.net/test/read.cgi/magazin/1253937059/
アニメ「とらドラ!」声優総合スレッド
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/voice/1207209886/
【竹宮ゆゆこ】とらドラ3!【◆Daiko/D50o 絶叫】
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/comic/1244814492/
【フラゲ】とらドラ!総合ネタバレスレ 3版目
http://love6.2ch.net/test/read.cgi/bookall/1236595750/
【間島淳司】とらドラジオ!【喜多村英梨】
http://atlanta.2ch.net/test/read.cgi/netradio/1229772543/
【PSP】とらドラP!part10【ポータブル】
http://jfk.2ch.net/test/read.cgi/handygame/1254273765/
とらドラ!総合 
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/nhkdrama/1227538758/
【田村くん】竹宮ゆゆこ 24皿目【とらドラ!】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1255043678/

★キャラスレ
【とらドラ!】キャラ総合スレ
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1222905488/
とらドラ! 手乗りタイガー236匹目
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anime2/1254129690/
【とらドラ】逢坂大河は手乗りタイガー可愛い 6匹目
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1251277405/
【とらドラ!】櫛枝実乃梨はジャイアントかわいい11
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1254545276/
【とらドラ!】川嶋亜美はモデルかわいい Part.9
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1251532155/
【とらドラ!】狩野すみれは兄貴かわいい【会長】3
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1236426036/
【とらドラ】川嶋亜美×高須竜児
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1249892546/
とらドラの大河だけど
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1241841788/
■とらドラ! 総合スレッド Part.1■
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1215959570/

4 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/13(火) 21:11:31 ID:Q4piT/w4
まとめサイトより

Q、1話の机が吹っ飛ぶシーンどういうこと?超能力?
A、ちがいます。ラブレターを鞄に入れてたら人が来たので、ロッカー隠れようとして凄い勢いで移動したんです。

Q、とらドラ!ってどんな作品なの?
A、とらドラ!は高校生特有の『思春期』という限られたひとときの中、
 友達と過ごしながら楽しいと感じたり、ある時は落ち込んだり、
 またある時は恋に悩んだりしながら、毎日を過ごしていくという作品です。
 (雑誌インタビューより)

Q、何クールですか?
A、2クール25話(DVD8巻構成)です。

Q、会長とあーみんの区別がつきません。
A、川嶋亜美(あーみん・ばかちー):前髪が朝倉風、ややたれ目、胸がおおきい、モデル
  http://www.tv-tokyo.co.jp/contents/toradora/images/chara/ami.gif
  狩野すみれ(会長・兄貴):前髪ストレート、ややつり目
  http://www1.atwiki.jp/toradora?cmd=upload&act=open&pageid=19&file=up49532.jpg

【一目でわかるとらドラ!一話】
@猛獣が襲い掛かってきた
Aお腹がすいていたのでご飯をあげた
B「気に入った。これからも飯つくってくれ、毛づくろいとかも頼むわ」
C襲われそうだし、ほっといたら死にそうなので、しぶしぶ飼うことに
Dご飯あげたら、ちょっと尻尾ふった
Eいろいろあって付き合うことになっておしまい ←今ここ

実際は竜児を犬扱いしている大河こそが飼われている側っていうのが面白い

とらドラ! まとめwiki
http://www1.atwiki.jp/toradora/
とらドラ! AA保管庫(仮)
http://monabase.net/toradora

5 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/13(火) 21:13:58 ID:Q4piT/w4
この板の設定

1レスあたり最大4096バイトで改行は60行まで可能
半角で4096文字・全角で2048文字です

Samba24規制は40秒です
一度書き込んだら40秒は書き込めません

バイバイさるさん規制は40秒以上開けて投稿しても
スレッドに同時に書き込む人数が少ないと発動します
ROMってる人は割り込みを遠慮せずむしろ支援する方向で応援よろしくお願いします

●を持っていると上記の規制は無効化されます
ただし調子に乗ってSamba24規制無視して連投しているとバーボンハウスに飛ばされます
たっぷり二時間は2ちゃんねる自体にアクセス出来なくなるので注意

●売り場
http://2ch.tora3.net/

年間33$(だいたい3500円〜4200円前後 円高だと安く買えます)
登録メルアドはプロバイダのメールアカウントのみ フリーメールや携帯メールは使用不可

6 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/13(火) 21:15:36 ID:j9KiqTGq
1乙 あのさ…好きだ

7 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/13(火) 21:18:49 ID:vWsdFsgS
>>1乙 おれも…好きだ

8 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/13(火) 21:40:43 ID:grB7Q4wd
>>1
俺のほうが好きに決まってるだろ。

9 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/13(火) 22:21:55 ID:RdPD533v
>>1
お前ら…w

10 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/13(火) 23:12:31 ID:UGDoZ6KK
>>1のためなら世界の中心で愛を叫んで亜美に罵倒されても耐えられる

11 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/13(火) 23:23:16 ID:j9KiqTGq
で、>>1はいつになったら、何こっぱずかしい事言ってetcと罵倒してくれるのだろうか

12 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/13(火) 23:40:09 ID:S/zbTbOU
(放置プレイ続行中。。。


13 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/14(水) 02:22:54 ID:rDixyMtA
「ねぇ、竜児。さっきからなにやってんの?」
「おう、埋めネタに番組のサブタイトル作ってるんだよ」
「なによ、放送なんかとっくに終わったじゃない。おまけに埋め立ても終わってるわよ。しっかりしてよね」
「まぁそうなんだけどな。『もし、とらドラ!が4クールだったら』ってお題でな」
「ふーん。ちょっと見せて」
「おう」

01 竜児と大河
02 襲撃と共闘
03 疑惑と誤解
04 虎と竜

05 幸福の手乗りタイガー伝説

06 川嶋亜美
07 よく泣く生き物
08 土砂降り
09 本当の私を見せたら

10 危篤
11 偽乳特戦隊
12 本当の気持ち
13 高須争奪水泳大会

14 幸福の桜色トルネード:発生メカニズム
15 幸福の桜色トルネード:接近警報発令
16 幸福の桜色トルネード:F12

17 あんたが犬で虎柄が私で
18 怪談旅行
19 北村祐作探検隊
20 幽霊を見せたかった

21 虎肥ゆる秋

22 逢坂陸郎
23 春田絶体絶命
24 文化祭
25 ミス大橋高校
26 ミスター大橋高校

14 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/14(水) 02:23:37 ID:rDixyMtA
27 燃え尽き症候群
28 UFO
29 オリオン
30 北村ホイホイ作戦
31 私じゃ駄目なの

32 クリスマスがやってくる
33 クリスマス・プレゼント
34 クリスマス・ツリー
35 クリスマス・パーティー

36 燃えて無くなりました
37 根拠
38 ツラの皮
39 失恋大明神

40 六道輪廻
41 会わなければよかった
42 俺のせいだろ
43 二人、一緒に居るだけで幸せ

44 恋心一つに命を賭けて
45 子供達
46 大脱走
47 家出少女
48 行っちまえ

「原作通りなのね」
「おう、所々スピンオフも混ぜてるけどな」
「あ、竜児。これじゃ人気でないよ」
「なんでだ?」
「最終回にキスシーンが無いじゃない」
「うぅ。しかしあれだけで人気が出ていたとは思いたくねぇ。最終回だしな」
「ま、どうでもいいけどね」
「どうでもいいのかよ!」
「テレビに出なくたってキスできるじゃない」
「お、おう」
「なによ。煮え切らないわね。テレビに出ないとしてくれないの?」
「します。いえ、したいです。させてください」
「へっ……何よ昼間っから。このエロ犬!」
「お前が言わせたんだろ。てか、頬染めて嬉しそうになじるんじゃねぇ!」


15 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/14(水) 06:54:17 ID:9MpxibLc
このスレにはヤマグチノボルスレ民がいるようだな

へんたいさんといい、ssタイトルといい、贋作が多すぎる

本人はわかってると思うから改善してくれ 不愉快だから

16 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/14(水) 07:49:43 ID:rDixyMtA
具体的にどの作品がどの作品の贋作なのか指摘しないと、
周りは反応のしようがないぞ。下手したら難癖にしか聞こえない。

http://tigerxdragon.web.fc2.com/kako/kako15.html#R352

過去に酷い盗作騒ぎなんかがあって、スレ住民としては保管
サイトからの削除を要請している。

本当に酷いパクリなら気分を害するのもわかる。具体的な
話をしてくれ

17 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/14(水) 08:15:04 ID:izmcqdta
あんまりそういうの目くじら立てるとかえって創作の幅が狭まるんだけどねえ
あくまで妄想スレなんだし自由にやってる雰囲気の方が楽しいよ
嫌なら見なきゃいいだけなんだし2chなんだから

18 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/14(水) 10:38:18 ID:0T2c0/7o
>>17
同意。
せっかく新スレになって投稿控えてた人がこれからって思う時に
投稿しづらくなる空気になってしまうのはこれっぽっちも歓迎出来ない。

そんなことより感想でも書いた方がよっぽど活性化するというのに。

というわけで、プールの人乙です!今回も面白かった、ギャグが走ってたね!
ヘンタイさんは今回も遺憾なく変態ッぷりを発揮してて流石としかw
埋めネタさんもおつー!あーそうだ、>>1乙。早く俺たちを罵倒してくれよ!

19 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/14(水) 10:42:06 ID:CV9HgT27
「ついに俺たちも卒業か」
「なんかあっという間だったわ」
「でもいろいろあったからな」
「たとえば?」
「お前に襲われたことかな」
「なによ!でも本当のことだから仕方ないか」
「でもお前と出会えて付き合うようになれたからな」
「そうね。感謝しなさいっ」
「おう。ありがとう大河」

ちゅっ

「もう、えらいぬゅ…」「俺がエロいのはお前だけにだ」
「じゃあもっとエロいことして卒業よ!」


ギシギシアンアン

20 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/14(水) 11:52:50 ID:LxL/Sfjj
アニメ最萌トーナメントで大河に投票してくるぜ!

21 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/14(水) 13:03:22 ID:kKCY7Js8
>>15
またお前か

22 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/14(水) 15:35:36 ID:42xql9iL
テメェェェー!!!!!!!!!!
名指しで人の書いたものを贋作呼ばわりとはいい度胸じゃねぇか!
確かに山口先生の作品は大好きで毎週欠かさず読んでるよ!だから似た所もあったかもしれない

だけどな、もともと二次創作自体が贋作なんだよパクリなんだよオマージュなんだ、真作と呼ばれるのは山口先生が
書いたあの大宇宙を舞台にした人間味溢れる素晴らしいスペースオペラだけなんだよ……でもオレはやりすぎた……自重するよ、気分を害して悪かったな。

だから>>15よ最後に答えてくれヤマグチノボルって誰ですか?教えてチョ〜だい!

昨日の続きは嫌がっても後で貼っちゃうけどねウヒィ!

へんたい

23 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/14(水) 15:38:44 ID:pvy3aOp/
>>22
へんたいさん、気にすることないんだぜ

続き待ってるよ〜

24 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/14(水) 18:02:03 ID:0T2c0/7o
俺が言いたい事をヘンタイさんが変態風味で言ってくれたw

25 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/14(水) 18:04:19 ID:oT5+XBGm
ヤマグチ ノボル(男性、1972年2月11日 - )は、日本のライトノベル作家、ゲームシナリオライター。
茨城県出身。血液型B型。明治大学政治経済学部経済学科卒。

自身の関わるゲーム作品をノベライズした『カナリア ?この想いを歌に乗せて?』(角川スニーカー文庫)で小説家デビュー。
代表作である『ゼロの使い魔』はアニメ化されている。

ジュブナイルポルノで執筆する時は、山口 昇一の名を使うことがある。

26 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/14(水) 18:27:12 ID:42xql9iL
スペースオペラ違うやん!?!ラノベ作家なのね

ゴメン、へんたいのこと贋作って言うからてっきり山崎渉みたいな変な人って勘違いしてた

27 :※注意!!! へんたいですよ!:2009/10/14(水) 18:51:00 ID:42xql9iL
倦怠期ド真ん中夫婦のような沈黙の食事を済ませ『ウフッ!後片付けはワタシがヤ・ル・ワ・ヨ!!』と
大人の魅惑で竜児より精神的優位に立とうとしたけど、本当は私の心臓バック!バクゥ〜! の巻

「悪いな、何か気を使って貰って」

「ウャゥ!!そっそんなことないですよ!サァサァ竜児殿はこんな所に立ってないで、あちらでお茶でも」

フゥ〜なんと誤魔化した、いきなり後ろから声掛けたら忍者口調になるじゃない、びっくりしたな〜もう。
だいたい亜美があんな手紙を寄越すからイケナイのよね…
『大河、今晩どうしても困った時はコノ手紙の封を切りなさい、ホォーホホホ』
最初から頼りにはしてないけどコレで本当に竜児が元気になるのかな?

『男には母性!!! 亜美』
言いたいことは何となく分かるけど、もうちょっと具体的に書いて欲しいなぁ。
母性…母性?…何なんだろ母性?って、母親が子供を愛すること?何か違うなぁ…

母性とは優しさ?包み込むような優しさ…胸に抱かれる温もり……オッパイ?
胸か…私ので大丈夫かな?こんなことならあの時に感想聞いとけば良かったなぁ…

「竜児、片付けオワタ」
「…ありがとな」

ヨッス!目標はまだイイ感じに落ち込んでる、やるなら今、まずは背中に『まだまだこれから大きくなるだからぁん!』
略しておたまじゃくしのタマちゃんをムニュ!!とGlamorous Attack!!!

「何があったか知らないけど……元気出しなよペタ竜児」

「……少し離れてくれ、俺も男だからいろいろ困る」

キタ━━(゚∀゚)━━━━(゚∀゚)釣( ゚∀)れ(  ゚)たぁ━━!!!
サイコー!の返しだわ竜児GJ!だったら私も本気を見せてあげる!…このセリフを使う時が来たのね……竜児、覚悟しなさい!
アンタはこの魅惑の呪文を聞いて心を乱さずにいられるかしら?
逢坂大河、少女から妊婦へクラスチェンジします……
「スゥゥ〜…あちぇちぇん…のよ?」


噛ンダァァ━━━━━━━━(o^-')b
「何だ?」
「黙りなさい!!……5秒で立て直すから黙って……………当ててんのよ!」

「何を?」
「ムネよ!!!胸!Do you know OPPAI?の胸よ!!」
「えっ?……アァ!ありがとう」
「何よその間は!!!それに何に対してのありがとうよ!」

「それは俺を励まそうとしてくれる大河に対して…」
「違うでしょ!こんな時はまず胸に対してありがとうでしょうが!!!デリカシーが無いんだから、まったく!」

28 :※へんたいです!罵られのは好きだけど:2009/10/14(水) 18:54:02 ID:42xql9iL
何かもうムチャクチャだな……
「少し落ち着けよ、お茶でも入れるから」

こんな時のは過去の経験が活かされる、買い置きしてたパイの実ファミリーサイズを袋ごと渡すと案の定おとなしくなった。
大河はまずパイの実のパイを一枚ずつ剥がして食べる、そして最後にチョコを噛まずに未練たらしく口の中でモニュモニュ溶かして食べるので黙らせるにはもってこいだ。

俺を励まそうしてくれるのは嬉しいがさっきのはやり方が気に入らない。
それに大河はあんなことを何処で覚えてきたんだ?俺が憂慮してたことがいよいよ現実味を帯びてきた。

「大河、少し俺の話を聞いてくれ」
「サクサクサク何?サクサクサクサク…ハイ!竜児にチョコあげる、おいしいよ!」

「ありがとな、大河は何でアンナことしたんだ?」
「モニュモニュ何が?モニュアマーイモニュモニュ」
「…胸だよ……何で胸を当てたりするんだ」

「竜児が喜んでくれるかなぁと思ってカサカサカサそしたら元気も出ると思ったからサクサクサク…」

「でも胸を当てたりするのは…」
「服の上からだし、それに一回触ってるじゃないアンタ」

その言葉に俺はイナズマのような衝撃を受けた。
怒りと悲しみが入り混じり、やがて悲しみだけが涙となって頬を流れた。
「ちょっと何で泣いてるのよ!」

これがゆとり教育の弊害ってヤツなのか!乱れる未成年者の性感覚!羞恥心を失った女子高生!
金の為にならオッサンに抱かれるJK!!!大河がこんな感覚の持ち主だったなんて……
大河、お前は一回ヤラセたら好きじゃなくなっても惰性でヤラセるのか?そんな女だったのか?

「……じゃあオマエは俺が胸を触らせろって言ったら触らせるのか?」

「嫌よ!なに調子乗ったこと言ってのよ」
「そうなのか!?じゃあ何でさっきは当てたりしたんだ?」

「そっ!…それは竜児が落ち込んで……私は飼い主だし責任あるから…」
「そんな理由なのか?……やっぱり犬か…俺は所詮お前の面倒を見る便利なペットだもんな」

「えっ?今の話を信じるの?……竜児は私が男の人に平気で背中に抱きついたりすると思っちゃうのか……気づいてくれないんだ」
「大河?」

「ゴメンね、今日は励ますつもりだったんけど失敗しちゃった、帰るね」

長い髪で表情を隠したまま、大河は玄関へと逃げるように駆け出した。

29 :※へんたいだす! マジレスされるのは苦手です:2009/10/14(水) 18:56:16 ID:42xql9iL
「大河、ちょっと待て!」
俺の言葉に振り向かずドアノブを握ったまま囁くように声を出した。

「わたし嫌いな人と一緒に居ないよ、嫌いな人とご飯食べないよ、嫌いな人に抱きついたりしない……気づいてよ」

最後の一言が脳を麻痺させ動けない、その間に大河は扉の向こうに駆け出して行った。

俺だって嫌いな人間と一緒に居たり、飯を作ったり食べたりしなし面倒なんか見るわけない。
……大河は俺を励まそうと頑張ってくれたのにな、そう思うと体が玄関を飛び出していた。

マンションに向かって走り出そうとすると階段の下に膝を抱えてうずくまる小さな背中が見えた。階段を駆け下りて迷うこと無く不規則に揺れる肩に手を置いた。

「大河!」
「…何で?……何で竜児は来てくれたの?」

「それは……それは大河が俺にとって大切な人だからだ」

肩に置いた手が震えを増してゆく。

「大河は俺にとってもう欠かす事が出来ない大切な人だから、これからも2人一緒が良いんだ」

「……じゃあ、今までみたいに私の面倒みてくれるの?」
「大河が俺を必要としてくれるならもちろんだ」

「ワガママ言っても怒らない?」
「あぁ、怒らない」

「クッ…クク…それならクッ!お肉プッ!中心の献立にして」

……肩に置いた手に軽く憎しみを込めてグィ!っと大河の体をこちらに向けると……笑ってやがった。

「ヌゥ!アッハッハハ!どんだけ忠犬なのよアンタ!!!!プッ!!今日からアンタのことパトラッシュって呼んであげるワッ!ハッ!ハッ!ハ!」
「……そんな名前を付けたら2人とも真冬の教会で死ぬことになるぞ」

「ブゥフゥ〜!!!!!それはハハハ嫌ね、他の名前考えプッ!なきゃ!」

腐ってやがる……コイツ性根が腐ってやがる!!!

「アンタみのりんが居るに大切な人って、プッ!!」

大河のその言葉でキレた。

「何にすんのよ!!プッハハハ降ろせー!」
爆笑する大河を肩に担いで家へと続く階段を昇る。
今日は月が綺麗だ……これなら太陽も遠慮して昇れないだろう、今宵は忘れられない長い夜になりそうだな、大河。

30 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/14(水) 18:58:12 ID:42xql9iL
「何でもっと早く来ないのよ、寒いじゃない!それにもう降ろしてよ」

家に入ってからも毒づいて反省など見せない脳天気娘を肩に担いで室内をズンズン進む。

「ドコまで行くのよ〜ベランダ?……何だ押し入れか…もしかして私を閉じ込めるの?プッ!子供じゃないだしさぁ」

片手で襖を開き、中の布団を畳の上に落として軽く蹴飛ばせば寝床の出来上がり。

「まさか……一晩中押し入れに閉じ込めようってんじゃないでしょうね?」
もう肩に担ぐと言うより腹話術の人形みたいに腕に乗っかってる大河に一つニヤリと微笑んでやった。
「何よ…何なのその顔は」
直ぐに表情を消して薄暗い中を机の前へ
「何?何する気?ねぇ竜児!応えてよ!」
軽く椅子に腰掛け大河は膝の上へと移動させる、引き出しの中から箱を取り出してパッケージを見せつけるように窓から入る月明かりに照らした。

「……ベネト…ン?」
クルリと裏返して説明書きを見せると同時にまたニヤリと笑って大河の耳元で呟いた
「……避妊はしないとな、たとえ無理矢理でも……そうだよな?大河」

視覚と聴覚からの二つの衝撃で怯んだ大河を布団へと連れて行く。
先程の言葉とは裏腹に優しくゆっくりと時間を使って、1つ1つの行為を記憶の中から忘れないように…消えないように刻み込むように……

「冗談だよね竜児?さっきので怒ってるだけなんでしょ?ゴメンナサイ!!謝るから!何でもするから無視しないで!」

「…何でもする?」
「うん!エッチ以外なら何でもするから」
「……じゃあ黙ってろ」

「うぅぅぅ〜竜児本気だ!ワタシ今から女にされるんだぁ〜!!!謝るから!私がふざけてました!すみませんでした!!だから許して!もぉ〜私の言うこと聞いてよ〜」

布団に寝かせた大河は祈るように胸の前で手を固く握り、言葉の抵抗は見せるが暴れる様子はない。
さすがに男が本気になったらかなわないと思ってるんだろうな。

「本当にするの?…あぁ!!カーテン開いてるよ!閉めないと見えちゃうよ!そうだ!!シャワー浴びたいなぁ竜児と一緒がいいなぁ〜」
「…………………」
「アアァァアァァァ!!!!竜児は順序間違ってるぅ〜!こんなのヤダァ!!責任をとれぇぇ〜!!!!!」

31 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/14(水) 19:00:12 ID:42xql9iL
覆い被さるようにシーツの上に広がる柔らかな髪を一撫でして頬のあたりに手を突いて顔を眺めて見る、やっぱり性格とは逆の端正な作りしてるな。
次は体を跨いで上になろうかと思ったが止めとこう、コイツの身体能力はハンパじゃないからな。
もし股間に膝蹴りでも貰って病院で『アナタ避妊具はもう必要ありませんよ』何て言われた大変だ、それにもう潮時だしな。

「アァァァも〜ぅ!明日から絶えぇぇ対!!やっちゃんのことお義母様って呼んでやるぅぅぅ!!!」
「止めてくれ、何もしねぇから」

「本当に!!」
「あぁ本当だ。オマエみたいなヤツに俺の純潔は渡せん」
「何よそれ!!!!」
「自分の胸に手を当てて考えてみろ」

普段はわがままばっかり言うくせに変な所は素直なんだよな

「……分っかんない」
「オ・マ…エ!!!ついさっきオレの純真な気持ちや優しさを爆笑で踏みにじっただろうが!」

「あぁやっぱりソレか」
ソレって、コイツちっとも反省する気はねぇな……大河のこと少しは分かってるつもりだったんだけどな…酷いと言うか悲しいぞ、その反応は。

「でもね、先に天使のように健やかなる私の優しさを踏みにじったのは竜児じゃない!」

「それは済まないと思ってる。でもな、オレはやり方が気に入らないんだよ」

「……やっぱり私のじゃ小さくて満足できないから?」
「チガァ〜う!!!ソコじゃねぇ!オレが言いたいのは恋人関係でもない男に胸を当てたりするなって言いたいんだ!」

「そうなんだ」
「そうだ!!親しいとか一回触ってるからといって無闇に身体を触れさせたりするな!
男は勘違いしたり暴走することもあるんだから。大河は俺が暴走して怖かったろ?」

「うん、怖かった……でもちょっぴり嬉しかった…竜児が私を求めてるんだって……本当は竜児が
恋の順序を守ってくれたらもっと嬉しいんだけどな…エヘッ!恥ずかしいこと言っちゃった」

「……すまなかった、大河には世間で言われてる今時の軽い女子高生になって欲しくなかった…大河には自分を大事にして貰いたいから……
だから分かって欲しくて無理矢理あんなことしたんだ、許してくれ」

「私のためを思って?」
「あぁ、俺はそのつもりだったけどムチャし過ぎたな、スマン」

「そんなことないよ……いつも心の何処かに私を留めてくれてるだね、ありがとう…竜児」

32 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/14(水) 19:02:13 ID:42xql9iL
視線を合わせて大河はありがとうと言ってくれた、互いの心は通じ合った気がする……お互いが大切な存在。
距離は自然に近づき俺は大河を求めて腕を伸ばしたが、腕は空を切り大河の拳は鳩尾にメリ込んだ。

「オマエは!!バカかぁァァぁァ!!!!無理矢理ヤラレそうになって『嬉しかった』なんて言うバカがドコに居んのよ!!!
オマエはエロゲ脳か!エロ本読み過ぎ!!!そんなバカ女が居んなら私の前に連れて来い!ボコボコにしてやんよ!!!!」

「イキ…息ができ…ね」

やっぱりコイツは一回痛い目に遭わさねぇと分かんねぇみたいだな……でも今は無理みたいだ、息が……

「ウラァ!!!アンタも私が味わった恐怖を味わいなさい!」

「やっ…めろ、尻を……撫でないくれ…写メも」

「ピロリン!ピロリン!ウァハハハハ、やっぱりアンタはセクシーなピロリン!お尻してるわねパ-ン!」
「ハァハァ…尻をハァ叩くなハァハァハァちょっ!!!ハァ手を入れるな!」

「ヒョ━━!!張りが有ってぷっりぷりじゃない!痛あぁぁぁ!!」
「調子に乗るな!フゥ〜…何やってんだオマエは!!」

「何だ、もう回復したんだゴメンね…………ソイッ!」
パシッ!「何度も同じ手が通用するか!ったく、オマエは何考えてんだ?最近の変と言うかおかしいぞ」

「……良かった、竜児が元気になってくれて」
「もうその手は通用しねぇ」
「チッ!……元気になったんだら良いじゃない!私が頑張ったのは事実なんだし、いい加減にみのりんと何があったか話なさいよ」

話せと言われても…原因はコイツなんだよな、まぁ暴走したのは俺だけど……でも原因が自分にあると分かったら大河は責任感じるだろうしな…

「そんなに話したくないの?…それとも話せないことなの?」
「う〜ん…ちょっとな」

悩む俺を見つめる目は心配と言うか不安を感じさせる、今度は真剣みたいだな。
まぁいつかは事実が大河の耳には入るだろうし紆余曲折を経てトンデモな話になっても嫌だし話しとくか

「大河、今から今朝のことを話すがお前は気にすることないからな」
「私に関係あるの?」

話し始めるとすぐに大河は驚きの表情を見せた。

「私が…原因だったの」

33 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/14(水) 19:04:07 ID:42xql9iL
切っ掛けは大河だったとしてもやったのは俺だ、こんな騒ぎを起こして大河と櫛枝には申し訳なく思う。

「大河、頭を上げてくれないか?」
「ごめんなさい、本当にごめんなさい!竜児がそんなに心配してくれてたなんて知らなかったの」

そんな三つ指突いて本格的に頭下げられてもな、だから話したくなかったんだ。

「大河は別に気にすることない。悪いのは俺だ、だからいい加減に頭上げてくれ」
「ごめんなさい……私、みのりんに謝って竜児と仲直りできるように話してくる!」

「止めとけ、こんな夜遅くに迷惑だ。それに今はその話はしない方が良い、櫛枝は今朝のことで過呼吸を起こす程ショックを受けてるんだ
……だから今はそっとした方が櫛枝の為になる」

保健室での櫛枝を思い出せば分かる。もう今朝の事は忘れたい触れたくもない、そして俺の顔も見たくない。

「でも竜児はみのりんのこと…」
「もうダメだろうな」

「ごめんなさい!……さっきの続き…する?」
「ダァァ!!!!オマエはさっきの話を聞いて無かったのか!!本当に大人の階段登らせて名字替えるぞ!」

「ヒィィ!!!ごめんなさい!!つい、申し訳ない気持ちが声に出ました、すみません…(高須大河……イニシャルはT.Tか…顔文字?泣いてるみたいで何か嫌だな…)」

「もうこの話はお終いだ、オレにもパイの実くれよ」
「でも…」
「もう良いから、気にするな」
「……分かった」

パイの実を3つ貰って1つを頬張ると甘味が体中に染み渡り癒される。
さっきから叫んだり声出しっぱなしだったしな、やっぱりカラオケダイエットは効果がありそうだ。
「ホォ〜なるほど…」
パイの実ファミリーバックを左手に抱え、右手にベネトンを持って大河は物珍しそうに眺めている
……女の子が持ってると生々しいと言うかドキドキするな。

「竜児、コレ開けて中を見ていい?」

34 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/14(水) 19:06:11 ID:5/Y2rdzs
支援っ

35 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/14(水) 19:06:17 ID:42xql9iL
周りのセロハンを剥がし、透けて見える中身をマジマジと眺める大河はスゲェ淫靡だ……ちょっとヤバイな。

「でも何でこんな物を持ってんのよ?買ったの?」
「あぁ買った、男のマナーだからな。ちょっと貸してみろ」

「でも告白もしてないのに準備だけは万全な所が竜児らしいと言うか…情けないわね」

「うるせえ!!夢見たり想像するのは個人の自由だ!ホラ、半分やるからお前も持っとけ」

「へっ?何で?いらないわよ!!!そんな物いらない!」
「何でだ?お前だっていつ必要になるか分かんないだろ?それに肝心な時に無くて泣きを見るのは女の方だぞ、だから持っとけ」
「私には必要ない!だから要らない!!!」

別に恥ずかしいことじゃないだろうに?

「お前だって年頃なんだ、いつ彼氏が出来るか分かんねぇぞ?」

「……じゃあアンタが持ってなさいよ…って!!!勘違いしないでよ!アンタは常日頃から私の面倒見てるんだから必要な時は言うからって!!ちが〜う!!!!」

「何を言ってんだよ?でもやっぱり犬なんだな……そんなに俺って人間として魅力ないのか?」

「違うの!!あのねイニシャルはイヤだけど竜児は嫌いじゃないの!アレ?アレ?私なに言ってんだろ?とにかく!ソレはアンタが持ってなさい!!」

「分かったよ、ご主人様」
「素直でよろしい、ご褒美にパイの実のチョコを与えよう」

変なヤツだ、もし北村とつきあい始めたら絶対に必要だと思うんだが……大河のことだから北村のこと美化してんだろうな。
俺に言わせたら北村みたいなのが一番ガッツイテ来そうなんだがな。

「大河、話をぶり返して悪いが一つだけ言っておく。北村は普段は紳士的だがつきあい始めたら変わると思うぞ」

「ハッ?何を言ってんのアンタ?」
「待て!お前が怒る気持ちも分かるが男は、特に俺たち男子高校生は総じて性に関して興味津々なんだ、だから北村もああ見えて」
「ちょっと待った!」

「だから怒るなって」
「私は怒ってなんかないけど?それに何で北村君?」
「それは…大河は北村の事が好きだから」

「えぇっ!!私が?私が北村君を好き?」
「違うのか!?」

「うん、違う。だって北村君は彼女居るじゃない」
「ブゥウホォ!?!!!!」

驚きのあまり映画『プラトーン』の有名シーンばりに膝建ちでパイの実を天に向かって盛大に吹いた。
片付けないとな……後でアリが入って来なけりゃいいんだが。

36 :支援どうも!:2009/10/14(水) 19:08:16 ID:42xql9iL
次回、最終回

『紙面なだけに神です』

『久しぶりだな…』

の2本です、お楽しみに!

37 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/14(水) 19:20:46 ID:oT5+XBGm
お前携帯から書いてるだろ
いや別にいいんですけどね面白いというか何かおかしいから(とても良い意味で)

38 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/14(水) 22:12:13 ID:5/Y2rdzs
相変わらずカオスだけど、声出して吹き出すくらいの破壊力がある。
パイの実とかみみっちいし、ベネトンとか予想外すぎてワロタわw

39 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/14(水) 22:27:09 ID:rDixyMtA
「ねぇ、竜児。その漫画雑誌、初めて見る気がするんだけど」
「おう、9月に創刊された雑誌だ」
「面白い?」
「久米田が原作やってる漫画があるな」
「絶望先生の人?原作もやるんだ。見せて」
「おう。見て驚くなよ」
「………どこかで見た気がするのは何故かしら」
「犯人、じゃなくて作画はヤス」
「どおりで。漫画にも手を染めてるのね。ていうか…………あれこれ言うのはやめとくけど、ロン毛虫の彼女が特別出演しているのはなぜかしら」
「言ってるじゃねぇか!」
「おもしろいの?」
「良くも悪くも久米田だな。久米田ファンを中心にそれなりに人気があるらしいぞ」
「悪くもって、何よ」
「たとえばこの子の名前だけど。『防波亭手虎』だぜ」
「防波堤とテトラポットを掛けてるのね」
「久米田がそんな真っ正直かよ。作画がヤスだぞ。手虎ってお前にも引っかけてるんだよ」
「……なにかしら、この遺憾な気持ち」
「久米田は『さよなら絶望先生十八集』の巻末にも『そらぁ絶望のポップを飾るスペースがあるなら、とらドラ!のポスターコピーして二枚貼りますよ』って書いてるからな。案外アニメ見てたんじゃないか」
「竜児、フォローするならちゃんとしてちょうだい。何の慰めにもなってないわ」
「お、おう。すまねぇ。そういうわけで久米田とヤスの『らくじょ』が読める別冊少年マガジン発売中。櫛枝の表紙が目印だ」
「おあとがよろしいようで」


40 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/14(水) 22:38:33 ID:5/Y2rdzs
>>14
やっと分かった、原作1巻4話ペースね(遅
個人的にはこのくらいじっくり見たかったなぁ

41 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/14(水) 23:08:39 ID:QslQsog0
前スレのプールの人
どうせなら一気に投稿するべきだよ。
書きあがってないのなら、ちゃんと出来上がってから投稿すべき


42 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/14(水) 23:36:44 ID:pvy3aOp/
>>41
別に普通じゃね?
それに、そんなの書き手さんの自由だと思うんだが

43 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/14(水) 23:50:36 ID:LxL/Sfjj
最萌トーナメントで大河かったあああああああああああ!!!!!!!!!11111

44 :まとめ人 ◆SRBwYxZ8yY :2009/10/15(木) 00:09:19 ID:vJP5I8Pg
あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!

幸福屋の大河本がとらのあなで注文できると思ってたら
既に売り切れていた。

な… 何を言ってるのか わからねーと以下略。


再販まだぁー?  >>1

45 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/15(木) 00:16:57 ID:9w5R7M8S
へんたいさんがぶっ飛んでるw
だけどいい話っぽくなってきてて俺驚愕w

前スレ埋めもギシアンもみんな乙!
なんとなく活気が戻ってきてるようでイイ感じw

>>44
遅ればせながら、更新お疲れ様です!
そしてナイスなタイトルをありがとう!
これからもお願いします!

俺も欲しいと思ってたんだけどなぁ(´・ω・`)

46 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/15(木) 00:54:31 ID:nsFpQnb8
>>41
新スレになってから悲しい書き込みが多いな。
自分の考えをべき論で押し付けても何にもならないぜ?

ま、色々な考えの人がいるって事で・・・・
プールの続き楽しみにしてるぜ

47 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/15(木) 03:17:25 ID:VxPCpWhs
>>46
またお前か、の人だから皆スルーの方向でお願いします。

48 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/15(木) 09:51:35 ID:VLCbVmNO
大河「………」

竜児「なあ、大河」

大河「………」

竜児「なんだ、その、すまん」

大河「…別に」

竜児「おう?」

大河「…アンタが謝ることじゃないから」

竜児「いやでも」

大河「私が行かなかったとしても最初っからこうなるのは規定路線、決定事項だったのよ」

竜児「………」

大河「あぁ本当、去年の私の馬鹿。学校でも、帰ってきてからも、ずっとずっと一緒だったのに。後悔先に立たずね」

竜児「それは俺も同じだ。でも、」

ギュッ

大河「な、何よ急に腕組んできたりして」

竜児「そんな顔してるお前のことなんかほっとけねえ」

大河「竜児…」

竜児「それに、俺だって我慢出来ねえから毎日休み時間に会いに行く」

大河「えっ」

竜児「そりゃ前みたく四六時中一緒にはいられないけど、出来るだけお前の側にいるから」

大河「竜児…」

竜児「おう」

大河「アンタ、鼻毛出てるわよ」

49 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/15(木) 09:56:10 ID:VLCbVmNO
竜児「おうっ!?」

大河「あはは、せっかく真面目な顔して言ってるのに、鼻毛が、鼻毛が…ぷっ」

竜児「//////あ〜〜」

大河「ほら、取ったげるからもっと屈みなさいよ」

竜児「いいから、自分で取るから」

大河「うるさい!おとなしく私の言うこと聞きなさいよ!犬のようになんでもするって言ったでしょ!」

竜児「はぁ〜、しょんぼりしてたかと思ったらこれだ」

大河「何よ、いいからさっさとこっち向いて屈みなさいよ」

竜児「はぁ〜、やれやれ」

大河「いい?じゃあ目つぶって」

竜児「?なんでだ?」

大河「いいから」

竜児「おう」


チュッ



50 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/15(木) 09:58:51 ID:VLCbVmNO
竜児「……//////」

大河「…ふふ、竜児、ありがとう/////」

竜児「…一本取られたぜ」

大河「あら、鼻毛なんて本当は出てないから取ってないわよ」

竜児「誰がうまいこと言えと…まあいいや。お前も元気になったし。それに」

大河「それに?」

竜児「大河の唇、柔らかくて気持ち良かった」

大河「なっ…!/////このっ、エロ犬」
バシッ

竜児「ちょっ、お前なあマジで背中叩くなよ」

大河「うるさいうるさいうるさい!もう、バカバカバカ!変態!顔以外イケメン!」

竜児「最後のは誉め言葉なのか?」

大河「私があんたに言うのは全部誉め言葉よ!」
竜児「えらく猟奇的な誉め言葉もあったもんだぜ」

大河「何よ、不満あんの」

竜児「正直無いと言えば嘘にはなるが、『ありがとう』とか『好き』とか言ってもらえるだけで充分というか」

大河「!!!!!す、す、好き!!!/////」

竜児「おう、俺も好きだぞ大河」

大河「えへ、えへへへへ♥♥♥」

51 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/15(木) 10:00:02 ID:VLCbVmNO
竜児「お、もう家だぞ大河」

大河「あ、もう着いちゃった」

竜児「じゃあ俺は一回家に戻ってから来るから。また後でな」

大河「うん。じゃあね竜児」

竜児「おう。あ、大事なこと忘れてた」

大河「なぁに?」


ぎゅうぅぅぅぅぅ

大河「ちょっ、ちょっと、竜児//////」

竜児「ちょっとだけ、寂しい思いさせるから」

大河「べべべべ別に寂しくないから!//////」

竜児「俺は寂しいぞ」

大河「もう!だったらさっさと着替えて家に来なさいよ!いっぱい抱き締めてあげるんだから!」

竜児「おう、じゃまたな」

大河「遅くなったら承知しないんだからねー!」

竜児「そいつは無理だろー物理的に」

大河「いいからさっさと帰れー!」

52 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/15(木) 11:37:19 ID:ticO9AEI
失笑

53 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/15(木) 12:39:31 ID:VB1HtpU3
>>51
ベタなバカップルなのににやけるのは何でだろう

54 :暑くなったからプールに行こう!:2009/10/15(木) 17:50:58 ID:4cWPF4Sw
41さん
ごもっともです・・・
夏のうちに投稿してしまおうとしたらこうなっちゃいました

文化祭とか修学旅行とか忙しくて・・・
もう少しだけ待っててください


55 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/15(木) 18:17:00 ID:2l/8N8ev
>>54 レスする暇があるならその分でさっさと本文を書け

ヘンタイはもう書くな!場違い
みんなもヘンタイにレス書かずにまともな作品に感想つけよ、ヘンタイは絶対調子乗ってルール破りする

56 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/15(木) 19:27:40 ID:Mdbj4F0V
↓以下いつもの流れ

57 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/15(木) 20:00:30 ID:cGl04Y3g
そうか?ヘンタイは実際に会ってみたらやっぱり変態なんだろうけど、
そこまで言われるほど酷い物書いてるとは思わないが


58 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/15(木) 20:58:04 ID:hELS73Sn

『何様www が あらわれた』
『何様www は リュウジ に 暴言 を 吐いた』
『何様www の 攻撃は 相手に されなかった』

竜児「・・・にげる、と」
大河「ほえ?」

『リュウジ たちは 逃げ出した』ダッダッダッ

大河「何で逃げるのよ?」
竜児「んー?」

『何様www が あらわれた』
『何様www は タイガ に 暴言 を 吐いた』
『何様www の 攻撃は 効かなかった 』

竜児「またか・・・面倒くせぇな・・・・・にげる、と」
大河「だから何で?」

『リュウジ たちは 逃げ出した』ダッダッダッ

竜児「ふう・・・久しぶりに見たなこいつ」
大河「ねぇ竜児、なんで相手にしないの?弱そうじゃん」
竜児「ん?あぁ・・・だってよぉ、相手にしても意味が無いんだ」
大河「どういうこと?」
竜児「経験値もくんねえし、ゴールドもアイテムも落とさない」
大河「へぇ」
竜児「つまり、時間の無駄ってわけだ」
大河「なるほどね、そりゃ私も相手にしないわ」
竜児「だろ?」
大河「しかも攻撃方法とかむかつくわ、痛い系ってやつ?」
竜児「そうそう。しかもこいつなー見てみろよ」
大河「なになに?」
竜児「ほら、シンボルがでかくって避けらんねえからすぐ触っちまう。邪魔なんだよな」
大河「あらら。いいところ無しじゃん」
竜児「そう。だからやり過ごそうとしてるわけだ。早いところレベルも上げねえとな」
大河「早くタイガに木刀スラッシュ覚えさせてよね?」
竜児「はいはい。あと少しだから慌てんなよ」
大河「リュウジは後ろで回復ばっかり、ほんと癪だわ」
竜児「おまえが職業決めたんだろうが!?」
大河「そうだっけ?忘れちゃった」
竜児「・・・ったく、私はガンガン攻撃したいのよ!とか言いやがるからこうなるんだ」
大河「んあー飽きちゃった。竜児、ご飯作って」
竜児「はぁ?ゲームの中でも現実でもおまえのこと回復させるんかよ」
大河「ふふん。適材適所ってやつね」
竜児「そう言うなら・・・・おまえの現実の役割は何だ?」
大河「食う!寝る!遊ぶ!」
竜児「んなっ!?」
大河「やっぱ竜児は最高ね!」
竜児「お、おう?そうか?それほどじゃないがな」
大河「ううん。竜児のご飯は最高!もうこれは絶対なんだから!」
竜児「よし。ちょっと待ってろ、すぐ作ってやるからな」
大河「わーい!


   ・・・・・・・・・・たーんじゅん、ぷぷっ」

59 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/15(木) 22:45:57 ID:LUsdzCq/
>>58
うまいねw
では、この流れでいきましょう
みんな、気にせず、気にせず


60 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/15(木) 23:48:34 ID:TPD8mF41
前スレの続きになります。
感想などありがとうございます。

まとめ人様にタイトルを付けて頂きましたので、以降で使用します。
>いつも乙です。本当にありがとうございます。

以下、6〜7レス程度貼ります。

61 :孤独な月ウサギは太陽の夢を見るか?2 ◆x6jzI2BeLw :2009/10/15(木) 23:51:06 ID:TPD8mF41

「さあ、やれ。覚悟は出来てる」
切腹寸前の武士みたいに真剣な表情で竜児は大河に行動を求めた。
「いいの?・・・本当に」
介錯人になった気分で大河は竜児の意思を最終確認。
「かまわねえ・・・」
竜児の決意が固いことを大河は見て取ると、大河はおもむろに手にしたものを竜児の胸へ運んだ。
その直後、竜児は胸全体に広がる灼熱感に身をよじり、歯を食いしばる。
大河の心配そうな瞳に気づいてやることも出来ないまま・・・。

その大河が手にしていたのは刀ならぬ脱脂綿を挟んだピンセット。
そして大河のそばに転がるオキシフルと印字されたプラスチックの小瓶。


ついさっき、竜児と大河はアパート前まで戻って来たものの、竜児は2階を見上げるだけで階段を上がろうとしなかった。
「どうしたの、竜児?」
早く手当てしないと、と大河は途中で寄り道して買った消毒薬なんかが入っている薬局の袋を竜児に突き出す。
そんな大河に竜児は部屋を貸してくれと頼み込んだ。
泰子を心配させたくないからだと理由を告げて・・・。



「悪いな、大河」
大河の家に入るなり、竜児は大河に頭を下げた。
「竜児が悪いんじゃない。だから、謝らないで」
屹っという感じで大河は竜児をにらむ。
これ以上、竜児に謝られたら、大河としては居たたまれないだけである。
「・・・分かった。もう言わねえ」
大河の気持ちが通じたのか、竜児はそれだけ言うとひと言、付け加えた・・・いらないタオル、貸してくれと。
「何に使うの?」
「ああ、傷口の周りを拭くんだ・・・血とか付くから、いらないやつがいい」
「・・・分かった。待ってて」
大河は足音も盛大に家の奥へと走り出す。
そんな大河を見送ると竜児はそのまま洗面所へ足を進めた。
「うわ・・・ひでえな」
鏡を見ながら竜児はひとりつぶやく。
出血は止まっているが、ワイシャツに広がる赤いしみとパックリ裂けた生地。
傷害事件の被害者と言っても通用しそうだった。
「もう駄目だな、このシャツ」
染みはともかく、繕える限度を超えている。
竜児は継続使用不可能の判定を下すと、シャツのボタンを外し胸元を広げた。

62 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/15(木) 23:51:25 ID:pbXycIyH
wktk

63 :孤独な月ウサギは太陽の夢を見るか?2 ◆x6jzI2BeLw :2009/10/15(木) 23:53:25 ID:TPD8mF41

「竜児、これ」
大河はどこからか持って来たタオルを竜児に手渡す。
「おう、サンキュ」
鏡の方を向いた姿勢のまま、後ろ手で何気なく受け取った竜児はタオルの手触りにぎょっとする。
それは見るまでもなく、大河が一番、気に入っているタオルのはずだった。
肌触りが優しい超高級生地を使ったふんわりタオル。
「大河、これ?」
竜児は振り向くと、俺が言った内容が理解出来なかったのかという意味を込めて竜児は大河を問い質す。
「・・・いいの。使って・・・ふんわりしてるから、傷口に触れても痛くないよ、きっと」
「使えねえよ。これ、大河のお気に入りだろ」
「いいって言ったでしょ。つべこべ言わないで使いなさい」
タオルを大河へ返そうとする竜児の手を意地でも受け取らないと大河は押し戻す。
「使えねえ」
「いいって言ってんの」
押したり戻したりを何度も繰り返し、竜児はとうとう大河に根負けした。
「・・・大河がそこまで言うなら、使わせてもらう」
「最初から素直にそう言えばいいのよ。手間のかかる犬なんだから、もう」
言葉の乱暴さと反比例して大河の口調は穏やかだった。
「・・・大河」
「な、何よ」
竜児に真正面から見つめられて大河は一歩後ろへ下がる。
「大事に使うよ・・・とにかく、ありがとうな」
竜児の目つきは相変わらずだけど、その中に優しさを見出したのか、大河はうつむき加減になる。
「べ、別にアンタのためじゃないわよ・・・私が寝覚めが悪い・・・から」
照れ隠しに心に無いことを言うものの、大河の頬が赤らんでいるのは隠しようが無かった。
「ちゃんと洗って返しなさい・・・染みにしないでよ」
竜児をまともに見れないまま、ぶっきらぼうに大河はそれだけ言い残すと、バタバタと足音を立ててリビングへ逃げ出した。


64 :孤独な月ウサギは太陽の夢を見るか?2 ◆x6jzI2BeLw :2009/10/15(木) 23:54:50 ID:TPD8mF41

リビングへ入って来た竜児を待っていたのは、脱脂綿をちぎって手当ての準備にいそしむ大河の姿だった。
「何してんだよ?」
「見れば分かるでしょ。手当ての準備」
「いいよ。自分でやるから」
「いいの、やってあげるから・・・そこへ寝なさい」
床に敷いてある毛足の長いラグを指差し、大河は竜児に横になれと言う。
「ば・・・大河にそんな真似させられるかよ」
「どうして?」
「いいから、貸せって」
竜児は大河が持つ消毒セットを奪おうとする。
大河は竜児の手よりも早く、それを自分の後ろへ隠す。
「おまえな・・・」
「やってあげるって言ってんでしょ・・・竜児がうんて言わないとこれはあげない」
後ろ手で消毒セットを押さえたまま、大河は竜児に訴える。
「・・・そこまで言うなら、やってもらう。けど、目を回したりするなよ」
仕方ないと言う感じで竜児は折れた。
「なんで、目を回すの?」
「けっこう、傷口深いんだ・・・見てて気持ちのいいものじゃない」
「どんな風なの?」
竜児は無言で横になると胸元を広げた。
「・・・うわあ・・・ざっくり・・・痛そう・・・って痛くないの、竜児?」
「ちょっとな、ズキズキはしてる・・・って、大河・・・平気なのか?」
目も背けず、普通にしている大河に竜児は拍子抜けする。
「竜児のだから・・・知らない人のとかだったらやだけど・・・あっ!・・・もしかして、そんなこと心配してくれたの」
今、気がついたと大河は意外な発見をしたような顔をする。
「あ、当たり前だろ・・・女が見るもんじゃねえからな」
「ふうん・・・女の子だと思ってくれてたんだ、竜児」
大河の口元がほころぶのを見て、竜児は気まずそうに大河と反対の横を向く。
「・・・ち、違うのかよ」
「違わない・・・ありがとう。気を遣ってくれて」
ストレートに返されて竜児は次の言葉が見つからない。

「私ね・・・竜児も知ってると思うけど、よく転ぶんだ」
横になっている竜児の側に腰を下ろす大河。
ニーソックスをひざ下まで下げ、ある箇所を指で押さえる。
「ねえ、見てここ」
竜児は大河に言われるまま大河と反対方向へ向いていた首を180度回した。
正座した大河のひざ小僧が竜児の目に飛び込む。
大河が見せるひざの少し肉が盛り上がった箇所、そこには小さな傷跡が・・・。
それと同時に竜児の視界に否応無く映りこむ大河のひざ奥の光景。
暗がりに白っぽく浮かぶ物、それは・・・・・・。
・・・げっ!
竜児は大慌てで、からくり人形みたいに首を元あった場所へ、再度180度回した。
「どうしたの、竜児?・・・変だった?」
怪訝そうにする大河に竜児は適当な理由を付けて今の行為を正当化する。
「あ、いや、何でもねえ・・・そっちを向くと傷が痛いんだ」
「そうなんだ・・・じゃあ、そっち向きでいいから」
そう言いながら大河は傷痕のいわれを話し始めた。

65 :孤独な月ウサギは太陽の夢を見るか?2 ◆x6jzI2BeLw :2009/10/15(木) 23:56:17 ID:TPD8mF41

「このマンションに来て間もない頃だったけど・・・入り口の階段で転んだんだ・・・一段、踏み外してね」
・・・転んだ先に尖った小石があって、もろに刺さった。
・・・結構いっぱい、出血して・・・なかなか止まらなくて・・・でも、なんだかあの時は半分、自棄みたいになってたから。
・・・このまま、血が止まらなくて死んじゃってもいいかな・・・なんて、ふと思った。
・・・馬鹿みたいでしょ。
・・・血? 少しして止まったけど。大して痛くなかったから、ほっておいた。
・・・駄目だろうって? ・・・うん、竜児の言う通り。
・・・2〜3日したら、ものすごく痛くなった・・・ばい菌入ったみたいで・・・病院、行ったけど。
・・・痛み止め、私、アレルギーで駄目だから。
・・・痛いの、ずっと我慢。
・・・高校、入る前だから・・・みのりんとか頼れる人、誰もいなくて・・・
「あの時は、本当に泣きたくなった・・・手当てしてくれる人が側に居てくれたらって思った。だから・・・」
「・・・だから?」
竜児は大河に続きを促す。
「その代りに竜児を手当てしてあげたいの」
竜児は首を少し曲げて大河の顔を見上げる。
ね、いいでしょう・・・と大河は竜児を見下ろす。
そのまま上と下で目線で会話をする大河と竜児。
竜児に送る視線に、何が何でも引かないとメッセージ載せて大河は発信し続ける。
・・・仕方ねえな。
しばらくして竜児が表情を緩めると大河は了承を得たと解釈し行動に移った。
ピンセットをつまむと脱脂綿に消毒薬をたっぷり含ませ、竜児の目にかざす。
「いい?・・・沁みるけど」


大河の手前、やせ我慢しているものの、竜児は呻き声を押さえ切れない。
大河は容赦なく2度、3度と傷口を消毒し続けた。
・・・並みの奴とは違うよな、大河。
痛みの下で竜児は感心する。
普通、痛みに呻かれたら、手加減してしまうだろう。
だけど、それが後々、良くない結果を生むのは間違いない。
脱脂綿が傷口に触れるたび、握りこぶしに力を入れながら、竜児はそう思った。


「・・・終わった、竜児」
「・・・ああ、助かったよ・・・自分でやったら消毒、絶対に手加減してた」
「大丈夫?痛くない?」
「ひりひりするけどな」
「ん・・・じゃあ、軽くなるように」
大河はそう言うなり竜児の胸元に顔を近づけ、傷口に向かってふうふうと何度も息を吹き掛けた。
「どう?」
「ああ、だいぶ楽になった」
実際はほとんど効果が無かったのだが、竜児は大河の気持ちに応えてやりたくてそんなことを言う。
「・・・良かった」
安心するみたく大河は胸奥から吐き出すように言葉を紡ぐ。
不慣れな保健委員か新米看護士になりきって、大河は薬を塗ったガーゼを傷口に当て、不器用な手つきでガーゼをテーピングしてゆく。


66 :孤独な月ウサギは太陽の夢を見るか?2 ◆x6jzI2BeLw :2009/10/15(木) 23:57:35 ID:TPD8mF41

「手当て、終わったよ、竜児」
ひと仕事終えて大河は明るく言う。
「大河、ありがとうな」
「これくらい・・・なんてことないから」
そのまま起き上がろうとする竜児を大河は押し留める。
「・・・何だよ?」
「いいから・・・もう少し、横になってた方が」
「でもなあ・・・寝にくいんだよ」
頭の位置を所在無げに動かす竜児。
そんな竜児を見ていた大河が言い出した。
「ここ、貸してあげる」
「ここって?」
竜児が顔を上げると、大河は自分の足をスカートの上から叩いていた。

・・・いらねえ。
・・・いいから寝なさい。
押し問答を再び繰り返し、竜児は大河の言い分を聞き入れて、大河のひざ上の住人になった。
ラグの上に座り、足を伸ばして座る大河の足に頭を乗せた竜児。
「どう? 大河さま特製の枕は?」
「悪くねえ・・・とだけ言っておく」
まんざらでもないように竜児は目を閉じる。
「良かった・・・ねえ、竜児」
「ああ、何だよ?」
「ひとつ、聞いていい?」
「答えられることならな」
「・・・嫌な思い出にならないで欲しいの」
「なんだそりゃ?」
「多分・・・竜児の傷・・・痕が残ると思う」
「・・・だろうな・・・こんだけやられれば」
「私ね・・・普段は忘れてるけど、なんかの拍子に思い出しちゃうんだ。ひざの傷痕、見るたびに」
・・・怪我して、誰も助けてくれなくて・・・痛くて、辛くて・・・。
わずかに悲しそうな顔を見せて大河は心情を語る。
「見るたびに、嫌なこと思い出す。ひとりぼっちだったあの頃・・・」
「・・・大河」
「・・・ごめんね。つまんない話、聞かせて・・・ようするに竜児には今日の怪我が嫌な思い出になって欲しくなかったの」
「嫌じゃねえ、それだけは言えるぞ」
「うん、そうだね。・・・いつか、竜児も大人になって・・・残った傷痕を見ていろいろ思い出すと思う・・・その時、竜児のとなりに誰が居るのか分からないけど・・・もし、それが私じゃなかったら・・・」
大河は感情を抑えたように続けた。
・・・竜児は思うの。
・・・高校の時、隣に住んでたちょっとドジな女の子が居て、その子がドジだから、巻き込まれて怪我したんだっけ、なんてね。
・・・巻き添え食って怪我したんだよなあなんて思い出になって欲しくなかったんだ。
・・・だから、私が一生けんめい、手当てしてあげれば、いいところだけ竜児の記憶に残って・・・怪我させられたけど本当はあいつ、ドジだったけどいい奴だったな、なんて思い出したりできるでしょ。
こんなこと考えるなんて馬鹿みたい?と最後に大河は自嘲気味に笑った。

竜児はまともに大河の顔を見られなかった。
大河のことなら、よく知っているつもりでいた・・・今の今まで。
だけどそれが大きな間違いだって思い知らされた感を味う竜児。
・・・ますますほっておけねえじゃねえか、大河よお。
竜児は無意識のうちに行動に出ていた。

67 :孤独な月ウサギは太陽の夢を見るか?2 ◆x6jzI2BeLw :2009/10/15(木) 23:58:40 ID:TPD8mF41

「ちょ、ちょっと、竜児。何してんの?」
「見ての通りだ」
「あ、あんた、変態?」
「いたって俺は普通だ」
「じゃあ、どうしてそんなことするのよ!」
大河にお構いなく竜児は行為を続けた。
「ちょ・・・やだ、くすぐったい・・・やめ・・・竜児ぃ・・・ひゃあ」

竜児は何をしていたのか?
その竜児は大河のひざに残る傷痕に自らの頬を寄せ、犬がマーキングするようにすりすりと頭を使って大河の傷痕を撫でていた。

「なんだよ、やめて欲しいのかよ。人がせっかくスペシャルサービスしてやってんのに」
悪びれたところも無く竜児はいたって真面目に答える。
「ふざけないで、竜児」
ようやく、動きを止めた竜児に大河はむくれる。
「仕方ねえな、大河がやめて欲しいなら・・・」
最後にこれは特別サービスと竜児は大河の傷痕をぺろりとなめる。
さすがに竜児のこの行為に大河は凍り付いた。
「ひっ・・・あ、あ、あ、あ・・・・・」
言葉が文字化けしたみたいに大河は意思表示が出来なくなった。
竜児の取った思いがけない行動が大河の思考の自由を奪う。
そのせいで、普段だったら足の上から竜児を放り出し、大騒ぎするであろう大河は竜児を放り出すこともなく足の上に置いていた。
放心状態の大河に竜児はもう一度、止めとばかりにぺろりとやった。

「・・・りゅ・・・じ・・・こんなこと・・・して・・・ただで・・・すむと・・・思ってる」
コードが接触不良のスピーカーみたいに大河は発声する。
大河の怒りに打ち震えて様が見て取れ、普段の竜児ならただちに緊急脱出する場面。
大河から半径2メートルは死地に等しかった。
なのに・・・竜児は落ち着いていた。
その竜児の姿に何かを覚えて、大河はエネルギーを超新星爆発させるタイミングを遅らせる。
「・・・どういうつもり、竜児?」
答えによっては生かしてこの家を出さないと言うニュアンスを込めて大河は竜児をにらむ。
「相当、怒ってるな、大河」
「あ、当たり前でしょ!」
「なら、良かった」
「良かった?良かったですってえ!!」
爆発5秒前の形相で叫ぶ大河。
しかし、その阿修羅像の様な大河は竜児のひと言でマリア像の様に姿を変えた。


68 :孤独な月ウサギは太陽の夢を見るか?2 ◆x6jzI2BeLw :2009/10/15(木) 23:59:44 ID:TPD8mF41


・・・嫌な思い出、薄れただろ。

「次に大河が傷痕を見て思い出すのはひとりぼっちのさみしさじゃねえ。 俺がやった馬鹿な真似に怒った記憶だ。あのバカ駄犬、よりによって飼い主を舐めるとは、しつけがなってなかったとか言ってな・・・」
「・・・竜児」
すっかりクールダウンした大河は竜児を申し訳なさそうに見る。
「でも、やりすぎたのは謝る。ごめん、大河・・・クズ犬とでもなんとでも好きなように罵っていいぞ」
「・・・言えないよ。だって、竜児は・・・」
大河は一度、言葉を切り、竜児を見つめる。
「大切な・・・私の大切な・・・あれ?・・・なんだろう・・・ぴったりする言葉が出てこない」
うまく表現できないもどかしさに大河は身をよじる。
「何でもいい・・・今にうまい言い方が見つかるさ。だから無理に言うなよ」
竜児の台詞に大河は「うん」と大きくうなづいた。

・・・テレパシーじゃないけど少しだけ分かった様な気がした。


「さて・・・と。買い物、また行かねえとな」
竜児は立ち上がりながら、エコバッグを掴む。
「買い物って? 行って来たばかりでしょ、忘れ物?」
「いんや、違う・・・今夜は鮭のムニエルにするつもりだったんだがな・・・」
竜児はエコバッグから夕食材料を取り出す。
一目見て、大河も「あっ」と言う顔になる。
「犬の歯型がついた鮭、食べたいか?」
大河は大きく首を横に振り回した。
「そんなわけだ。ちょっと行って来る・・・大河も来るか?」
大河はちょっと考える素振りを見せると思いもかけないことを言い出した。

・・・いいよ、行かないで、買い物。
・・・夕食、食べないのかって?もちろん食べるわ。
・・・じゃあ、どうすんのかって?
大河はこんなことを言い出した。

「私が作るわ、晩ご飯」




69 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/16(金) 00:01:25 ID:4iPe1QxF
以上となります。

次回はまた、近日中に投下します。

70 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/16(金) 00:06:44 ID:joq6L7qb
>>69
凄くGJ!
胸が張り裂けそうになりました。
竜児カッコヨス

71 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/16(金) 00:12:23 ID:5GJyfehJ
GJ!

72 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/16(金) 01:54:19 ID:WMKcoQYJ
>>69
乙です。
通じ合っていると分かっていないぶん、相手への思いやりの純度が高くて、じわっときた。
竜児がちょっと大河を上回ってる加減がイイ
続き楽しみにしています。 GJ!

73 : ◆Eby4Hm2ero :2009/10/16(金) 02:11:35 ID:MPmz390a
※業務連絡
>まとめ人さん
作者別インデックスですが、
リトルグッバイ
http://tigerxdragon.web.fc2.com/index/SS08/480.html
も私の作品ですので、追加をお願いします。

74 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2009/10/16(金) 02:13:19 ID:MPmz390a
お題 「コソコソ」「ガッツポーズ」「頬」



「大河。おい、大河ってば」
 返事は無い。当然と言えば当然だが。
 なぜなら呼びかけた相手は座布団枕から頭が落ちたのにも気づかず、畳の上で値こけているのだから。
 大河に起きる気配がないのを確認した竜児は静かに立ち上がり、音をたてないように自室から携帯を持ってくる。
『なんで自分の家でこんなにコソコソしてるんだ……』
 頭の片隅に浮かんだ疑問も今は無視。
 そろそろと大河に近づき、携帯を構えて――ぴろりん♪
 間近での電子音にも大河は目を覚まさず、無事に寝顔の撮影に成功。
「……よし」
 竜児は呟いて小さくガッツポーズ。

 最初は、普段の傍若無人っぷりへのちょっとした仕返しのつもりで。
 涎をたらしたみっともない寝顔を見せて、笑ってやるつもりで。
 だが、携帯の画面に映し出された大河の寝顔は――おそろしく可愛かったのだ。

 思えば最初に大河の寝顔を見たのは、忘れるはずもないラブレター事件の翌朝。
 その時の竜児の感想は『人形のよう』だった。
 しかし、その時竜児の手の中に小さく切り取られた姿は人形などではなく、紛れも無く生きた『逢坂大河』という女の子で。

 大河に見せたら消されてしまうのは確実で、それがもったいない気がして。
 大河が夕食後に寝てしまう度、こっそり撮影をするのがなんとなく楽しくなって。

 手早く携帯を操作して、撮った画像を『日光東照宮』フォルダへ。
 眠る大河→眠り猫→日光東照宮という迂遠な連想を辿ったこの名前なら、大河に気づかれる心配も無いはずだ。
 と、目の前で大河がごろんと寝返りを。
「うみゅぅ〜……」
 子猫のような寝言をあげる頬には、しっかりと畳の跡が。
 竜児は小さく噴き出すと再び携帯を構える。


75 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2009/10/16(金) 02:14:23 ID:MPmz390a
 竜児が風呂場に入ってからおおよそ五分。
 大河は立ち上がると竜児の部屋に入り、携帯を手に取る。
 竜児は風呂に入ると最低三十分は出てこないからコソコソする必要はないが、手早く済ませるにこしたことはない。
 慣れた手つきで携帯を操作して『日光東照宮』フォルダの中身を表示。
「……また増えてるわね。まったくあのエロ犬は……」
 文句を言いながらしかし、その頬は楽しげに緩む。

 ちょっとした悪戯心というか、好奇心というか、飼い犬の動向を確認するのは主人としての義務だし。
 そんな考えで竜児の携帯をこっそりチェックして、いくつかある画像フォルダの中で一つだけ浮いた名前なのが気になって。
 最初は携帯ごと破壊してやろうかとも思ったのだけれど。
 そこに保存された『逢坂大河』はどれも、自分が見たことの無い顔で。

 物心ついてから十数年、鏡に映るのはいつでも無表情か不機嫌顔のどちらかだった。
 プリクラの、ガッツポーズのみのりんの横で笑顔の自分も、一人になってから見るとなぜだか嘘臭く見えた。
 だけど、その時手の中に映し出された寝顔は、本当に、ほんとうに、安らかで。
 自分にもこんな表情をすることができるのか、と。

 勿論、盗み撮りの罰はいずれきっちり竜児に与えてやるつもりだけど。
 別に慌てる必要も無いし、それよりも今はもうちょっと見ていたいから。

 自分の携帯にデータをコピーして、竜児の携帯は元の場所に。
 卓袱台の横にごろんと寝転がり、手の中を見つめながらにまにまと。
 やがて這い登ってきた眠気に、大河はゆっくり目を閉じる。

76 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/16(金) 07:36:19 ID:5GesFn2v
>>74-75
大河さん懐ひろーい!
にやけてる大河想像したらこっちも2828だよ。

77 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/16(金) 20:58:32 ID:P9RHwAHE
>>69
こういう互いの穴を埋めるような、癒すようなエピソードって最高です
次回も楽しみにしてまーす

>>75
大河の心情描写が素敵すぐる!

78 : ◆askgvpoGB. :2009/10/16(金) 21:03:13 ID:P9RHwAHE

前スレ>>438 >>440
感想ありがとうございました。
普段は家事とかしっかりやって尽くすタイプだと思ってます。
ま、少なくとも自分のSSの中ではw

>>439
ありがとうございまーす。続きもどうぞー

まとめ様、>>1様も乙です。

では次レスより続きを投下します。

79 :【 - holding hands - 】 19 ◆askgvpoGB. :2009/10/16(金) 21:05:01 ID:P9RHwAHE

「まぁ、ここまで尽くされちゃったらねー、私としても気合入れて頑張らなきゃって思うわけ、分かる?」
「あっそ。あんたら二人がそれでいいって言うなら亜美ちゃん関係ねーし?」
「ガッツリ休んで、ガッツリ体力付けるの。逆に言うと、今の私が出来る事ってそれしかないんだ……」
「そうなの?」

と実乃梨ちゃんが尋ねる。興味があるのかやや前のめりになってる。

「何かね、先生が言ってたんだけど……すっごい大変なんだって、お産の前って」
「うんうん。そりゃそうだろうねー」
「二、三日くらいは陣痛が続いて寝れない事もあるって言われたし、
 体力ない人にはトレーニングを薦めるんだってよ?」
「へぇ、そんな大変なんだぁ……」

得意気に演説をぶちかますタイガー。
ま、自分の将来のためにも聞いておくのはやぶさかでは無いというか何と言うか。

「でもさ大河?大変は大変だけど高須君のサポートがあるんだし、すっげぇ安心じゃない?」

そう……あの高須君が……変質的なほど綺麗好きで几帳面で気配りの鬼と言える
あの高須君が愛情MAXフルサポートしてるとなれば確かに安心だろう。
これじゃどこかの生命保険の謳い文句みたいじゃんと思ってたけど、当のタイガーは、

「怖いよ…………怖い」

と、一瞬で笑顔が消えて顔を曇らせる。

「私こんなちっこいじゃない? いかにも苦労しそうな感じだし、
 お医者さんにも覚悟しておいてって言われたもん」
「うぅむ……やっぱりそうなるだろねぇ……」
「そればっかりは諦めるしかないよね」
「しかもね、ちょっと前にね、一回だけ陣痛みたいな痛みが来た事があるんだけど……
 んもっ! っのすごっく! 痛くってさ」

その時の事を思い出したのか、顔をしかめながらお腹を押さえる。

「うわぁ……」
「……で、どうなったのよ、それから?」
「すぐ収まったの。多分10分も無いくらい……かな」
「それなら……良かったじゃん?」
「……でもね、竜児はすっごく慌てちゃって、悪い事しちゃったなって思うの。あんなに痛がったからかな?」
「そりゃー高須君じゃなくったって慌てるに決まってるさねー」
「私はもう全然動けなくってベッドで丸まってたんだけど……なんかね、本を見てみるとか言ったりね、
 ネットで調べるとか言ったり、あげく救急車まで呼ぶとか、部屋中走り回って血相変えてもう大変だったんだから」

……これもノロケだろうか?初めて聞く話だったみたいで、実乃梨ちゃんの顔が輝いてるように見える。


80 :【 - holding hands - 】 20 ◆askgvpoGB. :2009/10/16(金) 21:06:09 ID:P9RHwAHE

「私にゃそんな高須君なんて想像できないなー」
「竜児もそんなに慌てないでさ、傍にいてくれれば良かったのに……って思う」
「ま、テンパっちゃう気持ちも分かるけど……でもさ、予定日に近いわけでもないのにそんな痛くなるってやばくね?」
「ん、それから痛くなったことはないし特に心配はしてないんだけど……その……竜児がね……」

なるほど。心配性の高須君らしいな、と思う。心配性すぎて胃に穴が開くタイプだよね、あれは。

「だからかぁ……それ以来、高須君は過保護になっちゃったってわけね?」
「そうなの」
「まさにお姫様状態じゃん、大河ってばスゲーよ! アチチだよ!」

隣で実乃梨ちゃんが火傷した時みたいに手を振りながらあちちあちち言ってる。
え……そこで興奮するわけ?……謎だ。未だに実乃梨ちゃんの興奮ポイントが掴めない。
きっと自分の脳内でどんどん妄想が膨らんで熱くなってるに違いない。多分シナプスがそういう風に出来てるんだろう。

「まーあんたの気持ちも分かるよ?昔ママに聞いた事があるけど、ものすごく痛かったとしか言われなかったし……」
「うちの先輩も最近産んだんだけど、そんな感じだったね。それ以上は根掘り葉掘り聞くわけにもいかないしさ」

この歳になれば嫌でも耳に入ってくるし、小さい頃から積み重ねられた出産のイメージはどうしても『痛い』だ。
そりゃービビりのタイガーじゃなくても怖くなるってものか……

「でも、まぁ私は平気よ!」
「……やけに強気じゃん?さっきまでは怖い怖い言ってたのに」
「だって竜児がいてくれるもん!」

……やっぱりそう来たか。うんうん、亜美ちゃん今更こんなことじゃ驚かない。

「おうおう、高須君も付き添ってくれるって?」
「うん。あのね、陣痛って最初30分間隔とかで始まって、段々短くなってくんだ」
「ほうほう」
「どのくらい前から始まるかってのは個人差があって長い人は長いみたいだから、そうなったらやだなぁ……」

と少しだけ嫌そうな顔をする。
実乃梨ちゃんは興味津々らしく、それでそれで?としきりに先を促している。その気持ちは理解できる。
女として生まれた以上、人生の中でこれほど大きいイベントもそうそう無い。むしろ一番の大仕事ってやつだもんね。

「うん。それでね、10分間隔くらいになったらほとんどの人は入院するみたいなの。
 だからね、竜児はそれに合わせてお休みも取ってくれるんだって!」
「そいつぁ安心だねー大河!」
「さっすが高須君……って言うか……ま、今のご時勢じゃ珍しくもないか……」
「だからね、仕事を前倒しでやってるとか何とかで、結構忙しいらしいの」

家事全部やってる上に仕事も山積みか……あたしだったら考えただけでやんなっちゃう。
おまけにタイガーの甘えっぷりも半端ない。文字通りおんぶとだっこか……高須君、あんたやっぱりすげーよ。

――ちょっとだけ目を閉じて、今この瞬間にもせっせと仕事をこなしているだろう高須君を思い浮かべる。
うん。まぁ。高須君なら来週のその日を待ちわびて笑顔で仕事をしてるんだろうな……なんて。


81 :【 - holding hands - 】 21 ◆askgvpoGB. :2009/10/16(金) 21:07:52 ID:P9RHwAHE

「んで、5分間隔くらいになったら準備室だか分娩室に移動して本番ーって感じらしいよ?」
「んじゃあ、その間ずーっと高須君が付きっ切りなんだ?いいねいいねぇ!」
「そうそう。だからまぁ……怖いっちゃ怖いんだけど、きっと大丈夫!」

目を開けるとタイガーがこっちを見てあっけらかんと笑っている。さっき泣いたカラスが何とやら……だ。
竜児がいればこの世に怖いことなんてありません! とでも言い出しそうで思わず苦笑いしてしまう。

「ママとかに聞いた話だと、5分間隔になってもうすぐ生まれそう! って時にね、
 なっかなか間隔が縮まらなくて苦しかったって聞いたかな。
 半日くらいその状態が続いて、ずっと痛くて辛いわ、始まらないわ、終わらないわでもう大変だったんだって。
 分娩室に移った時にはもうクタクタになってて、その上なかなか出てこなくってねーあんたは。
 ……って言われたわ」
「あんたの事かよ……」
「あはは。大河らしいっちゃらしいのかね?」
「まぁ、覚えてない時の事を言われても困っちゃうんだけどね」
「じゃーあんたもそのお腹の子に文句言わないでいられる自信あるの?」

と問いかけると、「うーん」と唸って、「わかんないや、へへへー」と笑う。

怖い怖い言ってたけど、結局は高須君がいかに大事にしてくれるかーってのを自慢されただけじゃね?
と思ったが、さっきほどネガティブにならないのは慣れたからだろう。これだけ聞けばどうでも良くなる。

しっかし、元気が有り余ってるのかさっきから喋りまくりでうるさいったらない。

「んぅーーーっ! いっぱい話したらお腹空いちゃった! おっひるごっはんにしようかなー」

そう言って腕を上に突き出して伸びのポーズ。
相変わらずの低燃費っぷりは生来のものか、お腹の赤ちゃんに取られているからか?
どっちもだったら一体どんだけ食べてるんだろう?と想像しかけて止めた。食欲が無くなりそうだったし。

……なるほど全体的にふっくらしてるのはお腹の印象だけじゃなかったみたい。
元々曲線の乏しい子だったけど、今はほら、顎のラインも若干丸みを帯びているし、
胸だって膨らんで…………って……え?えええ!? 哀れ乳は?

「……っていうかさ、タイガーあんた胸おっきくなった?」
「あ、分かる?分かっちゃった!? そうよ、気付かなかったらどうしようかと思ってたわ」
「だってさ、お腹の膨らみの延長にしか見えなかったし、そこに何か存在するなんて頭の片隅にもな……」
「知られちゃったからにはしょうがないわね……私ね、重大発表があるの!」
「………………」


82 :【 - holding hands - 】 22 ◆askgvpoGB. :2009/10/16(金) 21:09:10 ID:P9RHwAHE

あたしの台詞なんかまるで無かったみたいにスルーされる。
何を言い出すのか警戒して我が戦友、櫛枝実乃梨に素早く目配せをする。
ちなみに戦友と書いて「とも」と呼ぶ。

けれど、その瞳はキラキラと輝いていて、さっきまで嫌がってた当人とはとても思えない。
そうか……おノロケ怖いメソッドか……それとも、大河怖いメソッド?ってことは大好物???

「ほうほう、何だい、大河!?」
「じゃじゃーん! なんと私、Cカップになりました!」

衝撃の事実。人間って素晴らしい。

「えっ、マジ?」
「すごいじゃーん、大河ー! また大きくなったねー!」
「ふっふーん。この前ブラも買ったのよ、あぁ念願のCカップブラっ!」

と言って、両手を組み合わせてうっとりしてる……そんなに嬉しかったのか。
つーか、また大きくって事は……実乃梨ちゃんにはその都度自慢してたわけ?

「……ただデブっただけじゃねーの?」
「何言ってんのよ、そんなことないって」
「どうだか……ふん」
「ちょっとくらいお肉が付いたほうがいいって先生も言ってたもん」
「あっそ。で、高須君も大歓迎なわけだ? へぇ〜 大喜びってか?」

煽るような言葉を発して、斜め下からタイガーの瞳の奥を探る。

「……んーとね、痛いの。張っちゃってて痛いんだ」
「あれかい?例のやつかい?」
「そそ、もうじき生まれるっていうのに全然おっきくならなかったら問題だっての」
「おおー生命の神秘なりね!?」
「あららぁ残念。それじゃせっかく大きくなったのに高須君も触れなくって寂しいんじゃないのぉ?」

興奮し始めた実乃梨ちゃんに合わせるように突っ込んだ事を聞いてみるが、

「竜児はそんなことで寂しがったりしないもん」

と、何食わぬ顔で反論する。


83 :【 - holding hands - 】 23 ◆askgvpoGB. :2009/10/16(金) 21:10:14 ID:P9RHwAHE

「いやいやいやいや、高須君だってきっと思う所があるんじゃないのかなー?」
「なんたって愛しいお姫様の胸が育っちゃったんだもんねぇ、きっと眠れない夜を過ごしてるんじゃない?」
「だーかーらー、竜児は全然そんなことないんだって、んもう止めてよねっ」

そんなことない、とはどんなことがないんだろう……これは聞いておかないと、あ、実乃梨ちゃんのためにね。

「それって絶対我慢してるって、亜美ちゃんが言うんだから間違いない。男なんて皆そんなもんなんだから」
「くぅぅ! 愛しい大河のために悶々とした夜を過ごす高須君……萌えるぜぇ〜!」
「萌えんなって……」
「あぁ…………でも、たまに視線は……やっぱり……感じる……かな?」
「にょっほー! 熱いね熱いねぇ! それでそれで?」

タイガーの発言一つ一つに過剰反応してる実乃梨ちゃんが段々とおかしなテンションになってくる。

「だからっ! そんだけなの、そんだけ! ったく、何言わせてんのよ二人とも……」

憮然といった感じでこちらを見やるタイガー。
少しだけ頬が赤いのはあれか、今までコンプレックスだった場所に向けられた熱い視線を思い出して……
ハッ……この考え方……実乃梨ちゃんに染められちゃったかな?いや、こんな感じでヒートアップしてくのか?

嫌な予感がして隣の実乃梨ちゃんを見ると、口元に何ともいえない笑みが浮かんでいる。
うわぁ……亜美ちゃん正解かもー、と思ってると、

「二人とも自分の番になったら思い知る事になるわよ?」
「ほえ?」
「何のことよ?」

意味深な発言に二人とも聞き返す。

「全然よ? ぜんっぜんそんなんならないって。圧迫されてて息すると苦しいくらいなんだもん」
「そんなに張っちゃってるんだー?」
「だから、エロ芸人の川嶋さんが言うような汚らわしい展開にはならないってわけ……分かった?」
「ついに芸人呼ばわりかよ、こいつ……」
「なぁんだぁ……アチチな展開は無いのかー」

などと言いながらガックリ肩を落とす実乃梨ちゃん。

「ごめんね、みのりん。期待に応えてあげられなくって」
「えっ!? ……いやいや、おれっちは全然期待なんてしてないし……」

とは言うものの、全く説得力が無い。
っていうか、実乃梨ちゃんの将来が心配になってきた。ちゃんと恋とかしてるんだろうか?
タイガーの反応も期待外れで面白味が無いし、亜美ちゃんつまんなーいと思いながら、やっつけ気分でポロっと、


84 :【 - holding hands - 】 24 ◆askgvpoGB. :2009/10/16(金) 21:11:27 ID:P9RHwAHE

「じゃーあれかなぁ? 触れない代わりに〜とか何とか言いながら高須君が飲んじゃったりしてるわけかぁ〜」
「やだねぇ、あーみん。あの生真面目な高須君がそんな……ねぇ?ヘンタイちっくな事するわけが……」
「そっ、そそそ……そんな……そんなこと………………ない……」

その瞬間、ボボン! と、瞬間湯沸かし器よろしく真っ赤になるタイガー。
急にどもりながらあたしの言葉を否定するが、「ない」の台詞はほとんど聞こえない。
顔どころか耳までピンクに染めて湯気が出そうなほどだ。

「あんた…………」
「…………………………

分かり易すぎる。っつーか想像したくもない。
何なんだこいつは……恥ずかしいのはこっちだっつーの!
汚らわしいとか何とか言って無かったっけ?あれはどう説明するわけ?

……………………ブハッ!」

その時、沈黙を保っていた戦友が血の花をばら撒いて散っていった。

「きゃあっ!?」
「…………そ、そいつぁ反則だぜ、大河ぁ……た、隊長……申し訳……ありま……グハッ!」

いつの間にか女神から隊長に格下げされてるけど、自ら進んで死にに行くような部下なんかこっちから願い下げだ。

「ちょ……実乃梨ちゃん大丈夫?しっかりして!」

一応そう言ってみるが、従順なこの部下は仰向けのまま恍惚の表情を浮かべてて正直キモイ。
これが有名なヘブン状態か?

「……だって……あれはだって……りゅうじ、が…………そう、不可抗力って……やつ……で……」

タイガーの方は?と見ると、人差し指をつんつんしながら茹トラが世迷言をほざいている。
あれだけノロケといてカマトト気取りか?

「なんだよ……これはよぉ……」

あたしはゲンナリした顔で二人を見やる。
この頭がいかれちゃってる二つの生き物と同じ空気を吸っているのが心底イヤになってきた。帰りてぇ……

「……あ、亜美ちゃんお手洗い〜♪」

自称、日本で一番可愛いトイレ宣言をして立ち上がるけど、当然のごとく無視される。

「そりゃ……ね…………興味が……あるの……は、分かる……ん……」
「ふへ……ふへへへ…………禁断の、か……かかっ!……かじ……つ……ふへっ……」

タイガーは独り言。実乃梨ちゃんは夢の中。
あぁ、そうだろうよ……はいはい、そうだね、こういう奴らだよね、知ってた知ってた。亜美ちゃんよーく知ってたよ。


◇ ◇ ◇

85 :【 - holding hands - 】 25 ◆askgvpoGB. :2009/10/16(金) 21:13:07 ID:P9RHwAHE


トイレから出て手を洗ってるとキッチンから二人の声が聞こえてきた。
どうやら立ち直ったらしいと思いながら洗面所を出ると、

「おっ、あーみん! 大河の料理、見てみるかい?」
「……それ面白そうね」
「なーにが面白いよ、そこで見てなさいっての。驚かせてやるから」
「はいはい」
「それじゃ、大河の事はあーみんに任せて私はテーブル片付けてくっかい」
「お願いね、みのりん」

タイガーが立ってる姿を横から眺めていると思わず吹き出しそうになるけど我慢する。
エプロン姿を見慣れていないのもあるが、何と言ってもそのお腹のアンバランスさ加減がものすごい。
これじゃ料理をはじめ家事全般大変だろうなと思いながら隣に立つ。

「あ、悪いんだけどさ、冷蔵庫にケチャップライスが入ってるから、取ってくんない?」
「はいはい。それを暖めるわけね?」
「そそ。そんで、私が卵で包めば出来上がり! らーくちーん!」
「つーか、ほとんどタイガーの料理と呼べないじゃん、これって……」

と、少しだけ皮肉を言ってみるも、

「何言ってんのよ、『高須家の料理』をごちそうするんだから、私と竜児が半々で作ったって問題ないでしょ?」

なんて、やけに説得力のあることを言われてしまう。

「まぁ、そっか……」
「それに、オムライスは卵が命じゃない?とろとろ半熟に仕上げてやるから楽しみにしててよ」
「あんたが料理するところを見るのなんて始めてじゃない?」
「そうだっけ?」
「常に高須君があんたの餌を用意してたもんねぇ〜?」
「うっさい。卵料理は私のルーツなんだからね。これでも一番得意なのよ?」
「うっそくせー 卵握りつぶしたりしてんじゃないの?」
「あんたも口が減らないわねー? あ、分かった。
 芸能界で抑圧され過ぎて腹黒分が発酵しちゃったんだね、おかわいそうに」
「ちげーって……ったく、あんたは……」

卵を掴んだタイガーの手から視線を外して天井を仰ぐ。
自然と笑っている自分がいた。
こいつと料理の話をするなんてね……そんな日がいつか来るかもと思ってたけど、それが今日だったわけか。
そんな事を考えてると、クシャ――という音が聞こえてきた。そう、まさに卵が割れたような……

「……って、やっぱり割ってんじゃん! やーだもう! あははっ!」

視線を戻した途端に飛び込んで来た卵の惨状を見て笑ってしまう。
タイガーの手の中でものの見事に潰されていた。
そして、台所に乗せられていたその手を辿ってようやく――うずくまってしまってるタイガーに気付く。

ドクン―― と、ひとつ心臓が跳ねた。

「ちょ……っと…………た、タイガー……?」
「ぅ……ぅぅっ……」

両膝を突いてへたり込んでる上に、片手でお腹を押えてうめき声を上げている。
頭の天辺を流しの壁に押し付けて軽く震えているのが見て取れた。

「あんた……ちょっと大丈夫!? どうしたの? ねぇ、ちょ……」
「ぐ……ううっ!……い……痛い…………の……」
「えぇ!?」

86 : ◆askgvpoGB. :2009/10/16(金) 21:13:54 ID:P9RHwAHE

本日は以上です。ありがとうございました。
実を言うと合法的?にCカップになれるこの瞬間を書きたくて長編始めました(うそ
こんなところで切っておきながら次回は遅くなりそうで申し訳ありません。
それでは。

87 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/16(金) 21:52:51 ID:rdDbtA3/
良い感じね、(俺のハァハァ)反応速度があがってきたは


大河さんがヒーローゲームに出る件について竜児さんから一言いただきたい

88 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/16(金) 21:55:38 ID:GrwlQWOM
は、早く続編を…!

89 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/17(土) 00:53:55 ID:uBFGhVQu
まさかCカップがここに飛び火するとは

90 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/17(土) 01:24:17 ID:3f8IUTMj
>>86
おお、その手があったか!!

91 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/17(土) 01:30:20 ID:uHSP2S4x
あ、あーみん隊長・・・・俺もみのりんと同じく萌え殺されたぜぇ・・・
介錯してくだしあ・・・・・・

92 : ◆QHsKY7H.TY :2009/10/17(土) 18:58:38 ID:PXTvJfrU
>>86
う、生まれるのかうまれちゃうのかあぁぁぁぁぁ!?

前スレにてちがトラ!に感想くれた方々ありがとうございます。

最近スレに活気があって2828な限り。

まとめ人さまいつもお疲れ様です。

さて連載にしようと書き始めて一レス短編になっちゃった作品いきます。

93 :時代はツンデレ ◆QHsKY7H.TY :2009/10/17(土) 19:00:16 ID:PXTvJfrU

学校帰りのある日、大河は真面目くさったように言い出した。
「時代はツンデレなのよ」
「…………は?」
竜児は突然のことに話についていけなかった。
それはそうなのである。
「だから、今はツンデレがはやっているんだってば」
このようにイキナリ時代はツンデレと言われても、一体何処のお姫様がそう決めたというのか。
ちなみにツンデレとは、
『初め(物語開始段階)はツンツンしている(=敵対的)が、何かのきっかけでデレデレ状態に変化する(変化の速度は場合による)』
あるいは、
『「普段はツンと澄ました態度を取るが、ある条件下では特定の人物に対しデレデレといちゃつく』
もしくは、
『「好意を持った人物に対し、デレッとした態度を取らないように自らを律し、ツンとした態度で天邪鬼に接する」ような人物、またその性格・様子』
byウィキ●ディア。
いやいや、そんなことくらいはいくらなんでも理解している、問題は……、
「何を根拠にそんなこと突然言い出すんだお前は」
竜児は、至極最もな疑問を大河にぶつけた。
「わからないの竜児?アクア●ラス発売のゲーム(原作はLe●fの18禁」Rou●esに出てくる湯●皐月といい、電●文庫の灼眼のシ●ナのシ●ナといい、MF文庫のゼ●の使い魔のル●ズといい、みんなツンデレじゃない!!」
そして返ってきたのは意味不明な答えだ。
唯一わかったのは、確かにそれらが共通性を感じさせるという点だけ。
その共通性がツンデレ以外の何かな気はするが、それが何なのかは皆目見当もつかない。
こんな時は何を言っても無駄だとこの春からの付き合いで理解していた竜児は曖昧に頷いておくことにした。
「あぁはいはい、そうだな」
「でしょ!?で、私は北村君ゲットの為にツンデレを会得しようと思うの!!」
途端、すぐさま後悔。
何で曖昧に頷いておいてしまったのか。
「いやお前、会得ってそれは会得するもんじゃねぇだろ?」
「い、良いのよ、これも北村君の為の努力だと思えば」
「まぁ、悪いとまでは言わんが……」
「そういうことだから、アンタ手伝ってね砂糖ナメクジ犬」
大河は立ち止まり竜児に指を指して言う。
「はぁ?」
何故ツンデレの極意を会得するのに付き合わなければならないのかと竜児は不服そうにする。
「アンタ私の為に何でもするって言ったでしょ!?」
しかし、二言目にはいつも大河はこれだった。
ここまで来たら次に来る言葉は相場が決まっている。
「私、こんなこと頼めるのアンタしかいないんだから!!」
半泣きになりながら懇願するように大河は竜児を見つめる。
これを見ると、竜児はどんな無理難題でもやむなく、飽くまでやむなく頷いてしまうのだから不思議でしょうがない。
「……おぅ、仕方がねぇな」
大河はその竜児の返事に満足そうに頷くと、足を再び前へと向け、
「……ありがと」
小さくお礼を言った。
「ん?何か言ったか?」
「な、何でも無いわよ馬鹿犬!!帰ったら早速特訓よ!!」
大河は慌てて首を振る。
「へぇへぇ」
竜児は、仕方がなさそうに返事をする。
そんな帰宅途中の二人の影が夕日によってまるで恋人同士のように綺麗に並ぶ。
ツンデレ免許皆伝の日は……遠くないかもしれない。

94 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/17(土) 19:49:08 ID:knllVQs4
>>93
おいそこの釘宮w

95 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/17(土) 22:26:39 ID:xoXYmqDq
GJ

96 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/17(土) 23:36:40 ID:Tlt1bfNw
最萌

97 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/17(土) 23:41:39 ID:fppEJlCV
竜児「つまり、大河のおっぱいをツンツンするとデレデレになるんだな?」
大河「ちょ、ま!」

98 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/18(日) 08:28:34 ID:3nMTCHcG
>>96
唯を抑えてまさかの優勝か
すげえな本当にすげえ
なんですごいかって言うと今年度はけいおんの盛り上がりが凄まじく
とらドラは番組終了して半年以上も経ちDVDのリリースも終了した状況なのに
これも愛の力だな

99 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/18(日) 09:42:27 ID:JbL0Oamq
>>98
意外だ。俺、大河のこと全然萌えキャラだと思ってないから。

「とらドラ!」は後半、傷つき、最後には表情を消したまま滑り落ちていく大河をがっちり
抱きしめて守ってやりたくはなるのだが、たぶん腕の中で暴れまくって内臓破裂する
ので、よし、竜児あとは任せた、絶対大河を幸せにしろ、俺はお前達を応援する、って
気持ちで読み、かつ見てた。

萌える要素が無ぇ(w

100 : ◆odaAq0EgoE :2009/10/18(日) 10:02:55 ID:ANstwqcy
テスト

101 : ◆6U1bthnhy6 :2009/10/18(日) 10:11:06 ID:ANstwqcy
久々過ぎて、トリの付け方忘れてた。これで桶カナ?

まとめ人さんお疲れ様です。んと、作者べつに追加してほしいのがあるんで、ヨロシクですm(__)m

貼りかたわかんねーんだよな・・・。

3スレ目の『いやな夢を見たわ』
4スレ目の『優しい時間』『星の降る夜に』『こころにつもる雪』『暑いんです』
5スレ目の『愛してる』
7スレ目の『視線の先には・・・』
これの追加お願いします(^-^)
あといくつかあんのはどーでもいいやw

102 : ◆6U1bthnhy6 :2009/10/18(日) 10:14:54 ID:ANstwqcy
んで、これだけのために書き込むのも悪い気がしたので、一つ投下します。
内容的には、文化祭・生徒会長戦以降辺りで。

103 : ◆6U1bthnhy6 :2009/10/18(日) 10:22:34 ID:ANstwqcy

「ねー竜児。今日のご飯、焼肉にしようよ!」
学校からの帰り道、私は振り返って見慣れた凶悪面にそう話し掛けた。

『初恋』

「なに言ってんだお前。ダメに決まってんだろ?そんな余裕は家にはねーよ」
案の定返ってきた答えは予想通り。
この高校生にして、スーパー主婦の異名を持つ男は、その名に恥じず財布の紐も固い。
ふふん甘いわね竜児。
そこまではお見通しなのよ。
よっと、歩いていた縁石から飛び降りると、私は鞄からお財布を取り出した。
「だーかーら!そこは私が出すから!」
「は?」
怪訝そうな顔の竜児の目の前で、ほらほらと財布を振って見せる。
中身が詰まって、少し膨らんだ財布を。
「昨日ね、クソ親父からお金入ったの。だから日頃のお礼もかねて、竜児とやっちゃんとにご馳走す・・・」
「いらねー」
「え?」
財布の中身を確認していた手を止めて顔を上げると、竜児はスタスタと先を歩いていってしまっていた。
「ま、待ちなさいよ!」
慌てて鞄に財布をしまい後を追いかける。
・・・いつもより歩幅が広い?
追い付くのに、小走りにならなければいけない速度で歩きながら、竜児はこちらを振り返ろうともしない。
「ちょ、なにシカトしてんのよ!?折角私がお金出すって・・・!」
「いらねーって言ってんだ!」
急に立ち止まり、竜児が俯いたまま大声を出した。
なに・・・?なんで・・・?
「ちょ・・・な、何いきなり怒ってんのよ!?」
戸惑いが声に表れる。
なに?何か私悪いことした?
その後の言葉が継げず、黙って竜児を見上げていると、チッと気まずそうに舌打ちをして竜児が呟いた。
「・・・あんな奴の金で奢られるなんざ反吐が出る・・・」
「!!」
その言葉に、思わずビクンと身体が震えた。
怒った理由に気付いたから。
竜児はまだあの事を・・・文化祭の時の事を気にしていたんだ。
「・・・悪い、言い過ぎた。でも金輪際、あいつの話題を出すのはやめてくれ。・・・自制が利かなくなる・・・」
「竜児・・・」
額に手を当てて、竜児はすまなそうに呟いた。


104 : ◆6U1bthnhy6 :2009/10/18(日) 10:24:38 ID:ANstwqcy
「・・・」
・・・竜児は本気で怒っていた。
パパが私にしたこと・・・それを目の当たりにしたから。
バカみたい。
私にとってはもう慣れた事なのに。
バカみたい。
私は何も気にしてないのに。
でもそれに・・・竜児は本気で腹を立てていた。
私のことで・・・。
「・・・竜児」
「ん?」
傍らにいる男に、私はそっと顔を向ける。
そして、みつめ返してくるいつもの顔。
それが今・・・とてつもなく嬉しかった。
「あんたは・・・私の傍らにいるよね?ずっと・・・」
「ああ。約束したからな」
そう言って笑う顔。
もう見慣れたその顔に、何故か今日は胸の奥がきゅうんとなった。
「・・・もっかい、言ってもらってもいいかな?」
「は?なにをだ?」
「・・・約束・・・」
俯いた顔が真っ赤になってるのを感じる。
気付かれないかな?
気付かれたら恥ずかしいな。
・・・気付かないかな?
「変な奴だな」
でも竜児は気付く素振りもなく、声に苦笑を混ぜる。
・・・あんただって、相当変な奴よ。
なにしろ、出会ったばかりだった私に、あんなこと言うんだから。
そう。
「・・・俺は竜だ」
聞こえ始めた声に、そっと目を閉じる。
「昔から、竜は虎と並び立つとされてきたんだ」
その声は、私の身体の隅々に染み渡る。
「・・・俺は竜になる」
そして私の心を満たしてくれる。
「竜として・・・大河の傍らに居続ける為に・・・」
そうして私は彼を・・・竜児を見上げる。
あの時と同じように。


105 : ◆6U1bthnhy6 :2009/10/18(日) 10:25:32 ID:ANstwqcy

「・・・なんだよ。なんか言えよ」
恥ずかしいじゃねえか。
そう言外に隠した表情は、あまりにも『恥知らずで』。
「・・・ぷっ!」
だから・・・吹き出してやった。
「あんたすっごいヤクザ面。子供が見たらトラウマになるかも」
「な!?」
その言葉に、ますます竜児の顔が赤くなる。
ザマミロ・・・バカ竜児。
「お、お前が言えって言ったんじゃねーか!!」
「そんな強面になれなんて言ってない」
「うるせえ!生まれつきだこんなモン!!」
「あーあー。現状を受け入れて努力しない男って最悪よねー」
「努力次第でどーにかなるモンとならねーモンがあんだろ!?これは後者だ!!」
「あー言い訳ばっかり。あんた、そんなんじゃモテないよ?」
「だー!関係あんのかそれ!?今!?」
ガリガリと頭を掻く姿に、思わず大声で笑う。
全く、この高須竜児という男は本当に飽きさせない。
「あーあ、竜児のたわごとに付き合ってたらお腹すいちゃった。焼肉は諦めるから、鉄板焼きぐらいはしてよね」
「お・ま・え・な・・・」
「さーそうと決まればスーパー狩野屋だ!ほら行くよ、竜児!!」
そう言いつつ差し出した右手・・・不自然じゃないよね?
「・・・なんで手を繋ぐんだ?」
「あんたが飼い主とはぐれないようによ」
突っ込むなバカ!!
それでも、ほらっと、勢いも手伝って強気に振って見せる。
「感謝しなさいよ?」
「・・・」
暫く空いた間に、ちょっと不安になる。
でも・・・。
「・・・学校の奴がいたら離すからな」
きゅ・・・と握られた掌に伝わる暖かさ。
同時に満たされる胸の中。
・・・これはいったいなんなんだろう?
「・・・うん」
多分真っ赤になってる顔を見せないように、ソッポを向いて答える。
「いつか北村とも手、繋げたらいいな」
「・・・うん・・・」
そんな私の胸の裡に気付かず、竜児はそう言って笑った。

思えばあれが・・・私の初恋だったのかもしれない。


END

106 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/18(日) 12:06:00 ID:IuMhwN3K
「あー極楽極楽」
「竜児!背中流してあげる!」
「おう!?」
「ほらあがったあがった!」
「お前…前くらい隠せよ」
「いいじゃない!もうお互い裸の付き合い長いんだし!私だって竜児の裸見たいもん!」
「お前なあ…俺は恥じらう姿が好きなんだよ!」「何よこのエロ犬!覚悟しなさい!」
「覚悟するのはお前だ!」
「望むところよ!」


ギシギシアンアン


「はぁ…はぁ…」
「良かったよ…大河…」「私も…」
「ところでさ…」
「なぁに?」
「なんで風呂場なのにギシギシ鳴るんだ?」
「アパート古いからじゃない?」

107 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/18(日) 12:28:29 ID:IuMhwN3K
>>99
単純に人気投票だから

108 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/18(日) 13:18:26 ID:9RneL/Y3
素晴らしい!GJ!
ギシアンもいいぞ!

109 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/18(日) 13:35:04 ID:IuMhwN3K
「ねぇ竜児」
「なんだ?」
「せっかくアマアマなんだからさ…あれ、お願い」
「おぅ」

「あ…」
「ど、どうだ?」


「あっまーい!おいしーい!」
「なんせ自家製のサツマイモを焼芋にして作ったスウィートポテトだからな。砂糖だって黒糖使ってるし」
「竜児大好き♥また作ってね!」



「どれどれ私たちもいただこうではないかー」
「あ、あたしは別にいいわよダイエット中だし」
「まあまああーみん遠慮せずに」
「しょうがないわね…ムグムグ…って甘っ!甘すぎ!」
「こ、これがたかすきゅんの大河仕様なんだね!」

110 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/18(日) 14:15:11 ID:C6HkNYNI
>>99
なんとなく分かるな。
後期OPの最初、白いコートで俯いてる大河が出た瞬間に胸が疼いちゃったりしてない?w
最萌の方はやっぱりアニメだからじゃないかな?
アニメ後半は8、9巻の内容も省かれてるところが多いし、ラストも萌えっちゃ萌えだしなー

>>101
おー久しぶりですお帰りなさい!作品もGJでしたー!

>>109
アマアマギシアンいいね!

111 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/18(日) 15:54:54 ID:eESHs9KW
>>101
携帯で書いてるのかな?
PCなら当該作品ページを開いてそのURLを貼ればいいのだ

いやな夢を見たわ
http://tigerxdragon.web.fc2.com/index/SS03/150.html

優しい時間
http://tigerxdragon.web.fc2.com/index/SS04/268.html

星の降る夜に
http://tigerxdragon.web.fc2.com/index/SS04/250.html

こころにつもる雪
http://tigerxdragon.web.fc2.com/index/SS04/252.html

暑いんです
http://tigerxdragon.web.fc2.com/index/SS04/257.html

愛してる
http://tigerxdragon.web.fc2.com/index/SS05/291.html

視線の先には・・・
http://tigerxdragon.web.fc2.com/index/SS07/409.html

でよろし



112 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/18(日) 16:01:56 ID:ZuFRmcl0
いろんな人が帰って来て賑わいだしたね

うろ覚えだけど雨の日に竜児がアイロン掛けてる背中に大河が寄りかかってる話が好きだったな

あんな何気ないキュンキュンするのが読みたいな

113 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/18(日) 19:28:07 ID:ANstwqcy
>>110
ただいまw
>>111
おーありがと♪
以前携帯でも貼れるやり方教わったんだけど、綺麗サッパリ忘却。困ったもんだw

しかし改めて確認したら、俺の書きかけの長編、軒並み6スレ目以前なんだなー・・・( ̄〜 ̄;)ウーン
少し考えてみるか・・・。


114 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/18(日) 21:41:57 ID:DXt+ywYl
申し訳ないが、竜児と亜美がコソコソ大河の新しい学校の学祭を見に行く話って何だっけ?
ココじゃ無かったのかな・・・

115 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/18(日) 21:57:35 ID:a7tivIKi
>>114
お宝八犬伝!

9スレ目の
────この世界の誰一人、見たことがないものが、
http://tigerxdragon.web.fc2.com/index/SS09/517.html

だと思われ

116 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/18(日) 22:44:24 ID:a7tivIKi
>>112
これかな?
↑もこれも好きな作品だったので、読み返してみたくなり、探してみた。

12スレ目 
雨の色
http://tigerxdragon.web.fc2.com/index/SS12/618.html

最初の大河の問いかけと、竜児の答えるまでの思考が好きだ!

117 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/19(月) 00:23:05 ID:oDT8J5UV
>>116 紹介いただき、ありがとうございます。

同じ日に2つも自分が過去に書いたものを思い出して貰って嬉しく思います。
書き始めた頃のもので少し恥ずかしいですが、やっぱり嬉しいです。

ありがとうございました。

118 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2009/10/19(月) 06:12:31 ID:T6Z8Aw6Z
お題 「千円」「一緒」「マニア」



「う〜ん……」
 逢坂大河は悩んでいた。
 目の前にはレザー風のチョーカー、端にクリップのついた細長いフェイクファーのアクセサリー、同様の素材で作られた三角形が二つついたカチューシャ……
 有体に言えば『ネコミミ変身セット』なのであった。
 とはいってもマニア向けのような本格的なものではなく、安っぽいパーティグッズなわけだが。
 みのりんと一緒に駅ビルに行って、ゲームコーナーのキャッチャーマシンで見つけて、
 冗談でチャレンジしてみて、惜しい所で失敗して、気がついたら千円突っ込んでゲットしていた。
 みのりんは「似合う似合う、可愛いよ大河」と言ってくれたけれど。
 ちょっと想像してみる。
 放課後の教室、二人きりで――『わ、私を北村君の飼い猫にしてほしいにゃん』
「うああぁぁぁ……」
 思わず身悶え。やっぱり恥ずかし過ぎる。
 それでも上手くいけばいいけれど、そうでなければ、
「変態か、さもなきゃただのバカじゃないの……」
 みのりんに言わせれば「コレで誘惑でもされた日にゃ〜、どんな奴でもイチコロだね!」ということなのだけど。
「うぅ〜ん……」
 と、思考のループを遮る携帯のコール音。
「……なによ」
『なによじゃねえ、メシだぞ大河。早くこねえと冷めちまうぞ』
「わかってるわよ、今行く」
 携帯を閉じて、ふと思いつく。
 竜児で試してみよう。
 ご飯を食べて、やっちゃんが出かけたその後で。
 『イチコロ』ならばそれでよし、そうでなければまた考えればいいのだし。
 笑ったり馬鹿にするようなら……殴る。

 クスクスと笑いながら、大河は高須家に向かう。

 竜児が慌てふためいたりすると面白いのだけど。
 いっそのこと、本物の猫のように振舞ってみせるのも楽しいかもしれない。


 高須竜児がいろんな意味で絶句するまで、あと一万秒。

119 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/19(月) 16:10:41 ID:EM8OoLkI
際どいところで切ったな〜

しかしGJ!

120 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/19(月) 17:24:33 ID:auA+rvpB
GJだw
おつ!

121 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/19(月) 18:45:16 ID:7mMCGCK+
「竜児ぃ、お腹痛い…」
「自業自得だな。欲張り過ぎだ」
「痛いぃ…痛いよぉ…」
「よ、よし大河。俺がさすってやる」
「うん…」
「痛いの痛いの飛んでいけ〜…って、ダメか」
「もっかい…」
「は?」
「もっかいやれっていってんの。ほら」
「うっ…わかったから腹隠せ」
「早くして、痛いの!」
「ああもうわかったから!い、痛いの痛いのぉ〜…」
「ッ〜!」ビクビク
「飛んでいけ〜!!」
「ひゃ〜!!」


マジで胃が痛いっス。



122 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/19(月) 21:25:12 ID:LKjsH2DK
>>118
ネコ耳タイガー……(*´Д`)

>>121
竜児「おう、太田胃散でよけりゃあるぞ」

123 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/19(月) 21:35:53 ID:pUqkDqyg
>>121
「おう、烏賊の骨削ってとっといたのがあるけど、飲むか?」
「へ?何それ。魔女か何かの毒みたいに聞こえるんだけど」
「あほか。ウゾッコツって言って昔から胃酸過多の薬として重宝されてるんだぞ」
「ふーん。竜児って時々年寄り臭いよね」
「うちには常に飲み過ぎてる奴が居るからな。胃腸薬系は詳しくないと生きていけないんだ」

124 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/19(月) 21:39:02 ID:pUqkDqyg
>>118

「にゃはははははは」
「どうしたのみのりん!大丈夫!?」
「『みのりキャット』だにゃん」
「おう。く、櫛枝。すげぇ似合ってると思うけど……続きはWEBでってことか?」

125 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/19(月) 23:29:25 ID:RAD7MKu+
「冬の北国って、一晩外にミカン置いておくと冷凍ミカンになるらしいぞ!」
「……へー」
「さらに!玄関が丁度良く冷蔵庫になるんだ!飲み物なんかキンキンだぞ!」
「ふーん」
「おう?反応が薄いな。わかんねぇか?フロンを使わなくとも冷凍も冷蔵も可能って素晴らしいだろ!いっそ移住してぇくらいだ」
「竜児、北国は化石燃料を燃やさなきゃ生きていけないのよ?それってエコなの?」
「お前と二人で移住すればその辺は問題ない」
「……え?」
「ちょっと練習してみるか!」
「ちょ、えぇ!?」

ギシギシアンアン

「汗かくと、寒いかもな……」
「このアホ犬ぅ!」

126 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/19(月) 23:41:11 ID:GP8R1ITs
>>125
ギシアンがこの世にある限り二人は平和だなw

127 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/20(火) 00:18:59 ID:6eio2Uxo
>>122
これか
ttp://pic2d.20ch.net/p/s/pic2d20ch214442.jpg

128 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/20(火) 10:58:25 ID:KvO33FSa
竜児はコンドームつけようとすると大河が激怒するよ
生でしないと機嫌悪くなるから結局生でする

129 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/20(火) 12:11:22 ID:Zr/PozHu
それはない
竜児は大河のこと大事に思ってるから大河喜ぶ

130 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/21(水) 00:14:11 ID:c7+CJ/ez
>>127
「ななななな、何みてんのよバカ犬!」
「何って……見てのとおりだ。お前のネコミ」
「黙れ!そして腐れ!」
「なんでだよ。お前可愛いじゃねぇか、こういうのも」
「……そう?」
「おう」
「可愛い?」
「おう」
「ほ、ホントに?」
「おう」
「そそれじゃ、ネコミミ付きと無しだったらどっちが好き?」
「そりゃあ、もちろん(以下略


ゴメン、眠すぎて頭がまわんない。初めて見た画像だったぜ……

131 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/21(水) 00:25:21 ID:CAuILw1f
>>130
最萌のやつ

132 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/21(水) 00:45:24 ID:atjJYA92
>>69 です。
感想などなどありがとうございます。

以下に続きとなります「孤独な月ウサギは・・・」を投下します。
7レス程度貼ります。



133 :孤独な月ウサギは太陽の夢を見るか?3 ◆x6jzI2BeLw :2009/10/21(水) 00:46:35 ID:atjJYA92

竜児はグルグルと歩き回っていた。
高須家の居間の中央にあるちゃぶ台の周囲を時計回りに動くその姿はゲージの中に居るハッスルしたハムスターそのもの。
「・・・竜ちゃあん」
出勤支度で部屋から出て来た泰子はさっきから歩き続ける竜児を見てあきれた声を出す。
「そんなに心配しなくても・・・大河ちゃんなら大丈夫だって」
「し、心配なんか・・・してねえ」
心外だと言う口調で竜児は泰子を見る。
「じゃあ、座ったら」
「お、おう」
そう泰子に言われて竜児は座ったものの、落ち着かない様子で貧乏ゆすりを始める。
「大丈夫だって」
よいしょと泰子は竜児の前に座りながら竜児を落ち着かせるようにことさらゆっくりしゃべった。
「なら・・・いいんだけどな・・・指、切ったりしてねえとか考えちまうと・・・」
心配してないと言ったのは嘘だと認めたも同然の竜児。
「竜ちゃんだって・・・最初はひどかったよ」
ちゃぶ台に頬杖をついて泰子は竜児を優しいまなざしで見る。
「お、俺が・・・か?」
「うん・・・調味料間違えたり、ゆで方が足らなくて生煮えだったり・・・やっちゃん、何度もやめさせようかと思った」
台所に立つ母親の後姿に泰子の家事労働を少しでも軽くしてやりたくて、いつの頃からか竜児は少しずつやり方を見て覚えていった。
初めて持った包丁で切った大根を竜児は今も覚えている。
危なっかしい手つきで切った大根は不ぞろいで、泰子がきれいに切ったものと比べてあまりにも見劣りがして・・・幼い竜児は泣きたくなった。
そんな竜児を泰子は温かく見守り、不ぞろいの大根が入った料理を「竜ちゃんが切ってくれた大根、とってもおいしい」と食べてくれたのだった。
「大河ちゃんだって、ちゃんと手順を覚えれば全然、問題ないよ」
・・・だから、最初は失敗してもそれが当たり前だから・・・竜ちゃんは何でも出来ちゃうから、大河ちゃんに頼りなさを感じるかもしれないけどね。
母親らしい気配りを見せて竜児を落ち着かせる。
いつの間にか、竜児のカタカタ言っていた足は動きを止め、漂っていた焦燥感は消え失せていた。
「ちょっとは落ち着いた?」
「・・・お、おう」
決まり悪そうに横を向く竜児に泰子は笑みを漏らす。
「じゃあ、やっちゃんはお仕事に行くから」
着替えらしき衣装が入った手提げバッグを手に泰子は立ち上がる。
「気を付けてな」
「うん、じゃあね」
手を振り、出勤する母親を見送った竜児はそのまま、ごろんと畳の上に寝転ぶ。
高須家の窓越しに大河のマンションが見え、竜児は壁の向こうで孤軍奮闘する大河の様子を思い浮かべる。
・・・皿、落としてねえだろうな。
・・・お湯でやけどしてねえよな。
・・・大河・・・味はどうでもいい・・・無理だけはしないでくれよ。
大河と約束した時間まで・・・後、一時間。
竜児は時計を見て、小さくため息。
結局、じっとしているのに耐えられなくて、台所に竜児は立つ。
早すぎるが、明日のお弁当に使うおかずの下ごしらえをするつもりだった。


134 :孤独な月ウサギは太陽の夢を見るか?3 ◆x6jzI2BeLw :2009/10/21(水) 00:47:45 ID:atjJYA92

「私が作るわ、晩ご飯」
つい一時間ほど前、大河はこう宣言した。
その言葉に竜児は面食らった。
「・・・大河、正気か?」
竜児としては大河の家事レベルは嫌と言うほど熟知しているつもりだった。
小学校の家庭科レベルすら怪しいと竜児は見ている大河の腕前。
卵すら満足に割れない奴がいきなり何を言い出すのかと竜児は大河の判断に疑義を差し挟む。
「任せて、竜児。少しは練習したんだ」
竜児の不安をよそに大河は朝飯前だよと気安く言う。
「ほお・・・大河がそこまで言うなら・・・作ってもらおうじゃないか」
この時点で竜児はあくまでも自分の監督下で大河に夕食作りをさせるつもりだった。
「うん、任せて、おいしいの作るから」
大船に乗った気でいなさいと大河は自らの胸をドンと叩いて出来映えを保証する。
「何を作るんだよ?」
「それは、出来てからのお楽しみ」
・・・着替えも必要でしょ、だから、竜児は家でゆっくり待ってて。
そう言いながら大河は竜児を家から追い出しに掛かった。
「・・・って、大河、おまえ、一人で作る気か?」
「そうよ・・・変?」
「いくらなんでも・・・無茶過ぎないか・・・ここは思い直した方が」
・・・良くないかと竜児に最後まで言わせることなく大河は言い切る。
「本当に・・・大丈夫だから・・・それとも、私、そんなに信用できない?」
いつになく、真剣さをまとい大河は竜児を強く見る。
決意を湛えた大河の表情に竜児はそれ以上、何も言えなくなってしまう。
「・・・分かった」
大河を凝視し続けた竜児は大河の決意が変わらないことを確認すると最終的に折れた。
それでも、細々と注意を与える竜児を大河は分かったからと玄関から力任せに追い出した。




約束時間に少し残して竜児は大河のマンションに来てしまった。
とても時間まで待てなかったのだ。
もういいか? とインターフォン越しに大河に呼びかける竜児。
ちょうど出来たところと、スピーカーから弾む大河の声が聞こえ、オートロックの正面玄関がモーターの音を立てて開く。
竜児はエントランスを通りながら、大河が作ったものへ対する興味が高まるのを感じた。
・・・あいつ、何を作ったんだろう?
もちろん、竜児は大河が手の込んだ物を作っただろうなんて幻想は抱いていない。
それどころか、インスタントのカップ焼きそばとお湯が入ったポットが出て来ても驚かないだけの覚悟はしているつもりだ。
だから、リビングの小テーブルに並んでいる物を見て竜児は目を疑った。
「これ?大河が・・・全部?・・・一人で?」
「もちろん」
どうよと得意気に手を後ろに組んで大河は胸をそらす。
「いや・・・すげえ・・・正直、驚いた」
竜児は素直に思ったことを口にした。
どんな魔法を使ったんだと竜児は大河に聞き出したいくらいだった。
テーブルの上に並ぶ湯気を上げたパスタ、ボウル皿に盛り付けられたサラダ、そして添えられたカップには温かそうなスープが入っていた。
「さ、座って、座って」
大河は竜児に座るように促した。
「お、おう」
心なしか嬉しそうに椅子に腰を下ろす竜児。
そんな竜児を見て大河の顔が輝く。
竜児に続いて椅子に座った大河。


135 :孤独な月ウサギは太陽の夢を見るか?3 ◆x6jzI2BeLw :2009/10/21(水) 00:48:46 ID:atjJYA92

さっきまで大河が後ろに隠すようにしていた左手がテーブルの上に現れる。
「・・・大河、その指」
そのくすり指には救急ばんそうこうが巻かれていた。
「ああ、これ。トマト切ってて、手が滑った」
事も無げに大河は言う。
「だ、大丈夫だったのかよ?」
「全然、へーき。竜児の怪我に比べたらかすり傷以前」
「どれ、見せてみろ」
「大丈夫だから」
大河は慌てたように手を引っ込める。
「そ、そんなことより早く食べよう・・・冷めちゃうとおいしくないよ」
「本当に大丈夫だったんだろうな?」
竜児の念押しに大河は『本当よ』とうなずく。
ここまで大河に言い切られては竜児も納得するしかない。
それに冷めたらおいしくないと言うのはその通りだった。
「じゃ、頂くとするか・・・大河の手料理」
「うん」
はにかむ様に大河は顔をほころばせた。
そして、いざ、食べようとして・・・あれ?みたいな顔をする。
竜児もすぐに気がついた。
「フォーク・・・ねえな」
「あはは、私のドジ・・・持って来る」
失敗と立ち上がろうとする大河を制して、竜児が俺の方が近いとすっと立ち上がる。
「じゃ、お願い・・・」
竜児は大河を背にしてキッチン周りへと足を運び、フォークが入っている収納引き出しを開ける。
並んだ銀色のフォークをふたつ掴んだ時、竜児はダストボックスの投入口が半開きになっているのに気がついた。
無意識の内に閉じようとして捨てられたごみが竜児の目に入る。
何となくそれを手にした竜児・・・それは「簡単、レンジで3分」・・・そんなキャッチコピーが印されたパスタの写真が載った食品の外装パッケージだった。
・・・ふ、まあ、こんなものか。
魔法の種明かしを見つけて竜児は納得した。
けれどそれは決して不愉快なものではなく、ましてや騙されたとかそんな感じではなく、それが竜児には大河が頑張った証拠みたいに見えたのだ。
以前の大河なら、悪びれないで皿に盛り付けもせず、そのまま容器ごと出しただろうな・・・さっさとチンして食えとか言って。
おかしさが込み上げる竜児はそのごみをダストボックスの奥へ押し込もうとして、不意に笑みを引っ込めた。
新たな発見をしてしまったからだ。
・・・これ・・・血だよな?
赤く変色したティッシュの残骸がいくつも丸めて捨てられていた・・・。
・・・あの、バカ。
竜児は泣きたい気分があふれてくるのを抑えきれない。
・・・全然、大丈夫じゃねえだろう。

「・・・竜児・・・フォーク見つからないの?」
背後で大河が竜児を呼ぶ声がする。
「・・・いや、あった」
ことさら大きく音を立ててフォークの入っていた引き出しを閉めながら、竜児はごみを見つからないように奥へ押し込み、ダストボックスの投入口をそっと閉めた。


136 :孤独な月ウサギは太陽の夢を見るか?3 ◆x6jzI2BeLw :2009/10/21(水) 00:50:24 ID:atjJYA92

大河は竜児が料理を口に運ぶたび、表情をくるくると変えた。
竜児の口元をじっと見つめ、その食べる一挙一動を見逃すまいとする。
竜児が何とも無い顔で次のものを口に運ぶとほっとしたような顔をして、自分もフォークを使い始める大河。
「味・・・変じゃない?」
それでもしばらくしておずおずと言う感じで大河は竜児に感想を求める。
「いや、欲を言えばサラダのしめ方が足りねえくらいだ・・・」
そう言いながら竜児は大河にサラダの作り方をレクチャーしてゆく。
「・・・と、やれば、うまいサラダが出来る」
「そうなんだ・・・料理の本、買ってきて見ながらやったんだけど・・・そこまで書いてなかった」
「だろうな。今度、ゆっくり教えてやる」
「・・・うん。お願い・・・全然、駄目だな、私」
少し肩を落とし気味になる大河。
「初めてにしちゃ、上出来だよ・・・こんだけ出来れば文句はねえ」
しおらしい大河につい竜児は甘い点数を付けてしまう。
「本当?・・・竜児」
「ああ、俺が言うんだから間違いはねえ」
実際のところ、竜児的には及第点に程遠いものだったけれど、目の前で喜ぶ大河の笑顔の前にそんなことは些細なことでしかなかった。

「ごちそうさま」
全て、食べ終えて大河は物足りなさそうだった。
日頃、あれだけ食べる奴がこんだけじゃ足りねえよな、やっぱ。
「もう少し、食べられるか?」
一応、竜児は大河の意向を確認する。
「え?・・・それは、その・・・食べようと思えば・・・」
はっきり、食べたいと言えばいいのに、今日の大河は遠慮がちだ。
「まあ、無理にとは言わねえけどよ」
そう言うと竜児はタッパーをいくつか、テーブルの上に並べた。
「手持ち無沙汰で、つい作っちまった・・・明日のお弁当と同じ物だけどさ」
炊き込みご飯に玉子焼き、たこさんウィンナーが並んだ定番とも言うべきお弁当ネタがタッパーから披露される。
並べられた食べ物をじっと見つめていた大河の瞳が急に潤む。
「・・・お、おい」
竜児は慌てた。
「ど、どうしたんだよ?」
「・・・作ったの?・・・竜児」
「ああ、それがどうかしたか」
大河はかすれ気味な声で言う。
・・・任せてって言ったのに・・・。
・・・竜児はゆっくりしててくれれば良かったのに・・・。
・・・なんでそんなことしちゃうの・・・。
なんか良かれと思ってしたことがかえって大河を傷つけたのかもしれないとその時、竜児は気がついた。
「・・・そんなつもりじゃなかったんだ・・・何にもしてないと落ち着かなくてさ、つい」
言い訳じみた弁解を竜児はこもごもと口にする。
必死にあれこれ訴える竜児に大河の心の水面に立ったさざ波は収まり、元の滑らかさを取り戻す。
「・・・ん、竜児に悪気が無いのはわかる・・・変なこと言って悪かったわ」
「大河の気持ち、考えてやれなかった俺もバカだ・・・それは謝っておく。でも、作った食べ物には罪はねえぜ」
・・・だから、遠慮せずに食べろ。
改めて竜児は大河に勧めた。

137 :孤独な月ウサギは太陽の夢を見るか?3 ◆x6jzI2BeLw :2009/10/21(水) 00:51:49 ID:atjJYA92

「せ、せっかく作ってくれたんだから、食べないと悪いわよね」
「おう、そうだ、どんどん食べろ」
炊き込みご飯が詰まったタッパーを手にした大河はフォークを入れかけて竜児を一度見る。
「どうした?」
「・・・お皿」
「皿?」
「そうよ、アンタのその空いてるお皿、貸しなさいよ」
「・・・何するんだ?」
「いいから」
大河は竜児からお皿を受け取ると、タッパーの中身を半分、移し変えた。
「はい、半分、アンタ、食べなさい」
「俺は・・・いい。大河が全部食えよ」
「・・・竜児だって物足りないでしょ・・・これだけじゃ・・・本当はもっと作るつもりだったんだけど・・・その、いろいろあって・・・」
もごもごと口を濁らせながら、大河が落とす視線の先はくすり指の絆創膏。
「わかった・・・半分づつ、食おうぜ」
そう言うと竜児はお皿に盛られた炊き込みご飯の山をフォークで崩し始めた。


いつもの癖で食べ終えた食器を流しへ持って行く竜児。
そこまでならなんら普段と変わらないが、腕まくりした大河が竜児の後を付いて来る。
いぶかしげな竜児の視線に大河はお皿も洗うと言い出した。
「どうせなら最後までやりたいじゃない」
「おま、手を切ってるんだから水仕事は控えとけ」
「竜児だって怪我してる」
「俺は手じゃないからいいんだ」
「そんなのズルイ」
「ズルイとかいう問題じゃねえ」
堂々巡りの議論の末、分業で後片付けをすることになった。
キッチンの流しに並んで立つ竜児と大河。
「ほい、大河」
「うん、竜児」
竜児はシンクにつけた汚れたお皿を手際よく洗って行き、洗い終えた皿を隣の大河へと手渡す。
受け取った大河は乾いた布巾で皿を拭き、食器立てに置く。
こんな何でもないことがふたりですると、どうしてこんなにも楽しい作業になるのかと竜児は思う。
大河も竜児と同じ思いなのか、嬉々としてお皿拭きに取り組んでいた。
「ほい、次」
「任せて、竜児」
「落とすなよ」
「大丈夫・・・って」
そう言いながら受け損ねてカップを取り落とす大河。
「おう!」
「わっ!」
床めがけて落下するカップは床の手前、数センチのところで空中静止する。
竜児と大河がほぼ同時にしゃがみ込んでカップに手を差し伸べたせいだった。
タイミング的には大河が一番早かったのだが、上からカップ、大河の手、竜児の手と並び、逢坂家に瞬間的に生じたグランドクロス。
「・・・あ」
結果的に大河の手を握る形になった竜児。
おまけにしゃがみ込んだ際に顔をつき合わせる姿勢になった。
竜児と大河はお互いの鼻先まで百科事典一冊分の距離で見つめ合う。
静止画像みたいに動きが止まり、それから竜児と大河はお互いに目をぱちくりと瞬いた。

138 :孤独な月ウサギは太陽の夢を見るか?3 ◆x6jzI2BeLw :2009/10/21(水) 00:52:55 ID:atjJYA92

「うわ!」
「ごめ・・・!」
次の瞬間、この状況を回避しようと動いたふたりはバランスを崩し、激しくおでこ同士をぶつける。
火花か星が記号のようにふたりの周りを飛び交う。
そのまま竜児も大河もおでこを押さえ、その場に尻餅を付いて床に座り込んだ。
「竜児〜ぃ・・・アンタ、石頭・・・てて」
痛みに顔をしかめながら大河は竜児に文句を言う。
「そういう大河だって」
無茶苦茶、頭、固いぞと竜児も言い返す。
「失礼ね・・・そんなに固くない」
「じゃあ、もう一度試すか?」
「もう、十分・・・竜児は?」
「俺もだ」
そのまま、お腹の底から笑いが込み上げて来て大笑いを始める大河と竜児。

竜児は笑い転げる大河を見ながら、言い知れぬ充足感を感じていた。




「大河」
「何?」
「お前のとこ、一輪挿しか、小さな花瓶無かったか?」
「さあ、見たこと無い。花なんて飾らないから」
「・・・だろうな、俺も見たことねえ」
逢坂家の備品管理人を自称する竜児をして知らないのだから、恐らく無いのだろう。
「何に使うのよ? そんなもの」
「ああ、お月見の支度するんだ。すすきを飾るのにあるといいかなと思ってさ」
「月見?」
「するんだろう? そのために大河の家で飯、食ったんだろが」
「・・・そういうことになってたっけ?」
「もう忘れたのか?」
ほらと竜児はリビングのカーテンを少し開ける。
窓の外に淡く昇る秋の月が見えた。
「・・・・・・忘れてた」
「団子も買っただろ」
「うん、やろう、お月見」
手回し良く、竜児は小さな台の上に小皿を置き、団子を積み上げて飾り立てていた。
「あとは、すすきを飾れば完成なんだが・・・」
・・・ねえのなら仕方ないか。
竜児があきらめかけた時、大河が「あっ」と声を上げる。
「もしかしたら・・・あそこにあるかも」
「どこだよ?」
・・・トランクルーム。
大河の意外な回答だった。



139 :孤独な月ウサギは太陽の夢を見るか?3 ◆x6jzI2BeLw :2009/10/21(水) 00:53:53 ID:atjJYA92

「こんなとこあったんだな、大河の家」
「うん・・・私も引っ越して来た時以来、来てない」
逢坂家の玄関の反対側、非常階段への通路脇にある小さな扉。
小さな物置くらいの小スペースが扉の向こうに広がっていた。
ほこりが舞い、雑然と詰め込まれた荷物が散乱する世界が竜児を出迎える。
「片付け甲斐がありそうなところだな、おい」
思わぬお宝を見つけたみたいに竜児の声が弾む。
整理して、掃除して・・・2時間は楽しめそうだと竜児はホクホク顔。
「・・・キモイ、竜児」
そんな竜児を見て大河はポツリと言い捨てる。
「・・・トリップしてる場合じゃねえ・・・探さねえと」
大河の痛い視線に竜児は我に返ると、手当たり次第に探し始めた。
探し始めて数分後、竜児の鋭い勘は見事に目的のブツを見つけ出していた。
「あったぜ」
「捜索犬、竜児号のお手柄てとこね」
「・・・災害救助犬か? 俺は」
大きな箱の上に無造作に置かれていたダンボールの中から竜児は一輪挿しを見つけたのだが、その下に置かれた大きな箱に竜児は興味を覚えた。
「しかし、でかい箱だな・・・何が入ってるんだ?」
竜児が箱のふたに手を掛けた刹那・・・。
「あああああああああ!!」
大河の大きな叫び声。
竜児は思わず、ふたから手を放す。
「・・・何だよ、びっくりするじゃねえか」
「・・・こんなとこにあったんだ・・・てっきり捨てたかと思ったのに・・・」
ひとり言のような大河のつぶやき。
「何が入ってるんだ? 見られちゃまずいもんなら見ねえけどよ」
「まずくない・・・竜児、空けてみて」
「お、おう」
竜児が大きな箱のふたを取ると・・・中には小分けされた小さな箱が整然と並んでいた。
「何なんだよ? これ」
それに答えず、大河は無言で中の箱をひとつ取り出し・・・上ふたをそっと外した。

中から出て来たのは・・・竜児の予想を大きく違える物だった。



140 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/21(水) 00:56:22 ID:atjJYA92
以上です。
続きはまた、近日中にということで・・・。

まあ、インスタントならこの頃の大河でも作れるでしょうから。
こんな感じに考えてみました。
盛り付けたりしてるところが、大河の成長の証かも。

141 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/21(水) 01:29:13 ID:BeUJcUNl
ぐわぁ〜!!
何が入ってたんだ!?気になる所で切りやがって…
この野郎!!GJだぜ!!w

142 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/21(水) 02:13:57 ID:Ly3xErId
>>140
ちょー、気になって、眠れないよ。
小さな箱ってなんだろう? 想像付かない。
そして、相変わらずGJでした。2人の自然な会話が凄くいい。
あとやっちゃんのあったかい雰囲気も。
大河がんばったw

143 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/21(水) 02:14:44 ID:f00NnHg5
誠か

144 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/21(水) 02:18:30 ID:N+GcMYqk
うぉぉぉ、箱が、きになるZE!!
GJ

145 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/21(水) 03:13:58 ID:J4jt0ztU
箱の中身がアレだとすると
まとめ人さんのつけたタイトルが一捻りあるけど素晴らしい

146 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/21(水) 12:37:29 ID:c7+CJ/ez
>>140
うおぉおお!
気になるぞぉおおおお!
GJ!

147 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/21(水) 12:49:17 ID:FQabG+UW
http://may.2chan.net/b/res/83612039.htm

148 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/21(水) 13:13:29 ID:/g16W7YF
>>147
最萌トーナメント優勝記念のやつを読んで萌え死んだ
ファミレスでエロトークすんなwwww

149 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2009/10/22(木) 04:09:59 ID:VrKdPFDi
お題 「軽々しく」「地獄」「目」



「!」
 大河の箸の動きが止まる。
 目を白黒させて胸を叩く。
 喉に詰まらせたな……ドジめ。
「ほら大河、水だ」
 ごっごっごっごっごっ。
 手渡されたコップの中身を飲み干し、ぷはーっと息をつく大河。
「……死ぬかと思ったわ」
「慌てて食うからだ。もうちょっと落ち着いてだな……」
「ひっく」
 竜児の言葉を遮って、大河の喉から漏れる音。
「……大河?」
「あらやだ……ひっく」
 口元を押さえる大河。
 しゃっくり、というやつである。
「あー……」
 竜児はコップに水を注ぎ、その上に箸を一本渡す。
「大河、この水をだな、箸の向こうから飲んでみろ」
「ひっく……はあ?何よそれ?……ひっく」
「昔から伝わるしゃっくりの治し方だ」
「ひっく、箸の向こうって……ひっく、どうすればいいのよ、ひっく」
「だからだな……コップに覆い被さるようにして、頭を逆さに向けて……」
「ひっく……えっと……ひっく……こ、こう?」
「おう、そのままゆっくり……っておいっ!」
「んぶっ!」
 止める暇もあればこそ。ぐいっと勢いよく傾けられたコップから溢れた水が、大河の鼻から額へと。
「げほっ!ひっく!えほっ!鼻に入った!えほっ!げほっ!ひっく!」
「あーあーあー、何やってるんだよお前は……」
 慌てて大河の顔と卓袱台、畳を拭く竜児。
 げほげほひっくとしばらく苦しそうにしていた大河だが、やがて竜児を恨みがましい目で見つめる。
「ひっく……うそつき」
「嘘じゃねえ、大河がドジなだけだ」
「あー、もういいわよ、ひっく、放っておけばそのうち治るでしょ、ひっく」


150 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2009/10/22(木) 04:12:50 ID:VrKdPFDi
 器用にもしゃっくりを続けたままいつもと同じペースで食事を終え、大河はテレビを見ながらごろ寝状態。
 しかし、竜児が片付けをしてる間もずっとひっくひっくと言いつづけ、今でも止まる気配は全く無し。
 別にうるさいわけでもないが、やはり竜児としては気になる。
(うーん……どうしたもんだかなあ……)
 と、頭をよぎる一つのアイデアが。
(いやいや、そんな軽々しくは……)
 大河を見れば、やっぱり不機嫌というか、少し苦しそうで。
(……まあ、嘘ってわけじゃねえし……意味が少し違うだけで……)

「なあ大河、ちょっといいか?」
「何よ……ひっく」
 身を起こした大河の目を竜児はじっと見つめ、
「…………す、好きだ」
 ……
 …………
 ………………
「な、なななんな、あ、ああんた、なななにを、だって、竜児、みのりんが、でも」
 真っ赤になって慌てる大河を、竜児は真剣な表情で見つめたままで。
「……で、でも……竜児が、そうなら……その……私……」
「おう、しゃっくり止まったな」
「……え?」
「いやー、古典的だけど効くもんなんだな、びっくりさせるのって」
「ふぅ〜ん……びっくり……ねえ……」
 ゆらり、とその身にオーラを纏わせて立ち上がる大河。
「ほ、ほら、おかげでしゃっくり治っただろ」
 思わず後ずさる竜児にゆっくりと歩み寄って。
「うん、ありがと竜児……で、それはそれとして……」
 その顔には凄絶な笑みを浮かべて。
「地獄へ行く覚悟はできたかしら?」

151 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/22(木) 08:39:16 ID:IqxwLLOS
竜児・・・無茶しやがって・・・・・

152 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/22(木) 12:31:07 ID:njX9usnm
>>150
やるな竜児w
アーメン

153 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/23(金) 00:32:50 ID:QvVpPK6x
>>150
竜児GJ!!

154 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/23(金) 07:43:34 ID:Un7SiH26
>>150
あははは。竜児、なぜそこまで命がけで大河の世話をしてるんだ(w

155 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/24(土) 08:18:38 ID:uC3/3c4/
24時間も書き込みないとは,これいかにぃ〜(´□`)

156 : ◆VW.RtTKf1E :2009/10/24(土) 12:00:21 ID:usXAYKlH
穏やかな休日に、こっそり投下。
7レスほど使わせていただきます。

157 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2009/10/24(土) 12:04:07 ID:usXAYKlH

前スレ >406 続き

「で、ヤクザ対策って、これかよ…」
翌土曜日の夕方、ライトバンの荷室に積まれたものを見て、竜児は顔が引きつるのを抑えられなかった。

そこには、どこかで見たような大きな茶色のクマの着ぐるみがドーンと鎮座していたのだ。
サンタクロースの帽子、ベスト、手袋付きで。

「万一ヤクザがどこかにいたとしても、これ着ていけば、高須君だっていうのがバレないでしょ?
今日はこの恰好をしていても誰も怪しまないし、バッチリだよ!」
実乃梨は竜児に向かって、また親指をグッと突き出して見せる。

「まぁ、確かに姿を隠すには申し分ないけど… まさか、またこれを着ることになるとはなぁ… 
しかし、良くあったな。高2ん時のとそっくりじゃねぇか?」
「春田君が探して来てくれたんだよ」
「え? 春田が?」
「うん。あ、悪いけど、すぐ出発するから車の中で着替えてくれる? 走りながら話すよ。
昨日大河に話したことも伝えなきゃいけないし。着替えを覗いたりしないから、安心して!」
「あ、あぁ…」

車の中で竜児が着替えている間、実乃梨は、春田が彼女の母校の美大でこの着ぐるみを見つけて、
今日わざわざ大橋から車で運んでくれたことを話した。

「大橋から? 半日はかかるだろうに…」
「うん。でもおっきくて宅配便じゃ送れないから、彼女さんとのデート代わりだーってさ、嬉しいね。
これで仕掛けは揃ったよ。大河もこのクマを見たら、きっとあの日のことがフラッシュバックするよ」
「…フラッシュバックって、トラウマやPTSDじゃ無いんだから、それを言うならプレイバックだろ? 
あの時、これ見て凄く喜んでくれたんだよな。あいつ…」
「…その後の大河にとっては、トラウマだったかも知れないよ…」
実乃梨はハンドルを片手で操りながら、自分の胸の前でもう一方の手をギュッと固く握りしめた…

* * * * *

実乃梨から教わった通りに、路地の角を2回曲がって、大河が住んでいるアパートにたどり着く。
着ぐるみの歩きにくい足で、外階段をよたよたと上がりながら、ついさっき、車を降りた時の
実乃梨の様子を思い返していた。

「高須君、頼んだよ」
運転席から降りた実乃梨はそう言って、きっちり90度、直角のおじぎで見送ってくれた。
自分は大河のところに一緒に行かず、周囲の見張りを兼ねて、車の中で待機しているという。

結局、大河の“トラウマ”が何だったのか、実乃梨は答えてくれなかった。
だが、あの頃の自分自身と大河、実乃梨、亜美、北村、それぞれの言動を考えあわせると、
竜児の胸の中に積み重なって見えてくるものがある。
「また俺だけ、何も気付いていなかったって訳か…」

外廊下を進み、奥の部屋の前に着く。戸口に表札や呼鈴はなく、ひっそりとしているが、
灯りが点いているのが横の窓から見える。
竜児は迷い無く、玄関のドアを2回強くノックした。

少し間があってから、ドア越しに人の気配が伝わって来た。ドアが目の前で静かに薄く開かれる。
無意識に身に付いた視線の高さは、大河の大きな瞳の位置とぴったり重なった。
一瞬、息を飲むような気配があり、ドアが閉じられてしまう。

「待っ…」
慌てて手を出そうとしたが、すぐにチェーンロックを外す音が聞こえてきた。
ゆっくりと再びドアが開かれていき、パーカーとスエットパンツを着た大河の姿が現われる。


158 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2009/10/24(土) 12:06:33 ID:usXAYKlH

「大河、俺だ。竜児だ」
着ぐるみの中から、くぐもった声で告げた。
「分かってる。入るんならさっさと入れ」
怒気を含んだ大河の声が耳に届く。
「お、おう…」

竜児は玄関の中に入ると後ろ手でドアを閉め、クマの頭を取る。
大河は竜児の顔をじかに見ても、顔色ひとつ変えず、ただ竜児を見上げている。
クマの頭を足元に置きながら、竜児は大河の部屋を見回した。

殺風景な部屋だった。
テーブル以外に家具らしい物は無い。異様なのは、本がうずたかく積まれ、いくつもの山ができて
いることだった。いずれも法律関係の専門書のようだ。

大河に視線を戻すと、前にバーで会った時と変わらない警戒感を浮かべた瞳で、相変わらず
竜児の顔をじっと見ていた。まるで視線を逸らすと負けとでも思っているかのように。

「たい…」
「何しにきた。そんな恰好で」
「いきなりケンカ腰かよ。落ち着けよ」
「言ったでしょ。アンタには関係ないんだから、何もしなくていい。ていうか、するな」

その声は冷たく、平板だった。
クマの着ぐるみを着ていったからって、前のように喜んで抱きついてきてくれるとは思っていなかった。
だが、これほどまでに変わらないとは…

「おい… 勝手なこと言うなよ。関係無いなんて言うなよな? 竜虎は並び立つんだろ?」
「今の私にはそんな資格無いの」
「資格ってなんだよ、馬鹿じゃねぇのか?」

ダメだ。冷静にならなきゃ。2人きりになったら、どうしてキツく言ってしまうんだ…
喧嘩しにきたんじゃねぇだろ… なんとか、なんとか話をしなければ…

「はぁ? あたしが頑張ってるのに、アンタそんなことしか言えないの?」
「お前だって、昔、泰子が貧血で倒れて、俺が落ち込んだ時、励ましてくれただろ!
あの時、お前が俺に触れてくれなかったら、壊れてたんだぞ。俺はお前に救われたんだ。
お前が窮地の時に、力になろうとして何が悪い?」

「でもあの時、アンタは自力で這い上がってきた。負けなかった、飲み込まれなかった。
だから私も自分で立ち上がらなきゃいけないの。どうして分かってくれないの? 
どうして頑張らせてくれないの? そうでなきゃ、私は竜児の横には立てない。
それに今、私には守るべき人がいる。ママと弟。この2人は私が守るの、守りたいの。
ちょっとそこ、どいて!」

大河は竜児を軽く横に押しのけて手を伸ばすと、ドアを僅かに開けて竜児の前に戻った。

こいつ、俺を追い出すつもりか? 何か無いのか、話し合うきっかけは?

「なんで、たった1人でやろうとするんだよ、俺にもやらせてくれよ、一緒に戦いたいんだよ」
「アンタに迷惑を掛けるわけにはいかないでしょ! 分かってよ! 帰ってよ! そして何もしないで!」
「昨日櫛枝と、俺と話すって約束したろ? まだ何も話してねぇじゃねぇか!」
「もう話した。何もしないで、それだけ」

そう言うと大河は、全身全霊の力で竜児の身体を着ぐるみの上から押し、ドアの外へ追い出そうとした。

「おまっ、ふっざけん…」
竜児は必死に押し返しながら、同じ状況、あのクリスマスイブの夜を思い出していた。
あの時より気持ちは通じ合っているはずなのに、何故? なぜ届かない? 


159 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2009/10/24(土) 12:08:50 ID:usXAYKlH

「アンタはここにいちゃいけない、帰って、帰ってよ!」

だめだ……
こうなったら、大河は差し出された手を決して掴まない。また大河が離れていく。
そこにいるのに届かない。無理矢理抱き締めても、きっと激しく拒絶するだろう。

結局、この前と同じなのか…? 

………。

違う… 同じじゃない。

大河を見た。
その頬、そして瞳の周りがうっすら赤みを帯びている。
櫛枝の言葉は届いている。きっとこのクマの意味も分かっている。そして今日はクリスマスイブ。
大河は今、決して平板じゃない。そこに迷いが、熱が、行き場を無くした心が見える。
気持ちを必死で押さえつけようともがいている。

力で押し返すんじゃない。寄り添って、道を指し示すんだ。
大河に気付かせなければだめだ。考えさせなければだめだ。
大河の心の底にある想いを。俺と大河がどういう人間かを。

どうすればいい? 大河の進むべき方向を示す灯りは? 道標はなんだ?


押し合いながら必死に考え続けていたその時、視界の中にある1冊の薄い本が目に留まった。
うずたかく積み上げられた法律書の茶色や灰色のくすんだ本の中で、趣の異なる黒い光沢の装丁が見える。
背表紙にはこう書かれていた… “星をさがす本” 

その瞬間、脳裏にイルミネーションに囲まれたクリスマスイブの光景が次々と浮かんで来た。
回転寿司で発した大河のたわいもない言葉。 指輪をプレゼントする前、小さな手のひらを一杯に広げ、
夕暮れの空に向かって、真っすぐ右手を伸ばす大河の姿が鮮やかに甦った。


竜児は、押し合っていた手をゆっくりと下ろした。


160 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2009/10/24(土) 12:10:33 ID:usXAYKlH

「分かったよ大河。お前の気持ち。頑張ってるんだもんな、自分でしっかりやろうとしてるんだもんな。
押し付けちゃ、いけないよな…」
「…………」
「俺はこれで帰るよ。でも大河、その前に少し別の話をしていいか?」
「な、なによ」

竜児は自分でドアを大きく開き、玄関の外に出る。そして廊下から夜空を見上げた後、
部屋の中にいる大河に振り返って言った。

「なぁ大河。お前、夜にさ、空見上げて、星に話しかける癖があるんじゃねぇか?」

「えっ……? な、なんで、わ、わかるの……」
思いもよらない言葉で意表を突かれた大河は、つい素の顔を見せ、その声は消え入るように
小さくなっていった。

「そうか、奇遇だな。実は俺もそうなんだ。夜空を見上げて、星に向かって、いやお前に向かって
話しかけてる。大河がお母さんの所に行ってから、ずっと癖になってるんだ」

「…竜児も…… なんだ……」

「あのさ、大河。こんな風に、互いに伝えあってなくても俺たちは同じことをしている。
どんなに離れていたって、環境が違ったって、きっと同じことを考え、同じように感じているんだ。
資格とか、立場とか、そんなこと言わなくても、もう俺たちは同じことをしてる。それは変わらない。
永遠に。分かるよな、大河」

「………………」

そして、竜児は夜空に向かって、大きく広げた右手をまっすぐ伸ばしながら、言った。
「前に会った時、言わなかったけど、俺、大学から今もずっと、ロケットを作る勉強をしてるんだ。
まだおもちゃみたいなものしかできないけど、でもいつか必ず宇宙に届くものを作る。
絶対あきらめずにずっと手を伸ばし続ける。そこに届けば、大河に会える。そんな気がしたんだ。
大河も今、頑張って手を伸ばしてるんだよな」

「……っ!!」
大河が息を飲む音が聞こえる。

「だから大河、どんな時でもやっぱり俺たちは一緒なんだ。離れていても近くにいても、同じなんだ。
大河なら分かるだろ。それは誰にも変えられない、変わらないことなんだ。
だって俺たちはそういう風にできている。それを忘れないでいてくれ、大河。 
言いたかったのはそれだけだ。じゃあ、元気でいろよな。またいつか機会があったら話そうぜ。
気が向いたらいつでも連絡くれよな」


竜児はクマの頭を拾い上げると、外廊下を進み、階段をゆっくりと降りていった。



161 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2009/10/24(土) 12:12:28 ID:usXAYKlH

* * * * *

大河は玄関のドアをあけたまま、凍り付いたように動かなくなっていた。


思い通りに竜児は帰った。
思い通り? 私は竜児に帰って欲しかったの?

『資格とか立場とか関係ねぇ』
『同じことをしている』 
『変わらないことなんだ』 
何それ? 私、こんなに頑張ってるのに、気安く変わらないなんて言わないでよ。

『俺、ロケット作ってるんだ… 宇宙に届いたら、大河に会えるから…』
全然聞いてない。いつの間にそんな凄いことやってたの? 
いつも肝心なこと、言ってくれないんだから…

『大河も手を伸ばしてるんだよな』
当たり前でしょ? このクソ馬鹿鈍犬。
言わなくても分かるでしょ? 何のためだと思ってるの? 
アンタに、竜児に会いたいからに決まってるじゃない!

「離れていても、一緒… 近くにいても、いっしょ… 」
気がつくと、私は竜児の言葉を声に出して繰り返していた。

「本当? 竜児、ホントなの? 同じなの?」


……………。


だったら… だったら… 傍にいたい 近くで、すぐ近くで… いつも竜児を感じていたい。
だって、私と竜児は2人で1つなんだから……


……ああ、やっぱ駄目だ、私…… 

また同じ過ちを繰り返そうとしている。
クマの着ぐるみを見て思い出した。あのクリスマスイブの日もそうだった。
手を離しちゃいけなかったのに、何が一番大切なのか気づかず、竜児をみのりんの元に行かせてしまった。
あの後、自分の行為をどれだけ悔んだことか。

そして今、また、竜児を行かせてしまった…

このまま、竜児と離れるなんて…… 


イヤ… だ。



162 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2009/10/24(土) 12:18:59 ID:usXAYKlH

「りゅーーーじぃぃぃぃーーーっっっ!!!」

ありったけの声で叫ぶと、裸足のまま、外廊下を駆け出した。転げるように鉄の階段を駆け下り、
アパートの敷地から道路に飛び出した。

右を見る。
左を見る。
竜児の姿は無い。

思わず、己の馬鹿さ加減を呪った。
なんて私は愚かなんだろう。ちっとも成長していない。
離れている時は耐えられた。バーで見つかった時も何も感じないフリで気持ちを押さえ込んだ。

だけど、たった今、竜児は心を見せてくれた。
互いの結びつきの強さ、存在の大きさ。 たった今、心の中深く、新たに刻みこまれた。

…このまま竜児がいなくなったら、私はきっと駄目になる。

竜児と心が通じ合ってから、ずっと考えていたことがある。
もし、心に、魂に、生まれてくる場所があるのなら、きっと私と竜児は同じ胚から分かれたんだ。
それぞれ異なる部分を持って、2つの肉体に分かれたけど、元は1つだったんだ。
だから出会った時、お互いをすんなり受け入れることができた。
距離が近すぎて、しっくりし過ぎて、見失なったこともあったけれど、やがてぴったりと重なった。
そして気づくことができた。私達は2人で1つだと。

竜児が初めて「大河」と名前を読んでくれた時、震える程、嬉しかった。
一緒に電柱を蹴り合った時は、その行為に懐かしさすら感じていた。
いや、この間の夢。ベッドに寝かされて、竜児の匂いに包まれた時、心の奥底で気付いていた。
だから出会ったばかりの人に甘えられた。安心できた。何でも話せた。いきなり呼び捨てにできた。

『俺たちはそういう風にできている』
そう、分かっている。竜児に言われなくても知ってる。

竜児のことが大切だから、離れる道を選んだ。竜児や、やっちゃんに迷惑が掛かることを
脅かされることを何よりも避けたかった。
竜児に会うまで、周りのせいにしてきた自分を変えようと思った。
逃げないで、自分で始末を付けようと思ってきた。それは誤りじゃない。
でも前提が違うんだ。スタート地点が間違っていたんだ。やり方が違っていたんだ。

1つの心を2つに引き裂いて、まともに生きていられるはずなんかない。
1人じゃダメ。竜児が、竜児がいないとだめなんだ。
だから、ここで泣いてたりなんかしない、今度は竜児を見つけるの。

そして、竜児… 私の傍にいて… 竜児の… 傍に… いさせてよ…


「りゅーじぃーーーーっっ!!!」

ボフッ。
路地の角を曲がった瞬間、柔らかな茶色の壁にぶつかって、尻もちをついた。

「えっ!! なに?」
見上げると、クマの着ぐるみを来た竜児が立っていた。

「来てくれたな、大河。信じてた。ありがとう」

竜児はしゃがみながら、両手で私の肩を掴み、そっと優しく抱き寄せてくれた。
竜児の匂いがする。マフラーじゃない、ほんものの竜児の匂い…


163 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2009/10/24(土) 12:21:34 ID:usXAYKlH

「竜児、りゅうじ、りゅうじぃ…」
「ああ、分かってる。分かってるぞ、大河。ほらケガは無いか?、お前、裸足で大丈夫か?
どこか切ったりしてないか?」
「あ、アンタこそ、ヤクザに襲われたって」
「襲われたってほどじゃないが、ちょっとヤバかった。でも何ともないぞ。泰子も安全だ」
「弱いくせに、馬鹿、馬鹿馬鹿馬鹿、この大馬鹿野郎! 本当に、死ぬほど心配だったんだからね」
そういうと大河は小さな拳を握りしめ、竜児の胸をポカポカと叩き始めた。

「し、死なれちゃ困るな…」
「うるさい、うるさい、うるさい。私はもうアンタの傍から絶対離れない、そしてアンタを誰にも
傷付けさせないから、だから竜児、ヤクザのところに乗り込むなんて、絶対、絶対しないでー!!」
そう叫ぶと、大河は堰が切れたように泣き声をあげ、竜児の胸をいつまでも叩き続けるのだった…


* * * * *

「あーあ、あいつら、ホント手間掛かるよね」
「おっ、あーみん、間に合ったんだ。すぐわかった? ここ」
「空港から直行。ねぇ100m四方に聞こえてんじゃないの? さっきの“りゅーじー”って。
ヤクザに気づかれたりしてないよね?」
「大丈夫だと思う。さっき一回りしたけど、不審な車、人物は見当たらなかったよ」
「あんたスパイもできんの?」
「おうよ。日本代表女子ソフトボールの切り込み隊長といえば、このみのりん様のことだいっ」
「イヤ、話が噛み合ってねぇし」

2人の視線の先では、竜児に手を引かれた大河がゆっくりと立ち上がり、手をつないだまま、
アパートへの角を曲がっていった。やがて階段を上っていく音、玄関のドアを閉じる音が聞こえてきた。

「さて、あーみん、我々は退散しますか!」
「そうね。あんだけ大声出せるんなら、元気なんでしょ、タイガーも。ところでねぇ、私達ってさ、
日本じゃ結構、有名人だよね」
「まぁ、私はともかく、あーみんはすごい有名人だよね」
「あんただって取材受けまくってんじゃん。なんだよ“女イチロー”って。
でさ、なんでそんな2人がイブの夜に震えながら、人の恋路を覗き見してなきゃいけないんだっつうのっ、
クッシュン! あー、日本は寒いったらありゃしない!」
「お、あーみん風邪引くぜ。 よーし、じゃあ2人で飲みにいこう! どうだい熱燗でキューッと!」
「オヤジくさいんだよ、あんたは! あ、そだ、実乃梨ちゃん、飲みながらでいいからさ、
ちょっと聞いて欲しい考えがあるんだけど、ホテルの私の部屋に来ない? ちょっと離れてるけど、
いいホテル取ってあるんだ!」
「おう! なんだい、あーみん? 聞くぜー、超聞くぜー」

2人はライトバンに乗り込むと、聖夜に賑わう街を抜けて、亜美の宿泊先へと向かっていった。



164 : ◆VW.RtTKf1E :2009/10/24(土) 12:24:48 ID:usXAYKlH
今日はここまでです。
続きは少し先になるかも。

ここまで書かせて頂けたこと全てに感謝しています。
まだまだ何も解決していないんですけどね。



165 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/24(土) 12:33:35 ID:vK9vMv32
>>164
リアルタイムで読ませていただきました、GJ!
解決はしてないかもしれない。でもようやく通じあえた。
それだけでひとまず満ち足りてます。大河良かったね〜。

166 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/24(土) 15:40:27 ID:u7pWOM2y
熱い!
二人の想いが熱いぜー!

167 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/24(土) 21:03:26 ID:gOac+GRK
やっぱagainの人の作品が一番好きだな。次も待ってます

168 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/24(土) 21:38:38 ID:AuKKvlAe
>>164
二人の想いに目頭が熱くなったよ
続きも楽しみにしてます!

169 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/24(土) 22:33:46 ID:Olz7LWa4
>>164
いいよ、いいよ。GJですよ。
なんでagain?っておもってたけど、
そうか、そういうことだったんだね。

170 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/25(日) 01:36:44 ID:GcJwqImV
>>164
待ってました。
あの名シーンとのシンクロが良い味出てます。
GJです!

171 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/25(日) 01:51:13 ID:et/+Xasr
>>140 です。
いつも読んで頂きましてありがとうございます。
また、感想などありがとうございます。
まあ、箱の中身は期待するほどのものじゃないんですが・・・。

>>164
いつも乙です。毎回、読ませてもらっています。完結まで頑張ってください。

本来なら「孤独な月ウサギ・・・」の続きを投下となるのですが、ふと思いついた
ものがありましたので、それを投下します。
タイトルは未定・・・相変わらず頼りにしてます>まとめ人様

以下 7レスくらい使います。

172 :ノンタイトル ◆x6jzI2BeLw :2009/10/25(日) 01:52:52 ID:et/+Xasr

老朽化が目立つアパートが一軒建っている。
それはどこにである普通のアパート。
だけど、この世界でひとつしかないものがある。
それが見えるのは・・・この世でたったふたりだけ。

建物の外側にある鉄製の外階段。
所々に錆が浮き、その古さを人に知らせていた。
「・・・懐かしい」
その階段の下にたたずみ、感慨深げにつぶやく女の子がいる。
子を付けるには実年齢からすればもう相応しくないのかもしれないが、外見だけ見れば女の子と呼ぶのがまだピッタリ。
昔と変わらない長く色素の薄い髪は相変わらず背中まで伸び、小柄な体の上にちょこんと乗った顔立ちは美少女と言われた頃の面影を十二分に残していた。
「何年ぶり・・・かな?」
この問い掛けに隣に立つ目つきの鋭い男が答える。
「五年・・・だな」
「そんなに経つんだ、もう・・・早いね」
「ああ、あっという間だったな」
過ぎ去った日々を振り返るように会話を交わすふたり・・・。
並び立つ高須竜児と逢坂大河。
ふたり揃って、かつて住み慣れた高須家をまぶしそうに見つめた。

「行くか?」
「うん」
竜児が大河を誘う。
カン、カン、カン・・・。
ふたりの足音が鉄板にこだまする。
その音を確かめるように、一段、一段、昇って行く大河と竜児。
最後の一段を昇り終え、玄関前から眼下を大河は見た。
「・・・遠い昔なのに・・・昨日のことみたいに・・・思い出せる」
一段遅れて上って来た竜児に大河は言う。
「何をだ?」
「ケンカしたよね・・・ここで」
「そんなこと・・・あったか?」
「うん。あったよ・・・ちょうど・・・あそこかな、高級車が止まってて」
大河が指差す先を見て竜児も思い出した。
・・・そうだ、あれは大河の親父さんが来た時だ。高2の文化祭の直前で・・・。
大河との関係修復を持ち出した大河の父に竜児はエールを送り、父親を拒絶する大河とここで言い合いになったのだ。
・・・今にして思えば・・・あれだな・・・。
竜児は苦い思いと共に蘇らせた記憶をなぞる。
「・・・竜児、止めよう、しめっぽくなるから・・・せっかくの門出なのに」
何か言い掛けた竜児の口を封じるように大河は明るく、笑顔を作った。
「お、おう・・・そうだよな・・・今日から・・・だな」
竜児はそう言うと薄い真鋳製の小さな板をかばんから取り出した。
「何、それ?」
「ふふ、驚け・・・表札だ」
じゃあんと効果音は付かないが、そんな雰囲気で竜児は取り出したそれを、玄関脇に手際よく取り付けた。
そこには『高須』と大きく書かれ、苗字の下に並んで記された文字が二列。
『竜児 大河』と読める。


173 :ノンタイトル ◆x6jzI2BeLw :2009/10/25(日) 01:54:22 ID:et/+Xasr

「いつの間に用意したのよ?」
「この日のために特注しておいた・・・今日からここが俺と大河の・・・住むべき家だからな」
「用意いいね、竜児」
見直したと大河は言う。
「おう」
竜児も得意満面で答える。
「でも、左下の方が3列くらい、空いてるけど?」
「ああ、それはだな・・・」
・・・いつになるか分からないけど、子供が出来たら・・・付け加えるんだ。
竜児は空白の意味を大河に説明する。
じとっと大河は竜児を見る。
「・・・何だよ。何か言いたそうだな」
「三人、産む方の身にもなってみなさいよ」
「・・・と言うか、産んでくれるのか?」
「・・・せいぜい、竜児が頑張ればね」
「何を頑張るんだ?」
「本気で言ってるんなら・・・殺すから・・・このエロ犬、竜児」
ほんのりと頬を染めながら大河は竜児を罵倒する。
「久しぶりだな・・・エロ犬呼ばわりは・・・ちょっと新鮮だぞ」
「く・・・もう、バカ・・・知らない」
とうとう大河はそっぽを向く。
でも、その横顔は幸福感に満ち溢れていた。


高2のバレンタイン。
チョコレートを渡すだけの儀式が暗転した瞬間、全ては動き出した。
「好き」と言う前に将来を誓い合った竜児と大河。
でも、その道のりは決して平坦な物ではなかった。
一時は危険な逃避行に身を委ねかけた大河と竜児だったが、危ういバランスを乗り越え、今日を迎えた。
つい先日、ふたりは華燭の典を挙げ、晴れて大河は竜児の元へ身も心も寄せられる身分を勝ち取ったのだ。
都内の国立大学を卒業後、安定した有名企業へ入社した竜児。
竜児が落ち着いた生活を送れる様になったのを見極めたのか、大河の母も義父も長い婚約期間に終止符を打つことを正式に認めてくれた。
行方不明の本当の父親に祝福して貰えないのが心残りだけど・・・大河はそんなことを言いながらバージンロードを五年に亘り、実の娘同然に接してくれた義父と共に歩いた。

大河との新居を何処にしよう?
そんな話が持ち上がった時、泰子が言い出した。
・・・竜ちゃん、ここへ住んだら?
社会人として働き始めたのを機に竜児は都心のワンルームで一人暮らしを始めていた。
泰子は嫌がったが、こぶ付きじゃ、泰子の第二の春が遠ざかるだけだと半ば強引に竜児は家を出たのだ。
・・・一緒にか?
・・・やっちゃんはそうしたいけど、それじゃ竜ちゃんも大河ちゃんも大変でしょ。
・・・いい加減、帰って来いってお父さん、うるさいから、やっちゃんは実家に帰るでガンス。
・・・お仕事も打ち止めかな・・・もういいよね、竜ちゃん、大きくなったし・・・ひと休みしても。
いい歳した息子を「・・・ちゃん」呼ばわりするのをいい加減改めて欲しいと竜児は思わないでもないが、母親が示してくれた愛情に素直に従う気になった。
そのことを竜児が大河に相談すると・・・。
・・・え?あのアパートに住むの?
・・・嫌か?
・・・ううん。私は賛成だよ・・・でも、なんかやっちゃん追い出すみたいであれだけど・・・。
と、大河は賛意を示した。


174 :ノンタイトル ◆x6jzI2BeLw :2009/10/25(日) 01:55:35 ID:et/+Xasr

立て付けの悪くなったドアを開くと、急に時間がさかのぼった様な感じに竜児は襲われた。
「・・・お邪魔しま・・・じゃないね」
てへ、失敗みたいな顔して大河は照れ笑い。
「ただいま・・・だろ、この場合」
竜児がいちいち突っ込みを入れる。
「うるさいわね、ちょっと間違えただけじゃない」
「そんなこと言うけどさ、大河、この家に入る時、そんな殊勝な台詞、言ったことあったか?」
「・・・あるんじゃない・・・覚えてないけど」
ふんだとうそぶく大河。
竜児は急にあれこれ思い出す。
壊れんばかりの勢いを付けてドアを開け放ち、『今日の夕食・・・なあに?肉?魚?・・・竜児!返事は!』
大河さまのお出ましだと高須家に飛び込んで来たあの日、あの夕方・・・。
学校帰りにスーパーに大河と寄り、買い物をして帰った来たあの日・・・。
目当てのお菓子が売り切れだったと沈む大河に、後でおまえの好きなクッキーでも焼いてやるからと声を掛けたあの夕方・・・。
竜児は胸いっぱい、家中の空気を吸い込んだ。


家の中は引越し荷物でいっぱいだった。
「まず、片付けだな」
らんらんと目を光らせ、獲物に飛び掛かる前の猛禽類を思わせる竜児。
「何年経っても、変わんないね。あんたのそういうとこ」
好きにすればと、この点で大河はお手上げを宣言。
でも、やってくれるなら大河とて大いにウエルカムなのは言うまでも無い。
「そうだ、部屋どうしよう」
不意に竜児が言い出した。
「部屋?」
「そうだよ・・・俺は前に使ってた自分の部屋でいい・・・大河は泰子の部屋、使うか?」
「・・・竜児」
こいつ、何考えてんのと大河は呆れたような表情。
「何だよ?」
・・・俺、何かおかしなこと言ったか、と竜児はまるで気が付いていない。
仕方なく、大河は言う。
「早くも家庭内別居の準備?」
ポカンと殴られたような顔を見せて竜児は大河の言わんとするところ理解。
「・・・だよな。俺ってバカ」
・・・もう、一緒の部屋でいいんだよな。


175 :ノンタイトル ◆x6jzI2BeLw :2009/10/25(日) 01:56:47 ID:et/+Xasr

片付けもやっと一段落した頃、大河は部屋の片隅にあったそれを見つけた。
「やっちゃん、置いていったんだ・・・これ」
壁に立て掛けてあった使い込まれたちゃぶ台。
引っ張り出して居間の真ん中に据え付ける大河。
「大河、おまえ、何やってんだよ?」
ちゃぶ台の前に座り、片づけをさぼる大河に竜児は戦列復帰を促す。
「・・・竜児の家って言ったら・・・これが一番、記憶に残ってるかな」
竜児の声を聞き流し、大河はちゃぶ台の上を愛しそうにそっと撫でた。
「さんざん食ったもんな、この上で大河はな」
竜児も片付けは一時中断と大河の前に座る。
「食べたかもね・・・思えば、不思議な一時期だった」
「ああ、そうだな」
大河の言うことに竜児も同意する。
確かに・・・あの一年は不思議な関係だった。
ふとしたきっかけで高須家に入り込んで来た大河。
それがあっという間に馴染んで・・・気が付いたら、世界で一番、大事なやつになってたんだよな。
「おう、そうだ」
竜児は急に立ち上がると、隣の部屋から座布団を持って来る。
「泰子の部屋にあったぜ・・・これ」
良く見えるように大河めがけて広げる竜児。
「見覚えあんだろ?」
「うそ、まだ残ってたんだ」
それは大河が勝手に決めた高須家用のマイ座布団だった。
竜児から手渡しで受け取ると大河はさっそく畳の上に置き、その上にお行儀良く座る。
「これこれ・・・この感触・・・懐かしい」
満面の笑みで大河は竜児を見る。
「良かったな」
うんとうなずく大河だったが、すぐ困ったような顔になる。
「どうしよう・・・」
「どうしたんだよ?」
「・・・あのね、竜児」
イタズラを告白するように大河はこう付け加えた。
・・・お腹、すいちゃった。

「腹、減っただと?」
「うん。だって、条件反射というか・・・私のDNAが覚えてるのよ・・・この座布団に座って、ちゃぶ台を前にしたらご飯だって・・・」
・・・だって、仕方ないでしょと大河は本当に困惑気味に竜児に訴える。
今にもお腹の虫がぐうと音を立てそうな大河の様子に竜児はしょうがねえと立ち上がる。
「どこ、行くの、竜児?」
「買い物だ。冷蔵庫からっぽだからな・・・残りの片付けは明日にしようぜ」
「うん」
その声に大河は勢い良く立ち上がった。



176 :ノンタイトル ◆x6jzI2BeLw :2009/10/25(日) 01:59:09 ID:et/+Xasr

駅前のスーパーヨントクは往時と変わらない賑わいを見せて竜児と大河を店内に誘った。
「よく来たよな、ここ」
「そうね・・・いろいろあったわ」
買い物カゴを右手で下げているのは昔と同じ竜児だが、あの頃と唯一違うのは空いている竜児の左手に寄り添う大河の姿だった。
「まったく、あの頃のおまえと来たら、人が油断したスキにカゴの中に菓子、放り込みやがって」
「そんなこともしたわね・・・」
懐かしそうに大河は微笑む。
「最初のうちは大河のやり方、分かり易かったんだが、いつの間にかこっそりカゴの中に忍ばせる術を覚えやがって・・・こっちはレジで清算するまで気がつかねえ」
「竜児が鈍いんでしょ」
「・・・まさか、今日はしてないだろうな・・・」
竜児の指摘に大河は口笛を吹く真似をする。
慌てて竜児がカゴの中身を点検すると、豚肉のトレーの下からアーモンドチョコのパッケージが顔を出す。
「・・・大河」
「あはは、ばれたか」
笑いながら元へ戻そうとする大河を竜児は止める。
「いいよ、そのままで・・・今日は好きなだけ入れろよ」
「いいの?」
「おう、ただ、ほどほどにしとけよ」
「・・・ん、これだけでいいや・・・カゴに入れるスリルがないとつまんない」
「大河、おまえなあ」
「ほら、竜児。早くしないとタイムサービス、終わっちゃう」
「おおう・・・急げ、大河」
鐘を振って景気を付ける売り子目掛けて小走りに急ぐ大河と竜児の姿がそこにはあった。


夕闇迫る街並みをエコバッグをふたりで持ちながら歩く。
「ずいぶん、買っちゃったね」
ぎっしりと詰まったエコバッグを覗き込み大河は言う。
「重くねえか・・・」
「大丈夫だよ。ふたりで半分だから」
エコバッグを挟んで並びながら竜児と大河は歩いていた。
「・・・あっ」
急に大河が立ち止まる。
「どうした?」
「竜児、あれ・・・」
大河の目線が向いた先にいる複数の人影。
下校中の女子高校生だった。
「・・・大橋高校の制服だね」
友達同士なのか楽しそうに会話を交わしながら立ち止まる竜児たちの脇を通り過ぎた。


177 :ノンタイトル ◆x6jzI2BeLw :2009/10/25(日) 02:02:09 ID:et/+Xasr

昔、大河が着ていた制服・・・。
急に竜児は隣の大河が制服姿に見え目をこする。
「どうしたの、竜児?」
「いや、何でもねえ。ごみが入っただけだ」
もう昔の不安定な大河はいない・・・いるのはしっかり繋がった大河だ。
もう、何者にも邪魔されない・・・。
しっかり、掴み取ったんだ。
二度と離さねえ。
竜児はエコバッグを大河の片手からもぎ取った。
「竜児?」
下から大河が竜児を訝しそうに見上げる。
「俺が、持つ」
「え、いいよ・・・半分づつで」
そのままで行こうと言う大河の言い分を竜児は聞き届けることなく、無言でたった今、空いたばかりの大河の手を握り締めた。
「・・・あっ」
大河がうつむく。
「これで・・・帰ろう」
「・・・うん」
・・・この手を・・・俺は離すもんか。
手のひらから伝わる大河の温もりを感じながら竜児は改めて心に誓った。



「私、作るね」
大河はさも当然と言う様に台所へ向かう。
その大河を竜児は引き止めて言う。
「いいよ。今日は俺に任せてくれ」
「だって、竜児・・・片づけで疲れてるし・・・」
「いいんだ・・・久しぶりに大河に作ってやりたくなった」
「じゃあ、お願いしてもいいの?」
「ああ、いいぜ・・・昔みたいにちゃぶ台の前で待っててくれ」
「・・・催促するよ」
「かまわねえ」
「・・・邪魔するよ」
「どんと来い」
「・・・待ってる」
「おう」
竜児は大河の声を背に使い慣れた高須家の台所に立った。
リズミカルに包丁を使いながら、時折、後ろを振り返る竜児。
あの頃の大河ならテレビに夢中か『竜児、まだ?』と矢の様な催促が飛んで来た。
今日の大河は優しげな視線でただ、黙って竜児を見つめている。


178 :ノンタイトル ◆x6jzI2BeLw :2009/10/25(日) 02:03:36 ID:et/+Xasr

「はい、竜児。」
茶碗にご飯をよそる大河。
それくらいはやらせてと炊飯ジャーを自分のそばに置き、給仕にいそしむ。
「ありがとな、大河」
茶碗を受け取りながら竜児は謝意を伝える。
「・・・おいしい」
おかずに箸を付け、大河は頬を押さえる。
「おいしいのを食べるとほっぺが落ちるって言うけど、そんな気分」
「そうか?」
「うん・・・竜児の作ったご飯・・・しっかり体が覚えてる・・・」
「大げさだな」
「ううん・・・竜児のごはん、食べたのは一年足らずだったけど・・・これが私のオフクロの味かも」
「おまえのお母さんになったつもりは無いぞ」
「たとえ話よ・・・ようするに竜児は上手ってこと・・・まだまだ私じゃ、この味出せない」
「そうでもねえぜ・・・最近の大河の作る物、いい出来だからさ」
「本当、それ?」
「ああ、もう少しだな」
「良かった・・・それだけが気がかりだったから」
・・・これで、合格よね? 竜児のお嫁さんとして・・・。
いじらしい大河の台詞に竜児はぶっきらぼうに「お代わり」と茶碗を大河へ突き出した。
大河から見れば、竜児が照れているのが丸分かりだったが・・・。


「食べたなあ」
「うん、ごちそうさま」
飽食の後、大河が言い出す。
「どうしよう・・・あれ、したいなあ」
「あれって?」
「ねえ、竜児」
「何だよ?」
「怒んないでよ、いい?」
「ああ・・・」
竜児の了解を得るや大河はちゃぶ台の下でどべーと横たわった。
「・・・これこれ、これがしたかったの」
大河はひどく嬉しそうだった。
下に敷いていた座布団を枕にしてご満悦な様子。
「牛になるぞ」
お約束の突込みを竜児は入れる。
「・・・ずうっとそう言ってたけど、なんなかったね、牛に」
「そういうのを減らず口って言うんだ」
竜児の口惜しげな物言いに大河は小さく笑った。

179 :ノンタイトル ◆x6jzI2BeLw :2009/10/25(日) 02:04:34 ID:et/+Xasr

「こうして・・・ここで・・・大河と並んで寝る日が来るなんて思わなかった」
片付かない引越し荷物で使えない部屋を避けて、居間に並べて敷いた布団。
照明を落とした薄暗がりの中、竜児は身を横たえて天井を見つめる。
「・・・私も、こんな日が来るなんて想像もしなかった」
・・・居心地が良くて出入りしてた。
・・・ここへ来れば、竜児が居て、やっちゃんが居て・・・心が安まったの。

「ずっと前に約束したよな?ずっとそばにいるって・・・」
「うん」
「改めて言うぞ。俺はお前の側を離れねえ・・・何があってもだ・・・どんなことがあっても、大河、おまえを守る・・・だから・・・安心してついて来てくれ」
「・・・竜児」
「この先、何があるか・・・俺にもわからねえ・・・だけど、息が止まる寸前まで大河・・・おまえを・・・おまえを・・・愛し続ける・・・たとえ、おまえが嫌と言ってもだ」
「言わない・・・そんなこと、絶対に」
決意を込めて大河は竜児に答える。
「竜児と・・・一緒にずっと居たいって気が付いたあの日から・・・私の気持ちは変わらない」
・・・竜児が、私の全てだから・・・。
ひたむきな視線を竜児に向け、大河は思いの丈を全て吐き出す。
・・・受け取ったぜ・・・大河の想い。

横向きに向き合いながら大河が竜児へ伸ばす両手。
竜児はその手を掴み取ると、もう離さないというように引き寄せた。

140センチ余りの小さな体が震え、竜児の胸の中へ飛び込んで行った。


今日から始まる竜児と大河の新しい一ページ。
希望に輝く真新しいページが何かを刻まれるのを待つようにずっと続いていた。



180 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/25(日) 02:05:40 ID:et/+Xasr
以上です。

いつもは高2の竜虎ばかりのなので今回、初めて、アフター書きました。
スレタイがアマアマなので甘い感じでと思ったのですが、あんまり甘くなかったかもしれません。

次回は「孤独な月ウサギ・・・」の予定です。


181 : ◆Eby4Hm2ero :2009/10/25(日) 04:34:45 ID:q/nE0yiP
>>180
しっとり甘くてよかったです。

月ウサギの続きにも期待。

182 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2009/10/25(日) 04:37:59 ID:q/nE0yiP
お題 「夫婦」「内部」「痛い目」



「ごちそうさま」
「……大河、なんか悩みでもあるのか?」
「なによ急に。別に何もないわよ」
「いーや、お前がおかわりしねえのは絶対に何かある時だ」
「あんたが私をどう認識しているのか、一度じっくり話し合う必要がありそうね……」
「で、どうしたんだよ?話してみろって」
「……あのね、北村君へのアプローチが悉く上手くいかないのは、事前のシミュレーションが足りないせいだと思ったのよ」
「そうか?大河が痛い目を見る原因の八割ぐらいは、お前のドジだと思うが……」
 ごすっ!
「思ったのよ」
「いってえ……」
「でね、色々と考えてるうちに気づいたんだけど……私、北村君との夫婦生活ってものが想像出来ないのよ」
「ふ、夫婦……」
「妙な想像してるんじゃないでしょうねこのエロ犬」
「い、いや、そんなことはねえぞ」
「何て言うかね、自分の内部に『普通の夫婦の姿』ってモノが無いのよ……そんなもの、見たことが無いから」
「……おう……」
「だからね、北村君と恋人になって、結婚しても……その、ちゃんとやっていけるのかなって……」
「そもそもそこに考えが及ぶのが飛躍のしすぎだとは思うが……まあ、やっていけねえなんてことはねえだろ。
 知らないから、経験が無いから上手くいかねえなんて言ったら、世の中の殆どは失敗だらけになっちまうじゃねえか」
「それは、そうだけど……」
「どうしても不安だっていうならさ、一緒に考えようぜ」
「え?」
「『普通の夫婦の姿』を見たことが無いっていうなら俺だって同じだけどさ、二人で考えながら想像すれば、なんかわかるんじゃねえか?」
「そう、かな……うん、やってみようかしら」
「えっと、夫婦ってことはいわゆる新婚の時期はもう過ぎてるんだよな……それなら、一々ドキドキとかはしてられねえよな」
「一緒にいるのが普通になってるってことよね」
「そうだな。それなら変に遠慮とかしないで、言いたい事もポンポン言ってるんじゃねえか?」
「それだとケンカにならない?」
「そういう事もあるかもしれけど、ほら、夫婦喧嘩は犬も食わないとか言うじゃねえか。
 きっと傍から見てるほど深刻じゃねえ……というか、コミュニケーションの一環なんじゃねえかな」
「他にはなにかあるかしら?」
「うーん……それほど特別なことが無いってのが『普通』ってことだからなあ……あたりまえの自分でいられるってことじゃねえかな……」
「つまり、一緒にいて、遠慮とかしないで、普通にしてて……あれ?
 それって……それってなんか……竜児と……」
「おう、どうした?」
「なな、何でもないわ!」

183 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/25(日) 09:02:08 ID:snYYUDb+
>>179
いいね。大人になってもまだ少しわがままな大河と、大人になってもまだくどい竜児がいいよ。
これはいいハッピーエンドだな。大家以外には(w

>>182
大河自爆。4巻でもあったね。まぁ、1巻からそうなんだけど。

184 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/25(日) 10:24:33 ID:cU3nBqjp
>>180
GJです。
穏やかな大河がいいですね。
> あんまり甘くなかったかもしれません。
いやいや、十分甘いと思いますよ。
悶え死にそう・・・

>>182
今回もいいですねぇ。
最近、「◆Eby4Hm2ero」氏の大河は、
以前よりアマアマな気がする。
(気のせいかなぁ・・・)
GJでした。


185 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/25(日) 10:37:46 ID:3yNXHBOK
>>179
GJ!いい話だなぁ。
回想のときとか本編の映像が脳内再生されてしまう。

>>182
2828してくるのを抑えられんかった

186 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/25(日) 11:31:17 ID:cn5z/4Nq
(*´Д`)ポワワ

187 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/25(日) 12:10:49 ID:usCnmotW
>>180
二人にはあの部屋のちゃぶ台が似合うよねぇ
自然にごはんをよそる大河がいいね!

>>182
今日もGJ!
こういう話を普通に出来る二人こそ普通の夫婦みたいだよねー

188 : ◆askgvpoGB. :2009/10/25(日) 19:24:59 ID:usCnmotW

こんばんは。
心和むお話が続いていて恐縮ですが、
次レスより>>85の続きを投下させて頂きます。

189 :【 - holding hands - 】 26 ◆askgvpoGB. :2009/10/25(日) 19:27:13 ID:usCnmotW

一瞬自分の耳を疑うが、眼下の光景があたしに現実を見ろと訴えかけてくる。
さっきまで憎まれ口を叩いていたタイガーとの落差が受け入れられなくて足元の床が揺れてるような錯覚を覚える。
軽く頭を振ってから隣に屈みこみ、肩をしっかりと掴んで問いかけた。

「きゅ、急にどうしちゃったのよ!? さっき言ってた痛みってのと同じ感じ?」
「大河ぁ!?」

その時、実乃梨ちゃんの大声が響き渡った。風のように飛んで来てタイガーの隣に滑り込む。

「大河、大丈夫?しっかりして! ま、まずは楽な姿勢にしないと……」
「みのりん……お、お腹が…………痛い……」
「あーみんはそっちを持って!」
「う、うん!」

言われるがまま二人でタイガーを少し持ち上げて位置を変え、足を前に投げ出せるようにする。
タイガーは前かがみになりたそうだったけど、お腹が圧迫されるのはよくないと実乃梨ちゃんに言われて断念し、膝を曲げて床の上にペタンと座らせた。
お腹が邪魔で今度は後ろに倒れそうになるので実乃梨ちゃんが後ろから支えに入る。

「どう?大河どんな感じ?この姿勢ならまだマシかい?」
「うううっ! だ、だめ……かも……どんどん痛く……ぅぅ……」

苦悶の表情でそう答える。額には脂汗がにじんでひどく苦しそうだ。
エプロンを外してやるとオフホワイトのワンピースの襟元も汗に濡れて灰色に変わっていた。

「うそ……もうこんな……」

と呟くと、実乃梨ちゃんがあたしの方を見た。
背中にピッタリくっついてる実乃梨ちゃんも気付いていたのだろう、軽く頷き合ってからタイガーに声をかける。

「ねぇタイガー、救急車呼ぼう?何かあってからじゃ遅いし、大事な身体なんだしさ……」
「だって……この前だって……収まったもん……んんんっ!」
「そうは言うけど、今回だって収まるとは限んないじゃん?」
「そうだよ、呼んだ後で収まったらごめんなさいって言えばいいんだし……」
「ううっ…………だって……は、恥ずかしいし……そんな大袈裟な……」
「はぁ!? あんたバッカじゃねーの? そんな事言ってる場合かっつーの!」

思わず声を荒げる。
前回の痛がり方は分からないけど、高須君なら今のタイガーを見てパソコンなんか開いてられるはずがない。
今の実乃梨ちゃんみたく一瞬たりとも目が離せなくなるに決まってる。
だからつまり……前より悪いって事だ。

「竜児の事……心配してくれたのに……思いっきりからかっちゃって……だから……」
「大丈夫だって、高須君はそんな事気にしないから!」
「でも……」
「………………ちっ」

煮え切らないタイガーに痺れを切らしたあたしは、手近に転がっていたパールホワイトの携帯を引っ掴んで119にダイヤルした。

トゥルルル―― トゥルルル――

「くっ……ううっ…………痛い……ねぇ……みのりん……」
「なんだい?背中さすってたら少しは楽かな?どうしたらいい?」

そんな声を聞きながら自分の携帯を探しにリビングに戻る。メールにここの住所が書いてあったはず。


◇ ◇ ◇


190 :【 - holding hands - 】 27 ◆askgvpoGB. :2009/10/25(日) 19:28:59 ID:usCnmotW


「……はい、そうです。えぇ……はい……」

電話口に出た救急の人にタイガーの様子と住所を伝えていると、

「うあああっ!!」
「大河!? あと少しの我慢だからね!」
「――とにかく! 急いで来て下さい! お願いします!」

急かされる気持ちを相手に叩きつけるようにして電話を切った。
タイガーの叫び声が気掛かりで、すぐさまキッチンに取って返す。

「……どう?あーみん」
「多分、五分も掛からないって、すぐ来るって」
「はぁ……はぁ……ね、ばかちー……私の携帯……」
「あぁ……ごめん……はいよ……」

やっぱりこの子の携帯か……と思いながら手渡すと、震える手でそれを握り締め自分の胸元に押し当てた。
そして、さっき救急の人に聞かれた質問をタイガーに尋ねる。

「……生まれそう……だったりするの?」
「一週間なんて言葉、アテにならないからね……なんか前兆みたいなの無かった?」
「わかん……ない……うっくっ……でも、前より痛い……気がする……」

思わず実乃梨ちゃんと顔を見合わせる。
可能性が少しでもあるなら、いや、無かったとしてもこれだけ苦しそうなんだから……

「高須君にも電話しよう?もしあんたが出来ないならあたしが掛けるから……」
「え…………だって……竜児は今すごく……忙しくって……」
「大河、そんな場合じゃないんだよ?なんのために高須君は忙しくしてるの?」
「そ、それは……くっ…………ふぅ……ふぅ……」
「実乃梨ちゃん、もしこのバカがグズグズしてるんだったら高須君に掛けてあげて。あたしは準備してくる」
「分かった!」

……あと少ししか時間が無い。急がないと。
レンジ台に引っかかってたグリーンのエコバックを拝借してリビングに行き、部屋の隅に置いてあった自分と実乃梨ちゃんの手提げバッグを放り込む。
タイガーのバックが見当たらないので「失礼」と言いながら寝室に入り、ベッドの上に散乱しているバックとその中身に思わず舌打ちした。
財布とか鍵とかリップとかを考えなしに全てまとめてバッグに入れ、そのバックをエコバックに突っ込む。

気が動転してる中でこれだけやれれば上出来だろう、と自己評価し、
二人分の上着を引っ掴んでからキッチンに戻った時に――ちょうどサイレンが聞こえてきた。


191 :【 - holding hands - 】 28 ◆askgvpoGB. :2009/10/25(日) 19:29:43 ID:usCnmotW

「来たみたい。あたしが迎えに行って来る」
「大河、もう大丈夫だよ?」
「ふーっ……ふーっ……うん……ぐっ……ううあっ!……ふーっ……」

深呼吸して痛みに耐えているのだろうか、高須君はどうなったのか……いやその前に。
一足飛びで玄関まで行き、つっかけに足を入れる。
玄関に身体ごとぶつかるようにしてドアを開けると、階段の下に救急隊員がいるのが見えた。

「ここです! こっちです! 早く!」

こちらに気付いたのを確認してタイガーの元に戻る。
上半身の体重を完全に実乃梨ちゃんに預けて寄りかかっている。
さっきにも増して息は荒く、片手の指が白くなるほど携帯を握り締めているのが痛々しい。

「高須君は!? 連絡付いたの?」
「ううん。高須君、電話に出ないんだよ……」
「う……ああっ! りゅう……じ……もうじき出る……くうっ……とおも……」
「ちょっと……さっきより酷いじゃん。もしかして本当に……?」
「ふぅ……わかん……なあいっ! はぁ……はぁ……でも、多分……ぐううっ!……」

眉間の深い皺がタイガーの苦しみを物語っている。
息も絶え絶えで、とても見ていられない。

「患者は!?」

と、そこに力強い声が掛かる。
振り返ると三人ほどの救急隊員が玄関のドアからこちらを伺っている。

「この子です! お願いします! 私も手伝います!」
「……ねぇタイガー、もうじきって何で?高須君なんで繋がらないの?」
「じ……時間が……ふぅ……ふーっ……あ、後少しでおひ……る……んんっ……はぁ……」

そう言われてリビングの時計を見ると11:57……なるほど。

「よし……まずは乗せますよ。ちょっと苦しいかもしれませんが我慢して」
「3……2……1……っせーのっ!」
「ぐ……ううううっ!……ふぅ……ふぅ……」

救急隊員の手によって軽々とストレッチャーに乗せられるタイガー。


192 :【 - holding hands - 】 29 ◆askgvpoGB. :2009/10/25(日) 19:31:38 ID:usCnmotW

それから身体を固定するためのベルトを巻こうとして、

「……む?」

と、年配の隊員がいぶかしげな声を上げた。
いま、タイガーがいた場所の、キッチンの床が濡れているのは……つまり、これは……

「こ、これって……?」
「大河……やっぱり……」
「……急いだほうが良さそうですね。ここから一番近い総合病院に搬送します」
「ば……ばかちー……ぅぅっ……」

一瞬呆然としてしまったが、その声に弾かれるように我に返る。
実乃梨ちゃんと共にタイガーの側に行って声を掛けた。

「あんた……自分で分かるよね?気をしっかり持って!」
「はぁ……はぁ……ばかちー怖い……怖いよ……んんんっ!……」
「大丈夫だって! 私たちが付いてるでしょ?」

何とか目を開けてはいるけど、苦しげに顔を歪めているのが痛々しい。

「りゅ……竜児……ううっ!……竜児を…………りゅぅ……じぃ……」

かすれる様な声でそう言いながら握っていた携帯をこちらに渡そうとする。
あたしはそれを受け取って、

「分かった。あたしが高須君を呼ぶから……だからそんな泣きそうな顔すんじゃない!」
「高須君が来るまでは、私たちがずっと側にいるからね! だから安心して!」
「……うん……ふぅ…………うん…………あり……がと……」

ガキン― とベルトが固定された音が響き、隊員たちの動きが慌しくなる。

「急げ! もう破水が始まってるぞ!」
「「ハイ!」」

ストレッチャーが持ち上げられ、部屋から運び出されるタイガー。
そのすぐ横には実乃梨ちゃんが付き添っている。靴を履くのももどかしく、二人の若い隊員と共に部屋から出て行った。


193 :【 - holding hands - 】 30 ◆askgvpoGB. :2009/10/25(日) 19:32:35 ID:usCnmotW

「ご友人の方……ですよね?もし可能であれば罹りつけの病院を教えて欲しいんですが……」
「え?……っと、ちょっと待って下さいね」
「それから、一緒に病院まで行きますよね?火の元、戸締りとか、可能な限りお願いします」
「は……はい!」

年配の隊員の指示に従って、タイガーのバックから鍵を取り出す。
エコバックを肩にかけて、リビング、キッチンと一通り見て回ってから玄関から飛び出した。

カンカンカン―― と急ぎ足にアパートの階段を降りる。
ジーンズは正解だったけど、ヒールは大失敗。つーかこんなの予想できるはずもねーっての!

「あーみーんっ! 急いでー!!!」

既に救急車の後部に乗り込んだ実乃梨ちゃんから声が掛かる。

「乗ります! あたしも乗りまーす!」

折りたたまれたストレッチャーの隣に実乃梨ちゃんが座ってて、タイガーの手を握り締めているみたい。
タラップに足を掛けて乗り込もうとした時に、年配の隊員から声が掛かった。

「すみません。自分ともう一人の隊員で満員です。あなたは助手席へ」
「あ、分かりました。実乃梨ちゃん、これ、ここから診察カードを探して!」

そう言って、タイガーの財布を実乃梨ちゃんにパスする。

「オーライ!」
「さっきの、罹りつけってやつ……彼女から聞いてください」
「分かりました。では……」

大きく頷いて了解のサイン。重そうな扉を軽々と閉め始める。
とそこに、車内からタイガーのうめき声が聞こえてきて、あたしは反射的に叫んだ。

「絶対……絶対、高須君呼ぶから!」

バタン――


◇ ◇ ◇


194 :【 - holding hands - 】 31 ◆askgvpoGB. :2009/10/25(日) 19:33:45 ID:usCnmotW


駆け足で助手席に乗り込み、運転手に声を掛ける。

「よろしくお願いします」
「は……はい!」

あ。という顔をしたので、おそらくあたしの事を知ってるんだろう……こういう時はウザイ事この上ない。
三人分の貴重品が入ったエコバッグを重々しく脇に置いて「ふぅ」と一息。
走り始めて直線になった頃合を見計らって運転手に尋ねる。

「行き先は大橋総合病院ですか? 駅より手前のあそこ?」
「はい、そうです」
「どのくらいで着きますか?」
「道次第ですが、5分未満だと思います」
「分かりました」

聞きたい事だけ聞いたら運転手なんか用無しだ。
亜美ちゃんの顔に見とれちゃうのも分かるけど、後は一分一秒でも早く病院に行ってもらわないと。

タイガーの携帯を開けて発信履歴のページに進む。
案の定、さっきの119番の下に『竜児』の文字を見付けたのでカーソルを合わせて……

「ブッフォォォッ!?」

盛大に吹き出した。
『THE DOG』なんてものが昔あったなと思い出す。
あれはキュートな子犬でやるから可愛いのであって、この高須君のタコみたいな口とか、
ほんのり赤い頬とか、どアップすぎて魚眼レンズで写したみたいなこの画像は酷い。キモイ。
生臭いとも言ってやってもいい。何であの子はこんなグロ画像を発着信の待ち受けに……?

……いや、いい。今はそんな場合じゃない。一刻を争うんだ。
タイガーの苦しみようを思い出して罪悪感に駆られるも、あたしは悪くない、と思い直す。
悪いのはタイガー以外が見ると死の宣告でもされたみたいなショック状態になる、この高須竜児のキス顔だ。

「なんなのよ……何なの、この顔は……ふざけ……ないでよっ!」

隣で運転手が怪訝そうに見てるけど、そんなものは無視。憤りを全て通話ボタンにぶつける。
ミシッ―― とタイガーの携帯が悲鳴を上げたようだけど、隣の運転手がビクっと動いたようだけど全て無視。

トゥルルル―― トゥルルル―― 

視線をダッシュボードの時計に向ける。現在時刻は12:03……出てよ、高須くん……

トゥルルル―― トゥルルル―― ガチャ――


195 :【 - holding hands - 】 32 ◆askgvpoGB. :2009/10/25(日) 19:34:56 ID:usCnmotW

――出た!!!

「あっ、た……たか……」
「はいっは〜い、竜児パパでちゅよ〜大河ママはどうちまちたか〜?」
「ぶっ!!!」

と、今度は鼻水が出そうになる。しゃべりかけで空気が上手いこと口から出てくれなかったからだ。
隣の運転手がチラチラとこちらを伺ってる。
ちっ……いいから前を見ろよおめーはよぉ!?

「た……高須…………くん?」
「いつもより早いでしゅね〜?おう?わ〜かったぞぉ! きっ……」
「いつまでやってんだオラ―――っ!!!」

ビックゥーっと運転手が反応した。
僅かにハンドル操作が怪しくなったが、そこはプロ。すぐに安定した。
っていうか、事故ったりしたら亜美ちゃんが殺してやるからね?と絶対零度の視線を送り付ける。

「うおおう!? だっ! 誰だ!?」
「あたしよ、あ・た・し。分からない?」
「えっと……し、失礼ですが、大河とどういう……?」
「あーっもう! こんな事やってる場合じゃないんだって!
 亜美よ、川嶋亜美。亜美ちゃんね、分かる?そんな事よりタイガーが……」
「え?川嶋?あぁ、そういえば今日遊びに来るって言ってたな。
 っつーかさっきの……聞いちまったよな?いや待て……大河?大河がどうした?」

お互いが好き放題に言い合って混線状態。まるで意味不明になる。

「だから、タイガーが大変なの!」
「なに?どうした?何があった、川嶋!?」

甘ったるい声から懐かしむ声、いぶかしむ声と、一声ごとに声色を変えていく。
まずは……まずは落ち着こう。そして高須君にも落ち着いてもらおう。

「あのね、高須君。よく聞いて、冷静になって聞いてね?」
「おう……で、大河がどうしたんだ?」
「さっきお昼ご飯の用意をしている途中で、その、急にお腹が痛み出したみたいでね……」
「なにっ!? そ、それで今、大河は?」
「だから、最後まで聞いてよ!」
「……す、すまねぇ」

高須君の気持ちは分かる。だからこそ、あたしが高須君の何倍も冷静にならないと……

「それで救急車を呼んだの。今みんなで乗って病院に向かってる」
「……なるほど……で、どんな状態なんだ?もしかして……」
「そう。始まった……みたい」
「マジかよ!!!!!」

と、突然大声を出された。キーンと耳鳴りがするのを我慢して話を続ける。


196 :【 - holding hands - 】 33 ◆askgvpoGB. :2009/10/25(日) 19:37:21 ID:usCnmotW

「……っつぅ……うん、救急隊の人がそう言ってたし、破水してるみたいだったから、間違いないと思う」
「だって……まだ一週間も先だし……なんで急に……何でだ……?」
「そんなのあたしだって分からないよ。だけどすっごい痛そうだし、お医者さんに診てもらうしかないでしょ?」
「そりゃそうだけど……なんで大河がそんな目に会わなきゃならねえんだよ……」
「高須君……」

呆然といった感じで独り言みたいに呟いている。
そんなの……あたしだってそう思ってるわよ……なんであの子がって……

「何でだよ、ちくしょう! 二人してあれだけ気を使って、負担だってなるべく減らしてやって……それなのに」
「しょうがないじゃない! あんたが生きてきた中でうまくいかないことなんて腐るほどあったでしょ!?」
「そりゃ……確かに……そうだけど……けどよぉ!」
「いーい、高須君?あんたがどれだけ大事にあの子を包んであげてたとしたって、何が起こるかなんて誰にも分からないのよ?」
「大河……すげえ怖がってた、痛いの嫌いとかガキみてぇな事言うしよ……」
「…………」

その言葉を聞いて、さっきのタイガーの顔が浮かんでくる。
三人で楽しく話してた中で、怖いよ……と言った時くらいしか暗い顔はしなかった。
高須君の悲しそうな声に勢いを削がれて黙り込んでしまっていると、ハッとしたように尋ねてくる。

「そうだ……竜河は?……いや……お腹の子は平気なのか!?」
「わ…………分からないよ……高須君……」
「川嶋は見てたんじゃなかったのか?一体どうなってるんだよ!?」

余裕が無いからだろうか、あまり聞いた事がないくらい強い口調で問われる。

「落ち着いて! あんた落ち着きなさいって!
 あたしに文句垂れる前に、現実を嘆く前にあんたにはやることがあるでしょ!?」
「あ……あぁ、そうだな。そうだ……電話なんかしてる場合じゃねえ、すぐに向かわないと!」
「大橋総合病院ね。駅よりこっち側……えっと、あんたらの家の方ね、間違わないでよ?」
「おう、そこなら分かる……っ、……」

そう言った後に僅かに息が弾む。
受話器の部分が擦れる音が聞こえてきて走り出したんだと分かる。

「……早く来て、高須君。あの子ずっとあんたの事呼んでた……だから、早く来て!」
「分かった! すぐに行く! すぐに行くからな!!!」
「慌てないでよ?事故ったりしないでよ?もうじき病院に着くから、お医者さんもいるから大丈夫だから、ね?」
「おうっ!」
「タクシーがベターだよ?あんたが運転しちゃあぶな……」

ブツッ――

「………………」

……大丈夫だろうか?いくら緊急事態とはいえ、余りにも落ち着きを失っていたような気がする。

「あの……そろそろです。救急搬入口から……」
「……はい」


◇ ◇ ◇


197 : ◆askgvpoGB. :2009/10/25(日) 19:38:58 ID:usCnmotW

本日は以上です。

>>87>>88>>89>>90>>91>>92
前回の感想頂いた方ありがとうございました。
期待通りの反応をしてくれると本当に嬉しくなります。

次回も週末になりそうですみません。
それでは。


198 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/25(日) 20:29:59 ID:NFsBi6P1
>>197
シリアスだったのに竜児のせいで吹いちまったじゃねーかwwwwwww

199 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/25(日) 23:21:30 ID:ad09X0HX
>>197
乙です。うおー、緊迫感! あーみん、かっこよす!
竜児おちつけ。 1週間は誤差の範囲だ
てか、その画像はさすがにみたくねぇw

200 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/25(日) 23:25:11 ID:SVNS270j
>>197
wktk

201 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/25(日) 23:35:15 ID:ad09X0HX
>>180
乙です。
なんだろね。 懐かしさを一緒に振り返るようで、胸がきゅんとなった。
ちょっと余裕のある大河が大人だ!
やっぱ座布団ごろ寝ははずせませんな。

>>182
短い文の中に、色んなとらドラ!が織り込まれていて、うまいといつも感心させられます。
大河、素直になれよw

202 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/25(日) 23:47:25 ID:fL8xIMcu
今なら言える。

この駄犬wwwwww

竜児が駄目人間すぎて、まあらしいっちゃらしいんだがw
乙でした。

203 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/25(日) 23:59:37 ID:Cyu1Z/1+
竜児のせいで涙出そう

204 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/26(月) 07:47:55 ID:KZBWAFwW
つーか、男親なんて出産時何の役にも立たないらしいぞ。

そして救急隊員が担架に乗せるときや亜美が大河の持ち物をかき集めるシーンが描写が妙にリアルでびっくり。

205 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/27(火) 04:20:02 ID:MjmyKtWg
竜司がんばれ

206 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/27(火) 04:37:42 ID:c03UCTX2
えー。みなさんこんばんは。ん?おはようござます?
とにかく8スレ目で幼児化竜児「大河お姉ちゃん」を書いてた者です。

もうすぐ全て書き終わりそうで書き終わってから投下しようと思いましたが、あまりに寂しいので8レスほど投下しまつ(・∀・)
最後に投下したの3ヶ月前でどこまで行ったか分からないと思いますのでまとめサイトで軽く読んでから読むのをお勧め。
では次レスから。

207 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/27(火) 04:38:51 ID:c03UCTX2



どれくらいたっただろう?
30秒?1分?
いやいや。5分は余裕でしょう。

5分間,大河は止まったままだった。
考える時間を与えようと思ってた竜児もさすがに痺れを切らしてきた。
って言うか息してるのか心配になってきた。

「大河ぁ〜?」
今まで抱き合ったままの体制だったので、名残惜しいが腕を緩め体を離し大河の顔を下から覗き込み確認する。
「ぅおうっ!?」
そして驚く。
目はまん丸に見開き口は半開き。
効果音を付けるなら正しく【ポカーン】だ。
これで涎でも垂れてれば完璧なアホ面だろう。
呼吸は虫の息ごとく,かろうじてしていた。

「た…たいが?」
「………」
「おい。大河!!しっかりしろ!!」
「……はっ!?…えっ?えっ?」
どうやら意識を取り戻したらしい。
「はぁ。良かった」
「あっあれ?私なんで…?…って…」
ハッ!!っと思い出したようで一気に血の気が上昇する。

「ああああんた。ささ…さっき,私にききっキキキキスしろとかなんとか…」
「あぁ…言った」
「んなっ!!?なんで私がっ」
「あー。大河。ちょっと待て」
俺は今にも飛びかかって来そうな大河にストップを掛け自室に向かった。

「……え?」
噛みつこうとした獲物に逃げられた虎は1匹茶の間に残された。
「…え?え?…何?この放置プレイ…」

208 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/27(火) 04:39:43 ID:c03UCTX2


「すぅー……はぁー」
いよいよだ。
いよいよこの時がきた。
竜児に取っても大河に取っても最後の山場。

自室に戻った竜児は深呼吸をしてさっきから鳴りっぱなしの心臓を落ち着かせていた。

一々深呼吸するためだけに自室に来たのかって?
違うね。深呼吸はついでだ。
そう。竜児が自室に来たのは理由があった。

「う〜ん。どうするかなぁ?」
上はあれで…下はこれ?いや!こっちの方がいいか?
などと独り言をブツブツ言ってる5歳児。
「よし。これにしよう!あっ!!安全ピンもいるな」
さて何をしているのだろう。


その頃,隣の居間にいる大河は…
「…………」
またもやポカーンっとゆう表情で放置プレイの寂しさ,切なさ,孤独さ,そして怒りに浸っていた。

なんなの?キキキ…キスしてとか甘い言葉ぬかしたくせに「待て」で放置プレイ?
私よくツンデレとか言われるけど,あのチビ駄犬の方がツンデレじゃないの?

プツプツと恥ずかしさで赤く染まってた顔が怒りの色に変化していた。
そこへスーッとゆっくり襖の開く音が聞こえ
「お…お待たせ」
控えめな竜児の声がした。

「竜児!!あんたいったい……って,えぇぇ!?」
俯いて自分の世界に入ってた大河は出てきた竜児に勢いよく顔をあげ罵声をあげようとしたが,それは出来なかった。
だってそこには
「ああああんた。なに?何?その格好…?」
「いや〜そのあれだ!も…戻るから」
そう言う竜児の格好は上はまだ17歳サイズの時に寝間着として着てたパーカー。
そして頭以外の体をスッポリとパーカーに包まれているから気付きにくいが下も膝丈くらいの短パンを履いていた。
因みにに短パンは持ってないと下がるのでパーカーと短パンの端の方を安全ピンで止めている。
これで戻った時に手を離していても安心なのだ。

「準備は万全だ」

209 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/27(火) 04:41:11 ID:c03UCTX2


「ももももどるって,わ…わたし!!??」
わたし?何を言って…!!
もしかして…
「それはどもるの間違いじゃないのか?」
確かに大河は滑舌は悪いし,しょっちゅうどもっているが。
「ひゃー!!?……じゃ,じゃあ戻るって何よ!?」
確実な間違いを指摘され少し恥ずかしかったのだろう。
目には涙を溜めて顔が熟したトマトのようだ。
そして悔しかったのだろう。
睨みをきかせている。が,それでも迫力はいつもの3分の1だ。

「おう!!だから17歳の高須竜児に戻るつもりだから着替えた」
「…どうやって?」
んっ?そんな事も分からんのかこいつは…。
「どうやってって…そりゃあさっきまで着てた服を脱いでこの服を着たんだよ。あっ!!因みに上下は安全ピン「ちっがーう!!」で…」
今から今回一番の工夫を紹介しようとしていた竜児の言葉をブッタ切ったのは他の誰でもない,この逢坂大河だ。

「あんたなめてるの!?服の着替え方とか3歳の頃から知ってるわよ!!バカ!!このバカ犬!!エロ下僕!!腐れ外道!!」
「……腐れ外道…」
俺,腐ってる上に道外してたのか。泰子…すまん。
ショックを隠しきれない竜児がそこにいた。
俺は今まで大河の言葉で何回心を折られただろう…。

「そんなんで一々落ち込んでんじゃないわよ!!そうじゃなくて,どうやって戻るのよ?」
あぁ…そっちか。って…
「だっ,だからそれは…さっき言っただろ…」
「さっきって…?……!!いいいいやいや,おかしい。あんた絶対おかしい!!」
「おかしいって何がだよ?」
「だだだだって,…き…キスの事でしょ?」
「…ぉぅ」
改めて発言されるとやっぱり照れてしまう。
増してやそんな恋する乙女ちっく風な顔で言われると余計にだ。

210 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/27(火) 04:42:27 ID:c03UCTX2


お互い赤くなり俯いたままの沈黙は30秒ほど続いた。
が,その沈黙を破ったのは大河だった。

「…なんで?」
「えっ?」
「なんで私があんたにキスしなきゃいけないのよ!!」
…大河は泣いていた。
そして言葉を続けた。

「だってそうでしょ…お爺さんは好きな人からして貰ったらって……あんたの好きな人はみのりんでしょ!!」
「現に櫛枝にしてもらって戻れてねぇだろ」
「だからそれがおかしいって言ってんのよ!!…あんたの好きな人はみのりんなのよ。…なのに,なのになんで私に「察しろよっ!!」っ!?」
なんかムカついて,腹立って,悔しくて…俺は叫んでた。

「察しろよ…察してくれよ…」
「……竜児?」
「俺はこのままじゃいられねぇんだ。このままじゃお前の隣には並び立てねぇんだよ」
「っ!!?」
「並び立つには…お前の傍に居続けるには,お前の助けが必要なんだ。」
「ぁ…」
「だから…大河!!!」
ビクッと大河の身体が硬直する。

「唇じゃなくていいんだ。頬でも額でもどこでもいい!!…キス…してくれ」
「………」
「頼む!!」
俺はその場で土下座した。
この必死さ…違う!この真剣さを伝えたくて

「…った…よ…」
「えっ?」
「分かったって言ってんのよ!!」
「たいがぁ〜」
歓喜のあまり俺は大河に泣きついてしまった。
この身体になって甘えん坊になったのは間違いないだろう。
言っておくが俺の意志じゃない!身体が勝手にだ!!ほっ…本当だかんね!!

211 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/27(火) 04:43:38 ID:c03UCTX2


「泣くな!!だだ抱きつくな!!変な声だすな!!気持ち悪い!!」
そんな事言われたら俺,余計に泣いちゃうよ?

「だってよぉ〜これでやっと戻れるって思うと嬉しくてよぉ」
おいおいと泣き続ける竜児。
どうやら甘えん坊だけでなく泣き虫にもなってしまったようだ。
幼児特有のアレだな。

「ななななによ!?…ちょっと可愛いじゃない……って何を言わせるかぁ!!」
「おうっ!!?」
大河の膝になすりついてた竜児をカミナリ親父が『こんな飯食えるかぁ!!』と卓袱台をひっくり返すがごとく大河は竜児を放り投げてくださった。

「つ〜ってぇな!大河,いきなり何すんだよ!?」
「うううるうるうるうるさい!!あんたがいつまでも泣きついてるからでしょ!この万年発情犬!!」
「ぐっ…!!…だからって投げ飛ばすこたぁないだろ!?」
「うるさいって言ってるでしょ!!いいからあんたはそこで大人しくおすわり!そしてステイ!!」

ビシッと指示されて竜児は忠犬のごとく言われた通りにステイした。
て言うか,ただあまりの迫力に動けないだけだった。
「うむ!……。」
満足気な顔をして頷いたのも束の間,大河は竜児の目の前に行き正座をして俯いた。

「…たっ,大河?」
「黙れ…今集中してるんだから邪魔するな…」
はい。と俺は返事する他出来なかった。
竜児は待った。
ただひたすら大河の次の行動,言葉を待って待って,なんと主人に忠実な躾のなった犬だろうと自分で思う程待ち続けた。

そしてついに大河が動いた。

212 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/27(火) 04:44:53 ID:c03UCTX2



「よし!おい駄犬!」
んなっ!?こんなに待たせといて第一声が駄犬かよ!?
「お前なぁ」
「うっさい!!今私が喋ってんだからあんたは口を開くな!」
「ぐっ…」

なんなんだよこいつは?
なんでこんな急に機嫌悪くなってんだよ。
この沈黙の間にいったいお前の中で何が起きたんだよ。
思うのは勝手。だか口を開くなと言われた竜児は口には出せなかった。

「耳の穴かっぽじってよく聞きな!私は今から情けないあんたの為にほんとの本当にしょーーーがなく,き…きすをしてやる」
ゴクっと唾を飲み込む音が大河にも聞こえたんじゃないかってくらい部屋に響いた気がした。

「言っとくけど口じゃないからね!!ほっぺただかんね!!」
「わっ分かってるよ!!」
「…よし。…じゃあ,目…瞑って」
「…ぉぅ」
俺は目蓋を閉じた。


ギシッと畳が音をたてたのが聞こえた。
大河が座る俺の高さに合わせて手をついた事で軋んだのだろうか。
目を閉じているから分からないが俺はそう判断した。
それに…本当に微かだか温かいものが近づいているのも感じる。
やっべ。すげぇ心臓ドキドキしてる。ちょっと静かにしてほしい。
大河に聞こえちまうだろが!!

「………」ドキドキ
「………」
「………」ドキドキ
「…〜〜ぷはぁっ!!」
「!?」
止めていた息を解放したかのように大河が耳元で吹き出した。
俺はそれに驚き思わず目を見開いた。
そしてすぐに目線を下に落とした。
そりゃそうだろ?目の前…それも目と鼻の先とも言える程近くに顔を真っ赤にした大河と目が合ったら,なんと言うか…恥ずかしっ!!

っていうか
「何してんだよ。お前は…?」
「…ゼーゼー…いや。ゼーゼー…緊張して,思わず息…するの忘れてたら…ンク…呼吸困難になった…」
「………」
「…ふぅ…遺憾だわ」
やっぱこいつは根っからのドジだわ。

213 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/27(火) 04:46:00 ID:c03UCTX2



「はぁ…お前って奴は」
「何よ!?うううるさいわね!!ちょっとした事故じゃない!!」
「まだ何も言ってねぇよ」
「むっ!…チッ!!」
ったく。こいつだけは。
いつも通りの大河を見て思わず竜児は顔が緩んでしまう。

「なにニヤついてんのよ,気持ち悪い」
「んなっ!?にっ,ニヤついてねーよ!!」
「おーやだやだ。あんまち近づかないでくれない?小さくてもその般若面は変わらないのね」
あー怖い怖い。と,付け加えて口を動かす。

「はぁ…。なぁ大河」
なによ。とジト目で答えてくる。
「俺,早く元に戻りたいんだよ。このままじゃトンカツも作れないし食えないぞ。お前腹減ってんじゃないのか?」
「べ,別にそこまで減ってな…」グキュルルル
減ってないと言いたかったであろう大河の言葉は正直な体に遮られた。
「……//」
「…ほれみろ」
「うっうるさいわね!!ていうか、あんたちっさくなってからちょっと調子乗ってない!?それが人にものを頼む時の態度かしら!?」
「だからさっき土下座までして頼んだだろ?」
「ぐっ…」
大河は反論できない。
「んでお前は了解してくれただろ?」
「んだぁぁ〜!!分かったわよ!!テイク2いくからそこに座りなさい!!」
もう座ってるよと言いたかったが口に出せばまた虎が怒り出し進まないような気がしたので竜児は黙ってた。

「頑張れ私。あなたはやれば出来る子よ!!」
そう自分に言い聞かせ両頬をバチバチと叩き気合いを入れている大河をただボンヤリと見ていれるほど竜児はなぜか心が落ち着いてた。

214 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/27(火) 04:47:19 ID:c03UCTX2



そう竜児は落ち着いてた。
なぜだろうと自分でも思う。
別にドキドキしてない訳じゃない。寧ろ心臓の動きは急ピッチで動いてる。
でもドジな大河を目の前にしてこの安心感はなんだ?
櫛枝の時と明らかに違う気持ち…。
やっぱり俺は……

「目…瞑りなさいよ」
「おう!?」
いろんな思考をしてると声をかけられた。
ビクつくように驚いたけども竜児は素直に従った。

「すぅー…はぁ〜…では、行きます」
「…おう。もう呼吸困難起こすなよ」
「うるさいわね。分かってるわよ!」
再度深呼吸をして小さく気合いを入れた大河の声が聞こえた。

先ほどと同じように畳が鳴る。暖かみも感じてきた……


――――チュッ――――

そして暖かくて柔らかいものが俺の頬に触れた。
「!!」
その瞬間凄い勢いで竜児の体中の血液が暴れ出した。
ドクドクなんてものじゃない!
ドドドドッと腕が足が腹が背中が頭が全ての血液が血管の中でお祭り騒ぎだ。

「ちょっ!竜児!?」
大河にもこの暴れる血液の音が聞こえるのだろう。うずくまる俺を心配そうにどうしようと慌てている。

そして異変は起こった。
ゆっくりだけど腕が伸びてきてる。
足も胴も体全てがスクスクと大きくなっていく。
痛みもなにも感覚がない。
絶句と言う表現が合うような顔で大河もその異変をただただ見ていた。


そしてついにその怪奇現象が終わりを告げた…。

215 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/27(火) 04:50:07 ID:c03UCTX2
とりま以上。
次こそは最後(これ3度目)の投下になるはず。
早ければ明日!遅くても今週中に投下出来ればと思います。
3ヶ月放置サーセンでしたorz

216 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/27(火) 08:50:30 ID:eVaJXPhI
待ってたよ!
もう諦めかけてたから超嬉しい!
照れてる大河が可愛いぜー続きも期待してます!

217 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/27(火) 09:28:32 ID:EfOLEZU2
これは嬉しい不意打ちだ!
自分も同じく諦めかけてたけど、ずっと続きが気になってた
206君、君はグッジョブって事だよ!

218 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/27(火) 12:52:47 ID:Ho/61ZvK
うぉおおおおおお!
楽しみに待ってたぜぇええええ!
GJ!!!

219 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/27(火) 19:19:38 ID:J9rE14ZQ
2828

220 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/27(火) 23:11:18 ID:mPJzzs/6
>>215
おぉ、3ヶ月もたっていたのか!
まってたぜぃ


221 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/28(水) 00:07:00 ID:hqFR/9vN
「被告人逢坂大河は、麻薬である高須竜児のマフラーを使用。常習性が認められるので、高須家出入り禁止3日を求刑します」
検察側にはばかちー。弁護側にはみのりん。そして裁判長は北村君で、裁判員には2-Cの面々。
「裁判長!被告人は寒がりであり、マフラーの使用は当然です!高須竜児の物だったのは偶然であり、情状酌量の余地があります!激辛カレー1週間の刑が妥当です!」
身を乗り出して訴えるみのりんと、涼しげな顔でそれを眺めるばかちー。その中間の椅子に座る私。北村君はいつものように半裸だった。
「異議あり!被告人は何度も高須竜児のマフラーを使用していますし、一番濃度の高い脱ぎたてを好んでいます。更正も期待できません」
ばかちーの言葉に反論出来ないみのりん。あぁ……出入り禁止3日か。そんなに長い時間会えないなんて耐えられないよ……。寂しくて辛くて怖いよ竜児……。


「……いが……たが……大河!!」
「ふぇっ……?」
気が付くと同時、目の前に竜児のヤンキー面があった。
「……ゆめ?」
ぐしぐしと目をこすって意識を徐々に覚醒させる。……夢だったんだ。
「大丈夫か?すっげーうなされてたぞ」
心配そうに見詰める三白眼。
「な……なんでもない……」
こんな極悪面を見て落ち着いていく自分もどうかと思うが、嫌悪感は一切ない。
「なんでもねー奴は、寝ながら涙なんか流さねーよ」
「うぐ……」
もっとも過ぎて声も出ない。
「今度怖い夢をみたときは、俺を呼べ。竜虎は並び立つものだから、夢の中でも助けに行けるはずだ」
極悪面のくせにこんな事を言うのだ。
「ばかみたい」
口ではそう言いつつも、惚れ直したのは内緒。隠さなくてもこの鈍感犬には絶対わからないだろうけど。

222 : ◆Eby4Hm2ero :2009/10/28(水) 05:52:32 ID:1E27358o
>>221
確かにあのマフラーは大河限定の麻薬かもw



223 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2009/10/28(水) 05:54:15 ID:1E27358o
お題 「北村」「轢かれた」「ハート型」



「ねえ、名前で呼んでもいいかな?」
 微かに頬を赤らめながら、彼女はそんなことを言うのだ。
「お、おう?」
「……ダメ?」
「いや、ダメじゃねえよ。そうだよな、こ、恋人なら、そのぐらい普通だよな」
「よかった……それじゃ……竜児」
「おう」
「竜児♪」
「おう!」
 嗚呼、名前で呼ばれるという只それだけの事が、何故こんなにも幸せなのか。
「な、なあ、俺も、その……名前で、呼んでいいか?」
「もちのロン、リーチ一発裏三つだぜ!」
「お、おう……それじゃ……み、みの――」

 どすんっ!
「ぐぇっ!」
 突然の衝撃で目が覚める。
「何轢かれたカエルみたいな声出してるのよ」
「……誰のせいだよ」
 竜児を起こすべくボディプレスをかましてくれたのは、言うまでも無く逢坂大河。
「あんたがいくら呼んでも起きないのが悪いんじゃない」
 その姿はなぜかパジャマを着たままで。
「起きないって……おう、まだ2時じゃねえか! まったく、人がせっかくいい夢見てたってのに……」
「あら、それはちょうどよかったわ」
「……何がだよ」
「どうせみのりんのエロエロな夢でも見てたんでしょこのエロ犬。夢とはいえ親友を穢させるわけにはいかないもの」
「み、見てねえよ!穢さねえよ!」
「はん、どうだかね」
「それより何の用だよこんな時間に!」
「そうそう、北村君攻略のいい方法を思いついたのよ!まずハート型の座布団を用意して……あれ?それからどうするんだっけ?」
「おい」
「おっかしいわねー、夢ではばっちり上手く行ってたんだけど」
「……帰れよ。送ってってやるから」

「ふわ〜ぁ……」
 再びベッドに潜り込んであくびを一つ。
「さて、もう少し寝るか……」
 願わくば、さっきの夢の続きを見られればいいのだけれど。

「竜児」
「おう」
「竜児!」
「おう!」
 嗚呼、名前で呼ばれるという只それだけの事が、何故こんなにも幸せなのか。
「な、なあ、俺も、その……名前で、呼んでいいか?」
「今更何言ってるのよ。傍らに居続けるからって言ったのは竜児じゃないの」
「た、大河!?」
 そう、何時の間にか目の前に居るのは逢坂大河。その右手に木刀を携え、左手に持つ鎖は竜児の首輪に繋がって。
「さあ、あんたはこれからずっと私のためにチャーハンを作り続けるのよ!」

 薄ぼんやりとした朝の光の中、目を覚ました竜児はただただ呆然と。
「……何でこうなるんだ?」

224 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/28(水) 20:49:13 ID:vTtNKj8U
そういうふうにできt(ry

225 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/28(水) 22:49:53 ID:hqFR/9vN
>>223
ワロタww

226 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/29(木) 00:55:28 ID:D28d/BIm
>>223
もう骨の髄から飼犬で候

227 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/29(木) 01:49:42 ID:0hkTMvWL
>>221
大真面目な裁判シーンがなんかワロタw

>>223
大河は竜児の夢の内容まで読めるんだ・・・
そして上書きw

228 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/29(木) 10:52:03 ID:C3TFCfbj
笑った

229 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/29(木) 21:51:44 ID:oiuFm2Rw
こんばんは。幼児化竜児です。
みなさんこんな駄作を待っていたと言っていただきアリガトウです(TOT)
本当待たせてすみません(´・ω・`)

今回,やっと書き終わったので投下したいと思います(・∀・)ナガカッタ

次レスからどうぞ。

230 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/29(木) 21:52:38 ID:oiuFm2Rw




「…………」
右手を見る。
「…竜児?」
左手を見る。
「…………」
「ねぇ竜児ってば!!」
そして両手で顔をおもむろに触って
「…大河…俺…どうなってる?」
自分の状況を目の前にいる小さい奴に聞いてみる…。
「…私の知ってる、いつもの竜児だよ」

竜児の体はなんの変わりもない高校生に戻っていた。
相変わらず目つきは恐ろしい三白眼だが。

「俺…戻って…る?…戻った…戻ったぁぁぁ!!」
「えっ!?ちょ!?うわっ!!」
喜びを押さえ切れず竜児は大河に思いっ切り抱きついた。
「ちょっ、りゅう…、ひゃあ!!」
そして自分の頬を大河の頬にスリスリと……これぞその名のごとく頬擦りをかました。

「たいがぁ〜ありがとう!お前のおかげだよぉ〜たいがぁぁ〜」スリスリ
「んなっ!わっ,分かったから!止めっ,かっ顔近いから…キモいから!」
「戻ったよぉ〜たいがぁ〜」スリスリ
「〜〜〜っ//わかった!分かったから離れろぉぉ!!」
ふんっ!!っと一声入れなんとか竜児から逃れる事ができた。
顔真っ赤にして息をつく。

「なんだよ連れないなぁ。もっと喜べよ。はぁ〜でもやっとこれで自由に動けるぜ」
両手をワキワキしながら体の自由さを身にしみ喜びを表す竜児。
「……とんかつ」
それを邪魔するがごとく大河は欲望を声に出す。
「おう!そうだったな。待ってろ、すぐ作ってやるからな」
コクンと大河が頷いたのを確認して竜児は台所へ足を向けすぐさま調理を開始した。

231 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/29(木) 21:53:36 ID:oiuFm2Rw


****

「ごちそーさま♪ふぅ、世は満腹じゃ」
どこぞの殿様のような言葉を吐き捨てその場に寝転がるフランス人形みたいな容姿の肉食の虎。
「お粗末さん。たく俺の分まで食いやがって…それと女の子がすぐ横になるな」
グチグチと小姑よろしく小言を言ってるヤンキー面した草食?の竜。

「うるさいっての。おばさん犬」
「おばっ!?って,おまえなぁ」
竜児がこのおばさん…もとい、ヤンキー面に戻って2時間近くたっていた。

早々と洗い片づけをすまし熱い茶を入れ転がってテレビを見てる大河にも差し出して,やっと一息つける時間ができた。

「いやしかし不思議な体験だったなぁ。この二日間で一週間分疲れた気がするぜ」
「全くよ。だいたいなんで会った瞬間に本当の事言わないのよ!?」
「だから,あんときは焦ってたし、さっきも言ったけどタイミングを逃したんだよ」
「それでも言うチャンスはいくらでもあったでしょ!?…じゃなきゃ、あああんな失態…」
「あ…!!」
昨日大河と色々あった事を思い出して竜児の顔に赤みが差す。
よく見ると大河の顔も…。


お互い黙り込みテレビからさほど面白くもないバライティ番組の司会者の声が部屋に響く。
「あ…あのさ」
このなんとも言えない空気の中、先に口を開いたのは竜児だった。
ビクッと一瞬強張った動きを見せるも
「…なによ?」
と視線はテレビに向けたまま平然を見せるように答える大河。

「昨日の夜の話しだけど…」
「………」
「…ごめんな」
「…なんのこと?」
「イブのことだ。その…お前がそんな風になってた事知らなくて、独りにしちまって…ごめん」
「………」


大河は未だテレビ画面だけを見つめていた。

232 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/29(木) 21:54:48 ID:oiuFm2Rw





「あの…俺…」
「嘘だから!!」
「えっ!?」
「あれ嘘。冗談なの。作り話なの」
「お前なに言っ…」
てんだよと続けて言おうとした竜児だが、大河は遮るように起き上がりテレビを消し卓袱台を挟んで体をこちらに向けた。

「あんたもまだガキね。あんな作り話信じるなんて」
ははんっと笑って見せながら話す大河にズキンと心が痛む。
無理してる…
それが手に取るように分かるから。

「あの時お前はまだあれが俺だって知らなかったんだろ?」
だからなに?と言いたげな顔で見てくる大河に竜児は言葉を続ける。
「知らないガキにあんな嘘言う必要ねぇじゃねぇか!辛そうな顔する必要ねぇじゃねぇか!!泣くわけねぇじゃねぇか!!!」

思わず怒鳴るような口調になり声も大きくなってしまった。
大河を見やると怒ってるような、でも今にも泣き出してしまいそうな顔で竜児を睨んでた。
だが竜児も後には引けない。
俺は真相が知りたい。今の俺で大河の本当の気持ちを知りたい。聞きたい。

「お前…俺のこと好きなんだろ?」
「んなっ!?なに自惚れてんのよ!!」
「好きなんだろ?」

こんな上から目線自分には割に合わないと分かってる。
自惚れてると言われてもしょうがない。
でも…ここは引けない!
「大河!!」
「――っ!!………ょ…」
「えっ?」
「好きよ!!…すき!…えぇそうよ!…わたしはりゅーじが好き……クッ…すき…なの……大好き…」
その告白は泣きながら…泣き叫びながら告げられた。
「…ヒグッ…ムカつく…クッ…これで気…スンッ…すんだ…でしょ…ヒクッ……なん…なょ…あんた…ヒクッ……くやしい…スンッ…ばか……ヒグッ…」
「…大河」

俺は大河の傍に行き、その小さい身体を優しく抱きしめた。

233 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/29(木) 21:56:00 ID:oiuFm2Rw




今この部屋で聞こえるのは時計の秒針が進む音。
俺の腕の中に包み込んだ大河のすすり泣く声。
…それと二人の鼓動の音だけだ。

「……竜児」
「おう。……なぁ大河。俺が櫛枝にキスしてもらって戻らなかった理由…そしてお前にキスしてもらって戻れた理由…分かるよな?」
「……」
反応がない。でもその反応で俺は理解する。

「…俺が好きなのは櫛枝じゃなかった。確かに昔は櫛枝の事が本気で好きだった。でも…」
大河に出会ってからも俺は櫛枝を想ってた…でもそれは好きの延長戦でそう思い込んでただけだったんだ。
「でも今は違う!!俺は、俺が好きなのは…大河…お前だ!!」
「…りゅ…じぃ…」
「好きだよ大河…待たせてごめん。独りにさせてごめん…。気付かせてくれてありがとう」
「ぅぁ…わあぁぁぁぁぁ〜〜ん」

大河も竜児の背中に腕をまわしこの優しくて温かい胸の中で大河は泣いた。
今まで溜め続けてたものを全て吐き出してぶつけるように。
そしてその全てを竜児は大河ごと受け止める。


――やっと並び立てた――


****


30分は泣いただろうか?
大河も涙はまだ出てるがだいぶ落ち着いてきた。「…スンッ」
「大丈夫か?」
コクンと頷きながら鼻を啜る。
それを見て竜児は微笑みながら大河の髪を優しく撫でてやる。
「ね…りゅーじ」
「おう?」
「夢じゃ…ない…よね?」
はぁ!?この女まだ信じられんのか?なぶり殺してやる!!…なんて事は塵ほども思ってない訳で。でも最初の方は米粒程は思ってしまった
「…悪いが現実だ」
「ほんとに?」
「…なんでそう思うんだ?」
本当に信じてない…と言うか不安そうに聞いてくるので、俺はその不安を聞いてみた。

「だって…今と同じ様なやり取り夢で何度も見た…」
「……」
「嬉しくて幸せで…でも結局それは夢で…目が覚めたら現実に戻されて…私じゃなくて、みのりんの事が好きな竜児がいる」

234 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/29(木) 21:59:06 ID:oiuFm2Rw




…だから夢じゃないかって不安になる。
涙を流しながら大河はそう言った。
本当、バカな女だなと竜児は思う。
不安を払ってやるように強く抱きしめてやる。
それでもまだ足りないのか背中に回ってる腕が震えてる。
だったら夢とは違う、夢じゃないよって証拠を見せてやるよ。

大河の肩を掴んでゆっくりと体を離す。
?マークでも上に付いてそうな顔で見上げてくる
「んむ…!?」
その大河の薔薇のような唇に自分の唇を重ねた。ttp://imepita.jp/20091029/027670

「んン〜…はぁっ…りゅっンチュ…」
驚きと恥ずかしさがあってか大河は逃げるように唇離す。…が、俺は大河のうなじを掴み引き寄せもう一度唇を重ねた。
乱暴かもしれないが、舌だって強引に入れてやった。
こうでもしないと大河は夢から抜け出せないと思ったから。
「んっ…はぁ…ン…クチュ…」
次第に大河も俺の首に腕を回し舌を絡め応えてくれた………


どれ程の時間口付けを交わしていただろう?
短いようで長い。長いようで短い。
そんな時間が過ぎ二人は唇を離し寄り添うように抱き合った。
「夢じゃないからな」
「…うん。嬉しい…ありがと…竜児大好き…」
「俺だって大好きだ」
クスクスと笑い合って抱き締め合う。
そんな幸せな時間もタイムリミットはくる。

時刻は夜の11時。
『泊まってけよ』
…なんて言える程の軽い奴ではない高須竜児(17)。
そんなこと大河は十二分に承知だ。
「そろそろ帰るね」
「おぅ。送ってくぞ」
「いいよ、隣だし」
「でも…」
まだ大河と一緒にいたいし…とは思っていても口に出せるような男にまだなれない竜児。
「それより明日の朝、ちゃんと起こしに来てね」
「おう。そりゃいいけど珍しいな、休みの日なのに」
「だって目覚めた瞬間に竜児におはようって言いたいんだもん」
「ははっなんだそりゃ」
(ちくしょー!!可愛いじゃねーか!!)
もちろん顔は真っ赤である。
「へへ♪じゃ、また明日ね。おやすみ竜児」
「おう。おやすみ大河」

そうしてカンカンカンと大河が階段を駆け下りる音が鳴り止むのを確認して竜児は寝支度を始めた。

235 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/29(木) 22:00:38 ID:oiuFm2Rw



階段を下りて道に出た所で足を止める。
高須家の方を見やる。

夢じゃない…

先程の出来事を思い出しボンっと一気に紅くなり1人クネクネと身をよじりながら地団駄を踏む…
まぁ、端から見れば変質者とも言われてもしょうがない小柄な美少女がそこにいた。

キス…しちゃった…

夢では見なかったその行為が頭から離れず、にへら〜っと顔が緩む。

いけない!!こんなんじゃ私まるで変態みたいじゃない!
そう自分を言い聞かし顔を整える。
しかし自然と指が唇に触れる。

…あいつのすごく熱かった…

そしてまた、にへら〜っと……無限ループって怖くね?

そんな事を繰り返してた時に大河は自分が小腹が空いてる事に気付く。
「いっぱい泣いちゃったからかな?」
竜児になにかねだろうとも思ったが、さっきおやすみと言ってしまったし迷惑とも思ったので1人コンビニに行く事にした。

****

おにぎりだけのつもりだったが結果的に言うと肉まんとプリンも買って来てしまった。
コンビニから出てちょっとするといい匂いが漂ってきた。
なんとなーくその匂いの方向に足を向けると屋台のおでん屋さんがポツンとあった。

「まぁ冬だし,おでん屋さんも出てきてるわよね」
そんな事をボソっと口ずさみ通り過ぎる時さり気なく中を覗いてみたら
「あっ!!」
見知った顔を発見した。
「んっ?おぉ!!小学生のお嬢ちゃんじゃないかい!!」
「誰が小学生じゃい!!って言うか酒くさっ!!」
今回の珍事件の黒幕とも言えるあのお爺さんが1人酔っ払いながら飲んでた。

「はははっすまんすまん。君もあのおチビクンと一緒の高校生だったね。…で、高須君は元に戻ったかね?」
「おかげさまでなんとか」
「それはそれは。あっ!一杯一緒にどうかね?」
「お酒は飲みません!」
マジうざく、さっさと帰ろうと軽く返事してあしながす。
「そりゃ残念。なら今回のお詫びって事でジュースでも持って帰って飲みなはれ」
そう渡されたのは見覚えのある禍々しいピンク色の缶…そしてピーチ味。

だが大河はそれがなにか知らない…。

236 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/29(木) 22:01:45 ID:oiuFm2Rw


****


翌朝。天気は良好。雲一つない快晴。気分はスッキリ爽やか。
そんな中、竜児は朝食の準備をしていた。

「今日で冬休みも終わりか」
思えばこの冬休みは色んな事があった。
クリスマスに櫛枝に振られ,年末にインフルエンザで倒れ,あの不思議な体験をし,そして大河と…。
あまり良いことはなかったが結果的に全てを覆す程の良いことがあったのでヨシとする。
そう言えば今日夜にも泰子が帰ってくるな。
「さて準備も終わったし我が家のお姫様でも起こしに行くか」
そう言うと竜児は愛用のエコエプロンを外し冬の朝は寒いので上着をはおり高級マンションへ足を運んだ。


「おじゃましますよっと」
慣れたもので合い鍵で玄関の鍵を開けズカズカと上がり込み寝室を目指して歩いてゆく。
寝室に着きゆっくり扉を開けると布団に体全てをくるませてる塊を見つけた。いつもの風景だ。

「大河ぁ〜朝だぞぉ〜…ん?」
天蓋付きのベッドに近付いた所で変な違和感を感じた。
布団の盛り上がりがいつもより小さい…どんだけ縮こまってんだこいつは?まぁいいか。
そうして布団に手をかけ
「大河ぁ,起きろよっと…!!?」
バッと布団を捲り上げたと思ったらすぐさまバッと元に戻した。

えっ?えっ?何、今の?

竜児は固まった。
今、未確認生物を発見してしまったから。
「ん…ぅん…」
そしたら布団の中の未確認生物が今,目を覚ます合図のような声を出した。

そして、布団の端からプニプニしてそうな…例えるなら子猫の肉球の様な小さな手が出て布団を掴み、続けてこれまた小さな頭、顔、でもって大きくまん丸したあどけない瞳をした幼少がピョコっと姿を現した。
「…あ…たったい…が…?」
竜児は息も絶え絶えに声をかけるとベッドの中の小さな女の子は,にぱーと笑い
「へへ…りゅーじ…おはよぉ〜」
っと声を出した。

237 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/29(木) 22:03:22 ID:oiuFm2Rw




「おっおはよ…って、大河…だよな?」
「ふぁぁ〜?なに言ってんのよ?当たり前でちょ…!?」
欠伸をしながら布団から抜け出してた大河も自分の声と最後の語尾に違和感を感じ取った。

なに?今の?…そう言いたげな目で竜児に視線を送る。
「大河…お前,鏡見てみろ」
不思議に思いながらもベッドから降りて鏡台の前に行く。

あら?この鏡こんなに大きかったかしら?

大河は寝起きの為まだ頭がちゃんと働いてないのだろう。
取りあえず鏡台の前にある椅子に登る。
そして目の前にある鏡に写し出された自分の姿を見て…
「な…!?なんじゃこりゃ〜!!?」
大河はバッチリ目が覚めた。


「大河。昨日俺ん家出て真っ直ぐ帰ったんだよな?変なもん食ったり飲んだりしてないか?」
「………」
「…なんか心当たりあるのか?」
「…分かんないけど…じちゅは…」
昨日真っ直ぐ帰らずコンビニに行った事。
帰りにお爺さんに会ってあるジュースを貰った事。
そして家に着いて食べ物と一緒にジュースを飲んだ事を説明した。


「そのジュースって…」
竜児が恐る恐る聞いてみると、大河はアレ。と言ってテーブルを指差した。
そこには竜児にとって嫌と言うほど見覚えのある 禍々しいピンク色でピーチ味の飲み干された缶が…
「あんのジジイ…もう配るなとあれほど言ったのに」
「どうちよぉ〜りゅーじ」

もう一度大河を見やる。
元々体つきが小柄なせいか、どう見ても最近言葉覚えましたよ的な2,3才児にしか見えない。
だからしゃべり方も赤ちゃん言葉っぽいのか?
アタフタと焦ってる大河に
「元に戻りたいか?」
そう聞いてみる。
「もっ、もちろんよ!!」「だろな」

今回は竜児の時みたいに焦る必要はない。
だってもう戻り方は知っている。
だから…
「そうか。…なら、竜児お兄ちゃんって呼んでみな」ニカッ
「んなっ!?///」

今日一日、この幼児化大河をイジメて楽しむのもいいかも知れない。
ttp://imepita.jp/20091029/028300


END

238 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/29(木) 22:05:45 ID:oiuFm2Rw
以上で幼児化竜児終了です。
約半年間wお付き合いいただきありがとでした(・∀・)

239 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/29(木) 22:16:54 ID:PtyXwRP4
御疲れ〜〜


240 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/29(木) 22:17:07 ID:qbt5mBcU
おつかれさまでした

241 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/29(木) 23:43:23 ID:2K2mRK4j
いいねいいね、GJでしたー!
小さくなった大河も挿絵も可愛くてすごく良かったよ、お疲れさん

242 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/30(金) 09:00:28 ID:L8PnVCsC
オチがΣ( ̄□ ̄;

243 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/30(金) 09:42:22 ID:rgqJYvQs
「竜児ってさ、本当に私のこと好きなのね」
「なんだよ藪から棒に」
「ほら、この記事見て」
「なになに…日本人は夫婦間の性交渉が世界レベルで低い…不妊治療に300万…」
「ね。それに比べたら竜児と私は…もう、40代になったのにエロ犬なんだから♥」
「あー、まあ否定は出来ない。お前のこと大好きだしな」
「うふふふ。竜児だーい好き!」
「おう♥」


ギシギシアンアン



「ちゃんと避妊しないとな」
「そうね。さすがに七人目は無茶だわ。子供が20歳になったとき私たちもう60代だもんね」
「ところでお前更年期障害とか大丈夫なのか?」
「ううん、全然平気」
「見た目からして30代前半だもんなあ…」

244 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/30(金) 12:40:47 ID:5L9rDuLr
>>238
お疲れ様でした!
心がほんわかしたよ
ついでに幼児化大河編も……

>>243
頑張りやさん夫婦めwww

245 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/30(金) 12:41:23 ID:5uByApU2
>>238
幼児化竜児から幼女趣味竜児ですね、分かりますww

ギシアンも久々に見たな、乙だぜ!

246 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/31(土) 01:30:20 ID:naWeAQRf
「なんか今夜は冷えるわね」
「おう。北海道の方に真冬並の寒気が来てるらしいからな」
「ふーん……まぁ、私には専用人型湯たんぽがあるから良いけど」
「……湯たんぽ呼ばわりしといて満面の笑みで抱き着くんじゃねぇよ」
「いいのよ。あぁーやっぱこの感じよねぇ〜。はぁー、落ち着く〜」
「まぁ、俺も気持ちいいから良いけどよ」

「「…………」」

「大河」
「ん?」
「久々に、その、するか?」
「……ドエロ犬。ホントにムードも何も無いんだから」
「おう、そ、そうだよな。悪い。今のは忘れてくれ」
「けど、そういうとこも嫌いではない」
「……おう?」
「良いよって言ってんのよ宇宙エロ犬!」
「なんか壮大な犬だな」
「あんたのエロエロ妄想に比べたらまだ足りないくらいよ」
「ならば、その妄想全てぶつけてやる」
「ひゃー」

ギシギシアンアン

247 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/31(土) 03:35:49 ID:ScdZn1Y6
>>243
>>246

いいね!
ギシアンってなんか、落ち着くわ〜

248 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/31(土) 11:41:24 ID:eUO9ZgIn
このスレだったと思うんだが、大河が竜児の言葉を録音編集して都合の良いように作り替えて学校でMD聞いてるssなかったっけ?知ってる人いたら教えて下さい。

249 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/31(土) 12:10:03 ID:dpXaA8no
多分これだね
ttp://tigerxdragon.web.fc2.com/index/SS13/683.html

250 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/31(土) 12:56:49 ID:eUO9ZgIn
それDA!!
ありがとう!!

251 :代理:2009/10/31(土) 17:30:31 ID:eUO9ZgIn
名前:とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero 投稿日: 2009/10/31(土) 05:21:05 ID:???
>>1-4乙です!

さて、本スレ……というか2chの大量規制に巻き込まれ中なので、こちらに投下します。代理投稿歓迎。

とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero:2009/10/31(土) 05:21:55 ID:???
お題 「シール」「マドレーヌ」「ちんすこー」


「見て竜児!沖縄フェアとかやってる!」
「……何も買わねえぞ」
「えー!?ちんすこー!さーたーあんだぎー!」
「大河……今日は何の為に駅ビルまで来たのかわかってるか?」
「新しいお店の、絶品って評判のマドレーヌを買うため」
「正解だ。ついでに言うと大河が遊んだり買い物してる間俺がずっと並んでて、さっきようやく買えたばっかりだ」
「何よ、お菓子はいくらあってもいいじゃない」
「駄目だ。せっかくの絶品マドレーヌだぞ、じっくり味わわないとMOTTAINAIじゃねえか」
「何よ、この貧乏性」
「それだけじゃねえぞ。俺はこのマドレーヌの味をしっかり確認して、出来ればうちでも再現したいんだよ」
「いいわよ、私が自分のお金で買うから。そんで竜児には分けてあげない」
「……また太るぞ」
「……う」
「あのダイエット地獄をもう一度経験したいってんなら止めねえけどな」
「……ううう」
「来年になれば修学旅行は沖縄なんだし、焦ることはねえだろ」
「……3ヶ月近く先の話じゃないのよ」
「うーん……ちんすこうは流石に無理だと思うけど、サーターアンダギーなら今度作ってやるよ」
「本当!?」
「あれって確か沖縄の家庭のおやつだろ。ちょっと調べればなんとかなると思うぞ」
「よし、よく言った!うちに来てマドレーヌを食っていいぞ!」
「光栄であります、サー」
「あ、そうだ。竜児、プリクラ撮っていかない?」
「はあ?何だよ突然」
「さっき、ちょっと面白そうなの見つけたのよ」
「まあ、構わねえけどよ……」


 生徒手帳に貼られた小さなシール。
 それが呼び起こす記憶は、かつての輝ける日々。
 そこで共に居た大河は、今は遠い空の下で。
 だけど、必ず、いつか、また。


252 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/31(土) 17:40:24 ID:dpXaA8no
おお、気付かなかったと思ったら避難所の新スレ立ってたのか。
規制の関係で需要も上がりそうだし、まとめ人の良い仕事ぶりには脱帽だね!

>>251
会えない期間のお話は切なくていいね!

253 :代理:2009/10/31(土) 21:21:02 ID:dpXaA8no

まとめ人 ◆SRBwYxZ8yY[sage] 投稿日:2009/10/31(土) 20:55:32 ID:???

まとめサイト更新しました。
ページが長くなってきたのでスレッド別一覧を別ページに分けました。
不具合等がありましたらご連絡ください。

アク禁に巻き込まれた方は、>>3の避難所の方に退避してくださいー
http://jbbs.livedoor.jp/anime/7850/



ぐぐぐ、まだ規制が解除されず…

254 :虎注 代理:2009/10/31(土) 21:23:24 ID:dpXaA8no
90 名前: ◆wVNPBvxl56[] 投稿日:2009/10/29(木) 00:18:52 ID:ToaBLmBU
アク禁になっていました。私に死ねと。

91 名前:虎飛び出し注意(1/4) ◆wVNPBvxl56[sage] 投稿日:2009/10/29(木) 00:23:25 ID:???
しかもsage忘れるという失態。
知らない方ははじめまして、覚えておられる方はご無沙汰しております。
虎注の人です。
気がつけば半年近く。
その間保管庫にサイトバレし、背中の痛みに唸り、pixivに逃避するなど色々ありました。
色々ありましたが虎注を終わらせるために帰ってまいりました。

*

255 :虎注 代理:2009/10/31(土) 21:29:25 ID:dpXaA8no
おかえりなさい!
今日の投下分の前に今までの投下分も貼っておきます。

ttp://tigerxdragon.web.fc2.com/index/SS07/448.html
ttp://tigerxdragon.web.fc2.com/index/SS07/448b.html
ttp://tigerxdragon.web.fc2.com/index/SS07/448c.html
ttp://tigerxdragon.web.fc2.com/index/SS07/448d.html
ttp://tigerxdragon.web.fc2.com/index/SS07/448e.html
ttp://tigerxdragon.web.fc2.com/index/SS07/448f.html

この読きが↓になります。

256 :虎飛び出し注意(1/4) ◇wVNPBvxl56:2009/10/31(土) 21:30:28 ID:dpXaA8no

 竜児はHRぎりぎりの時間になってから教室に戻ってきた。偏執的なまでに清掃された教室に、
どこか座りの悪い思いをしている教え子たちの間に流れる微妙な雰囲気を過敏に察知し、
ゆりちゃん☆先生(独身)は思わず尻込み、大人げなくビクビクしながら教卓に着いた。
怯える担任のHRもその後の授業も特に滞りはなかったが、竜児は授業が終わるたびに、
有無を言わせぬ早足で教室から姿を消すのだった。

「おおっと高須くん、そうは問屋が卸さねえ」

 それも昼休みまでの話だった。弁当片手にそそくさと教室を後にしかけた竜児を捕まえたのは、
(竜児にとっては)思いもよらぬことに実乃梨だった。

「あ、いや、俺は……」
「まあまあまあまあまあまあまあまあ……」

 意外な展開に虚を突かれた竜児はなすすべなくあれよあれよと席に着かされる。
 その席の横には既に大河が陣取っており、反対側に椅子を引っ張ってきた実乃梨がハアどっこいしょ!
 と腰を下ろしたことにより、竜児は逃げ道を失った。

「あんた何やってんの? 一人で食べる気だった? 便所飯?
 みじめだわね。哀れすぎて言葉もないわ。誰にいじめられてんの? ばかちーとか?」
「お前な……」

 いじめっ子がいるとしたらそれは大河だろう。
竜児の横目に映った大河は何事もなかったかのように弁当の包みを解き、内容に視線を走らせた。
 肉を探しているのだ。

「亜美ちゃんがいじめてるわけないじゃん。あんたじゃあるまいし、何が楽しくて……」

 どこからともなく姿を現した亜美は大河と実乃梨の間で小さくなっている竜児を見て、
にやあと嗜虐的な笑みを浮かべた。

「それとも、亜美ちゃんにいじめてほしい……?」
「……遠慮しとく」

 竜児は目を逸らそうとしたが、どちらを向いても誰かがいるので結局下を向いて小さくなった。

「ばかちーまで出てくるわけ? やめてよねややこしくなるから」
「そうだぜーあーみん、昼ドラだぜー」
「昼ドラって……あー」

 亜美はすっと目を細めて、ふふんと笑った。

「へーえ? そっか、そういうこと」
「何一人で分かってるんだお前は」

 不穏な笑顔の二人に挟まれて恨めしげに亜美を見上げる竜児。勿論知らぬは竜児ばかりなり。
やたらと挑発的な大河に抱きかけた妙な意識をごまかすためになるべく顔を合わせないようにしていたのに、
思わぬ加勢によって牛歩戦術も跡形なく、どのみち夕食時までの期限つき先送り作戦ではあったものの、
何ら心の準備もないまま竜児は矢面に立たされてしまったのだが、その思わぬ加勢が他ならぬ実乃梨だったり、
大河が昨夜のことをおくびにも出さない上、眠れぬ夜すがら考えても分からなかったことを、
ちらっと様子を見ただけの亜美に看破されてしまったりと、竜児の混乱は増すばかりであった。


257 :虎飛び出し注意(2/4) ◇wVNPBvxl56:2009/10/31(土) 21:31:24 ID:dpXaA8no

「え〜高須くんがバカだから分かんないだけじゃないのぉ?」

 まるっきりバカにしきった調子で竜児の鼻を弾くと、亜美は踵を返した。

「まあ、よかったんじゃない? 逃げ道がなくなって。
 実乃梨ちゃんもタイガーも、安心していいよ。亜美ちゃんそんなとこに割り込んだりしないから。
 でも……高須くんがどうしても逃げたいっていうんなら、匿ってあげてもいいけどね」

 その振り向きざまの意外に屈託のない笑顔はどういうわけか竜児の肌を粟立たせた。
これが魔性って奴か……感慨に浸るのも束の間、

「フム、あーみんめ中々やりますぞ?」
「ばかちーらしい姑息な手だわ」

 敵もさるもの、などと頭越しに会話されている竜児である。

「まっ、気を取り直してお昼にしよっかね!」

 自分の弁当箱を開ける実乃梨に倣い、竜児も蓋を取る。内容は当然大河のものと同じだが、
実乃梨はほうっ、とうっとり顔。

「た、高須くん! その美味そうに煮しまったがんもどきを……俺っちのから揚げ(冷凍)と……
 トレードしちゃくれまいか……」
「え、ああ、いいけど」
「みのりん! これ同じだから! 交換しよっ!」

 大河の箸が素早く竜児の目の前を往復し、自分のがんもどきとから揚げを入れ替えた。
入れ替えたが早いか、から揚げは大河の口の中に詰め込まれていた。してやられた表情の実乃梨を見て、
目を白黒させるばかりの竜児だった。
 またしても水面下で何かが起きている。よく分からないが何かが起きているのは確実だろう。
うめーちょーうめーよなんつーのおふくろのあじっていうのーと悶える実乃梨を見ているのは楽しかったし、
実乃梨と一緒にお昼を食べられるのは嬉しいのだが、山積する疑問のせいで素直に喜べない。
まず席順が気になる。今までは大体この三人の組み合わせでは、どのパターンでも竜児が中央に来ることはなかった。
必ず大河と実乃梨が隣あうからである。数1の問題だ。ところが今竜児は二人に挟まれている。両手に華である。
 見方によっては。
 次に実乃梨の態度が気になる。これまでは友達とはいっても大河越しの遠慮のようなものがそこはかとなく
感じられたものだが、全くなくなっている。高須くん高須くんと、大河抜きに話しかけてくるのだ。正直ドキドキする。
大河は大河でそんな実乃梨の態度を受け入れているようで、且つ竜児に対する態度といえば、
ちょっと竜児ねえ竜児こら竜児竜児竜児竜児と、こちらはもとより変わらない様子だ。ひとり竜児祭である。
口もとにご飯粒をつけていたり、すぐに何かこぼしそうになったりと、気になって実乃梨との会話も楽しめない。

258 :虎飛び出し注意(3/4) ◇wVNPBvxl56:2009/10/31(土) 21:32:27 ID:dpXaA8no

「こ……これは完全に大河の世話焼きが高須くんの生活習慣の中に組み込まれている……ッ、侮りがたし! 大河!」
「おう、すまん櫛枝、今何か言ったか? 大河がどうとか?」
「……い、いやぁ、こんな美味しいご飯を毎日食べられるなんて、大河は幸せものだなあ、ってね」
「そうそう。私もう一生台所に立たない気がする」
「いや、そこはお前、やれよ。ちょっとは」

 竜児は何か重要な発言をスルーした。もしやそんなのは日常茶飯事で言っていることなのだろうか。
そして二人ともすっかり麻痺してしまっていると。実乃梨は背中に冷たいものを感じた。
核心に触れないよう、特別なものを抱かないように一歩引いた位置から竜児に接していたときは分からなかったが、
いざ線の内側に入ってみると、二人と実乃梨との間にはもう一つ高い壁がそそり立っているように思えた。
この二人は二人で居ることに慣れきっていて、普通の異性同士ならどう見ても意味深長などころか、
完全アウトな言動に対しても何とも思わなくなっているのだ。それは……それはどうなんだろう。
竜児が大河を異性として見ていないかといえば、全くそうというわけではないだろう。
少なくとも異性に払うべきデリカシーは働かせていると思う。ただしそれは「それなり」な範囲で。
 大事なのはギャップだ――実乃梨は魚肉ソーセージにぐいっとフォークを突きたてた。
いわゆる捨て猫を拾う不良理論。終始異性として意識している相手の当然と、
意識していない相手が不意に見せるいつもと違った一面のギャップ、そのどちらに心動かされるかと言えば、
それは後者ではないだろうか。その点大河に対しては、実乃梨は一歩出遅れているのだ。
大河は幾ら見慣れたってとびっきり綺麗な女の子だ。傍若無人なようで性格だって結構かわいい。
そんな大河の見慣れた姿に不意に異性を見出すようなことがあったら、かなり心動かされるだろう。
 実乃梨ならきっと一撃でオチる。
 それを言ったらあたしも意外にいけるか? ギャップで――フォークの背でピーマンの内側の粒々を潰す。
実乃梨は自分がおかしなキャラであることは自覚していた。だからこそ竜児の好意は、いろんな意味で衝撃だったのだ。
この私を? 何で? ほんとに? 嘘だろ? 気づいてからしばらくは動揺して人に心配されたものだ。
靴の左右を間違えたり、靴の上に靴下を履こうとしたり、靴紐同士を結び合わせて転んだり。
こんな、大橋で変と言ったら誰もが真っ先にその名が挙げる櫛枝実乃梨を、家事万能成績優秀品行方正な完璧超人高須竜児が?
しかしそれは、変だけど好き、じゃなく変だから好きという可能性もあるわけで、変だけど女の子なのよ☆
というギャップで意外性を狙うことはできないかもしれないのだが。

「櫛枝?」

 よほど変な顔をしていたのか、竜児は実乃梨の顔を覗き込んでいた。
 パッと顔を上げる。

「……あ、はははは、大河ぁ、油断しちゃいけねえよ、高須くんってかなりの優良物件だぜ〜?
 ぜひ嫁にって引く手あまただと思うけどなあ。ウチにも一人ほしいくらい」
「へっ?」
「そんなことないもん。ね、竜児、私今日朝ごはんの食器ちゃんと洗ったんだよ」
「なにぃ!?」

 そんなこと、というのは「油断」にかかっているのだろうが、竜児は気づかなかったらしい。
別の言葉にひっかかって、咄嗟に大河の両手を掴み、裏表をかわるがわるチェックしている。

「嘘だろ、どこもケガしてないじゃねえか」
「失礼ね。洗いものくらいでケガなんかするわけないでしょ」

 言いつつ、お粥程度で手を包帯だらけにしたのは大河であったが。

259 :虎飛び出し注意(4/4) ◇wVNPBvxl56:2009/10/31(土) 21:33:12 ID:dpXaA8no

「……げっ、あんた何涙ぐんでんのよ!」
「……大河お前、やればできるんだなあ」
「同感だぜ高須くん! これで涙を拭きな……!」
「おう、すまねえ櫛枝」

 差し出されたハンカチを素直に受け取る竜児だったが、実乃梨は「やるな」と大河を見た。
いつの間にか竜児との会話は不敵に笑う大河を介したものに戻っている。このペースはかなり手強い。
 だからこそ、やってやろうじゃん、という気にもなるのだ。

「あ……ところでさ」

 早くも弁当を食べ終わらんとしている大河に、味わえよ、などと思いつつ、実乃梨。

「あのとき、高須くん、なんで大河と踊らなかったのさ。権利じゃん」

 竜児はしばしぽかんとして、おぅ、と漏らした。

「そういやそうだった……なんか忘れてたな、あのときは。レースに勝つことしか考えてなかったし……」
「おっ、妬けるねえ?」
「いやっ……だってあれは、まあ、なんだ、んん」

 何と、否定しないよこの人は。これは本格的に妬けてしまう。否定すると思ったのだ。
実際実乃梨は「そんなんじゃねえって」と頑張る竜児を、どこかで期待していた。

「権利っていや、櫛枝も一緒じゃねえか。同着一位なんだから権利ならお前にもあるだろ、なあ」

 と竜児はなぜか大河に話を振る。

「そいやそうだわ。なんで言ってくれなかったのよ! 私みのりんとなら踊りたかったのに! 使えない駄犬ね……」

 打てば響くように、一が十になって返ってくる。おいおいそんなこと言っちゃっていいのかい?
実乃梨は竜児の反応を窺って、フォークを取り落としかけた。そこには罵られて悦ぶ変態の顔が……
もとい、満更でもない苦笑いの竜児がいた。「これこれ」という感じ。人は痛みに慣れるというが、
それであえて辛い食べ物を楽しむように、罵られることに快感を覚えつつあるのだろうか。文化が違う。
と実乃梨は遠い目をしそうになり、自分も辛党で怖いもの好きであることを思い出す。こりゃあ中毒だね。

「なあ知ってるかい……コーヒーは文化的な飲み物らしいぜ……」
「何言ってんだ櫛枝。
 ……っつーか大河、お前あんとき北村と踊ってたじゃねえか」
「うえっ……!? だ、だってあれはその……」

 ごにょごにょ言葉尻を濁す大河に何を思ったか、竜児は北村の方を見た。
 北村はまさにランチジャーの仕切を食べようとしていた。

260 :虎注 代理  ◇wVNPBvxl56:2009/10/31(土) 21:34:10 ID:dpXaA8no

これまで挿絵をつけてまいりましたが、
正直本編より時間がかかるという本末転倒っぷりなので、
余裕のあるときだけにいたします。誰に求められているわけでもないですが。

挿絵ではありませんがツンデレ発言をする大河を置いておきますね。
ttp://sakuratan.ddo.jp/uploader/source/date120520.jpg

261 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/10/31(土) 21:48:08 ID:jBv4E2MW
22.5w

262 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/01(日) 00:01:46 ID:lbTNtZ/z
幼児化の人に続いて虎注の人まで帰って来てくれるなんて嬉しすぎる
大河とみのりんの仁義なき戦いが熱いね!続きも期待してます


263 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/01(日) 01:08:03 ID:ECpttSwo
虎注うひょー!
目覚めたら読ませていただきますぜ!


以下チラ裏
酔っ払って腹を空かせた俺に、友人が余り物でチャーハンを作ってくれた。
大河の気持ちがわかった気がした。
そんな今宵。

264 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/01(日) 12:18:36 ID:sivwpoVv
その後、>>263とその友人は恋人同士になったそうです
めでたしめでたし

265 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/01(日) 18:22:59 ID:79dfx4b5
おつ

266 : ◆askgvpoGB. :2009/11/01(日) 21:27:41 ID:lbTNtZ/z

こんばんは。

規制の関係でかなり人が少ない印象ですが、
避難所の新スレをまとめ人様が立ててくれたので、
規制解除まではそこで凌いでいければいいなと思います。
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/anime/7850/1256747762/

自分は大丈夫だったので景気付けという意味も込めて>>196の続きを投下させて頂きます。
楽しんで頂けたら幸いです。
では次レスより。

267 :【 - holding hands - 】 34 ◆askgvpoGB. :2009/11/01(日) 21:28:49 ID:lbTNtZ/z


停車と同時に助手席のドアを開ける。後ろのドアもほぼ同時に開いたみたい。
携帯を持ったまま小走りに駆け寄り、タイガーと実乃梨ちゃんが出てくるのを見守る。

「うぐ……ううっ……はぁ……はぁ……」
「大河、病院着いたからね、あと少しだよ!」
「よし、進むぞ」

と言って救急隊員がストレッチャーの前後に付いて進んでいく。
裏口みたいな所から病院の中に入り、ほんの少し進んでから暗い通路の方に右折した。
実乃梨ちゃんは変わらずタイガーの手を握って話しかけていたけど、
待機していたお医者さんに呼ばれたみたいで二人で後方に下がって話している。
あたしは置いて行かれないように急ぎ足で進みながらタイガーの横に立って話しかけた。

「あんた……大丈夫?」
「う、うん……はぁ……はぁ……ねぇ……ばかちー……んんっ!」

そう言いながらフラフラとあたしの方に手を伸ばしてくる。
その手が余りにも弱々しく見えて……見てらんなくて、

「なに?」

と返事をしてその手を握る。

「……っ、…………りゅ、竜児……りゅう……じ……は?……ううっ!」
「うん。高須君、呼んだよ」
「そ……う…………うあああっ! ぐっ……ふぅ……ふぅ……んんっ!」

タイガーに痛みが走る度に、握られた手がぎゅううっと締め付けられる。
それは握りつぶされそうなくらい強い力で思わず顔をしかめてしまう。

「……っつぅ!?…………ちょっと、本当に大丈夫?」
「うん……うん…………竜児……なん……ぐっ!……はぁ……はぁ……なんて……?」

汗びっしょりになった顔で、必死に目を開けてあたしの方を見ている。
あたしには想像も付かない痛みと闘ってるはずなのに、泣き出しそうな瞳の奥には痛みよりも不安が宿る。
今にも消え入りそうな声とその視線に抉られたように胸が痛む。

「あ、あんた……そんな顔しないでよ……高須君、すぐ来るって、急いで来るって言ってたから!」
「……うん……はぁ……っ!……ありがと…………ふっ……りゅう……じぃ……」
「だ、だからあと少しだよ!? ね、タイガー頑張って!」
「怖い……よ……ばかちー……ううっ!…………一人は怖い……」
「し……しっかりしな! すぐに高須君が来るから! こんなんで負けんじゃないよ!?」

沈んでいきそうな己の気持ちに鞭を打ち、弱気になってるタイガーに檄を飛ばす。

「何よ……くっ…………優しく……ないん、だから……ふぅ……ふぅ……」
「そんだけ軽口叩けりゃ全然大丈夫だよ。あたしじゃなくて高須君に優しくしてもらいな」


268 :【 - holding hands - 】 35 ◆askgvpoGB. :2009/11/01(日) 21:29:43 ID:lbTNtZ/z

自ら口にしたその言葉が真実になって、タイガーが少しでも楽になってくれるように祈るけど、

「んっ!……――――――っ!!!」

大きな痛みの波が来たみたいで、声も出せずに歯をくいしばるタイガー。

「…………くっ!」

万力にでも挟まれたかのようにあたしの拳がギリギリと悲鳴を上げる。
指の根元の骨がその隣の骨と擦れあう音が聞こえてきて指がバカになりそうだ。
あたしの右手がそのまま握りつぶされないように、とにかく必死になってタイガーの手を握り返した。

「ちょ……ちょっと、タイガー!?」
「――っ! ……はぁっ……はぁっ……っ……」
「……すみませんが……そろそろ離れて下さい。急ぎます」
「あ……は、はい……」

ストレッチャーを押してる隊員があたしに話しかける。
いつの間にかタイガーを挟んだ反対側にはさっきのお医者さんと実乃梨ちゃんが戻って来ていた。

「大河、頑張って!」
「ふぅ……っ……はぁ……はぁ…………うっ……うん…………」

実乃梨ちゃんにそう言って、もう一度こちらを見るタイガーに目配せをする。
頑張れ、と口だけ動かすと、それに応えるように微かに頷いたのが分かった。

「……第3に運んでくれ」
「分かりました……おい」
「ハイ!」

と声を掛け合って、先ほどのお医者さんと救急隊員が急ぎ足、ほとんど駆け足でストレッチャーを押していく。
その後ろで実乃梨ちゃんと並び、追いかけようとした矢先に隊員の人に声を掛けられた。

「あなた方はそこで曲がって下さーい! 明るい通路に出たら右折して突き当たりに産科がありますのでー!」
「…………」
「………………」

はやる気持ちを抑え、言われた通りに早歩きで進むとすぐに明るくなって来た。
右折したところは産婦人科の外来になっていて、ちらほらと患者さんも見える。
さっきの通路は関係者用、もしくは救急用の通路だろうか……そんな事を思いながら進んでいくと、
突き当たりの壁に沿って左から準備室、分娩室、ナースステーションとプレートが掛かっている。

「ここ……だよね?」
「うん。ここしかないよね……」

そう言ったところでガラスの向こうに人影が見えてハッとする。
実乃梨ちゃんも同じらしく食い入るように室内を見るが、それは看護士さんだった。

分娩室と書かれた部屋の廊下側はガラス貼りになっていて室内は見渡せる。
けれど、まさか廊下を行き交う人に見せるわけにはいかないのだろう。
その大きな部屋の中には通路があって、そこから更に中の部屋に入れるようになっているみたい。


269 :【 - holding hands - 】 36 ◆askgvpoGB. :2009/11/01(日) 21:30:36 ID:lbTNtZ/z

「第3って言ってたよね……」
「うん……あっ!」

その看護士さんが個室のドアを開けて中に入ると、入れ替わるように先ほどの救急隊員の人が出て来た。
思わず個室の中を覗き込むが、よく分からない機器が見えるだけでタイガーは見えない……ま、当然か。
隊員の人はこちらに気付いたみたいで、軽く目礼をしてナースステーション側に歩いて行った。

「ここで間違いないみたいだね」
「うん……タイガー大丈夫かな……」
「それなんだけどさ、あーみん。さっき先生と話したんだけどね……」

と、実乃梨ちゃんが話し始める。
どうやらこの病院の先生がタイガーの罹りつけの先生に連絡を取ったらしい。
話を聞いた限りだと、これまでの経過に怪しいところがあったわけではないので心配しないようにと言われたらしい。

「……って、心配するなって言うけど、あんなに痛がってるのに?本当に大丈夫なわけ?」
「私もそう言ったよ、『予定よりも早いし、急に苦しみだしたのは何でですか?』ってね」
「そしたら……?」
「『それはこれから診ますので何とも言えませんが……胎児の姿勢が悪いとか、多分そのくらいの事でしょう』ってさ」
「はぁ?何その医者……ヤブなんじゃねーの?」
「ま、まぁまぁ……あーみん、ここでそんな大きい声出さないで……」

思ったより大きな声を出していたらしい。廊下にいる妊婦さんがこちらを見る眼差しが突き刺さる。

「ごめ……」
「それで……『顔色も悪くないしおかしな痛がり方というわけでもなさそうですので』って」
「……なるほど」
「『聞いてたよりも随分と小柄なんで痛い事は痛いでしょうがね、ははは』って笑ってたから睨み付けてやったさ!」
「それナイス! っつーか、真剣にやってもらわないと困るっつーの!」

実乃梨ちゃんに親指を立ててグッジョブサインを送る。
それを見て嬉しそうに笑っていた実乃梨ちゃんの顔がすぐに真面目なものに変わっていく。

「毎日見てたらそんなもんじゃないのかな……でも、でもさ、
 お医者さんがなんて言おうとも ……私は大河が心配で心配でしょうがないんだ……」

そう言ってガラスに手を付き、タイガーが運び込まれた部屋を見つめる。

「ビックリした……なんてもんじゃなかったね……ほんっと、どうなる事かと……」
「……あーみんごめんよ。私はずっと大河に付きっ切りで何も出来なかった……そのバックも……」

と言いながら、あたしが肩にかけているエコバックを見る。

「ううん。実乃梨ちゃんがタイガーに付いててくれたからこそ、あたしは動けたんだし」
「いやいやいや……本当に、目の前しか見えなくなっちゃうんだね……ああいう時ってさ……」
「うん……そうだね……」
「そんな時でも周りを見られるあーみん大先生はやっぱり流石ですなぁ〜」

ニカッと笑いながらこちらを見るので、あたしも苦笑い。張り詰めていた空気が少しだけ緩む。
室内に目をやって実乃梨ちゃんと同じようにガラスに手を付いたところで、

「痛っ!?」

と声が出てしまう。
思い出したかのようにジンジンとうずく様な痛みを感じ始めた。
よく見ると、さっきタイガーに握りつぶされそうになった手が真っ赤になっている。


270 :【 - holding hands - 】 37 ◆askgvpoGB. :2009/11/01(日) 21:31:46 ID:lbTNtZ/z

「ん?どした?」
「あ……さっき……」
「あらら、あーみんもやられちゃったかー」

すぐに察したみたいに顔をしかめて見せ、「ほら、私も」と、自分の左手を広げて見せてくれた。

「うっわ!? 実乃梨ちゃんもすごい事になってるね」
「うん。おれっちは救急車の中でずっと手を握ってたからね……」
「あいつ……馬鹿力にも程があるっつーの……」

憎まれ口を叩いてはみるが、本気でそう思ってるわけじゃない。
それで少しでもタイガーが楽になるのなら別に構わないと思う。
まぁ本当に握りつぶされたら洒落にならないけど……ね。

「ほんと、気を抜くとやられちゃいそうだったからさ、不詳この櫛枝も力の限り頑張らせて頂きました!」
「えっ……と……どういうこと?」
「いやさ……大河がね、苦しいのが……すげーすげー伝わってきてさ……負けてらんねえって思ったの」
「……うん」
「その……なんつーか……大河が握る力に負けてらんねえ……ってんじゃなくってさ、
 痛い、とか、苦しいって気持ちが伝わってきて……その気持ちに負けちゃいけないって、
 大河に分かって欲しくて、負けるなって励ましてやりたくて……
 だから私は……思いっきり大河の手を握り締めてたんだ」

自分の手の平を開いたり閉じたりしながら、ゆっくりゆっくり噛み締めるように語ってくれた。
――あたしはそんなに色々なものを込めてたわけじゃない……と反射的に思った。
ただ……必死になって手を伸ばしてる人がいたら、そしてそれが大切な人なら尚更……ほっとけるわけないじゃん、と。

「………………」
「いやだね、あーみん。そんなに見つめないでおくれよ、照れるぜー」

じっと実乃梨ちゃんを見ていたら、そんな事を言いながら照れ笑いされた。

「いやぁ、上腕二頭筋が思いのほか鍛えられてラッキーだったよ?あ、あと握力も付いた気がするぜ!」

と言いながら拳を作るけど、やっぱりその手は見ているだけで痛そうだ。
それにしても……相変わらず……実乃梨ちゃんって……

「ほんっと、誤魔化すのがヘタすぎて笑えるんですけどぉ?」
「ありゃりゃ……たははは…………まぁまぁ、細かい事はいいんだよー」
「あっははは! ホントうけるよー!」

などと笑いあう。こんな時に不謹慎だけど、ずっと緊張しっぱなしじゃとても持たない。
これから……だもんね。まだまだ……これからが長いんだから。

「そういえば高須君……何だって?すぐ来るって?」
「あぁ……うん。あいつ、すっげー慌ててたから亜美ちゃん心配だよ……マジで……」

あれから何分経っただろう、もう近くまで来てるのかな?
つっても、そもそも高須君の職場どこか知らないし……分かるはずもない。

「そっか……んまぁ高須君ならすぐに飛んでくるよね?」
「そりゃね。あんだけ……」
「ん?」
「あ……ううん…………何でもない」


271 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/01(日) 21:32:47 ID:ECpttSwo
>>260
GJ!
大河さん、サーセンw

大河のペースにのまれる実乃梨って新鮮〜
そして北村、何してるwww

>>264
「北村くん!私、北村くんが、北村くんの、こと……」
「ちょっと待った。逢坂、俺も気持ちを伝えなきゃならない相手がいるんだ」
「え?……へ?あれ?なんで竜児がここに?」
「高須!俺はお前のチャーハンに惚れたぁ!!」
「おう!」
「あの夜、お前が作ってくれたチャーハン!余り物で作ったとは思えない代物だった!そこに惚れた!」
「おう!」
「高須、俺に一生チャーハンを作ってくれ!」
「おう!!」
「な、なな!?ちょっと、北村くん!?竜児!?竜児ぃ!!」

「……っていう夢を見たのよ」
「おう……それまた……悪夢だな……」

272 :【 - holding hands - 】 38 ◆askgvpoGB. :2009/11/01(日) 21:34:47 ID:lbTNtZ/z

取り乱してたら……という台詞を飲み込んだ。
そう、高須君は慌ててるなんてもんじゃなかった、あたしの話の仕方が悪かったんだろうか……?
そんなことを実乃梨ちゃんが聞いたらきっと不安がる。あたしの心にしまっておこう。

「……あっちの、準備室ってところに行く?」

いつまでもここで立ち話してるのも邪魔だろう。
準備室と書いてある部屋は待合室のようでもあるし、椅子もあるだろうからそう言ってみたけど、

「ううん……ここのが大河に近い……私はここにいるよ……」

思い詰めたように呟いてタイガーのいる部屋を見つめている。
それはとても実乃梨ちゃんらしい選択だと思えた。

――それじゃ、あたしはあたしらしいことを……しようか……

「……うん、分かった。あたしはちょっと受付の方に言っておくね。
 怖い顔した男の人が来たら、第1……じゃない第3分娩室まで案内して下さいって」
「そいつぁいいね。何も言っておかないと一悶着ありそうだしねぇ」
「でっしょぉ?」
「……早く……来て欲しいね、高須君に」
「……うん。それじゃ行ってくるね」

ややしんみりした雰囲気を振り払うように明るく言って歩き出した。
少し進んでから振り返ると、実乃梨ちゃんは両手を組み合わせるようにして俯いていた。

そう……傍にいてあげられないあたしたちには……祈ることしか……出来ない。

産科の外来の前を通る。さっきはこの先で曲がったけど、今度はまっすぐ明るい通路を進んでいく。
所々ロビーのように広がっているところは小児科や内科の受付だったりして外来の患者さんも多い。
なるほど、この通路をストレッチャーに乗った患者が行き来するのはちょっと無理があるよね、と納得する。
かなり太いその廊下を進んでいくと十字路に出た。左右を見渡すと左手には先ほど入ってきた救急搬入口。
それじゃ受付は反対だよね、と右側を見ると、結構遠くの方にそれらしき一角と大きなドアが見えた。

亜美ちゃん冴えてる〜と半ば無理やり自分を褒めながら正面入り口とおぼしき方に歩き出すと、
向かいから来た男性があたしの顔を見るなり、

「あっ……川嶋亜美だ……」

と呟いてるのが聞こえてきた。
はん、あたしの顔もようやく世間様に広まってきたわね……なんてことは少ししか思わない。
……こういうのウザい。
今日はタイガーの家にしか寄るつもりが無かったから、顔を隠すものを何も持ってなかった。
あちゃー失敗したと思っても後の祭りだ。なるべく気付かれないように大人しくしておこう……

顔を伏せて歩きながら不自然に見えないようにエコバックを漁るようにしてると、タイガーの携帯が目に付いた。

「そうだ…………」

と呟く。タイガーの家族にも知らせなきゃ……早く知らせないといけないよね!?

入り口のドアを入ってすぐの所にある受付には女性が立っていたけど、それは後回しだ。
せかせかと受付の横を通り抜け外に出た。


◇ ◇ ◇

273 :【 - holding hands - 】 39 ◆askgvpoGB. :2009/11/01(日) 21:35:43 ID:lbTNtZ/z


天気は快晴。雲ひとつ無い青空が今はうらめしい。
ロータリーの向こう側に小さな木陰を見付けたのでそこを目指しながらタイガーの携帯を開く。

発信履歴のページを見る。竜児……119……竜児……みのりん……ばかちー……

「…………」

やっぱり携帯の名前もこれかと思いながらカーソルを下に進めていくと、『ママ』の文字を見付けた。

ピッ―― トゥルルル―― トゥルルル―― 

タイガーのお母さんか……出会いは最悪だった。五万円を無理やり握らされた苦い思い出が蘇る。
あの時、あたしら五人のガキが到底太刀打ちできない『大人』の象徴みたく立ちはだかった人だけど、
次に会った時にはその変わり様に驚いたものだ。

トゥルルル―― トゥルルル―― 

花嫁とまだ小さい男の子……タイガーの弟を抱えながら、旦那さんと四人で一緒に写真を撮ってたっけ。
竜児君とは後で撮るからどいてどいて……ってな感じで唯我独尊ぶりを発揮していたような……

トゥルルル―― ガチャ――

「はいはい、大河?どうしたの?」
「あっ、いえ。違います。あい……高須大河さんのお母さまでいらっしゃいますか?」
「え?……はい、私がそうですけど……あなたは?」
「川嶋です。川嶋亜美と申します。以前、結婚式でご挨拶したと……」
「あぁ! あのとびきり可愛い子ね。最近テレビか何かで見たわよ、最近忙しいみたいで何よりねぇ」

と、いきなり世間話になってしまう。……そんな場合じゃないってのに。

「あ、あの! それで大河さん……なんですけど……」
「何?あの子がどうしたの?」
「それが、さっき急にお腹が痛くなったってことで……その、救急車を呼んで……」
「あらあら、それは大変だったわね。ごめんなさいね、ご迷惑かけちゃったみたいで」
「い、いえ……それで今病院に着いたんです。で、もうじき生まれそうって、先生が……」
「あら。大分早いのね、確か来週だったと思ったけど……」

……何か違和感がある。このお母さんがやけにのんびりしてるからだ。
世間話の延長って感じで全く焦る気配がない。

「なんかあの子……大河さん、すごく痛そうで……それで心配で……」
「もうお医者さんに診てもらってるんでしょ?」
「え、えぇ……さっき産婦人科の方が……」
「何か言ってた?」
「えっと……ちょっと赤ちゃんの姿勢が良くないのかもとか、何とか……」
「なんだそんなこと。ま、それなら大丈夫そうね」
「ええっ!? で、で、でも…………」

お天気いいわねー洗濯物も乾きそうねー、くらいの軽い感じで言われて自分の耳を疑ってしまう。

「困ったわね、いま会議を途中で抜けて来たのよ。
 ちょっと事情を話してから出るから、そうねぇ……一時間くらい掛かるかしらね。場所はどこ?」
「はい……大河さんの家の近くにある……大橋総合病院ってところで……」
「そうだ。泰子さん……竜児君のお母さんにも連絡しないとね、私の方からしとくけど?」
「あ……はい。お願いします……」


274 :【 - holding hands - 】 40 ◆askgvpoGB. :2009/11/01(日) 21:37:16 ID:lbTNtZ/z

すっかりタイガーママのペースで話が進んでいく。あたしが話に付いていけないなんて滅多に無いのに。

「まったく……あの子には苦労させられたけど……なーんだ、自分の時はすぽーんって生まれそうじゃない」
「…………す……すぽーん?」

と言ったきり絶句してしまう。
この瞬間、あたしはもっと上品に歳を取るんだ、と心に誓った。
そのまま何も言えないでいると、少しの沈黙の後に呼びかけられた。

「川嶋さん?どうしたの?」
「い、いえ……」
「大丈夫よ、あの子、体力と根性だけはあるから。心配してくれてありがとうね」
「……はい」
「傍で見ると初めはビックリしちゃうけどね、そんなもんだから」
「はぁ……」

なんて、思いがけず逆に気遣われてしまう。

「竜児君も当然向かってるんでしょ?」
「はい。さっき電話したので、もうじき着くと思います」
「そう、ほんと助かるわー」
「高須君は、その……ものすごく焦ってたみたいで……」
「ふふふ、目に見えるようね。あの人は心配性だしねぇ……」

何だか高須君が馬鹿にされたみたいに感じられて、ついムッとしてしまう。

「そ、そりゃそうですよ、心配に決まってます。あたしだって……」
「だいじょぶだいじょぶ! 痛いって言ったってそりゃーあなた、産む時は誰だって痛いわけだし?
 今更ビビったって何も変わらないわよ」
「そ、それは……そうですが……」
「私の時なんか半日くらい始まらなくって苦しんだんだもの。
 その調子じゃ私がそっちに着く頃には終わっちゃってそうね。まぁ、出来れば苦労させたくは無いけど……
 『ほら見た事か、私の苦労が分かった?』って言ってやる楽しみが無くなりそう」

と言って朗らかに笑う。
あたしや実乃梨ちゃんや高須君との温度差に頭がクラクラしてきた。

「ま、とにかく向かうから、あなたは落ち着いてるみたいだし、安心して任せられるわ」
「まぁ……」
「あ、そうだ! あなた使えそうだし、芸能界で賞味期限が切れたらウチに来ない?」
「はっ!?」

今の暴言は何?つーか今タイガーが大変だって話をしてなかったっけ?と瞬間的に混乱する。

「私の秘書なんてどう? きっとあなた最高に似合うと思うわよ?こう言っちゃなんだけど、
 私もクールビューティーで通ってるから、あなたとツートップなら華があっていいわよね?」
「い、いや……今はそんな事より……」
「ふふっ、それもそうね、ごめんなさい。それじゃまた後で」

ピッ――

言いたい放題でこちらが面食らってる内に電話まで切られた。
何だったんだろう今の電話は……と呆然と携帯を見つめてしまう。

しかし……つい数年前、高齢出産を経験したとは聞いてたけど、余りにもあっけらかんとしていて拍子抜けした。
あれがおばさんの……いや失礼……経験者の余裕ってやつなのだろうか?
そんなものよーなんて受け流した口調は、投げやりな時のタイガーの口調とそっくりだった。
いやいや……全てにおいて強気で、マイペースで、口が悪くて、少しだけ下品なところまで本当に娘にそっくり。


275 :【 - holding hands - 】 41 ◆askgvpoGB. :2009/11/01(日) 21:40:34 ID:lbTNtZ/z

母は強しってやつ?確かにうちのママにも敵わないと思わされる事が多いけど……
今まで必死になってた分、毒気を抜かれたってわけじゃないけど、
なんて言うか……力が抜けたっていうか……抜けさせられたというか……
確かに本人はすごい痛いだろうけど……いつかは通る道だし、信じて待つのが一番っていうか。
他に何も出来ないし……でも何か出来る事があるんじゃないか、とか……あーもうワケわかんねー!

自動ドアを開けて病院に入る。携帯の電源を切り、ゆっくりと歩きながら物思いに耽る。

『―――毎日見てたらそんなもんじゃないのかな―――』
『―――初めはビックリしちゃうけどね、そんなもんだから―――』

そんなもの。か……その言葉で全てを受け流せたら楽になれるんだろうか?
そんなものさ、と割り切れるようになるのがオトナになるってことなんだろうか?

タイガーの痛そうな様子を見て……高須君の取り乱した声を聞いて……それでも……
そんなもんだしぃ?亜美ちゃん冷静だしぃ?気楽に行こうよーみんなーって……言えるのがオトナ?

確かに仕事はね、芸能界は特に……そんなもの、で受け流して、ジムで汗を流すなり、
お酒の力を借りるなりで、すぐにやってくる明日に備えないとならない。
じゃないと潰れちゃうし、周りも大概そんな感じじゃん?
あたしはもう何年も前からそういう世界で生きてきた。
自分の心を押さえつけて仮面を付けるのなんてお手の物。

そうやって……いつだって冷静に周囲を見渡して、気を使って、結果損な役回りだった事も少なくない。
今日だって、昔みたいに損な役回りだ。
タイガーの家じゃ慌てふためいて準備して、あげく高須君には怒鳴られて……
ほんっと、亜美ちゃんっていいやつ過ぎるんだよねーあはは、と自虐的に笑ってみる。

「………………ふぅ」

認めたくない……わけじゃない。
認めるのがほんの少し恥ずかしいだけ。あたしはあいつらが大切なんだって事を……ね。

苦しんでるタイガーの事も、切々と祈ってる実乃梨ちゃんの事も、
今どうしてるか分からない高須君の事だって、何とかしてあげたいって……思っちゃうんだからしょうがない。
それが損な生き方と言われたって構わない。
それが素のあたしなら……そのあたしで生きてってやるって……とっくに決めてたじゃない。

そんな事をぼんやり考えながら病院の廊下を進んできて、ふと我に返る。
あれ、と周囲を見回した時にはさっきの十字路まで戻って来てしまったようだ。
しまったな……受付の人に高須君の事を話すの忘れちゃった……どうしよう?

――――ん?

「キャー? って……今、聞こえたような……」

左を向いて、右を向いて……後ろを振り返って……その声の発生源らしきものを見付けた。
あたしの視線の先には……受付の子に掴みかからんとばかりに前のめりになって何やら話してる男の姿が。
可哀想に……ここから見ても分かるくらいハッキリと上半身を仰け反らせて、こっちの方を指し示しているようだ。

――――あれは。


◇ ◇ ◇

276 : ◆askgvpoGB. :2009/11/01(日) 21:41:17 ID:lbTNtZ/z

本日はここまで、ありがとうございました。

>>198>>199>>200>>202>>203>>204>>205
前回の感想もありがとうございました!
前作までは主に大河のために書いてたような感じですが、
今作は竜児の方に比重を置いてるつもりなので、色々と触ってもらえて嬉しい限りです。

ちょっと来週末は厳しいかもしれません。
それでは〜

277 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/01(日) 21:51:12 ID:ECpttSwo
>>276
乙!そしてGJ!
投下の邪魔してごめんなさい。

なんか、随所にリアルが詰まってる。
素晴らしいです。
ってか、竜児w

278 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/01(日) 21:51:22 ID:pTdlek+V
少しは書き込みが増えて始めて帰ってきた人だっているんだから
わざわざ人が少ないとか萎えること書くなよ

279 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/01(日) 22:54:02 ID:Zry4Le7I
>>276
GJ
竜児の反応が楽しみだわ〜

>>278
神経質になりすぎじゃない?
いま人が少ないのはどーしようもないし
こんな時こそGJすべき時だぜ

280 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/01(日) 23:03:59 ID:1cWm8REO
×バック
○バッグ

281 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/02(月) 15:39:34 ID:TqqoEBTM
>>278 確かに前置きがくどい書き手はイラっ!とする時はあるな

282 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/02(月) 16:24:45 ID:yAZsgaEE
>>278>>281
そういうことはいちいち報告せんでよし。

283 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/02(月) 17:38:46 ID:54iyW4ym
みんなで書き手さんが気分良く投下できる空気を作ろうぜ!

284 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/02(月) 21:46:39 ID:AKEwo904
「すぅ〜〜〜はぁ〜〜すぅ〜〜〜はぁ〜〜」

「何やってんだ大河」

「あっ竜児。あのね、竜児のいる空気吸ってるの」

「恥ずかしいからやめなさい」

「え〜、いいじゃんケチ!」

「ほら、抱っこしてやるからこっちこい」

ぎゅっ

「えへへ…竜児あったか〜い♥♥♥」

285 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/02(月) 23:24:31 ID:RXJqXgdm
>>284
和んだwww
GJ!

286 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/03(火) 05:57:04 ID:6uYXcLrS
久しぶりに来たらヌルいことばかり言ってんなあ


エロが投下されて荒らされてた時の殺伐してたあの雰囲気がオレは結構好きだったゼwwww

287 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/03(火) 07:36:14 ID:dmDoJF0M
大河っていつ頃から竜児の事すきだったのかな?

288 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/03(火) 09:37:53 ID:GCA2PcYn
>>287
北村に告白した時あたりには、もううっすらと好きだとおもうんだけど

289 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/03(火) 12:10:36 ID:zmmMxG5o
>>287
廊下でぶつかったときから

290 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/03(火) 14:45:51 ID:dmDoJF0M
じゃあ北村が好きだったのは何でなの?

291 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/03(火) 15:06:10 ID:b8yFYIw0
人好きになることになんでもへったれもあるのだろうか

292 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/03(火) 15:48:03 ID:HfBmq2Hj
あこがれ

293 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/03(火) 16:50:29 ID:sTbj5/Ra
>>290
4話見たらわかる

294 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/03(火) 19:36:56 ID:muIrX3Oi
>>276
GJでした!
あーみんの良さが出てるな〜
気になるところで終わってるので続き楽しみです

>>284
2828

295 :代理:2009/11/03(火) 22:20:41 ID:dRWt+7nC
とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero

お題 「クリア」「気づく」「約束」



「ここが3……てことは、こっちが9で……よし、解けた!」
「嘘っ!?」
「嘘じゃねえぞ……うん、間違いもねえな。ほら、確認してみろよ」
「……う……た、確かに……」
「大河、約束は忘れてねえだろうな」
「……忘れてないわよ。数独十問、先にクリアした方が何でも一つ言う事を聞かせられる……よね」
「おう。さて、大河には何をしてもらおうかな〜」
 悔しそうな大河を前にニヤニヤと笑う竜児。
「こ、これからずっととか、物やお金の遣り取りは無しだからね!」
「わかってるって」
 恨みがましく睨み付ける大河を見ながら、竜児はふと気づく。
「……あれ?」
「どうしたのよ」
「……思いつかねえ」
「は?」
「いや……大河にしてもらいたいことってのが……思いつかねえんだよ……」

「……ホントに何も無いわけ?」
「だってよ、暴力とか暴言とか、一時だけ止めさせても仕方ねえじゃねえか」
「ほ、他に無いの?掃除とか洗濯とか……」
「俺がそのへんを他人に任せると思うか?」
「それじゃ、料理とか……」
「うーん……まあ無くはねえかもしれねえけど、教えるのもドジのフォローをするのも俺だからなあ……
 自分で作るより却って大変そうじゃねえか」
「ぐ……」
「な?ねえだろ?」
「……なんか、罰ゲーム的なものとか」
「俺に無意味に他人をいたぶって楽しむ趣味はねえぞ。川嶋じゃあるまいし」
「こ、コスプレとか……」
「衣装を用意するのは誰だよ。そんな簡単に作れるもんじゃねえぞ、あーゆーのは」
「……そ、その……え、えっちな、こととかは?」
「んなっ!?ね、ねえよ、絶対に」
「あら意外。エロ犬のくせに」
「大河……そ、そういうことを、冗談でも言うんじゃねえよ……俺が本気にしたらどうするつもりだったんだ」
「……殴ってたわね」
「……まあ、そうだよな」
「だけど、ホントの本当に何も無いの?」
「だから、無いって言ってるじゃねえか」
「ふーん……そう、なんだ……」
「……大河、どうした?」
「つまり、竜児にとって私は、何も求めるものが無い……必要ない人間ってことなんだ……」
「そ、そうじゃねえって!その……大河は、一緒に居てくれるだけで十分っていうか……
 特に求める事が無いってのは、そのままでいてくれればいいってことでさ」
「よし!」
「へ?」
「今、言ったわよねえ……『そのままでいてくれればいい』って。了解したわ、私は普段通りにしてる。
 これで竜児の権利は終了ね。さ、次は格ゲーで勝負といきましょうか」
「ず、ずるいぞ大河!」


296 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/03(火) 22:56:04 ID:GDH/SnlO
>>276
GJ!
あーみんの心情、大河への想いががたくさん出ていて嬉しい。
「た い が」の時から思っていたんですが、状況描写が細やかで、主は経験者ではないのか?

>>287
チャーハン食った時から ってのはどう?
または失敗クッキー食われて、「うまい」って言われた日にゃ、俺でも惚れるわ。
電信柱蹴りあった後はガチ。特に原作。

>>290
「竜児がいなければ、恋もできない」
原作のこのフレーズは衝撃だったなー

>>295
いつも乙です。
大河さーん、大切なことを見逃してますよ〜w

297 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/03(火) 23:01:59 ID:BFWSuvz8
>>253
遅くなりましたが、いつもご苦労様です!
決して忘れ(ry
自分の駄文に素敵なタイトルをありがとう!

>>295
この大河、策士だな……
と思ったけど、そうでもなかったw
頑張れ竜児!

298 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/04(水) 00:04:49 ID:7dQS6L4I
>>140です
いつも感想などありがとうございます。

>>253
いつも乙です。
毎回、素敵なタイトルをありがとうございます。
すっかり頼りにしております。

>>295
乙です。
大河のペースに嵌った竜児が哀れと言うか。
いいことあるよ、そのうち>竜児。

以下に「孤独な月ウサギは・・・」の続きを投下します。
8レス程度使用します。

299 :孤独な月ウサギは太陽の夢を見るか?4 ◆x6jzI2BeLw :2009/11/04(水) 00:06:38 ID:7dQS6L4I

カオスな陳列物体に竜児はその前で腕を組む。
「なあ、大河、やっぱりおかしくねえか?」
「いいのよ、これで・・・こうしないといけないって言う決まりでもあるの?」
私が法律よと自己の正しさを主張する大河。
「いや・・・しかし・・・なあ」
あまりの不自然さに首を傾げる竜児だが、大河がそれ良いと言うなら文句を付ける筋合いではなかった。
いったい竜児は何に文句を付けていたのか?
その竜児の前にあるのはさん然と飾られた7段に並んだひな人形だった。


ついさっき、トランクルームで大河が取り出したのは十二単も鮮やかなひな人形。
「・・・まだ、残ってたんだ」
取り出したものを手に乗せ、大河は諦めていた忘れ物が見つかったと言う知らせを聞かされたかの様に上気している。
「・・・大河のか?」
「当たり前でしょ」
ギロリと竜児をにらむ大河。
竜児としては眼前の大河とひな人形がどうしても結びつかず、虎の尾を踏むような不適切な発言をしてしまった。
「あのね、竜児。私だって・・・女の子」
「まあ、男じゃないことだけは確かだな」
KYと言ってしまえばそれまでだが、この場合の竜児にそれはすんなり当てはまった。
「・・・はあ、あんたに複雑な乙女心を理解しろって言うのが無理か」
大河は眉間にしわを寄せ、ことさら大げさに吐息をつく。
雲行きの怪しさを動物的勘で感じた竜児は押し黙る。
・・・願わくば、嵐にならないでくれよ。
「ま、いいわ。竜児にそんなものあるわけ無いんだから・・・無い物を求めても無駄ってことね・・・はん」
竜児の願いが通じたのか、それとも大河が竜児の怪我を慮ったのか、大河を発生源とする低気圧は思いのほか早く通り過ぎた。
文句を言うだけ言ったら気が済んだのか、大河はさっきまでの休火山レベルまで沈静化する。
じっと手の内にあるひな人形を見つめ、そして大河は塑像の様に動きを止めた。
やがて、食い入るような視線が和らぎ、大河は長い長い吐息を吐き出す。
「・・・以前はね・・・飾ってたんだ・・・三月のひな祭りに」
そのうち、ポツリポツリと大河は話しを始めた。
・・・幼稚園くらいかな・・・覚えてるの・・・ど〜んみたいな感じで家の中に飾られてて・・・私はその前で笑ってて・・・。
・・・人形にね・・・ちょっかい出して・・・ひな壇から落としちゃって・・・首が取れちゃった。
・・・小さい頃って平気でバカなこと出来るから・・・でも、パパもママも・・・私を怒ってくれた・・・人形だって痛いんだよって。
・・・怒られたけど・・・実感はあったんだ・・・私はここに居てもいいんだって・・・パパとママの娘なんだって・・・そう思えた。
・・・最後に飾られたの見たの・・・四年生くらいだったかな・・・前の年まではパパとママとで並べてた・・・でも、最後に飾った年は・・・。


300 :孤独な月ウサギは太陽の夢を見るか?4 ◆x6jzI2BeLw :2009/11/04(水) 00:07:53 ID:7dQS6L4I

「今年は飾らないの?って聞いたんだよね・・・私、まだ子供だったから・・・パパとママの間が変だって良く分かってなかった」
「・・・大河」
「ママが半分だけ手伝ってくれたけど・・・パパは居なくて・・・なんかママも投げやりみたいな感じで・・・少しも楽しくなかった」
「大河・・・もういい」
悲痛な声で竜児は大河の話を中断させようとした。
「あは・・・しめっぽい話になっちゃったね・・・竜児、ごめんね」
しょんぼりとさっきまで吼えていた虎は何処に行ってしまったのかというくらい豹変する大河。
「・・・家の中がメチャクチャになっちゃった頃・・・どこか行っちゃったんだよね・・・ひな人形・・・あれから探したけど、見つからなくて・・・もしかしたら捨てられたのかなって・・・思ってた・・・私みたいに・・・・・・」
竜児は今にも泣き出しそうな大河に何と言ってやればいいのか、言葉を見つけられないでいた。
「・・・だから、残ってて良かった・・・お前達は捨てられなかったんだねって」
泣き笑いのような表情で大河はひな人形を見つめている。
そんな大河を何とかしてやりたくて、竜児は動き出した。
「よし」
掛け声と共に大きな箱を運び出そうとする。
「・・・ちょ、ちょっと竜児?・・・アンタ、何する気?」
「何って・・・運ぶんだよ、大河の部屋までな」
「運んでどうするの?」
「そんなの決まってるだろう・・・並べるんだ」
「はあ〜!」
語尾上がりに大河は目を点にする。
「ひな祭りでもないのに?」
「いいんだ・・・ひな祭りは三月だろ?」
「そうだけど」
「じゃ、ちょうどいい・・・今月は九月だ・・・3の倍数でおめでたさも3倍だ」
ポイントサービスじゃないんだからと大河は呆れ顔。
「あんた、それ絶対・・・変・・・それに今日は月見でしょ」
「おう、そうだな・・・ギャラリーは多い方がいいぞ・・・ひな人形も飛び入り参加だ・・・大河も手伝え」
有無を言わせず、竜児は大河を巻き込んだ。
「え?・・・え?」
戸惑う大河に荷物を押し付け、その背中を竜児は押した。
「さあ、運んだ、運んだ」
「ん・・・うん」
訳が分からないまま、大河は竜児の指示に従っていた。
動き回る大河にさっきまで見せていた憂いの表情は微塵も残ってはいない。
それどころか嬉々として動き回っていた。


301 :孤独な月ウサギは太陽の夢を見るか?4 ◆x6jzI2BeLw :2009/11/04(水) 00:09:34 ID:7dQS6L4I

広い大河の家に出現した赤いひな壇。
リビングの一角を占拠し、ひな人形が並べられるのを今や遅しと待ち構えていた。
「こういうとこは・・・やっぱり竜児って頼りになる」
私じゃ絶対に出来なかったと大河は竜児の手際を誉める。
設計図もなかったのに竜児は金具と鉄骨を巧みに組み合わせて七段のひな壇を誕生させた。
「あんた、裁縫とか料理以外にも日曜大工とかもいけるんじゃない?」
「そうか?これぐらい普通だと思うぞ」
さも当たり前と言う顔で竜児が答える。
「・・・竜児は普通じゃないわ」
「お、俺のどこが普通じゃないんだ?」
妖しい性癖の持ち主だと言われたように思えて、うろたえた竜児は大河に発言の真意を問い質す。
「じゃあ聞くけど・・・今日のお弁当・・・」
「おう、どうだった?」
よくぞ聞いてくれましたと竜児は勢い込む。
「いつもより・・・ちょっぴり・・・ううん、それ以上においしかった」
食べた時の味を思い出したのか、素直に感想が飛び出し大河の口元がほころぶ。
「だろ・・・隠し味を使ったんだ・・・みりんのいいのが手に入ってさ・・・秘蔵のしょうゆと混ぜて作っただしで・・・昆布は日高産の一級品を使ってだな・・・」
手振りを交えて夢中でしゃべり続けた竜児はやがて大河の意味ありげな視線に気がつき口をつぐんだ。
大河はにやにやと竜児を見つめる。
「・・・何だよ?」
暴走したと自覚のある竜児は大河を真正面に見られず、斜めを向く。
「竜児。普通の高校生はそんなこと言わないから・・・」
もうあきらめさないと言う感じで大河は宣告する。
お弁当を作ってしまえるだけもすごいのに、その味付けにまで精進を重ねるなんて普通じゃないと大河は言い切った。
それでもなおも俺は普通の高校生だと言い続ける竜児に大河は引導を渡す。
「じゃあ、聞くけど、竜児?」
「おう」
「クラスのアホロン毛に竜児と同じことが出来る?」
「・・・まあ、無理だろうな」
「アホロン毛は極端だけど・・・能登くんは?」
「能登でも無理だろう」
「ほらみなさい・・・北村くんだって・・・多分、無理」
竜児は無言で大河の言い分を認めた。
「男子どころか・・・女子にだって、アンタほどの腕前・・・いないじゃない」
大河にそこまで言われて竜児は照れ隠しに指で頬を引っかいた。
「それに・・・」
「それに?何だよ?」
大河が言いかけて止めた台詞の続きを竜児は促す。
竜児の言葉を受けて、言おうか言うまいかとためらっているみたいに見える大河。
「・・・竜児は・・・扱いがうまいから・・・普通じゃない・・・」
結局、ごにょごにょと言う感じで意味不明なことを大河はつぶやく。



302 :孤独な月ウサギは太陽の夢を見るか?4 ◆x6jzI2BeLw :2009/11/04(水) 00:10:42 ID:7dQS6L4I

「・・・何がうまいって?」
大河の言っていることが分からず、竜児は詳細な説明を求める。
「・・・だから・・・分かるでしょ!」
もじもじしながら大河は語尾を上げて言う。
「分かねえよ」
「あ〜もう・・・だから、竜児はすごくうまいの!・・・私のこと扱うのが!!!」
この鈍感と大河は竜児にぶつけるように叫んだ。
・・・何、こっぱずかしいこと言わせんのよ、この鈍さ特盛り犬は・・・と大河は竜児を罵りながら補足を加える。
・・・基本的に、私、わがまま・・・。
・・・良く、分かってるなですって・・・竜児、息の根止められたいの?
・・・まあ、いいわ。大目に見てあげる。
・・・さっきだって・・・自分で自分が嫌になるくらい落ち込みかけた。
・・・そうよ。ひな人形のことよ。
・・・竜児は私を元気付けてくれた。
・・・何にもしてないって・・・ううん、そんなことないよ、竜児。

「あのままだったら、嫌な気持ち抱えて、ずっと不機嫌だったと思うの・・・私」
大河は床に置かれたひな人形を一体、手に取ると人形へ向かって笑みを浮かべた。
「人形が見つかって嬉しい気持ちはあるんだ・・・でも、そのおかげで思い出したくないことも思い出しちゃう」
大河は人形をひな壇に置き、竜児に向き直った。
「幸せそうだった・・・昔の私・・・もう帰ってこないんだって思い知らされる」
大河は竜児へ一歩、歩み寄る。
「さっきもそうだけど・・・竜児は私の心に刺さったトゲを抜いてくれる・・・こんな事してくれたの・・・竜児が・・・初めて・・・」
かみ締める様に大河は言い、さらに一歩、近付きまっすぐ竜児を見つめる。
「だから・・・竜児は普通じゃないんだ・・・・・・少なくとも、私にはね」
「俺は・・・ただ・・・大河の泣き顔は見たくねえ・・・おまえには笑っていて欲しいって思ってる・・・そのためだったら何でもしてやりたいんだ」
大河の瞳を逸らさずに竜児は淡々と言う。
抑揚のないその話し方が竜児の本心を余すことなく伝えているようで、大河はその言葉に揺さぶられた。
「・・・嬉しいよ、竜児・・・私なんか・・・の・・・ため・・・っう」
高ぶる感情に大河の表情が崩れ、大河は顔を伏せる。
「言ってるそばから・・・大河・・・」
「・・・違う・・・泣いてない・・・泣いてなんか・・・いない・・・・・・竜児ぃ〜」
「おう」
「・・・こっち見るなあ・・・」
見ていなければ泣いていないのと同じだと大河は苦し紛れな主張を繰り返す。
「・・・分かった」
苦笑しつつ、竜児は大河に背を向ける。
「・・・ぐす・・・あいあと」
鼻声で大河は竜児に謝意を伝え、そのまま竜児の背中へ顔を埋めた。
「・・・ちょっと、貸して・・・ずび」
「ああ、いいぜ・・・大河の気の済むまでそうしてろ・・・あ、でも俺のシャツで鼻はかむなよ」
「・・・そんらこと、しらい・・・・・・れも・・・鼻水・・・付いたかも」
「おまえな・・・・・・でもま、いいか。洗えば落ちるんだしな。大河、遠慮しなくていいぞ」
「ん・・・」
ちーんとそのまま本当に鼻をかむ大河から伝わる温もりが竜児の背中全体に広がり、竜児は満たされた気分を味わっていた。


303 :孤独な月ウサギは太陽の夢を見るか?4 ◆x6jzI2BeLw :2009/11/04(水) 00:12:01 ID:7dQS6L4I

「うわ〜、こんだけあると壮観」
大河は目前に展開される光景に歓声をあげる。
顔を洗って来ると言って立ち去った大河が戻って来るまでの間に竜児は箱の中身を全て開封し、床の上に並べていた。
まるで園遊会みたいに床のあちこちに並ぶひな人形達。
眼下で繰り広げられる平安絵巻に大河は嬉しそうだ。
「こっから先は大河、頼むぜ」
竜児はバトンタッチと大河にアンカーを託す。
「・・・分かんない」
このひと言で見事にアンカーはバトンを落とし、ずっこける。
竜児を見る大河は真顔で言う。
「竜児、やって」
「俺が・・・男の俺が・・・ひな人形の並べ方なんて知ってるわけないだろ」
もっともな言い分の竜児に大河は怯まない。
「だって・・・並べたことないし・・・言ったでしょ・・・パパとママがいつも並べてたって・・・それに、どんな順番だったのかなんて覚えてない」
「どんだけ、お嬢様なんだよ」
あきれる竜児に大河は口先を尖らす。
「しようがないじゃない・・・知らないものは知らないんだし」
開き直った大河に竜児は頭を抱える。
「・・・仕方ねえ・・・だいたいでやるか・・・」
小さくため息をついて、竜児は床にあるひな人形を物色する。
「頂上は・・・っと・・・お、これだな・・・それから・・・お前もだ」
竜児は一番豪華そうな装いの二体を選び出すと、ひな壇の最上段へ飾りと共に並べた。
「これ、お内裏様とお雛様・・・だろ?」
「・・・多分」
自信なさ気な大河に竜児は脱力したくなるのを辛うじて堪える。
・・・まあ、大丈夫だろ。
竜児はひとり納得して、次の捜索に掛かる。
「・・・こいつらかな・・・」
やや艶やかな衣装を着けた女性の人形を三体、竜児は選び出し、2段目に並べる。
「あ、思い出した」
竜児が並べた三体をの人形を見て、急に大河が言い出す。
「こいつら・・・三人官女ってやつ」
まるで自分の手下か何かの様な大河の言いざま。
「・・・こいつらって・・・おまえなあ」
「だって・・・メイドさんみたいなものだって・・・」
父親が言っていたと大河は言う。
竜児とてひな人形の役割について深い造詣があるわけではないので、一概に大河の言うことが間違っていると決め付けるわけにも行かない。
「・・・三人か・・・何か、川嶋たちみたいだな」
川嶋亜美、木原麻耶、香椎奈々子の3人組を竜児は連想し、そんな感想を言う。
「・・・ばかちー?・・・ばかちーごときにもったいない」
川嶋と言う単語に反応し、ふんと鼻息も荒く、大河は日頃の竜児が言う決まり文句を流用して三人官女を2段目から最下段へ引き摺り下ろした。
「ばかちーごときはここでたくさん・・・床の上でもいいくらいよ・・・かろうじて壇上に残してあげた私の寛容の心に感謝することね」
目の前に本物の川嶋亜美がいるかの様に大河は毒を吐き出す。
「竜児!次、行くわよ」
何か変じゃないかと言う竜児の指摘はあっさり却下され、大河の勢いは加速する。
「・・・次は、これじゃないか?」
恐る恐るという感じで竜児は楽器を抱えた人形を五体選び出し、大河の前に置く。
「いんじゃない。バンドの生演奏」
面接官、大河の試験に通ったらしく、楽器を抱えた人形達は五人揃って2段目に並べられた。
「う〜ん・・・五人も居ると・・・ちょっとうっとうしい」
並べられた人形を見て大河はそんな感想を言い、いきなり二体を間引いた。
楽団クインテットから楽団トリオに改称された五人囃子ならぬ三人囃子が頂上ペアの下に改めて並んだ。
もはや、竜児は突っ込む気力も失せ、大河の言うがままに動いた。
かくして出来上がった珍妙奇天烈なひな壇に竜児は絶句する・・・。



304 :孤独な月ウサギは太陽の夢を見るか?4 ◆x6jzI2BeLw :2009/11/04(水) 00:13:12 ID:7dQS6L4I

頂上のペアはいいとして、欠員状態の三人囃子に最下段に配置の三人官女・・・中段には本来、一番下へ並ぶとおぼしき御所車が並び、その下に弓矢を持った人形や軽装の従者の人形が所狭しと押し込まれて並んでいた。
・・・いくらなんでも・・・不自然すぎる。
竜児はそう思わざるを得ないのだが、隣の大河は良い出来と満足げに己のした仕事の完成度に誇らしそうだ。
「・・・あ、これはやっぱりここかな」
あまつさえも、とどめとばかり大河は創作ひな壇をさらに魑魅魍魎の棲家に作り変える。
髪の長い年配の人形を三人囃子が並ぶ二段目の一体と入れ替えた。
・・・もう演奏どころじゃないな・・・。
竜児は二人囃子プラスワンと成り果てた哀れな人形に向かって心の中で合掌した。
「・・・でも、なんでそれがそこなんだよ?」
理不尽な扱いを受ける人形の為ではないが、一応竜児は大河に理由を聞いてみる。
「似てるじゃない」
大河は髪の長い人形を見ながら笑う。
「誰にだよ?」
「・・・アホロン毛」
「春田かあ!」
大河の思いもかけない回答に竜児は声を上げた。
「そっくりじゃない」
「待て・・・あいつはそんな年寄りじゃねえ」
友のため、竜児は弁明を試みる。
「いいのよ、このさい歳は・・・」
細かいこと言いなさんなと大河は意に返さない。
・・・待てよと竜児はひらめく。
「なあ・・・大河・・・もしかしてだけど・・・この春田の隣は・・・まさかとは思うが・・・能登・・・とか?」
「そうよ。よく分かったわね」
難しいなぞなぞを解かれたみたいに大河は明るく言う。
のっぺりした顔立ちの人形・・・竜児は改めて見つめる。
・・・まあ、似てると言えば、似てるんだが・・・。
ここで、竜児は重大な事実に思い至り・・・恐る恐る春田人形の隣を見る。
ちょうど能登人形の反対側だ。
ちょっと目の大きな優しそうな表情をした人形が竜児を見つめ返す。
「なあ大河・・・春田・・・能登・・・と来たら・・・こいつは・・・俺か?」
竜児とすれば当然そう言う発想にたどり着く。
「違うわよ」
しかし、大河の返事は竜児の予想をあっさり裏切った。
「違うのか・・・」
なにやらほっとしたような物足らないような思いに竜児は捕らわれる。
「それは・・・北村くん」
「北村かあ!・・・俺じゃなくて」
「そうよ。だいたい、竜児がそんな大きな目をしてるわけないじゃない」
北村のメガネをイメージして選んだと大河は説明する。
何だ自分は入っていないのかと、竜児は心の底で小さな失望感が湧き上がるのを感じた。
・・・犬扱いだからな・・・きっと入ってたとしても下段のどれかだ。
竜児は最下段へ追いやられた川嶋人形を見ながらそんな風に思った。



305 :孤独な月ウサギは太陽の夢を見るか?4 ◆x6jzI2BeLw :2009/11/04(水) 00:14:48 ID:7dQS6L4I

「竜児?・・・竜児はね・・・あそこ」
大河が指差す先は竜児の想像と大きく違った。
「一番上のあれよ」
お内裏様を指し示す大河。
この場合、お雛様は当然、大河を模しているはずだから・・・それはすなわち・・・・・・。

竜児は面食らう思いがした。
・・・俺が大河の隣・・・北村じゃなくて・・・それってもしかして・・・大河・・・それは遠まわしの・・・何かのメッセージなのか?
竜児の思考は激しく駆け巡る。
思わず、大河をじっと見つめ、もしもそうなら俺は何て答えたらいいんだと先走った思いでいっぱいになる竜児。
ひとり心の中で慌てている竜児を尻目に大河はいたって平静そう。
なに、じろじろ見てんだと竜児に一瞥を与え、おもむろにひな壇に飾ってあるお内裏様を手に取る。
「よっく、見なさい」
その小さな目をかっぽじて見やがれと大河は手にしたお内裏様を竜児の鼻先へ突きつけた。
「・・・うっ」
竜児は息を詰めた。
悪いのである。
顔がではなく・・・目付きが・・・恐ろしく悪いのである。
さっきはよく見なかったので気が付かなかったが、目の前で見ると良く分かるのだ。
大河の家にあるくらいだから、恐らく名工と呼ばれる人形師の手で作られた特注品かと竜児は推測するのだが、仕上げに絵の具をケチったのかと言いたくなるくらいお内裏様の目は細く、見る人をしてその視線を避けたくなる様な目力がある。
思わず、大河の手からお内裏様を受け取る竜児。
・・・こんなところに居たのか、兄弟。
急にひな人形に親しみを覚えた竜児はその頭を撫でてやる。
「あ、竜児」
「何だよ・・・」
忘れてたわと言いながら大河はとんでもない事を言い出した。
「さっき言ったけど・・・ひな壇から落ちて首が取れたの・・・それだから」
接着剤でくっ付いてるだけだから、力を入れるとまたもげるかもとあっさり言ってのける大河。
「おう!」
慌てて竜児は頭から手を離し、お内裏様を元の場所へそっと戻す。
・・・落ちたというのは言葉の綾で・・・本当は落としたが正解だろ。
竜児は声に出さず、突っ込みを入れた。



306 :孤独な月ウサギは太陽の夢を見るか?4 ◆x6jzI2BeLw :2009/11/04(水) 00:16:24 ID:7dQS6L4I

「ママにね・・・よくからかわれたんだ」
大河の声に竜児は振り向く。
いつの間にか大河は少し離れたところにあったクッションを抱かかえる様にして座っていた。
「ひな祭りが来るたび・・・ひな人形を見ては言うの・・・・・・アンタの、大河の将来のお婿さん、きっと目付きの悪い奴だって」
ポフポフとクッションを叩きながら大河は続ける。
「ひどいでしょ・・・子供心にも反発して・・・マジックで顔、描いてやろうかって思ったくらい。・・・それで落としちゃたんだけどね」
・・・白馬の王子様が迎えに来るって思ってた、小さい頃は・・・。
・・・竜児、今、笑ったでしょ?
・・・笑ってないって・・・まあ、いいわ。
・・・それでね。ほとんど、忘れてたんだ。そんなことあったなんて。
「・・・竜児、アンタに会うまではね」
ひどく真面目な大河の表情から竜児は何かを読み取ろうとして果たせない。
大河は竜児に背を向け、話を続けた。
「新学期の初日・・・私、竜児のこと殴ったじゃない・・・その晩かな、思い出したの」
・・・笑っちゃった。まさか本当に現れるなんて思わなかったから。
・・・ちょっと興味が湧いたから何となく、見てたんだ、竜児のこと。
・・・もしかして運命の人?
・・・冗談めかして思ったりもしたわ・・・。
・・・でも、結局はただのクラスメートで終わると思ってた・・・。
・・・私が・・・あんなドジを踏まなければね。
・・・まさか、入れ間違えるなんて・・・有り得ない。
・・・だから、こうなることが決められてたんじゃないかなって・・・。
「そんなの・・・変?・・・かな?」
大河は再び、竜児へ向き直るとそう付け加えた。



307 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/04(水) 00:17:51 ID:7dQS6L4I
以上です。

箱の中身・・・期待したほどのものじゃなくてゴメンなさい。
とらドラで出来ないイベントってひな祭りかなと思ったもので・・・
3月上旬ってアニメも原作も大河がいませんから。

続きはまた近日中に。


308 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/04(水) 02:25:44 ID:Kr30d50J
>>307
うわぁ、いい。激しく乙です。
箱の中身は想像していたものだったんですが、その後の話の膨らみ方が期待を大きく上回りました。
まさにとらドラ!だぁ。
昔の人形って、確かに目付き悪いのありそうw

309 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/04(水) 02:35:19 ID:Kr30d50J
>>253
いつも本当にGJ!です。
この「月ウサギ」のように、作品一覧の見出しと開いたページのタイトルが異なっているものがあり、
二重に楽しめるのが素晴らしい!

310 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/04(水) 03:15:19 ID:PpV+VB4T
悶え死ぬわ!

311 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/04(水) 09:09:59 ID:qICvLMB0
おまえゆゆぽだろ?w

312 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/04(水) 12:46:22 ID:mMkiHlWo
>>307
乙!
ひな人形をそう使ってくるたぁ、驚きだぜ
そして大河かわいいよぉ

313 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/04(水) 13:15:12 ID:SGL+rctF
「はい竜児、あーん」

「あーん…ムシャパクゴクリ」
「美味しい?」

「おう、うまいぞ」

「まあアンタが作ったもんだから美味しいのは当然よね」

「何を言うか。大河が食べさせてくれるから通常の三倍はうまくなるんだぜ!」

「!!!もう、竜児ったら!!嫌い嫌い嫌い!」

「俺は好きだぞ、大河」

「//////////…バカ♥」

314 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/04(水) 22:15:47 ID:mMkiHlWo
>>313
今なら言える!
このバカップル!!

315 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/05(木) 00:36:18 ID:YzH4wSbv
>>260
著しく遅レスだが、虎注すげ〜
展開を思い出すために、最初から読み返していて遅くなったが、筆力がすげぇ。
独自の展開がすげぇ。
続きが楽しみだが、恐ろしくもある。竜児・・・持つのか?

316 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/05(木) 00:37:41 ID:YzH4wSbv
>>255
代理人さんも乙です!

317 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/05(木) 01:27:54 ID:+AMarqPY
女の園
http://same.ula.cc/test/r.so/dubai.2ch.net/morningcoffee/1257334281/?guid=ON
妬み

318 :代理:虎注1/7:2009/11/05(木) 18:31:37 ID:XZ7q+zJ/
:虎注1/7 ◆wVNPBvxl56:2009/11/05(木) 08:08:34 ID:???
おはようございます。


*


 それほど気にしていないように思えても、根底のどこかでは自分のことを、不幸だ、と
感じていたのかもしれない。それを含めて、二三日自分のことばかり考えていたようだった。
自分の頭の蠅を追えとも言うものの、それを差し置いてもそのことに気づかなかった事実に、
竜児はショックを隠せなかった。
 しかも少なからず、目下竜児の頭にたかる蠅、もとい虎――ひどく例えは悪いが――の
動向とも関わりのある人物のことである。
 元気がないな、とは思っていた。だからといって。

「ねえ竜児……」

 ほぼ真下から聞こえた声から感じる意図は、ひとまず休戦、といった様子。
私たちのことはしまっておきましょうと似合わない心得顔の大河だった。原因の一端に
自分が噂されていることに負い目でも感じているのか、言葉にはしなかったもののともかく
竜児にとってもありがたい申し出、的な意図ではあった。

「北村」

 後ろから声をかけたのは放課後のこと、大河は何か遠慮めいた躊躇いを理由に先に帰っていた。
 できたら竜児としては大河も一緒に来てほしかった。一つには北村をして、「全部やめる」なんて
投げやりな言葉を叫ばせる理由を聞くのが、一人では少し怖かったからだ。
 もう一つの理由は竜児には上手く説明できるほど考えを整理する時間がなかったのだが、
たぶん余りにも常に一緒に居すぎて、例えば帰り道傍らにその姿がないと落ち着かず、
空に太陽が見えないとか、部屋に窓がないとか、教室に黒板がないとか、当たり前にあると
思っているはずのものが不在のときに感じる違和と同種のそれが、その理由のそのまた一因になっているのだろう。
 竜児にとって大河は余りにも当たり前な存在となっていた。その上、昨晩から竜児の脳内は大河一色である。
 そういう意味では、やはり今は大河に居てもらっては困るのかもしれないが。

「ああ……なんだ高須か。逢坂はどうした? 一緒じゃないのか?」

 振り向いた北村の表情は見ようによっては竜児の凶悪に鋭い目つきより正視に耐えがたいものだった。
北村を知るものにとっては特に。やつれているとか、疲れているとか、そういう形容ともまた違った生気のなさ。
暑苦しいほどの気力に満ちた普段からは全く想像できない風の腑抜けぶりで、言うなれば北村駄作といった体。
何か一つのことに気を取られているためにほかのことを構っていられないようだったし、
何一つ考えられない呆然の境地であるようにも見えた。
 とはいえそんな状態の者にすら四六時中二個イチでいないことを疑問に思われるほど、
傍目にも自分たちがセットで考えられていることも、竜児には少なからず感慨のようなものがあったが。

「お前な……なんだじゃねえよ。大河なら用事があるっつって先帰ったけど、まあこの際あいつのことはどうでもいい」

 並んで歩き出しながら、竜児は小さな物体を脇へどかす仕草をした。

「そんなことはないだろう。逢坂は重要だぞ。高須と逢坂が一緒にいないなんて問題に比べたらほかのことは
 全て瑣末事だ。恋ヶ窪先生が独身でおられないとか、素直でいい子な亜美とか、変じゃない櫛枝のように
 不可解かつ驚愕の事実だ」


319 :代理:虎注2/7:2009/11/05(木) 18:32:32 ID:XZ7q+zJ/
:虎注2/7 ◆wVNPBvxl56:2009/11/05(木) 08:09:01 ID:???
 北村は心底どうでもいいことに引っかかった。死んだような目をしている割にはよく口が回る。
何か言いたくないことを糊塗するかのように。

「なんでそこまで重大だよ。重要度で言ったら精々能登が時々コンタクトにするくらい心底どうでもいいよ。
 お前俺たちを不断の愛を誓った恋人か何かだと思ってんだろ」

 出てくるたとえがおかしい。竜児は自分の発したフレーズにドキッとした。言うなれば心臓が不整脈的な動きをしたのだ。

「恋人……恋人ね。お前たちの場合はいっそ夫婦だ」
「た、確かに泰子は完全にウチの子扱いしてるけど……って、違う違う、なに言ってんだ。
 ……あー、だからこんな話したいんじゃなくてだな」

 竜児が言葉を探して意味もなく前髪を引っ張っていると、殆ど聞こえるか聞こえないかの声で、北村がぼそっと呟いた。

「……羨ましいよ」
「え?」
「いや?」

 なんでもないさ――北村は夕焼けを眩しそうに見て、深々と嘆息した。

「……まあでも実際珍しいよな、高須と逢坂が一緒じゃないのは。かえって新鮮だよ」
「いや、だからそれは」

 北村はどうしても話を逸らしたい様子だったが、その割に態度はいかにも悩ましげで、
口では全然関係のないことを喋ってその内実は別のことに気を取られている風で、本当はそんなことを
話したいようには見えない。余計はおしゃべりは北村の中で何か葛藤が起きていることの表れなのかもしれなかったし、
意図的に自分自身の意識をも逸らせようとしているかもしれなかった。

「そういえば朝も別々だったな。ケンカしてるってわけじゃないんだろうが。高須は高須で意味もなく掃除してるし」
「ばかやろう。意味はあるし高須竜児が掃除をするのは人間が呼吸をするのと同じように自然なことだ」

 そうとも、うんうん。こと掃除に関しては一家言ある竜児である。自分の趣味を意味もなくなどと
評されては黙っていられず、話を進めたいのにうっかり乗ってしまう。案外竜児も、北村自身の話をすることに
ためらいがあったせいもあるのかもしれない。
 北村のことは心配だけど、どこまで踏み込んでいいものか分からないのだ。
 しかし、あれだけ燃え尽き症候群な一日を過ごしてはいても、身体に染みついた委員長体質なのか、
意外に周りのことは見ていたらしい。

「櫛枝もなんだかいつもと違ったしな。何かあったのか? 亜美もさっき……いや、いいか」
「よかねえけどよ」

 気になることを言う。竜児とて親友の様子に気づくまでは自分のことに気を取られていたのだ。
ともすれば思考は逸れがちだった。思わせぶりなことを言われればなおさらである。

「俺の話はいいだろ、ほんと」
「いや、高須よ」




320 :代理:虎注3/7 :2009/11/05(木) 18:33:19 ID:XZ7q+zJ/
:虎注3/7 ◆wVNPBvxl56:2009/11/05(木) 08:09:21 ID:???
 北村は物悲しげな目で竜児を見て、

「俺のことは……正直今は、少し、話したくないんだ……高須の話が聞きたいな。高須と、逢坂の話を」

 誤魔化すのはやめて、拒絶した。竜児はそこで二の足を踏んだら、また後悔する羽目になるんじゃないかと思った。
けれど踏み込んだらそれはそれで、失敗するかもしれない。やらないで後悔するよりは、断然いいのだけど。
 北村のことは心配だが、本人が話したくないと言った以上、おそらく気が変わるなんてことはしばらくないだろう。
「今は」という期限に期待して、少しばかり待ってみるべきなのかもしれない。

「分かったよ……分かった。っつっても何から話ししたらいい? 大河の失敗談でも聞きたいのか?
 あいつの私生活なんて恥じるところしかねえぞ」
「はは……それは、ちょっと見てみたいもんだ」

 力ない笑いだったが、それでもないよりは、虚ろな顔をされているよりはマシというものだ。
大河の笑えないドジくらいで親友がちょっとでも元気になるのなら、大河のプライバシーなど一顧だに価しない。
あらゆる恥を開陳してしまえばいいと思う。

「いや、何というか、話は戻るが、お前たちがケンカしてるわけでもないのに登校も下校も別々だなんて、
 本当に珍しいと思ってな」
「……確かにな。すげえ違和感だよ」

 懐が寂しいというか足元が落ち着かないというか。いつだって目線の下にあるつむじが見当たらないのは
それだけで徹底的に何かしらの欠落を表しているかのようで、喪失感に近い感覚をさえ竜児に抱かせるに充分だった。
 竜児は、できたらあのちっこいバカには、自分の頭上から両肩に触れて地面まで延びる
円錐形の範囲内で暮らしていてもらいたいものだ、と妙に感慨深く思った。
 見える範囲ではなく、手の届く範囲に居てほしいのだ。
 要するに――

「しばらくお前と一緒に帰ることもなかったからな、実は色々と聞いてみたいところもあったんだ」
「そういや、そうだな。帰りはなんかいつもバタバタ慌しくて……主に大河と特売のせいだけど。
 ああ、でもお前が生徒会に入って以来か」

 話したくない、とは言いつつも北村の目は雄弁だった。生徒会と聞いて微かに細められたその目。
決して不快の色でも、それ自体を厭っているわけでもない、ただそれについてもう考えたくないとでもいうような、
何かしらのジレンマがそこにあった。
 竜児にさえ、文化祭以来北村の元気のなさは生徒会に起因することなのだと推測できた。
それが単に生徒会長になりたくないからなのか、あるいはもっと他に理由があるのか。
それ以上の判断をすることはできなかったが。
 とにかく、竜児の言葉に対して口を歪めることでのみで回答としたのは事実だった。
 端的に言えばスルーした。

「……高須と逢坂はいつの間に親しくなったんだ? 余計な詮索と思って聞かなかったが、
 実は前から結構気になってたんだぞ」




321 :代理:虎注4/7:2009/11/05(木) 18:34:46 ID:XZ7q+zJ/
:虎注4/7 ◆wVNPBvxl56:2009/11/05(木) 08:09:42 ID:???
 そうして発した言葉は、微妙に墓穴発言だった。お前のせいだよ、とも言えまい。大河がラブレターを
入れる鞄を間違えたことで全てが始まったのだ。大河がドジで、かつ間違いに気づいたあと理由も言わず
竜児の鞄を奪おうとするほどの強情っぱりだったからこそ、竜児と大河は親しくなった。
 だから、ある意味、大河は大河であるからこそ竜児と親しくなったのだったが。いずれにせよ、
その発端が北村であることは事実だろう。
 お前のせいだよ、と言ってしまうべきだろうか。上手く伝えられなかったとはいえ、大河は一度は北村に
告白しているのだ。トイレの裏に呼び出して。関係ないことばかり喋って。どうしようもなく無様ではあったけど。
その勇気が、自分が中々持てないでいた勇気が、竜児はまたどうしようもなく羨ましかったものだ。
 ならば、別に話してもいいのだろうか。一度告白して振られて、その後逆に告白されたとき、
北村はやんわりと大河を振った。たぶん既に北村の意中に大河は居なかったのだろうけれど、
その気持ちは、きっと分かっている。竜児も内心でも認めようとはしなかったが、それでもこの半年、
大河は叶わぬ恋に身を焦がしていたのだろう。
 だったら、話してもいいのかもしれない。もとより北村は竜児の親友なのだ。
今更隠すようなことでもないことではないだろうか。
 そういう考えに至った自分自身の変化に、竜児は気づかなかったが。

「衝撃的なことを言っていいか?」
「もう二人の間には子が」
「混ぜっ返すなよな」

 ジロ、と貴婦人なら間違いなく気絶する殺人的な視線で睨んでやるが、余人は怯えても北村は慣れたもの、
どころか、ああ、高須は目つきが悪いからな、ときっと好意的な解釈で笑み返す。

「悪い悪い、それで?」

 今度は竜児が遠い目をする番だった。何だかんだと自分から敢えて誰かに教えたことはないのだ。
大河は事故だし、亜美は勝手に感づいた。いざ言おうとすると、本人に告白するわけでもないのに恥ずかしい。

「俺さ……櫛枝が好きなんだ」

 北村は笑顔のままだった。
 時差でも発生しているかのようなタイミングで首をかしげる。

「え? すまん、よく聞こえなかった。もう一度頼む」

 竜児は真顔で繰り返した。

「俺は櫛枝実乃梨が好きなんだ」

 無言の時が流れる。ひんやりした風が通り抜け、秋の訪れを予感させた。
オレンジに変わりゆく高い空に雲が流れてゆく。

「ええっ!?」
「おせえ!」
「いや、だって、ええ!? 櫛枝って、あの櫛枝実乃梨か!?」
「わざわざフルネームで言いなおしたじゃねえか!
 ほかに櫛枝実乃梨が百人いても俺はあの奇人筆頭ナンバーワンの櫛枝しか知らねえ!」


322 :代理:虎注5/7:2009/11/05(木) 18:36:07 ID:XZ7q+zJ/
:虎注5/7 ◆wVNPBvxl56:2009/11/05(木) 08:10:04 ID:???
 思わず冴え渡る突っ込み。ビシィッと効果音の入りそうな手首のスナップが北村の肩を捉える。
 北村は気が抜けたようによろめき、ぐるりとトキのごとき流れるような動作で回転して元の位置に戻ってきた。
俯いた姿勢から眼鏡を直しながら顔を上げ、竜児に驚愕の表情を見せる。

「櫛枝が好きと」
「……そうだよ」
「うん、うん、そうか、そうか……ああ、でも、なんだ、櫛枝が変なことはちゃんと分かってるんだな、それは安心した」
「仮にもお前の友達でもあるだろうが」

 確かに竜児の目から見ても実乃梨は変だが。
 変だけど、笑顔が眩いのだ。変だけれど、不良と噂される竜児にこだわりなく接してくれたのだ。

「いや、悪い、びっくりしたんだ。高須、お前人を見る目があるよ。好みに関してはちょっと不安に思うところはあるが、
 俺が保証する。櫛枝はいい奴だぞ」

 何度も頷いて、北村はあることに思い当たって竜児を見た。

「で、それが逢坂とどう関係があるんだ? 櫛枝へアタックする過程でその友達である逢坂と親しくなった。
 ……わけじゃないよな。それじゃなんか順番がおかしいし」
「あー、そうだな、それは逆だ。大河と知り合ったから自然と櫛枝とも話すようになったんだよ」
「ううん、すまないな。俺は一向こういうことには疎いものだから。話の腰を折ってすまん、
 順を追って説明してくれるか?」

 竜児は北村が親友でよかったと思った。これを話す相手が北村で本当によかった。
一を聞いて十を察する相手に話すのは、逆に自分が気づいてすらいないことを思い知らされて、
当面の問題が解決される前に更なる問題が積みあがっていってしまうのだ。北村は女子と話すのは苦手だなどと
言っている割には自然に接することができるが、恋愛方面に関しては決して察しがいいとか
長けているなどということはないのだ。つまり、竜児とほとんど同じ土台に立っていると言ってもいい。
竜児が考えをまとめながら話しても、茶々を入れたり余計な気づかいをせずに素直に聞いてくれる。

「前提が、もうひとつある。お前だって分かってるんだろうが、大河は……ずっとお前のこと、好きだったんだ」

 それはもう、ずっと。竜児が実乃梨に恋するより、ずっと前から。
 北村は分かっているとでも言いたげに、その実曖昧に微笑した。

「告白……されただろ。お前はやんわり流したけど。確かに大河はお前に告白した」
「……なんだ? 見てきたみたいな物言いじゃないか、まるで」
「居合わせちまったんだよ。偶然な。っていうか、大河がお前のことを好きなのを知ってたし、
 その日告白するってことも知ってたけど。居合わせちまったのは偶然だ。
 あいつ間抜けにもトイレの裏に呼び出すんだからな。トイレに行きゃ聞こえちまうんだよ」
「そうか……だったら、俺が言いたいことも分かるんじゃないのか?」

 あの日――実乃梨と北村に誤解され、二人して電柱を蹴った翌日。大河は北村に告白した。
告白したのだけれど、そこで無我夢中の大河の口からぽろぽろと零れ落ちたのは、彼女がずっと好きだった
北村のことではなかった。全然なかったのだ。竜児も居合わせて聞いていたし、北村はもちろん直接聞かされた。
その言葉の意味するところは、本人も気づかない間に大河の最も大切な一部になっていた存在に対する、
謂わば思いの丈は、北村への告白などよりよほど正確に、北村の心に届いていただろう。
 だからこそ北村は、確答を避けるような言葉を返したのだ。聞きようによっては、完全に振られたともいえたが。
はっきりと言葉にしては是とも否とも口にしなかった。たぶんそれは北村の優しさからきた答えだったのだろう。
大河が自分で、自分の力でその気持ちを見つけられるように。


323 :代理:虎注6/7:2009/11/05(木) 18:36:57 ID:XZ7q+zJ/
:虎注6/7 ◆wVNPBvxl56:2009/11/05(木) 08:10:34 ID:???
「いや、俺もさ、嬉しかったよ。あれだけ頑なに他人を拒絶していた逢坂が、他ならぬ俺の親友と親しくなって、
 俺のことを好き、とも言ってくれた。あのときは他に言いたいことがあったみたいだけどな」

 北村は一度言葉を切った。余計な口出しではないかと躊躇したのだ。
 でも竜児の方はそこで、すとんと、落ち着いてしまった。大河の言いたかったその先、大河に、
明日からはただのクラスメイトに戻ろうと言われたときに感じた喪失感の理由、大河のいる風景の安心感。
 大河が、一日に百回も竜児の名を呼ぶ理由。

「……分かるよ。今になってようやくって感じだけど。考えねえようにしてたけど、
 普通に考えりゃそうなんだって、今は」
「それは、櫛枝が好きだったから今までは分からなかった……ってことか?」
「ああ。たぶん。大河もお前のことが好きだったしな」

 北村は竜児の言葉には合わせず過去形を使ったが、竜児ははっきりと自分の中で納得した答えにまだ確信を
抱くには至らなかったために、使う時制は単に過去形に似た表現でしかなかった。それだけならまだ、
現在を含めた過去にも聞こえる言い方だった。どちらにしても、明瞭に一方が正しいと談じることはできなかったのだ。
 それでも竜児は、自分の気持ちに関しては、それが過去だと肯定してしまった。

「つうか、なんだ、全然順を追ってねえな」
「いいさ、俺も何だか、薄っすらとだが分かってきたような気がする」
「マジかよ。本人が半年かけて分かりかけてるようなことだぞ」
「マジだ。言われてみればって感じだが、確かに、高須が櫛枝と親しくなったとは思っていたが、
単に逢坂経由だと思っていたからな。言われてみれば、色々なことに説明がつきそうな気がする」

 そうかそうか、なるほど。北村は楽しげに呟いて、何度も頷いた。

「亜美の奴が膨れる理由がよく分かった」
「は? 川嶋が?」
「口には出さなかったけど、分かるんだよ。幼馴染だからな。
 あいつのことだから、何かお前たちにお節介なことでも言ったんじゃないか?」

 察しのいい北村というのも調子が狂うものだった。停止していた思考能力が運転を再開した上、
余事は置いて一つのことに集中しているせいかもしれない。鈍感さにかけては竜児に勝るとも劣らない北村が、
亜美のごとき察知力を発揮している。
 もっとも竜児の調子だったら、昨日の夜から狂いっぱなしではあったが。調子が狂ったせいで、
普段考えないようなことを思い至ったのだ。

「そういう理由だったら、高須のことを水臭いとは攻められんな」
「…………」

 つまり、親友に秘密を持っていたということを。

「それで、何かあったわけだ? その均衡状態みたいなものが、昨日崩れてしまうようなことが起きたんだな。
 あの様子だと櫛枝と逢坂の間でも何かあったみたいだけど」
「それに関しては、さっぱりだ。俺もびっくりしてる。全然分かんねえよ」
「まあ、理由はさておき、あれはどう見ても高須を取り合っていたよなあ」

 竜児は眉をひそめた。最凶の誉れも高い三白眼をすうっと細め、戯けたことを抜かす男だ! 切り刻んでやろうか?
と考えているのではなく、半透膜を通過する液体のように、北村の言葉が脳に認識されるまで時間がかかっているのだ。




324 :代理:虎注7/7:2009/11/05(木) 18:37:38 ID:XZ7q+zJ/
:虎注7/7 ◆wVNPBvxl56:2009/11/05(木) 08:11:08 ID:???
「しかもあの示し合わせたような構いっぷり……二人とも腹を括ったということだな」

 一人心得顔の北村に竜児は全然ついていけない。

「え、おい、ちょっと待てよ、勝手に話を進めんな。ななななんだよ取り合ってるって、腹括ってるって、
 それはなんか前提がおかしいぞ」
「ん? 櫛枝も高須のことが好きなんじゃないのか?」

 古典的な表現で言えば、竜児は頭をガーンと殴られたような気分だった。斬新に言い表すなら、凶暴な女子高生に木刀で殴打されたかのような衝撃を伴った発言だった。
 北村はいい奴だ。しかしデリカシーがないのだ。

「あ、これは言っちゃまずいことだったか」
「お前な……」

 竜児の足が止まる。
 それが事実だとしたら、何という皮肉だろう。そして何というバカバカしい話なのだろう。
一年近く片想いしていた相手が自分のことを好きかもしれない驚天動地のこの情況で、自分は何をやっているのか。
竜児は頭を抱えてうずくまりたくなったので、その通りにした。たとえそれが法律で禁じられていたとしても、
今の竜児なら躊躇いなくやった。

「た、高須!? すまん、大丈夫か!?」
「…………」

 北村が周りでおたおたしているのも竜児の目には一向に入らなかった。アスファルト上の落ち葉を
一心に凝視しているようだったが、その実何も目に入っていなかった。
 考えようによっては、北村とも情況は似ている。北村の場合、一度告白し振られた相手にしばらく経ってから
告白されたのであった。絶妙な時間差で両想いになる期間がなかった。竜児の場合は気がつかなかった。

「高須! 気を確かに!」
「ダメだ北村、俺しばらく立ち直れねえかも」

 そこでふと生じる疑問。

「北村」
「なんだ高須!? ……ああ親友をこんなに落ち込ませてしまうなんて……! 何でもしてやる! 言ってみろ!」
「……お前、何で大河を振ったんだ? もう好きじゃなかったのか?」
「ぐ」

 中々のダメージだった。北村は分厚い胸筋の下のセンシティヴなハートに多大な損害を受け、
たとえとかではなく本当に胸を押さえて竜児の隣にうずくまった。

「おう、ど、どうした? 北村?」

 竜児がおたおたする順番だった。鈍感な男たちは意図せず互いに鞭打っていた。

「……い、いいだろう……何でもすると言ったからには、答えよう。男に二言はないぞ」

 北村の眼鏡がきらりと光る。うろんな光景に見えて、よく見ると北村は赤かった。誰よりも男らしく
清々しい眼鏡くんは、ほっぺを赤く染めて恥らっていた。竜児などはいっそ自分が告白されるのではと
一瞬ぎょっとしたくらいだった。


325 :代理:虎注7/7+1:2009/11/05(木) 18:40:53 ID:XZ7q+zJ/
:虎注7/7+1 ◆wVNPBvxl56:2009/11/05(木) 08:12:07 ID:???
「…………す……好き、な、人が……いる」
「おうっ!?」

 竜児はしゃがんだ姿勢のままよろめき、それでも尻餅は死守し、勢いで立ち上がる。背中にぶつかった電柱に
そのまま寄りかかり、身体を支える。
 竜児が衝撃を感じている間に、北村はといえば、

「くくく……」

 泣いていた。

「お、おい、北村!? 大丈夫か!?」
「大丈夫なわけがあるかあっ!」

 泣き顔のまま立ち上がると、鞄を放り捨てスクワットを始める北村。高ぶった感情の対処が体育会系っぽい。
竜児の前で北村の泣き顔がすごい勢いで上下する。
気持ちが悪かった。

「……大丈夫か?」

 竜児は改めて、頭は大丈夫かという意味で訊ねた。

「ダメだ!」

 北村はあくまで男らしかった。

「脱ぐしかない!」
「脱ぐな」

 学ランのボタンに手をかけた北村の頬を、竜児は力なくぺちゃっと叩いた。

「ダメだダメだダメだ、ダメだーっ!」

 社会的に致命傷を追うことは思いなおしたが、頭をかきむしる北村。狂乱の体である。

「高須竜児!」
「はい!」

 クラス委員は定規のようにまっすぐ親友の凶相に指を突きつけた。端から見れば正義感が不良の非行を見咎めたかようだった。しかして優等生である竜児はついいい返事を返してしまう。

「逢坂大河が好きか!?」
「はい! ……ってあれ!?」
「よろしい!」

 北村の眼鏡は夕焼けが映りこんでいたが、竜児にはその下の熱く燃える目がありありと見えた。
暑苦しい男である。
 暑苦しい男に戻ったのだ。
 告白してくる――吐き捨てるように宣言すると、北村は元来た道を駆け戻っていった。一路、学校へ。
 竜児はぽかんである。何が起こっているのか理解するまでにしばしの時間が必要だったが、
自分が何か親友に重大な影響を及ぼしたことは分かった。逆に北村は、勢いで竜児から本音を引っ張り出して行ったのだった。

「はい……って」

 やがて一人歩き出した竜児は、スーパーの特売を思い出した。動揺はしていても、衝撃を受けても、
何があろうと安くておいしい晩御飯を作るのが竜児の使命である。きっと、大河も食べにくるのだろうし。

*

普通に分母間違えたです。

326 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/05(木) 18:48:51 ID:XZ7q+zJ/
虎注GJッス!!
分母の件はおちゃめということでそのままに。
決して読みながら一刻も早くこれを代理投稿しなくちゃとか思って最後の方を見てなかったわけじゃ無いんだからね!!

327 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/05(木) 20:58:19 ID:PB6abFch
今,虎注1から読み直したよ。
改めて言おう!GJ!!そして続き楽しみに待ってるぜ!!

328 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/06(金) 01:15:29 ID:YFl+whvz
多分このスレだったと思うけど
大河が理想の結婚相手を語っていって
最終的にどう見ても竜児のことです、になるやつって何だっけ

329 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/06(金) 12:47:46 ID:29P8aWhh
>>325
職人も代理も乙!
青春だなぁ…

330 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/06(金) 14:28:00 ID:hJrT1uhm
>>325
GJ! 虎注イイ! 
みんな熱くて、文章が濃密だぁ
なにげに >北村駄作 とか >トキ に吹いてしまった
分母の間違いも萌えさせてくれるぜ。

>>326
代理の方も本当に乙です!

331 :代理:2009/11/06(金) 15:36:48 ID:CUiwOkC1
とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero:2009/11/06(金) 03:38:31 ID:???
お題 「お父さん」「ストーカー」「記憶」



「はあ……」
 卓袱台の前で深々と溜息をつく竜児。
「竜児、どうしたのよ、さっきから落ち込んじゃって。ただでさえ凶悪な顔がどこかのストーカーみたいになってるわよ?」
「いや、ちょっと夢見が悪くてな……」
「……どんな夢?」
「……なんというか、昔の記憶をほぼ忠実に再現した夢でさ」
「昔って?」
「小学の……二年だったか三年だったか、作文を書く授業があってさ……テーマが『ぼくの・わたしの家族』で」
「……で?」
「で、正直に書いちまったわけだよ。『うちにはお父さんがいません。お母さんは夜にお酒を飲む仕事をしています』って。
 もちろん書いたのはそれだけじゃないんだけど、やっぱりその辺が印象に残っちまったんだろうな」
「……イジメとか?」
「いや、そこまで酷くはなかったけどさ。元々目付きのせいで引かれがちだったのが、一層人が寄らなくなったのは確かだな」
「……竜児……ちょっとそこに座りなさい」
「いや、座ってるだろ、さっきからずっと」
「いいから黙って」
 大河は竜児の傍に立つと、その頭をそっと抱き締める。
「た、大河!?」
 そしてそのまま――流れるようにヘッドロックに移行。
「あだだだだだだだ!」
「あ・ん・た・は・そんな昔の事でいつまでもグジグジしてるんじゃないわよ!このグズ犬!いやグジ犬!」
 ぎりぎりぎりぎり。
「大河!ギブ!ギブだって!」
 竜児の必死のタップにようやく腕を離す大河。
「あー……いってえ……。
 まあ、確かにこんなことで家族に心配かけるもんじゃねえよな」
「まったく、わかったならやっちゃんが起きてくる前にそのしょぼくれた顔を治しなさいよ」
「おう、すまなかったな、大河」
 言いながら竜児はポン、と大河の頭に手を。
「だから、私じゃなくてやっちゃんに……」
「いや、だからさ……心配かけたのは大河にだろ」
「え?」
「お前もさ、もう家族……みたいなもんじゃねえか。泰子だって『うちは三人家族』とか言ってたしな」
「ふぇ?……え、あ……うん」
「だから、心配させてすまねえって」
「わ、わかればいいのよ」
「そうだな、お詫びに今日の晩飯はトンカツにするか……って大河、どうしたんだよ?」
「な、何が?」
「えらくニヤけちまって……そんなにトンカツが食べたかったのか?」
「そそ、そーなの!丁度食べたいなーって思ってて!」

332 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/06(金) 15:41:31 ID:CUiwOkC1
規制中でも投下乙です
このあたたかい雰囲気が良いね!
気配り大河かわいいよ

>>325
ずっと待ってたのですげー嬉しい!
上手い再構築だなぁ。ぐんぐん引き込まれる。
そして北村GJ!
本音を引き出された竜児がどう出るか…楽しみです
代理人さんも乙です

>>328
これかな?
http://tigerxdragon.web.fc2.com/index/SS11/601.html

333 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/07(土) 15:25:22 ID:3mhSJVwJ
>>331
投下も代理も乙!
竜児、さりげなく大河を撃墜w

334 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/07(土) 16:48:14 ID:TNe9JSE5
Test

335 :二次元地獄:2009/11/07(土) 19:26:20 ID:TNe9JSE5
「うっ、うっ…」
「ちょっと竜児、こそこそ何見て……、うぇっ、これ、もしかして「君に届け」?。なに涙ぐんでんのよ!」
「たっ、大河!。待て!。これには深い事情が…」
「このエロ犬!。よもやアンタが二次元ヲタだとは思いもよらなかったわ。貞子ね?。貞子に萌えてるんでしょ?」
「違う!。誤解だ!。俺はアニヲタなんかじゃねぇ!」

336 :二次元地獄:2009/11/07(土) 19:47:13 ID:TNe9JSE5
「じゃあ何だってんのよ」
「俺はなぁ、この子の境遇が他人事のようには思えなくて…。人から見た目で判断されて、損をして…。あんなにいい子なのに…。おうっ、何すんだよ!」
「これって浮気よね?。浮気。万死に値するわよね?そんなに貞子で萌えたいんなら、イッペン死んでみる?」
「こっ、声が能登麻美子になってんですけど…。おわっ、ウワワあ゛ー」

337 :二次元地獄:2009/11/07(土) 20:14:48 ID:TNe9JSE5
「はっ、ここはどこだ?。なんか、風景がすごくアニメっぽいんだけど…。あれぇ、どうしたんだ?。俺の顔。すごくサワヤカなんですけど…」
「風早おはよー」
「はい?」
「遅刻すんぞ。早くしろ、風早。じゃな」
「おっ、俺、風早なの?。ここはもしや二次元ワールド?。」
「シクシク」
「くっ、草むらの中で泣いてるやつがいる…。こっ、これは風早が貞子を慰める場面なのか?。なんか俺、ドキドキしてきたぞ」
「シクシク」
「くっ、黒沼がんばれ!(イツチヤツタ)」

338 :二次元地獄:2009/11/07(土) 20:26:19 ID:TNe9JSE5
「……!?」
「なっ、慰めてやろうか?」
「…イイヒト…」
「手ぇ握ってやろうか?(ワクワク)」
「かっ、風早君はイイヒトだー」
「うへっ…あれ?、こここいつは貞子じゃねぇー」

339 :二次元地獄:2009/11/07(土) 20:43:41 ID:TNe9JSE5
「おいっ、おまえっ!。三橋に何しやがんだ!」
「はい?」
「違うよ、阿部君っ!。風早君はイイヒトだ!」
「待て!。誤解だ!。出るアニメ間違えたぁ」
「俺の…俺の三橋にイチャイチャしやがって…。ゆるさんっ、くらえっ、ケツバット!」
「うぎぁー」

340 :二次元地獄:2009/11/07(土) 20:58:46 ID:TNe9JSE5
「はっ、夢か?。うつつか?。くそっ、ケツが痛い」
「あらあら。死んだ犬の死体が転がってると思ったら…」
「てめー、大河。俺に何しやがった?」
「……アララギ君じゃない」
「はい?(ガクガクブルブル)」

(エンドレス?)

341 : ◆QHsKY7H.TY :2009/11/07(土) 21:28:23 ID:O/QqB2E9
えーと終わりかな?
残念なことに俺には元ネタの君に届けなるものの知識が無かった。
すみませぬ。しかし大河のその嫉妬心は良し!

さて、他の書き手の皆さんも乙。
実はこの前会社の休憩時間で(これ内緒)虎注を代理投稿したのは私だったりします。
いや虎注本当に面白い。しばらくロムってたが虎注に感化されてまた書き始めてしまいました。
今回は長編になる予感(飽くまで予感)なので長い目で本当に長い目で見て頂けると嬉しいです。
タイトルは仮なので、宜しければまとめ人様がつけてくれると有り難いです。
では次レスより投下。

342 :ドラとら!(仮) ◆QHsKY7H.TY :2009/11/07(土) 21:30:18 ID:O/QqB2E9
始業式。
今日から新学期が始まる。
が、今朝から俺、高須竜児の気分はブルーだった。
今朝は新学期の為に用意した前髪のためのクリーム(地味に高かった)が意味を成さないことを実感し、オマケに家の壁の隅にカビまで見つけた。
この間カビ取りしたばっかりだっていうのに。
何で俺がわざわざそんなクリームを用意したのかと言えば、話は説明したくもない俺の遺伝的特徴を言わなければならない。
俺は目つきが異常に恐い。
何故か目端が吊り上り、三白眼などとよく言われ、それを隠すために前髪を弄ろうと思ったのだ。
俺が今朝からブルーなのはその生まれついての目つきのせいだったりする。
高校二年になった春、今日から新学期だというのに俺の唯一の親、母親である高須泰子は俺がカビに苛立つ顔を見て、

「あぁ〜ん、竜ちゃんどんどんパパに似てくるねぇ♪」

などと言ったのだ。
ちなみに俺は父親のことは写真でしか知らない。
物心つく前から、父親はいなかった。
その写真に写ってる父親はいわゆるヤクザで、恐い目つきで、泰子の胸を揉んでいた。
あんな奴が父親だというのは目つきの遺伝で理解しているが認めたくは無い。
だいたい、そいつがいないから泰子は夜の飲み屋での仕事で働かなければならず、こんなボロアパートに住んでいるのだから。
木造二階戸建のうち二階部分バストイレ付き2DK。
ちなみに一回は大家さんの家だったりする。
日当たりはついこの前までは非常に良かった。
この前までは。
隣にこちらの日照を度外視した巨大な高級マンションがイキナリ建ってからはその恩恵も遠く、毎日カビに悩まされる日々だ。
全く、それもこれも自分のこの目つきのせいだ。
……多分。



***



今日から新学期ということもあって、クラスが校庭で発表されている。
俺も例に漏れず自分のクラスを確認。
……2−Cだ。
他には…………ッ!!
掲示板を見て一瞬息を呑む。
こんな、こんなラッキーなことがあるだろうか!!

ザワザワッ!!

「ん……?……あ……」

掲示板を見て知ったとある嬉しい誤算のあまり、いつもは前髪で隠している三白眼を隠すのを忘れていた。
どうやら、周りの人間はそんな俺の目つきを見て怯えたらしい。
はぁ……前途多難だ。

「よっ、今年も同じクラスだな」

そこに、一年の頃から仲良くなった北村祐作が声をかけてきた。
おかっぱ頭に丸眼鏡。
見た目がちびま●こちゃんにでてくる学級委員に似ていることからまるおなどと呼び慕われている奴だ。



***

343 :ドラとら!(仮) ◆QHsKY7H.TY :2009/11/07(土) 21:32:01 ID:O/QqB2E9
俺達は新しい教室に向かっていた。

「はぁ、今年もみんなの誤解を解くところから始めないといけないのかなぁ」

誤解とはもちろんこの目つきのことだ。
今まで何度不良だヤクザだと誤解されてきたことか。
悪いが俺は喧嘩したこともなければ血を見ただけで震え上がるようなチキン分百パーセントの男だぞ。
……言ってて悲しくなってきた。

「大丈夫だ、少なくとも俺はわかっているからな」

そんな俺に、北村はフォローを入れてくれる。
こんないい友達を持てて俺は本当に良かったと思う。
こうやって理解してくれる人はやっぱり少ないのだ。

「ああ、そうだな、ありがとう」

お礼を言うとともにこれからの一年に思いを馳せる。
何せ今年は「あの人」と同じクラスになったのだ。
俺が以前から憧れだった「あの人」と。
べっ別にお付き合いしたいとかじゃないぞ!?
いやしたくないわけじゃないんだが……この目つきだしな、はぁ……。
せめて少しでも仲良くなれれば……とまぁそんなところか。

「あ、北村君、おはよう!!今年は同じクラスだね」
「おお櫛枝、お前もC組か」
「うん、あ、高須君、だよね?」

北村に話しかけた女子、やや短めの髪にハツラツとした体躯の櫛枝実乃梨は俺にも笑顔を向けてくれる。
彼女は北村が男子ソフトボール部なのに対し、女子ソフトボール部員という微妙なつながりで知った娘だ。

「私のこと覚えてる?何度か北村君の周りでニアミスしてるんだけど」
「ああ、櫛枝実乃梨、だろ?」
「あらあらまぁ、フルネームで覚えててくれちゃって嬉しいかも!!」

彼女もまた、俺に恐怖を抱かない奇特な?人柄のようで、今年は少し希望が見えてきた、そんな気がした。

「ではでは共にさわやかに朗らかに青春をエンジョイしようではないか!!あっはっはっはっは!!」

少し、変な娘かもしれないけど。
さて、と。

「ん?どうした高須?」
「ああ、ちょっとトイレ」
「そうか、じゃあ先に行ってるぞ」
「おぅ」

俺はクラスに入る前に一度トイレに向かう。
新学期は必ずこうする習慣がいつの間にかできていたのだった。
そうして一、二歩進んだそのとき、

ボフッ!!

胸に何か当たった感触があった。

344 :ドラとら!(仮) ◆QHsKY7H.TY :2009/11/07(土) 21:33:15 ID:O/QqB2E9
「ん?」

不思議に思って前を見るが何も無し。
右を見ても左を見ても何も無し。
とくれば残るは……下。
そう思って下を見た瞬間、衝撃が奔った。
目の前にはウェーブのかかった長くフワリとした茶の髪にそれはそれは小さな体躯で見目麗しい、

「おうっ!?あ、あ、あい「フゥン!!」さぐわぁっ!?」

そこまで思って、俺の意識はいい匂いと共にプッツリと途絶えた。



***



「災難だったな高須」

今だ傷む顎をさすっていると、北村が話しかけてきた。
どうやら俺は顎にアッパーを喰らい軽く意識を失っていたらしい。
その後教室でのホームルーム中ずっと傷む顎をさすっていたのだ。

「まぁそのおかげで誤解は早く解けそうじゃないか」

周りをみると俺と俺を殴ったもう一人の話題で盛り上がっていた。

「ヤンキー高須と手乗りタイガーの頂上決戦はタイガーの勝ちかぁ、タイガー凄いねぇ」
「いや、高須って目つきが悪いだけで別にヤンキーじゃねぇし。あいつは結構良い奴だぞ」

去年同じクラスだった奴が周りに説明してくれたり、先程の不甲斐ない自分を見て、急速に俺のヤンキー疑惑は薄れつつあるようだった。
俺は内心喜びを覚えつつも複雑だった。今回の件で俺の疑惑が解けるということは、もう一人の人物、手乗りタイガーと呼ばれている彼女に好奇の目が行くからだ。
そこまで考えて、俺はそこで一旦思考を切った。

「た、高須君?職員室に来てくれないかしら?」

怯えながら俺に職員室行きを命じた担任の先生、恋ヶ窪ゆり先生がいつのまにか目の前にいたからだ。



***



「失礼しました」

時間は放課後、挨拶をして職員室を出る。
終始俺に怯えていた先生が告げたのは進路調査票の未提出について。
うっかり忘れていただけなのだが、先生は俺が将来進むべき道に迷っていると勘違いしたらしい。
いや迷ってはいるんだけど、きっと先生の思う迷い方では無いと思う。
俺はやや遅くなった帰宅時間に溜息を吐きながら教室へと戻った。
教室に鞄をおきっぱなしだった為だ。
こんなことなら職員室に持って行けば良かったかも。
そうして教室のドアを開けた時、それは起こった。

ドォォォォォォン!!

椅子が、机が、宙に舞った。

345 :ドラとら!(仮) ◆QHsKY7H.TY :2009/11/07(土) 21:35:34 ID:O/QqB2E9
「……は?」

思わずおかしな声を出してしまう。
と、掃除用具箱が倒れ、中からころころと転がってくる同級生がいた。
驚いたことにどうやらそれは女子らし……いっ!?

「あ、逢坂……?」

そこにいたのは今朝は俺の顎にアッパーを喰らわせた見目麗しい小さな体躯の女子、逢坂大河だった。
どう話しかけていいものか迷う。
床で横になったら汚れるよ、とかが妥当だろうか?
しかしまだほとんど初対面の人間にそんなことを言ったら失礼になるかもしれない。
ああ、でも自分の見ているところで汚れていくものがあるのも許せない。
散々悩んだ結果、俺はとりあえず見なかったフリをして鞄を取りに行くことにした。
何を話しても上手くいかない気がしたからだ。
主にこの目つきのせいで。
しかし、俺が自分の鞄に触れた時、それは起こった。

「あーっ!?ア、ア、アアアアンタな、何してるのよ!?」

逢坂は目をこれでもかというくらいに見開き、体を震わせている。
しかし一体何にそんなに驚いているのだろう?

「いや、鞄を取りに来ただけなんだけど……」

出来るだけ視線を合わせないように言葉を返す。
こういう時はお互い真っ直ぐに向き合って話すのが常識だが、俺の場合それをするとどうなるかは人生の大半を使って経験済みだ。

「アンタのだって言うの?あっ!?れ、れ、れつ……?」
「れつ?」

「れつ」がなんだというのだろう。
あ、もしかして列か?

「レッツゴォーッ!!」
「なにぃ!?」

俺の推理が違っただと!?
などと驚いたわけではない。
彼女はその小さな体躯で教室の端から中心辺りまで一足飛びで近寄って来たのだ。
何という瞬発力、そして体のバネ。
だが感心してる暇は無かった。

「ふんぬぬぬぬ……!!」
「な、ななななな!?」

逢坂は何故か俺の鞄を奪わんと鞄に掴みかかってくる。
意味がわからず俺もなし崩し的に反対に自分の鞄を引っ張った。
彼女は余程俺の鞄を手に入れたいのか目をぎゅっと閉じて力一杯引っ張ってくる。
その顔はとても必死で、だが肌はミルク色に透き通り綺麗で、『やっぱり』可愛いと思わせる。
と、そんな事を考えていた時、

「ふんぬぬぬ……くしゅん!!……あ」
「ぬわぁっ!?」

逢坂はくしゃみをし、瞬間的に鞄から手が離れ、結果俺は引っ張る勢い余って鞄ごと後ろに吹き飛んだ。

346 :ドラとら!(仮) ◆QHsKY7H.TY :2009/11/07(土) 21:36:44 ID:O/QqB2E9
逢坂はしばらくその様をボーッと見ていたが、やがて不機嫌な顔を作って教室を後にする。

「馬鹿ッ!!」

俺の胸に会心の一撃を残して。



***



俺は教室で暴れた際に乱れた机や椅子(もともと逢坂がやった分も含めて)を整頓してから帰宅した。
ハッキリ言って気分は朝以上にブルーだ、いやダークだと言ってもいい。

『馬鹿ッ!!』

胸に残る罵声。
どうしてこうも俺は傷ついているのか。
いや、理由はハッキリしている。
ではどうしてそんなことを言われたのか。
やっぱりこの目か、目つきが悪いのがいけないのか。
畜生、目つきの悪さの馬鹿野郎。
俺はそんなダークな気分で夕飯を作り、泰子を仕事へ送り出し、自室の机に向かう。
こんな気持ちで取り組みたくはないが、あともう少しで完成なのだ。
もし俺が彼女とドライブデートをする時にかけるなら、という名目の元にMDで作っているドライブミュージックセレクション。
夏、秋、冬、はもう完成している。
あとは春、それだけなのだ。
ん?免許?もちろんそんなものは無い。

「良し、これで良いだろ」

お気に入りの曲を集め作り上げたベストドライブコレクション春。
これも机の隣の本棚の一番下においてあるダンボール、今だ使われる事のない『恋人が出来たらグッズ』に追加する。
ようやく終わったという達成感と、使う予定の無い山のようなグッズを見ての空虚感を同時に感じ、はぁと溜息を吐く。

「と、忘れる所だった、進路調査票」

俺は気分を変えるためにも、今日言われたソレを書いてしまおうと鞄を開いた。
ノート、教科書、ペンケース、ピンクの封筒、進路調査票……とあったあった……?

「……なんだコレ?」

鞄に入っていた見知らぬ桃色の封筒。
手にとって見ると、そこには、

『差出人:逢坂大河』

そう書かれていた。

347 :ドラとら!(仮) ◆QHsKY7H.TY :2009/11/07(土) 21:37:39 ID:O/QqB2E9
「え……?え……?え……?」

俺は今夢を見ているのか?
いやこれは紛れも無い現実だ!!夢であってたまるか!!
しかしまさか、まさか俺がラ、ラブ、ラブレターを貰うとは!?
いやいや落ち着け高須竜児。
まだラブレターだと決まったワケではない。
くっ!!ニヤけるな俺の口元!!
……無理か。
だって逢坂だぞ!?あの逢坂だ!!
背が小さく、しかしその気性と名前から手乗りタイガーと呼ばれる学校の有名人だぞ!!
その可憐な姿から一年の時は告白ラッシュが続き、全て速攻で振ったという伝説の手乗りタイガーだ!!
何を隠そう俺だって……ピラ…………?

『北村祐作様』

……。
…………。
………………。
いっそ、夢だったらいいのにと思うのは都合良すぎる、よな………………はぁ。
桃色の封筒の裏、正確には表だが、そっちを見て出てきたのは俺の席の隣にして友人の名前。
ここまでくればいくら何でも事の成り行きがわかる。
逢坂は放課後北村の鞄にラブレターを入れようと思って間違ったのだ。
北村と俺の鞄を。

「はぁ……」

重い、重い溜息を吐く。
わかっちゃいたことだが、現実は結構辛い。
とりあえず明日にでも返そう。
そう思ってた時、

「……あ」

封筒の封が開いてしまった。
なんてことだ。
このままではヤヴァイ。
軽くヤヴァイ。
慌てて封を元通りにしようとして……気付いた。

「……空っぽ?」

封筒の中は空っぽだった。
心なしか、安堵する。
それは封を開いてしまっても問題なかったからか、それとも……。

「あ〜やめやめ!!……考えるのはよそう」

途中で思考を仏詫GILL。
だってそうでもしないと冷静でなんていられそうになかったから。
いや、仏詫GILLなんて言ってる辞典で冷静じゃ無いか。
あ、また間違った、時点、だ……はぁ、本当にもう寝よう。



***

348 :ドラとら!(仮) ◆QHsKY7H.TY :2009/11/07(土) 21:39:24 ID:O/QqB2E9
時間は真夜中。
普段なら何事もなく眠っている最中、物音がした。

「泰子……?」

俺は気になって目を覚ました。
しかし時計を見てもまだ泰子が帰ってくるには早い時間帯。
俺は念の為に起きあがって居間を見に行った。
と、涼しい風がカーテンを揺らしているのが暗い部屋でも見えた。
あれ?窓は閉めたはず、そう思ったのと同時、俺は背後に気配を感じた。

「!!」

何が幸いしたのかわからない。
一つ言えることは、これはただの偶然だった。

「痛ってぇ!!」

振り下ろされる獲物。
恐らくは木刀。
暗い部屋でまともに見ることも出来ずにガード出来たのは、根っからのチキン根性、常に自衛を意識して出来た防御の賜物だった。
早い話が恐くて顔の前に腕をクロスしたらたまたま木刀をガードした構図になっただけである。
相手の方を見れば、三寸ばかりなる人、いと美しゅうていたり。
間違った、途中から竹取物語になってた。
だいたい三寸の人間なんていてたまるか。
よしんばいたとして、ここまで力が強くてたまるか。
そう混乱しながら確認した相手は見覚えのあるサイズの人だった。

「ぶえっくしゅ!!」

相手が特大のくしゃみを放つ。
俺はその勢いで離れ、部屋の電気を点けた。
こうこうと再び明かりが灯る我が家の居間にいる襲撃者は、

「あ、あいさかぁ!?」

逢坂大河だった。
何だよ、いと美しゅうていたりのくだりは間違ってねぇじゃねぇか。
ってそんなことは今はどうでもいい。
でも、髪、長いなぁ。
それに足、細いなぁ。

「フン!!」

声、綺麗だなぁ……ってどわぁ!?
逢坂は何故か俺に木刀を振り続ける。

349 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/07(土) 21:43:23 ID:/OWKIUvH
しえん?

350 :ドラとら!(仮) ◆QHsKY7H.TY :2009/11/07(土) 22:04:12 ID:O/QqB2E9
「あ、逢坂!?何を!?」
「……見たんでしょ?読んだんでしょ?笑ったんでしょ!?」

逢坂は木刀を振り続ける。
一体何を……?あ……!!

「ああ!!あのてが……『ズボォ!!』……み?」

逢坂は手加減という言葉を知らないらしい。
襖を背に立っていた俺の顔目がけ、「阿呆が……」とでも聞こえてきそうな刺突、いや牙突が来た。
壱式?弐式?参式?まさか零式?
いや俺にそんなものを見極める目は無いけど。
咄嗟に顔をズラしたのが幸いし、俺の顔に直撃する筈だった木刀の切っ先は襖に突き刺さっている。

「あれを知られたからには死ぬしかない……」
「お、おい死ぬとかそんな簡単に……!!」

逢坂のあまりの思い詰めように焦るが、

「でも、死にたくないからアンタを殺す」

これも許容出来る範囲には無い。

「もしくは記憶を消してもらう」
「ど、どうやって!?」
「大丈夫、こいつで脳天ぶったたけば記憶くらいはぶっ飛ぶだろうよ」

無茶苦茶だ。
逢坂は手紙の件で正気を失っておられるらしい。
ここは冷静になってもらう為にも事実を述べよう。

「あ、逢坂、あの手紙だけど……」
「うるさいうるさいうるさい!!」

ぶんぶん首を振る逢坂さん。
何処の炎髪灼眼ですかあなたは。

「死ねぇぇぇ!!」
「ちょっ!?空っぽだったんだってばぁ!!」

俺は叫びながら来るべき衝撃に備え、腕をクロスしてガードし目を瞑りながら叫ぶ。
が、衝撃はいつまで待っても来ない。
目を開けて見ると、驚いたように固まった逢坂がそこにいた。

「空っぽ……?」
「あ、ああそうだよ、空っぽの封筒だったんだ」

逢坂は急に力が抜けたように倒れ、次いで、

「グゥ〜〜〜♪」

お腹から可愛らしい音を鳴らした。



***

351 :ドラとら!(仮) ◆QHsKY7H.TY :2009/11/07(土) 22:05:12 ID:O/QqB2E9
私は、何かの良い香りがして目覚めた。
目を開けると、そこにはクラスメイトの高須竜児、もとい凶眼手紙泥棒未遂男がいた。

「お前、そんなに腹減ってたのか?」

凶眼手紙泥棒未遂男は、そんな事を言いながら私に皿を差し出してきた。
そこにはホクホク湯気の立ち上る出来たてホカホカ感たっぷりの炒飯があった。
なんのつもり!?と睨もうと思ったが、空腹は事実。
ここは仕方がない、食べてやろう。
でも、こんなことでは誤魔化されないんだから!!
はぐっ!!……んぐんぐ……う、美味い!?もぐもぐ……!!

「おい、炒飯は別に逃げねぇぞ」

うるさいわねこの凶眼手紙泥棒未遂男。
全く、何でよりにもよってこんな炒飯にニンニクの香りを付ける為に生まれてきたような奴に……。

「ほら、顔に米付いてる」

凶眼手紙泥棒未遂男は私にハンカチを寄越す。
私はそれをぶんどり慌てて顔を拭きだした。
いくら凶眼手紙泥棒未遂男とはいえ、他人の前でレディが顔を汚すなんて恥だ。

「お前、なんでそんなに腹減らしてるんだ?」
「……コンビニ飽きちゃったの!!」

私は一人暮らしだ。
一人暮らしと聞けば凄いね、憧れだよね、なんて言ってくれる人もいるが、ちっとも凄くないし憧れでも何でもない。
別に好きで一人暮らしになったわけでもないんだ。
あ、何かまたムカムカしてきた。

「何でコンビニなんて……いや、悪い、何でもない」
「フン、だいたいアンタが大人しく鞄を一回貸してればこんなことにはならなかったのよ。どうオトシマエつけてくれるわけ!?何て恥なの!?」

凶眼手紙泥棒未遂男に嘗められないよう出来る限り強気になる。
しかし凶眼手紙泥棒未遂男……ええいめんどくさい、クラスメイトT……これじゃ犯罪者みたいじゃない。
まぁ犯罪者みたいな顔はしてるけど。
……もぅめんどくさいし高須竜児でいいわ。
その高須竜児は私を見て一言、

「まだついてるぞ」

それを聞いた私は慌てて口周りを丹念に拭くのだった。
そんな私を見て高須竜児は溜息を吐くと腹を決めたように「ちょっと待ってろ」と言って居間からいなくなった。
数分して高須竜児はすぐに戻ってくる。
大きいダンボール箱を持って。

「ナニコレ?」

全く持って意味不明だ。
中にはMDやらノートやらが一杯詰まっている。

352 :ドラとら!(仮) ◆QHsKY7H.TY :2009/11/07(土) 22:06:57 ID:O/QqB2E9
「これはな、俺がもし彼女とデートするならという時の為に作ったMDだ。ちなみに今日で春夏秋冬全てのパターンをそろえた」
「……アンタ免許は?」
「もちろん無い」
「………………」
「それは彼女の為にうっかり作った詩、それは……」

高須竜児は一つ一つ丹念に私に説明していく。

「お前は凄いよ逢坂、俺はこんな目つきだし彼女が出来るとも思えないからこうやって想像するだけだ。でもお前は行動に移したんだ」

だから何よ。

「どうだ?俺はこんな根暗野郎だが、それでもこれを恥だと思わねぇ。だから逢坂も自信持てよ」

ふん、別にアンタに認められたって……嬉しくなんかないわよ。
私はそう思いながらダンボールの中のノートの一つに手を伸ばし、ページを開こうと「のわぁっ!?」……なんだってのよ。

「ス、スマンがそれはダメだ。他のは見ても良いがこれだけはダメだ」

高須竜児は大事そうにそのノートを抱える。

「ふぅん、恥だなんて思わない、とか言いながらそれを見られるのは嫌なんだ?」

所詮口だけの男ね。

「いや、そのなんというか……」
「そこまでやられると逆に気になるわねその中身、それを見せてくれたら今回の件チャラにしてあげてもいいけど?」
「なっ!?そ、それはありがたいがこれだけは勘弁してくれ!!その他のことだったら何でもいから!!何でも言うこと聞くから!!」
「何でも?」

こいつ、馬鹿じゃなかろうか。
墓穴掘っちゃったよ。

「じゃあ何でもしてくれる?犬のように何でも従順に?」
「する、するする誓う!!だからこれだけは、な!?」

この瞬間、私は下僕という名の仲間を一人手に入れたのだ。



***

353 :ドラとら!(仮) ◆QHsKY7H.TY :2009/11/07(土) 22:08:05 ID:O/QqB2E9
「あれどうするの?」

ようやく納得したらしい逢坂が帰宅前に尋ねてきた。
あれとは逢坂が開けた襖の穴だ。

「ああ、あれくらい何か紙でも貼って誤魔化すよ」
「ならこれ使って。お金かかるなら後でちゃんと払うから」

逢坂はそう言って俺が返した逢坂作の封筒を差し出して来た。

「じゃ」
「あ、送るぞ」

時刻は朝方、しかし女子を一人歩きさせて良いものか。
否、断じて良くない。

「いい、近いし、木刀あるし」
「いや、いくらなんでも……」
「じゃあね、竜児」

しかし逢坂はそれだけ言うと出て行ってしまった。
って今、名前を呼び捨てにされた、か?
途端胸に去来する幸福感。
俺はくるくる回りながら自室へと戻った。
机の上には一冊のノート。
逢坂の好奇の目から死守した一冊だ。
これだけは彼女に見られるわけにはいかなかった。
俺はノートを開き栞のように封筒をそこに挟む。
そのページには、詩の前書きが綴ってあった。
この後には長く恥ずかしくなるような詩がたくさん綴ってあるわけだが、その前に、という前書き。
俺はそれに目を通し、今日はこれを死守出来て良かったと思った。
さて、もう何時間も寝られないが、少しでも寝るとしよう。
俺は気分の高揚からか、ノートを開いたまま再び床についた。



***



静まりかえる室内。
開かれたノート。
ノートには中心に前書き。
そこにはこう書かれていた。



─────逢坂大河嬢に捧ぐ─────



***

354 : ◆QHsKY7H.TY :2009/11/07(土) 22:11:33 ID:O/QqB2E9
支援感謝!
あと言い忘れましたが今回からまた書き方と間隔の開け方を変えてみました。

次からは支援を期待して何レス貼るか明言すべきかなぁ。

まだ少しあるけどそれらは次回ってことで!

355 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/07(土) 22:16:56 ID:LMZxWp6r
>>340
直接書き込んだかな?
できれば一回メモ帳に書いてからコピペで投稿することをお薦めする。

>>354
お疲れ様です。
何だよ、原作のパクリじゃねぇか!と最初は思いましたが、最後にやられました。
あと、何レス貼るかは書いたほうがいいと思う。
途中ちょっと投稿が途切れて、書き込みのタイミングが難しかったので。

356 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/07(土) 22:20:57 ID:/BWucT1S
原作1巻をしっかりとオリジナルに変えてて
話の流れもすごくスムーズ
ラストの切り方もうまい!

ちょっと偉そうに書いちゃったけど
とにかくGJ!

357 :二次元地獄:2009/11/07(土) 22:49:04 ID:TNe9JSE5
「ちょっと竜児、さっきの話、元ネタ解説しないとサッパリわかんないじぁない」
「正直スマンカツタ。とらドラネタ以外の話をするのは気がひけるが、説明しよう!」
「はい、スルースルー」
「まず最初の『君に届け』なんだが、これは別冊マーガレットに掲載中の漫画です」
「アニメも日テレで放映中ね。火曜の深夜1時になると、アンタいつもコソコソコソコソ…このゴキブリ!」
「(スルースルー)、一言で言うと、王道の恋愛ストリーだな」
「女の友情物でもあるのだよ、高須ボーイ」
「くっ、櫛枝!、藪から棒に!」
「アタシも貞子の健気な姿見てると、ツイ高須君を思い出しちゃって」
「同士よ!」

358 :二次元地獄:2009/11/07(土) 23:07:56 ID:TNe9JSE5
「料理万能、家事万能で、凄いイイ子なんだけど、見た目が根暗で、」
「リングの貞子なんだよなぁ」
「アンタはバイオの犬でしょ、フン」
「うっせーなぁ」
「で、その女版竜児の貞子が、北村君のように完全無欠席キャラの風早君に、ジミーにあこがれるのね」
「なんか凄くキモチワリイんだけど、その説明」

359 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/07(土) 23:17:30 ID:8C2wAAA/
頼むから、直接書かないで書き溜めてから貼り付けてくれ。
あとsage推奨な。

360 :二次元地獄:2009/11/07(土) 23:44:23 ID:TNe9JSE5
「そしてその、高須ガールとイケメン北村ボーイの恋路を邪魔するのが…」
「アンタにクリソツの性悪娘なんだよね、チビトラ」
「なんだバカチー、うっさいわね」
「容貌が『フランス人形』みたいってとこは、そうかもねぇ…。でもあの性格は、大河じゃなくてあーみんかも」
「ちょっと、あたしのどこが胡桃沢ウメなのよ!。みのりちゃん!」
「まあ変な名前てとこは大河ににてるかもな、ハハハ」
「このバカ犬、覚えときなさいよ、その戯れ言」
「はははは、なんか険悪な感じになってきたのでここらで終わりにしまショ」

361 :二次元地獄:2009/11/07(土) 23:53:39 ID:TNe9JSE5
直接書きこんですみませんでした。反省します

362 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 00:20:12 ID:suYBn5Od
>>361
とらドラ!好きが、そのアニメに惹かれる要素があるのが分かった。
長井監督の電磁砲だけでなく、そっちも見てみよう。今から追いつけるか分からんが。 
あ、sageはよろしく頼むな。

>>354
原作と微妙に違うところが「?」で、読み進めたら、最後に「!」
この先、一体どうなるんだ? ワクワク

363 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 01:10:50 ID:SjNEpxX9
>>354
次回からが本番かな?
厳しい意見も言わせてもらうが、原作をなぞっただけの導入部分は蛇足。
必要なのは最後のレスだけじゃないかと。

364 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 01:51:14 ID:m3Aeu8dn
導入部ってその作品の中で原作と微妙に異なるキャラの性格付けや
設定を分かりやすく読者に伝える必要があるし、語り口に慣れてもらうとか
作者自身の筆のノリを進めるために役立ったりするんだよな、少なくとも俺は。

そんな俺から言わせてもらうと、
すんなりと物語に馴染める今日の投下分は非常に優秀だと思ったし見習いたいとも思った
仮題だけどタイトルもなるほどって感じだし、続きも期待しちゃうぜー!

365 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 02:26:04 ID:enW9HV1W
>>364
まあ一理ある

ラストへのミスリード狙ってたのは判るけど
それを差し引いてもかなり冗長だなと思う
設定は良い

366 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 08:09:06 ID:Fu/4Pvcp
最近の批評、辛口度上がってね?w

367 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 11:13:30 ID:XNrXIU5E
じゃあ大河だけ甘口で。

368 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 20:12:53 ID:eB6X7TC5
実験的な作品なら、ある程度きつい批評も肥やしのうちだな。
ただ、「前口上うぜえ」みたいな感想は余計


369 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 21:36:59 ID:erdhoLBR
>>180です。
感想などいつもありがとうございます。

>>354
新作ですね。続き期待してます。

さて、前に書いた「WHITE ALBUM」の続きです。
タイトル付けありがとうございます>まとめ人さま。

・・・まあ、続きと言うかオチみたいなものですがw

以下 4レスほど使用します。


370 :WHITE ALBUM番外編 ◆x6jzI2BeLw :2009/11/08(日) 21:38:55 ID:erdhoLBR

「大河」
「何?竜児」
新居と言っても勝って知ったる高須家の居間。
多少、家具が入れ替わったくらいで竜児も大河も見慣れた風景に新鮮味はあまり感じなかった。
むしろ、懐かしいと言うか、心安らぐ感じがして新生活のスタートと言うのにすっかり落ち着いた雰囲気が漂っている。
見慣れた新居で迎えた最初の日曜の朝。
朝食を終え、台所で食器を洗う大河へ竜児は声を掛けた。
「いちおう、大家に挨拶しておくか?」
「そうね・・・私は知ってるけど・・・覚えてるかしら?」
「忘れてねえだろ」
・・・あんだけ騒いだんだ。
続く言葉は大人の判断で竜児は飲み込む。
夜中の2時の殴りこみに始まって、あれやらこれやらと竜児は往時の騒動を思い出す。
・・・よく、追い出されなかったよな。
今さらながらに竜児は思う。
・・・大家が忍耐強くて助かったぜ。
・・・まあ、大河も昔の大河じゃねえから・・・大家も何も言うまい。
その点で竜児は楽観しているが、挨拶くらいはしておく必要があると思わざるを得ない。


「じゃあ、後で行くか?」
竜児は居間へ戻って来た大河に誘いを掛ける。
「うん・・・何か持ってった方がいいんじゃない?」
「おう。よく気が付いたな」
菓子折りくらい持って行った方がいいと大河は細かいところへ気を遣う。
大河も精神的に成長したなあと竜児はうんうんとうなづく。
「・・・当たり前でしょ・・・このアパートにお世話になるんだからそれぐらい当然・・・」
「・・・大河」
「何よ?」
「ここなんだけどさ・・・アパートじゃねえんだ」
「え?嘘?」
じゃあ、何なのよと言う大河に竜児は説明を加える。
「普通の一戸建てだ・・・俺らは大家の家の2階に間借りしていることになってる」
・・・普通の2階建て家の外側に階段を付けたんだな、ここ。
・・・だいたい、大家以外に俺らしか住んでねえだろ。
・・・アパートって言うのは共同住宅のことなんだよ。
「へえ・・・てっきり、私、アパートだと思ってた」
大河は竜児の説明に納得する。


371 :WHITE ALBUM番外編 ◆x6jzI2BeLw :2009/11/08(日) 21:39:56 ID:erdhoLBR

「あ、ばかちーだ」
大河の声に竜児はテレビ画面に視線を向けた。
竜児が見ると、さっきから大河が見ていた番組に川嶋亜美が映し出されている。
「おう、川嶋じゃねえか」
何かの情報番組らしく同じ放送局で今度始まる新番組のドラマの宣伝をしていた。
「へえ・・・主役かよ・・・川嶋・・・すげえじゃねえか」
ヒロイン役に抜擢されたらしく、川嶋はインタビューをする女子アナの質問に愛想良く答えていた。
「ふん・・・昔と変わらないわね。そのチワワモード・・・2−Cどころか日本中を騙そうなんて・・・偉くなったものね」
大河の言葉は相変わらず悪いが、口調は至って穏やか。
「素直に喜ぶって言う選択肢はねえのかよ?」
「ないわ・・・これっぽっちも」
あっけらかんと大河は言い放つ。
大河が口でそう言いながら、心で違うことを思ってると竜児には分かる。
その大河の目元は笑っていた。

画面が変わり、川嶋が持っていた携帯電話が映し出される。
それに付いていた物に質問者は興味を覚えたのか、話題をそっちへ振った。

・・・変わったストラップですね。
・・・昔・・・もらったんです・・・大切な友人に。
・・・猫?・・・ですか?
・・・そう見えます?
・・・ええ。
・・・残念ですけど不正解。
・・・じゃあ、何でしょう?
・・・タイガー・・・虎なんです・・・フェルトで出来た。

画面にいっぱいに広がる川嶋亜美の携帯電話に付けられたストラップ。
確かに猫と言われてもおかしくない様な不細工な形の手作り感ありありなそれ。

・・・名前もあるんですよ。
・・・へえ・・・どんな名前なんですか?
・・・ふふ・・・チビトラ・・・って言うんです・・・ちょっと落ち込んだ時なんか眺めていると元気を分けてもらえるみたいで・・・。

そう答えた瞬間の川嶋亜美の表情は素顔を見せていたと、竜児は感じた。
大河は複雑な顔をして画面を見つめている。
「・・・あれ、おまえがあげたんだよな、川嶋に」
「そうよ・・・私があげたのよ・・・ばかちーめ」
負けたって言う顔して大河は言う。
そのフェルトで出来た大河の分身は大河のお手製。
それは以前に竜児と大河のふたりが行った旅行先でのこと。
大河がフェルト体験教室で悪戦苦闘して産み出したミニサイズのトラ。
大河はそれを川嶋へお土産と称して渡したのだ。
露骨に嫌そうな様子を見せながら、それでも受け取った川嶋。
それが、ここで全国に向かって披露されている。
「やられた・・・ばかちーのくせに」
こんな風にお返しされるとは思わなかったと大河は降参の意思表示。
「・・・大河」
「分かってる・・・ばかちーに悪気がないことくらい」
まったく、川嶋も素直じゃないよなと竜児は思わざるを得ない。

・・・今夜、10時放送開始の新番組「星の軌跡」・・・主役の川嶋亜美さんにいろいろ伺いました。

「ねえ、竜児」
「何だよ?」
「これ、録画しておいて」
「おう」
果たして川嶋がどんな演技をするのか竜児も興味津々だった。


372 :WHITE ALBUM番外編 ◆x6jzI2BeLw :2009/11/08(日) 21:41:00 ID:erdhoLBR

大家用に渡す進物などを買い揃え、いざ出陣と竜児は家を出る。
「大河、準備はいいか?」
「待って、今、行く」
階段下で大河を待って竜児は大家の家の呼び鈴を押した。

・・・はい、はあ〜い。

「?」
「??」
大家の家の中から聞こえて来た声に竜児と大河は思わず顔を見合わせる。
「・・・何か、聞き覚えあるぞ」
「・・・私も・・・ある・・・誰だっけ?」

その答えはすぐに出た。

開いた扉の向こうから姿を現したのは・・・。

「泰子!!」
「やっちゃん!!」
竜児と大河は同時に叫んだ。

「いらっしゃ〜い。竜ちゃん、大河ちゃん」
ニコニコ笑う泰子。

「な、なんで泰子がここに居るんだよ?大家はどうした?」
竜児の矢継ぎ早の質問に泰子は動じることなく、悠然と答える。
「ん、ふふ。やっちゃんねえ・・・今日からここの大家さん」
泰子の説明はこうだった。
「大家のおじいさんがねえ、腰を悪くして駄目なんだって・・・介護施設に入るからって」
・・・で、やっちゃんが大家さんに成り代わったって言うわけ。
・・・びっくりした?

これからも一緒にご飯食べれるねと笑う泰子。
茶目っ気たっぷりな泰子に竜児も大河も返す言葉が見つからない。

そして竜児と大河の帰り際・・・。
「あのね・・・竜ちゃんも大河ちゃんも・・・仲がいいのはいいんだけど・・・もう少し控えめにね・・・ここ、とっても壁、薄いから」
曰くありげな微笑と共に泰子が言う。

・・・何のことだと、聞き返すまでもなく、竜児と大河は顔を見合わせ赤くなる。
慣れ親しんだ高須家の居間と言うシュチエーションが影響したのか・・・いつも以上にあれだったことは否定出来ない。

おばあちゃんになる日は早く来そうだねえ・・・と言う泰子の声を背にほうほうの態で竜児と大河は階段を上った。


373 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/08(日) 21:42:12 ID:erdhoLBR
以上です。

竜児の家ってアパートかと思っていたら、原作冒頭にそうじゃないと言う描写が・・・。
思い込みって恐い・・・。


まあ、どっちでもお話の本筋に影響はないので構わないのですが。
気になったので書いてみました。


374 : ◆QHsKY7H.TY :2009/11/08(日) 23:50:19 ID:h5vYZ7kE
>>355
パクリかぁ、まぁ要所要所変えてたけどこれぐらいじゃやっぱりパクリになりますか。注意しまっす。最後にやられましたか。ニヤリ。投下時多い時はレス数明言するようにします。

>>356
ありがと〜スムーズは意識しました。ありがと〜。

>>362
ありがとう!!一番実はそれをねらってたのだよ明智君!!

>>363
それも一理ありますよね。ただもうわかっちゃてるので書きますが、この話のコンセプトは竜児が最初から大河を好きだったら、なのです。
だから原作どおりに描写してここを改変、とかって感じにしようと書き始めたもので、ところどころまたそんな描写があるかも。
これは僕の力不足でもあります故お許し下さい。もちろん直す努力はするつもりです!!辛口審査バッチコーイ!!そして私の血となり肉となるがいい(笑)

>>364
ありがとう!!俺も結構そういうタイプ&二次創作を書くときは原作を知らなくても読めるような書き方を心がけているのです。
もちろんここはとらドラ!板なので必要性は少ないのですが、これは自分の固執した書き方とでも言いましょうか。
その辺の改良の余地は自分でもあるとは思っていますが、今はこれが精一杯のスタンスなのです。
おお?タイトルの意味を理解するとはなんて強者、いや兵なんだ。

>>365
やっぱり長いッスか……気をつけます。設定褒められたー!!

>>369
ありがとう、そしてGJ!



賛否両論……かな?やっぱり書くのは難しいっすね。


では>>353続きイキマス。あとがきいれて10レスほど。

375 :ドラとら!(仮) ◆QHsKY7H.TY :2009/11/08(日) 23:52:11 ID:h5vYZ7kE
「おかわり!」
「おぅ!」

俺は茶碗を受け取り炊飯器のご飯を再び盛ろうと……って!?

「おい!?何で朝から逢坂がここで飯食ってんだ!?」
「はぁ?」

逢坂は何言ってんの?とばかりに俺を睨みつけてくる。
いや、決して迷惑なわけでは無いのですよ逢坂さん。
むしろウェルカムなのですが……いろいろと、ねぇ。

「別にいいじゃない竜ちゃん。大河ちゃんはちっちゃいから省スペースだし」

泰子がフォローらしきものを入れてくれる。
二人は今朝出会い、イキナリ意気投合した。

「竜ちゃんに女の子のお客さんだぁ〜♪え?何?大河ちゃんって言うの?宜しくねぇ♪」

泰子は馴れ馴れしいまでに大河に近寄り笑みを浮かべた。
それに逢坂は面食らったのか驚いたのか、しかし不快に思うことは無かったようで。

「はい、高須君のお母さん」

普通に返事を返していた。

「あ〜堅苦しいの禁止〜、私はね、やっちゃんでいいんだよ?」

そのせいか、泰子は自分をやっちゃんと呼ばせるようになり、そのまま逢坂はウチで朝食を食べる運びとなった。
逢坂ももともとそのつもりでこちらに来たようで、今に至るのだ。
俺は上手い事逢坂と仲良くなった泰子を内心うらやみながら炊飯器の蓋を開き、唖然とする。

「……空っぽ?」

昨日っていうか今朝の逢坂と同じ台詞を口走る。
炊飯器は綺麗さっぱり空になっていた。



***

376 :ドラとら!(仮) ◆QHsKY7H.TY :2009/11/08(日) 23:54:03 ID:h5vYZ7kE
「まったく、使えない駄犬ね」

逢坂はまだ満腹では無かったのか、そう文句を漏らす。

「今度から来る時は一言言ってくれよ、そしたら多めにご飯炊くから」
「は?何でそんなこといちいちしなきゃなんないのよ?」
「いやだって毎日多めに炊くのMOTTAINAIだろ?」
「私が毎日食べにくればいいじゃない」

What?What are you say now?
……思わず英語で尋ねてしまった。幸いなことに口にはだしていないが。
毎日、everydayと申されましたか逢坂さん。
俺は今真剣に悩んだ。毎日彼女が来るのは正直嬉しい。まぁ、もう俺の想いが届く望みは無いんだけど。
でも、来てくれるというのならウェルカム、と言いたいが毎日あの量を食べられちゃ泰子の給料だけでは賄いきれるかどうか。
俺がバイトすれば話は早いが、泰子は俺のバイトを一切認めてくれない。
う〜む、と唸っていると、

「何よ?文句あんの?あ、食費はちゃんと出すわよ?」

問題が即座に解決した。

「えっ?いいのか?」
「アンタね、私だって遠慮ってモンくらい弁えているわよ、待ってなさい、今お財布から……あら?お財布忘れたのかしら」

逢坂はスカートのポケットをまさぐり、財布を捜すが目当てのものは見つからなかったようだ。

「ちょっと竜児、そこのベランダ開けて」
「?どうすんだよ?」

俺は言われるがままに一応開けるが、意味がわからない。

「取りに行くのよ、私のお財布」

逢坂はそう言うと、ベランダにあるデッキブラシで正面の窓、隣にそびえる高級マンションの一室の窓を開けた。

「お、おい!?何やってんだ!?」
「何って……自分の部屋にお財布取りに行くの、よッ!!」

思いっきり逢坂は飛び跳ね、正面の窓に飛びつく。

「おい!?危ないぞ!!」
「ヘーキヘーキ」

逢坂は気にした風も無く部屋に入り、

「あったあった」

難なく戻って来た。
どうでもいいけどちゃんと玄関使って欲しい。
いろんな意味で危ない。
だって逢坂、自分がスカート穿いてるっていう自覚あるのか……?



***

377 :ドラとら!(仮) ◆QHsKY7H.TY :2009/11/08(日) 23:55:32 ID:h5vYZ7kE
「というわけで北村君との仲、取り持ってよね」

家を出て開口一番、逢坂は俺に断首台を突きつけた。ああ、わかっちゃいたさ。

「犬のように私の為に働くって約束したんだからね!!」

逢坂は俺に指を向けて言い張る。まぁ、つまりは今の俺は逢坂と北村のキューピットにならなければならない、ということだ…………はぁ。



***



今朝は体育から始まった。バスケットボールのパス練習だ。

「高須、組まないか」

北村が俺を誘ってくる。

「おぅ、いいぞ」

断る理由も無いので俺は北村とパス練習を始めた……のだが。
何かこう、怨念じみた怨嗟を感じる。ふと振り返れば……奴がいた、もとい逢坂がいた。
何か言いたげな目で俺を見つめ……否、睨んでいる。
あの視線が純粋にただ俺を見ているのだったら何と嬉しいことか。
内心でまた溜息を吐きつつ、逢坂の意図を理解した俺は渋々一役演じる事にした。

「行くぞー高須ー」

北村がパスを出してくる。
それを俺は、わざと顔面で受けた。

「痛っ!!」
「!?大丈夫か、高須!!」

北村が寄ってくる。

「おお、大丈夫大丈夫。悪いな、少しボーっとしてた」
「いや、大丈夫ならいいんだが、こっちこそ悪い、ちょっと強かったか?」
「いや、あれくらいだろ。俺がボーっとしすぎてただけだって。あ、でも何かクラクラするから保健室行って来る」
「なら俺も付き添おう」
「い、いやいいよ、お前は悪いけど他の奴と……そうだな、おーい逢坂!!」

ここらでわざとらしく一人になっている逢坂を呼んでやる。

「な、何?高須君」

一丁前に丁寧語、北村の前だと苗字に君付けときたか。
俺は……名前で呼ばれる方がいいけどな。

「悪いけど俺保健室にいくから北村のパス練相手になってくれないか」
「う、うんいいわよ、丁度一人だったし」
「じゃあ頼んだ」

そう言って、俺は体育館の出入り口に向かった。チラリと後ろを見れば、少し複雑そうな顔をしながらも微笑を浮かべる逢坂がいた。
その笑みが俺に向けられたものじゃないのが悔しいが、しかし逢坂が喜んでるなら良しとしよう。
だから、胸に走ったズキンという痛みは無視することにした。

378 :ドラとら!(仮) ◆QHsKY7H.TY :2009/11/08(日) 23:57:24 ID:h5vYZ7kE
***



放課後、今日の調理実習で作ったクッキーを持って私は緊張していた。
このクッキーも竜児が作るのを手伝ってくれたのだが、そこの説明は割愛。
何故かって?
だってこの犬、女の私より料理上手いってどういうことよ!?全くプライドが傷ついたわ。
まぁ、私はどんな料理もたいして上手く作れないんだけど。

「いいか、飽くまでさりげなく行くんだぞ?」

竜児は心配性なのか、私に念をおしてくる。
アンタその念押しもう軽く五回は聞いてるわよ。

「わかってるってば」

そうして踏み入れたクラス内。
目当ての人、北村君の席には……誰もいなかった。

「あれ……北村君がいない」
「なに……?本当だ」

竜児も意外そうにしていると、教室でトランプに興じてた奴らがつい先ほど出ていった旨を教えてくれる。
竜児曰く、

「そうか、生徒会かも」

だそうだ。
そうなるともう今日中に渡すのは絶望的になりそうだとか。
冗談じゃない、今日中に渡さないとこのクッキーがどうなるかわかったもんじゃない。
主に私の胃袋に入る可能性が高くなる。
まだそう離れていないらしいので慌てて私達は駆け出した。

「どけどけどけぇーい!!」

私は人垣を掻き分け走る。
廊下を突っ切り曲がり角を曲がり階段を駆け上がる。
竜児が少しずつ遅れ始めるが気にしてはいられない。
そうして階段の最後の一段を踏み込んだ時、グラリと視線が揺れた。

「あ……」

……踏み、外したぁぁぁ!?

ドン!!

背中に衝撃が走り、私は呻き声を……上げなかった。
背中への衝撃も無かった。
背中に人の気配がする。

「竜児!?」

振り向けばそこには私と壁の間にクッション代わりになった竜児がいた。

379 :ドラとら!(仮) ◆QHsKY7H.TY :2009/11/08(日) 23:58:38 ID:h5vYZ7kE
「ちょっ!?大丈夫!?」

いくら私が小柄なほうとはいえ、人一人がそこそこの高さから落ちてくるのを受け止め、その衝撃をコンクリートの壁で受けたのだ。
無傷ではいられない。

「つつ……クッキーは?」

そう言われてはたと気付いた。
握り締めていたクッキーの袋が無い。
上を見れば、階段を上った先の窓が開いている。
恐らく、クッキーは外だろう。



***



気にするなという竜児を仕方なく一度教室に置いていき、私は校庭に出た。
わりとすぐに袋は見つかるが、

「これじゃダメね」

土が付いて汚れ、手に持った感触から中は粉々だ。
本当なにやってるんだろう私。
人に怪我させてまでこんなことして、あげくクッキーは台無し。
もうサイアク!!
そう思って半ばヤケになって食べた粉々のクッキーは……予想以上にしょっぱかった。
砂糖と塩、間違えたぁ……。



***



夕暮れオレンジの中、教室の椅子に座って痛めた腰をさする。

「こりゃコブでもできたかな」

これは先ほど逢坂を庇って受けた傷。
でも、俺がああしないとこの痛みを逢坂が受けていたことになる。
だから……後悔はしていない。
それに……、

「柔らかかったし、いい匂いだったなぁ」

役得もあったのだ、文句は言うまい。
そうしていると、誰かが教室に近づいてくる気配が。
ガラッと扉を開けて入ってきたのはしょぼくれた逢坂だった。

380 :ドラとら!(仮) ◆QHsKY7H.TY :2009/11/09(月) 00:02:32 ID:qpK7ezfp
「どうだ?あったか?」

コクリ。

「無事か?」

ブンブン。

やっぱりダメだったか。
何せ結構な高さから落ちたからなぁ。
上手く芝生や木の枝等に引っかかったりってのは無かったか。

「私ってさ、何をやってもダメなのかなぁ」

逢坂は今回の失敗が余程堪えたのか、かなり自信を喪失しているようだ。
そんな顔を見てると、胸が締め付けられる。
また、『あの時のような笑顔』を見せて欲しい。
その対象が、俺じゃなかったとしても。
だから……、

「それ、ちょっとくれよ」

俺は逢坂の処分行きクッキーの袋を分捕り口へと放り込む。
…………!?!?!?!?!?
し、し、しょっぱぁぁぁい!?
砂糖と塩間違えてるなコレ。
けど、不幸中の幸い、か。
逢坂はコレを渡さずにすんだんだ。
……まてよ?じゃあ逢坂はまだコレを食べて無いんじゃ……?くっ仕方無い!!

「んがぁぁぁ!!」
「あ!?ちょっとアンタ何全部食べて……!?」
「んぐんぐ……美味い!!これならきっと北村もイチコロだったハズだ、次頑張ろうぜ」
「あ……」

逢坂は不思議そうな顔で俺を見つめる。
心なしか、口元に笑みを浮かべたような、そんな気がする。
さて、そろそろ帰らねば特売に間に合わないな。



***



昨日の背中の痛みは幸いにもたいしたことはなく、俺は今日もまた学校へと赴いた。
今日は一体どんな手伝いさせられるんだろうと思うと少し憂鬱だけど。
と、クラスに入るなり雰囲気がおかしかった。
皆一様に俺を見つめ、次いでついてくるようにクラスに入ってきた逢坂を見つめる。
一拍間があって、途端、

「噂は本当なのかぁ!?」
「タイガーと高須が放課後クッキーを食べあってたぁ!?」
「マンションから一緒に出てきたぁ!?」

大騒ぎになる。
一体なんだってんだ?

381 :ドラとら!(仮) ◆QHsKY7H.TY :2009/11/09(月) 00:12:12 ID:qpK7ezfp
***



「噂になってるみたい」

放課後、逢坂に言われ寄った喫茶店。
今朝からおかしい学校の連中のことを逢坂なりに探り得た答えがそれらしい。
ちなみに俺も調べた結果、同様の意見が生まれていた。

「みのりんに聞いたんだけど、あ、みのりんってのは同じクラスの櫛枝実乃梨ね」
「ああ」
「何でも私がアンタと買い物してるところとか一緒にマンションから出てきたところとか目撃されてて、それで恋人疑惑が持ち上がってるらしいわ」
「俺も聞いた感じ似たような内容だった」
「オマケに昨日のクッキーの件を覗き見してた奴がいて、言いふらしたらしいの。今回騒ぎが大きくなったのはそいつのせいね、まぁそいつには真っ赤な血の雨を降らせたけど」

逢坂が言うと冗談に聞こえないから恐い。
そういえばそれとは関係ないと思うんだけど能登の奴が放課後いなかったんだよな、話聞きたかったのにどうしたんだろ?

「悪かったわね」

と、急に逢坂が謝ってきた。

「私がアンタとここまで一緒にいなきゃこうはならなかったし。ちょっとお世話になりすぎたわ」

そんなこと無いぞ、とは言わせてくれない。

「アンタの家って居心地良かったんだ。だからついついお世話になってたけど、確かにおかしいよね」

おかしい?

「私さ、両親離婚して父親に引き取られて、まぁ再婚したんだけどその相手と折り合い悪くってさ、喧嘩したら一人暮らしになってた」
「なんだよそれ……」
「こんな家いたくない、そう言ったらそれでじゃあこうしよう、ってね」
「そんな……」
「だから、家族の温かみみたいなのがあるあの家が凄く羨ましくて、ついつい居ついちゃった」

そう説明する逢坂は何処か悲しそうで。
だから、今まで誰にも見せた事の無いこれを見せてもいいかと思った。

「なぁ逢坂、これ見てくれよ」

それは財布に入れてる一枚の写真。名も記憶も無い父親の写真だ。

「ぶっ!?ナニコレ!?恐っ!?っていうか似すぎ!!ぶはははははは!!」

逢坂の顔に笑顔が戻る、良かった。

「俺なんてこいつに似てるってだけで苦労してきたんだ、この目つきでな」
「ぶははははは!!」
「そんなに笑うなよ、ってそういやお前は俺を恐がらなかったなよな」

今も昔も。だから、次に彼女から放たれる言葉は予想がついていた。
きっと彼女は覚えていないだろう。過去に俺にそれを言ったのを。でも、俺は覚えてる。それがきっかけだったから

「あったりまえよ、いい竜児?」



─────神の前に、人は平等なのよ。

382 :ドラとら!(仮) ◆QHsKY7H.TY :2009/11/09(月) 00:13:56 ID:qpK7ezfp
***



朝早く、俺は普段とは時間を変えて登校した。
目的は一つ。
この手だけは何があろうと使いたくなかったが、でも昨日の逢坂の言葉を聞いて、逢坂の為ならやってもいいかと思った。
ガラリと教室の戸を開けると。既に結構な人が登校してきてた。

「あれ?高須今日は彼女と一緒じゃねーの?」

クラスメイトが一人意外そうに笑いながら俺に声をかけてくる。
スマン名前も知らないクラスメイトよ。

「ああん!?」

俺は出来る限り恐い声を出して凄んだ。
途端、静まる教室内。
一気に、俺が昔浴びていた視線を浴びる事になる。
普段なら誤解を解くのに必死になるか、はたまた逃げるかのどっちかだが、今日ばかりは染み込んだチキン根性を返上しなければばらない。

「俺が、誰と、何だって!?」

出来るだけ悪ぶりながらその男に近づく。

「ひっ!?ご、ごごごごごめんなさい!!」

男は急に怯えて俺の前から走り去る。

「昨日から、根も葉もない変な話してるのは、どいつだ?」

俺は構わず教室中に憎むべきこの凶眼を向ける。
誰もが目を逸らし、怯えている。

「誰もいないってことは気のせいかなぁ、だったらもう二度とそんな話題出てこないよなぁ」

俺はわざと大声でそう言った後、教室を出た。
スマン、ぶっちゃけ俺のチキンハートはもう限界なのだ。
俺は逃げるように教室から遠ざかった。
校舎から出て、誰もいない裏庭で座り込む。

「はぁ、やっちまった……」




***

383 :ドラとら!(仮) ◆QHsKY7H.TY :2009/11/09(月) 00:15:11 ID:qpK7ezfp
今朝も竜児の家にご飯を貰いにいったら、竜児は既にいなく、私とやっちゃんの分の朝ごはんだけラップしてあった。
不思議に思いながらも登校し、全てを知った。

「ご、ごめん逢坂さん、二度と変な噂立てないよ!!」
「べ、別に本気にしてたわけじゃないんだ!!」

次々と私に謝罪を述べてくるクラスメイト。私が首を傾げていると、みのりんが近寄ってきた。

「あのね大河、高須君が……」

そうして私は全ての説明を聞いた。あの馬鹿犬は、誤解を解くために、最も自分の嫌う方法をとったのだ。
恐らくは、私の為。私の恋の応援をしなさいという約束の為。あの……馬鹿犬が。私はすぐに駆け出していた。



***



「俺、今日はもう帰ろうかな」
「へぇ……いいご身分ね」

散々探し回って、ようやく竜児を見つけた時、そいつはあろうことか帰ろうとしていやがった。

「あ、逢坂!?」
「おい、駄犬。いつからアンタは私に断りも無く先に学校に行って先に家に帰れる身分になったのよ!?え?言ってごらん?」
「いや、その……」
「アンタ私に言ったわよね?何でもするって。でも頼んでもいないこともやれなんて言った覚えは無いけど!?」
「えと、あの……」

言ってごらんと言いながら反論させる暇など与えない。理不尽?そんなもの知ったことか。

「アンタもしかして今回の件でこの前の件がチャラ……自分が開放されるだなんて思っているんじゃないでしょうね?」
「へ……?」
「甘いわよ、そんな簡単に手放すもんですか」
「は……?」
「いい?アンタは私の許しが出るまで勝手なことは許されないのよ?わかってる?」
「いやあの逢坂……?」

竜児は意味がわからないというように不思議百面相な顔をしている。

「だいたいね、アンタ『竜』なんて大層な名前持ってるのにその情け無い態度は何!?もっとしゃきっとしなさい!!」
「しゃきっと……?」
「いいこと?今回の件は確かにアンタは頑張った、そこまでの勇気は認めてあげる」

私は空を見上げる。そこには、大きく長い飛行機雲が二本。

「アンタのその勇気に免じて、今から特別に勇気ある『竜」のアンタが私の隣に並び立つ権利をあげるわ!!」
「勇気ある『竜』……?」
「昔から、虎と並び立つ者は竜と決まってる、私は逢坂大河、アンタはこれからも私の為に私の傍らに居続けなさい!!」
「あ、あい「竜児!!私は並び立てと言ったのよ!!」………………たい、が……?」

ようやくと、竜児は憑き物が落ちたような表情で、私の名前を呟いた。

「そうよ、やればできるじゃない、竜児」

私は、こいつにやっと私の名前を呼ばせることが出来た事を、何故かとても誇らしく思えた。
まぁ疑問系なのはこの際、昨日のしょっぱいクッキーを無理して食べた事で目を瞑ってやるとしよう。

384 : ◆QHsKY7H.TY :2009/11/09(月) 00:17:29 ID:qpK7ezfp
とりあえずここまで。
続きは多分遅くなる、と思う。
この更新もこんなに早くいけるとは思ってなかったからなんても言えないけど。

385 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/09(月) 00:55:22 ID:hQ8P0geE
大河と役割を入れ替えたのか、優しい竜児いいじゃないの
ヤンキーだという誤解が晴れにくくなるのが気の毒だがw
まあ続きはゆっくり書いてよ

386 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/09(月) 08:38:27 ID:juRqf0SJ
GJ!
なんか本編が終わってしまっている分、こういった作品があると新鮮だなぁ。
続きが楽しみです

387 :代理:2009/11/09(月) 12:34:48 ID:C7FUYfSA
とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero:2009/11/09(月) 05:56:35 ID:???
お題 「腹の音」「問題」「笑え」


「あれ〜?竜ちゃん今からお出かけ〜?」
「おう、学校に忘れ物しちまってな。メシは冷蔵庫に入れてあるから、遅くなるようだったら暖めて先に食べててくれ」
 嘘であった。
 そもそも今忘れ物に気づいたのであれば、あらかじめ食事の用意をしてあるはずが無い。
 それでは何の為に出かけるのかというと……


 大橋高校の校門……の近くの物影。
 高須竜児と逢坂大河はそこに身を潜めていた。
「……まだかしら……」
「焦るなって、逢坂。授業終った直後の北村は部活や生徒会で忙しいけど、それが終ってからなら何も問題はねえんだから」
「でも、やっぱりこんな時間に偶然逢うなんて不自然じゃない?」
「そこは課題が終らなかったとか忘れ物取りに来たとかいうことにすればいいじゃねえか」
「そ、そうよね……」
「ほら、言ってるそばから北村が来たぞ。行ってこい、逢坂」
 軽く背を押すと、逢坂は数歩たたらを踏みながら前に出て。
「き、北む――」
 ぐうぅぅぅ〜〜るるる
 鳴り響いた腹の音は、逢坂の動きを止めるのに十分だった。

「……笑えばいいじゃないの」
「……笑わねえよ」
「何でこう、いつもいつも……上手くいかないんだろ……」
「まあ、今回のは不可抗力だろ」
「でも……やっぱり私なんかじゃ……ダメなのかな……」
 肩を落とし、とぼとぼと歩く逢坂は今にも泣き出しそうな表情で。
「……なあ逢坂、今日の晩飯はウチで食わねえか?」
「……何よ急に」
「腹減ってるんだろ?うちならもうメシの準備出来てるし、足りなきゃすぐに作れるしな」
「でも、お母さんとか、いいの?」
「……まあ、うちのおふくろはあんまり細かい事気にしねえからさ」
「……細かい事って……」
「どっちかというと、逢坂が泰子を見て引かねえかの方が心配だ」
「泰子って……なに、ひょっとしてあんた自分の母親のこと名前で呼んでるわけ?」
「おう、なんというか……ちょっと変わった親でな」
「そう言われるとなんか興味が湧くわね……メニューは何?」
「今日のメインはチンジャオロースだ。三人だとご飯が少し足りねえかな……冷凍してあるのを解凍するか、チャーハンにして嵩増しするか……」
「チャーハン!チャーハン食べたい!」
「よし、決まりだ。そうだ、逢坂がよかったらだけど、これからメシはうちで食うことにしねえか?
 前から思ってたんだよ。逢坂は晩飯8時だけどうちは6時半だから、二回作るのが面倒でさ。朝だって纏めて作って一緒に食べた方が効率いいし」
「そうねえ……竜児がどうしてもって言うならまあ、やぶさかではないわ」
「おう、頼む」
「それじゃ、さっさと帰ってご飯にしましょう。その後、明日の作戦を考えるのよ!」
「おう、そうだな。次はきっと上手くいくさ」


388 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/09(月) 12:50:32 ID:yD+FgaEG
>>384
乙!
こういうのもいいねぇ。
竜児の優しさに涙が出そうだ

>>387
乙!
そういう感じであのダラダラ生活が始まるのかw

389 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/09(月) 21:07:37 ID:t8701gbH
>>387
この時期の補完は新鮮だね
逢坂呼びは今読むと不思議な感じがするw

みなさん投下GJです
ここは竜虎に溢れてて癒されるなぁ

390 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/09(月) 22:29:47 ID:/2Pp7dRM
>>373
1階と2階が独立した家屋で1階に大家の婆さんが住んでるという構造
高須家より日照不足というある意味かわいそうな人
ついでに言うと塀の出口も別で高須家の階段降りたところは東側で
大家さんの玄関からの出口は北側

391 :うわぁ…すげぇ勢いで置いてきぼりですよ:2009/11/09(月) 23:28:08 ID:pMudw7V+
実に三ヶ月ぶりです。前回は盆前だったっけか…
もうね。開き直ってですね。空気読まないでですね。投下しますよハイ。
未読分はこれからじっくりたっぷり拝読させていただきますが。
ただ…ちょっとだけ…ちょっとだけ、愚痴いわせてください。
私の地元(鹿児島)では、とらドラ!の放送終了は8月だったんです。
敢えて情報を入れず、最終話に挑み…おおう。

で、とらドラ!の後番組として、「かなめも」が始まったんです。
先週の余韻をまだ引きずったまま新番組を見てですね。
感想………一言でいえば。

チェンジ!

…割と本当に気力が奪われましたよ。三ヶ月近く前のことですが。
…でもネタにしてますけどね!

と、いうわけでー。

392 :専用寝台:2009/11/09(月) 23:31:12 ID:pMudw7V+
<趣旨>とりあえず(*)は中の人つながりな「かなめも」ネタってことでどうかひとつ。

【専用寝台】

「学校って、なんで昼寝する場所がないんだろ?」
「…お前はいきなり何を言ってるんだ」

 昼食後、大河の分の弁当箱まで洗って、ついでに自販機から買ってきてやったオレンジジュースを渡しながら、竜児はかったるそうに机にうつ伏せになってる大河の対面に座り込んだ。

「だってお腹がいっぱいになったら眠いんだもん。だけど寝心地よくないから眠れないんだもん」
「……4時限目の古文で思い切り熟睡してたじゃねえかお前。だから眠れないんじゃね?」

 というか、そもそも学校とは勉学の場であって昼寝しにくるとこじゃねー。
 心の内だけでそう呟く竜児である。口にしたところでこの虎がそんな一般論、歯牙にもかけないのはわかりきっているし。

「ベストはやっぱり保健室のベッドなんだけど、サボリの溜まり場だもんね。うざいったらありゃしないわ」
「確かにそのとおりだが、お前も偉そうなこと言える立場じゃねーだろ」
「礼法室は生徒の憩いの場として一般解放するべきだと思うのよね。畳っていいよね」
「……それはそれでいいアイデアのような気もするが、保健室と同じ理由で却下だろうな。
 ほら、椅子を借りて並べればベッドの代わりになるだろ?それで我慢しろ」
「や。デコボコしてゴツゴツして全然寝心地よくない」
「贅沢いうな。じゃあ校庭の芝生はどうだ?」
「ん〜…悪くはないんだけど、季節と天気にもよるし、やっぱり服は汚れるし草の汁の臭いがつくからヤ」
「じゃあ体育倉庫のマットで寝てろ」
「アンタあんな臭いとこで私に寝ろって!?もっとマジメに考えてよね!!」
「…いつからお前の昼寝場所を検討する場になったんだ、ここは」
「そんなの最初からに決まってるじゃないこの駄犬!」
「いてっ!?ジュース飲みながら脛を蹴るな!しかも見えてねぇくせして的確に脛の急所をっ!!?」
「にょほほほほ、相変わらず仲がよろしいですなぁお二人さん」

 ♪ニンニキニキニキ♪ニンニキニキニキと小唄を口ずさみながら、実乃梨が二人の傍に寄ってきた。

「昼寝場所かい大河?だったら我がソフト部の部室に来るかいい。
 ベンチ並べて持ち込みのクッション敷けば、中々いい寝床の完成だ」
「さっすがみのりん!どこぞの駄犬と違って頼りになるぅ!」
「フフフ…今夜は寝かさないぜマイスィーツ?」
「いや寝せなきゃダメだろ。っていうか何をするつもりだ櫛枝?」

 意識しているのかいないのか、心もち大河をかばうような姿勢になっている竜児を微笑ましそうに見つめながら、ビッ!と親指立てて不敵に笑う実乃梨嬢。

393 :専用寝台:2009/11/09(月) 23:33:44 ID:pMudw7V+
「どうせなら高須君もご招待。っていうか是非に!
 そして……そして……三人でモーニングコーヒーをウボオオオオオゥ!」
「鼻血を噴出して何を企んでいるんだ櫛枝!?というかお前大丈夫かいろいろな意味で!?」
「いやあ…最近気づいたんだけどさ…私ってかわいい女の子専門かと思ってたんだけど、ちゃんと高須君にも反応するんだなぁって…みのりんレーダーが。
 だからさぁ…フヒッ…大河と高須くヒッ、りょ…両方ふたりいっぺんダブルでツインドライブでうひゃっほう親父ぃぃぃ!ってなクヒィベヒァラホウっな感じ?」
「益々わけわからないし!ていうかお前、まず病院へ行ってくれ頼むから!!」

 首をガクガクさせながら、プピュッ、ピピュッと鼻血を噴いている初恋の君に、心から懇願する竜児であった。

「いやいやいや、もうわたくしにとっては両手に花というか…わかりやすくいうと…」
「わかりやすく言うと?」
「ん〜〜〜〜…3P?」
「わかりやすすぎだ―――――!ていうか中心お前かよ!?」
「大丈夫・・・やさしくするから!」
「それはお前の台詞じゃねぇ!つかなにイイ笑顔で決めてんだお前様はよぉ!?」
「高須くん…太陽って本当・・・黄色く見える朝があるんだぜ…」
「それは知ってるけど!会話をしてくれ頼むから!!」

 何気に私生活の一端を垣間見せながら、竜児が頭を抱えた時。
 視界の片隅で、何かが動いた。

「実乃梨ちゃん…」
「あーみん!?」

 かたん、と洗ってきたばかりのランチボックスが床に落ちる。
 大河とは別種の、しかし威風堂々という佇まいが良く似合う少女が、今は触れれば折れてしまいそうな儚さをまとって、立っていた。
 その潤んだ瞳の中で、フラッと何かが揺れる。

「私が…亜美ちゃんがいるのに、実乃梨ちゃんてば…」
「ち…ちがうんだあーみん!これは…」
「言い訳なんて聞きたくないわ!だって実乃梨ちゃんの守備範囲は7歳から15歳まで(*)のロリペド嗜好!だから見た目が小中学生なチビトラは実乃梨ちゃんにとってまさに理想の恋人!
 やっぱり私のことなんてただの遊びだったのね―――――!
 畜生ボクの万馬券―――――!!(*)」
「ち、ちがうんだあーみん!確かに大河の控えめミニマムオパーイは大好物だが、あーみんのぷよぷよキョニュームの魅力にもちゃんと目覚めてるから!
 っていうか取って付けたような万馬券ってなーんな〜のね〜〜〜〜〜〜!?(*)」
「…櫛枝…川嶋…」
 ――目の前から走り去っていく二人の姿に、それ以上に心の距離が遠ざかっていくのをひしひしと感じる竜児であった。
「来客用のソファーなんかもなかなか寝心地は良さそうだとは思うけどねぇ。流石の私も校長室に乱入するのはちょっと」
「今までの流れ全てスルーかよ大河!すげぇなお前!!」
「ポイントは抑えてるわよ?……とりあえずソフト部は危険だということは認識してるから」
「おう。…それは正しいが、そんな認識を持たなきゃならんのはちと悲しいというか寂しいというか」
「むう。とりあえず正しければそれでよいであろう。のう?(*)」

なんか口調がビミョーに変だぞお前。具体的には13歳中学生の元お嬢っぽく。そもそも(*)ってなんだ?
――という疑問は、やはりそっと心の内に秘めておくことにして。

394 :専用寝台:2009/11/09(月) 23:37:54 ID:pMudw7V+
「で、昼寝場所の考察について結論は出たのか?」
「そうねぇ…試案は一つあるから試してみるか。とりあえずそこに座れ、駄犬」
「へいへい」
 もうあれこれ反論するのは放棄して、竜児は大河にうながされるまま、素直に自分の席についた。
「もうちょっと前に…そうそう。で、足はまっすぐ伸ばして」
「おう」
 言われるまま竜児は椅子に浅く腰掛け、足を揃えて伸ばす。そんな竜児をジロジロと見やり、大河はふうと息をついた。
「まあ何も無いよりはマシ…だよね。動かないでよ竜児」
「何だよいったい…ってちょっと大河!?」
「動くなって言ったでしょこのグズ犬!!」
 靴を脱ぎ、さも当然そうに自分の膝に座ってきた大河に反射的に声を上げかけた竜児だったが、大河はこちらがリアクションを起こすより早く小さなお尻を重心的に座りのよい場所に置いてきた。更に竜児の胸に背中を預け、身体全体、自分の全部をこちらに委ねてくる。
 ――こうなってしまうと、竜児としてはもうどうしようもなく、無条件で全てを受け入れるしかない。大河の赤くなった頬と、蕩けそうになる顔を必死に引き締めているへの字口を見てしまえば尚更である。
「…色々と言いたい事はたくさんあるが、とりあえずそれは置いとく。
 それで、寝心地いいか?お前、これで満足かよ?」
「んん〜〜〜…制服ごしだからちょっと固いかな?」
「……そうか」
 口ではそんなことを言いつつ、自分の膝から降りる様子は微塵もない大河に、一見なんでもなさそうに、しかし内心では結構な葛藤の末。
 竜児は大河の脇の下に手を入れ、持ち上げた。
「ちょ、竜児!?」
「ちょっとどいてろ。…軽いな、お前」
 ひょい、と机の上に大河を座らせて、竜児は制服の上着を脱いだ。
「ほら、こい」
「ちょ…」
 竜児は大河を抱え上げ、先ほどのように自分の膝に座らせた。更に脱いだ上着をかけてやり、お腹の上に回した手で大河の身体をガッチリ固定。
 そしてニーソックス一枚の細い足が寒くないように、自分の足で挟みこむ。
「今度はどうだ?」
「…ん…ちょっとマシになったかな。っていうか最初っからこうしてくれればいいものをこのグズ犬」
 上着が無くなった分、背中の感触はより柔らかく快適になり、竜児の体温を熱く感じることができる。
 その熱は被った竜児の上着で包まれて、じんわりと自分を暖めてくれる。
 そして何より…
「竜児の匂いがする…」
「そりゃあ…俺の上着だし」
「んふ…」
 上着の襟のところで口元を覆い、ゆっくりと息を吸う。
 嗅ぎなれた、この世で一番安心できる匂いが鼻腔をくすぐり、なんとも心地よい。
「りゅうじぃ…」
「おう」
 消え入りそうな声で自分の名を呼んだ後、かすかな寝息を立て始めた膝乗りタイガーを起こさないように。
 竜児は慎重に周囲を見回し……『やれやれだぜドララー』と一斉に無言で肩をすくめるクラスメート達に、赤面しつつ黙礼した。

395 :専用寝台:2009/11/09(月) 23:43:02 ID:pMudw7V+
  * * *

 ちなみに5時限目。
「高須君?」
「はい、先生」
「……わざわざ口で言わないとわからないかなぁ?」
「いえその…スイマセン」
 ナメック星人のように血管を浮かべ、勢いだけで魔貫光殺砲くらいは撃てそうな笑顔を向ける独神(30)に恐縮の冷や汗を流しながら、竜児は未だに自分の膝から動こうとしない大河の耳元に囁いた。
「おい、もう授業始まってるんだぞ!起きろ大河!」
「……」
「起きろ!頼むから起きてくれ大河!」
「…ムニャムニャ…もう食べられない…」
「ベタな寝言いってんじゃねぇ!っていうかお前、本当は起きてるだろ!?」
「ぐー…すやすや〜」
「ええい、こうなりゃ強制撤去!ってコラー!足を絡ませるな!と、とれねぇぇぇぇ!?」
「ふうむ…のう、高須くんや?」
 昼休み終了間際に亜美と二人連れで帰ってきた実乃梨は、微妙に疲れた雰囲気ながら何というか満ち足りた、血色の良い顔で口を開く。
「このババが思うに…大河はベタなお約束を求めているのではないのかえ?」
「…ベタなお約束?」
「あーはいはい。ホントは薄々気づいてるくせしてばっくれてんじゃねーっての」
 実乃梨と同様、微妙に疲労の影が見えるもののすっかりいつもの調子を取り戻している亜美がそっぽ向いて嘯く。
「はっはっはっはっは!亜美、微妙に着衣が乱れているぞ?」
「気づくなよ!そして指摘するんじゃねーよ祐作!」
「安心しろ亜美!我が大橋高校には不純同性交遊を禁じる校則はないからな!」
「ちげーよ!不純じゃねーから!」
「あーみん…ツッコミどころはそこかね…」
 背後で勃発した幼馴染み同士の天然vs.毒舌口喧嘩バトルは、とりあえずスルーしておくことにしたらしい実乃梨は、オホンとわざとらしい咳払いなどしてから竜虎の二人に向き直る。
「まーあれだね。ぶっちゃけお目覚めのチューとかそーいうラブ刺激を大河は待っているのではないかねえ」
「ううう…」

 見下ろすと、被った制服の襟から桜色の小さな唇をすっ、と突き出す大河である。
 亜美の指摘どおり竜児も予想はしていたというか、実にわかりやすいというか。

396 :専用寝台:2009/11/09(月) 23:45:29 ID:pMudw7V+
「なになに〜?お目覚めのチュッチュ〜〜?よーし、それじゃあ高っちゃんに代わってこの俺が〜〜」

 と、脊髄反射で行動を起こすアホロン毛1名。

「なにしゃしゃり出てんじゃこのアホ――!ぐ〜〜」
「俺の大河に手ぇだすんじゃね――!!」
「あべし!ずえ!?」

 即座にダブルパンチをくらい、愉快な悲鳴と共に春田死亡。

「春田……物理的に排除しようとするとどうなるか実例示してくれてありがとう…今のは高須の攻撃も入ってたが…」
「自業自得だし仕方ないけどー」

 くう、とメガネを抑えて星空に散った友人を悼むポーズをとる能登と、ものすごくどうでもよさそうな…というかガチで興味無さそうな木原さんです。ちなみに二人とも、足元で痙攣しながら転がるロン毛本人は無視。
 まあそれはスルーさせてもらうことにして。
 竜児の前に示された未来予想図は三つ。

@じたっと陰湿な眼でこちらを見る独神(30)を前に、このまま大河が満足するまで膝に乗せ続ける、
Aニゴリスポーン(どろり)とした暗黒笑顔の独神(30)に見せ付けるように、大河に目覚めのキスをする。
Bどうしたって独神(30)を無用に煽るだけでロクなことにならない。現実は非情である。

「…なんとかしてくださいこの人生…」
「ちゅー。ぐうぐう。ちゅーちゅー。すやすや」

  ***

 で、結局。
 どうせロクなことにならないならと、開き直った竜児はAを選択。
 なのにストライクフリーダムな虎は、はチュッチュを堪能するだけしておいて寝たふりを続行。
 ……結果、三十路独神の固有結界「枯渇教室」発動。

『ひと〜りじょお〜ずとよばないで〜〜〜ひとり〜がすき〜なわっけじゃないのよぉ〜〜〜〜〜♪』
「大河……どうすんだよこれ…」
「……い、遺憾よね…ムミャムニャ…」
「ぬぉぅ……サビだけ無限リフレインで気が狂うぅぅぅぅぅ…!!」


 エンドレスで中島みゆきを独唱する暗黒独神に、ツッコミを入れられる者などあろう筈も無く。

 ――答えB
 ――――答えB

 答えはB


   <ごめん強制終了>

397 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 00:15:36 ID:/3USOUHu
投下乙でした。
この場合の誉め言葉は、「こ れ は ひ ど い」でいいんだよな?w
春田頑張れ、超頑張れ。
一生勝てないと思うけど。

398 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 08:57:19 ID:2vZywH6M
投下乙でした!

俺には能登に頑張ってほしい。
いや、がんばらなくていい。


独神に幸多かれ!

399 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 12:22:02 ID:1e/NFOS+
>>391
ついでにAT-Xにも加入してればよかったのに
かなめもは中の人がかぶってるけどあいなまの破壊力が凄まじすぎる

400 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 12:48:15 ID:1e/NFOS+
>>392-396
みのりんがハルカにw


401 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/10(火) 22:23:12 ID:RLM92hF6
>>396
ワロタw
だがしかし、程よいアマアマで良かった。
竜虎から立ち上る幸せオーラは素晴らしい。

独神のオーラは更にその上をいくわけですが……w

402 :連日投下〜:2009/11/10(火) 23:50:55 ID:4v+pXVib
感想どうもっす!
…ちょ、調子こいて今日も投下してみようかなと思った今。

…とりあえず、自分でも先にいっておこう。

こ れ は ひ ど い

403 :階段:2009/11/10(火) 23:53:35 ID:4v+pXVib
<趣旨>リンかけネタは世代を越えて通じると信じて――!!


【大人の階段】

「大河ちゃん。ちょっとお話がありんす」
「ど、どうしたのやっちゃん?随分とかしこまっちゃって…るかと言われると微妙なんだけど」
「まあいいからそこにお座んなさい」
「う、うん…」

 息子の中学時代のジャージ(上下)という普段の部屋着姿の泰子は、普段見慣れぬ神妙な顔をして、ちゃぶ台についている。本人的は“厳粛”とか“生真面目”という方向を目指していると思われたが――せいぜい、バイトの面接を受けている女子高生程度のお行儀よさであった。
 それでも大河もそれなりにかしこまって、泰子の対面に正座する。

「んー。大河ちゃんはぁ、竜ちゃんの恋人さんでガンスよね?」
「う、うん…いえハイ。おっ、うぉつきあいさせてもらっていただいております!」

 ウンウン、と大きく頷いてから泰子は続けてくる。

「…竜ちゃんは、大河ちゃんにプロポーズしたんだよね?」
「よ、嫁にこいって言われましたけん!クーリングオフ不可じゃけ、今はその、フォ、フェ、フィ、フィアンセですけん!」

 そのことについては、一応は双方の保護者も承認済みであり、今更とやかく言われるものではない。それでも改めて問われると――にやけてしまいそうになる大河だった。
 そんな大河に少し頬をゆるませながらも、口調はまだマジメっぽさを保って、泰子は次の問いを投げかける。

「それじゃあ、大河ちゃんと竜ちゃんはぁ、どんなおつきあいをしてるの?」
「ど、…どんなって」
「うーんっと、あーっと、えーっと、んーっと、……ああもう、やっちゃん頭わるくてうまくいえないから、短刀ブス――ッって聞くね?」
「ブスーってそれ死んじゃうから。単刀直入だから。…ああでも感じはわかるような」
「そうそう挿入ソーニューずこぱこぱんぱん〜〜」
「更に変な方向に間違ってる!?ああでも具体的にうまく説明できない…!?」
「細かいことは気にしない気にしな〜〜い。
 ――つまりだね。やっちゃんはこういいたいのであーる。
 二人は、ちゅーした?」
「ぐはぁ!!?」

 身体は、わずかによろめいただけ。
 でも精神的には銀河系を背景にぎゃらくてぃかまぐなむぅ〜〜、という感じに衝撃を受けた大河だった。

404 :階段:2009/11/10(火) 23:56:58 ID:4v+pXVib
「どうなの?大河ちゃんと竜ちゃん、ちゅーはしたの?ちゅーはすませたの?やっちゃんは見たことないけど二人きりの時はちゃんとしてるの?ちゅー。それとももしかして、まだしてないの?ちゅー」
「ち、ちゅーくらい…キスは、してるわよっ!その…高校生なんだし、ふぃ、ふぉ、フィアンセなんだし…」
「そおかあ〜〜、良かった良かった。まあ二人はラブラブだもん、ちゅーは済ませてるとは思ってたけどぉ…でも大河ちゃんは純情だし、竜ちゃんはマジメで奥手で恥ずかしがりやさんだから、もしかして…って、やっちゃんちょっと心配だったんだぁ。
 もしまだだったら…竜ちゃんに、ちょっとオトコのカイショーってものをスパルタしなきゃいけないかもーって」

 やっちゃんにお説教(?)される竜児。
 そんな珍しいモノ、見れるものなら見てみたいとこっそり思う大河だった。

「それじゃあ、二人はいま…どこまでいってるのぉ?」
「え。…あの、どこまでって」
「やぁだ大河ちゃん。高校生なんでしょ?それにやっちゃん相手に隠しごとや遠慮しないの。やっちゃんは二人の仲を力いっぱい応援してるんだから」
「つ、つまりその…た、たたた例えば、おしべとめしべがくっついちゃったみたいな…」
「やぁねぇ大河ちゃんってば〜〜〜〜」

 頬をポッ、と軽く染め、泰子は三十路にはとても見えない可愛さで身体をクネクネさせた。

「つまりぃ、――竜ちゃんの陰茎を大河ちゃんの膣に挿入して、ちゃんと着底するように子宮内にしっかり射精してもらってるかってことだよぉ」
「JET!!!?」

 精神的には天空の彼方まで吹き飛ばされていくアッパーカットを喰らったようなダメージを受けて、大河は色々な意味で沈黙した。
 そんな大河の様子に、泰子は二人の関係レベルの大体のところを読み取ったらしい。
 笑みを消し、どこかギリギリに張りつめた――あのバレンタインの夜の時のような、危うい光を沈めた暗い瞳で大河を見やる。

「大河ちゃん…キス以上のことはしてもらってないの?」
「う…」
「純潔は、まだ汚されてはいないんだ?」
「…あ、あの、ふつーはそれって守られるべきものなんじゃ」
「ふつーのことなんか知らない!でもウチではそうなの!
 大河ちゃんは竜ちゃんのお嫁さんなんだから、らぶらぶなんだから、そんな我慢しなくていいの!
 竜ちゃんはなにやってんの!こんなかわいい女の子が傍にいるんだから、さっさと押し倒しちゃえ――!!それがオトコのタシナミだよ〜〜〜!!!」
「どこの惑星のタシナミよそれ――!!?っていうかいくらやっちゃんでも竜児のことを悪く言わないで!
 竜児は竜児なりに考えてのことだし、私を大事にしてくれてるからこそなんだし…」

 当分の間、入籍はしないし大河にも手を出さない。少なくとも高校を卒業するまでは。
 この場所に帰ってきた大河に、竜児はそう言い切った。
 竜児が18歳になったらすぐにでも役所に婚姻届を出す気満々だった大河は、当初は猛反発したものである。
 無論、竜児が「嫁にこい」といったあの駆け落ち前夜と今とでは、状況は一変している。
 あの時下した「結婚」という回答は、二人の愛の一つの帰結としてではなく、二人を引き離そうとする状況、大人たちへ対抗手段という意味合いの強いものだった。
 今はそんな無茶をしなくても一緒にいられるのだから、結婚を急ぐ必要は無い。なにより自分達はまだまだ未熟な子供であり、親に頼らねばならぬ高校生である。本気で結婚を考えるのならば、大学を出て就職をしてからというのが妥当であろう。
 それはわかる。
 だが――口には出さないが、何より竜児は、自分に泰子と同じ轍を踏ませてしまうことを恐れているのではないかと思うのだ。
 自分から口にすることはないし、こちらも聞く気はない。
 けれど、いつも明るく暖かく、ちょっと心配になるほどおっとりノンキなやっちゃんが、その実ハードすぎる人生を送ってきたのであろうことは、薄々感じてはいる。
 そして竜児はそんな母親の姿を、ずっと傍で見てきたのだ。
 結果、この顔に似合わず優しすぎるくらい優しい少年は、息子という存在が母親の人生を不幸にしていると、自分という生命は産まれてくるべきではなかったと、悲しく思いつめてしまった。
 竜児が初めて長年心の闇に沈めていた想いを吐露した時、大河は激昂した。
 そんな愚かなことを、そんな間違ったことを、――自分が一番手に入れたいと願う、世界でただ一つのモノを否定するようなことを、
 よりによって竜児に口にされて、それが腹立たしくて、情けなくて、悔しくて、悲しかった。
 でも、と思う。

405 :階段:2009/11/11(水) 00:01:12 ID:4v+pXVib
 自分で決めた選択とはいえ、やっちゃんが捨てた…あきらめざるをえなかったものや、未来の大きさをを考えると、それを今の自分の身におきかえてみると、慄然とする。
 私にとってそれは、みのりんとばかちーと北村くんを失うこと。
 あのかけがえのない2−Cの仲間と、三十路独神と決別すること。
 ママと、新しいパパと、弟のいる新しい家族のところに帰れなくなること。
 そして何より、みんないっしょに。みんながしあわせな未来。
 私と竜児が望んだ未来が失われる。
 それは私たちだけのことではなく、生まれてくる子供にとっても、決して良いことではないはずだ。
 ――竜児はそれを恐れていると思う。だからこそ、あんなバカな想いに囚われてしまっていたのだと思う。
 それは、もちろん竜児の嫁になれるのならすぐにでもなりたい。
 いずれは竜児の子供を授かりたいとも思っている。
 でも、いま、私が身篭ったとしても…私たちが望む未来を手に入れることにはならない。
 その程度のことは、私だって重々承知している。
 入籍だけでもしようよ、とは実は今でも思うけど。
 でも、やっちゃんだってこのくらいのことはわかってるだろうに。

「大河ちゃん。やっちゃんにはね、野望(ゆめ)があるんだ」
「ゆめ…?」

 頷いて、泰子はすっげぇイイ笑顔で、こうのたまった。

「やっちゃんは三十代のうちに初孫を抱きたいのです!」
「…………はい?」

 なんだかこう。
 自分がさっきまで考えていた色々なことや、大事なことや、未来とかは、まあそれはそれとしてー、という感じがした。
 すごくした。

「そんでもってー、保育園にやっちゃんお迎えにいっちゃってー、保育園のセンセイに「おかあさんですかー?」「んーん、わたしはおばあちゃんなのです〜」って言ったらドッゲェ―――――ッ!!ってパニック起こしちゃったりして♪」
「や…やっちゃん…?」

 もしかして…もしかして…やっちゃんてばもしかして…

「だからね、避妊はちゃんと考えなきゃダメなんだよ。
 というわけで、大河ちゃんにもこれをあげます」

 そういって、実に自然にちゃぶ台に置かれたのは――明るい家族計画なゴム製品だった。

「え?え?え?ええええええええ!?」
「やっぱりお年頃な二人なんだから、つい劣情をもよおしてアッ――みたいなことがあったら困るでしょ?
 こういうのはもはやエチケットとかマナーだと思うし」

 え?え?え?でもさっきやっちゃん早く初孫が欲しいって…ああでも避妊はちゃんとって…。
 言ってることが矛盾していて混乱するけど、ああでもやっぱり親だもん保護者だもん、ちゃんと色々考えて……

「でも実はこれやっちゃんが針でちっちゃくプスプスってしてるから、竜ちゃんが安全オッケー!って油断してると…うふふふふう」
「うわああああああん!やっちゃん全く考えてないわけじゃないけど、限りなく何も考えてない―――――!!
 というか、何気にばかちー並みにお腹が黒いもしかして!?」
「え?お腹?(ゴソゴソ)別に黒くないよ?」

 ジャージ捲り上げて本当に真っ白なお腹を出して確認している高須泰子さん(外見年齢23歳・戸籍年齢33歳)の姿に、頭が漂白されるような感覚をおぼえながら、大河はしみじみと独白した。

406 :階段:2009/11/11(水) 00:05:15 ID:vjMJD6KX
「…竜児が…あんなに細かくて慎重な性格になった理由がわかった気がする…というか…ならざるをえなかったのね、竜児……」
「あー。よくわかんないけど竜ちゃんはいい子に育ったよ〜〜☆」
「――あのねやっちゃん。ちょっと聞いて」
「そんなかしこまらなくても聞いてるよ?」
「いいからちゃんと聞いて。――あのさ。やっちゃんわかってる?
 もし仮に私がいま、その…に、にんしんしちゃったら!それってさ、最悪…私も竜児も退学になりかねないことだよ?ちゃんとわかってる?」
「…………えーと」
 泰子はしばらく考え込んだ後、おそるおそる、口を開いた。
「…竜ちゃんのご飯がおいしくて太っちゃったー…ってことで誤魔化せないかな?」
「世間なめんな――――!!なによりそんな理由は断固拒否!!」
 義母(仮)のあまりのお気楽っぷりに、ついに遠慮とか敬意とかをキャストオフしてしまう大河であった。半ばは去年秋の“軽肥満”の悪夢が蘇ったからかもしれないが。
「だよねぇ。やっちゃんの時もそれで納得してくれたのはお母さんだけだったし」
「騙されないで高須のおばあちゃま―――!!!」
 たぶん高須家(実家)はこっち、と思われる方向へ向かって切ない叫び声を上げる大河であった。
 実際、いろいろな意味で心配になってきた。オレオレ詐欺とか。

「――それはともかくとして。とりあえず、子作りはしばらく待ったにしておく。残念だけど」
「そうして。というか、とりあえずなんだ…」
「まあ初孫の件は置いといてもね。やっちゃんは二人のことが心配なんだよ。――身体の相性とか」
「………」
 連発されるハイブロウな問い掛け(ベクトルは下向だが)に、冷や汗たらして黙り込むしかない大河である。
「竜ちゃんは繊細だからねー。いざというときにこう、おっきしないとかありそう?」
「そそそそそ、それは…」
「そりゃあ竜ちゃんはいつまでも小さな子供じゃない。背はとっくにやっちゃんを越えちゃったし…本当、大きく育ってくれたし、しっかり者だし、最近はますます男らしくなってきてやっちゃん思わずハァハァしちゃいそうになるくらい立派だよ。
 具体的には〜、そーだね〜〜…」

 そう言って、泰子は定規を取り出した。んー、と親指と人差指で目盛りを押さえ。

「小学生のころはこれくらいだったんだけどー、……今はほら、こんなに大きくなっちゃって〜〜〜〜♪」
「なにそのイヤにリアルな数字っ!?っていうかやっちゃん!そそそれって…」
「竜ちゃんが寝てる時に、コッソリ☆ちなみにこれはフツーの時で、朝方、ジャンボなことになってる時は…こういうのって、なんていうんだったっけ?」
「わ、わたしに振らないでよっ!?っていうかそんなのどうでもいいし!」
『ア……アサ…アサ』

 唐突に、三番目の声が高須家の居間の空気を震わせた。
 思わず二人が視線を向けた先には、窓のカーテンレールからぶら下げられた鳥篭。
 その中で、高須家の愛すべきマスコット・インコのインコちゃんが鳥類とは思えないブサイク顔で、ブツブツと呟いていた。
 ヌラヌラとした緑色の体液を滴らせた赤黒い舌をデロリ、と嘴からはみ出して、インコちゃんはガクリと頭を傾げる。
『アサ…アサ…雨?…立つ……スタンド?』
 インコちゃんの左右の瞳がキロリ!とそれぞれ真逆の方向を向いて。
『Morning rain?』
「なんてステキな発音なの!?全然関係ないけど!!」「さすがインコちゃん!!」
『無敵のスタープラチナで何とかしてくださいよぉぉぉぉぉ!!』
「更に迫力溢れるドルビーサウンド!意味がない上にどこで覚えたその台詞!?」「すごいよインコちゃん!」
 ゲッゲッゲッ、と頭を上下にシェイクさせて、今日のオレは絶好調!なインコちゃんは高らかに叫んだ。

『タバコの箱で比較スルノハお約束!いやん竜チャン朝ボッキンすっご〜〜イ!シャメ!写メ!激写・ゲキシャ!』


407 :階段:2009/11/11(水) 00:09:57 ID:42KtZRyU
 ……………。
 …………………。
「やっちゃん!携帯!」
「いや〜〜ん、だめぇぇぇぇぇ、モザイク無しではお見せできない画像なのぉぉ」
「誰が見たいと!…見たいと…いやその…きょ、興味はあるけど…そんなエッチなのは…きっとグロ…でも竜児の…」
 理性は力づくでも携帯を奪い取り、その画像を消去すべきだと全力で訴えていた。
 だが大河も健康で年頃で――未熟な女の子である。異性への興味はもちろんあるし、まして相思相愛の恋人がいるのだ。
 つまり、…………つまり、普通に性欲だってあるし、無知であるが故に無恥だと自覚しながらも、性交や性器というものへの並々ならぬ好奇心もあるのだ。
 理性と感情がせめぎ合い、真赤な顔で頭を抱え込んでしまった大河の耳元に。
 そっと、泰子は囁いた。
「竜ちゃんは……太さは平均的かな?」
「へっ…!?」
「でも……かなりなローングサイズ」
「ローング!?」
「心もち、右曲がりかな〜?と思わないでもないけど、その微妙な歪みが…実際にはすごい凶悪ゴリゴリなことになることも」
「ゴリゴリっ!!?」
「やっちゃん正直にいいます。大河ちゃんは…幸せ者です。しかもかなりの」
「………………」
 もはや話についてゆけず、これ以上ないほど赤い顔であうあうと口を空しく開閉するだけの大河に、泰子は憂いをこめて告げた。
「やっちゃんも…恋愛はプラトニックなものだと思ってた時期がありました。今でも『小さな恋のメロディー』は大好きな映画だよ。
 でも主役のかわいい子役が今では油ギッシュな中年になっちゃったみたいに、理想と現実の差は、ちゃんとわかってた方がいいと思うの。
 ちゅーしちゃったら、更にその先に進みたくたるものなの。
 心が繋がったら、身体だって繋がりたくなるの。
 人間は、パパとママのベッドのシーツの染みなのよ?」
「………そ、そんな新兵をいびる海兵隊の教官みたいなことを言われても!というか色々台無しだよ!」
 もう色々グチャグチャになって頭を抱える大河を前に、泰子は閉じかけていた携帯をおもむろに開いた。
 ボタンを操作し、「ある画像」を開きながら、そっと囁く。

「大河ちゃん…みんなそうやって大人の階段を昇っていくんだよ…小学校の裏山に捨てられてたガビガビのエッチな雑誌をみんなで読んだり、橋の下で段ボール箱に入った露出の多い雑誌を見つけたり、親に黙って子供は見ちゃだめないんたーねっとを見たりするでやんす。
 みんなやってる青春の一ページなんだよ…」
「……そうなんだろうけど、あらためて言われるとすごくくだらなくてしょーもない青春だよね…」

 でも、そんなくだらなくてしょーもないことなんだから。
 そんなに難しく考えることでもないんじゃない?

 ――自分を堕落させるそんな言い訳が、心の深淵から這い上がってくるのを…どうしても止めることができない。

 ぴろりん♪と、メール着信を知らせるどこまでも軽くて薄っぺらな電子音が、大河の携帯から鳴った。
 顔を上げると――真剣なのか笑っているのか、どうにも判別をつけづらい顔をした泰子の視線と目があう。
 多分、自分も同じ目をしているのだろうと大河は思う。
 そう。これは……『共犯者』の目。
 長いのか短いのか、もう自分ではわからない静寂が過ぎていく。
 更なる一歩を踏み出すための、迷いを払うための時間が。

 やっちゃん。わたし、いくよ。
 うん。大河ちゃん。

 言葉には出さず、しかし娘と母は無言のまま頷き。
(ああ。わたし――汚れちゃうんだ)
 心の奥にチクリとした痛みを覚えながら、大河は奮える手で携帯を開き――
「やすこぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?」
 どばあん!と爆発したような音と勢いで高須家の玄関が開いた。

408 :階段:2009/11/11(水) 00:12:45 ID:42KtZRyU
「り、りゅうじっ!?」「りゅうちゃん!?」
『薙ぎ払え!』と命令されれば一閃で地平線を火の海に変えてしまう破壊光線のような眼光を全開で放ちながら、高須家の長男は全身を震わせて立っていた。その手には砕けよとばかりに握り締められた…自分の携帯。
 さああ、と血の気がひく音を、大河は聞いたように思う。
 まさかそんな。やっちゃん、それはベタだ。そんなこと…
「あ、やだ。いつものクセで、竜ちゃんと大河ちゃん、ペアで送信しちゃった」
「やっちゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!そんなドジ、私だって…そんなにはしないよ?」

 こんな時だけ素直な正直者です、大河さん。

「!大河、それ…!?」
「ああっ!?」
 くわ、と竜児の凶眼がこれ以上ないほど見開かれる。
 一目で竜児は状況を察した。察しざるを得なかった。
「り、りゅうじ!?こここここ、これは、そそそそののの…」
どす黒い顔色で固まった竜児に、何も考えられぬままあたふたと大河は混乱して。
 ちらり、と携帯の画面を見た。
 …………。
 ……………………。
 ……………………………………………………。

「ぶふふぅ――――――――――――――――――――――!!!」
「大河――――!!?」
真赤な鼻血できれいなアーチを描き、あっさりオーバーロードして大河、撃沈。
「大河――――!!しっかりしろ――――!!死ぬな――――!!?」
「り…りゅうじ…」

 顔の下半分を鮮血に染め、しかし童女のような無邪気な笑みを向けて、大河は。
「…びみょうなみぎまがり…」
「言いたいことはそれだけかああああぁぁぁぁぁぁぁ!!?ってか逃げんな泰子!!」
「いや〜〜ん竜ちゃん抜け目なあ〜〜い!」

 ――後日のことだが、泰子の携帯から息子の成長記録は全消去された。
 ダビングの仕方がよくわからなかったのよね、と母親は嘆き。
 ダビングじゃねぇよ、と息子はとりあえずつっこんだという。

  ***

「大河。あの画像、消せ」
「や」
 高須家の居間で、正座で向かい合った竜虎の間で火花が散った。
 が――ふぅ、と軽く息ををついて、大河はその視線を和らげる。
「心配しなくても流出なんて絶対しないから。私はばかちーのモノマネ150連発だってきちんと秘密保持してるわよ?あんたにすら見せてないでしょ」
「いや別に見たいとは思わないが。というか可哀想だからいい加減、返してやれよそれ。俺の画像も一緒に」
「絶対、ヤ!特にアンタのグロ画像は一生モノだし!」
「グロとかいうなら消せよ!というかもうソレ俺にとっては脅迫ネタ以外の何物でもないよ!くそう、とんでもないもの握られちまった…」
「脅迫なんて、しない。絶対」
「あーあー。どうせそんなネタなくても言いなりだから、とか?」
「そうじゃない。というか、脅迫ネタなんて、そんな下衆な勘ぐりはやめて」

 目を伏せ、そっと胸元で合わせた両の手に収まった携帯を、大河は大事そうにかき抱く

409 :階段:2009/11/11(水) 00:16:29 ID:42KtZRyU
「…確かにしょうもない経緯でもたらされた、どうにも下品なシロモノだけど。
 やっぱり、私にとっては竜児の初めて…みたいなものだから。
 自分でも変だって、おかしいって思うけど、それでも、それでもね?
 消そうとすると…指が震えちゃうんだ、はは。べ、別にじっくり見たいなんてわけじゃ、絶対にないんだけど、でもこれ消しちゃったらもう見れないんだって思うと…どうしても消せないんだ」
「………大河」
「思い出ってさ。美しいものばかりじゃないよね。辛いこととか、悲しいこととか、思い出したくも無いことも、あるよね。
 ぶっちゃけ、自分の記憶から消したい!って思うこともある。忘れて欲しい記憶なんて、それ以上にいっぱいある」
「――まあな。ラブレターのこと忘れさせようと、人の住居に不法侵入して闇討ちかけてきた奴もいるしな」
「…っ。わ、わるかった、わよそれは」
「……俺は忘れない。あの夜の恐怖は忘れようったって簡単には忘れられねえな。
 それに…そうだな。でもあの夜は…いや違うな。大河との間であった色んなこと…ケンカしたり、むかっ腹立てたり、意地になって仲違いしたことも…嫌なことも、それでも忘れたくないって、今は思えるな」

 ああ。
 なんでこいつは、自分もよく把握していないこの気持ちを感じてくれるのかな。

 普段忘れてるつまんないこと、小さなこと、どうでもいいこと――楽しくて、笑いあうことだけじゃなくて、竜児とは衝突したり小言を言ったり言われたり、煩わしかったり鬱陶しいこと、くだらないこと、しょうもないバカ騒ぎなんかもしてきた。
 でも、そんなことも含めた全部、私と竜児が過ごしてきた時間の中で、そんなことを経てきたからこそ、得られたものもある。
 今、この場所に到るまでの道として。
 そんな無駄なことが、かけがえの無いものだったと感じることが確かにある。

「うまく説明できなんだけどね。決して、大事な宝物だなんて言えないけどね。それでも、失いたくないって思っちゃうんだ。
 自分でもなんでそんな風に感じちゃうんだろうって思うんだけど…
 も、もちろん他の誰にも見せられない、見せちゃいけないって重々承知しているよ!」 
「うん……まあ花の乙女が持ってるようなものじゃないのは確かなんだが」

 情けなさそうに、困ったように、それでも竜児は少しだけ微笑んで…まあ半分は諦めて。
 自分の要求を取り下げることにした。

「でもなあ。やっぱり弱味握られてるのは確かだし…どうしても落ち着かないな」
「……うん。確かに、一方的だもんね。対等じゃない。フェアじゃないよね」

 ぴろりん♪と、メール着信を知らせるどこまでも軽くて薄っぺらな電子音が、竜児のポケットで鳴った。

「…だ、だ、だ、だから!こここここここ、こっここれで!
 わたしとアンタはた、たたたいとう、よ!!!」

 顔を真赤にして――ヤカンを乗せたら本当に湯を沸かせられるんじゃないかと思えるほど上気している大河を目にして。
 竜児は取り出した携帯を開けないまま、じっと見つめた。

 まさか?――ひょっとして?

「だだだだいじょうぶ!やっちゃんと同じ失敗はしない!っていうかそんなことしたら私生きていけないから!!
 間違えないように、アンタのアドレス以外は携帯から削除してやったわ!は、はははは!」
「た――たいが、さん?」
「さささささ、さあ!ありありありあり、ありがたく受け取るがよい!え、えろい妄想繰り広げるのも、ゆ、ゆるしてあげるわ!
 お返しよ!あんただけに恥ずかしい思いはさせないから!
 わ、わ、わ、わたしの●●●―――」
「言うな――――――――――――――――――――――――――!!!!!?」



 ――竜児がその「画像」をどうしたのかは……不明である。
 不明にしておけ。


   <終わってください心から>

410 :やっちまった感がひしひしと:2009/11/11(水) 00:26:46 ID:42KtZRyU
終了〜。
……ま、まあ、やっちまったもんはもう仕方ないですよね…?

えー。
まとめサイトに作者別インデックス増えてて、うわ便利!
現在、eaLbsriOas氏の「〜なの」シリーズ(今勝手に命名)にはまっております。
おおう…滾るぜよ…

411 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/11(水) 00:28:59 ID:IpICbEK5
内容的にはGJなんだが、どっちかってとエロパロ向け?
俺は気にしないんだが、気にする人は気にすると思うよ。

412 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/11(水) 00:33:17 ID:GfYhHuKS
えっと、何故か知らないけど俺の頭の中で
能登声で「あなた、最低です」って台詞が脳内再生されたw
いいぞもっとやれw

413 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/11(水) 12:50:36 ID:dO3nJT3c
>>410
流れ的にはイイハナシダナーなのにクソワロタwww
下ネタもほどほどになwww

414 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/11(水) 20:48:36 ID:dc38GEu+
これ大河じゃね?

ttp://oshiete1.goo.ne.jp/qa1539909.html
私はずっとAカップでしかも自分ではAにも見えない胸がコンプレックスで仕方ありませんでした↓
高校の時は友達と一緒にお風呂とか入るのも恥ずかしいくらいで
彼氏なんてっ。。。って感じでした。
その後好きな人ができ、胸を大きくすることなど自分磨きにいそしみました。
全く胸は大きくなりませんでしたがその彼と付き合い始め、
そんなあたしでも全然受け止めてくれたことに感謝したものです(笑)
彼と1年ちょいの付き合いで別れてしまいましたが、
当時気を紛らすのに行った下着屋でCカップになっていた時はマジびびりました!
たぶんそんなもんです(^^)何事も経験だぁ♪

415 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/11(水) 22:43:26 ID:dO3nJT3c
>>414
1年ちょいで別れてる時点で大河じゃねぇ

416 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/12(木) 00:32:47 ID:WLc5NKYZ
>>415
そこはスルーで

417 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/12(木) 00:48:52 ID:wf5RCYr5
大河がCカップになったらなんか嫌だ

418 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/12(木) 03:12:29 ID:6XCU6nq/
まあ竜児とCカップの二択だったら
血涙を流しながら即前者を選ぶだろうな

419 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/12(木) 17:23:44 ID:wf5RCYr5
そもそもなんでCカップよ?
大河はあの小さな体に慎ましく綺麗にバランス良く
Aカップくらいの乳が主張する程度に存在するのがいいんじゃねえか
Cカップはデカすぎる

420 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/12(木) 17:42:28 ID:XORHyNv2
竜児が一言

「俺はお前の胸が好きだ。大きさとかそんなのはどうでもいい。大河の胸だからドキドキする」

とか言えば大河もはにゃーんであふーんだろうよ

421 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/12(木) 18:42:53 ID:aL1AtxCf
大河も安売りになったな

422 :代理:2009/11/12(木) 21:53:02 ID:psxqAwlj
とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero:2009/11/12(木) 05:21:19 ID:???
お題 「気配」「ギラギラ」「夜」



 宵闇の迫る大橋高校の校門前で、部活帰りの生徒が息を呑んで足を竦ませる。
 なぜならば、そこに一人の男が立っていたから。
 ギラギラと凶眼を輝かせて。
 不穏なる気配を漂わせて。
 それは犯罪組織のエージェントか。はたまた誰彼時の魔物か。
「あら竜児。そんな所で何してるのよ」
 背後からの声に振り返れば、そこには輝かんばかりの美少女が。
「ひょっとしてみのりんを待ち伏せ?まさか後をつけようとか考えてるんじゃないでしょうね、このキモ犬」
 彼女は男にずかずかと近づいて。男は彼女の言葉に困ったような表情に。
「あのなあ大河……何って、お前を迎えに来たんじゃねえか。ちゃんと課題は終ったのか?」

「子供じゃないんだから、わざわざ迎えにくる必要なんて無かったのに」
「もう随分夜も早くなってきたからな。女子一人で暗い中帰らせるわけにはいかねえだろ」
「あんたねえ……私を誰だと思ってるの。仮に変なヤツが出てきても返り討ちにしてやるわよ」
「そーゆー問題じゃねえって」
「というか、むしろ竜児が不審者よね。さっきも一年生がドン引きしてたし、通報されなかったのが不思議だわー」
「……警察に職務質問ならされたけどな。二回ほど」
「っぷくくく……さ、流石は顔面凶器……よく逮捕されなかったわね?」
「制服だし、学生証見せれば問題ねえんだよ……正直対応に慣れてる自分が少し悲しいけどな」
「ぷぁっはははは!」
「ああ糞、笑いたきゃ笑え……」
「ところで竜児、職務質問二回もって、あんたどれだけ待ってたのよ?」
「おう、まあ一時間ぐらいかな」
「一時間って……ご飯はどうしたの?」
「今日は泰子は用事で早出だし、まだ食ってねえよ」
「先に食べてから来ればよかったのに」
「一人で食べててもいまいち味気ねえだろ」
「ん……それもそうね。あ!それじゃメニューのリクエストしていい?」
「残念ながら不可だ。下拵えはもう済んでるしな」
「ぶー、竜児のけちー。セコ犬ー。居残りしてまで美術の課題を終らせた私を労おうって気持ちは無いわけ?」
「そもそも大河がコケて筆洗いの水をぶちまけたからだろうが、描き直しになったのは」
「……うー」
「ま、安心しろ。今日はポークソテーだから」
「よっしゃー!肉ー!」
「子供かお前は……」


423 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/12(木) 22:05:53 ID:4gbSc9C5
前から思ってたんだけど、三題噺って他人にお題を決めてもらって作るものじゃないの?

424 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/12(木) 22:10:15 ID:SnqHAHmF
440 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/06/04(木) 00:44:52 ID:bqUy/KNy
とらドラ!で三題噺

目をつぶって、とらドラ!のどれか一冊を開いててきとーに指で押さえる。
指の場所の近くの、目に付いた単語を一つ抜き出す。
これを3回繰り返して、得られた三つの単語を織り込んでSSを書く。

425 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/12(木) 23:27:30 ID:iROe4hiC
「この季節になるとカサつくなぁ」
「もう潤いがないなんて可愛そうねぇ」
「それはまだ大丈夫……だと思いてぇけどな」
「なんというか、くちびる、ひどいわね」
「おう。いつものことなんだけどな」
「ふーん……なんか痛そうね」
ちゅっ
「うぉ!?急になんだよ?」
「やっぱりチクチクする」
「当たり前だろ。見た目通りなんだから」
「仕方ないわね。私が潤いを分けてあげる」
「どうやってだよ?」
「秘密。あんたは目ぇつぶってりゃいいのよ」
「はいはい……んむっ」
「はむ……むぅ……」
「……ちょっ……たい……が……?」
「んぁ……盛り上がってきちゃった……」
「おう、俺もだ」
「竜児!カマーン!」

ギシギシアンアン

「で、どう?潤った?」
「おう。水分が更に抜けたような気がする」
「なっ!?」
「まぁ、おかげで部屋の湿度は上がったけどな」
「遺憾だわ……」

426 : ◆QHsKY7H.TY :2009/11/12(木) 23:51:04 ID:lyUYrPNP
皆さんドラとら!(仮)の感想ありがとうございます。

専用寝台、階段、三題噺、潤い、乙です。

寝台いいねぇ。そうだよねぇ、遺憾だw

階段、あまりにヤバイ描写は避難所の方がいいかも。しかし2828。

三題噺はいつもいい仕事してますなぁ。

予想通りのギシアンだw

さて、続き7レス程いきます。

427 :ドラとら!(仮) ◆QHsKY7H.TY :2009/11/12(木) 23:52:54 ID:lyUYrPNP
***



正直、慣れない事はするもんじゃないと思った。
大河、と呼ぶことを強要……もとい許された俺は、半ば大河に蹴り飛ばされながら教室へと舞い戻らされた。
そのあまりの情け無い姿にクラスメイトはポカーンとしていた。
先ほどあれだけ凄んだ相手が、小柄な女の子一人に頭が上がっていないのだ、当然といえよう。
そのまま俺は頭をはたかれ土下座させられた。
ぶっちゃけ、俺とて土下座で許されるならそっちの方がいい。
体裁?そんなもの俺の辞書には今限定で存在しない。
俺が凄んで退散させた男子生徒などは、俺のそのあまりのギャップに笑い出し、次いで教室中が笑いに包まれた。
曰く、ヤンキー高須は見かけだけ。
大変ありがたくは無い評価だが、事実を述べている上にヤンキーであることの誤解を解けるのであれば、甘んじてそれを受け入れることにした。
それから北村の取り成しや、何故か櫛枝の口添えもあって、俺はもとの見た目だけ恐い優等生として再びクラスに迎え入れてもらうことに成功した。
これでまた安心して学校生活を営めると思ったのも束の間、時期はゴールデンウィークに突入し、俺のまともな学校生活は先送りとなった。
これはきっと罰だと思いつつ、全ての原因はやはりこの凶眼かと自身の目を恨むことで、精神の安定をはかり連休最終日。
やっぱりこのお方がウチにやってきていた。

「竜児、ご飯まだ?」

長いブラウンのフワリとした髪に小柄な体、フリフリしたスカートを穿いた逢坂大河、その人である。
今日も可愛らしいその様は妖精を思わせるように華憐だ。
俺は大河の質問に台所でデザート、プリンを作りながら答えた。
大河はプリンが大好きなのだ。

「もうちょっとだ、今日の昼は丼ものだから後はご飯が炊ければいいだけ」
「ふぅん、あと何分くらいー?」

彼女は居間で座りながら、その細い足を伸ばしてパタパタさせてテレビを見ていた。

テレビには最近話題の女性モデルが映っている。

「おぅ、あと……!?」

俺は炊飯器を見て絶句した。

「どうしたのー?」

大河が何かあったのかとテレビを見ながら聞いてくる。

「大河、残念なお知らせがある」
「なにー?」
「なにがあっても冷静さを失ってはいけない」
「何の話ー?」
「炊飯器が、壊れていた」
「………………」

大河が押し黙る。
確かに昨日までは現役だったのにこの炊飯器に一体何が起こったというのか。
いや、今はそんなことより飯をどうするか考えないと……。

428 :ドラとら!(仮) ◆QHsKY7H.TY :2009/11/12(木) 23:54:20 ID:lyUYrPNP
「竜児」
「おぅっ!?」

急に大河さんが底冷えするような声で名前を呼んだ。

「壊れていた、ってどういうこと?」

大河は何か、身内に起こった不幸を信じられないかのような顔で問いかける。
気持ちは良くわかる。
昨日までは元気だったんだ。
俺達に暖かい飯を提供してくれていたんだ。
ああ、あの暖かい白米が今走馬灯のように……。

「竜児」
「お、おぅ?」

大河の底冷えするような声は止まらない。
というか俺もそろそろ現実逃避から戻ってこないといけないかもしれない。
飯が炊けない、即ち飯はまだできていない。
しかしここにはお腹を空かせた虎が一頭いるわけで。

「ご飯、無しってこと……?」
「お、おぅ、すまねぇ」

大河は今だシンジラレナーイと、某野球チーム前監督のような言葉を思わせる表情から一転、

「ヤダヤダヤダヤダ!!お腹空いた空いた空いた空いた空いた!!もう我慢できない〜!!」

両手両足をバタつかせてダダをこね始めた。
そんな姿も、あ、可愛い、と思ってしまう辺り、俺はもうダメかもしれない。



***

429 :ドラとら!(仮) ◆QHsKY7H.TY :2009/11/12(木) 23:56:05 ID:lyUYrPNP
「はむっ」

大河は注文した蟹炒飯を頬張っていた。
ここは街中のファミレスだ。
タラコスパゲッティが美味いらしいが、昨日高須家ではパスタだったので、そればかり食べるわけにもいかない。
それにそればっかり食べて太った神作家もいることだし、注意しなければ。
結局俺達はやむなくファミレスに食事しに来た。
正直に言えば、ご飯は無いがパンはあった。
だがせっかく大河が食事に行こうと誘ってくれたのだ。
千載一遇のこのチャンス、これを逃したらもう二度とは無いかもしれないと思うと俺は予定外出費を選んだ。
彼女の恋の応援的な立場にいる以上、俺にそのチャンスは全く無いわけだが、夢想して夢見るくらいは自由だろ?
良いじゃないか、それぐらい。
良い、はずだよね?
良い、と言ってくれ。
段々自信を喪失しつつ俺も頼んだスープスパゲティを食べ始める。
こういうところでは普段自分で作らないもの、もしくは作れないものを頼まないとね。
え?結局パスタだろうって?
聞こえませーん。
……すまん、大河と二人っきりの外食というあまりのシチュエーションに少々舞い上がり過ぎていたいたようだ。
え?いつも家では似たようなもんだろうって?
いや、家には泰子もいるし。
そうしていると大河が、

「この炒飯なんか一味足りないのよねぇ」

蟹を掬い挙げながら納得いかなげな言葉を口にする。

「ねぇ竜児、ちょっと食べてみてよ」

大河は自分じゃわからないと悟ったのか、俺の方に炒飯の入ったスプーンを向けてくる。
Before in 大河とぅーまうす。
大河とぅーまうす。
大事なことなので二回確認。
After in 俺とぅーまうす。
竜児とぅーまうす。
つまり俺とぅーまうす。
超大事なことなので三回確認。
それも間違いようの無いようわざわざ平仮名で。
何て優しい設定……んなわけあるか!!
むしろ英語を平仮名にしたって読みにくいわ!!……問題どころはそこじゃないっ!!

「ちょっと、ずっと持ってるの疲れるんだから早くしてよ」

そう、これは家で同じ大皿からおかずを取るのと何ら変わらない日常的光景の一コマであり、何も後ろめたい事は無いはずであり、などと自分にいいだけ言い訳を作り、急かされてパクリ。
もぐもぐごっくん……ああ間接キス、完・了。
ああ、俺今日は歯を磨きたくない。
いや磨くけどさ、多分。

430 :ドラとら!(仮) ◆QHsKY7H.TY :2009/11/12(木) 23:57:14 ID:lyUYrPNP
「どう?何か足りなくない?」

俺は大河の知らぬ所で幸せに浸りつつ、よぉく味わって租借する。
大河の質問に答えるためだ。
決して間違っても大河が食べさせてくれたから味わっているわけじゃないんだ。

「う〜ん、多分時間、だな」
「時間?」
「おぅ、お前即座に食べ始めたろ?」
「うん」
「こういう料理は少し冷ますと味の濃さが増すんだ、その時間を待たずに食べ始めたから舌がその味に順応して時間が経っても若干味気なく感じるんだよ、きっと」
「そういうものかな?」
「多分だけどな、後は塩コショウの量とタイミングかな……」
「う〜ん、何かあの日竜児が作ってくれた炒飯の方が美味しかった気がする」

神様、俺今日はもう死んでもいいです。
いや、実際死にたくはないけど。
そうしていると大河は食べ終わり、雑誌を見始めた。
俺も早々に食べ終えるが、大河は何かに気付きポケラーっと口を開けていた。

「りゅ、竜児、あれ、あの人!!」

大河はカウンター付近で席に案内されるのを待っている女の人を指差していた。
……大河、人は指で指してはいけません。
ってあれ?何かあの人見覚えあるような……?

「あの人このモデルの人だよ!!」

大河は雑誌のページを俺の顔にコレでもかというほど押しつけてくる。
大河さん、これじゃ中が見えません。
少し離されようやく雑誌を見ると、そこには先ほどカウンター前で見た美人の女性、スタイル抜群で背も高く、髪の長いお淑やかそうな女性が映っていた。
名前は川島亜美、ん?川嶋亜美?へー、あの女優の娘さ……!?!?!?!?
読んでる途中で俺は目を見開いた。
大河も恐らく同様だろう。
別に川島亜美が何かやったわけでも天変地異が起こったわけでもない。
まぁ、大河にしてみれば後者に等しいかもしれないけど。

「祐作、早く座ろうよぉ」
「おお、すまんすまん、ん?何だ高須と逢坂じゃないか」

川嶋亜美には連れがいて、それが俺達のよく知る人物にして大河の思い人、北村祐作だったのだ。



***

431 :ドラとら!(仮) ◆QHsKY7H.TY :2009/11/12(木) 23:59:13 ID:lyUYrPNP
北村たちは俺達と相席で座った。
大河は北村が来たせいか極度に緊張し、体を震わせていた。

「あ、この前はありがとうねぇ♪」

と川嶋亜美が俺の顔を見て急に言い出した。
あ、ようやく思い出した。

「ああ、あんときの。いやいいよ」
「何だ、亜美と高須は知り合いか?」

その北村の言葉に、ピクッと大河も反応する。
まるで『聞いて無いわよこの駄犬』と言いたげに睨みつけてくる。
頼むからその目だけで人を殺せそうな恐い目はやめてくれ。
ほんと凹むから。

「いや、この前偶々スーパーで絡まれてるのを偶然助けただけだよ」

嘘偽りの無い真実を説明していく。
ちなみに、本当は困ってそうだから話しかけようとしたら、絡まれていて、しかもそいつらは俺を見るなり怯えて逃げていったという悲しいエピソード。
畜生、俺の目め。あ、大河、こら笑うな、ああ畜生可愛いなこいつめ。
でもあの時の川嶋亜美はこうなんていうか口調が、あまりよろしくなかったような?

「本当にあの時は助かったよぉ」

川嶋亜美の顔が一瞬変に嗤った、気がした。
ああ、そういうことですか。
ある意味大河と同類項に分類されるというか、すっげぇ面の皮厚いのね。

「すまん、ちょっとトイレ」

って何っ!?北村、まさか俺をこの場に残していく行く気か?こんなジャングルの僻地より居づらい場所に俺一人残していこうというのかぁぁぁぁぁ!?
無理無理無理ムーリ!!
俺一人でこんな所いるのはマジ無理勘弁!!

「あ、俺も」

これが今は精一杯。
別に手から薔薇出して各国の国旗を出したりなんかはしないけど。



***

432 :ドラとら!(仮) ◆QHsKY7H.TY :2009/11/13(金) 00:00:33 ID:lyUYrPNP
「ねぇ、あれアンタの彼氏?」

川嶋亜美が男子二名が席を立ってからさっきと違って変に気取らなくなった。
まぁ薄々そんな気はしてたけど。

「別に、彼氏じゃない」
「そっ、良かった」
「……良かった?」
「ええ、彼なかなか見所あるわ、そりゃ目つきは悪いけど良いところも多いし何より家事万能っぽい」
「………………」
「でも彼の傍には絶対女がいるのよね、あの日もお礼がしたいって言って食事に誘っても『いや、作ってやらなきゃならない奴がいるから』って断られたし、亜美ちゃんのこと断るフツー?」

川嶋亜美はチワワのような態度から一転、女王様気取りに話を続ける。

「なんていうかプライドが傷ついたのよねぇ、べっつに絶対欲しいってわけじゃないけど断るのはともかく断わられるのは腹立つし」
「………………」
「さっきから何?ずっとシカト?相槌くらいあってもいーんじゃなーい?まぁ亜美ちゃん天然だから許しちゃうけど」

今だマシンガンバカトークを続ける女。
チワワでバカトーク……内心バカチワワと名づける。
と、男子が帰って来た。

「よぉ、すまない遅くなったな」
「祐作ぅ、高須君、おっそーい!!」

また川嶋亜美はぶりっこになる。
北村君と、竜児に色目を使うように媚をうるその態度が、何か勘に触った。

「竜児、そろそろ帰るわよ。私まだ洗濯してないし」
「おぅ?ああ、わかった。ってお前この前ティッシュをスカートの中に入れたまま洗濯機に出したろ?大変だったんだぞ!?」
「はいはい、この前も異常に人の部屋掃除しといてまだ言う気?」

この前、竜児は私の部屋に来るなり狂喜乱舞して掃除をしだしたのだ。
正直あれは恐かった。
いちいち掃除箇所を「ちゃん」付けで呼びながら撫でて綺麗にしていく様は正視に堪えがたいものもあったのだ。まぁそれはさておき。

「お前なぁ」
「それにこれから炊飯器も買いに行くんでしょ?」
「でも、いいのか?」

竜児は私を気にしてか、チラリと北村君を見た。
しかし、川嶋亜美はそれを自分を見たと勘違いしたのか、

「え〜っ高須君行っちゃうのぉ?っていうか何今の会話、まるで同棲チックなんですけど」

少し地が入った話し方で会話に混ざってきた。

「ああ、家が偶々隣同士「竜児!!行くわよ!!」……あいよ、悪い、またな」

これ以上ここにはいたくないと私が示し、竜児もそれにならった。
意外に気が利くじゃない、竜児。

433 :ドラとら!(仮) ◆QHsKY7H.TY :2009/11/13(金) 00:01:39 ID:lyUYrPNP
***



二人で炊飯器を買ってから帰宅。
今度のは今までのより多めに炊ける奴にした……のだが。

「はぐっ……もぐもぐ……おかわり!!」

夕飯で何度目かのおかわりを申請したら「もうねぇよ」と言われた。
何でも二合半も平らげたらしい。
二合半ってどれぐらい?それって美味しいの?
しかし、今日はあの女のせいで不快だった。
思い出すだけで腹が減るわ。

「腹が立つ、だろ」

どうやら口にだしていたらしく、竜児からツッコミが入る。

「ふん、だいたい自分で自分のことを天然なんて言うやつにまともな奴はいないのよ!!」

私は苛立ちながら竜児の淹れてくれたお茶を飲む。

「随分苛立ってるな?北村はただの幼馴染だって言ってたし大丈夫だろ?」

竜児がそんな事を言う。
ふと、言われてどうしてこんなに苛立っているのか少し疑問に思う。
随分と私の前で竜児の話をしていたけど……いつからこんなにイラだってたんんだっけ?
あ〜思い出せない、思い出せなくて苛苛する。
北村君のことを名前で呼んでいたから?
きっとそう。
覚えてるのはアイツがしつこく竜児の話をしていたことだけど、きっとあいつと北村君が一緒だったのが気に入らなかったんだ。
そうに違いない。
あ、思い出したらまた腹減ってきた。

「フン、まぁいいわ。どうせもう二度と会うことも無いでしょうし、ここは私が大人になってこの憎しみを飲み込むことにするわ」

私はそういうと竜児の皿の肉を一枚奪う。

「あ!?それ俺の!!」

ふん、アンタ今日一瞬、本当に一瞬川嶋亜美を見たでしょ?可愛いとか思ったんでしょ!?その罰よ!!



***

434 : ◆QHsKY7H.TY :2009/11/13(金) 00:03:14 ID:ZlofFog5
とりあえずここまで。
今回ちょっと竜児ぶっ飛び過ぎた、反省。

435 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 00:15:38 ID:1viI6fK2
GJ!
次も楽しみに待たせて貰います。
余談ですが、最近私の周りでとらどらにほんとにハマり出したのがいるんですが、
いく先はやはりここになるのかな。既に書いてたり…大河大好きだったし…


436 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/13(金) 12:39:11 ID:w/j/cgtA
>>434
乙!
確かにぶっとんでたねぇ。
けど、大河可愛いなこれw

437 :代理:2009/11/14(土) 00:31:10 ID:3FbYHC/A
君に届け→ ◆Eby4Hm2ero 投稿日: 2009/11/13(金) 07:59:20 ID:???
 暦の上では春を迎えたといっても、三月の風はまだ冷たくて。

 あの日から2週間。
 あっという間のようでもあり、遥かな時が過ぎたようでもあり。
 お互いに相手を受け入れて歩み寄ろうとしてはいても、長い断絶が作りあげた溝は広く深くて。そのうちに母親は出産の為に入院して。
 病院で目にした弟を素直に可愛いと思えたのは良かったけれど。義父をいい人だと感じられるのは進歩だと思うけれど。
 結局の所自分はこれからの身の振り方も決まらぬまま、こうしてベランダで星空を眺めているだけで。

 あの日の触れ合った感触も熱も、もはやこの体からは消え去って。
 だけど、記憶には、心には、しっかりと刻み付けられていて。
 思考を少し内に向ければ、たちまちに思い出す、溢れ出す。
 恐いようで実は優しい眼差し。手先は器用なくせに生き方は無器用で、でも真っ直ぐに誠実で。
 好きだと、共に生きようと言ってくれたこと。握り合った手の力強さ。触れ合った唇の熱さ。

 だから、大丈夫。寂しいけれど。会いたいけれど。
 まだ時間はかかるかもしれないけれど、いつか辿り着くその日の為に。
 前を向いて歩き続けると決めたから。

 風が吹きつける。まだ冷たい、けれど、あの夜の身を切るような風よりはずっと暖かい。
 この風はどこまで吹くのだろうか。あいつの所まで吹いて行くのだろうか。
 夜空に手を伸ばし、名前を、想いを、囁いて、風に乗せてみる。
 どうか、あいつに届きますように。


 なぜだか急に星が見たくなった。
 勉強の息抜きに丁度いいと思い、マフラーを巻いて外に出る。
 そのままぶらぶらと、天を仰ぎながら歩き続ける。
 と、風が吹いてきて。
「おう、俺もだ」
 気がついたら、何かに返事をしていた。


438 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/14(土) 11:07:15 ID:J5D9WieB
>>437
乙です。
こういうの好き! せつなさとちょっとビターな甘さ。2人の姿が思い浮かんできてキュッとなる。
竜児の手先は器用、人生は不器用 がいいなぁ。
Eby4Hm2ero氏は、いつもの三題噺もうまいですが、しっとりした短編でも読ませてくれるなー

代理の方も乙でした!

439 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/14(土) 11:30:14 ID:MCHvnSKy
>>437
おつ!GJした!!

440 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/14(土) 13:16:06 ID:yiQRCaWy
カクニに貼られてたやつ
ttp://sukima.vip2ch.com/up/sukima013906.bmp
オレンジ何に使うんだよww

441 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/14(土) 18:05:22 ID:ThprOIHb
虹へカエレ

442 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/14(土) 19:45:32 ID:4QtPsfas
そこはjpgに変換して貼るのがマナー

443 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/14(土) 20:50:01 ID:fQfIpNf9
>>437
乙!
しんみりニヤニヤさせていただきました。
優しい気持ちになるね

444 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/15(日) 17:45:58 ID:HKaKSWzS
あちらもこちらも、静かで穏やかな時間がすぎていきよる・・・

445 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/15(日) 20:20:30 ID:th6mDJH1
「竜児!北村君が私にマフラーくれるって!」
「良かったじゃねぇか。普通はお前がプレゼントする方だと思うけど」
「う、うるさい!」
「北村のことだから、結構上等なもん寄越しそうだなー。汚すなよ大河」
「ああああ当たり前じゃない!」

翌日

「おはよう逢坂!約束通り持って来たぞ!」
「あ……ありがと……ききき北村君」
「おう、北村。なんか異様に大荷物じゃねぇか?」
「おー、高須。やはりそう見えるか?一応カモフラージュはしてきたつもりなんだがな。逢坂ちょっと待ってくれ。今出すからな」
「う、うん」

「どうだ逢坂!ヨシムラのショート管だ!少し前まではP管もあったんだが、兄貴が付けてしまったから今はこれだけなんだ」
「マフラーってそっちかよ……」
「わ、わーい……」
「おう、無理すんな大河。北村に期待したのが間違いだったんだ」
「……竜児、あんたも期待してたわよね?」
「うっ」

「おー!大先生、それ!ヨシムラじゃーん!俺にも頂戴よ〜」
「春田、お前も単車やるのか!」
「モチのローン!それが男の道っしょ〜!」
「お、春田!丁度良い!大河、それあげちゃえよ」
「そ、そうね。アホロン毛にってのがアレだけど、仕方ないわね」
「マジかよタイガー!超ラッキー!センキュー!」
「有り難く受け取るが良い!」
「へへぇ〜神様仏様タイガー様〜」
「なんだこの光景は……」
放課後

「竜児、マフラー!」
「おぅ!?わかったから引っ張るな!」
「……ん〜……やっぱコレよね」
「なぁ大河、今度お前用にマフラー編んでやるよ」
「いい。そんなに使わないし」
「毎日俺から奪ってるじゃねぇか」
「このマフラーが一番あったかいのよ!」
「じゃあ俺用に編むか……」
「だ、だめ!それじゃ竜児の……」
「俺の……なんだって?」
「う、あ、む、な、何でもない!」

446 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/15(日) 21:51:12 ID:+O8/RkC9
>>445
大河の背丈で単車に乗ってると思った北村乙(笑)

447 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/16(月) 02:13:47 ID:AMbZT6LZ
初めて書いてみた。やさしくしてね。

 先日申し込んだサプリメントの試供品が届いていた。雑誌に掲
載されていた広告では「ぼんきゅっぼんも夢じゃないとか。彼氏
を見返せ!」みたいな扇動的なコピーが書かれていた。へぇ〜っ
と眺めていたら、それを亜美に見つかり、「こんなの効果ないわ
よ。藁にもすがる気持ちは分かるけどね。」と軽く馬鹿にされた。
でもなんとなく気になったので、気休めだと自分を慰めながらも
こっそりと試供品の申し込みをしてしまった。それが今日届いた
のだ。
 服を着替えた後で、飲んでみたけど、別にすぐ利くわけでなし
別に感想もなくそれっきりになった。その後いつものように、竜
児のアパートにいって晩御飯を食べ、眠くなったから家に戻って
寝てしまった。
 翌朝目が覚めたら何か息苦しさを感じた。変だな、病気かなと
思いながらもとりあえずトイレに行こうとベッドから立ち上がっ
た。ふと鏡に目をやってびっくりした。
 身長が伸びてる・・・しかもそれに胸も・・・。自分の胸を両
方の手のひらで掬い上げてみる。いままで願ってもできなかった
ことができるようになった。息苦しさは自分の成長に対応できな
かったパジャマにあることがわかった。
 「ばかちーとおなじくらいかな。すごい。」
 全部の服は丈やらが足りずに着られなかった。竜児に電話して
泰子の服を窓越しにほうってもらった。それを着て、竜児の下宿
にいった。普段は勝手に上がりこんでしまうのだがびっくりさせ
ようと玄関のチャイムを鳴らした。
 はいはいと竜児の声がして、程なくドアが開けられた。
 「すごいでしょ?」
 「えーっと、どちら様です、か?」
 かなり困惑しているようだ。
 「私よ、大河。ご主人様の大変身が分からないの?」
 「大河?どうして?」
 「サプリメントが聞いたみたいね。」
 そういってびっくりしている竜児を押しのけ部屋に上がった。
 「すごいでしょ。自分でも驚いているの。まさにセクシーダイ
ナマイツ。私に惚れ直したか?」
 竜児はじっと大河をみていて、しばらくした後で口を開いた。
 「俺、チビで貧乳なお前が好きだったんだ。今のお前はどうも
な。」
 「え、マジ。」
 テンションが一気に下がった。別に竜児の好みなんてどうでも
いいのに。いままですごく願ったこの体なのに。何か苦い気持ち
でいっぱいになった。
 と、ここで携帯の電子音がなって本当に目が覚めた。竜児の
モーニングコールだ。ぐっすり寝たはずなのに爽快感はない。起
き上がって鏡を見たらいつもどおりの自分だった。がっかりと安
心が半分ずつきた。身支度を済ませて竜児の家に朝ごはんを食べ
にいく。
 「おはよ。」
 「おぅ、おはよう。なんか機嫌わるそうだな。」
 「どこかのロリコン変態野郎のお陰でね。」
 「なんだそりゃ。まあいいや。」
 テーブルには仕事後仮眠をとっていた泰子もいて寝ぼけている。
 いつもと何も変わらない普通の朝食になった。

 おわり

448 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/16(月) 06:12:55 ID:0nPPtzpQ
>>447
なんてーか、大河が書いたような文章だなw

449 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/16(月) 07:07:13 ID:6idDMUM/
>>447
初投稿、乙っす。 
話はできてるから、文末表現とか改行位置とか試行錯誤してみたら良いのでは。
しかし、まぁ、夢で竜児に言われるぐらいだから、大河も自覚あるんじゃないか?
リアルで「チビで貧乳」なんて言ったら、血の雨降るけどw

>>448
おや? 後ろに誰かいるようだぞ?

450 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/16(月) 12:40:35 ID:DKlquxS+
>>447
乙!
やっぱり竜児はロリコn……おっと、誰か(ry
改行は必要かなと思うけど、ほわほわした感じでいいなぁ

451 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/16(月) 14:14:40 ID:jAJ0VIWq
268:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/11/16(月) 10:36:42.11 ID:jPiQMbXnO
竜児「今日は狩野屋特売日、奮発して豚カツだぜ!」ブサ鳥「ぶ、ぶた、ぶた、金髪豚野郎!!」
竜児「インコちゃん・・・さてと」
竜児、泰子、大河「お米の神様生産者の皆さん、いただきます!!!」

大河「盛るわよー、超ー盛るわよー」ニヤニヤ
グチョリグチョリ
竜児「おま、おい大河!なにすんだよ!豚カツさんがソースに溺れているじゃないか!」
泰子「あーらよっと、出前二丁!でやんすー」ニヘラ
グチョリグチョリ
竜児「おぅ!?や、泰子まなんなんだいったい!俺はキャベツにはマヨ派なのに!」
大河「はぁ、あんたわかってないわ。今日はあんたの誕生日でしょ!」
泰子「そうでやんすー。今日はぁ、竜ちゃんのお誕生日なんだよお」
大河「自分の誕生日さえ覚えていられないなんて、さすが駄犬ね」フッ
ブサ鳥「お、お、おめ、おめ・・・・おめこ!!」
泰子「いやーん、インコちゃんそんな事いっちゃダメでやんすよー」
竜児「いやいやいやいや、ちょっと待て!」
竜児「今日は俺の誕生日じゃないぞ!?」

269:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/11/16(月) 10:54:39.05 ID:jPiQMbXnO
大河「は?それ寝言?あんた寝てんの?」
泰子「竜ちゃんどうしたでやんすかー?」
大河「今日は4月3日よ?あの襖の花びら。何かわかるでしょ?」
竜児「うーむ。」
泰子「いやだなぁ、竜ちゃぁん」
泰子「今日はぁ、竜ちゃんが大河ちゃんの犬になってぇ、ちょうど5年なんだよお」
竜児「はあ!?」
大河「ふん!やっと思い出したようね、このエロ犬」
竜児「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくれ!それはお祝いするべきものなのか!?」
大河「当たり前でしょ!あんたはご主人様がお祝いしてやってるのに文句があるっていうの?ギロ」
竜児「いや、あの、ないです・・・」シュン
大河「と、いうことであんたはこれからも主人に忠実な犬でいること!」
大河「一生私にしっぽ振ってついてくること!わかった!?」
竜児「(大河・・・)」キュン
泰子「やっちゃんねー、お店からシャンパン持ってきたからあ、ご飯のあとは皆でのむぞ〜でやんすよー!」

ブサ鳥「しゅ、しゅ、しゅ・・・しゅいん!!!」


END

転載元
ハルヒ「何よ」大河「あんたこそ何よ」
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1258124865/

452 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/16(月) 18:01:20 ID:Wq+pEkZW
>>448
日記にすればいい気がするw

453 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/17(火) 00:29:08 ID:dMoKVQ1Q
現在443KB
そろそろ次スレかな?
誰かおみくじできる方、スレタイよろしく!

454 : ◆Eby4Hm2ero :2009/11/17(火) 02:44:31 ID:LI6lYqiG
やっと規制解除されたー!

規制されていた間、代理投稿ありがとうございました。

で、昨日の分を自己転載w

455 : ◆Eby4Hm2ero :2009/11/17(火) 02:45:23 ID:LI6lYqiG
※Caution!
 痛い/辛い系の話です。


456 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2009/11/17(火) 02:46:22 ID:LI6lYqiG
お題 「ドジ」「裸足」「あっちいけ」



 果てしなく広がる闇の中、氷の様に冷たい床の上を、逢坂大河は裸足で走る。
 身に纏うのは黒いドレス。背負うのは小さな白い翼。頭上に戴くは銀のティアラ。首元には赤いマフラー。
 夢なのだと、わかってはいる。だが、走るのを止めることが出来ない。
 なぜなら背後から声が――走っている理由が近づいてくるから。
「――――が!」
 声は少しずつ、確実に近づいてくる。
 このままではすぐに追いつかれてしまう。
 大河が白い翼を投げ捨てると、それはたちまち吹き荒れる暴風の壁へと変わる。
 声の主は恐れることなくその中に飛び込むが、風に阻まれてなかなか前に進むことが出来ない。
 大河はその間に距離をとるべく、再び走り出す。

「はあ、はあ、はあ……」
 一時も休むことなく走り続け、流石に息が苦しい。
 だが少しでも速度を緩めれば、すぐにあの影が近づいてくる。
「―――いが!」
 また声が近くなった。
「うるさいうるさいうるさい!あっちいけ!」
 叫びながら銀のティアラを投げ捨てると、それは聳え立つ氷の山へと変わる。
 躊躇うことなくよじ登り始めたあの影を尻目に、大河は走り続ける。

「――たいが!」
 あいつにはっきりと名前を呼ばれ、心臓が跳ねる。
 このまま止まってしまえばどんなに楽だろうか。だが、そうするわけにはいかない。
 大河は首元に手をやり、一瞬その動きが止まる。
 だが意を決して赤いマフラーを投げ捨てると、それは燃え盛る炎の河へと変わる。 
 流石に脚を止めるあいつに背を向け、大河はまた走り出す。

 どれだけ走っただろうか。既に辺りには茫漠たる闇が広がるばかり。
 と、脚がもつれて転ぶ。
「夢の中でまでドジか、私は……」
 倒れ伏す大河の体を、不意に暖かく柔らかい腕が抱き上げる。
「え?」
 見上げればそこには、サンタの格好をしたクマの着ぐるみが。
「……っ!やだっ!」
 逃れようと身を捩るが、大河をがっちりと抱え込んだ左腕がそれを許さない。
 そして右腕はクマの頭部にかかって。ゆっくりとそれを持ち上げて。
「ダメっ……!」
 今、あいつの顔を見てしまったら、自分は――
 だが、着ぐるみの頭部が取り去られた後にあったのは……
「嘘……」
 『逢坂大河』の顔だった。


457 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2009/11/17(火) 02:48:49 ID:LI6lYqiG
 気づけば着ぐるみは消えて、向かい合って対峙する大河と『大河』。
 黒いドレスだけの大河。白いコートに赤いマフラーをした『大河』。
「……あんた、誰よ?」
『わかってるくせに』
「……」
『今度は私から聞くわね……なんで逃げるの?』
「……逃げて、なんて……」
『逃げてるじゃない、ずっと。竜児には逃げるなって言ったくせに』
「っ!」
 その名前が突き刺さり、大河は思わず胸を押さえる。
『ほら、そんなにつらいんだから、言っちゃえばいいのに』
「……駄目よ」
『何で?竜児なら受け入れてくれるわよ、きっと』
「絶対に駄目。竜児が好きなのは……みのりんだもの」
『でも、みのりんは竜児をふったじゃない』
「それは……きっと、みのりんは勘違いしてて……」
『だから、勘違いじゃないでしょ?私は竜児が好きなんだから』
「……言うな」
『告白しちゃえばいいのよ。きっとみのりんも祝福してくれるわ』
「言うなぁっ!」
 何時の間にか手の中にあった木刀を『大河』に向けて振う。
『強情ねえ。竜児に告白して、幸せになって、何が悪いっていうのよ』
「幸せに、なんて、なれないっ!竜児を、苦しめて!みのりんを、傷つけて!
 そんなの、絶対、絶対っ!」
 ぶん、ぶん、と振われる木刀を、『大河』はひらりひらりとかわす。
「竜児は、みのりんと、一緒になって! 二人は、本当に、幸せに、なるんだからっ!」
『それで、私はどうなるの?』
 すぐ後から耳元に囁かれる声。大河は振り向きざまに木刀で横一閃。だがそこに『大河』の姿は無く。
 ただどこからともなく声だけが響く。
『竜児もみのりんも居なくなって、私はまた一人ぼっち。それでいいの?』
「うるさあぁぁぁいっっっ!」

 自分の絶叫で目が覚める。
 ベッドから身を起こし、肩をぎゅっと抱き、うつむいて唇を噛み締める。
 だがそれは、ほんの束の間。
 大河は決然と顔を上げる。
「いいのよ……私は、強くなるから。なってみせるから」
 そして、ただ一人で立ち上がる。


458 : ◆Eby4Hm2ero :2009/11/17(火) 02:51:48 ID:LI6lYqiG
辛い系だけというのもなんなので、もう一本。

459 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2009/11/17(火) 02:54:34 ID:LI6lYqiG
とらドラ!三題噺「腰」「様子」「存分に」



 逢坂大河は目が覚めて、自分が泣いていることに気がついた。
 何か妙な夢でも見たのだろう……全く憶えてないけれど。
 大きくのびをして時計を見ると、10時半。
「えぇ!?」
 今日は日曜だから遅刻の心配は無いけれど、いつもなら遅くとも9時頃までには竜児が起こしに来るはずなのに。
 枕元に置いてある携帯を開くと、数回の着信記録。竜児も寝坊したというわけでないらしい。
 ならば、なぜ来ないのか。
 背筋に微かな寒気を感じながら、発信。
 数回のコールの後、
『……おう』
「おうじゃないわよこのグズ犬!今何時だと思ってるの!」
『おう、すまねえ……って電話したのに寝こけてたのは大河じゃねえか』
「何で起こしにこないのよ馬鹿!役立たず!」
『……すまねえ、今日はちょっと無理だ』
「はあ?何が無理だってのよ。さっさと来いこの駄犬!」
『……悪い、ホント、今日だけは勘弁してくれ……』
「……よしわかった。グズでノロマな上に怠け者のあんたを、今からお仕置しに行ってやるから首洗って待ってなさい」
 返答を待たずに電話を切り、手早く身支度を整えて。木刀を持つのも忘れずに。


460 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2009/11/17(火) 02:55:35 ID:LI6lYqiG
「竜児ぃっ!」
 どばぁん!と、怒りに任せてドアを開けば、卓袱台の横に突っ伏している竜児の姿。
「……おう」
 竜児はやたらゆっくりとこちらに顔を向け、片手を上げる。 
「何やってるのよこの無能!さっさと起きて……」
 ぐうぅぅぅ〜〜〜
 鳴り響いた腹の音に竜児は力なく笑い、
「おう、朝飯だな、ちょっと待っててくれ……」
 ぎぎぎぎ、と軋む音が聞こえそうな動きでゆっくりゆっくりと立ち上がる。
「で、どうしたのよそのザマは」
 冷蔵庫に保管されていた朝食を平らげ、お茶を飲みながら大河が聞く。
 竜児はといえばお茶をのむ動きも……それ以前に朝食の用意をしている時も食べている間もずっと、油の切れたロボットのようで。
「いや……さすがに昨日は無茶しすぎたみたいでさ」
 昨日……大橋高校の文化祭。プロレスショーに……福男レース。
「全身筋肉痛なんだよ。特に足腰が酷くて、正直、今日は極力歩きたくねえ……」
「……まったく、あれしきの事で動けなくなるとか……本っ当に情けない男ね」
「……返す言葉もねえ……」
「病院とか行かなくて平気?」
「まあ、まるっきり動けねえってわけでもないし、大丈夫だろ。明日まで様子見て、ずっと酷いようだったら考えるさ」
「……よし!」
「何がよしだよ」
「今日は特別に私が竜児のお世話をしてげる。あんたは存分に休むといいわ!」
「お世話って……何をする気だ?」
「掃除でしょ、洗濯でしょ、ご飯も私が作ってあげる」
「ちょ、待て待て大河、出来るのかよ?」
「何よ、その反応は。ここは優しいご主人様に泣きながら感謝する所じゃないの」
「感謝じゃねえ。大河が家事とか、不安以外の何物でもねえぞ」
「大丈夫よ、やれば出来るって」
「今まで碌にしてこなかった上にいつドジやらかすかわからない奴に言われてもなあ……
 俺もこの状態だからフォローできねえし」
「……わかったわよ。それなら他に何かすることって無い?」
「それじゃ、背中に湿布貼ってくれねえか?自分じゃ届かねえからさ」
「それだけ?」
「そうだな……後はまあ、傍にいてくれると有難いかな」
「余計なことはするなって言いたいわけ?」
「そうじゃねえよ。ほら、弱ってる時ってのはさ、一人で居るより誰かに近くに居て欲しいもんじゃねえか」
「ん……そういうことなら、まあ……わかったわ」
「おう、頼むぜ大河」
「……ほんとにそれだけでいいの?」
「おう……やっぱりさ、大河が居てくれると……落ち着くんだよな……」
「ん?今なんて言ったの?」
「いや、なんでもねえよ」


461 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/17(火) 12:35:34 ID:MEF44rkS
>>460
乙!
辛い系の方、大河の複雑な心境が胸に痛いね。

竜児、運動不足過ぎw

462 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/17(火) 18:19:56 ID:t+ub6xFq
>>453
47 名前:大橋高校の生徒さん[] 投稿日:09/11/17 18:18:46 ID:???

【とらドラ!】大河×竜児【モジモジ妄想】Vol18

463 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/17(火) 22:31:05 ID:30BOYmJB
>>373です。
感想などいつもありがとうございます。

>>460
ご帰還、おめでとうございます。
相変わらず、いいですね。
そんな状態になっても大河の面倒を見ようと言う竜児がいじらしい。

>>463
乙です。

で、以下続きとなります「孤独な月ウサギ・・・」を投下します。
7レスくらい使います。


464 :孤独な月ウサギは太陽の夢を見るか?5 ◆x6jzI2BeLw :2009/11/17(火) 22:32:57 ID:30BOYmJB

竜児に返事をさせるいとまもなく大河は「お月見しよ」と窓際に歩み寄った。
・・・そんなの変かな?
ついさっき、大河はそう言った。
大河と並んで外を見ながら竜児は考える。
・・・俺とおまえが出会うのが運命だったと言うのか・・・大河。
・・・確かに俺もそんな気はする。それは否定しねえ。
竜児は大河の小さな肩へ視線を落とす。
・・・俺も、最初から積極的におまえに係わろうなんて思ってなかった。
・・・むしろ、触らぬ神の何とかで・・・近付こうとかすら考えなかったさ。
・・・それが、気が付いたら、いつの間にかおまえが隣に居ることになっちまってた。
・・・これが偶然だなんて言うなら、どうかしてる。
「ねえ、竜児」
「お、おう、何だよ」
思考を中断されて竜児は我に返る。
「・・・よく見えないね」
言われて竜児も気が付いた。
室内からは月が見えない。
既に月は空高く昇ってしまっていた。
見上げようにも三階のベランダが邪魔でリビングから見通せない。
今まで、月見と言いながら大河も竜児も月の見ない窓辺から外をじっと眺めていたのだ。


465 :孤独な月ウサギは太陽の夢を見るか?5 ◆x6jzI2BeLw :2009/11/17(火) 22:33:57 ID:30BOYmJB

アルミサッシを開けると、夜の冷気に触れる。
竜児も大河も見えない月を見ながら、お月見をするという奥ゆかしき王朝貴族ではないのでベランダから本当のお月見を開始する。
「外はもうひんやりするね、竜児」
「ああ、そうだな・・・上に一枚、着た方がいいんじゃないか?」
「大丈夫・・・ちょうどいいくらいだから」
竜児の気遣いを丁重に断って、大河は空を見上げた。
やや蒼ざめた月が天空高く輝いているのが、大河の家のベランダからくっきりと見えている。
「月なんて・・・ゆっくり眺めたことなかった」
上を向いたまま大河はつぶやく。
「たまにはこんな時間もいいだろう?」
「そうね・・・心が洗われていくみたい・・・・・・なんて、私が言うと似合わない?」
小首を傾げながら悪戯っぽく言う大河。
そう言った大河に胸を衝かれる竜児。
・・・倣岸不遜で暴力的で「手乗りタイガー」なんて言う陰の呼び名まであって、その全てが大河なんだって誰が決めたんだ。
・・・こいつだって、まっとうな家庭で育っていれば、今みたいな台詞が普通に似合う女の子だったかもしれない。
竜児の空想はとめどなく駆け巡る。
・・・友達もたくさん居て、休み時間は大河を中心に人が集まるんだ。
・・・大河は人気者で、クラスのみんなから好かれてて。
・・・その真ん中で笑ってるんだ、大河、おまえは。
・・・憂いの表情もなく、毎日が楽しげで、その隣にはもしかしたら素敵な彼氏が居て・・・。
思考がそこに至った時、鈍い痛みが竜児の心に芽生えた。
・・・どうしたんだ?俺?
大河の架空の彼氏を想像しただけなのにと竜児は思う。
・・・ああ、そうか。
竜児は気が付いた。
そんな環境にいる大河なら竜児はまったくお呼びでないのだ。
飯の心配をしてやる必要も無いし、寝坊する大河を起こす必要も無い。
たとえ同じクラスになったとしても、竜児はただ目付きが恐いクラスの男子として大河から認識されるだけだ。
どうやったって竜児は大河の隣に居られない。
・・・大河と出会って半年足らずの時間が過ぎた。
・・・毎日、振り回されっ放しだけど・・・俺はそんな生活が嫌じゃない。
竜児は無意識のうちに大河をその目に映し出していた。
竜児の瞳に浮かぶ大河。
その大河はしきりに背伸びをして竜児に顔を近づけていた。

・・・大河の隣にずっと居るのは俺でありたい。
はっきりと竜児は気づかされた。
・・・俺・・・大河のこと・・・。



466 :孤独な月ウサギは太陽の夢を見るか?5 ◆x6jzI2BeLw :2009/11/17(火) 22:34:57 ID:30BOYmJB


「・・・竜児!」
「おう!」
左右の頬にぺチンと言う衝撃を感じて竜児の意識は覚醒レベルを上げる。
「何、ぼうっとしてるの?」
見れば思いっきり背伸びした大河の手が竜児のふたつの頬を挟み込んでいる。
「ぼうっとしてたか・・・俺?」
「たっぷりと。いくら呼んでも返事しないし・・・」
幾ばくかの苛立ちをにじませて大河は文句を言う。
・・・私のこと、じっと見つめたかと思うと、急にニヤニヤしだすし、そうかと思えば変に真面目な顔になるし・・・。
「とうとうおかしくなったんじゃないかって・・・そう思うじゃない」
背伸びを中断し、手を引っ込める大河。
心配と言うスパイスを混ぜながら竜児を気遣う発言。
「あんた、疲れてるんじゃない?」
いつもと少し様子が違う竜児に不審さを覚え大河は不安をのぞかせて竜児を見つめる。
「・・・何でもねえよ」
努めて明るく竜児は答える。
「本当に?」
「ああ」
「・・・わかった」
納得しかねる様な感じだったが、大河は引き下がった。


月明かりが差し込むベランダ。
静寂の中、大河はベランダの柵に頬づえをつき、すぐ下の通りを眺める。
「・・・全然、想像できなかった」
つぶやく様に声を発する大河。
「何がだ?」
竜児は柵を背もたれにしたまますぐ隣の大河を見下ろす。
「この家に男の子が居て・・・その子とふたりだけで・・・お月見することになるなんて」
引っ越して来た頃の私じゃとても思い付かなかった未来だと大河は小さく笑う。
「どんな未来を想像してたんだよ?」
少し興味を感じた竜児は大河にその内容について聞いた。
「私の思ってたあの頃の未来はね・・・真っ白」
「真っ白?」
「うん・・・あたり一面が雪の野原で、ひとりの足跡だけがずっと向こうまで伸びてて森の中へ消えてゆくんだ」
「なんか寂しい光景だな」
「それには続きがあって・・・そのわずかな足跡も風が吹いて雪が舞って・・・消えちゃうんだ。まるで何もかもなかったみたいに・・・」
暗いでしょ・・・と大河は声だけ明るく話を締めくくった。

「だから、竜児に会えてものすごく嬉しいんだ。・・・竜児とだったら、一緒に森の中へ消えて行ってもいいよ、私」
「消えねえよ・・・変な所へ行こうとしたら止めてやる・・・それでも大河・・・おまえが止まらなければ何処までも一緒に付いて行くぞ」
「・・・竜児」
頬づえをやめ、大河は竜児へ向き直るとその目を見つめ、はっきりと言った。
「うん、ここでこうして竜児とお月見することが決まってたんだよ、絶対・・・私、そう思いたいの」
言い終わって微笑む大河は切り抜いて額縁にでも飾って置きたいくらい完璧な笑顔だった。


467 :孤独な月ウサギは太陽の夢を見るか?5 ◆x6jzI2BeLw :2009/11/17(火) 22:36:21 ID:30BOYmJB

「ねえ、竜児」
「何だ」
「どこにうさぎがいるの?」
月を見つめる大河。
「うさぎ?」
「うん。月にうさぎが居るって言うじゃない」
「あれだな」
大河の疑問に答えるように竜児は月のその場所を指し示す。
「よく分かんない」
あれこれ竜児は伝えようとするのだがうまく大河へ伝わらない。
竜児がする説明の仕方が悪いせいか大河にはいまいち、飲み込めない様だった。
「だから、あの黒っぽいところがだな・・・ああ、もうじれってえ」
言葉ではうまく説明できないと、竜児は大河の手を取った。
一瞬、え?と言う顔を見せた大河。
それに構わず竜児は大河の指をそっと握り、手のひらを開かせて、そこに自分の指先で円を描く。
「これが、月だ」
「・・・うん」
竜児の勢いに大河はされるがまま、目を白黒させる。
「で、この部分・・・」
実際の月で言えば海に当たる部分を竜児は大河の手にひらを撫でる様にして再現していく。
くすぐったそうな大河。
でも、その表情は穏やかで竜児の指先を黙って見つめる。
「・・・な、この形がうさぎに見えるんだ」
大河の手を取ったまま、竜児は本物の月を指差す。
「見えた!」
大河はひと声、叫んだ。
おぼろげな輪郭がはっきりし、大河の脳裏にうさぎの姿が描きだされた。
「わあ・・・うさぎ、うさぎだあ」
「ようやくわかったか?」
「うん。竜児・・・私にも見えた」
ちょっとだけ、はしゃぐ大河を見下ろしながら、良かったと竜児は安堵する。
そして、大河の指先を掴んだままだと気がつき、大慌てで手を離した。
「わりい・・・つい夢中で」
申し訳ないと竜児は大河に謝る。
「竜児の指・・・長いんだね」
そんなこと気にしてないよと大河は竜児を見上げる。
「この指先で・・・竜児は何でも作れちゃう」
大河は竜児の手を取ると自分の手のひらと重ね合わせた。
「あは・・・全然、大きさ違う。すっぽり隠れちゃうね、私の」
そっとそのまま手を離すと、大河は視線をつま先へ向ける。
「もう、分かっちゃってると思うけど・・・さっきの晩ご飯・・・インスタントなの」
・・・がんばって見ようかと思ったけど、全然駄目。
・・・とても、竜児みたいに出来ない。
・・・おいしいの作るとか言ったけど無理だった。
「ごめんね、竜児」
最後にポツリと大河は謝罪の言葉を漏らす。

無言のままの竜児に大河が訝しげに顔を上げ掛けた刹那・・・。


468 :孤独な月ウサギは太陽の夢を見るか?5 ◆x6jzI2BeLw :2009/11/17(火) 22:37:51 ID:30BOYmJB
大河の全身はふんわりと温もりに包まれる。
さっき重ねた竜児の手が大河を守るように回されていた。
上目遣いに竜児を見上げた大河は自分を見つめる竜児と視線が合う。
「・・・竜児」
何も言うなと竜児の声にならない声が聞こえて来るみたいに大河には思えた。
大河の目の前にあるのは竜児の頼りがいのありそうな胸板。
大河は昼間の傷口を避けるようにゆっくり、頬を寄せた。

竜児の腕に包まれ、真下でうつむく小柄な少女。
料理が上手く行かなかったと切れ切れに訴えていた。
・・・結果じゃねえ。
・・・どれだけ頑張ったか・・・だ。
・・・大河は、頑張った。俺は認める。
・・・俺はそんな大河が・・・そんな大河が・・・・・・。
竜児の内から込み上げる衝動。
・・・言葉じゃ言い表せねえ。
自然と手が動き、竜児は大河を壊れ物のようにその手に抱きしめた。


「でも、うさぎは何で月にいるの?」
不意に竜児の腕の中で大河が言い出す。
竜児は輝く月を見つめ、それから昔話でもするように大河に語り掛けた。
「天の神さまが下界で倒れてたんだ」
「ドジな神様ね」
見も蓋もない反応をする大河。
「まあ、その辺は置いておいて・・・で、それを森の動物がみつけてだな」
「・・・食べちゃった・・・と」
哀れな神様と大河は同情してみせる。
「アホか・・・それじゃただの行き倒れじゃねえか」
「だって・・・」
「まあ、話を続けるとだな、動物達は木の実やら魚やら採って来て、神さまを介抱してやるんだけど、うさぎだけが何の獲物も採れなかったんだ」
「うさぎ、落ちこぼれ?」
「結果はそうなるな・・・でもな、うさぎはとんでもないことをしたんだ」
「どんな?」
「火を起して・・・飛び込んだんだ・・・その火の中に」
「どうして?」
「自分を食べてくれと言うわけさ・・・その健気さを称えて、忘れられないようにうさぎの姿を月に残した・・・とされている」
「迷惑な話じゃない」
突然、大河の口調が尖る。
「どこが迷惑なんだ?」
「だって、そうじゃない。あんな寂しそうなところへ追いやられて・・・ひとりぼっちで・・・たとえ死んじゃったとしても、そのまま森の中に居たいって思ってたかもしれないじゃない」
まるでうさぎに成り代わったみたいに大河は主張する。
・・・ひとりぼっちか・・・まるで昔の大河みたいじゃねえか。
知らず知らずのうちに大河を抱く手に力を入れる竜児。
「ん・・・竜児」
竜児の腕の中で大河はきついと身をよじる。
「おう、わりい」
緩めた竜児の腕の中から大河はするりと抜け出す。
そのまま一歩下がった大河は改めて竜児を見上げ、さっきの続きを始める。
「私ならみんなに忘れられたっていい・・・ただひとりの人にさえ覚えていてもらえるなら・・・」
水晶の様にきらめく瞳を竜児に向け、大河はそこで一拍、間を置いた。
「私なら、それで構わない」


469 :孤独な月ウサギは太陽の夢を見るか?5 ◆x6jzI2BeLw :2009/11/17(火) 22:39:13 ID:30BOYmJB

「自宅のベランダで・・・竜児と抱き合うなんて思わなかった」
竜児の腕から解放された大河は憮然とした表情。
お月見以上のサプライズだと大河は言う。
「な、なんだ・・・嫌だったのかよ」
心外だと竜児は言う。
「馬鹿ね・・・嫌だったら突き飛ばしてる」
当たり前のように大河は竜児を見る。
「・・・なんかね。すごく安心できたんだ・・・ああ、されて」
さっきの様子を思い出したのか大河は目を閉じる。
・・・ここに、私を必要としてくれる人がいるんだって思えた。
・・・竜児が居てくれる・・・ひとりぼっちじゃない。
・・・私は決して月のうさぎなんかじゃないんだって・・・。
・・・嬉しかった。
・・・もう、泣きたいくらい。
・・・え?泣いたのかって?
・・・泣かないわよ。
・・・我慢しなくていいって?
・・・我慢するわよ・・・あんた、言ったじゃない。
・・・私の泣き顔・・・見たくないって。
「嬉し泣きならいいの?同じ泣き顔なのに?」
大河の問いに竜児はうなずく。
「俺は・・・大河を・・・離したくねえ」
淡々とした表情のまま、何気ない会話のように竜児はさらりと言う。
「き、急に何よ」
竜児の投げる内角狙いのカーブが大河の胸元をかすめる。
大河は自分の心拍数が10パーセント増しになったことを自覚した。
「言葉の通りだ。俺はおまえの隣に居たい・・・大河が俺を必要とする限り・・・な」
「そそ、それって・・・つまり」
「俺は大河のことが多分・・・いや、きっと」
竜児はそこで言葉を切り、顔を横へ向け、大河を真正面からじっと見つめた。
普段見せたこともないひどく真剣な竜児に大河は息を呑む。
「・・・りゅ・・・じ」
息が詰まったみたいな声で大河は竜児の名前を呼ぶ。
「私も・・・私も・・・竜児にずっとそばに・・・」
思いつめたような調子で大河は言葉を続ける。
「・・・居て欲しい」
そして「・・・駄目かな」と照れたように続けた。


470 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/17(火) 22:42:08 ID:30BOYmJB
以上です。

次回はまた近いうちに。
しかし、未だに「好き」と言わないふたりでした。

471 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/18(水) 08:05:58 ID:tQtncVIe
いいねーGJした!
今日も朝からキュンキュンさせてもらったよ!

472 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/18(水) 15:16:50 ID:QIhKUA3f
GJした!

473 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/18(水) 15:37:43 ID:jtG30gp1
皆GJ

474 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/18(水) 16:10:30 ID:to3Zd0JM
GJ!
リーダーの減らし方を考えて書けば、まだまだ文章に深みが出て凄いのが書けそう!
(嫌みじゃなくて良い意味でだよ)

475 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/19(木) 00:31:46 ID:PUIIDDtV
竜虎は正義

476 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/19(木) 02:48:48 ID:tsZIbbo/
>>460
いつもコンスタントな投下、本当に乙です。
辛い系も好きです。 原作、アニメでは余り描かれていない、大河の苦しみが伝わります。
白い大河は、ほんの少し先の未来からやって来たのでしょうか?

筋肉痛竜児、腕力はありそうだけどなw

>>470
GJ! また余韻が残るところで切れましたなぁ…
きめ細やかな表現が素晴らしいです。
距離が近いほど、甘いほど、せつなさが増して行きますなぁ。

477 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/19(木) 03:20:38 ID:XzUfBUoI
テストがてら。

「ショートコント!」
「将来の夢!」
「竜児、私、大きくなったら竜児のお嫁さんになる!」
「は? それじゃ一生結婚できぐおっ!?」

「ショートコント!」
「価値!」
「高須くんや、あたい思ったのさ」
「なんだよ」
「大河は成長しないことに価値があるんでないの!?」
「お前な……」

「ショートコント!」
「亜美ちゃん! つまり私!」
「いやー、ほんと可愛いよな」
「え!? た、高須くん!? 何ストレートに褒めれくれちゃってんの?
 逆に気持ち悪い! ちょっと嬉しいけどやめて!」
「大河のことだよ」

478 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/19(木) 05:43:21 ID:XjvwpSHY
識者曰く、とらドラ!はSFである、と。

サイエンス・フィクション?
いいえ。

スペース・ファンタジー?
いやいや。


それは、「成長しないふくらみ」だそうだ。

479 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/19(木) 08:45:45 ID:dYYRJxh8
                        ______
                        \        \
     _, -、                  |,.\        \
.  〃´ ^⌒ヽ               /   \        \
.  i{ /{八人}i              /    ,. i \_______\
  八ハ#゚ 、゚ノハ  パンパン   >>478 |    /.| |\||_______||~
  ノノ ノ)iてと八    ..         | .|   | | |  ||          ||
 ( (く/_j」〉ノ )   .  _./⌒..───' | / | | .||          ||
     (_ハ_)     ..  __/⌒ 二二ニニ ノ  U ||        ||


480 :虎飛び出し注意9(1/6) ◆wVNPBvxl56 :2009/11/19(木) 11:27:26 ID:XzUfBUoI
解禁しました。


*

 翌日――と飛ばしてしまいたいところだったが、ただのクラスメートならまだしも、
寝起き以外のほとんどを共にしている相手との数時間のうちに、特筆すべきことが全くないはずがなかった。
 議論の余地を残したままでそれを黙殺するには、二人は仲がよすぎたのだ。
 しかも竜児の方は投げっぱなしであったから、その日学校であったことも含めて、
何事もなかったかのよう過ごせと言われてもどだい無理な話だった。
 高須竜児。デリケートな男である。
 デリケートゆえに、つい議論の先送りをしてしまったのであり、デリケートゆえに黙っていることもできないのだ。
 とは言うものの、この場合竜児が黙っていたところで、相手は黙って済ませるような生半可な人格をしていはしないのだった。
 全てひっくるめて分かった上で、竜児はもはや、なるようにしかならないだろうという、
案外気楽な思いで買い物を終え、借家の階段を上った。
 ドアを開けて、ぱちくり。
 ちっこいのが踏み台に乗り、流しで米を研いでいる。

「あ、竜児! おかえ――」
「間違えました」

 閉じろゴマ。

「やれやれ、疲れてんのかね、ボーッとしてたんだな、家を間違えるなんて。ははは」

 カツンカツンと音を立てて階段を下り、地面を踏んだ途端折り返してまた上る。

「いや、うちだぜ! 我が家だぜ!」

 見間違い。きっとそうだろう。ボーッとしていたから。ありもしないものさえ見えてしまう。
 まさかそんなことがあるはずが。

「っぁわったー!」

 あった。
 ドアの向こうには、炊飯器とにらめっこする虎の姿があった。

「ななななななたたたたた大河、大河お前ななな何ししし」

 三和土にくずおれる竜児だったが、卵の入ったお手製エコバッグを無意識に庇う。
 MOTTAINAI精神が根づいているのだ。

「あ? 聞こえないわよ。はっきり喋んな!」

 慌てふためく竜児に気勢を殺がれる様子もなく、大河はいっそ竜児に似てきたのではないかと思えるほどの鋭い目つきで睨みつける。

「はーあ。あんたが帰ってくる前に終わらせとこうと思ったのに。このポンコツ炊飯器どうやったら動くのよ!?」

 竜児は、自分が帰ってきた時点でまだ米を研いでいたなら遅れたのは炊飯器のせいではない、
と喉元まで出かかったが、堪えてやる。

「コンセントを差して炊飯ボタンを押すだけだけど。炊く前に最低三十分は浸けておけ。
 充分に水を吸わせた方がふっくら炊きあがる」

 家事に関しては歪みない竜児である。


481 :虎飛び出し注意9(2/6) ◆wVNPBvxl56 :2009/11/19(木) 11:28:28 ID:XzUfBUoI
「ふーん。そうなんだ」

 すぐに炊いちゃダメなのね。大河は感心したように腕組みし頷き、覚えとくわ、などとブツブツ言っている。

「泰子もなあ、テレビなんかよりまず炊飯器を新調してくれりゃよかったのに。
 洗濯機も捨てがたいんだが。新しい家電は消費電力が段違いだし……」

 へたりこんだまま呟いた竜児は、ふと顔を上げた。

「大河お前何してんだ?」
「ああ!?」

 大河は吼えた。

「かっ! 見て分かんないの脳みそスポンジ犬がっ! 見たままのこと言ってみな!」
「大河がご飯を炊こうとしている」
「そのとおり!」

 間。
 誇らしげにふんぞり返った大河と訝しげに猫背の竜児。しばし見つめあう。

「ええっ!?」
「遅い!」

 どこかで見たくだりを繰り返して、竜児はおののき、大河は一足飛び。竜児の膝を踏み台に膝蹴りをヒットさせる。

「シャイニングウィザード……」
「ちょっと竜児! 卵が落ちる!」
「おう! いかん!」

 飛びかけた意識を主夫の魂が呼び戻す。

「あーん竜ちゃん、おっかえりぃ」

 ドタバタしているうちに湯上がり泰子が登場する。

「や〜ん! 大河ちゃんご飯炊けたの〜」
「うん! あとはスイッチを入れるだけだよ」
「炊けてはいないな」
「うっさいのよあんたは! 細かい男はみじん切りにするよ!」
「乱切りしかできねえくせに……」

 腿のあたりを踏みつけていた小さな足をどかし、立ち上がる。何とかショックからは立ち直りつつあった。
一応大河に米を研がせたことは以前にもあったのだ。かといってまさか自主的に始めるとは思いもよらなかったが。
 何が目的だ。言いかけて、竜児は言葉を呑み込む。先ほどの北村の台詞がよぎった。
 見返りは、何か具体的なものではないのかもしれない。亜美に対しては先日、
プロレスショーの役を代わってもらうために無理矢理お菓子を食べさせる強引な手口に及びはしたが、
今まで竜児もしょっちゅうそんな目にあったかと言うと、そうでもなかった。
代わりに父親に会わせられたときは、実際頼みを聞いたあとに皿洗いをしてくれたし
(あれはあれで強引ではあったが、そもそも『代わりに何かするから』なんて大河に言わしめた状況が特殊だった)、
もとより竜児は、別に見返りがなくとも大河の頼みなら大概聞いてやっているのだ。
 大河だって、竜児に対しては遠慮会釈なしにあれをせいこれをせいと正当な権利であるかのように命じるだけだったではないか。
 今のところ、言葉では何も見返りも求められてはいない。大河が無言実行で家事を買ってでただけである。
見れば昼休みの発言どおり流しには朝食の食器は残っていないし、泰子の昼食の皿さえない。
しかも洗った食器はきちんと拭いてしまわれているようだった。
 理由を問えば逆ギレされかねないほどに。さも当然とばかりに。

482 :虎飛び出し注意9(3/6) ◆wVNPBvxl56 :2009/11/19(木) 11:29:30 ID:XzUfBUoI
「ほれ、あんたはさっさと晩ご飯を作る!」
「お、おう……」

 調子が狂ってしまう。手伝ってくれようとする気持ちは嬉しいのだが、意外さと驚きが先行して
どうリアクションをとったらいいものやら分からない。
 そしてまた、手伝ってくれながらも、大河の態度はほとんど半ギレというか、やけっぱちというか、
必要以上にとげとげしいのだった。竜児が見つめると、何やら慌てたように目を逸らす大河。
もしかしたら照れているのではないだろうか。素直に、何か見返りがほしいわけではなく
ただ単純に手伝いたいと言うのが恥ずかしくて、竜児に対して乱暴な口を聞くのではないだろうか。
 というのが竜児の考えで、推測から結論にまでたどりつくこともないまま、やっと身体が動きはじめて、
エコバッグから今日使わないものを出して冷蔵庫へしまう。
 竜児の考えは、半分正解で、半分不正解だった。
 照れ隠しなのは本当、手伝いたいというのも本当なのだ。ただ、底に流れる思惑は少し事情が異なっていたのだが。
 着替えて手を洗った竜児を待っていたのは、踏み台の上に仁王立ちの大河。それでやっと頭が竜児の鼻まで届くくらいだったが、
いかにも意気軒昂、どこからでもかかってこいといった様子で、腰に手をあてている。

「さあ!」

 大河はその手を大きく広げて、竜児に向かって伸ばす。

「…………?」

 竜児は眉根を寄せて首を捻ること三秒。自信なさげに大河の腋の下に手を入れ、ひょいと持ち上げる。

「高い高ーい……?」
「わーい、高ーい。ひゃっほー……って! んなわきゃあるか!」

 ノリツッコミのアペリティフ。メインディッシュは竜児の顔面両足挟み風。軽々と持ち上がった両足が、
竜児の顔を押し潰さんばかりの勢いで挟んだ。挟んだ上で、猫が肢を突っ張るように目いっぱいその脚を伸ばそうとする。

「危ね、危ねえって、お前が落ちるだろ!」
「黙ってお放し!」

 竜児に持ち上げられたまま、その顔面を両足でぐりぐりこね回す。
 俺はうどんじゃねえ! と咽喉元まで出かかる竜児。

「うえっ! 口の中に入っちゃった! ばっちい!」

 この世の終わりのような顔で脚を縮めた大河を、竜児は踏み台の上に戻してやった。

「なんだよ。何なんだよ。一体何がしてえんだお前は!」
「はーったくもう、これだからあんたは低能鈍犬野郎なのよ! やっちゃん! やっちゃんからも何とか言ってやって!」

 大河は竜児越しに居間に呼びかけた。竜児が振り返ると、泰子は既に目のやり場に困るお仕事服に着替え、
鏡に向かって武装(化粧)している最中だった。若い母親から夜の蝶への華麗なる変身中、もとい製作工程である。
素顔だってまだまだ若いのだが、息子としては、当初などは化粧前後のギャップに、化けるもんだよなあという感想を
禁じえないまま十余年が過ぎ、今ではそのけばけばしいメイクの仮面もまた母の顔として認識されている。
 呼ばれて泰子はふにゃあっと笑い、

「そうだよぉ竜ちゃん、大河ちゃんをよぉ〜っく見てごらん」

 言われるがままに大河に視線を戻す竜児。凶悪な外見とは裏腹に従順な男である。
 大河は見られて、フンッ、とない胸を張る。いつもと違うことと言えば。一つ、髪を結わえている。
泰子に結ってもらったのだろう。もう一つ、腕まくりをしている。最後に一つ、台所に立っている。
 ポンと掌を打つ竜児。

「ごめん全然分かんねえ」

 眼前で大河がよろめき、背後で泰子の倒れる音が聞こえた。

483 :虎飛び出し注意9(4/6) ◆wVNPBvxl56 :2009/11/19(木) 11:30:42 ID:XzUfBUoI
「あ、あんたねえ!」
「いや、いやいや、さすがに冗談。分かった、分かったよ。大河、お前、夕飯の支度を手伝ってくれようってんだな?」
「オウ! イエス!」

 なぜかアメリカンなリアクションでハイタッチ。

「おう」

 大河が笑う。それだけで胸にじんわりと温かいものが広がるのだ。竜児は戸惑いつつもこの決して不快ではない気持ちに、
やっと気を取りなおすことができた。四の五の考えても分からないものは分からない。大河に関して確かなのは、いつだって一つのことだ。

「この私が手伝ってやるからにはただでは済まさないよ! さあじゃんじゃんじゃかじゃか手伝わせなさい!」
「いや、普通に済ましてくれよ」

 竜児は自分のエプロンを外して、代わりに大河に着けてやる。

「ちょっと、要らないわよ別に。でっかいし」
「いいから着けとけ、その死ぬほど高そうな服が汚れちまったらもったいない」
「……ったく、せせこましいんだから」
 言いつつ、大河はなすがままにさせている。後ろを向かせて紐を結ぶ。相変わらず世話をされ慣れているというか、
竜児に世話を焼かれるときは当たり前のように焼かれっぱなしだった。
 当たり前なのだ。大河にも竜児にも、その関係が当たり前。昼休み以外ほとんど一緒に過ごさなかったせいか、
大河の後姿に、いつも目線の下にあるふわふわした頭頂部にひどく安心する。ざわついていた心が、それだけで落ち着いてしまう。
 核心はすぐ目の前にあるような気がした。それは今までずっと、手の届くところにあったのだ。

「よし、と。じゃあそうだな、卵を……いや、お前、サラダ作れるって言ってたよな。
 レタスを食べやすい大きさにちぎって冷水にさらしてくれ」
「卵? まいいか。任しときな!」

 大河は張り切ってレタスをちぎりだす。食べやすい大きさと言うか、どう見ても考えなしのランダムカットだったが、
竜児は黙ってボウルを出してやり、自分は手鍋を出して卵を茹ではじめる。
 ドレッシングをかき混ぜる。箸を並べる。サラダやおかずを盛りつける。大河のお手伝いといえば、
火も包丁も使わない、せいぜいそんなところだったけれど、それでも大河は真剣そのもの。竜児だって、鼻歌が出るくらいに楽しかった。
 夕飯を済ませて泰子を見送り、洗った食器を大河に拭いてもらいつつ後片づけを済ませる。
その間も大河は、竜児、お皿洗うの上手いんだね、とか、初めてまともに手伝いをして、やることなすことが新鮮な様子で、
飽きもせず竜児竜児とはしゃいでいた。


 はしゃぎすぎた――というのは、片づけのあと湯呑みを掴んでテーブルに突っ伏した大河の口の中で噛み殺した呟きだった。全然そんなつもりはなかったのだ。
 完全に、これじゃルール違反だ。

「なんだ、疲れちまったのか」
「……そんなようなもんね」

 大河は今朝実乃梨と交わした会話を思い出していた。大河は、実乃梨と共に、自分の欲しいものを認めて、
それを手に入れるために全力を尽くすことを約束したのだ。
 けれどもそれは、お互い口には出さなかったけれど、そもそもからしてかなり大きなハンデがあった。
もとより、前提条件から不公平なのだ。大河は、周回遅れの実乃梨に向かって、一緒にゴールを目指そうと申し出たのだ。
無論実乃梨もそれは納得ずくで、その勝負を受けて立ったのだが。
 大河はもうそのゴールに手が届く位置に居る。実乃梨も叫べばきっとその声はゴールまで届くだろう。
 けれど、それが果たして、間に合うのかどうか。
 つまり大河は今、既に確信があったのだ。竜児の実乃梨に対する想いは本物だったが、それはもう絶対とは言い切れない。
秘めてきた想いを嘘にはできるはずもないけれど、結局は明かされていない、通じあったことのない気持ちなのだ。
二人の目が合ったときには、実乃梨が竜児の存在を感じはじめたときには、大河は竜児のスペースを
概ね占領してしまっていた。実乃梨が自分の気持ちを明かしたとき、竜児はそれにどう応えるというのだろう。
薄々は竜児もその自己矛盾に気づいているはずだ。
 竜児も大河も、遠くを見ながら歩いていたら、いつの間にか二人して同じ、ひどく居心地のいい場所に立ち止まっていたのだ。
その存在を、何物に代えても守りたいほどの場所に。

484 :虎飛び出し注意9(5/6) ◆wVNPBvxl56 :2009/11/19(木) 11:31:46 ID:XzUfBUoI
 でも大河の心の中には、相反する気持ちが存在していて、竜児を独占したい反面、実乃梨と上手くいってほしいとも
本気で願っていたのだ。それは今になっても、消えることなくしこりとなって小さな胸の中に残っている。
 だからこそ、大河は実乃梨の手を引っ張った。それはつまるところ、大河の自己満足なのかもしれない。
自分が納得したいだけなのかもしれなかったが、そんなことはきっと承知で、実乃梨はコースに戻ってきたのだろう。
実乃梨もまた、きっと、納得が欲しいのだ。
 どちらにしても、このどうしようもなく大きく口を開けた溝を、大河は少しでも埋めたいと思い、
考えに考えぬいて、自分の中で一つのルールを作ったのだった。
 作ったつもりだった。

「……失敗した」
「なにがだよ。サラダ、ちゃんとうまくできたじゃねえか。食器も割らなかったし、ケガも」
「あー……違うのよ。なんでもない」

 勝負は勝負。だからアプローチはする。竜児の目を自分に向けさせる努力はする。でも、態度を変えるのはよそう。
大河はそう自分を律したのだった。正直に言ってしまえば変えるといってもどんな態度をとったらいいかすら分からないが、
取り敢えず現状維持。精一杯つんけんしてやろう、と思ったのだ。
 思ったのだが、どうにも上手くいかなかった。竜児の手伝いをするのが思いのほか楽しくて、ついはしゃいで、
最初は維持できていたツン成分が、途中からどこかへ行ってしまった。つくづく竜児と一緒に居るのが好きなのだと
思い知らされただけだった。
 竜児は竜児でご機嫌である。どれだけ少なく見積もっても、大河が手伝いをしたということ以上に
気分よさそうにしている。当然だろう。竜児はいつでも優しいが、大河が態度を和らげれば、
竜児だって眉間にシワを寄せる必要はないのだ。目つきばかりはそれこそどうしようもないが。
 大河の目論見では、あくまでクールに、あんたが余りにも哀れだから手伝ってやるわよ、
なんていう感じで淡々と手伝うつもりだったのだ。
 なのに、エプロンを着けてもらった辺りから舞い上がってしまった。触られてすらいないのに、
竜児に世話を焼かれているというだけで、ただそれだけのことでこの上なく幸せだったのだ。
しまりのない口許を見られずに済んだのも、それこそ幸いとしか言いようがなかった。
 向いていないのだ。素直じゃないのは自分の専売特許だと思っていた。というより逆に、
これまでは素直に自分の気持ちを表す術を知らなかったのに、一度あっさりとその気持ちを認めてしまってからは、
つかえが取れたように感情がストレートに零れだしそうになる。
 だって仕方がない。相手は竜児なのだ。素直に考えてみれば、竜児は最高だ。優しいし、面倒見はいいし、
気遣いもできるし、料理も上手、ちょっとくらい鈍感であったからといって、そんなのは大した問題じゃない。
 何より一番大事なことは、大河が安心してその傍らに居られるということだ。
 信じがたいことだ。まさか、自分が心を許せる男がいるなんて考えもしなかった。北村のことは好きではあったが、
竜児は別問題だった。大河にとって竜児は、陽だまりみたいなものなのだ。竜児と一緒なら、胸が苦しくない。
竜児と一緒なら、身体の力を抜ける。安心できるのだった。
 そして何より、自分はここに居ていいのだと思うことができた。竜児だけは、自分の全てを認めて、受け止めてくれる。
 そんなことは最初から分かっていたのに。何をしていたのだろう。意地を張って、強がって、喧嘩して、傷つけて。
戻ってくる場所は、竜児の側以外にはどこにもなかったのに。
 全然ダメだ。理性ではどう思っていようと、本心は偽れない。肋骨の中で暴れているこの感情は、
どんなズルをしてでも竜児を手に入れろと喚いている。早く早く、今すぐにと大河を急きたてる。
 竜児が好きなのだ。もうどうしようもない。

「ああ、そういえばさ」
「……なあによ」
「北村のことだけど」

485 :虎飛び出し注意9(6/6) ◆wVNPBvxl56 :2009/11/19(木) 11:32:50 ID:XzUfBUoI
「え」

 ああ。
 大河は頭を上げた。

「うっそ、やだ、うわ、ひどい。私忘れてた」

 愕然たる思いで竜児を見る。向こうも実に気まずそうな顔で大河を見返している。

「おいおい……って、まあ俺も人のこと言えねえけど」
「……言葉もないわ……」
「なんか……なんだろうな、いっぱいいっぱいだったもんな……」

 仲よく明後日の方向を見つめること暫し。
 ごめんね、北村くん。
 すまねえ、北村。

「で、北村くん」
「ああ。なんかよく分かんねえんだよ」
「はあ!?」

 竜児は下校時の北村の様子を話した。もちろん自分と大河に関することは巧妙にぼかしながらではあったが。

「まあ、なんだかよく分かんねえんだけど、いいんじゃねえかな。取り敢えず元気にはなったみたいだし(?)」
「あんたね……」
「しっかし一番驚いたのは北村に好きな人がいるってことだよ。ある意味では納得って感じだが」
「……だから振られたって言いたいわけ」
「え!? い、いやそういうわけじゃ……」

 竜児はうろたえたが、何てことのない顔をした大河を見て、意外そうに目を細めた。

「……驚かないんだな」
「まあね。忘れちゃってるくらいだし」
「ふう……ん」

 告白してくる。そう宣言し、北村は学校へ駆け戻っていった。
 つまり、その想い人は校内の人物で、放課後も学校に残っている人ということだ。
 竜児はさっぱり思いつかなかったけれど、大河は何となく察しがついていた。

「告白……したのかな」
「したんじゃねえかな。あいつのことだし」

 目が合って、揺らいで、どういうわけかそのまま絡みあう。
 いけないいけない。大河は頬杖で顔を隠そうとするが、竜児から視線を外すことができない。
 竜児は竜児で、顔が熱くなる。
 大河には話さなかったが、竜児もそれに関しては答えてしまっているのだ。それも肯定の返事を。
 二人の気持ちは、お互いの親友だけが知っていて、同時に、当人同士も確かめあえないままに感づいている。
 それぞれの思惑で、たったひと言が、まだ言えないのだ。



*


いかん遅刻するw

486 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/19(木) 15:12:39 ID:aDcZc0nT
GJ GJ
まってました。 ありがとう〜

487 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/19(木) 17:42:35 ID:vuw51pek
次スレ立ててくる

488 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/19(木) 17:52:02 ID:vuw51pek
【とらドラ!】大河×竜児【モジモジ妄想】Vol18
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1258620217/

新スレです仲良く使ってね

489 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/19(木) 20:58:02 ID:7xK38guq
虎飛び出しの人待ってました!
この人の文章スラスラ読めるしテンポも良いから
個人的にめっちゃ好きです!

これからも無理せず頑張って下さい

490 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/19(木) 21:10:42 ID:vFFlA7g4
>>470
GJ!
大河が愛しい!
キュンキュンするぜw

関係ないけど、IDがなんか凄いw

>>487
GJ!
なんだこの甘酸っぱい感じ!
見てる方が身悶えしたくなるw

>>488
スレ立て乙

491 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/19(木) 22:07:12 ID:ARvlZxSF
「みなさんこんにちは。『斜め読みじゃわからないとらドラ!』の時間がやって参りました」
「おう、なんだそりゃ」
「このコーナーは、原作のわかりにくいところを勝手に語るコーナーよ」
「スレチじゃねぇか」
「いいのよ、埋めネタなんだから。これ書いてる奴もSS書かなくなってるから、こうでもして社会の役にたたなきゃ仕方ないでしょ」
「スレの埋め立てが社会の役に立つとも思えねぇけどな。てか、単に作品語りしたいだけだろ」
「ま、そんな所よね」
「認めやがった」
「そんな話はどうでもいいわ。とにかく、隠れた部分を語るの。竜児には大事なことよね」
「隠し味の話か?まかせろ」
「………」
「頼むから、下からさげすむような目で見るのは止めてくれないか」
「まったく。これだから哺乳類は困るわ」
「一応、お約束だからここでもつっこんどくけど、お前、哺乳類じゃ無かったんだ……」
「うるさい!とにかく『とらドラ!』には語られていなくて、匂わされている重要な事が多いの」
「まぁ、変わった小説だよな」
「何言ってるのよ。堂々たる王道よ」
「はぁ?」
「だいたい、小説ってのは内面描写を全部文字にして説明しちゃいけないのよ。日記じゃないんだから。間接的な表現で匂わすくらいがいいの。そうして初めて読者の知的な喜びを引き出すことが出来るの」
「そうなのか?」
「そうよ。ところが、いわゆるオタク層はそういう小説のあり方に食いつかないの。てか、小説なんか高校卒業以来読んだことないって連中ばかりよ。だから、彼等向けに簡素化して、登場人物の内面までやたら丁寧に描写したり、
完全にはしょるのがライト・ノベルの一つの特徴よ」
「おう、知らなかった」
「そういうわけでラノベの何もかも書いちゃうやり方ってのは、小説としてはあまり褒められた物じゃないわ。ところがここにねじれがあるの」
「なんだよ」
「オタクって本来細かい所にうるさいでしょ」
「まぁな。あれこれよく知ってるよな」
「彼等の嗜好からすると、隠されている事を読み取るってのは快感のはずなのにね。読書に関してはそれを放棄してるの」
「放棄しないやつはオタクじゃなくて読書家じゃないのか」
「そんなところね。とにかく、本来細かいところにうるさいはずのオタクが暗喩に食いつかないから、そういう本来は小説として重要なものを削ったのがラノベよ」
「そうか」
「ところが、ラノベである『とらドラ!』は暗喩だらけ。変な話よね」
「そう言われるとそう思えなくもないな」
「それに気づいているオタクもいて、いろいろ書いたり口角泡飛ばしたりしてるけど、まぁ、阿鼻叫喚ね」
「そ、そうなのか」
「これ書いてる奴もどこかで話したいんでしょうけれど、うざいオタクに噛みつかれると口げんかで負けるだろうからこうして私達の会話形式で書いてるわけ。とんだヘタレだこと」
「くっ。なんとなく同情するな」
「まぁいいわ。とにかく始めましょう。竜児には辛い話が多いけど、ちゃんと聞いてね」
「なんで俺に辛い話なんだよ」
「だって、『とらドラ!』は高須竜児の物語よ。でも、それを取り囲む形で私やみのりんやバカチーの苦しい青春の話が展開するの。それが半年ちかく続くんだから、端的に言って『鈍感犬』のお話よね」
「う、胃が痛くなってきた」
「それでは始めましょう。あ、竜児なにか飲むものちょうだい」

◇ ◇ ◇ ◇

492 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/19(木) 22:09:00 ID:ARvlZxSF
「ほれ、ハチミツきんかん」
「ありがと。じゃ、一番派手な話をしましょうか」
「大騒ぎの話か?」
「ううん。とっても静かな話よ。さらっと読むといい話だと思っちゃうエピソード」
「嫌な予感がするな。おれが鈍感とか……」
「心配しないで。基本的に全部その路線だから、予感が外れる心配は無いわ」
「……暖かい言葉、感謝するぜ」
「どういたしまして。みのりんがさ、ファール打ってクリスマスツリー倒しちゃったじゃない」
「おう。あの時の櫛枝は可哀想だったな」
「そうね。本当に可哀想だった。で、あんたは割れた星を修理するみのりんを手伝うじゃない」
「ああ、手伝うなって言われたけどな」
「そ。で、半完成の星を掲げてみのりんに言うわけよ『壊れたってちゃんと直るんだ』って」
「おう。お前の前で言うのも何だけど、あのときはまだ櫛枝が好きだったからな。なんとか元気づけたくてな」
「そう。あんたは元気づけようとしたのよね。でも、みのりんがあれでどれほど傷ついたことか。かわいそうなみのりん」
「ちょっと待てよ、なんで傷つくんだよ!元気づけられなくても、傷つけるってのはありえないだろ!」
「読みが浅いのよ。ほら、7巻貸してあげるから読みなおして」
「…………………………読んだ」
「たった一時間で。斜め読みにも程があるわ」
「ま、イブの所飛ばしたから」
「……そう。で、わかった?」
「……いや、やっぱ傷つくってのは考え過ぎじゃないか?」
「まったく。いい?ちゃんと聞いて。あのとき、竜児は自分の手の中の星を『失敗しても、やり直せるから大丈夫』という比喩で使ってるわよね」
「まぁ……そうだな。ツリー倒したって、それで終わりじゃないんだから、気にするなっていうか」
「でも、みのりんは星をそんな風に見てないの」
「どう見てるんだよ」
「いい、あの星は私の大事な飾りでしょ」
「おう」
「それをみのりんの大ファールが壊した」
「そうだな」
「それはつまり、みのりんが竜児を奪うことが、私を傷つけるってことの暗喩になってるのよ」
「………考え過ぎじゃねぇか」
「竜児。お願い。もう犬じゃないんだから。竜になって私を守ってくれるのなら、せめて3グラムくらい脳が必要よ」
「3グラムかよ!」
「7巻の始まりを思い出して。みのりんは大スランプでしょ?」
「おう、そうだな」
「それは集中力を欠いているからよ。直接の原因は6巻の終わりでバカチーが言った例のセリフ」
「『罪悪感は、なくなった?』ってやつか」
「そ。あのセリフそのものも、6巻の中では唐突すぎて浮いてるわよね。このころのバカチーは意味不明な行動が多いんだけど、それがきちんと説明されるのは9巻と10巻だから仕方が無いわ。
ともかく、この一言でみのりんは『高須君を好きになっても良いのかもしれない』って思うようになる。だって、私が北村君を好きだって知ってしまったから」
「お、おう」
「で、本気で好きになっちゃったわけよ」
「急だな、おい」
「なに言ってるの。全然急じゃないわよ。みのりんはあんたの気持ち、4巻で気づいてるのよ」
「え?」
「『え?』じゃないの。花火のシーン。あんたが伝えたかった気持ちはちゃんと伝わってるの。でも、その時は私があんたを好きだって誤解してるから、私に譲らないといけないと思ってる」
「そうか、6巻の『傲慢』ってセリフにつながる訳か」
「そ。だから5巻ではあんたとの距離感がおかしくなってる。そこに来て、6巻で北村君の家をあんたと訪ねるシーン。あれでまたあんたに惹かれちゃうの」
「そうなのか?」
「まったくもう。あのときみのりんはあんたの頭上に飛んできた何かをみたような顔をして、そのあと顔をくずしちゃうでしょ。つまり、4巻であんたに一緒に探そうって言ったUFOをみちゃったのよ。自分の中の恋心に気づいちゃったの。
高須竜児っていう男の子が好きだって気づいちゃったのよ。だから幸せに蕩けそうな顔をしたわけ」

493 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/19(木) 22:11:10 ID:ARvlZxSF
「なんだよ、あと一歩だったのかよ!」
「まぁ、話は簡単じゃないんだけどね。とにかく、みのりんは6巻の時点で自分があんたに惹かれていることに気づいている。でも、私に譲らなきゃっておもってる。強くなる想いを一所懸命押さえてるの」
「それが川嶋の一言で」
「そ、はじけちゃったのね。強く巻かれていたゼンマイみたいにね。だからさ、7巻の出だしの時点で、みのりんとあんたは完全に両想いなのよ」
「え……えええ!?」
「おめでとう竜児。ていうか、ごめんなさいなのかしら。折角みのりんとうまくいってたのに、悪い女にひっかかっちゃわね」
「バカ言え。冗談でも怒るぞ」
「えへへ。とにかく7巻のみのりんの気持ちは嵐といっていいわ。竜児の事が好き。でも、そのせいでソフトはスランプになっちゃった。おまけに、私が本当に竜児の事を何とも思っていないのか、実のところの自信がないの」
「まぁ、1巻で俺はお前の運命の人だって言い切ってたからな」
「そう。結果的にはあたりだったけどね」
「お、おう」
「で、そういう心理状況の中で打ち上げたファールがツリーの上の私の星を壊しちゃった。これはみのりんにとっては最悪の事態を暗喩してるように見えちゃってる。あんたが掲げた星は、みのりんが竜児を好きになることが私の心を粉々にする、
私達仲良しグループを壊してしまうってことの暗喩なの」
「俺の気持ちが伝わってねぇじゃないか!」
「そ。むしろ逆に作用してるわ。だからみのりんは言ったのよ『直るかどうか、私にはわからない』って。竜児が見せつけたあの星は、みのりんに取り返しの付かない事態を予言してるの。しかもよ、その直前に、あんたはみのりんの呼びかけにいちいちこたえてるでしょ?
ちゃんとここにいるからって。あれって心にしみるわよ。辛いときに横に居てもらえてみのりん完全にノックアウトよ。でも、その直後にあんたが掲げて見せるわけ。破滅の象徴を」
「………」

◇ ◇ ◇ ◇ 

494 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/19(木) 22:12:20 ID:ARvlZxSF
「ごめんね。竜児。思ったよりこたえてる見たいね。でもね、このシーンはもっと大きな事を暗喩してるの。暗喩というか象徴ね」
「まだあるのかよ」
「このシーンは『高須竜児の物語』の中ですごく重要な位置を占めてるの。進級した頃、みのりんの顔をみるだけで言葉に詰まってたあんたが、このときはっきり自分の気持ちをみのりんにぶつけようとしてる。
パーティーに誘うシーンなんて、告白そのものよ。でもね、みのりんは同じシーンであんたと付き合うと悪いことが起きるんじゃないかってはっきり意識してしまってる。それはつまり」
「つまり」
「このシーンはあんたのみのりんへの恋は最後まで実らないってことを象徴しているって思わない?」
「あんまり思えねぇけど」
「でも、同じ星を挟んで違うことを考えているってことでしょ。逢坂大河を挟んで違うことを考えているってことでもあるし、二人は同じ恋を挟んで違うことを考えているってことでもあるわよね」
「……えらくきついシーンだな」

◇ ◇ ◇ ◇ 

「そうね。『とらドラ!』らしいシーンだけどね。ついでながら、このシーンには別の意味づけもできるの。ちょっとうがちすぎだけど」
「まだあるのか。もう驚かねぇけど。で、どんなだ?」
「高須竜児とソフトボールは両立しないってこと」
「おいおい」
「ま、このシーンというかこの巻でみのりんはそれを考えたはずなのよ。で、最後には竜児への恋心じゃなくてソフトボールをはっきりと選んだの。私への気持ちもあったけどね。とにかく、自分の意志でみのりんは決めた。それが10巻の『決めることだよ』って言葉につながり、
廊下で走りながらの告白につながり、『報われる』って言葉につながるの。誰にも知られずに一人で苦しい決断をして、一人で涙を我慢していた。それをわかってくれる人がいるなら、それが高須竜児その人なら、報われるって話よ」
「やっぱり考えすぎな気がする。櫛枝はお前に遠慮して俺をゆずったって思うぞ」
「それも事実なんだけどさ、それだけだと『決めることだよ』って言うあの台詞に重みがなくなっちゃうのよ。ソフトボールで頂点を目指す。そう決めたから、みのりんはあんたを諦めて白球の飛んでいく先を見つめつづけることができた。
胸の痛みに崩れそうになっても二本の足で踏ん張ることができた。そう思わない?」
「…………俺、そこまで櫛枝のこと考えてなかった」
「仕方ないわよ。みのりん複雑だもん」
「俺の頭が単純すぎるのかもしれねぇ」
「ま、みのりんの気持ちをあんたが分かっていたかどうかは別として、あの言葉は『高須竜児の物語』の中で重要な意味を持っているわよね。最終的にはあの言葉の裏にあるソフトボールの話があんたの背中を押して、私の手をつかんでくれたんだから」
「確かにそうだな。櫛枝には感謝しねぇと」
「本当にそうよね」

495 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/19(木) 23:56:48 ID:x0eJItv6
「高須、逢坂、ちょっといいか?」
「おう、北村!」「き北村君!?」
「ずばり容量が心配だから簡潔に行くぞ、『罪悪感』の件なんだが」

「櫛枝の根本は『大河には高須君が必要』という事が最初から最後まである、初期の台詞を借りると『運命の人』これが起承転結の起だな
結の部分はクリスマスイブに泣き崩れる逢坂を目撃した時、つまり『自分の推測が少しも間違っていなかった』で、纏まる訳だ。」

「が、ずばり逢坂にとって必要なのは男(彼氏)としての高須竜児なのか、亜美の言葉を借りると父親役としての高須竜児なのかが解らなくなる時期がある」

「それって…私が生徒手帳に挟んだ北村君の写真を見たときってこと?」

「うむ、ずばり正解だ、あの時の櫛枝の心境としては、『大河が好きなのが北村君なら私が母親役になれば、父親役の高須君と付き合っても問題無いのではないか』
『いや、大河が好きなのは高須君なはず……でも、それなら何故北村君の写真を…』と、1人葛藤している所であの台詞だ」

「罪悪感…ね」

「そう、ずばり亜美は最後の救いでは無かった、見られたくなかった心の奥底まで見られてしまった、と櫛枝は感じたのだろうな
つまり、逢坂に必要なのは父親役、だから自分が高須君を好きになっても良いんだ、という考えに対して」

『「自分に都合良く解釈して」罪悪感は無くなった?』

「と、いう訳だ、結果あの時から、自分の心を押し殺しても高須と距離を取り始めた訳だな。」
「ここだけ聞くと、ばかちーが極悪人見たいね…」
「まあ、これは俺の意見、そしてワンシーンの話だ、亜美には亜美なりの考えがあった訳で、その後落ち込んでたようだしな。」

「ふーむ……所で北村」
「どうした高須、納得できないか?」
「いや、そろそろ服を着てくれ。」

496 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/20(金) 00:03:12 ID:BH46apTR
改行しろよ

497 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/20(金) 00:36:04 ID:R25/NKUJ
>>485
虎注の人、もう、ただひたすらに心の底から楽しませてもらっているとしか言えない。すげぇ。

>>495
久々、乙です。いつもながら、理解が深まります。
いいところで終わってしまって残念。クリスマスからバレンタインまでのみのりんの心境を
解き明かしたくて、何か書いてみようと思ったけど、無理だった。
また埋め立ての機会があれば、是非。

あと、改行しないのが文豪のポリシー


498 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/20(金) 00:56:03 ID:1R2Y1BXM
そういえば、大河の生徒手帳の「もう一枚の写真」は原作では明らかになってないんだっけ?

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