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【とらドラ!】大河×竜児【モジモジ妄想】Vol18

1 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/19(木) 17:43:37 ID:vuw51pek
ここは とらドラ! の主人公、逢坂大河と高須竜児のカップリングについて様々な妄想をするスレです。
どんなネタでも構いません。大河と竜児の二人のラブラブっぷりを勝手に想像して勝手に語って下さい。
自作のオリジナルストーリーを語るもよし、妄想シチュエーションで悶えるもよし、何でもOKです。
次スレは>>970が立ててください。 もしくは容量が480KBに近づいたら。
    / _         ヽ、
   /二 - ニ=-     ヽ`
  ′           、   ',
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  ∧    〈 ∨ ∨ ヽ冫l∨
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まとめサイト
ttp://tigerxdragon.web.fc2.com/

前スレ
【とらドラ!】大河×竜児【アマアマ妄想】Vol17
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1255435399/

2 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/19(木) 17:44:21 ID:vuw51pek
過去スレ
【とらドラ!】大河×竜児【ラブラブ妄想】(1スレ目)
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1231122796/
【とらドラ!】大河×竜児【ニヤニヤ妄想】(2スレ目)
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1234443246/
【とらドラ!】大河×竜児【デレデレ妄想】(3スレ目)
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1236695653/
【とらドラ!】大河×竜児【イチャイチャ妄想】Vol4
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1237819701/
【とらドラ!】大河×竜児【ベタベタ妄想】Vol5
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1238865504/
【とらドラ!】大河×竜児【スキスキ妄想】Vol6
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1240317270/
【とらドラ!】大河×竜児【ドキドキ妄想】Vol7
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1241386432/
【とらドラ!】大河×竜児【アツアツ妄想】Vol8
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1242374673/
【とらドラ!】大河×竜児【フワフワ妄想】Vol9
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1243354181/
【とらドラ!】大河×竜児【クネクネ妄想】Vol10
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1244280781/
【とらドラ!】大河×竜児【ワクワク妄想】Vol11
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1245146459/
【とらドラ!】大河×竜児【モフモフ妄想】Vol12
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1246704738/
【とらドラ!】大河×竜児【ナツナツ妄想】Vol13
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1248388647/
【とらドラ!】大河×竜児【ユラユラ妄想】Vol14
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1249487623/
【とらドラ!】大河×竜児【モグモグ妄想】Vol15
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1251296860/
【とらドラ!】大河×竜児【ハフハフ妄想】Vol16
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1253001418/

3 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/19(木) 17:50:34 ID:vuw51pek
【※CAUTION※超重要事項!※CAUTION※】

非エロ(ギシアンレベルまで)はここに投下

ガチエロは新避難所に投稿、ここへは告知誘導のみ

アク禁に巻き込まれたなど直接投下できなかった非エロ作品の代理投稿は作者が望んだ場合に可

大河×竜児ラブラブ妄想スレ 新避難所
http://jbbs.livedoor.jp/anime/7850/

★関連スレ
竹宮ゆゆこ105
http://love6.2ch.net/test/read.cgi/magazin/1253937059/
【竹宮ゆゆこ】とらドラ3!【◆Daiko/D50o 絶叫】
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/comic/1244814492/
【フラゲ】とらドラ!総合ネタバレスレ 3版目
http://love6.2ch.net/test/read.cgi/bookall/1236595750/
【間島淳司】とらドラジオ!【喜多村英梨】
http://atlanta.2ch.net/test/read.cgi/netradio/1229772543/
【PSP】とらドラP!part10【ポータブル】
http://jfk.2ch.net/test/read.cgi/handygame/1254273765/
とらドラ!総合 
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/nhkdrama/1227538758/
【田村くん】竹宮ゆゆこ 25皿目【とらドラ!】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1257220313/

★キャラスレ
【とらドラ!】キャラ総合スレ
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1222905488/
とらドラ! 手乗りタイガー239匹目
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anime2/1258471164/
【とらドラ】逢坂大河は手乗りタイガー可愛い 6匹目
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1251277405/
【とらドラ!】櫛枝実乃梨はジャイアントかわいい11
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1254545276/
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http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1251532155/
【とらドラ】川嶋亜美×高須竜児
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1249892546/
■とらドラ! 総合スレッド Part.1■
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1215959570/

4 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/19(木) 17:50:59 ID:vuw51pek
まとめサイトより

Q、1話の机が吹っ飛ぶシーンどういうこと?超能力?
A、ちがいます。ラブレターを鞄に入れてたら人が来たので、ロッカー隠れようとして凄い勢いで移動したんです。

Q、とらドラ!ってどんな作品なの?
A、とらドラ!は高校生特有の『思春期』という限られたひとときの中、
 友達と過ごしながら楽しいと感じたり、ある時は落ち込んだり、
 またある時は恋に悩んだりしながら、毎日を過ごしていくという作品です。
 (雑誌インタビューより)

Q、何クールですか?
A、2クール25話(DVD8巻構成)です。

Q、会長とあーみんの区別がつきません。
A、川嶋亜美(あーみん・ばかちー):前髪が朝倉風、ややたれ目、胸がおおきい、モデル
  http://www.tv-tokyo.co.jp/contents/toradora/images/chara/ami.gif
  狩野すみれ(会長・兄貴):前髪ストレート、ややつり目
  http://www1.atwiki.jp/toradora?cmd=upload&act=open&pageid=19&file=up49532.jpg

【一目でわかるとらドラ!一話】
@猛獣が襲い掛かってきた
Aお腹がすいていたのでご飯をあげた
B「気に入った。これからも飯つくってくれ、毛づくろいとかも頼むわ」
C襲われそうだし、ほっといたら死にそうなので、しぶしぶ飼うことに
Dご飯あげたら、ちょっと尻尾ふった
Eいろいろあって付き合うことになっておしまい ←今ここ

実際は竜児を犬扱いしている大河こそが飼われている側っていうのが面白い

とらドラ! まとめwiki
http://www1.atwiki.jp/toradora/
とらドラ! AA保管庫(仮)
http://monabase.net/toradora

5 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/19(木) 17:51:43 ID:vuw51pek
この板の設定

1レスあたり最大4096バイトで改行は60行まで可能
半角で4096文字・全角で2048文字です

Samba24規制は40秒です
一度書き込んだら40秒は書き込めません

バイバイさるさん規制は40秒以上開けて投稿しても
スレッドに同時に書き込む人数が少ないと発動します
ROMってる人は割り込みを遠慮せずむしろ支援する方向で応援よろしくお願いします

●を持っていると上記の規制は無効化されます
ただし調子に乗ってSamba24規制無視して連投しているとバーボンハウスに飛ばされます
たっぷり二時間は2ちゃんねる自体にアクセス出来なくなるので注意

●売り場
http://2ch.tora3.net/

年間33$(だいたい3500円〜4200円前後 円高だと安く買えます)
登録メルアドはプロバイダのメールアカウントのみ フリーメールや携帯メールは使用不可

携帯もってんならこの方法で簡単なんじゃないか?

1:http://get.ula.cc/pc/ こっから携帯で新規口座作って12000狐PをGET
2:http://bainin.ula.cc/sale/maru/ ここから●二週間お試し券を買う
3:http://maru14.ula.cc/ ここでお試し券を交換
4:完了メールきたら専ブラのログイン設定にIDとパスいれる
5:今までと同じように書き込める

2週間過ぎたらまた同じ手順やればいいだけ。数回分あるし一月半規制続いても安心
iPhoneだったりしたらクレクレするしかないんだろうけどさ

お試し●の交換・利用について
1つの●をPC+携帯で共有可
同じメアドで試用期間内に重複登録はできない。14日経過後、期限切れメールが届いてからであれば、同じメアドで交換可
同一アカウントから期間が重複した交換をするには、メアドを複数用意すれば可能
ちょっと間使えなくてもいいという人は期限切れのメールがきてから再申請してください

栄光のニダーラン @ wiki
http://www36.atwiki.jp/nida-run/pages/1.html

6 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/19(木) 20:21:49 ID:GGvUO3dH
>>1乙!
家に来て大河と何かしていいぞって竜jうわなにするやめろ

7 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/19(木) 21:52:50 ID:vFFlA7g4
            _, :‐-_、
          '"´ : : `: : :⌒ヽ、
        /: : : /: : : : : : : : :丶:\
      /: / : : {: : : : :ヽ: : \: : ヽ':、
      ,': /: {: : :ト、: : : : }: : : :}l :l: !
      |: l: : :|\:| ヽl\|\/l:| :l: |
      |: l : T≧心、_  ィ匕≦T: : :l: |
      |: l ヽ代i::ソ    弋i:ソ/ : /小
      |:人: :ゝ ー      ー 厶イ : | ヽ
       j: : :ヽ >  __⌒__ ,.イ : !: : : ト、:丶
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     /: : /|: : : |i{ >┴rく }i : |: : : ∨: /
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    ∠:_:_:_: ノ└L,___」L斗ュヘ : : : /: : : /
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8 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/19(木) 22:48:20 ID:ARvlZxSF
>>1
よくやった

家に来てペットのインコちゃんと何かしていいぞ。

9 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/19(木) 23:50:07 ID:GGvUO3dH
「竜児」
「おう」
「このスレでもよろしくね」
「お互いにな」

ギシギシアンアン

10 : ◆Eby4Hm2ero :2009/11/20(金) 00:50:45 ID:1R2Y1BXM
>>1乙です

それでは早速。


11 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2009/11/20(金) 00:51:45 ID:1R2Y1BXM
お題 「ボール」「おまえ」「心配」



 大橋商店街の福引会場。
 真剣な表情でレバーを握る大河。
 その後にはいくつものティッシュを手にした竜児。
 チャンスはあと一回。
 狙うは1等……魚沼産コシヒカリ50Kg。
 ぐるりと抽選機が回り……
 カランカラ〜ン!
「おめでとうございます!4等、バランスボールです!」

「なんか、微妙なのが当たっちゃったわねえ……」
「そう言うわりには楽しんでるみたいじゃねえか」
 大河は大きなボールに跨ってゆらゆらと。
「うん、まあね。これは意外に……よっと」
「気をつけろよ、大河」
「そんなに心配しなくても大丈夫だってば」
 言いながら大河はそろそろと姿勢を変えて。
「いける……かな?……よっ……と……どうだ!」
 掛け声と共に大河は不安定なボールの上にすっくと立ち上がる。
「おう……すげえな大河!」
「ふふん、どうよ?」
 大河はぐいっと胸を張り……その拍子にぐらりと体が傾く。
「え?……あ……わわ……!」
「あ、あぶねえっ!」
 ばたばたと腕を振り回す大河に、咄嗟に受け止めるべく動く竜児。
 どすんっ!
 僅かに舞い上がる埃の中、大河の頭は仰向けの竜児の腹の上に。
「こ……この、ドジ……」
「い、遺憾だわー……」
「おまえ、一人でバランスボールするの禁止……おうっ!」
 突然顔を逸らした竜児に、自分の視線を下ろす大河。
 そこにはボールの上に掛かっている両脚が。当然天地が逆になったスカートはぺろんと捲れてしまっていて。
 つまり、白い三角地帯が見えてしまっていて。
「ん……んにゃあぁぁぁぁぁぁっっっ!」

 以降、高須家ではバランスボールは封印されることになったとか。

12 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/20(金) 02:48:29 ID:hwlPiAl0
バランスボールは不安定だが三題噺は抜群の安定感だな


前スレ埋めネタ考察について

「罪悪感」は6巻時点でも十分嫌味と受け取れるべ
あんなふうにボソッと言われて「よかったね、大河は祐作が好きだよ。高須君はフリーだよ。だから罪悪感を持たなくてもいいんだよ♪」
なんて+に受け取る奴はいないだろ

と思うのだが

13 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/20(金) 03:14:14 ID:hwlPiAl0
おっとすまん495で突っ込み入ってた
491-494と495で話がつながらないなと思ったら
違う人だったのか

壊れた大河の星が破滅の象徴か復活の象徴かは竜児と実乃梨で受け取り方が違うのかもな

14 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/20(金) 04:23:19 ID:ByMjt0Sk
前スレ終盤で投下してくれた人乙!!
読ませてもらったぜ

15 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/20(金) 12:46:45 ID:3tt90nYX
前スレ埋め立て乙!
モヤモヤしてた部分が解き明かされてちょっとスッキリ。

>>11
いつも乙!
この感じはクセになる

16 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/21(土) 00:12:27 ID:8Or3wKHi
亀レスですみません。
前スレ穴埋め乙です。
考察大好きなのでもっといろいろ見てみたいです。
続きはこのスレの埋めまで待つか…


17 : ◆askgvpoGB. :2009/11/21(土) 23:56:17 ID:S1Eh69D3
こんばんは。

前スレ埋め、スレ立て乙です。

前回からだいぶ間が空いてしまいましたが、
次レスより、前スレ>>276の続きを投下します。


18 :【 - holding hands - 】 42 ◆askgvpoGB. :2009/11/21(土) 23:58:28 ID:S1Eh69D3


亜美ちゃん勘がいいから……多分そう。あれは高須君。
顔面の迫力だけで人をあそこまで仰け反らせる事が出来るのは高須君くらいしか知らない。
こっちを向いて……歩き出して……って、ちょっと……歩いてるんじゃなくて走ってない?

廊下にあまり人はいないけど、その走ってる姿を見た患者さん達がビックリして飛び退くのが見える。
まだあたしの所からは良く見えないけれど、身体が上下に揺れているしスーツらしきものが風で広がってる。

何となく見覚えがある……あの走る姿。やっぱり高須君だ。
段々と近づいてくるその顔はやっぱり昔のままで、えらく蒼白い瞳だけが浮かび上がって光を放ってるみたい。
ここからでもそう見えるんだ、そんな男がダッシュで迫ってきたらさぞや怖いだろう、なんて他人事のように思う。

――でも。

でもさ、高須君って、もうちょっと常識人だと思ってたけど?病院で走るなんて全然らしくない。
規律、調和、礼儀、そんな言葉に忠実に生きて来たんじゃなかったっけ?

カッカッ―カッカッ―カッカッ―と遠くから段々と足音が響いてくる。

やや上を向いてるのは天井から下がってる案内プレートを見てるからか、あたしに気付いてるのかどうかも怪しい。
最近の流行とは言え、太めのストライプラインが入ったダークグレーのスーツを身に纏う高須君はどこから見てもヤクザにしか見えない。
真っ白なシャツの上にあるべきネクタイはどこかに捨ててきたのだろうか?
むしり取られたみたいに襟元が乱れていて凄みが増している。

「…… …… ……」

口元が動いてるけど何を言ってるのか聞き取れない。
その顔には焦りが浮かんでて、ギラリと光る一睨みで誰かの心臓を止められそうなくらいに怖くて……
いや……あれは……怖いんじゃないんだ、きっと知らない人には分からないだろうけど、あれはすごく真剣なんだ。
足がもつれそうになりながら、それでも止まる事なく己が向かう先を必死で探しているように見えた。

――あぁ、そうか。

タイガーの事になると、見境無しっつーか、ルール無視っつーか、あの子の事しか見えなくなっちゃうんだね。
らしくない、なんて亜美ちゃん大間違い。なんの事はない、こいつも相変わらずバカだって事か。
そう気付いて、ふっと軽くため息を付いて手を上げる。


19 :【 - holding hands - 】 43 ◆askgvpoGB. :2009/11/22(日) 00:00:12 ID:5wZHSYL/

「おーい、高須くー……」
「!?」

あたしに気付いた高須君の顔付きが変わった。

「か――――――――わ―――――
「……いいっ!?」

閃光のような鋭い視線があたしを貫く。
グンと強く踏み込んでスピードが上がった。
えぇ?普通逆だろ!? と思う間もなく距離が詰まる。

―――――し――――――――まぁぁぁぁぁぁああああああ!!!」

咆哮の余韻も無く眼前。
ぶつかる! と思わず目を瞑りそうになる。
次いでキュキュキュと革靴と床が擦れる嫌な音。
迫り来る凶眼に射抜かれたまま身動きが出来ないあたしの両肩を乱暴に掴んで、

「大河は!? 大河はどこだ!!!」

言葉ごと突き刺さりそうな勢いで叫んだ。

「た、高須……くん…………あぶな……」

止まりきれない高須君に掴まれたまま後ろに数歩。
勢いが付きすぎて一瞬フワリと宙に浮く。
その浮遊感に恐怖を覚えて、きゃっ、と小さく声を上げてしまう。

「あいつは大丈夫なのか!? どこに行けばいいんだ!?」

そんなあたしに構いもせず更に叫ぶ。
両肩が痛い。右足のヒールも脱げた。
間近で見た高須君の目は、相変わらず怖かったけど……でも、あたしを見つめる瞳の中は不安で溢れていた。

その眼差しを……かつて自分が焦がれた真っ直ぐな眼差しを受け止めながら思う。
――そう……普通こうだよね。
どうしたって心配で、必死になって、頑張っちゃうよね……ま、こいつはやりすぎだけど。

「あ……あんた落ち着きなよ……あの子は大丈夫、だから走ったら……」
「どこだ――――――っ!!!」
「――っ!」

有無を言わさぬその声に気圧されたのか、その瞳に気圧されたのか分からない。
だけど、それ以上何も言えなくなって、あたしは右手で通路の先を指して教えてあげた。
この先にタイガーがいるよ……って。


20 :【 - holding hands - 】 44 ◆askgvpoGB. :2009/11/22(日) 00:01:39 ID:5wZHSYL/

「分かったっ!」

あたしを捉えていた視線が、瞳が右側に逸らされる。
ギョロリと黒目が大きく動き、私が指差した通路の先に向けられた。
それと同時に両肩が僅かに沈み込み、上半身がそちらに向けられ、やや前のめりの姿勢になる。
スローモーションのように一つ一つの動作を目で追いながら、いつの間にか高須君の両手はあたしの肩から離れていて。
視界から消えそうになる高須君の方を見ようと首をひねって、そこでようやく背中しか見えない高須君が走り出してる事に気付いた。

「ちょ……だから……」

だから病院だってのに! 危ないって言おうとしてんのに!
まったく。いつもこうだ。ずっとこうだった。
亜美ちゃんがいくら気を使ってやっても、いくら教えてやろうとしても、全然聞いちゃいない。

とっさに足元に視線を走らせ、脱げてしまったヒールの位置を確認する。
もう片方の足を蹴り出すようにして自ら脱ぎ、瞬間的に屈んでヒールを両手で掴んだ。

「だから走るんじゃねーってのぉ――――っ!」

その屈んだ体勢から斜め右方向にクラウチングスタート。
裸足にリノリウムの床は思いのほか相性が良かったし、ジムで鍛えた足腰に不安も無かったが、

「たいがぁ――――――――――っ!!!」

傍から見れば奇声としか思えない声を上げて疾走する高須君の背中は遠い。

「たっ……高須くんっ!? ちょっとあんた、まずいってー!」

もはや形振り構っていられないと全力で追い縋ろうとするが、なかなか距離が縮まらない。
デニムの性能限界に挑戦するかのようにストライドを広げてもエコバッグが邪魔で片手しか腕を振れない。

「……くっ!」

後方に流れ去っていく景色に思わず青くなる。本気でここがどこか見えてないって言うの!?
高須君の顔を見てお化けでも見たように固まってしまってる女の子とか、
高須君の顔を見て閻魔様の使いとでも思ったのか両手を合わせて念仏を唱え始めたお婆さんとか、
高須君の顔を見て殺されると勘違いして悲鳴を上げながら尻もちを付いたり逃げようしてる人たちが、

「あんたは本当の本気で見えてないの!?」

……まずい、まずいよ!
誰かにぶつかって事故らないとも限らない。
そうならなくたって警備員にでも取り押さえられたらあの子のところに行って上げられないじゃん? 


21 :【 - holding hands - 】 45 ◆askgvpoGB. :2009/11/22(日) 00:02:58 ID:5wZHSYL/

「すいません! どいて……どいてくれっ!」
「おーいっ! 聞いてんのかよ――っ!?」

このまま分娩室にでも突撃されたら大ごとだ。こいつはすっかり冷静さを失ってる。
取り上げようとする助産婦さんやら看護士さんがあの顔を見たら失神してもおかしくはない。

「うおおおおおおおぉ!」
「待てよおおおおおぉ!」

産婦人科が近付いてきたのか、妊婦さんがちらほらと目に付く。
タイガーくらいにお腹が大きくなった妊婦さんが目をまん丸にして立ち尽くしてるのが見える。
ビックリした拍子に産まれちゃったりしないでよ、と祈る祈る祈る! 祈りながら叫ぶ!

「こ、のっ…………止まれっての! 止まって――――っ!」

廊下のど真ん中をスーツをはためかせて駆け抜けるヤクザと、それを必死の形相で追いかけるあたし。
振り返れば廊下にいる全員がこちらを見てるだろう。看護士さんや先生が追いかけて来る可能性もある。
あーもう! 亜美ちゃん厄介ごとなんか超勘弁なんですけどぉ!?

――その時、廊下の突き当たりが見えてきた。
さっきと同じように俯いて祈っている赤い髪が目に入って、

「みっ、実乃梨ちゃ――――ん!!!」

息が詰まりそうになりながらも懸命に大声を出す。
弾かれたように実乃梨ちゃんがこっちを向いた。

「……っ! た、たか……す……?」
「止めて! そのバカを止めて、実乃梨ちゃん! 早くぅ――――っ!」

高須君の目にはかつての想い人が映っているんだろうか?
そんなことを思いながら走り出す実乃梨ちゃんを見る。
ホームスチールを狙うように姿勢を低くしてこちらに向かって飛び出して来た。

「ここかっ!? 大河……大河は!?」

分娩室のプレートを見つけて少しスピードが緩んだが、それでも止まらない高須君に、

「ちょおっと待ったぁ――っ! どっせ――――い!!!」
「うおおおう!?」

実乃梨ちゃんが身体を張ったタックルでぶち当たった。
実際には腰にしがみつくように飛び掛っても止まらずに高須君に少し引きずられてる。
よろめいた高須君が何事だ?と下を向いて、キッと見上げた実乃梨ちゃんの視線とぶつかった。

「止まって! 止まってよ高須君!」
「くし……えだ……?」
「高須君、落ち着いて! 大河はそこだよ、大丈夫だから落ち着いて!」
「はぁ……はぁ……ったく、あんた少し落ち着きなよ……はぁ……」

小走りに駆け寄りながら声を掛けると、高須君は少しだけ自分を取り戻したようだ。


22 :【 - holding hands - 】 46 ◆askgvpoGB. :2009/11/22(日) 00:04:42 ID:5wZHSYL/

「おう……すまねぇ……二人とも……」
「さっき、その部屋に入ったばかりだよ。それから動きは無いし、何かあったら知らせてくれるはず。だから、落ち着いてね、高須君」
「あ……あぁ……」

周囲のざわつきを極力気にしないようにしてあたしも話しかける。

「ほんっと、あんた変わってない。あたしの話ぜんっぜん聞かねーし、何よりバカだし、ほんと付き合ってらんねー」
「バカっておまえ……」
「まぁまぁあーみん。高須君の気持ちも分かってやってくれよ」
「そりゃそうだけど……みのりちゃんも大丈夫?すんごい音してたよ?」
「おう……そうだ……すごい衝撃だったぞ、櫛枝。大丈夫か?」
「こんなの全然楽勝だぜ、現役をなめてもらっちゃーこまるね、二人とも」

と、Vサインを突き出して笑う。何故か親指まで立ってるのは謎だが……
ゴツゥ!ってな感じで骨に響きそうなぶつかり合いを経てもこの余裕。
筋肉バカも健在で亜美ちゃん心配して損したなんて思ってると、

「それじゃ、私、看護士さん呼んでくるね。このままじゃ中に入れないし」
「あ、うん。それじゃあたしたちは待合室にいるね」
「あいよ!」

実乃梨ちゃんと頷きあい、高須君を促そうとしたその時、

「おい、そこの人!」

と男性の声が聞こえた。
あん?と腹黒本性丸出し、ダークサイド亜美の一睨みで追い払ってやろうと振り返った。
ところが、白衣の男性と濃紺の制服と帽子が見えたので急遽方針変更、きゃぴるん☆って感じの顔を作る。

「は……はぁい?なんですかぁ?うふっ」
「おまえじゃない、そこのヤクザみたいな男だ。病院の中で一体何やってるんだ?」
「え……あ……す、すみません」

厄介なのが来た……おそらくどこかの医者と警備員。
初老の警備員らしき男性におまえ呼ばわりされ目元がヒク付きそうになるがぐっと堪える。

「すまないじゃないよ。患者にぶつかったらどうするんだ?ちょっとこっち来い!」

と、白衣の男性が高須君に詰め寄る。悪い予感は当たるってやつか。

「あ、ごめんなさぁい、ちょっとこの人あわてんぼさんでぇ。本人には良く言い聞かせますのでぇ〜」

と、両手を合わせて拝み倒しスタイル。片目を可愛くウィンクさせながら間に入る。

「えっ……何なんだあんたは…………ああっ!? ま、まぁ…………」
「ほんっとーにごめんなさい。あたしが責任持ってもう二度とこんな真似させませんからぁ〜」
「そ、そこまで言うなら……その、知らない顔でも無いみたいだし……」
「ほんとですかぁ?やだぁ〜ありがとうございますぅ!」

どうやらメディアに出ているあたしを知ってる人だったみたい。若い先生で良かった。
こんな時にうぜーんだよという気持ちをひた隠し丸め込めようとした時、


23 :【 - holding hands - 】 47 ◆askgvpoGB. :2009/11/22(日) 00:06:04 ID:5wZHSYL/

「そういう問題じゃないだろ、先生?こんな強面の男とその連れなんざ信用したって無駄無駄」

と、初老の警備員が割って入ってきた。
高須君が横でぐっと喉を詰まらせたのが分かる。
苦々しげに俯いてしまったその内情は計り知れないけど、今はその偏見を解いている場合じゃない。

「えっとぉ……亜美ちゃんこう見えても約束はしっかり守りますよぉ?だからお願いします、この通りっ!」
「ふん! 迷惑掛けたらちゃんと謝るのが筋なんだよ。おら、分かったらこっち来い!」
「えっ?……い、いや、待って下さい。ちょ、ちょっと……」

そう言いながら高須君の腕を掴んで引っ張って行こうとする。

「高須君に何すんだっ!!!」

そこに後ろから突っ込んで来たのは実乃梨ちゃん。高須君の腕を掴む警備員の腕を掴んで睨みつける。
警備員も負けじと睨み返し、一瞬にしてその場の空気が緊張する。

「お、おい……櫛枝……」
「高須君はここにいなきゃダメ! 大河のところに行ってあげなきゃダメ!」
「なんだぁ?気の強い女もいたもんだなぁ、えぇおい!?」
「なにぃ!?」

どちらも引かない。正に一触即発。
……こんなことしてる場合じゃない。
本当に本当に……こんなことをしている場合じゃないのに!

「あの! ……聞いてください。お願いします。実乃梨ちゃんは手を放して……」
「あ……う、うん……」

顔から笑みを全て引っぺがす。目にぎゅっと力を込めて警備員の前に進む。

「この人の子供……もうじき生まれそうなんです、さっき急患で運ばれてきて、とても心配してるんです」
「んん? そういう事なら、分からないでも無いが……でもなぁ……」
「……後で必ず謝りに行きます。あたしが必ず行かせます! でも今は……」

そこで区切り、真摯な目で警備員を見つめる。
演技派で売ってるから、とかそんなの全然関係ない。
こんなことで高須君が連れてかれちゃったら……あたし、タイガーに合わす顔が無い。

「どうか、お願いします…………お願いします!」

腹から声を出して最敬礼。もっと深くだ。そのまま微動だにせず頭を下げ続ける。

「ご迷惑おかけして、すみませんでした」
「む……まぁ、そこまで言うなら……」
「そうですよ……事情があったんだし、後で来てもらえばいいじゃないですか……」

こんなあたしは格好悪いだろうか?あたしらしくないだろうか?
自身に問いかけてすぐに止める。そんなのはどうでもいい。


24 :【 - holding hands - 】 48 ◆askgvpoGB. :2009/11/22(日) 00:06:57 ID:5wZHSYL/

「……分かったよ。こっちも仕事なんだから、後でちゃんと来てもらわないとな」
「ま、まぁ次からは気をつけて下さいね?あなたも頭を上げて……」

若い先生に促され頭を上げ、それでも愛想笑いなんか微塵も見せずに目の前の二人を見る。
とりあえず怒りが収まってるようで一安心し、そこから二言三言みんなで謝罪してお引取り頂いた。

「…………ふーっ……危ない危ないっとぉ……」
「あーみん……」
「川嶋……その…………」

引き返していく男性二人から目を逸らして振り返る。
高須君も実乃梨ちゃんも心配そうな暗い顔をしていて、むしろあたしの方がビックリだよ、なんて思う。

「ほーら、実乃梨ちゃんは看護士さん呼んで来るんでしょ?お願いねっ」

だから、そんな雰囲気を自ら壊すようにニッコリ笑ってお願いする。

「あ……うん、分かった。すぐ呼んでくるね!」

あたしの気持ちを汲んでくれたのか、明るくそう言って早歩きでナースステーションに向かっていく。

「…………ほら……いくよ、高須君」
「お、おう……」

高須君の表情は複雑なものが絡み合ってるみたいでよく分からない。
タイガーの事が気掛かりなのかさっきの二人がいた時にもちらちらと後ろを振り返っていたし今も落ち着きが無い。

「早く……こっちだよ」
「…………」

準備室のドアに手を掛けて振り返ると、まだ何かを気にしているみたく口ごもっている。

「……何?」
「あのさ……俺のせい……なのに、おまえに謝ってもらっちまって……悪かったな……」
「気にしないで。あれが一番早いと思ったからそうしただけ」
「でもよ……」

それでも気まずそうにしている高須君を無理やり準備室に押し込みドアを閉める。
部屋の中には長距離バスの待合所みたく長椅子が並んでいて、その隣には飾り気の無いベッドもあった。
陣痛の間隔が短くなったらここで待機して、それで隣の分娩室で本番ってことか……よく出来てる。

分娩室に通じるドアのガラス窓からはタイガーがいる部屋もよく見えた。
しかし、それにしても……薄いドア一枚の違いなのに廊下とこの部屋とでは空気が違う。
当事者だけが足を踏み入れられる生命の現場とでも言えばいいのか……


25 :【 - holding hands - 】 49 ◆askgvpoGB. :2009/11/22(日) 00:09:32 ID:5wZHSYL/

「……ほら、後は実乃梨ちゃんが看護士さん連れて来てくれるから、そしたらタイガーのところへ行けるよ?」
「おう……」
「何よさっきから?冴えないツラしてどーしちゃったわけ?」
「いや、大河のことが心配なのはもちろんだ。今すぐにでもあいつの傍に行ってやりたい。
 けど、おまえから電話もらって、それで俺……真っ白になっちまって、川嶋にも酷い事言っちまったし
 さっきの事もそうだし……なんか呆然としちまってさ、俺はずっとこういう運命なのかって……」

と、さっきとはうって変わって早口で一気にまくしたてる。

「はぁ?意味わかんねーし。っつーか、あんたさぁ……」
「大河は今そこで頑張ってる。そんなのは痛いほど分かるんだ。でも、でも……俺は何やってんだって……
 こんな時に何言ってるんだっておまえは言うだろうけど……でも、そう思っちまうんだ。
 大河に負けないくらい頑張らなきゃならねえのに、出来てねえのが不甲斐ないっつーか……」
「……分かってんなら言うなって。ちゃんと目の前の事だけ……タイガーの事だけ考えて……」
「おまけにプライドの高い川嶋に頭まで下げさせて……ほんと……」

何度も話の腰を折られて、この野郎……と思ってると、高須君はおもむろに頭を下げて、

「すまねぇ」

と一言。それを聞いたあたしは苛立つ。怒りすら覚えるくらいに。

「あ ・ た ・ し」

大きな声を出して目を眇める。頭を上げた高須君をそのまま睨みつけながら、

「今は『女優』の川嶋亜美じゃねーし?今はそんなプライドなんかどーでもいいし?
 あたしはあんたと違って、何が大事か、何が大切か、見失ったりしない。間違ったりしない。
 とっくの昔にそう決めてるの! あの時あたしはあたしの大事なもののために頭を下げた。
 確かに高須君が原因かもしれないけど、それをあんたに謝ってもらいたくなんかない!」

声を荒げてすぐに後悔の念が押し寄せてくる。
高須君を励まして送り出さなきゃいけないのに、何やってんだあたしは。

「……そう……だな……すげえよな、川嶋は」
「………………」
「また助けられちまった…………何だ、その……ありがとな」

こいつは……この男は……相変わらず甘ちゃんで、情けなくて、
でも……こんな時なのに……あたしにまで優しくて本当にイヤになる。
だから……こいつがこんなだから……あたしはたまに振り返りたくなるんだ。
今とは違う未来を思い描いてしまうんだ。
それが……どれだけあたしを苛むのか、あんたは知らないくせに……

「でもまぁ?悪いって思ってくれるなら、亜美ちゃんにビンタさせてくんない?」
「はぁ?」
「亜美ちゃんのビンタってプレミア付きそうじゃね?やーん、高須君ちょーラッキーじゃん?」
「……ったく……おまえはよお……」

変わんねえな、とでも言いたげにため息を付かれて苦笑いされる。

「やっと……冴えないツラなりに笑ったね……
 あんた、さっきみたいな顔で行かないでよ、もっとシャンとしなよ。あの子のこと安心させたげなよ」

と、これは静かな声で。


26 :【 - holding hands - 】 50 ◆askgvpoGB. :2009/11/22(日) 00:11:37 ID:5wZHSYL/

ガチャ―― とドアが開き実乃梨ちゃんが顔を出す。

「すぐ来てくれるって、看護士さん……いやぁ、出払ってて誰もいなくってさ、探し回っちまったよー」
「ほんと?ありがとう」
「あ、あぁ……もうすぐだな。もうすぐ大河のところへ……」

そう言い掛けて緊張の面持ちになる高須君。

「大河を頼むよ、高須君」
「……おう」
「ほら、さっきの全力疾走から色々あったから、大分落ち着いたでしょ?」

二人して気遣うように声を掛けるが、

「あぁ、もう大丈夫……だと思う」
「はぁ!? 何よそれ、しっかりしなさいよね。タイガーは今必死で頑張ってるんだから」
「そうだな。そう……だよな……」

熱しすぎた鉄の塊みたいに突っ走ってきて、さっきの出来事で冷や水を浴びせられたのが原因なのか、
良く分からない自分の甲斐性だか運命というやつに疑問を抱いているのか……それとも、ただ単に初めての経験で臆しているだけなのか。
目の前で凶悪そうな瞳をギラつかせて、落ち着き無くウロウロしているこの男の気持ちが分からない。

実乃梨ちゃんがそんな高須君を見かねたのか肩を叩いて励ます。

「付き添い、頑張るんだぜ、高須君!」
「……おう、櫛枝もサンキューな」
「なぁにビビっちゃってんのよ、さっきの勢いはどうしたの高須君?」
「いや……実を言うと、何にも考えてなくて……いや……考えられなくって、ここまで来ちまった……」

――ただ……あの子の元に……か。

純粋すぎるのか、バカすぎるのか、あたしには分からないし、それを知ってるのはタイガーだけだろう。
こんな情けない所をあたしらに見せちゃうのも含めて、高須君ってこういう奴だよね……と思う。

「なぁ、女のおまえらなら俺より分かるだろ?こんな時、男はどうすりゃいいんだ?何をしてあげられるんだ?」

眉をひそめた不安そうな顔を見て、うーん。と実乃梨ちゃんと顔を見合わせる。
要は、自分の番だったら……愛する人に何をして欲しいかって、聞かれてるんだよね?
そいつは難しい問題だっつーか、なんつーか……

「簡単なことだよ、高須君。一緒に闘えばいいんだ!」
「えぇ……っと?」
「大河の事、励ましてあげて」
「そうだよ、そこにあんたが居るってだけでも大分違うもんだよ?」
「そういうもんか……?」

と、まだ疑問顔の高須君。
それだけタイガーを想ってても……いや、想ってるからこそ自信がないんだろうか?
だったら……分からないなら、あたしらが分かる事を言ってあげるだけ。


27 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/22(日) 00:15:23 ID:HcLIIptk
セルフC

28 :【 - holding hands - 】 51 ◆askgvpoGB. :2009/11/22(日) 00:15:59 ID:5wZHSYL/

コンコン―― ガチャ――

ノックの意味があるのかどうか分からないくらい間を置かずにドアが開いた。
看護士さんが入ってくるなり素早く室内に視線を走らせて高須君のところで止めた。

「お待たせしました。高須さんのご主人さんで……いらっしゃいますよね?」
「あ……はい、自分です。大河の夫です」
「では、こちらに……」

と、高須君を促すように分娩室の通路に繋がるドアの方へ歩いていく。
左手と左足を同時に出してしまいそうなギクシャクとした動きでその後を付いて行く高須君。 
それを見たあたしたちはどちらからともなく近付いて、

「声を掛けてあげて……タイガーに」
「……お、おう」
「大河の名前を呼んであげて」
「……おう」
「傍にいてあげて、産まれるまでずっと……」
「おう」
「大河の手を……握ってあげて、高須君」
「おう」

聞き慣れたいつもの返事をするたびに顔付きがしっかりしてくる。
ドアの向こうを見据える視線が力を増していく。

「……あの、そろそろよろしいでしょうか?」
「はい、大丈夫です」

しっかりとした返事に、あたしも実乃梨ちゃんも一安心というところか。

「……高須君っ!」

でも……どうしても言いたくて呼びかけた。

「ん?」
「……どんなにその手が痛くても……離さないであげて……」
「支えて……あげてね……高須君」

あたしは右手の痛みを感じながら、実乃梨ちゃんは……多分、左手の痛みを感じながら、そう言った。

「あんたが……ずっとやって来たこと……だよ。高須君なら出来るでしょ?」

背中を向けていた高須君が肩越しにこちらを振り返り一言。

「当たり前だ」

その瞳に迷いは無く、看護士さんと頷きあってドアの向こうへ……タイガーの元へ歩き出した。


◇ ◇ ◇


29 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/22(日) 00:20:10 ID:HcLIIptk
本日はここまで、ありがとうございました。

前スレ
>>277
感想どうもありがとう

>>279
こちらも感想どうもありがとう

>>280
ご指摘どうもです、あんまり意識してなかったw

>>294
そう言ってくれると嬉しいです
お待たせしてしまってすみません

>>296
前にも書きましたが自分にはまだ縁遠い話ですかねw
身の回りで似たような状況になったことも無いし全くの妄想です


多忙のため次回もちょっと遅くなりそうです。
それでは〜


30 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/22(日) 00:32:51 ID:LD8VhyDx
生まれる!

31 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/22(日) 04:13:00 ID:zxAXHWQR
>>29
乙です!
引き続き、あーみん、カッコよすぎ。
竜児はいつまでこの2人に助けてもらってるんだw
「どんなにその手が痛くても・・・離さないであげて」がいいな。
次はいよいよ・・・なのか!?

32 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/22(日) 09:16:09 ID:lVOz6mwt
おつー&GJ
もっとエロくてもいいのよ

33 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/22(日) 21:28:35 ID:XzTqP8TR
>>29
乙!
タックル仕掛けた実乃梨を引きずるとは……竜児恐るべしw
最後の一言は男を感じるな〜

34 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2009/11/23(月) 05:21:35 ID:WvDO0iM1
お題 「肩」「組み上げ」「逆に」



「竜児、これあげる」
 そう言って大河に渡された箱の中身は、
「おう、ジグソーパズルか。へえ、今はこんなにピースが小さいのもあるんだな。
 白地に黒ラインのみとはなかなか手強そうな……あれ? なあ大河、これ完成図がねえんだけど?」
「そっ、それは、組み上げてからのお楽しみってことよ」
「おう、そうなのか。それじゃ早速……」
「だだ、駄目っ!今はまだ駄目よっ!」
「……何でだよ?」
「ほら、その……せっかく恋人と二人で居るのに、片方が黙々とパズルやってるだけじゃつまらないじゃない」
「おう、そりゃそうだな、すまねえ」


 翌朝。
「おはよう竜児」
「おう、おはよう大河」
 いつものように並んで登校する二人。だが大河はどこかそわそわとしていて。
「……ねえ竜児、昨日の、その、パズルだけど……」
「おう、あれか……ぷっ……くっくっくっ……」
「え?え?……ちょっと竜児?」
 突然肩を震わせて笑い始める竜児と、予想外の反応に途惑う大河。
「いや……ペン先でも当たったんだと思うけど、余計な線が入ってるピースが一つあってさ」
「う、うん……」
「『大』が『犬』になってたぞ」
「……へ?それって……」
「つまり、『竜児犬好き』って」
「えぇぇ〜〜〜〜っ!?」
「いや、大河が何を言いたかったのはわかるけどさ……くっくっくっ……」
「ご、ごめんなさい竜児」
「いや、逆に大河らしくていいじゃねえか。部屋に飾っときたいから、今日の帰りに額買いに行こうぜ」
「だだだ駄目っ!飾るとかっ!」
「何でだよ」
「恥ずかしいじゃないのよ!」
「俺は恥ずかしくねえぞ」
「私が恥ずかしいのよ!パズル返しなさい!」
「嫌だね。あれはもう俺の宝物だ」
「おっはよう大河!高須くん!朝からケンカとは珍しいね?」
「お、おはようみのりん」
「おう櫛枝。いや、実は大河がな……」
「言うなーっ!」

35 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/23(月) 05:26:50 ID:XDeicOph
GJですの

36 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/23(月) 09:23:24 ID:KtKEFrhv
はっはっっは、いやいや、「犬好き」は大河だ。

37 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/23(月) 10:38:30 ID:uBs/hgjA
あながち間違ってないよね?と思った俺<犬好き。

38 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/23(月) 11:23:43 ID:OiOl4nkR
>>34
GJ!盛大に吹いたwww

39 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/23(月) 14:57:08 ID:K8itzrOf
だいたいあってるから問題ないな

40 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/23(月) 22:52:20 ID:OiOl4nkR
「竜児! 11月22日は何の日か知ってる?」
「23日なら勤労感謝の日だよな」
「正解。じゃあ22日は?」
「う−ん……キリンとアヒルの日?」
「ぶ−! 全っ然違うわよ! どこからそんな答えが出たの?」
「おう『1』ってちょっとキリンっぽいなと思って」
「え―……う〜ん……フォントによっては見えるかも?」
「だろ? ちなみに『2』も良く見るとアヒルっぽいぞ」
「あ−……まぁ、キリンよりは遥かにわかりやすいわ」
「だろ?」
「だけど、違う! 11月22日は良い夫婦の日よ!」
「おう、そうなのか。なんかこじつけっぽいけど」
「竜児のキリンのがよっぽどこじつけよ!」
「おぉう……そうか……。で、良い夫婦の日には何をするんだ?」
「そんなの決まってるじゃない!愛を育むのよ!」
「ちょ、ちょっと待て。お前なんでベッドに向かう!?」
「ばっちこーい!」

ギシギシアンアン

41 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/23(月) 23:11:45 ID:qcjXAQmq
昨日、誰かがそのねたすんだろな〜
って思ってたが今日来たかww

42 : ◆QHsKY7H.TY :2009/11/24(火) 00:06:19 ID:S72uz8HW
前スレ埋め、新スレ乙です。
考察なかなか穿った考えでした。

虎注いい感じですね。

大河の赤ちゃんそろそろでしょうか。

三題噺いつもいい味出してます。

良い夫婦w


さてお待たせしました。前スレのドラとら!(仮)の続きを少し投下します。
少し駆け足にしましたが、それでも順調に遅くなってます。マジごめんなさい。
続きはまた遅くなりそうです。
長く暖かい目で見てもらえると嬉しいです。

43 :ドラとら!(仮) ◆QHsKY7H.TY :2009/11/24(火) 00:08:14 ID:ZERzs0Oy
そうして、次の日学校へ行くと、昨日竜児の肉と一緒に飲み込んだ憎しみの元凶、川嶋亜美が転校してくるというあってはならない事態が起きた。

「なっななななな!?」

言葉にならないとはまさにこのこと。
私が川嶋亜美を睨み付けると、向こうも私に気付いたのか、ビクッとして視線を外し、しかし竜児を見つけて小さく手を振った。
それに気付いた竜児は困惑しながらも、おぅ、と小さく手をふり、反応する。
……おもしろくない。
非常におもしろくない。



***



放課後、俺は川嶋につきまとわれていた。

「ねぇ高須君、高須君って料理上手いんだって?ねぇ高須君って家事得意なんだって?」
「おぅ、まぁ人並み程度だよ。俺の家は母子家庭だから俺しかやる奴がいないし」
「へぇ、偉いんだぁ」

話を切っても切っても繋いでくる。
どうしたもんかと思って大河に助けを求める視線を向けても、ぷい、と無視される。
まさに四面楚歌。
しかし捨てる神いれば拾う神あり。

「おやぁ、高須君大人気だねぇ、ひょっとしてこれから買い物?」

櫛枝実乃梨が声をかけてくれた。

「おぅ、夕飯の買い物に行こうかと思ってる」

これ幸いとばかりに俺は返事をし、それを聞いた大河がビクリと跳ね、

「そうよ、デレデレしてないでさっさと行くわよ!!」

引っ張ってきた。
大河に引っ張られるのは正直嬉しい。

「おぅ、わりぃな川嶋、また明日な」

川嶋は少しムスっとするが、しかし、

「じゃあ私も一緒に今日の夕飯の買い物に行くわ、この辺地理結構変わってるし高須君に教えてもーらおっと」

爆弾発言をし、

「ふえ?高須君夕飯の買い物なの?てっきり明日のプールの為に大河の腐らせちゃった水着を買いに行くモノと……」

櫛枝が核発言をした。



***

44 :ドラとら!(仮) ◆QHsKY7H.TY :2009/11/24(火) 00:09:39 ID:ZERzs0Oy
「イヤだ、水着なんていらない」

と言う大河を諭し、

「なら、私は高須君に選んで貰おうかな?」

と言う川嶋を制し、

「何か大変そうだねぇ高須君」

と言う櫛枝に感動を禁じ得ながら俺たちが水着売り場へ行ったのは既に一時間以上前のこと。
大河は家に帰ってきてからもぶすっとし、あまり口をきいてくれない。

「なぁ、何をそんなに怒ってるんだよ?」
「うるさい、さっさと晩飯作れ」

話しかけてもこの始末。
水着を選ぶのも酷く悩んでいたようで、結局、素材も厚くてしっかりしてて乾燥機にもかけられるものを俺が選んだ。

「そんなにプールが嫌いなのか?」
「違うわよ馬鹿!!いや嫌いなんだけど」

意味がわからない。
大河はずっといらついているようだ。
とにかく今は外堀から攻めて話を聞こうと思い、料理の手を止めて振り返る。

「どっちだよ、っつうか嫌いだとしてなんでだよ?」
「……私泳げないの、だから嫌いなの」

嘘だ。
そんなすぐに答えるありきたりな答えが真実だった試しがない。

「ウウゥ、ウソダ!!」

すると、俺の気持ちを代弁するかのように高須家第三の住人、いや住鳥である『インコちゃん』が大河に指摘した。
本当にインコちゃんて人間の言葉がわかるのかもしれない。

「うっさいブサ鳥!!へっこむなんて言えないでしょうが!!」
「……へっこむ?まさかお前……」
「あ…………」

大河はしまった、という顔をして、

「忘れろぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「ひんにゅ……ってうわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

かつての日と同じく、木刀を何処からともなく持ち出してきて脳天めがけ振り下ろしてきた。



***

45 :ドラとら!(仮) ◆QHsKY7H.TY :2009/11/24(火) 00:11:18 ID:ZERzs0Oy
例えばの話、そう飽くまで例えばの話、自分の憧れの女性が自分一人に水着姿を見せてくれたとき、どう思うだろうか。
例えソレがスクール水着だとしても、嬉しいのではないのだろうか。
たとえスタイル、胸が小さくとも関係無いではないだろうか。
今、それを体験した俺だからわかる。

「……そんなの関係ねぇ」

もう既に殆ど死んでる芸人の台詞を使ってまで俺は答えを出した。
胸が小さい?そんなの関係ないのだ。
大河は水着を着た、それだけが事実。
細く白い手足が紺の水着から伸び、その肢体をより美しく見せる、いや、魅せる。

「えっ?」

大河が何か不思議そうな顔をしている。
いかん、少しみだらな妄想をしていたのが顔に出ていたのかもしれない。

「ホント……?」
「へ……?」

しかし、それはどうやら違ったようだ。

「本当にそんなの関係ない?胸へっこんでるんだよ?」

しかし大河は真剣に俺を見つめてくる。
そうだ、大河は水着を着ると胸が何故かへっこむと暗い顔で告白し、実際に着て見せてくれることになったのだ。

「あ、ああ、関係ねぇよ、お前は十分綺麗だ」

嘘偽りの無い感想だった。
この姿を見て、写真に『哀れ乳』なることを書いた奴を俺は小一時間は責めたい。
しかし、どうやらそのコンプレックスは大河の中では想像以上に大きかったようで。

「嘘、なんかどもってる……やっぱりやだよぅ、こんな姿でプール、行きたくない……こんな姿、北村君に見せたくない……」

大河は、俺の緊張のあまりの言葉に嘘を感じたのか(心の底から本心なのだが)やっぱりプールには行きたがらない。
さらに最後の言葉は地味に俺の心を抉ったが、それでも、こんなふうに落ち込む大河を見るのは嫌だった。

「よし、わかった、俺がなんとかしてやる」
「え……?」

だから、俺は大河の為に一肌脱ぐことにした。



***

46 :ドラとら!(仮) ◆QHsKY7H.TY :2009/11/24(火) 00:12:17 ID:ZERzs0Oy
カップにカップを縫いつけ、カップの厚みを増す。
丁寧に手作業でこれを繰り返し、最後に水着に取り付ける。
俺はその為小学校の時の授業で使った裁縫セットを持ち出して(現役バリバリしょっちゅう使ってる)裁縫を始めた。
時刻は既に夜中、だというのに。

「おい大河、お前もう帰って寝てていいぞ?」
「いい、ここで出来るの待ってる」

大河は眠い目を擦りながら俺の作業を横で見ていた。
今にも眠そうなのに、それでも必死に起きている。
だが、限界は近いのだろう。
何もせずに夜起きているのは実は結構辛い。
やはりというか、大河コックリコックリ首を落とし、

「ふみゃぁ……」

眠りに落ちる。

「!?」

が、ここで珍事発生。
大河は、俺の肩を枕が代わりにして眠ってしまった。
別に作業に支障は無い。
いや、あっても大河が寝ていられるよう片手でも無理矢理やる所存だ。
閑話休題。
今、大河の重みと暖かさを体で感じながら、俺は大河の為の裁縫をしている。
何か、こういうのいいな。
俺が、大河と付き合えたら、こういうことはよくあるんだろうか。
ガラにも無く、そんな都合の良い未来を夢想した。



***



「どうよ!?」

朝方になってようやく完成し、大河を起こして着せてみる。
そこには、大河の求める膨らみが確かに存在した。

「……っ!!」

大河も顔を赤くして驚き、

「お嫁に行く時は……絶対持っていくわ」

納得の行く出来栄えだったようだ。



***

47 : ◆QHsKY7H.TY :2009/11/24(火) 00:14:33 ID:ZERzs0Oy
少ないですが、今回はここまで。
前回感想くださった方本当にありがとうございます。
すいませんが、またしばらくお待ちください。

48 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/24(火) 08:29:08 ID:guHehdlB
GJ!プール対決も期待!

49 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/24(火) 12:34:52 ID:WXgYei3H
>>47
GJ!
いい感じのところ来たなぁw
頑張れ竜児

50 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/25(水) 07:06:33 ID:bhmXG6R+
投下乙
読ませてもらったわ

51 :フォとグらフ ◆fDszcniTtk :2009/11/25(水) 23:12:15 ID:jLVYkq4M
「大河。明後日のデート、うちに集合な」

金曜日にそう言われて、何の疑問もなく頷いたのには別に理由はない。付き合いだして早9ヶ月。というか、知り合って1年半以上。たいていのことはカリスマ主夫高校生である彼氏殿の言うとおりにしておけば間違いない、というのが骨の髄までしみこんでいる。

なにしろ、掃除洗濯料理なんでもござれのうえに、気配り上手、心配性ときている。つねに、あらゆる事に気を配っているのだ。そそっかしい自分なんかよりずっと判断は確実だ。だから、言われたら何でもはいはいとその通りにするのが一番いい。

付き合いだした最初の頃は、去年に染みついた癖もあっていろいろ口答えをしてみたりした物だが、それでも数をこなせば大河だって学習する。いつのまにか、うんうんと素直に言うことを聞くようになってしまった。だってその方が楽だから。
操り人形並に物わかりのいい彼女になりはてている自分に、時々呆然とする事があるくらいだ。

だから、言われたとおり彼氏……婚約者である高須竜児の家に朝9時に来たのだが。

「ねぇ竜児。あんたいつの間にカメラなんか買ったの?」

居間の隅に立てかけてある三脚と黒いカメラには驚いた。結びつかないのだ。竜児のイメージと、そのいかにも高価そうな光学器械が。

竜児は長い間、母親の泰子の代わりに家事の一切を取り仕切っていた。その中には家計の管理もある。大黒柱の泰子が決して高給取りとは言えないこともあって、竜児の金銭感覚の厳しさには舌を巻く者がある。そのあまりの厳しさに
「あんたの金銭感覚で自動販売機のジュースを買うって、どうなってるの?」と聞いたことがあるが、「金銭感覚が厳しいからこそ余裕があるんじゃねぇか」と、仁王のような顔で言い返された。ちなみに睨まれたのではない。
単に竜児は「なに当たり前のこと聞いてるんだ」と思っていただけだ。

しかしまぁ、いくら厳しいからこそ余裕があるとは言え、高級なカメラを買うほど竜児が小遣いを貯めていたとも思えないし、そもそも竜児がカメラというのがわからない。そんなことを考えながら3秒ほど停止していたのが、竜児にも読み取れたのだろう。

「おう、いくら何でもカメラの衝動買いなんかしねぇぞ。そりゃ北村に借りたんだよ」

と、種明かし。明かされてみればなんと言うこともない。

「へぇ、そうなんだ。なんだか北村君なら持ってそうようね。納得しちゃった」
「いや、それは北村の兄貴のだよ。てか、おれが持ってちゃおかしいかよ」
「だって。竜児って機械いじりが好きって柄じゃないじゃない」
「ま、そうだけどよ。撮りたいものは俺にもあるんだよ。よし、表出るぞ、表」

そう言って、カメラと三脚をかつぐと来たばかりの大河を玄関まで追い立てる。牛のようにおとなしく追われながら、大河の頭の中では疑問符が点滅している。竜児がお茶も出さないなんて雨でも降るんじゃないかしら。

◇ ◇ ◇ ◇ 

ところがどっこい、雨など降らない。この時期、この地方では青い空が毎日のように広がっている。今日も空が高い。

大河と竜児が来たのは、大河が住んでいたマンションの隣の公園。去年の夏休みにバドミントン勝負をやったところだ。この辺で、犬と勝負したのよね、などと冷たい空気に頬をさらしながら大河が考えているうちに、竜児は三脚とカメラを固定してしまった。
何に使うのか大家から脚立まで借りてきて、大げさなことこの上ない。

「よし、大河。その辺に立ってみろ」

と、少し離れたあたりを指さす竜児に、大河は目を丸くする。

「って何よ!あんた私を撮るの?」
「お前以外の何を撮るんだよ」
「紅葉でも撮るのかと思っちゃった」
「この公園でか。勘弁してくれ。通りの欅のほうがマシだな。電線が邪魔だけど。いいから其処に立てって」

つっけんどんに言われて、ぷっとミルク色の頬をふくらませながらも、文句も言わずに言われたところに歩いて行く。停学を食らっていた昨年同時期なら回し蹴りが既に2回炸裂しているところだ。

「まったくよう。そうやって拗ねた顔も絵になるってんだから、やってられないぜ」

そう言いながら、パシャリと一枚。あっ、と声を上げる間もなかった。

「ちょっとちょっと竜児、撮るならチーズ、とか言ってよ!」

52 :フォとグらフ ◆fDszcniTtk :2009/11/25(水) 23:13:09 ID:jLVYkq4M
抗議をしてももう遅い。あの大きなレンズのついた高そうな黒いカメラには、すでに大河のふくれっ面が高解像度で収まっているところだろう。そう言えばこの公園でばかちーがストーカーのカメラを壊したとか何とか。
いやいや、いくら何でもカメラを壊しちゃ北村君のお兄さんに申し訳ないし、其処まで怒っているわけじゃないのだが。

「いいじゃねぇか、あんまりしゃちほこばった写真じゃつまんねぇだろ」

竜児のほうは、大河の抗議などなんのその。楽しそうにファインダーを覗き込みながら、「お前、可愛いしモデルとしては申し分ないよな」などと言って大河を赤面させては、パシャリとシャッターを切る。最初は拗ねて見せていた大河だが、
恋人からきれいだと連発されて嬉しく無いわけがない。

「もう、竜児ったら」

と、くすりと笑ったのが年貢の納め時で、あとは珍しく良く回る竜児の口車に乗せられて、モジモジしたり、ニコニコしたりとなかなかの被写体っぷりである。年頃の娘だ。可愛く撮ってやると言われれば嬉しく無いはずがない。

おすまし顔や、ちょっと元気よく手を振って歩く姿なんかも撮った後、竜児が場所を変えようと言い出した。公園の植え込みの横にあるベンチだ。

「ちょっとカメラみててくれよ」

そう言って駆けだした竜児は、戻ってきたときには缶のミルクティーを持っていた。

「ほれ」
「ありがとう。休憩?」
「いや、開ける前に撮らせてくれ」

そう言うと、竜児はカメラを三脚からはずし、片手に持って脚立の上に立つと、やれ足を前に投げ出し気味にとか、缶の持ち方がどうのとか、ちょっと首をかしげてみろとか、あれこれやかましくポーズを要求した。

「ねぇ、脚立に乗る意味ってあるの?」

と、聞いてみるのだが、広角がどうのとか足は中央とか七面倒な答えが返ってくるばかり。マフラーに顔を埋めたまま、『そろそろめんどくさいな』と思いはじめたところで竜児から「お疲れ」の声がかかった。

「付き合わせて悪かったな。飲んでいいぞ」

そう言うと、ミルクティーを飲む大河の前で竜児は手早く脚立をたたみ、三脚の足を縮めてカメラを取り付けてしまう。後片付け終了。

「え?これで終わり?」
「おう。あれこれ注文付けたからな。疲れたろう」
「別に疲れてないけど。ねぇ、竜児。折角だし一緒に撮ってよ」
「おう、そうか?」

婚約者のくせに、『おう、そうか』でもないだろう。 もうすぐ二人の高校三年も終わりだというのに、こんなにいいカメラを借りてきたのだから、二人で写らないでどうするのかしら、と大河は思う。まぁ、その辺の実用一辺倒な所は竜児らしいのだが。
もう少しロマンスを解してもいいのではないだろうか。

「よし、じゃぁ大河。ベンチの後ろに立てよ」

背もたれの無いベンチの後ろに大河を立たせ、竜児は三脚の足を伸ばす。ファインダーを後ろから覗き込み、なにやらレンズのあたりをクルクル回していたが、納得がいったのだろう。これから拷問を行う凶悪犯のような顔で笑うと、立ち上がってベンチの所にきた。
大河の前に足を開いてどっかりと座る。

53 :フォとグらフ ◆fDszcniTtk :2009/11/25(水) 23:14:01 ID:jLVYkq4M
「大河、俺の肩に両手をかけて後ろから覗き込むような感じにしてみろ。オッケー。笑って。よし」
「竜児、これどうやって」

パシャリ。

シャッターを切るの?と聞く間もなかった。

「すげぇだろ、リモコンもあるんだぜ」

と、竜児は右手に持った黒いガムのようなものを見せる。

「何よ、意地悪。ちゃんと撮ってよ」

不意を突かれて拗ねてみせるが、悪い悪いと笑う竜児にうまく丸め込まれる。で、仕切り直し。二人でにっこり笑って。

パシャリ。

竜児が指でリモコンを押してシャッターを切る。

こう言うのも悪くないと思う。手乗りタイガーとヤンキー高須とはいえ、二人は恋人同士なんだから。こうやって仲良く写った写真は、きっといつ見てもうきうきした気分になる。そんなことを考えながら、

「ねぇ、竜児。どうして写真撮るなんて急に思いついたの」
「だって、お前。年賀状の準備はそれなりに時間が必要だろう」

何気なく聞いた問いの答はびっくり仰天もの。思わず大河の声も卓袱台のようにひっくり返る。

「ちょちょちょ、竜児。私の写真使うつもりなの!?」
「おう」
「『おう』じゃないわよ!」

首から上が燃えるように熱くなる。着ぶくれ気味でも寒かったのに、体中の汗腺が一気に開くのがわかる。よりによって、この男は婚約者の写真を友達にばらまくつもりらしい。ということは、クラスメイトの手にも渡るわけだ。
今日撮った、脳天気に幸せ一杯の手乗りタイガー写真が。

それが嫌だというわけでもないが、なんというか、早すぎないだろうか。いやいや、それだけ竜児が自分の事を想ってくれているのだろうけど。

「どうしよう、ねぇ、竜児、私ちょっと恥ずかしいな。来年とかじゃだめなの?」
「馬鹿言え、今年を逃したらトラ年は12年後じゃねぇかててててててててて!!!!」

ほんわか気分も台無しの一言に、思わず右手の親指は無意識の動き。婚約者の冷たい頬をつねりあげる。竜児のほうもさすが大河の婚約者。右手の親指はシンクロしたみたいに動いて、リモコンを押す。

パシャリ。


(お・し・ま・い)



54 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/25(水) 23:43:50 ID:gC/7CJOH
いい話だ…

55 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/26(木) 00:03:56 ID:0YvnQ0G+
超GJ

終わり方がすごく二人らしかったww

56 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/26(木) 01:49:29 ID:bIxvvEW9
>>53
いやー GJです!
出だしの「付き合いだして早9ヶ月」からニヤニヤしっぱなしの俺キメェ
そして、 「もう、竜児ったら」 
で萌え死んだ。
竜児はいい感じのお約束w

しかし、タイムリーなネタですな。年賀状悩むなー。大河の画像(最萌のヤツとか)使ったら、
受け取った人にドン引きされるだろうなー マスコットの手乗りタイガーにしとくか・・・

57 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/26(木) 02:18:55 ID:W6+VnzOI
これはいいバカップルw

58 :FM大橋 第一回(1/2) ◆wVNPBvxl56 :2009/11/26(木) 02:20:49 ID:W6+VnzOI
寅年の俺が通りますよ。スレチだったら申しわけない。
竜虎モノのつもりなんです。

*

「はい、始まりました。新番組『逢坂さんと高須くんのラブラブアルバム』(オエッ)!
 お送りするのはこの私! 大橋の……はぁ!?
 コホン……お送りするのはこの私! 世界のアイドル! ミラクルキュートなスーパーモデル!
 亜美ちゃんこと川嶋亜美でーっす!
 この番組ではー、この春めでたく正式にお付き合いすることになった大橋高校三年生、
 手乗りタイガーこと逢坂大河さんとヤンキー高須こと高須竜児くんのラブラブカップルっぷりを、日替わりゲスト、
 皆さまからの目撃談を交えて目一杯お披露目しちゃう番……組……でー……す……。
 ……はあ……。
 ……何やってんだか。
 ……つーかあによ。あんなのよ。何よこの番組。つーかなんで亜美ちゃんが司会? 何なの? 罰ゲーム?
 この純真無垢な天使のごときぷりちーな亜美ちゃん捕まえて罰ゲームって。
 あ・り・え・ねーっ☆
 あのね。
 言わしてもらうけどね。
 あのちんちくりんと変態掃除魔のベタベタイチャイチャネチョネチョっぷりなんてね。
 かっ………………っんっ………………っぺっ………………っきっ!
 見飽きてんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
 あ?
 ふざけんなよ?
 舐めてんの?
 舐めてんのかっつってんの!
 毎日毎日飽きもせずところ構わずイチャイチャイチャイチャ見せつけやがってるあのバカップルどもをね?
 亜美ちゃん……ううん、大橋高校全体が目が腐って反吐が出るほど見飽きてんだよ!
 それを何。あえて語れと。語らせろと。聞けと。聞かせろと。週五日九時から四時まで延々と苦行のように……
 いや、拷問みたいにあっつっくっるしい光景を、耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍んで強制鑑賞させられているのにもかかわらず、その上それを描写せよと。
 そう言うんだ? 亜美ちゃんにさせるんだ?
 ……はーーーーーーーーーーっ……
 さて! 皆さんに親しまれてきたこの番組ですが、残念ながら今回で最終回!
 亜美ちゃん超寂し〜い☆(くすん)
 皆さん今までありがとー!
 次回からは、この私、宇宙のカリスマアイドル! キュートリーにエスペシャリーに大・活・躍・中!
 亜美ちゃんこと川嶋亜美がお送りする、全人類の全人類による亜美ちゃんのための番組、
『亜美たんちょーぷりちー☆〜どうしてそんなにかわいいのっ!?〜』
 を、お送りします! みんなーっ、亜美ちゃんへの質問、亜美ちゃんのお茶目な目撃談、亜美ちゃんへの無限の賛辞などなど、おたよりどしどし送ってね!
 ではまた次回! ばいばーい!」
「おいおい、ゲストも紹介しないで勝手に番組を最終回にするなんて、さすがにそれはちょっといただけないぞ亜美よ」
「あ? ……ああ、なんだ祐作か。いたんだ。全然気づかなかったわ。わりーわりー」
「逢坂と高須の様子を紹介するんだろう? それだったら俺もいい情報を沢山持っている」
「……ねぇ」
「なんだ亜美、よく聞こえない」
「……ぃるぁねえっっっつってんだよこのタコ! 坊ちゃん刈り! メガネ! 童貞!」
「ははは、今更お前に何を罵られようが一向に堪えんな!」
「……チッ、あたしこれからあんたのこと駄作か田吾作か抜け作のどれかで呼ぶわ」
「ああ、呼んでくれ!」
「……あーあめんどいのが来ちゃったよ。しゃしゃり出てきちゃったよ。しかも両手一杯のハガキを……って二毛作、何よそれ?」

59 :FM大橋 第一回(2/3) ◆wVNPBvxl56 :2009/11/26(木) 02:24:09 ID:W6+VnzOI
「早速パターンから外れた呼び方だな。そしていい質問だ。これは何を隠そう、
 みんなから『逢坂さんと高須くんのラブラブアルバム』宛てに寄せられた逢坂と高須のラブラブっぷりの克明なルポタージュ、もといおたよりだ」
「いやああああああああああああああああああああああああああああ! 何考えてんの! 何で生きてんの! 何でそんな無駄な労力使っちゃってるわけ!?
 みんなどうかしてるよ! みんなの人生はただただ亜美ちゃんを崇め、奉り、足元にひれ伏すためだけに存在してるんだよ!?
 あの腐れピグミーマーモセットと殺人ゴミムシダマシの身の毛もよだつ絡みをよりにもよって紙に書きつけるなんて資源の無駄遣いもいいとこ!
 確実に地球の寿命縮めてるよ! MOTTAINAI!」
「最後のは高須のキメゼリもががが」
「うっさいんだよ凡作! うぜっ! マジうっぜ!」
「いてて、亜美お前爪を伸ばしすぎだ。仕事とはいえ何とかならんのか?
 ……まあ、そう目くじらを立てることもないじゃないか。お前だってあいつらのことを祝福していただろう?
『よかったねタイガー』ってむせび泣いていたのは……おい、やめろ、それは使いようによっては鈍器だ、危ないぞ、やめろ、やめとけ、お前の職歴に傷はつけたくない。
 ……分かった分かった。どうどう。
 いやあ、お前も変わったもんだよ。それもやっぱり高須たちのお陰だな」
「…………」
「図星だろう? お前がモデルを始めてから俺は随分寂しい思いをしていたんだぞ。またこうして素の亜美を見られるようになって俺は本当に嬉しい。
それだけでもあいつらに感謝している。高須には『嫌いじゃない』なんて言い方をしたが、実は俺、わがままで横暴で腹黒いお前が大好きなんだ」
「は!? うわ、気持ち悪い! ちょっとこっち見ないでよ。視線で穢れる。厄がつく」
「小さい頃は一緒に風呂に入り同じ蒲団で眠った幼馴染をお前、素で気持ち悪いと言ったな。よろしい。お前と本音で語り合えるのなら俺は気持ち悪い男で結構だ」
「ある意味男らしいけど今一瞬本気で通報しようかと思ったわ……いや、ほんとに通報しようかな。逮捕されるレベルだよね?
 亜美ちゃんが悲鳴上げたら官憲はあんたを断罪するよね? 亜美ちゃん正しいよね?」
「まあまあ、そういうな。二十五になってもお互い独身だったら結婚しようと約束した仲じゃないか」
「してねーし! つーか二十五って! 若えし! 諦めはえーし!」
「では早速おたよりを紹介しよう。すっかり時間が押してしまった」
「このまま終わろうよ。残り時間はなんか曲かけちゃえばいいって」
「最初のおたよりです! ……って、そういえば俺はゲストだった。亜美、お前が読め。司会だろう?」

60 :FM大橋 第一回(3/3) ◆wVNPBvxl56 :2009/11/26(木) 02:25:44 ID:W6+VnzOI
「ええー……。
 ええー……。
 ええー……。
 ……ほんとにぃ? マジかよ……マジで紹介すっ気だよこいつ……。
 あー、はいはい、はいはいはいはいわーかーりーまーしーたー。読みゃいいんだろ読みゃ」
「ほら、元気を出せ。モデルだけでは終わらないと言っていたお前だ。この程度を苦にしていては先が思いやられるぞ。亜美、お前には才能がある。お前はもっと輝けるんだ!」
「ええー……(三パーセントほど気を取り直す)……ふう。
 はい。では最初のおたよりです。大橋市にお住まいのペンネーム『縦ノリタイガー』さん。はっ(笑)
『いつもお美しい亜美様こんばんは』
 こんばんは☆
『先日商店街でタイガーと高須くんを見ました。なんか言い争っているみたいなんでちょっと聞き耳立ててみたら、タイガー、
「竜児だっこー! だっこしてくんなきゃもう一歩も動けない!」
「お前これから特売に行こうってのに何言ってんだよ」
「やだやだ! だっこー! ねえーりゅーうーじー!」
「お前なあ……そんなこと言う子にとんかつは食わせられねえな。あーあ、折角一緒に夕飯が食える日だってのによ」
「え!? とんかつ!? それを早く言いなさいよ! 早く行くわよグズ犬! だっこはお家に帰るまで勘弁してあげる!」
 って感じでした。だっこって(笑)周りの人の苦笑いにも全然気づかない様子でイチャつく二人は逆に清々しかったっす』
 だそうです……へー、ふーん、そーなんだー。
 はい。じゃあまた来週! いつも応援ありがとー☆」
「だから終わらせるなって。亜美、お前もプロの端くれならもうちょっと気の利いたコメントはできないのか」
「はああぁぁああ? コメント? ……チビ虎は甘ったれでちゅねー! はい! 利いた!」
「一応はお前の番組なんだから、もっとこう盛り上げようとする意志をだなあ」
「はー、あー、あー、はいはい、盛り上げりゃいいのね。愚民どもを食いつかせりゃいいのね。
 まあ亜美ちゃんの番組ってだけで全人類は玉音のように平伏して傾聴してると思うけど? そこまで言うなら盛り上げてやんよ? やってやんよ?
 ……はい、よいしょ。パンツ脱ぎました。ほーら。亜美ちゃんスカートでノーパンですよー。ほれ、これで全国のキモヲ……健康なオットコノコたちはもう釘づけよ。
 毎回正座でご拝聴だよ。盛り上がったべ? これでいいのかよオイ。指サック」
「亜美、自分を安売りするもんじゃないぞ。というかそういうのは俺の役回りだ。もろち……もちろん俺もパンツなんか穿いていない!」
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


*


長さミスった。
虎注の合間に書きました。

61 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/26(木) 02:37:01 ID:td4exBkI
またいつもの大河と竜児のイチャイチャかと思いきや、
亜美ちゃんのーパン生パンと聞いたら反応せざるを得ない。

・・・と思ったら・・・・・ラジオで音声だけな筈なのに
何故か北村くんの黒いワカメが見えてしまったような気がするorz


62 : ◆Eby4Hm2ero :2009/11/26(木) 05:14:25 ID:wJK4b10Q
>>58-60
ものごっつ噴いたw
第一回ってことは、第二回も期待していいのかな?

63 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2009/11/26(木) 05:16:47 ID:wJK4b10Q
お題 「大河」「散々」「見た目」



「大河、調子はどうだ?」
「ん……だいぶ落ちついたみたい」
「そうか、よかった」
 大河はベッドから身を起こし、竜児はその横に腰掛ける。
「ごめんね、心配かけて……」
「こればっかりは仕方ねえんだし、気にするなって。医者だって言ってたろ?悪阻は病気じゃないってさ」
「うん……」
 大河の両手は、僅かに膨らみ始めた腹部に添えられて。
「な、なあ大河……俺も触ってみていいか?」
「え?まだ全然わからないわよ?」
「いいんだよ、それでも」
「それなら……ど、どうぞ」
「おう……」
 竜児はおそるおそるといった感じで、大河のお腹にそっと触れる。
「ここに居るんだよな……」
「うん、そうね……私達の赤ちゃん……」
「男の子かな?女の子かな?」
「まだわからないわよ……竜児はどっちがいいと思う?」
「そうだな……男の子かな」
「なんで?」
「ほら、男の子は母親に似て、女の子は父親に似るって言うじゃねえか。
 俺は子供の頃、見た目でかなり苦労したからさ……」
「竜児……」
 大河は竜児の頬に手を添えて、力任せにぐいっとつまみあげる。
「馬鹿なこと言ってるんじゃないわよこの駄犬」
「ひへへへへ!」
「男の子が母親に似るっていうならあんたはどうなのよ」
「おう……そういやそうか……」
 赤くなった頬をさする竜児。
「大体ね、男の子だろうが女の子だろうが、私に似れば可愛くて竜児に似れば格好良いに決まってるじゃないの」
「いや、嬉しいけどよ……俺のこの悪人ヅラを格好良いって言ってくれるのは大河ぐらいだぞ。
 そのおまえにしたって、昔は顔ネタで散々罵倒してくれたじゃねえか」
「ああ、あれは愛情表現だったのよ」
「……言い切りやがったな……」
「まあ、確かに色々あったのかもしれないけどね、それでも竜児はきちんと真っ直ぐ育ったし、友達もできたじゃないの。
 今からくだらないこと考えてないで、あんたは父親らしくどーん!と構えてればいいのよ」
「お、おう、どーん!だな」
「……何か、まだいまいち頼りないわね……
 そうだわ、あんたがその……個性的な顔でよかったってことを一つ教えてあげる」
「何だよそれ?」
「竜児ってば優しいし気配り出来るし家事は完璧じゃない。なのに私に会うまで彼女が出来なかったこと」
「……それは、よかったことなのか?」
「当然でしょ。もし竜児に彼女がいたら、私達が付き合って結婚することなんて無かったんだもの」
「あんまり褒められてる気がしねえけど……まあ、そうだな。そう考えると親父の遺伝子にも感謝ってことか」
「そうそう。人生何が幸いするかなんてわからないんだから、余計な心配なんてしてないで、ほらもう一度、どーん!」
「おう、どーん!だ!」

64 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/26(木) 14:56:41 ID:h9yOHBCn
なんてええ嫁さんなんだ…
ちなみに二人の子供は見た目大河似、性格は竜児似が理想的だと思うんだがどうだろう

65 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/26(木) 15:51:39 ID:kTscuOIC
そして胸は泰子似と

66 : ◆6U1bthnhy6 :2009/11/26(木) 16:02:05 ID:W/X7A3p0
・・・えーと、久しぶり過ぎて場違い感ありまくりですが、次レスから幾つか借りますm(__)m

67 :「1話if・13」 ◆6U1bthnhy6 :2009/11/26(木) 16:04:59 ID:W/X7A3p0

なんでなんでなんで。
心の中で自問しながら、私はしきりに頭を抱えていた。
なんで・・・なんであのタイミングでお腹鳴るの?
あの時を思い出してカァッと顔が熱くなるのを感じた。
そりゃあ確かに今日は夕ご飯食べてない。
コンビニ弁当に飽きたってのもあったけど、なにより胸が一杯だったから。
手紙を渡せた。
それだけでもう胸一杯になっちゃって、ご飯のことなんかどうでも良くなってた。
それから・・・今度は、高須竜児に断られたらって心配が胸を占めた。
どうしようって考えて考えて、今夜乗り込むことに決めたんだ。
ちゃんと『処置』のことまで考えて。
結局は失敗しちゃったけど。
手紙、入ってなかったけど。
それでも・・・さっきの高須竜児とのやり取りは、贔屓目かもしれないけど悪くなかった気がする。うん。
あいつ顔真っ赤にしちゃって、目逸らしたりしながらあたふたしてた。
そのときを思い出して、口許が緩むのを感じる。
あの顔・・・可愛かった・・・。
だから私・・・思い切って聞いちゃおうって思ったのに。
すごくすごく勇気を出して聞こうと思ったのに。
なのに・・・なのに・・・。
そこでお腹が鳴った。
なんだそれ?
タイミング悪いにも程がある。
そのまま私は、抱えたままの頭を思いっきりブンブンと振る。
そこではたと思い直す。
思えば・・・今日は散々だった気もする。
「・・・」
まず、高須竜児の鞄に手紙を入れたと思ったら、北村君のと間違えた。
「・・・」
そして、その肝心の手紙は空っぽ。
「・・・」
挙句の果てに勘違いで襲撃。
「・・・」
とどめは核心に触れようとしたときに鳴ったお腹。
「・・・はっ!?」
そこまで考えて私は愕然とした。
考えたくも無い事実に思い至ったから。
も・・・もしかして。
もしかしてもしかしてもしかして私・・・。
「ド・・・ドジなの・・・かしら?」
口から出した言葉は、信じられないほど私に衝撃を与えた。

『1話if・13』



68 :「1話if・13」 ◆6U1bthnhy6 :2009/11/26(木) 16:06:43 ID:W/X7A3p0

「・・・なに、やってんだ?」
机に突っ伏したまま自己嫌悪に陥ってた私の耳に、不意に声が聞こえた。
驚いて顔を上げると、すぐ横に高須竜児が立っていた。
慌てて体裁を整える。
「な、なんでもないわよ!あ、あんたがあんまりにも遅いもんだから、寝ちゃおうとしてただけっ!」
「・・・ここで寝るなら、布団貸すぞ?」
「い、いらないわよ!!」
取り繕っただけの理由に、至極真面目に返されて瞬間カッとなる。
でも・・・。
「・・・ぷっ」
不意に聞こえた笑い声に、その全てが・・・消えてった。
「お前な。いくらなんでもそんな言い訳通用するわけねーだろ」
目の前で、高須竜児が楽しそうに笑っていた。
「そ、そんなの・・・」
「あーわかったわかった。とりあえず信用するから、まずは落ち着け」
・・・照れ隠しのように言おうとした言葉も遮られる。
でもなんだろう・・・全然悔しくない。
むしろ・・・。
私が呆然としているうちに、高須竜児は目の前に、トンとお皿を置いた。
そこから立ち上ってきた香り。
それが鼻腔をくすぐった瞬間、私はいきなり我に返った。
一瞬にして視線は高須竜児から目の前のお皿に。
「な・・・なにこれ?」
「高須家特製ニンニクチャーハンだ」
私の呟きに、高須竜児の得意そうな声が聞こえる。
でも今はそっちに目を向けることは出来なかった。
私の視線は、今や目の前の山盛りチャーハンに釘付けになっていたから。
見るからに美味しそうなチャーハン。
コンビニとは明らかに違うそれに、ゴクリと喉を鳴らして、恐る恐る声を出す。
「・・・あ、あの、これ・・・」
「ん?食べないのか?折角作ったのに」
その言葉が契機だった。
私は傍らに置かれたスプーンをやおら掴むと、チャーハンへと勢いよくブッ刺した。
いただきますも言わず。





69 :「1話if・13」 ◆6U1bthnhy6 :2009/11/26(木) 16:11:34 ID:W/X7A3p0

「・・・お前、ドンだけ腹減ってんだよ?」
高須竜児の、半ば呆れ気味な声が耳に届くが私の動きが止まることはなかった。
すでに山盛りだったチャーハンの、2/3は胃の底に詰められている。
それでもこのチャーハンは、まだまだ食べられるほどにおいしかった。
「だって・・・はむ・・・美味しいんだもん」
カツカツと、淀みなくスプーンを口に運ぶ合間にそれだけ答える。
「そっか。美味いか」
「んぐ・・・人の作ったもの、食べんの久しぶり・・・はむ」
「なんで?飯なら親が・・・」
なんでもないように普通に返ってきた言葉。
しかし私は、高須竜児のその言葉に、一瞬動きを止めた。
視界の隅には手を口で押さえ、しまったといった表情の高須竜児。
ああ、気付かれたか。
そういえば、コイツは事情を知ってたんだった。
「・・・わりい・・・」
「私は気にしてない。だからあんたも気にすんな」
バツの悪そうな声に内心複雑ながら、あえてつっけんどんに答える。
「今更だから」
そう言い捨てて、またチャーハンへと取り掛かる。
高須竜児の辛そうな顔がチラリと目に入るが、あえて気付かないふりをした。
そう今更なのだ。
物心ついたときから、私の家庭は既に崩壊していた。
パパもママも、お互いを罵りあうことで手一杯で、私のことなど気にもかけなかった。
だからママの手料理なんか、数えるほどしか食べたことない。
私はいらない子だったから。
必要とされてなかったから。
だから・・・どうってことない。
・・・どうってことないのに・・・。
そこまで考えて、不意に目頭が熱くなった。


70 :「1話if・13」 ◆6U1bthnhy6 :2009/11/26(木) 16:12:34 ID:W/X7A3p0

違う違う。
悲しくなんかない。
もうそんなものは、遥か昔に捨ててきた。
心の奥底に押し込んできた。
けど・・・でも・・・。
今まで封印していたものが、このチャーハンの熱で溶け出してきたような気になった。
「・・・う・・・」
いけない。駄目だ。
泣いてはいけない。
泣いたら高須竜児がまた気を使う。
でも・・・でも・・・。
「う・・・ふ・・・っ」
堪えきれず涙が零れようとしたとき・・・。
「・・・ついてるぞ」
え?
不意に高須竜児の手が伸びてきて、私の目の辺りを拭った。
「ちょ・・・」
見るといつのまにか握られていたティッシュが、私の涙を優しく拭っていた。
「・・・ったく、こんなに飯つけて」
言いながら、コシコシと私の目を擦る。
優しく、優しく。
「そ・・・そこ目だよ。そ、そんなところに・・・」
「安心しろ」
「え?」
その言葉に目を向けたら・・・視界に飛び込むのは高須竜児の笑顔。
「・・・俺はここにいるだけで、取ったりなんかしねーから」
「・・・」
「ちゃんといるから・・・落ち着いて食えよ」
そう言って笑った顔に、また涙が溢れた。

少しだけしょっぱくなったチャーハンは、それでも美味しかった。



71 : ◆6U1bthnhy6 :2009/11/26(木) 16:18:40 ID:W/X7A3p0

以上です。
リンクの貼り方、相変わらずわからないのでご容赦下さい(苦笑)

おまけw>>69のボツ展開w

「・・・ドンだけ腹減ってたんだよ?」
高須竜児の、半ば呆れ気味な声が耳に届くが私の動きが止まることはなかった。
すでに1/3は胃の底に詰められている。
それでもこのチャーハンは、まだまだ食べられるほどにおいしかった。
「・・・落ち着いて食えよ。誰もとらねーから」
どこか優しげに響くその言葉にはたと我に返る。
「・・・」
カチャン。
スプーンを皿に置きながら、私はゆっくりと正座し直した。
「・・・ん?どうした、まだ残って・・・」
困惑気味に聞いてくる高須竜児に、私はおずおずと聞いた。
「あ、あのさ・・・」
「ん?」
「こ・・・こんなにガッつくのって・・・お、女の子として恥ずかしいかな・・・?」
消えたい気分で私はそう聞いていた。
やらかした。
いくらお腹が空いていたからといってこれはない。
好きな人の前で、おいしいからって我を忘れて貪り食う女子。
それが今の私だと気付いて、思わず目頭が熱くなった。
羞恥にますます頭が下がる。
私のバカ私のバカ私の・・・!
「どっちかって言えば嬉しいかな?」
・・・え?
驚いて目を上げた先、高須竜児がはにかんだように笑っていた。
「だってそうだろ?美味いぞって作ったモン、美味しい美味しいって食べてくれてるんだぜ?」
報われるよな。
そう言ってまた笑った顔に・・・私は涙が溢れた。
それを乱暴に拭い、私も笑顔を浮かべる。
「あ、あのさ・・・残り・・・食べていい?」
「ああ勿論だ」
そう言って笑った高須竜児の顔がまぶしくて、私は無言でコクコク頷きながら残りのチャーハンを食べた。

72 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/26(木) 16:56:25 ID:dfZcXe0C
>>71
>リンクの貼り方、相変わらずわからない

携帯なんだっけ?

73 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/26(木) 18:36:12 ID:dfZcXe0C
これの続きか
http://tigerxdragon.web.fc2.com/index/SS06/369l.html

熊本の方ですか?

74 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/26(木) 20:27:38 ID:QJ6N3Afh
お帰りなさい!
待ってたよー
大河可愛いよかわいいよー


75 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/27(金) 00:28:01 ID:w4fJq4vu
>>53
久々でちょー嬉しい!穏やかな日常がいいね!

>>60
俺も続き期待しちゃうぜ!

>>63
竜児は「どーん」で大河は「でーん」だな
年季が入るとすげー怖そうだなw

>>71
竜児が男前だw
続きも期待してまっせ

名だたる面々の作品が見れて泣くほど嬉しいぜー
規制もそろそろ解除されてるっぽい?

76 : ◆fDszcniTtk :2009/11/27(金) 01:01:04 ID:6T++wxEL
>>54-57
サンキュー!

>>56
うはは。これ書いたおれキメー(w

来年寅年って聞いた瞬間にこのネタ思いついたよ。



77 : ◆fDszcniTtk :2009/11/27(金) 01:02:04 ID:6T++wxEL
>>75
ありがとう!俺ももう書けないと思ってたよ(w

78 : ◆6U1bthnhy6 :2009/11/27(金) 10:16:58 ID:U15AYgOF
>>72
そう、携帯だよ(苦笑)何回か答えたけどw
んで、なんで熊本さ?

>>74
俺?
いや違うか。俺の大河可愛くねぇ(爆)

>>75
続き・・・大分先・・・頑張る・・・orz

79 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/27(金) 12:25:25 ID:nbb+jFST
>>78
そのトリップで検索かけたらこんなスレが出てきた
トリップキーが簡単だから被ったのだろう

【日本一】熊本VIPPERちょっと来い【決定戦】
http://ex14.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1132751097/

1 名前:熊本  ◆6U1bthnhy6 [] 投稿日:2005/11/23(水) 22:04:57 ID:tCO8ieIZ0
やあ(´・ω・`)
このスレは↓の競争に参加しています。
応援夜路ピコ

○○県民ちょっと来い・・・・ってスレを
http://ex14.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1132744049/l50


頑張ろうぜ火の国

80 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/27(金) 16:45:00 ID:U15AYgOF
>>79
ブハァ(;゚▽゚)∴∵
トリ被りとかあるのかwんー・・・誤爆で一回変えてる身の上だから、これ以上は無理だねー(苦笑)まとめ人さんにまた迷惑かけることになる。
まぁそれは別人ですw

81 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/28(土) 16:18:02 ID:IlohR0bj
2日程来なかったら久々な人からいつもの人まで盛り沢山になってるw
皆さんGJ!

82 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2009/11/29(日) 04:30:18 ID:rZqKEzCr
お題 「本気」「下りる」「ド真ん中」



 十二月、小春日和の日曜午後。
 さすがに休日はクリスマス会の準備から解放され、買い物帰りの竜児と大河は公園のベンチでのんびりと。
 竜児の横にはエコバッグ。大河の腕には紙袋。
「た〜いやっき、たいやき〜……あら?どれが何だったっけ?竜児、匂いでわからない?」
「残念ながら俺は常人の百万倍の嗅覚は持ってねえ。まあ、食えばわかるだろ」
「それもそうね。それじゃはい、これ竜児の分」
 二人並んでタイヤキをぱくり。
「あ、これつぶあんだ。竜児のは?」
「カスタードだ。うん、けっこう美味いな」
「どれどれ、一口ちょうだい?」
「おう、それじゃ一口ずつ交換な」
 と、急に大河がキョロキョロと。
「大河、どうした?」
「ん、今なんか聞こえたような……あ!竜児、あれ!」
 大河が指差した先は木の枝の上、下りることが出来ないのか、みいみいと哀しげに鳴く子猫の姿が。


 竜児に肩車させて大河が助けた子猫は、今は大河の膝の上で撫でられながら喉をゴロゴロと。
「……ねえ竜児、この子飼っちゃ駄目かな?」
「いや、首輪してるし、どこかの飼い猫じゃねえのか?」
 子猫は白地に頭から背中にかけてが茶トラのブチで、その首には真っ赤な首輪がつけられていて。
「一匹であんな所にいたんだもの、きっと捨てられちゃったのよ。だから、ね?」
「迷い猫かもしれねえだろ。飼い主が捜してたらどうするんだよ」
「それじゃ、この辺に貼り紙とかして、飼い主が出てこなかったら」
「うちにはインコちゃんがいるし、そもそも犬猫の類は禁止だ。大河の家で飼うことになるぞ?」
「うん、わかってる」
「仮にも命を預かるんだ、可愛いだけじゃ済まないこともあるぞ。餌やトイレの世話に、病気や怪我をすることだってある」
「大丈夫、きちんとやってみせるわ」
「……本気みたいだな。わかった、それじゃ……」
「トラ!」
 突如かけられる声。見ればそこには涙目で息を切らせた少年が一人。
「あの、すみません、その猫……」


83 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2009/11/29(日) 04:31:33 ID:rZqKEzCr
 子猫を大事そうに抱えて帰る少年を、大河は微笑みながら見送って。
「よかったじゃねえか、捨てられたんじゃなくて」
「……うん」
 竜児は大河の頭をくしゃくしゃと撫でて。
「あの子も気をつけるって約束したし、もう飛び出して迷子になる心配もねえだろ」
「……うん」
「さ、俺達も帰ろうぜ」
 言って竜児はベンチに戻り、エコバックを手に振り返って、
「ぶふっ!」
「竜児?」
 唐突に噴き出したらしい竜児の声に大河が振り向けば、竜児はなぜだか身を捩っていて。
 どうやら必死で笑いを堪えて、でも完全には抑え込めていないらしい。
「ちょっと、どうしたのよ?」
「わ、わりい……ちょっと、ツボ、ド真ん中に入っちまった……くっく……」
「何が?」
「いや、さっきの猫さ、妙な既視感があったんだけど……くく……今、気づいちまって……
 大河、そっくり……うっくくく……」
 白い体、背中まで覆う茶トラの模様、首元には赤い首輪。
 白いコート、背中まで覆う栗色の髪、首元には赤いマフラー。
「それで名前がトラだっていうんだから、もう……くっくっく……」
 目尻に涙まで滲ませながら笑い続ける竜児。
「ほっほ〜う」
 大河の顔にも笑みが……但し、竜児とは逆に冷ややかなものが……浮かぶ。
「つまりあんたは、私の事を子猫ちゃんだとか飼い猫だとか思っちゃったってわけね……?」
 その雰囲気に、さすがに竜児の笑いも止まる。
「いや、別にそこまでは……」
「それはちょっと、さすがに黙っていられないわねえ……」
「お、おい、大河……そうだほら、今はエンジェル大河様なんだろ?サンタさんが見てるぞ?」
「安心して竜児。今日は日曜……安息日だから、きっとサンタさんもお休み中だもの」
「まま、待て、落ちつけ、話せばわかる!」
「問答無用じゃあ〜〜っ!」

84 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 09:00:46 ID:WgL+xIEA
熊本と言うと、大河が熊本の女子高に転校する話があったのを思い出した。
未完だったかもしれんが、あれも好きだったなぁ… 方言大河。

>>82
乙です!
猫を飼いたいっていう大河の気持ちが 。・゚・(ノ∀`)・゚・。
竜児は迂闊すぎw 体が持たんぞ

Yahoo!でこんなのやってるのを見つけた。
『今年あなたがイチオシの「嫁」にしたい二次元キャラクターは?』
ttp://banduke.yahoo.co.jp/secret04/index.html

順位とかどうでもいいが、アニメ、原作とも3月に終わったのに、今クールのアニメと並んで
大河が候補に入っているのが、単純に嬉しい。
大河は竜児の嫁だが、おもわずポチッとしてしまった。

85 :代理:2009/11/29(日) 10:41:26 ID:H7QvU2EN
まとめ人 ◆SRBwYxZ8yY:2009/11/29(日) 10:26:56 ID:???
まとめサイト更新しました!
勝手にリンクに1件追加しました。

       ____
     /      \
   /  _ノ  ヽ、_  \
  / o゚((●)) ((●))゚o \  ◆QHsKY7H.TY氏の「ドラとら!(仮)」のタイトルが決まらないんだお…
  |     (__人__)'    |
  \     `⌒´     /

       ____
     /      \
   /  _ノ  ヽ、_  \
  /  o゚⌒   ⌒゚o  \  いくら考えても「ドラとら!」より良いタイトルが思い浮かばないお…
  |     (__人__)    |
  \     ` ⌒´     /

       ____
     /⌒  ⌒\
   /( ●)  (●)\
  /::::::⌒(__人__)⌒::::: \   だから画像を使ってアニメのアイキャッチ風にするお!
  |     |r┬-|     |
  \      `ー'´     /


  ./ ̄ ̄\
 /ノ( _ノ  \ 
 |,'⌒ (( ●)(●)   <遊びすぎなんだよ!!!
 |     (__人__)   
 |     ` ⌒´ノ ,rっっ                  ,
/"⌒ヽ   ソ,ノ .i゙)' 'ィ´                `     ,._
      ゙ヾ ,,/ { ) 丿             ,  ゜;,/⌒    ⌒u:::\ 。
 ィ≒    `\ /'ニ7´     スパァァ────/(◯.;); :::::、;(;.◯));:'::::ヽ‐─────‐‐ ン
/^ヾ      \ ./              ゚ ;i`、 ⌒:(__人__) ⌒:::::;;,´:::|
   }      __\___ ___   ____´_;;{   ;` j|r┬-|:;〉::,,゚, 。;;:;;|
   )ンィ⌒ ̄" ̄ ̄ ̄  ̄ ̄  ̄ ̄ ̄  ̄ ̄  ̄ ̄ニ≡┴‐ー-,==ー--ァ人て゜ ゚;:,::|: ゜ .
   ノ/             ≡''        ;;;;(( 三iiii_iiiiiii)))))て,,;;/  。  ;
   ヾ         _____=≒=ー────;‐‐ ̄/      |Y‐-<` `




-----------------
うおお、まだ規制が解除されない…
●を買うか…
狐ぽってなんだろう…

86 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 10:49:54 ID:H7QvU2EN
>>83
乙!
大河可愛いなぁ
竜児に合掌w

>>84
こんなのあるんだ……
竜児に代わって投票してきた

>>85
神様仏様まとめ様!
いつもありがとうございます。
アイキャッチの出来に感動した

87 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 23:29:48 ID:65n0qPaX
「高須君って一時期、下級生によくカツアゲされてたよね?」
平和に弁当を食べている昼休み。大河の隣に陣取った櫛枝がとんでもないことを言い出した。
「みのりん、それ本当!? ププッ……竜児ってば情けないわねぇ」
必死に笑いを堪えつつ、箸で竜児をさす大河。マズイマズイ、このままでは大河のおかずにされてしまう。
いや、そうじゃない。
「待て待て、櫛枝。俺には全く身に覚えがないぞ。そして大河、箸で人をさしてはいけません!」
「えー? だって見たぜよ? 高須君が下級生3人に囲まれてさー」
立ち上がった櫛枝によるワンマン寸劇が始まった。

『オウオウ、ワレ! さっさと金ださんとツラ貸してもらうことになんぜぇ?』
両手をポケットに突っ込み、がに股で大げさな歩き方。まさに80年代を再現する櫛枝。
『すいません、コレで全部です!』
素早く場所を入れ替え、両手でもって何かを差し出す櫛枝。
『あんちゃんよォ、嘘言っちゃあ、い・け・な・い・なぁ? ちょっとジャンプしてみっかぁ?』
再び80年代にひとっ飛び。きっとギンバエがツッパリハイスクールしてた頃に違いない。
その場で跳ねるモーションをすると、小さい金属同士がぶつかる音が聞こえる。
『オウ、あんちゃん。コレはなんだろうなぁ?』
『コレだけは勘弁してください! 大河のためにトンカツ用の豚肉を買いに行かなきゃならないんです!』 
場所を入れ替え、チワワ目でもって懇願する櫛枝。

「ひっ! やめっ! しっ死んじゃう! プククク!」
息も絶え絶えになりながら腹を抱えて絶賛爆笑中の大河。
空いた手で叩かれ続ける机の音のせいもあって周囲の視線までも集まっている。
「まー、若干の脚色はあるどね。けどけど、高須君が下級生に頭下げて財布渡してたのは本当なんだぜ!」
「あ、いや、だから、それはな……」
「それは高須が財布を返してる場面だな!」
声のした方を見る3人。そこには丁度お手洗いから帰還した北村がいた。
竜児の凶眼がカッと光を放つ。いつも肝心な所でお手洗いに行ってしまう北村を呪おうとしてるわけではない。
助け船に乗って荒波を爆走してくるその勇姿に感激しているのだ。
「え? 財布を返すってどういうこと?」
席についた北村は弁当箱のフタを開けながら櫛枝の問に答え始めた。
「皆も知っての通り、ヤンキー高須の名を知らない者はこの学校にいない」
開口一番、知りたくもない情報を突きつけられる竜児。思わず「ちょっと待て」と話を遮ってしまう。
「全校の隅々まで知れ渡る程なのか、俺は」
「残念ながら、な」
苦笑しながら答えるその姿に竜児は軽く頭を抱えた。
この学校には数百人もいるのだから、自分のことなぞカケラも知らないヤツが何人かはいるはずだと思っていた。
だが、生徒会副会長である北村が言うのだ。
あの苦笑いを見る限り、やはり事実だろう。そう思うと弁当を食べる箸の動きも遅くなる。


88 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/29(日) 23:31:49 ID:65n0qPaX
「で、実はヤンキーじゃないってコトを知らない生徒は意外に多い」
「ふむふむ」
話を続ける北村に頷く櫛枝。
2-Cではそんなこと最初から周知だが、最近やっと学年にも「高須はヤンキーじゃない」というコトが広がってきている。
それでもまだ全校的には十分と言えず、他学年、特に新入生は竜児と目を合わせない様に必死になっている。
「だから、何かの拍子にぶつかったりしてしまうと、ヤンキー高須しか知らない生徒はなんとか穏便に済ませようと、財布を高須に捧げるんだ」
「へ〜。歩く賽銭箱ってとこかね?」
「いや、そうじゃねぇだろ……」
「どっちかというと、歩く募金箱だな。っでまぁ、困った高須はそれを頑張ってその場で返してたってわけだ」
竜児は思う。うちのソフトボール部は大丈夫なのかと。両部長がそれぞれ出した例えは、何がどう違うのか全くわからない。
だが、当の二人は何か納得した様子でそのまま話を続けているのだ。語弊はあるが、こんなんで後輩達は真っ当に育つのか少し不安だ。
「竜児ってばホントに生真面目ね。くれるって言うんだから貰っておけばいいのに」
「それはマズイだろ。お小遣いとはいえ、1週間貰い続けてたら高級和牛ステーキ肉が買えるくらいになっちまう」
竜児は気づくのが遅すぎた。今まさに地雷の上に幅跳びで着地してしまったことに。
「高級……和牛……なんてMOTTAINAIことをしてんのよあんた!」
「ちょ、待て! 俺は人道的に正しいことをしてるんだぞ!?」
ユラリと立ち上がり、徐々に間を詰めていく大河。竜児も席を立ち、少しずつ後退していく。
「ご主人様に逆らおうってのかい?」
「違う! 間違ってるのはお前だ大河! 落ち着け! 話し合おう!」
逃げる竜児に追う大河。二人は教室を飛び出して追いかけっこを始めた。

「はっはっはっ! あの二人は本当に仲がいいな!」
快活に笑う北村。それに反してあきれ顔の2-Cの面々。
毎度毎度校舎中を駆け回る追いかけっこに発展する二人だが、結局休み時間が終わる頃には寄り添って戻ってくるのだ。
「ごめんね竜児」「いやいや、俺こそごめんな大河」そんな言葉を交わしながらピッタリ密着して、もちろん周囲なんぞ見えてはいない。
毎回どうやって仲直りしているのかは大橋高校七不思議の一つだが、週5日毎日そんな光景を見せつけられればウンザリするものである。
しかし、そんなバカップルの痴話げんかを見て今日も平和を噛みしめる2-Cなのだった。

おわり

89 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/30(月) 01:04:14 ID:oPHGxgxE
おつ!
七不思議の中身も別口で書いてくれw

90 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/30(月) 19:31:40 ID:FBOGEQXc
>>88
GJ!
2-Cの一員になって見守りたくなるw
ウンザリどころかニヤニヤ

>>85
いつもありがとうございます!
ロゴすごいw

91 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/30(月) 23:54:36 ID:5qlFQEIC
>>85
いつも乙です。

>>88
日常のほのぼの感がいいですなあ

さて、以下に前スレからの続きとなります「孤独な月ウサギ・・・」を投下します。
10レスちょっと使用します。

92 :孤独な月ウサギは太陽の夢を見るか?6 ◆x6jzI2BeLw :2009/11/30(月) 23:56:49 ID:5qlFQEIC

「・・・大河」
「ん・・・何?」
体育座りをした大河はトロンとした眠そうな声で答える。
「俺、そろそろ、帰るな」
「まだいいよ、居て」
「もう、11時過ぎたぞ」
ベランダから戻った後に団子などを食べたりしていたふたり。
その後は高須家の居間と変わらないグダグダ状態のまま、テレビのロードショーを見ていたのだが、その途中から大河が何度もあくびをしているのに竜児は気がついた。
時おり、眠そうに上体を揺らし、それでも眠るまいと懸命な努力を続けていた大河。
だから竜児はちょうど見ていた映画が終わったのを潮に帰ると言い出したのだ。
「まだ、11時でしょ」
「でもなあ相当、眠そうだぞ・・・おまえ」
「眠くない・・・まだ寝ない・・・もう少し・・・居て」
立ち上がろうとする竜児の着ている服の裾を掴んで大河は離さない。
仕方無しに竜児は再び、腰を下ろす。
「じゃ、あと五分な」
「五分じゃ足らない」
「じゃ、十分」
「・・・もっと」
おねだりする大河。
「もっとって・・・泊まっていくわけにはいかねえだろ」
「いいよ。泊まってって。私、気にしない」
「な・・・馬鹿なこと言うなよ。俺は気にする」
恐いことを平然と言う大河に少し焦る竜児。
「いいじゃない・・・竜児、呼んだら来てくれたんだし」
「呼んだらって・・・確かに今日は大河の家に来たけどよ」
「ううん、今日じゃない・・・ずっと前」
「ずっと前?」
竜児は聞き返した。
「うん、初めて竜児の家に押し掛けた日」
「ああ、あの日か・・・それがどうした?」
「私、朝早く呼んだでしょ・・・竜児のこと」
「ああ、そう言えばな」
・・・殴り込みの後だよな。
「・・・来ないって・・・思ってた」
・・・え?
大河の続く台詞に竜児は耳を疑った。
「だって、そうでしょ・・・あんなに朝早く、来いとか言われて・・・普通だったら怒って当たり前・・・九十九%来ないって思ってた」
眠そうな感じを残した大河の口調は切れ切れに続く。
「だから、また寝ちゃったんだ。あの時の私・・・・・・でも、ベッドの中で寝てたら、良い匂いがして・・・ものすごく懐かしい感じの匂いだった」
・・・大河の家で朝飯作ってたんだよな・・・あの時の俺。
「ああ、そうだって思い出した・・・・・・起きるとママが居て『おはよう、大河、朝ごはんよ』って・・・・・・私、いい夢見てるなって思ってたんだ」
・・・だいたい、用意が出来たところで・・・タイミング良く大河が寝室から出て来たんだ。
「夢が続いてると思った。テーブルに並ぶ朝ごはん・・・でも、おいしそうな匂いがして、夢じゃないってわかった」
そして、目が覚めたらそこに竜児が居たの・・・そう最後に大河は付け加えた。


93 :孤独な月ウサギは太陽の夢を見るか?6 ◆x6jzI2BeLw :2009/11/30(月) 23:58:06 ID:5qlFQEIC

「その時からよ・・・あんたのこと、竜児のことが意識から離れなくなったの」
そのままふぁ〜と大口を開けてあくびをする大河。
「入れ間違えたラブレター、取り戻しに行っただけなのに」
納得がいかないと言う口調で大河は続ける。
「あんたの家からここへ戻って来たら急に落ち着かなくなったの・・・なんでか分かんなかった・・・その時は」
「今は分かるのかよ?」
竜児の問いに大河は『うん』と答る。
「結局、うとうとしただけで朝早くに目が覚めちゃったんだ・・・目が覚めて・・・急に竜児の声が聞きたくなって、電話しちゃった」
朝早くから迷惑だったでしょうというニュアンスを含ませ、大河は言葉を紡ぎ出す。
「何回か迷った・・・まだメモリーにも入れてなかったから、控えておいた電話番号・・・最後の1個がなかなか押せなかった」
その時の迷いを表すように大河の表情は揺れ動く。
「呼んでも竜児が来てくれなかったら・・・もしかしたら電話にさえ出てくれないかもって、いろいろ考えちゃった」
うつむき加減に、大河は小さく息を吐く。
「電話が繋がって・・・」
そこで大河はくすっと小さく笑った。
「何がおかしいんだよ?」
「ん・・・本当は『お願い、来て欲しい』みたいに頼むつもりだったの・・・でも、竜児も知っての通り、いつもの調子でやっちゃった」
その時の大河の見幕を思い出して苦笑する竜児。
「普通の奴なら、二度と電話に出ねえと思うぞ、あれ」
「本当よね・・・終わったかなって思った」
「終わったって?」
「竜児とのことよ。何でもするって変な約束させたけど口約束だったし、竜児がそれを守らなければいけない義務なんてなかったから」
「俺はそんな薄情じゃねえ」
「うん。だけど、あの時は竜児のこと良く知らなかったから・・・電話が切れた後、すごく後悔した。もう二度と口も聞いてくれなくなるんじゃないかって」
不安な記憶を思い出したのか、大河はやや感情を高ぶらせ語尾がかすかに震えた。
「何となくわかったの・・・私、竜児と居ると気持ちが和らぐんだって・・・あんな気持ちになったの初めてだから」
軽い深呼吸をして大河は竜児を見つめる。
「俺は、何もしてねえ」
「ううん、いろいろしてくれた。勝手に押し掛けて暴れて倒れたのに、竜児ってばチャーハンまで作って食べさせてくれるんだもん。おまけに暴露話まで始めるし」
クスクスと小さく笑い始めた大河はとうとう大笑い。
笑い過ぎてこぼれた涙を指先で拭いながら、竜児へ優しい視線を向ける大河。
そんな大河からまぶしそうに視線を逸らし気味にして竜児は言い訳がましい。
「あれは・・・まあ、成り行きと言うやつだ。なんか大河、泣きそうだったし」
泣いてないわよとそこだけ否定する大河。
「変よね。わずかな時間、一緒に居ただけなのに・・・竜児が側に居ないと落ち着かなくなってた」
ホント、不思議と大河は言う。
「だから、来ないって思ってた竜児が来てくれて、嬉しかったんだ、ものすごく・・・思わず駄犬だなんて言っちゃったけど」
・・・あんたが、竜児が居てくれて良かった・・・大河は心の底からそう思っていると心情を竜児に告げた。


94 :孤独な月ウサギは太陽の夢を見るか?6 ◆x6jzI2BeLw :2009/11/30(月) 23:59:44 ID:5qlFQEIC

「だから、今夜は竜児と一緒に居たい」
ひどく真面目な顔で大河は竜児に切望する。
「いつも、わがままばっかり言って、竜児を困らせてるって分かってるけど・・・今夜は独りで居たくない」
上目遣いに竜児を見る大河。
「・・・竜児が帰ったら、私、この広い家で独りぼっちになる・・・哀しい月のうさぎだよ、それじゃ」
さっきまでしていたお月見で、出て来た話題のうさぎに大河は自分をなぞらえる。
「うさぎを落ちこぼれって言ったけど、私もおちこぼれだね」
「大河が・・・か?」
「うん」
自嘲気味に大河は笑う。
「だって・・・私、竜児に何もしてあげられない・・・うさぎとおんなじ」
散々、竜児に迷惑ばかり掛けて、今日だって私のために怪我までして・・・せめて、ご馳走しようと思ったのに上手く行かないし、と大河は独り言みたいに理由を説明する。
「それなのに、また私、竜児を困らせてる」
うさぎ以下だねと大河はポツリと付け加えた。
「・・・帰っていいよ、竜児」
顔を伏せたまま、大河は竜児に背を向ける。
「ちょっとだけ、寂しいのを我慢すればいいんだから・・・ベッドのお布団・・・竜児がこの間、干してくれたから暖かいと思うんだ・・・だから、月みたいに寒くないよ、きっと」


95 :孤独な月ウサギは太陽の夢を見るか?6 ◆x6jzI2BeLw :2009/12/01(火) 00:00:58 ID:i7IwKk5W

普段見せたこともない大河の自然すぎる気持ちの発露が竜児を捉えて離さない。
このまま、大河を置いていけるか?
この問いに竜児はスーパーコンピューターよりも素早く回答を弾き出す。
「大河」
「ん」
竜児の呼びかけに振り向く大河。
「それはつまり・・・単に一緒に居たいのか・・・それとも・・・」
大河の真意を測りかね、竜児は語尾を濁す。
「どっちでも・・・竜児の思っている方でいいよ、私」
謎めいた表情で大河は思わせぶりな態度。
見慣れた大河の顔がいつもの大河に見えなくて、思わず竜児は大河を凝視する。
竜児の強い視線にたじろぐ事もなく、大河は受け止める。
・・・本気なのか?大河。
・・・本気よ。竜児。
・・・いいのか?
・・・いいよ。
声にならない、視線だけの会話が何度となく行き交う。
先に視線を外したのは竜児だった。
一瞬、不安そうな表情を見せ、大河は竜児の目線を追い、竜児の方へ体を向け、手をついて前屈みになる。
竜児は脇を向いたまま、そっと腕を伸ばし床についていた大河の甲へ自分の手を重ねた。
「竜児」
二度三度と竜児は掴んだ大河の手を優しく握る。
「・・・りゅう・・・じぃ」
針が振り切れたような大河の声が竜児の耳にこだまする。
その都度、大河の手を握り締める力を込め続ける竜児。
やがて、竜児の手をするりと抜けた大河の手が竜児の手を握り返す。
「大河」
「ん、竜児」
安心し切って何もかもさらけ出すような大河の声。
そんな大河の手を握って竜児は手前へ引き寄せる。
「あっ」
竜児は大河が反射的に引っ込めようとした手を離すと、その華奢な肩に手を伸ばし、抱き寄せた。
「あ、わわ・・・竜児」
バランスを崩し、仰向けのまま竜児の方へ倒れこむ大河。
大河の長い髪がフローリングの床に流れとなって落下する。
大河は竜児の膝の上に寝転ぶような姿勢になり、上半身を竜児の腕の中に委ねた。
床に座る竜児の腕に寝転んだ状態で抱えられた大河。
はたから見れば、まるで母親が幼子をあやしているかの様。
大河は真下から竜児を見上げる格好。
「竜児」
そして真上から大河を見下ろす格好の竜児。
「大河」
ふたりを隔てるのは30センチの物差しさえ長すぎる空間。
「ずっと、こうなるのを待ってた様な気がするの・・・ねえ、竜児」
大河は竜児を呼ぶとそのまま口を閉ざす。
少し潤んだような大河の目が竜児を見つめて離さない。
竜児は大河の瞳に映る自分を見つけ、大河は竜児の瞳の中心に自分を映す。
言葉も会話もなく・・・点けっ放しになったテレビの画面だけがふたりの前にあった。
騒がしいCMが終わると画面が暗くなり、大河の表情に陰を作る。
テレビからは静かなBGMだけが流れ始めた。
もう後は自然な流れがあるだけだった。
大河がまばたきを一回する。
まるでそれが合図だったかのように、竜児と大河は引き合うようにゆっくり近付く。
お互いの瞳に映る自画像がだんだん大きくなり、残す距離がミリ単位に切り替わる間際、大河はそっと目を閉じた。


96 :孤独な月ウサギは太陽の夢を見るか?6 ◆x6jzI2BeLw :2009/12/01(火) 00:02:21 ID:5qlFQEIC

「くすぐったい・・・竜児」
目を細め、大河は心地良さ気にしている。
「やめるか?」
「ううん・・・続けて」
竜児は手を止めることなく、優しく大河の髪を撫で続ける。
その竜児の手が時おり、大河の首筋や頬に触れ、そのたびに大河はピクリと体を動かす。
寄りそって座り、竜児の肩へ頭を乗せ、大河は全てを竜児に任せ切っていた。
「まさか、大河がひとりで暮らしてるとは思わなかった」
手を動かしながら竜児は独り言のように言う。
「すごかったでしょ」
竜児が来る前の状態を思い出し、大河はくつくつと喉だけで笑う。
「ああ、強烈だったぜ・・・よくあんな場所で生活できてたよな、大河」
「お化け屋敷みたいに言わないでよ、少しは汚かったけど」
ごにょごにょと大河は言う。
「少しなんてもんじゃねえ、あれは」
反省しろと訓戒を大河に授ける竜児。
「過ぎたことでしょ・・・後ろばかり振り返ってるとモテないよ、竜児」
「いいんだよ、そんなの・・・大河さえ居てくれれば」
「は、恥ずかしくなるようなこと急に言わないで」
心の準備が出来てないでしょと大河は顔を赤らめ竜児に抗議する。
「だけどさ・・・大河」
「何?」
「ひとり暮らしの家に俺を呼んで、何にかされるとか思わなかったのかよ?」
「全然」
あっけらかんと大河は答える。
「・・・やっぱ、犬か、俺は」
ポーズだけ落ち込む姿勢を見せ、竜児はうな垂れる。
「わ、私だって誰でも家に入れようなんて思わない」
竜児の様子に慌てたように大河は弁明を始める。
「竜児だったら・・・大丈夫だって、そう思えたから」
「答えになってないな。俺だって豹変するかも知れねえぜ」
悪巧みの匂いを携えて竜児は大河ににやりとした。
「・・・それでも、大丈夫だって、信じてたから、私」
「そうかな」
言い終えるや、竜児は大河を抱え上げ、立ち上がる。
「え?ちょ、ちょっと、竜児」
お姫様抱っこをされて大河はうろたえる。
足をじたばたさせ、竜児の腕の中で暴れる大河。
「暴れると落ちるぞ」
崩れた姿勢を修正すべく、竜児は大河を抱え直した。
「軽いな、大河」
大河はあきらめたのか、楽な体勢を取ろうと竜児の首へ手を回す。
「まったく、あれだけ食べてこの体重・・・どうなってるんだろうな、大河のお腹は?」
「首絞めてもいい?竜児」
にっこり笑って首へ回した両手に力を込め、絞殺の準備段階に入る大河。
「・・・そんな表情もいいな」
大河が見せる肉食獣にも似た怜悧な表情。
氷の微笑みと言ってもいい・・・大河をよく知らない奴がこの表情を前にしたら慄くだろうなと竜児は思わざるを得ない。
「・・・へ?」
思いもかけない竜児の反応に大河は一瞬にして顔の表情を間の抜けたものと入れ替える。
「あ、あんた、な、なに言ってるの」
驚愕の余り、どもる大河。
「言ったまんまだ。何なら言い直そうか?」
「いい・・・調子狂った」
少し赤らんだ名残が浮かぶ大河の顔に隠せない笑み。
竜児の腕の中に抱きかかえられて大河はゆりかご中にでもいるかのようだった。


97 :孤独な月ウサギは太陽の夢を見るか?6 ◆x6jzI2BeLw :2009/12/01(火) 00:03:33 ID:i7IwKk5W

ベッドに横たわる大河を上から見下ろす竜児。
大河は身じろぎもしないでただ、竜児を見ている。
これから、何をされても驚かないよ、まるでそんな風に言っているみたいだった。
髪の先から足の爪先まで、大河の全てが愛しく感じられて、竜児は頭がくらくらする思いを味わっていた。
別段、大河は膝を立ててるとか、スカートのすそが少し捲れてるとか、胸元が乱れてるとか、そんな状態でいるわけじゃない。
いつもと変わらない装飾過剰のワンピ姿でいるだけで、そんなのは高須家の居間でさんざん見慣れた姿。
それなのに・・・と竜児は思う。
145センチに少し足らない小柄な体が光で満ち溢れているんじゃないかと言う位、竜児はまぶしくて仕方がない。
ついさっき、そんなつもりじゃないにしろ、安全パイ的な発言を大河からされて、思わず竜児は大河を抱きかかえて寝室へ連れ込んでしまった。
勢いだと言えばそれまでだが、竜児とてこれ以上、大河に何かをするつもりはない。
大河とのあれだって・・・口元にわずかに残る感触が、あったことの事実を告げている。
なんか、自然にそうなってたんだと竜児は振り返る。
全然、後悔はしてないしむしろ大河と気持ちが通じ合えて嬉しいと言う気持ちの方が大きい。
下を見た竜児は真新しいシーツの上に身を置いた大河と目線が合う。
目元を和らげ、竜児を優しい視線で見つめ直す大河。
竜児は鼓動が少しだけ早くなっていくのを止められない。
もし、竜児がさっきのことより踏み込んだものを大河に求めたならば、大河はどう答えるだろう。
それを判断できるほど竜児は多くの経験をしていない・・・と言うより皆無と言った方が正しい。
・・・拒ない、そう断言できるわけじゃないけど、そんな気がすると竜児は大河の気持ちを忖度した。
「た、大河」
少し上滑りする竜児の声。
「何?竜児・・・って、あんた顔が恐い」
「うるせえ、もともとだ、ほっとけ」
「で、何?」
そっぽを向く竜児に向かって笑いながら大河は続きを促す。
「そ、その、なんだ・・・大河は・・・いいのか?」
目的語を省いて問い掛ける竜児。
「さっきも言ったでしょ・・・竜児の思ってる通りでいいって」
「俺がどんなにすごいことを考えていてもか?」
「竜児とならね」
万事承知の上と言い切るように大河は覚悟を見せた。


98 :孤独な月ウサギは太陽の夢を見るか?6 ◆x6jzI2BeLw :2009/12/01(火) 00:04:38 ID:i7IwKk5W

そのまま竜児が内から突き上げるような衝動に後押しされ、大河に手を伸ばし掛けた瞬間、リビングから聞こえた何かが落ちた物音。
竜児と大河は顔を見合わせ動きを止める。
「何?」
「あ、俺、見てくる」
ドキドキする鼓動を抱えたまま竜児はリビングへ足を踏み入れる。
リビングを見渡した竜児は音の発生源をすぐに特定した。
・・・あ〜あ、乱暴に置くから。
ひな壇の下に転がるひな人形が一体。
大河が無造作に並べた中のひとつが不安定さに耐え切れず落下していた。
竜児は人形を拾い上げ、異常がないかどうかを調べる。
・・・大丈夫そうだな。
問題がないことを確認して、人形を元の場所へ戻そうとして竜児は気がついた。
・・・川嶋人形じゃねえか。
三人官女を竜児が2−Cの美少女三人組みに例えたことから大河の逆鱗に触れ、哀れにも最下段へ格下げになった女官の姿をした人形たち。
ちょううど真ん中の人形が落下していたのだ。
急に竜児の脳裏に川嶋亜美の声が再生された。
・・・ふうん、いいんだ、高須君は。
・・・何がだよ?
・・・みのりちゃんは?
竜児が手にするひな人形の顔が意地の悪い笑みを浮かべた川嶋亜美と重複する。

「ふう」
竜児は息を吐くとひな人形を元の場所へ置いた。
「今度は落ちんなよ、川嶋」
人形の額に軽くデコピンを浴びせながら、竜児はささやく。

寝室へ戻る竜児の心拍数は普段のそれと変わらなくなっていた。



99 :孤独な月ウサギは太陽の夢を見るか?6 ◆x6jzI2BeLw :2009/12/01(火) 00:06:19 ID:5qlFQEIC

「何だったの?」
出て行った時と同じ姿勢で待っていた大河に竜児は状況を説明する。
「ああ、ひな人形が一体、落ちてた」
「首は大丈夫だった?」
「どこも傷ついちゃいねえ、安心していいぞ」
「そ、なら良かった」
安心したように微笑む大河に向かって竜児は言い放つ。
「さ、寝るぞ、大河」
その台詞に大河が目を丸くする。
「あ、あんたねえ・・・もう少しムードと言うか・・・その考えてよ」
「ん、ムードってなんだ?」
「これだから竜児は・・・ストレートに言わないでぼかすとかいろいろあるでしょ」
「他に言い様がねえだろ・・・睡眠をとるのに」
「・・・へ?」
どう言う事と大河は疑問符を点滅させる。
「文字通り、そのまんまだよ・・・大河はここで寝る。俺はおまえが寝るまで側に居てやる」
出来うる限り竜児は明るく乾いた調子で大河に告げた。
「早すぎるんだよな・・・やっぱ」
「・・・そんなの・・・関係ないでしょ・・・だって竜児は」
やるせない口調で大河は竜児を見据える。
「それじゃ・・・私・・・竜児に何もしてあげられない・・・そんなの・・・・・・」
嫌だと繰り返す大河の口へ竜児は人差し指を当て、大河の台詞を封じる。
「俺だって、大河のこと嫌いじゃない・・・さっきまでは本気で大河と・・・って思ってた」
「だったら」
今からでも遅くないと大河は続行することを求めた。
竜児は首を小さく振りながら、決意が変わらないことを大河へ伝える。
「・・・まだ、自信が持てねえんだ・・・大河とそんな風になるのに・・・だから、もう少し待ってくれ」
自分が嫌われてるとか、魅力が足らないからだとかそんな理由で竜児が何もして来ないわけじゃないと知って大河の気持ちは幾らか和らいだ。
「・・・竜児が、そう言うなら・・・やぶさかじゃないわ」
仕方ないわねと言う感じで大河は竜児の言い分を飲んだ。
「じゃ、着替えろよ・・・俺は向こうで待ってる」
「あ、待って、竜児」
くるりと踵を返して立ち去ろうとする竜児を大河は呼び止める。
「どうした?」
「んふう」
楽しい悪戯を思いついた子供みたいな顔をして大河は竜児にある事を要求した。





「竜児」
「何だよ」
「手、震えてる」
「し、仕方ねえだろ・・・初めてなんだから・・・そういう大河こそ大丈夫かよ」
「私は平気」
そう言う割りに大河の指先がピクピクしているのを竜児は見逃さなかった。
「じゃ、外すぞ」
「うん」
竜児は大河の真正面に立ち、向かいに立つ大河のワンピースのボタンへ手を掛ける。
さっき、大河が要求したこと。それは・・・「着替えさせて、パジャマに」だった。
最初断った竜児だったが、それくらい言うことを聞いてくれてもいいでしょとしつこく言われてとうとう竜児も折れた。


100 :孤独な月ウサギは太陽の夢を見るか?6 ◆x6jzI2BeLw :2009/12/01(火) 00:07:37 ID:i7IwKk5W

ボタンがひとつ外れ、ふたつ外れ・・・嫌でも大河が着ていたワンピースの下にあるインナーが見えて来る。
大河はといえば、顔を真っ赤にして竜児を見ている。
ボタンを外す、竜児も同様に顔を紅潮させていた。
やがてストンという感じでワンピースは万有引力の法則に従って床に落下する。
さすがにかなり恥ずかしいのか大河は竜児を見れず、顔を横へ向ける。
「・・・貧弱でしょ」
ぽつんと大河は言う。
体のラインを隠していた服が消え失せ、肌の上をわずかに覆う薄い布だけをまとった姿で大河は竜児の前に立っていた。
「・・・んなこと・・・ねえぜ・・・って言うか、俺まともに見れねえ」
まぶしい光を避けるように竜児は視線を大河から逸らす。
「しっかり、見てよ!」
羞恥と怒りとがない交ぜになった真っ赤な顔で大河は竜児に見ることを求める。
「お、おう」
恐る恐ると言った感じで竜児は改めて大河をまともに視界に収めた。
白を基調としたワンピ並みに装飾が目立つそれは大河を別の大河に変身させる。
洗濯物として見ることはあっても、それを身にまとった姿で見るのは初めてと言っていい竜児。
チラリと見えてしまったものを見たことはあったとしても、ここまであからさまな物は見たことがない。
いつか見た水着姿の時以上の破壊力を持った大波が竜児を襲う。
竜児はすとんと床に座り込んでしまった。
「・・・どう?」
手足の先まで顔の紅潮が伝わったのか淡いピンク色の花が咲いているかのような大河。
体育の着替えでクラスメートの同じ様な姿を見ることがあるけど、全然、自分は大人っぽくないと大河は言う。
「それで、つい隠れるみたいにして着替えちゃうんだ・・・だから、いざって時に・・・こんなの見られて・・・竜児・・・がっかりしないかなって」
事前の予行演習のつもりでこんな真似をしたと大河は実行動機を打ち明ける。
大河の胸が平均と比べて薄いって言うのは竜児とてとっくに承知している事実。
だから今さら驚きもしないし、がっかりもしない。
ただ、そんなことをストレートに言えば、超大型の台風を呼び寄せることになるのは自明の理。
「・・・正直、俺にもよくはわかんねえ。だけど、これだけは言える・・・・・・とっても、きれいだぜって」
「・・・本当?」
疑わしそうな表情で大河は念を押す。
「ああ、俺の保証じゃ不足だろうけどな」
竜児にここまで言い切られて大河も納得したのか、嬉しそうに笑みを浮かべた。
「良かった・・・竜児」
そのまま床に座り込む竜児の向かって飛びつこうとする大河。
「わあ、待て大河!」
大河にそんな姿で抱きつかれたら、竜児とてこれ以上、平静さを保ち続ける自信はない。
さっき、あんなことを言ったばかりなのに今さら撤回と言うのもみっともなく、大河の接近を拒んだ。
「え?何?」
途中で停止した大河に竜児は言い放つ。
「パジャマ、着ろ」
ようやく大河も己の格好を認識し、慌てたように言う。
「は、早く着せなさいよ」
「お、おう」
反射的に竜児は大河のために出して来たパジャマを手にする。
上下に分かれたセパレートタイプのパジャマ。
ズボンの側を手に竜児は大河の足元にしゃがみ込み、大河に片足を上げるように要求した。
「・・・ん」
言われるままに大河は片足を床から離し、軽く宙に浮かせる。
竜児は素早くパシャマを大河の足へ通すと、腰へ向かって引き上げた。
否応もなく目の前に来る大河のそれ。
・・・今日は3回目か、見るの。
意外と自分は冷静だなと思いかけていた竜児だったが、鼻腔をくすぐる大河のアイデンティティとも言うべき香りにめまいを感じた。
・・・やべ。
麻薬のような香りにともすれば流されそうになる自分を抑えて、竜児は最大戦速で大河のパジャマの着付けを終えた。


101 :孤独な月ウサギは太陽の夢を見るか?6 ◆x6jzI2BeLw :2009/12/01(火) 00:08:58 ID:i7IwKk5W

ようやく寝かしつけた大河を見ながら、竜児は自分が三ヶ月くらい老け込んだような錯覚に捕らわれていた。
すっかり振り回された気はするが、それでも竜児の気分は高揚している。
変な互恵関係で始まった大河との関係がこんな形で進んでいくなんて思っていなかっただけに、枕に頭を乗せ竜児を見つめる大河が竜児には限りなく大切な物に思えた。
そのまま掛け布団を掛けた大河の側のベッドサイドに腰を下ろし、竜児は約束どおり大河を見守る。

「・・・竜児?」
「なんだよ・・・眠れないのか?」
「うん・・・ドキドキが止まらない」
「深呼吸しろ」
「そんなんじゃダメかも・・・ね、触ってみて」
掛け布団の中から伸びた大河の手が竜児の手を導く。
「・・・おい」
止めるまもなく、竜児の手は大河の胸の上に置かれる。
「・・・ね、トクン、トクンって言ってる」
パジャマ越しとはいえ、竜児の手のひらに伝わる柔らかな感触。
指先を通して竜児に伝わる大河の生の証。
「ああ・・・伝わるぜ・・・・・・お腹すいたって」
「馬鹿、竜児」
すねたみたいに大河は竜児の手を離した。
竜児は思わず茶化してしまったが、小さな感動を覚えていた。
逢坂大河という存在と本質的に触れ合えた様な気がしたからだ。
大河がここにいる・・・そんな確たる証拠に出会えた、そんな気分になる竜児。

少しだけぶすっとしていた大河だったが、すぐにくすっと笑いだす。
「思い出し笑いか?」
「うん」
「何がおかしかったんだよ?」
「ん・・・あのね・・・さっき、竜児と・・・したでしょ」
恥ずかしいのかカタカナ2文字、英語で4文字の名詞を省いて大河は言う。
「おう、それがどうした?」
「竜児と私って・・・結構、背の高さが違うじゃない」
「そうだな・・・何センチあるんだろ」
「私の目線ってちょうど竜児の胸の辺りなの」
「で?」
「もし、竜児とさっきみたいなことになったら・・・どれだけ背伸びすればいいのかなって考えたことあるんだ、私」
その時は竜児がしゃがんでくれるだろけど大変そうだなって思ってた・・・届かなかったらどうしようって・・・そう言って大河は笑った。

しばらく話し込んでいた大河だが、やがて眠気が訪れたのかまぶたがトロンとし始める。
「・・・竜児・・・」
「おう」
「・・・今日くらい・・・生まれて来て良かったって思えた日・・・ないよ・・・竜児」
「ああ」
「・・・ありがとう・・・・・・」



102 :孤独な月ウサギは太陽の夢を見るか?6 ◆x6jzI2BeLw :2009/12/01(火) 00:10:22 ID:i7IwKk5W

大河の目は完全に閉じ、規則正しい寝息が竜児の耳に届く。
大河の寝顔はとても穏やかで、いい夢が見られそうだった。
部屋の照明を完全に落とし、その後で竜児はしばらく大河の寝顔を眺めていた。
やがて、寝返りを打ち肩が出てしまった大河の掛け布団を竜児は直してやり、立ち上がった。
「・・・おやすみ、大河」
足音を忍ばせて竜児は寝室を後にする。
「・・・竜児」
ドアを閉めかけた時、名前を呼ばれた気がして竜児は振り返る。
しかし、そこには静かなベッドがあるだけだった。
・・・寝言か。
「・・・朝ごはん・・・まだ」
夢の中でも食い気かよと竜児は心の中で突っ込みを入れる。
でも、俺が出てるんだよな、大河の夢。
・・・いい役割を振ってくれよ、たまにはな。
声に出さないでそれだけ告げると、竜児はゆっくりドアを閉めた。

リビングに飾られたひな人形の前で竜児は足を止める。
ふと思いついて、竜児は最上段のお内裏様とお雛様を台座がくっ付くほど近づけた。
さらにそのままお雛様の台座の下に物を挟み、少しだけお内裏様の方へ向けて傾かせる。
・・・寄り添うみたいだろ。
これくらいいいよな・・・と竜児は最下段を見る。
川嶋人形は沈黙したまま、何も語らない。
竜児は笑みをひとつ漏らし、リビングの明かりを消した。


月は天空高く、真上に昇っている。
・・・孤独な月ウサギ・・・か。
いや、大河をそんなうさぎになんかさせない。
月を見つめ、竜児はそう思う。
あのマンションが寒い月だなんていうなら、俺が暖めてやる。

だから、今夜はいい夢を見てくれよな、大河。

大河の気持ちに全て応えてやれなかった想いを胸に竜児は階段を昇る。


何も言わず、秋の月は静かに竜児と大河を照らしていた。




103 : ◆x6jzI2BeLw :2009/12/01(火) 00:16:39 ID:RRPioAHC
以上です。
長々と失礼しました。

最後に連投規制とは・・・。

これをもちまして「孤独な月ウサギは太陽の夢を見るか」を終了します。
感想などくれた方ありがとうございました。
また、読んで頂きましてありがとうございました。

しかし、なにやってるんだろうなあのふたり^^;




104 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/01(火) 00:32:12 ID:+k5TOIVT
布団の上で身悶える俺きめぇww
今日は素晴らしい夢が見れそうだぜGJ!!!!

105 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/01(火) 07:33:45 ID:HX/IxTrS
>>103
おつ!!!!!!!!

106 :FM大橋 第二回(1/3) ◆wVNPBvxl56 :2009/12/01(火) 12:11:33 ID:QLF5veHf
>>103
超乙!
そんな感動の余韻をブチ壊す第二回で申しわけない。

*

「えっふえっむおっおはっし♪
 えっふえっむおっおはっし♪
 みっんなっのねっがいっを〜♪
 つっなっぐっはっしっ♪
(以下ジングル)
 逢坂さんと高須くんのラブラブアルバム!
 高須くんと逢坂さんのラブラブアルバム?
 どっちが政治的に正しい(ポリティカルコレクトネス)の!? オラもう分っかんね!」
(終わり)
「はーいやってまいりました第二回、「逢(略)ム」お相手は常に輝ける無敵の大スタア! 亜美ちゃんでーっす! 
 今日も張り切っておたより紹介……してい……き……あーもうダメ。無理だわ。持たねーわ。
 あと実乃梨ちゃん頼むわ。亜美ちゃん寝てるね」
「おいおいあーみん! 出だしからいきなり息切れかい!? なっちょらん! なっちょらんよチミ!
 あんたはこんなところで終わる漢じゃあねえズラ! 真っ赤な夕日に誓ったでねえの!?」
「……女だよ。つーか誰だよ。あたしは何を何回誓わされてんだよ」
「細けーことは気にすんなってことよぅ! さあてあーみん! あたいに司会を任せていいのかい!? 任せちゃうのかい!?
 世界が滅んでも櫛枝実乃梨にだけは司会はさせるべからずと言わしめたこのあちきに司会させちゃうのかい!?
 ふへっ! その男気買ったあ! 不肖・櫛枝実乃梨、この俺っちが司会を任せられたからには! 一分で放送事故を狙える番組にしてみせるぜ!」
「いいじゃん放送事故。とっとと終わっちまえっての。ったくこんな番組誰が楽しみにするもんですかい……ってか、誰得?
 亜美ちゃんの苦しむ様をどっかで楽しんでる変態がいるの?
 いたとしたら何でその変態的欲求を満たすために亜美ちゃんが頑張んなきゃいけねーわけ?
 あ?」
「ところであーみん、あたいの携帯のことなんだけど……」
「しっらっ……ねーよっ! あんたなんか嫌い!」
「ご覧あーみん、変態、と打ち込もうとするべ? へんた……ほら、ここまで打ったとき予測変換に最初に挙がるのはヘンダーソンなんだぜ……誰だよ。
 私が知らないだけで超有名なのかなヘンダーソン氏。あーみんの知り合いにいない?」
「いねーし」
「Welcomeback!」
「アンダーソンもいねーよ!」
「そうそうなんでこの話になったかっつーと、前にさ、高須竜児、って打とうとしたことがあって」
「亜美ちゃん何となくその話は聞きたくないな……」
「竜児って、一発変換できねーの。実乃梨は分かるよ? どうみてもしちめんどくさいDQN名……いやいや、だから単語登録してるさ。
 亜美も大河も祐作も出るのに、割とシンプルな竜児が変換できねえってなんか違和感あるなーって、それだけなんだけどね」
「オチくらい考えて話せよ!」
「いやーいやー、わりーわりー、じゃあ一発。
 そのとき勢いで竜児って単語登録してしまったんだけどさ。でもさ。
 ……使わねーの。見事に使わねー。まあよく考えてみりゃそうなんだよね。
 私が高須くんの下の名前呼ぶことなんてリアルでもメールでも全然ありえねーのによー、なんで登録しちまったのかなってさー。
 一度登録しちゃうと何となく消しにくいじゃん、メアドとかもそうだけど人の名前って。
 そいで私もすっかり忘れているうちに、別の言葉登録しようとしたらさ……出てきたよね。
 あまじょっぺー思い出と共に出てきたよね。
 私の携帯にはアドレス帳に登録されてる『高須竜児』の他に単体で『竜児』って言葉が登録されてるわけよ。
 一生使うことのねえ呼び名がよ」
「……あー……」
「思わずご近所を全力疾走しながらニルヴァーナとか歌っちまったよね」
「何を」
「レイプミー」
「やめろや」

107 :FM大橋 第二回(2/3) ◆wVNPBvxl56 :2009/12/01(火) 12:12:37 ID:QLF5veHf
「そんであーみんはこの番組を『ご当地きゃわいい子巡りの旅〜発見! みのりんレーダー!〜』として再出発させたいんだっけか。
 司会・私、セクシーアシスタント(バニー衣装)・あーみんで」
「あんた一人でやってな!」
「いけず! セクスィーアシスタントあーみん(過激なバニー衣装)の協力なしじゃこの新番組は立ちゆかないのよ!」
「行き倒れてしまえそんな番組!」
「まったくあーみんのわがままにも困ったもんぜよ〜、大河たちのラブラブっぷりを紹介するのがそんなに不満なのけ?
 だったらおいどん、そんなあーみんにもバッチシなネタを知っているでごわす」
「上手い具合に話が逸れたと思ったのに……」
「ほら、あーみんが転校してくる前の話さあ。今の大河たちを見飽きたって言うならあーみん、あーみんの知らない二人の様子を聞かしてやろう」
「(正直聞きたい)べっつにー……興味ねーし……実乃梨ちゃんが話したいっつうんなら話せば?
 愚民どもの愚にもつかない駄文を垂れ流すよりマシなんじゃね?」
「うし、そんなら言って聞かしょう。見えぬ者は音に聞け。
 あれはー去年の春のことじゃったー……大河と高須くんが付き合ってるんじゃね? 疑惑が囁かれる前の話じゃい」
「つうか私が転校してきた時点で付き合っていなかったっつーのがほとんど冗談だけどな」
「まあ混ぜっかえすない……オホン。
 ワンデイ(ある日)、某H田君は図書室に居ました」
「嘘じゃん」
「それがよ、奇跡みたいなことがあるんだナ。ともかく奴は図書室にいたのさ。その影響か、その日大橋一帯は豪雪に見舞われたりはしなかったんだけども、彼はそこで大河と高須くんを見つけたわけ。
 その状況を説明した彼の言葉をそのまま伝えると、
『いや〜びっくりしちったよ〜、高っちゃんとタイガーが本棚の影(正:陰)でこそこそなんかしてんのよ。
「うっわー見ちったー図書室でいちゃつくカポー見ちったー(笑)」とか思って、ていうか俺びっくりして、別に隠れもせずフツーにそれ見てたんだけど、あいつら全然気ず(正:づ)かないでやんの。
 そんで何してんのかと思ったらお菓子づくりの本見てんのよ。高っちゃんがタイガーに説明してる感じ?
 見てるとタイガー全然説明が分かんないらしくて、イライラして声がでかくなんのよ。そうすっとこう、パッと。高っちゃんの手が出るね。優しくタイガーの口を押さえるのさ。
 俺思ったね。「うっわー見ちったーマジで殺られる五秒前!(笑)」
 だって間違ってもタイガーに指一本触ろうもんならタイガーアッパーカット(→ ↓ \+P)が炸裂してた時期だからさー。
 でもないのよ。迎撃なし。無抵抗。されるがまま。そのあとも声がでかくなるたびに口塞がれてんの。
 高っちゃんは高っちゃんでタイガーに合わせて背中丸めて本持ってさー。
「うっわーやっぱいちゃついてんよー」って思って俺はだしのゲン読んで帰ったの』
「なぜ原文ママにしたし」
「別にオチもないしね」
「あたしがバカだったよ! 期待したあたしがバカだったよ! あんたなんか嫌い!」
「ごめんあーみん。実は春Tくんのおたよりを読んだだけなんだ」
「やだーもーこいつやだー! 亜美ちゃん帰るーもう帰るー!」
「まあまあ。さて、次のおたよりです」
「しれっとおたよりコーナーにすんな!」

108 :FM大橋 第二回(3/3) ◆wVNPBvxl56 :2009/12/01(火) 12:13:45 ID:QLF5veHf
「ペンネーム『高校球児』さんからのおたより」
「あんただろ」
「『あーみんみのりんおっすまん』
 さんこん。
『大河と高須くんのことなら俺っちに任せな! 春ごろに目撃された完全アウトな二人の行動。ここはいっちょ列挙してやんよ!
 以下、そのときの彼らの言葉。原文ママ。
「お前口にノリついてんぞ」「えっ嘘、とってとって」」
「次体育だから髪やって」「おう」
「ちょ、こぼしたこぼした」「えっどこ?」「膝だ膝。あー動くな動くな。俺がやる」
「ねえ竜児なんか目に入った」「どれ。はい上見て。下。右。左」
「ボタン掛け違えてるぞ」「あらいやだ」「仕方ねえなまったく」
「ねえ竜児今日肉じゃががいい」「よしきた」
「ねえ竜児」』」
「あーもういいもういい! 分かった分かった!」
「なんだいあーみん。こんなのまだまだ序の口だぜい!」
「序の口っつーか……今と何が違うんだよ。去年のごちゃごちゃしたアレやソレは何だったのよ。
 何でウチらはあんな痛々しい青春の日々を送ったのよ。変わってねーじゃんあいつら」
「そっかねー。あたいからすりゃ一目瞭然なんだけどなー。
 大河の甘え方にも高須くんの甘やかし方にもビフォーアフターで結構な違いがあんのによー」
「知らねーし心底興味ねーし」
「あ、オラ分かっただ」
「何がよ」
「あーみん、寂しいんだべ」
「はあ!?」
「なるへそなるへそ、合点承知。あんたの気持ちはよく分かった!
 友達が結ばれたのは嬉しい。でもこの気持ちは何かしら。幸せそうな二人に感じるこの気持ち。
 はっ、さては嫉妬。私ったら妬いているのね。二人が羨ましいのね。独り身で寂しいのね!」
「憶測で語るな!」
「またまた、あーみん、水臭いぜ? スメルズライクウォーターだぜ? ったくよー、言ってくれりゃいいのに。
 俺っちが胸貸すぜ〜、超貸すぜ〜」
「ちょっと、実乃梨ちゃん、なんでブレザーを脱ぐの?」
「あみのりってジャンル、知ってる?」
「アッー!」

109 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/01(火) 17:26:50 ID:VjXikRk/
>>103
連載乙でした。
甘くてちょっと切なくて、とても良かったです。

>>106-109
第二回きた!
まさかのみのりん登場w
そしてフリーダムwww

110 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/01(火) 21:07:32 ID:VlowN5SE
>>108
待ってました!
振り回されてるあーみんかわいいw
ビフォーアフターの甘々の違いを氏の作品で読んでみたいと思ったり

111 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/01(火) 21:57:47 ID:IuiW5ySc
>>103
お疲れ様でした!
もうね、ニヤニヤしっぱなしw
良い作品をありがとう。

>>108
乙!
これはひどいwww

112 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/02(水) 00:24:03 ID:D1na4kes
>>108
マジ酷い(www

地の文の感情や思考の掘り下げが得意な人だと思っていたが、会話だけだとここまで
やりたい放題に出来るのか。すげぇーわ。ネタも2chネタから歌舞伎だの戦の名乗りだの、
どんだけ幅広いのかと。

ほんと、眼福です。

113 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2009/12/02(水) 01:10:11 ID:f85cyIOj
とらドラ!三題噺「クラス」「呆れる」「顔色」



「……さすがに大変だったわね」
「……おう」
 『逢坂大河が帰ってきた』――その事実は櫛枝実乃梨を始めとした元クラスメイトを熱狂させるに十分で。
 大河は愛情溢れるスキンシップにもみくちゃにされ、北村の仕切りが無ければ危うく元2−C全員が始業式をサボるという不名誉に預かるところであった。
 式が終れば終ったで、息をつく暇もないほどの質問攻め。
 その中で大河が竜児との婚約宣言をして、竜児もそれを胸を張って肯定してしまったものだから現場は狂乱・騒乱・大混乱。
 誰かに連れてこられた独身(30)に至っては卒倒する始末。
 結婚式の真似事までさせられそうになるのをどうにかこうにか脱出し――代償として北村の「あなたの恋の応援団」への出演を確約させられ――やっと二人きりの帰り道。
「だけど大河、明日から大変だぞ」
「大丈夫、勉強なら休んでる間もきちんとしてたから」
「いや、それもあるけどさ」
「確かに教師に睨まれてるのはちょっとうっとおしいかもね……でも幸い竜児も私も成績はいいし、しばらく大人しくしてれば大丈夫でしょ」
「大河は先生達の顔色うかがったりとか、一度たりとてしたこと無いじゃねえか。そうじゃなくてだな」
「何よゴチャゴチャと」
「知らねえだろうけどな、大河は……というか俺もだけど……今や学校中の有名人なんだよ」
「……何で?」
「何でってな……本気で言ってるなら呆れるぞ、俺は。ミス大橋が駆け落ちエスケープかまして話題にならないわけねえだろ」
「かっ……かけおち……って……」
「そこで今更赤くなるなって。あながち間違っちゃいねえだろ」
「ま、まあ、そうだけど……」
「それで俺だけが帰ってきたもんだから、ベタなのからトンデモまで色々と憶測と噂が広がったみたいでな……。
 まあ最近はだいぶ落ち着いてきてたんだが、大河も帰ってきたからには今度はどんな尾鰭がつくのやら……」
「そっ……それは……竜児は大丈夫だったの?」
「うーん、最初は多少凹んだりもしたけど……まあ、無責任な噂なんかより確実なものがあったから、さ」
「……確実なものって?」
「……わかってて聞いてるだろ、その表情は」
「でも聞きたいの。竜児の口から」
「おう……その、大河との絆が、だ」
「えへへ……竜児、大好き」
「俺も好きだぜ、大河」
「……ま、まだちょっと、照れる、わね」
「お、おう」
「そうだ、けっこう遅くなっちゃってるけどやっちゃんのお昼ご飯大丈夫?」
「おう、泰子な。四月から昼の仕事に変わったんだよ」
「え!?毘沙門天国は?」
「ナンバー2だった静代さんが新しいママやってる。で、泰子は新しくオープンした『お好み焼き・弁財天国』の店長だ。まあオーナー同じの雇われ店長だけどな」
「へー……」
「ちょうどいいから、そこで昼飯食って帰ろうぜ」
「急に行ったらやっちゃんびっくりするかな?」
「おう、びっくりするびっくりする。でもってすげー喜ぶぞ」
「ん、それじゃ行こうか」
「おう、こっちだ」
 竜児は大河の手を握り、
 大河はそれを握り返し、
 二人は並んで歩き出す。

114 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/02(水) 02:04:26 ID:ftsdv1co
>>113
2828

115 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/02(水) 02:29:50 ID:vcMGArK0
>>85
いつも本当に頭が下がりますです。
アイキャッチ、単に並び替えたのでなく、色順(大河、竜児、みのりん、北村、あーみん)は、
そのままで文字を変えてるw 芸が細かい!

>>88
ニヤニヤした。いいぞ、もっとやれー!

>>103
GJ! そして長い間の連載、本当に乙でした。買い物シーンからずっと印象深い展開ばかりで良かったぁ
もうね、揺れ動きつつも寄り添いあう2人の心に身悶えですよ。
○○の瞬間の描写がないのも逆に印象深い。
大河が気持ちを見せる勇気を持っていて、自分を諦めていなければ、こうなったんだろうな…と思った。
「切ったわね」&二度寝の裏話や、最後に竜児がお雛様を傾けるのもイイ!

>>108
なんという縦横無尽っぷり。これだけすっ飛ばしても破綻してないのがすげぇ
さりげなく、2人のしょっぱさも混じってて、でも超笑える。
次も期待していいですか?

>>113
原作アフターktkr
照れる2人が新鮮!

116 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/02(水) 12:33:57 ID:wYfFG5u9
>>113
乙!
ニヤニヤw
大河が帰ってきた日はきっと凄く楽しい1日なんだろうな

117 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/02(水) 12:34:20 ID:MdW6jbXR

大河はこんなこと言わない…よな?

夫がごはんを作ってくれません
ttp://komachi.yomiuri.co.jp/t/2009/1127/278631.htm


118 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/02(水) 17:32:23 ID:1YIjFzYE
むしろ

夫がごはんを作らせてくれません

だろ

119 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/02(水) 17:57:36 ID:Mdbo2FYx
ワロタwwww

120 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/02(水) 20:39:30 ID:2ZNoAd5O
夫がごはんを作らせてくれません      タイガー       2009年11月27日 23:18

結婚して半年の22歳の専業主婦です。
最近夫の帰りが早く、毎日のように家でご飯を作るようになりました。

たまには私に作らせてよとお願いしても、お前がやると心配だから無理だと叱られました。
(私もそれなりにドジですが、結婚するまで相当頑張ったので大丈夫だと思うのですが、そこは黙っておきました)

料理と私どっちが大事なの?と詰め寄ると、愛するお前のために料理がしたいんだと理不尽なことを言われました。
同棲していた時からずっとそうでした・・・。俺がお前にチャーハンの作り方を教えてやるとプロポーズしてくれたのに、です。

私は毎日掃除洗濯と家事ができるようになったのに、包丁を持たせてもらえません。
今日はお前の好きな豚の生姜焼きだと言うので、仕方なくレタス剥きで我慢しました。

彼の胃袋を握るにはどうしたらいいでしょうか?

121 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/02(水) 20:56:54 ID:0tALlCML
大丈夫だよ、塩味クッキーで掌握してるから


塩味クッキーといったららんまの茜だよな

122 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/02(水) 21:53:49 ID:wYfFG5u9
おまえらwwwやめてwww
クソワロタwww

123 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/02(水) 23:36:20 ID:vcMGArK0
ワロタwww 腹イタイwwww
鼻水出たwwwww

124 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/03(木) 01:12:50 ID:Vg30t/46
>>121
NICEwGJw
みのりんに相談とかしてそうだw
そんであーみんが、「女体盛り」とか言ったら即実しそうな大河乙w

125 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/03(木) 01:14:03 ID:Vg30t/46
わり、>>120だったわw

126 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/03(木) 01:59:08 ID:MhkqOTVz
同級生がキッチンを磨かせてくれません   竜       2008年4月14日 23:18

進級して1週間の16歳の男子高校生です。
最近、向かいの家の同級生がだらしなく、毎日のように起こしに行くようになりました。

先日カビだらけだったキッチンを掃除し、今日仕上げをしようとしたのですが、掃除フェチの
変態野郎と蹴っ飛ばされました。
(私は子供の頃から家事をやっており、こんなに汚いのではお嫁に行けないぞと思ったのですが、
そこは黙っておきました)

あまり酷いことを言われたので、弁当を返せと言ったところ、「黙れ、そして腐れ」と
理不尽なことを言われました。
襲撃された晩から意地悪でした。チャーハンを作って食べさせてあげたのにです。

私は家の掃除から洗濯、食事まで面倒を見てあげているのに、キッチンを磨かせてくれません。
今日も勝手にきれいにしたら殺すと言われたので、仕方なく床ふきだけですませました。

他に好きな子もいるし、やめるべきでしょうか?




127 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/03(木) 01:59:56 ID:MhkqOTVz
同級生がご飯を食べに来てくれません。   竜       2009年1月15日 23:18

来年高校3年生になる男子です。
最近、向かいの同級生がご飯を食べに来てくれなくなりました。

意地張らないで食べに来いよと言っても、Mさんと私の仲が壊れるから駄目とつっぱねられました。
(私も男なので、Mさんと私の仲がうまくいかないのは彼女のせいじゃないとわかっていますが、
そこは黙っておきました)

意地と健康とどっちが大事なんだ?と詰め寄ると、ご飯くらい自分で作れると絶対無理なことを
言われました。去年は毎日食べてくれたのに。食うなと言っても三杯飯平らげてくれたのにです。

私はMさんに振られた上に向かいの彼女がご飯を食べてくれないので、生きる気力がでません。
今日もコンビニでカップラーメンを買ってきたというので、仕方なく一人でとんかつを食べました。

振られたばかりですし、いっそしつこく言って殴られればすっきりするでしょうか?




128 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/03(木) 02:00:41 ID:MhkqOTVz
妻がごはんを作らせてくれません      竜       20xx年11月27日 23:18

結婚して半年の22歳のサラリーマンです。
最近私の帰りが早く、毎日のように家でご飯を食べるようになりました。

たまには俺に作らせてくれと頼んだのですが、腕の見せ所だから駄目だと蹴っ飛ばされました。
(私も子供の頃から料理をしていて、妻はまだまだ見せられる腕前じゃないことはわかっていますが、
そこは黙っておきました)

俺の飯が嫌いになったのか?と詰め寄ると、愛するあんたのためにチャーハンを作りたいのと
ぐうの音も出ない笑顔でモジモジしながら言われました。 同棲していた頃は作らせてくれたのに・・・。
あんたのチャーハンが好きよ、とプロポーズを受けてくれたのにです。

私は毎日掃除洗濯などの家事ができないので、ストレスの解消ができません。
今日も台所に入れてくれないので、仕方なくインコに菜っ葉をあげていました。

妻からキッチンを奪うにはどうしたらいいでしょうか。

129 : ◆fDszcniTtk :2009/12/03(木) 02:01:32 ID:MhkqOTVz
あ、トリップ忘れてた。

130 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/03(木) 07:27:32 ID:28C7BhEe
>>129
やっぱり、文豪w
竜ver. 連発ワロタw モジモジ大河萌え

オリジナルの文章も意外と秀逸なのかもね。

131 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/03(木) 08:26:51 ID:CEwpwzUe
こんな朝っぱらから笑わせるなww

132 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/03(木) 09:48:28 ID:VwW9NECx
ノリノリだ

133 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/03(木) 12:36:06 ID:mgUYVAc0
>>129
おwまwえwかwww
さりげなく時系列に沿ってるのに感動したw

134 :YY:2009/12/03(木) 19:29:42 ID:k42lhrZB
えー皆様、待たせてしまい本当に申し訳ない。
書こうとするとなんでこうイロイロ起きるんだ……。
オマケに風邪でぶっ倒れる始末。
ああなんとうらめしいことよ。


>>48-50
ありがとう!

>>53
お久しぶりです!!今回も最高でした!!

>>60.108
ここにまた新しいとらドラジオがw

三題噺の方にはもうほんと凄い、定期的で頭があがらない……。

>>67
ヒサシブリィィィィィィ!!待ってたよ、超待ってたよ!!

>>85
す、すみません!!悩ませてしまいまいしたか。
し、しかしいいんですかこれ?僕のにこんな手をかけてもらって。
いやなんか逆に申し訳ない、マジ申し訳ない。
何気にリンクごとにちゃんとドラとら!の位置が違うのがステキ!
もう僕のこれドラとら!にしますw
本当にありがとうございます!!

>>88
ポワワw

>>103
終わっちまったぁぁぁ!!ってか大河ぁぁぁ!!って感じでしたw

>>120
ありそうで吹いたw

>>129
相談事が増えてワロタwと思ったら貴方でしかたかw



長らくお待たせしました。また短いですがドラとら!>>46続きいきます。

135 : ◆QHsKY7H.TY :2009/12/03(木) 19:31:39 ID:k42lhrZB
すいません、トリ付け間違った

136 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/03(木) 19:32:48 ID:k42lhrZB
「大河、ほら頭やってあげるから早く着替えないと」

親友のみのりんにそう言われ、私は手に持つ紺色の水着を見つめる。
場所は女子更衣室。
今まで欝で欝でしかたが無かったこの授業だが、この水着のおかげで幾分やる気が生まれる。

(それも……竜児のおかげ、かな)

そう内心で目の下に隈を作ってより一層目つきの悪くなった竜児にお礼を言い、着替えを始めた。



***



眠い。
超眠い。
徹夜なんてそうそうしないから相当に堪える。
俺はうつらうつらする頭を振りながら意識を保つ。

「あ、高須くぅん♪」

そこに、着替えを終えたらしい川嶋が寄ってきた。

「ねぇどお?私の水着姿?」

そう言う川嶋の水着姿は……完璧だった。
流石は現役モデルとでも言うべきか。
出るとこはボンッ!!
くびれはキュッ!!
体にピッタリフィットしているその姿は一つの芸術と呼ぶにも相応しい。

「おぅ、いいんじゃねぇか」
「そう?ドキドキする?ねぇドキドキする?」

川嶋はいくつかポーズを取って自身のスタイルの良さを際だたせるが、何分こちらは超が付くほど眠い身。

「おぅ、いいんじゃねぇか」

少々投げやりな言葉、というかまったく同じ返答で返してしまった。
無論ドキドキしてるし、普段なら鼻血ブーものなのかもしれないが、脳細胞が半分寝ている状態では残念ながら俺の心は正常には働かなかった。

「なぁんか亜美ちゃんなんて興味ないって感じなんですけどぉ?」

それに不服だったのか、川嶋は頬を膨らませる。
と、

「……チッ、もう来た」

川嶋が舌打ちし、次いで、

「あ、高須君と川嶋さん!!」
「待ってみのりん、走ると頭崩れちゃう!!」

小走りで大河と櫛枝がこちらに寄ってきた。

137 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/03(木) 19:33:58 ID:k42lhrZB
眠い目を擦って見てみると、櫛枝は髪をポニーテールにし、大河は水着の上に上着を着て初めて見るタイプの髪型でこちらに向かって来る。
大河の見たことの無いそれは、髪を二つに丸く纏めて、まるでミッキーマ●スのようだ。いや、この場合ミニーマ●スか。
そう言えばなんで女の子はミニーマ●スなんだろう?ミニーって言うと小さいって意識する気がする、あ、だから大河はミニーマ●スなのか。
………………何か段々思考が変になってきた。

「「「「おおお!!」」」」

気付けば周りから歓声が上がる。
大河が水着の上から着ていた上着を取り去り、その胸にある膨らみを公の場にさらしたからのようだ。

「何だ、普通じゃん、相変わらず縮尺はおかしいけど。ねぇ高須君?高須君ってば」

川嶋が何か言ってるが、あまりの眠さに聞こえない。

「おぅ、いいんじゃねぇか」
「はぁ?何?もしかして亜美ちゃんより逢坂さんの水着姿の方が良いって意味?」
「おぅ、いいんじゃねぇか」

もう何回同じ言葉だけを繰り返してるだろう。
こりゃマジでやばい。
先生に言って保健室にでも寝に行こうか。

「〜〜〜っ!!逢坂さん!!泳ぎで勝負しましょう!!」

川嶋が大河と何か話してる。
あれは揉めてるのか?何か眠くてぼやけてよく見えん。

「はぁ?何で私があんたなんかと!!」
「負けるのが怖いの?弱虫ねぇ」
「誰が弱虫ですって!?このバカチワワ!!」
「バ、バカチワワ!?ちょっと亜美ちゃんにマジありえないんですけど!!」
「バカチワワだからバカチワワと言ったのよ、略してばかちーねばかちー」
「こぉんのチビ虎!!」
「黙れ、そして腐ればかちー!!」

ああ、川嶋と大河がなんかとっくみあいになってる。

バシャン!!

あ、プールに落ちた。

「ぷはっ!!こうなったらどっちが向こうに先に着けるかで勝負よチビ虎!!アンタが負けたらその変な渾名を撤回、そして私に高須君を……あれ?チビ虎何処行った?」

ああ、大河がなんかプールの底の方でもがいてるなぁ。
……。
…………。
………………。
……………………は!?

一瞬にして、眠かった脳がが覚醒する。

『……私泳げないの、だから嫌いなの』

昨夜の彼女の台詞。あれ嘘じゃなかったのか!!
俺は飛び出していた。

138 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/03(木) 19:35:15 ID:k42lhrZB
***



もがががが……。
体中の酸素という酸素が失われていく。
うがががが……。
口から鼻からゴポゴポと気泡となって水中を上っていく。
苦しい。
苦しい苦しい。
苦しいクルシイくるしい!!
暴れれば暴れるほど消耗し、息が苦しくなる。
手をばたつかせても足を伸ばそうとも触れるものは何も無く、ただ水が広がるのみ。
たすけて。
タスケテ。
たすけてタスケテ助けて!!
心の底からの叫び。
……けど、私の手を掴む人はいない。
そういえば、“あの時”もそうで、だから私は今出来もしない“独り暮らし”なんてしていて。
このまま死ぬのかもしれない。
不思議と、本心からそう思った時、

クンッ!!

強く腕を引かれた。
誰……?私を助けてくれる人なんていないはず。
もしかして、北村君……?
それともあなたは………………。



***

139 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/03(木) 19:36:27 ID:k42lhrZB
「ぷはっ!!」

俺はプールから顔を出すと、

「どいてくれ!!」

大声を上げてプールを行軍する。
腕の中には冷たい大河。
息は……多分している。
多分?なんだそれ。
ふざんけんなふざけんなふざけんな。

ザパァ!!

ようやくプールから上がって大河の顔を見つめ、

ブビューーーーッ!!

途端、大河が水を吐き出して俺の顔面に水鉄砲を喰らわせる。

「けほっ!!ごほっごほっ!!」

咳き込んでいるが目は虚ろで、意識はまだちゃんとは無いだろう。
それを見て、咳き込みながら水を吐き出し息をしている大河を見て、マヌケにも大河に水をぶっかけられた俺は濡れたばかりの顔から水が大河に滴り落ちるのを感じた。
ポツポツと、しかしそれは尽きることなく滴り落ちていく。
と、黒光りする筋肉を持つマッソーな教師が、俺が大河を助けたのを見つけたらしく、慌てた様子で大河に近づいてくる。
先生はそのまま大河を保健室へと連れて行ってくれたが、俺の顔から流れるプールの水は今だ尽きない。
おいおい、一体どんだけ俺の顔は濡れてるんだ。
そう思いつつ、どうやら眠気が戻って来たようで俺はゆっくりと瞼を閉じた。
思いの外、目が濡れていて、しょぼしょぼした。



***

140 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/03(木) 19:37:13 ID:k42lhrZB
最初は、ただの対抗意識だった。
私はあの日、スーパーで高須君に救われた。
スーパーで絡まれてると言えば簡単だけど、相手は私がずっと悩んでいたストーカー男だった。
でも高須君の顔を見て怯え、それから一切近づいてこなくなった。
嬉しかった。
何の体裁も無く、モデルとしてでも、川嶋安奈の娘としてでもなくただ一人の女の子として助けられたのが。
確かに顔は怖いが、そのことで慌てふためき落ち込む高須君の様が可愛かった。
彼が女と一緒にいるのを見た時、その女が本当に彼の魅力を理解出来ているのか不安になった。
多分、あの女が『ご飯を作ってやらなきゃならない奴』だと直感したから。

『別に、彼氏じゃない』

だからそう言われた時は、少し安堵した。
けど、今日のこれを見たらどうも私が入り込む余地がない。
高須君は泣いていた。凶眼を歪ませて心配そうに泣いていた。
周りのみんなも、あまりの凶眼とその涙に言葉を無くしている。
それはまるで騎士のようだった。
多分そのことをあのチビは知ることは無いだろう。
それでも私を諦めさせるには十分で。だから、

「高須君」

これで最後にしよう……って、あれ?

「あれ?高須君?」

嘘?マジ!?高須君倒れてる!?

「ちょっ!?高須君!?って……まさか……」

私は慌てて肩を揺すって、気付いた。

「すぅ……すぅ……」
「寝てるーーーー!?」

寝てる。そりゃもうぐっすり寝てる。
何かもう、イライラしてきた。
さっきの亜美ちゃんのセンチメンタリーな気持ちを返して欲しい。
スーパーでのドキドキごと返して欲しい。
何か馬鹿らしくなってきた。っていうか普通寝る?
ここまで私をドキドキさせ、さらにはこけにした人初めてだ。
チビ虎の言うことが本当なら、やっぱりもうちょっとこなかけてみようかな。
私はそう思いつつ、しかし怒りから、

ドン!!

「おわっ!?何だ何だ!?」

腹を蹴り、それで驚き起きた高須君に、

「授業、終わってるよ」

不敵な笑みを送るのだった。



***

141 : ◆QHsKY7H.TY :2009/12/03(木) 19:39:18 ID:k42lhrZB
とりあえずここまで。
改めてまとめ人さんありがとう!!
あなたの素敵なロゴを見てドラとら!に決めちゃいました!!

142 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/03(木) 22:42:59 ID:lgXHukHZ
GJ!
毎回読む度に続きが気になる( ´Д`)ハァハァ

143 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/04(金) 01:11:48 ID:cuLD8KNo
おつんつん
変わらぬ安定感と面白さ
次回も期待してます

144 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/04(金) 01:27:52 ID:3mVYJHEY
>>141
もつ

145 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/04(金) 12:35:55 ID:2sh8Lupb
>>141
乙!
あーみんがどう出るのか気になるぜ

146 :あいり:2009/12/04(金) 20:52:37 ID:GJ4UeAL1
楽しみー

147 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/04(金) 22:36:51 ID:ZlR3+Gmr
>>146
うん。楽しみなのはわかったから、とりあえずサゲてくれ。

148 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2009/12/05(土) 04:28:13 ID:za9pq6cy
お題 「目じり」「百四十センチ」「竜ちゃん」



「ううむ……」
 唸る高須竜児の目の前には、恥を忍んで買った軟弱雑誌。
「やっぱりこの『ふんわりバングス』ってやつかな……」
 重要なのはソフトな第一印象……だと思うのだ。
 なにせ明日は始業式。高校二年生のスタート。
 今度こそ、最初から明るい生活を送りたいのだ。そのためならイメージチェンジぐらいいくらでもしてやろうではないか。
 あわよくばそれで『あの人』が目を留めてくれるかもしれないし……
 と、
「竜ちゃ〜ん?」
 襖の向こうから聞こえる声。どうやら泰子が目を覚ましたらしい。
 竜児は軟弱雑誌を閉じて本棚へ。
「おう、起きたか泰――」
「竜ちゃん、おめでとぉ〜!」
 襖を開けた途端、酒臭い塊に抱きつかれた。
「お、おい、泰子!?」
「やっちゃんはね、やっちゃんはね〜、嬉しいんだよ〜。そりゃ、ちょっとは寂しいけどね?
 でもでも、竜ちゃんが幸せになるんだから……」
「ちょ、ちょっと待て!」
 竜児は必死に、目じりに涙を溜めて泣き笑い状態の泰子をもぎ離す。
「ほえ?……あれ?竜ちゃんふつーの服……タキシードは?……教会は?」
「何の話だ!?」

「あのね、竜ちゃんがお婿に行っちゃう夢を見たんだよ〜」
 朝食……というか竜児にとっては昼食……を食べ終えて、お茶を飲みながら泰子は話す。
「お〜っきな教会でね〜、竜ちゃんは真っ白なタキシードでね〜、かっこよかったなぁ〜」
 思い出してにへらんと笑う泰子に対して竜児は少々渋い顔。
「何だよそりゃ。俺はまだ高校生だぞ」
「やっちゃんは薄〜い超能力者だから、ひょっとしたら予知夢かもね?」
「んなわけねえだろ。大体俺が結婚するとしたら、婿に行くんじゃなくて嫁に貰う方だろ。一人息子なんだから」
「ん〜?そうか、それならやっちゃんも寂しくないねぇ。でも、おじゃま虫になっちゃうのはな〜。
 やっぱり夫婦は水……水……水引き?」
 そもそも嫁に来てくれるような女性がいるものかどうか。
 ……来て欲しい人ならいるのだけれど。
「水入らず、だろ。夢だ夢、気にするな」
「でもね?お嫁さんも、ものすご〜く可愛かったんだよ?」
 ぴくり、と竜児の体が反応する。何だかんだ言っても思春期男子としては、多少気になる所ではあり。
「へー……ど、どんな?」
「ん〜っとね〜……顔はちょっとよく思い出せないかな〜……笑った顔がものすごく可愛かったことだけは憶えてるんだけど……」
 確かにあの人の笑顔は最高だ。太陽のような、満開の向日葵のような。
「髪の毛がね〜、長くてふわふわ〜っとしててね〜、腰のところぐらいまであってね〜」
 なるほど、自分はショートカット姿しか見たことはないけれど、ロングというのも似合うかもしれない。というか一度見てみたい。
「背がね〜、え〜っと、竜ちゃん百七十ぐらいだったよね?だから……百四十センチぐらいかな?」
 ……やはり、夢は夢か。あの人なら百六十センチぐらいだったはずだし。
 竜児は一つ溜息をついて、席を立つ。
「買い物行ってくる」
「は〜い、いってらしゃ〜い」
 借家のドアを開ければ、暖かな春の風。
 予知というわけではないが、確かに何かが始まる、そんな予感がした。

149 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/05(土) 08:47:14 ID:C0/YH7DW
>>148
いいね。こんな話。GJでした。

150 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/05(土) 10:39:19 ID:TJVwEkQ6
>>148
GJ&乙!

151 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/06(日) 02:59:37 ID:5huiip5J
短くて読みやすいので、この書き手さんすきだなー

話は変わるけど、最近インコちゃん成分が足りない

152 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/06(日) 06:13:15 ID:EPepUerg
インコ「ペ」

153 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/06(日) 18:42:35 ID:6Qwu8Ru6
竜児「ぺ…?」

154 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/06(日) 19:18:30 ID:CeSHEtCm
インコ「ぺ…ペタンコタイガ!!」

155 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/06(日) 19:35:58 ID:bXexJqOV
大河「…覚悟はできてるか?ブサ鳥?」

156 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/06(日) 19:37:19 ID:NI/ukIRu
竜児「インコちゃん相手に大人気ないぞ、大河。
    クリスマスだから良い子にするんじゃなかったのか?」

157 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/06(日) 20:09:17 ID:IEl28V56
大河「そうよね、そうだったわ。あ、竜児」
竜児「何だよ?」
大河「クリスマスはケンタッキーにしてね。ブサ鳥の前で食べてあげるから」

158 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/07(月) 00:04:13 ID:dB+Dlhky
TV版の後1時間位はこんな展開だったかもなんて思いました。
自分は、あの夜やってないよ派です。

 2−Cの教室で大河にあった。川につかりながらいえなかった、「好きだ」
をいった。大河は真っ赤になりながら「私も好き」といった。しばらく見
つめていたが、竜児が校庭にいってみんなに会おうといった。どちらから
というわけでなく手をつないで校庭に向かった。そこには北村が、みのり
が、亜美が、元2−Cの仲間がいた。大河を見つけると集まってきてそれ
ぞれが思っていたこと口々にまくした。そして竜児と大河が手をつないで
いるのを見て笑顔を向けた。
 「もう離しちゃだめよ。」と亜美がいう。竜児は手をいっそう強く握った。
 一通りの歓迎が済んだあとで大河は、見せたいものがある、みんなは
ちょっと待っていてといって校門の外に竜児を引っ張っていった。
 校門を出てすぐのところに赤いポルシェが停まっている。竜児も見覚
えがある大河の母親の車だ。大河が近づくと、大河の母が降りてきた。
大河は助手席をあけると、そこに固定されているベビーベッドがあり、
タオルなどに埋もれるように赤ん坊がいるのが竜児にもわかった。
 「あのときの赤ちゃん。」
 「へ?」
 「パパでちゅよ。あいたかったでちゅね。」
 大河は開いている窓に上半身を突っ込んで赤ちゃんに話しかけた後、
体を窓から引き抜いて竜児の方をみた。
 「お父さんとしてちゃんと抱っこしてあげて。」
 「へ?」
 竜児は固まった。どうやら自分と大河の間の・・・え?
 「あのあとね、ママと暮らし始めてすぐに赤ちゃんがいることがわかった
の。ママはダメだって言ったんだけどやっぱり生むっていって。その代わり、
高校は休学したので今年はまた3年生よ。」
 ちょっと重たい話を一息にいった。
 「抱っこ。」
 ドアを開けてせかす大河に押されて、油のきれたロボットのようにぎこち
なく竜児はベビーベッドの方に差し出した。
 それを後ろで見ていた大河の母親がぷっと吹き出してごめんなさいといった。
大河は振り返って、せっかくのいい雰囲気だったのにダメじゃないという。竜
司にもやっと事情がわかった。子供と言うのは狂言で、大河の弟だとわかった。
大河との再会で舞い上がっていて思いがめぐらなかった。よく見れば新生児と
いうにはそれなりに大きい。
 「ばれたか。そうよ、私の弟。」
 「悪かったわね竜児君。」大河母が笑いながら謝る。
 「はぁ。」
 かなり気が抜けたせいか怒る気力もおきなかったし、何か現実でもいいかと
思ったのも確かだ。
 「みんなに、見せてきていい?」
 「転んだりしないようにね。ここで待っているから、あんまり長くならない
ようにね。」
 大河は車からベビーカーを引っ張り出して手際よく組み立てる。
 「ねぇ、竜児。」
 「何だよ。」
 「みんなにも、私と竜児の赤ちゃんだって紹介しない?」
 とりあえず、竜児が押していってとベビーカーごと押し付けられた。
 暖かい春の日差しのなかベビーカーを押して桜の下を歩く、その
ちょっと後ろを大河が歩く。幸せってこういうものかと竜児は桜を見上げて
思った。
 大河と突然現れた赤ちゃんに校庭がもう一度大きく沸いたのは当然だった。

 おわり。

159 :北村:2009/12/07(月) 00:07:12 ID:YCCCdovM
>>158
実に良い話しだなぁ!
おれは感動したぞ!

160 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/07(月) 00:48:48 ID:rPqLEvk1
>>158
どっからのコピペ?

161 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/07(月) 00:58:44 ID:rybYzSQk
>>158
ナイス!
TV版アフターならではの展開ですなー
独神が卒倒するぞw

>>159
落ち着いて、 まず服を着ろw


162 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/07(月) 01:00:26 ID:rPqLEvk1
【声優】大原さやか(34)、誕生日に入籍…「12月6日に入籍いたしました。お相手は、ひとつ年上の役者さんです」
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/mnewsplus/1260040989/

なんと

163 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/07(月) 01:11:35 ID:YCCCdovM
>>161
すまん!興奮するとつい脱いでしまうんだ!
>>162
やすこさんおめでとうございます!

164 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/07(月) 01:40:07 ID:Rcu2nnp+
>>158
いいよいいよー2828したぜ!

>>162
泰子とベアトが一緒の人だったなんて・・・すげー驚いた!

165 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/07(月) 15:49:51 ID:cqlmG8Yf
>>160
つたないながら、一応自分オリジナルでここでの初公表です。



166 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/07(月) 20:27:25 ID:gBjTE+xu
>>158
情景が浮かんでニヤニヤしたw

終了後の展開は原作もアニメも気になるよなー
ちょっと前の三題噺の方の原作アフターもよかった

167 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/07(月) 21:11:09 ID:r2zyCiAa
>>162
中の人もやっちゃんと同じ33歳だったのか

168 : ◆QHsKY7H.TY :2009/12/07(月) 23:04:33 ID:4c7L19aR
>>142-146
感想・ご期待ありがとうございます。

三題噺の方はいつもチョイス上手いなぁ。

>>158
ありそうで感動しました。


さて、今回のドラとら!は繋ぎなのでさらに短いです。

出来れば短いのを短期間でちょくちょく出していってリアルクリスマスにクリスマス話を間に合わせたいよぅ。

>>141続き

169 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/07(月) 23:06:34 ID:4c7L19aR
雪が降りそうな位に寒い日の夕方。
商店街は多彩なイルミネーションによって彩られ、その昔、イエス・キリストが生誕したという日を祝おうと皆微笑んでいる。
最も、殆どの人間がそんなことを考えず、“ただのイベント”として、その日を楽しむのだろうけど。
ただ、俺はこの目つきのせいで友人達とのクリスマスパーティにも行かずに町をぶらついていた。
誘ってくれた友人もいたが、何人かが怯えた目つきをしていたのを俺は見逃さなかったので止めておいた。
泰子も今日はクリスマスイベントにちなんだことを仕事場でやるそうで、中三のクリスマスに俺は一人。
寂しいというほど子供じゃないつもりだが、それでも何で自分だけこんな思いをしなくちゃならないのだろうと内心嫌になる。
俺はそんな荒んだ気持ちから賑わいのある場所を避けて歩いていた。
ふと、気付けば町外れのカトリック系幼稚園がある一角にまで足が向いていた。
ここも、少ないが人通りがある。恐らくそれは、幼稚園の前でやっている『アレ』のせいだろう。

「どうぞー、良ければ持って行って下さい」

何人かの少女達が幼稚園児に混じって歩行者に何か……小さな小箱……だろうか、それを渡している。
『全ての人に祝福を』というような看板とともに、キリスト生誕日を祝して無料ケーキ配布中と書かれているので、恐らく中身はケーキだろう。
と、一人の少女が俺に気付き、ケーキを持って少し近寄って来て……逃げた。今に始まったことじゃないが、やっぱりへこむ。
と、その少女がケーキを渡さずに戻ってきた事に気付いた別の少女が、その娘からケーキをひったくって俺の方に駆け寄って来た。

「今ケーキを配ってるので、良ければどうぞ」

俺は驚きながら震える手でケーキを受け取った。
と、ここで初めて気付いた。俺はどうやら手袋もせず、ポケットに手も入れないで歩いていたらしい。手がガチガチに冷えていた。

「随分冷えてるのね」

少女は不思議そうに俺の手を掴んだ。少女の指は細く、暖かかった。俺が慌てて手を引っ込めると、

「俺の目つき、怖くないのか?」

こちらこそ不思議だとばかりの目で見つめ返した。

「何?もしかして“そんなこと”でしょげて手袋も忘れてたっての?馬鹿なのアンタ?」

しかし少女は臆することなく、むしろ俺を馬鹿にするように……実際馬鹿にして言ってのける。
少女は呆れた顔をしながら無理矢理に俺の手を奪って、はぁと息を吹きかけた。痺れて、感覚が無かった指にビリビリと感覚が戻ってくる。

「ほら、これで大丈夫っと。アンタ、そんなでっかい図体して小さい事にこだわるのね」

俺は特別背が高いわけでも太っているわけでも無いが、ナルホド、確かに目の前の長いブラウンの髪をウェーブしている少女からしたら俺は大きいだろう。

「……アンタ、今失礼なこと考えたわね?私こう見えても中三よ?」
「え?ぐほっ!?」

驚いた瞬間、みぞおちに良いパンチをもらった。

「本当に失礼な奴ね、全く」

失礼なのはお前だ、と思ったが、腹が痛くて言い返せない。
だいたい、俺にそんなこと言ってこんなことして来る奴なんて初めてだ。

「アンタ、自惚れてるんじゃない?もしかして自分はこの目つきのせいで特別な目で見られてるんだ、とか」

目の前の少女はそう蔑むように言って俺の驚愕の表情を見てから微笑み、

「ばっかねぇ、そんなわないじゃない。いいこと?神の前に、人は平等なのよ」

そう、微笑んだ。

170 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/07(月) 23:07:40 ID:4c7L19aR
***



「夢……か」

久しぶりに見た、“あの冬”の夢。
俺が、大河に逢ったのはあれが最初だった。
まさか同じ高校だとは思ってもみなかった。
そう思って起きあがる。
季節は夏、それも夏休み半ば。
悪い夢じゃないが、季節外れもいいところだ。
それに明日からは川嶋がお詫びとお礼という名目で提案した夏ならではの旅行、海に行くことになっている。
お詫びは大河へのプールのことらしいが、お礼って何のことだろう?
ああ、スーパーでのことか?律儀だなぁ。
何でも川嶋の両親が持つ別荘にみんな……と言っても俺と大河、川嶋、櫛枝と北村の五人でいく二泊三日の小旅行だ。

「よっと」

俺は起きあがって着替えを済まし、居間に向かう。
いつまでも感傷に浸ったり回想してるわけにもいかない。
今朝も多分、彼女が来るだろうから。
そう思ってまずは掃除。
隅から隅まで拭いて『敵』を殲滅。
この間カビ取りしたばっかりだからか、今日はカビは見られない。
次は洗濯、と。
ベランダにあるゴゥンゴゥンうるさい洗濯機を鳴らす。
と、ガララという音がした。

「ん?おぅ、おはよう」
「おはよう」

目を擦りながら顔を出した大河が挨拶を返す。
この時間に大河が起きるとは珍しい。
最近は休みだからってだらけまくってたのに。

「今日は随分速いな?」
「……ちょっと懐かしい夢を見たから」
「懐かしい夢?」
そりゃまたタイムリーな話だ。

「うん、懐かしい夢」

そう本当に懐かしむような声で言う大河は、あの日と同じ笑顔をしていた。



***

171 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/07(月) 23:08:41 ID:4c7L19aR
「いただきます」

大河は、いつも通りに朝食を食べに来た。
プールでの事故があった日の夜は食欲不振だとか言ってご飯を二杯しか食べなかったから不安だったのだが、今ではこれこの通り。

「おかわり!!」

全く持って元気に戻られて何よりだ。

「はぁ、ごちそうさま」

大河はご飯を食べ終えると、ごろんと背中を倒して横になった。

「おい、行儀悪いぞ」
「んー……うん、決めた」
「?どうした?」
「竜児、私この旅行で北村君に告白しようと思うの」

……危なく洗っていた皿を取り落としそうになった。
今更ながら、大河は北村が好きなのだと再確認する。

「私がばかちーからアンタのこと護ってあげるから、代わりに協力してよ」

川嶋から護る?

「……どういう意味だ?」
「……アンタ鈍いから気付いて無いだろうけど、あの女アンタに気があるわよ絶対」
「…………………………は?」

随分と間を空けてから口がようやく開いた。
どれくらいの間かと言うと三点リーダ十個くらい分の間だ。

「アンタほんとにニブチンねこの鈍犬」
「あ……いや……え……?」

意味がわからない。
俺に気がある?そんな馬鹿な。

172 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/07(月) 23:09:39 ID:4c7L19aR
「私からの忠告。あの女だけは止めといた方がいいんじゃない?アンタにも好きな人がいるんでしょ?」
「え……!?」

もしかして大河は俺が大河を好きな事を知ってるのか?
その上で俺に協力しろと?
それはあんまりなんじゃないのか?
今朝見た夢の暖かさが、途端に失われてあの時の冷えた手のように心が凍てついていく。

「……断る、と言ったら?」
「……なん、ですって?」

大河が驚き、次いで睨み付けるような視線で俺を射抜いた。

「別にいいよ、そんなことしなくても。ああ、でも何か手伝って欲しい事があるんだったら言ってくれれば出来る範囲ではやってやるよ」
「何よそれ……どういう意味?」

大河は俺を信じられないものでも見るかのような目で睨む。
普段の俺ならその目に怯んで大河の言いなりになるのだろうが、俺は久々にタガが外れていた。
恐らく人生で初めての経験、喧嘩をふっかけた。

「だから俺のことはほっとけって言ったんだ。お前の手伝いは言えばしてやるさ」
「……っ!!」

大河は俺から視線を逸らし、

「……ったじゃない」
「え……?」
「対等、って言ったじゃない、馬鹿ッ!!」

そう叫んで高須家から出て行った。
その日の昼・夜共に、大河はウチに顔を出さなかった。

そうして、俺達は険悪なムードのまま、川嶋立案の旅行日を迎えることとなった。



***

173 : ◆QHsKY7H.TY :2009/12/07(月) 23:10:50 ID:4c7L19aR
ここまで。
なんとかクリスマスに間に合うようがんばってみますw

174 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/07(月) 23:42:47 ID:CPicPooC
>>173
otu!!!!!!!1

175 : ◆Eby4Hm2ero :2009/12/08(火) 05:01:03 ID:59ljQYli
>>173
乙です。
基本展開は原作をなぞりつつ、どう変わっていくのか……超期待。

176 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2009/12/08(火) 05:06:24 ID:59ljQYli
お題 「よかった」「ネック」「掴んだ」



「大河、ちょっといいか?」
「何よ、改まって」
 竜児に真剣な様子で話しかけられ、大河は思わず居住まいを正す。
「四月からのことなんだけどな……俺は大学の近くに部屋を借りるつもりだ」
「……あんた、やっちゃんはどうするのよ」
「その泰子と相談して決めたことだ。それに、週末は極力こっちに帰ってくるつもりだし」
「まあ、それならいいけど……なんで?」
「先生達の話だと、理系は専門課程に入ると実験やレポートでかなり時間取られるそうなんだよ。
 そうなると、ここから通うのは時間的に色々と無理が出てきそうなんでな」
「そうなんだ……だけど、なんでそれを今私に言うのよ?」
「実は、家賃の問題がネックでさ……じいちゃんの援助に頼り過ぎるのもどうかと思うし……
 で、ものは相談なんだが……大河、よかったらルームシェアしてくれねえか?」
「……はあ?」
「ほら、二人なら家賃も折半出来るし、せっかく学部違うけど同じ大学なんだしさ。
 大河だって通学するのに近いにこしたことはねえだろ?」
「そうねえ……」
 と、大河の唇の端がにい、と吊り上がり、それを見た竜児の背筋に戦慄が走る。
 なぜなら、それは大河が勝利を確信した、あるいは相手の弱点を掴んだ時の笑みだから。
「ねえ竜児……それだけなの?」
「そ、それだけって……何がだよ」
「ルームシェアとかいうのの理由よ。本当に家賃を安くあげたいってだけ?」
「う……それは……」
「もしそうなら、私にはあまりメリット無いわよねえ……別に家賃節約する必要もないし……
 どうしようかしらねえ……」
「ぐ……わ、わかった……白状する……」
「あら、何を?」
「お、俺は、その……大河と二人で、一緒に暮らしたいんだよ」
「ふふん、最初から素直にそう言えばいいのよ」
 得意げに胸を張る大河と、赤い顔のままうなだれる竜児。
「大体ね、ルームシェアなんて回りくどい言い方しないで、単に同棲って言えばいいじゃないのよ」
「いや、それは……なんか生々しくねえか?」
「言い方変えてもする事は一緒じゃないの」
「そりゃそうだけどさ……で、いいのか?」
「うーん、どうしようかしら……」
「お、おい?」
「う・そ。OKに決まってるじゃないの」
「おう、よかった……」
 大河は竜児の頬に軽くキス。
「よろしくね、竜児」
「おう、これからもよろしくな、大河」


「ところで竜児、四月からってことは……」
「ん?どうした?」
「ううん、なんでもない」
「?」
「うふふふふふふ……」(『解禁』だものね……)
「お、おい、大河?」

177 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/08(火) 07:59:14 ID:DCfJDZLo
>>176
同じ大学かぁ。またこのコンビに振り回される学舎が一つ…(w

178 :フォとグらフ ◆fDszcniTtk :2009/12/08(火) 08:00:05 ID:DCfJDZLo
張り詰めていた冷たい空気が、ふっと揺れて頬をなでる。日が落ちてしまった空はわずかに色を濃くして、街を飾るイルミネーションに主役の座を譲る気配を見せている。

「さぶっ」

待ち合わせ15分前。商店街のツリーの前で逢坂大河は小さく呟き、2,3歩足踏みをする。ツリーの前に来たのが10分前。喫茶店にでも入って時間をつぶせばいいものを、馬鹿な事に寒空の下で待つことにした。

馬鹿なことをしているという自覚はあるのだ。黙っていても相手は来るのだから、暖かいミルクでも飲んでいればいい。そもそも、待ち合わせの場所に女が先に来るのはみっともないと何かの本で読んだことがある。
2,3分遅れてきて「ごめん待った?」というのが、形式美だとか。男より先に来て顔をつぶすのはどうとか。

でも、それはちょっともったいないと思うのだ。(だって、1分でも早く顔をみたいじゃない?)。12月の夕暮れにツリーの前で立ったまま。あまりにも無謀なミッションにダッフルコートはとっくに音を上げ、大河の体はどんどん冷えていく。
それでも、マフラーに半分うずめた顔の表情は、繰り返し繰り返し甘く蕩ける。

「竜児、早く来ないかな」

時間が経つのは早い。

あの、激しく辛かったクリスマス・イブから、もう1年になる。サンタを待ちわびては、誰も現れないクリスマスを何度も繰り返した。その末に、去年本当にサンタが現れたのだ。それが偽物であっても、クマであっても、待ち焦がれたサンタの登場に大河の心ははじけた。
照れも意地も吹き飛んで、ぬいぐるみに抱きついて大声で笑った。

そして喪失。

その晩、自分が竜児を好きだと初めて知った。それからはじまった苦しい日々は忘れられない。竜児が現れて得た安寧は、竜児から離れると決めたことで両手の指の間からこぼれるように消えてしまった。竜児以前の苦しい日々への逆戻り。

それもこれも、全部激流に流されるように目の前を過ぎていって、今、大河は竜児をクリスマス・ツリーの前で待っている。

「えへへ」

小さく笑い声を漏らすのは何度目だろう。自分でもわかっている。さっきから少しうつむいて、目を細めながら笑顔をマフラーに埋めている怪しい女。それが逢坂大河だ。

(手乗りタイガーがこの体たらく)

おかしくて仕方が無い。でも、おかしくてもいいじゃない、と大河は思う。だって今年は、自分も町中に溢れる幸せなクリスマスの一部なのだ。幸せなのだ。これから竜児と、施設の子に送るプレゼントのお買い物。気分がうきうきするのなんて当然。
ちょっと寒いけど、こうやってつま先を眺めていたら、もうすぐ竜児がやってくる。そしたら……

「ねぇ、彼女、ひとり?」

え?と顔を上げたときは、まだ笑顔のままだった。だからだろうか、声を掛けてきた男の顔に驚きの表情が走るのがわかった。『らっきー、すんげぇ可愛い子ちゃん!』とでも思ったのだろう。うきうき気分がぺしゃんこになる。

「彼女かわいいね。さっきから誰か待ってるみたいだけど、すっぽかされたのかな?」

ち、なれなれしい。

話しかけるなハゲ、と思わず口をつきそうになって慌てる。いけないいけない。クリスマスまではいい子でいなきゃ。何しろサンタは実在しのだ。やってきたのは代理のクマだったが、それでも奇跡は起こった。誰にも見てもらえなかった自分に溢れんばかりの愛が与えられたのだ。
受け取ったプレゼントは100年分。だから、この先100年くらいはクリスマスの時期はいい子にしていなきゃいけない。『悪い子だから竜児君没収』などと言われたら、生きていけない。

「私、人を待ってますから」
「冷たいなぁ。かわいいんだから冷たい顔するともったいないよ。俺もひとりなんだ、ね、お茶でもしない?」

一人で青汁でもすすってろボケ。

アッパーを繰り出しそうになる右腕に落ち着け、落ち着けと呟いて、つん、と右を向く。知らん顔だ、知らん顔。竜児早く来ないかな。

179 :待ち合わせ ◆fDszcniTtk :2009/12/08(火) 08:01:15 ID:DCfJDZLo
「ね、名前なんて言うの?」

ぷぃっと左に体の向きを変える。前に回り込んできた男が

「あ、おれ怪しい奴じゃないよ。大学生。ほら、学生証もあるよ」

と、見せなくてもいい学生証を見せる。

なんてことかしら、と大河は独りごちる。これから竜児も私も大学に進学するって言うのに。大学ってひょっとしてこんな奴ばっかり?折角のクリスマスなのに、アホ面さげてるんじゃない。消えろ。この場で天に召されろ。それ以外にお前の人生が報われる事はないだろう。

と、思いつつもいい子タイガーは右に体を向ける。あくまでサンタにいい子をアピール。自分がどれほど命拾いしているか理解していない男が、また前に回り込む。

「俺、松井って言うんだ。マツイトミカツ。おもしろい名前でしょ?じいちゃんが付けたんだ。彼女なんて名前?」

まずいトンカツなんかに用は無いのよ。あんたなんか竜児の包丁で8ビートで刻まれてブサ…個性的な顔のインコちゃんのエサになるがいい。

折角のクリスマス・ツリーの前なのに、 寒空の下、こんなアホにつきまとわれている自分が悲しくなってくる。何てことだろう、これが12月でなければ腿に見えないキックを叩き込んで一発解決なのに。冷え切った体を震わせて、もう何度思ったかわからないことを、また思う。
竜児早く来ないかな。

「ね、彼氏と待ち合わせ?ひょっとして本当にすっぽかされたんじゃない?」

このヌケサク。

思わず怒りに毛穴が開く。いけないいけないと思いつつも、マフラーの下、唇の端が醜くめくれ上がる。かろうじて顔を伏せているが、眇めた片目は野獣のそれ。いけないのに。クリスマスなのに。

「ねぇ、彼女、話くらいしようよ」

しつこいんだよ、三下!と、向こうずねに全力のキックをお見舞いしそうになったその時だった。

「悪い大河!待ったか?寒かったろう?………て、知り合いか?」

待ちに待ったその声に、冷え切った体が一瞬で熱くなる。頬には桜色が散り、視界に舞うのはダイヤモンド・ダスト。

「竜児!」

思うよりも早く、タタッと駆け寄って、恋人にしがみつく。

「おう、どうした」
「竜児、怖かったの!」
「おう?」

と、竜児が顔をあげたのだろう。瞬間、大河の後ろでそれまでしつこく迫っていた大学生が、ひっと声を上げるのがわかる。ああ、だめだめ。私いま意地悪な顔で笑っている。と、思うもののどうにもならない。笑いをこらえて腹筋が揺れる。ざまあみろアホ大学生。
お前なんか大魔神によって炎の池に放り込まれろ。

180 :待ち合わせ ◆fDszcniTtk :2009/12/08(火) 08:02:50 ID:DCfJDZLo
もちろん、こんな場面で竜児が『俺の女に手を出してんのか。いい度胸だな』などと言うはずもない。ていうか、おそらく『すみません、大河が何か失礼をしましたか?』くらい、いきなり下手で出るつもりだったはずだ。が、その前に大学生のほうが

「すすすす、すみません!知らなかったんです!」

と、存在しない事実を知らないことについて、心よりお詫びを申し上げながら走って逃げてしまった。

「おい、大河。なんだんだよ、これ」

しがみついていた体を引きがされて、喜びの笑顔を満面に浮かべる大河と、切り裂きそうな目つきの竜児がようやく顔を合わせ。別に大河を殺してやろうと思っているわけではない。傷付いているのだ。

「竜児はいつも私を助けに来てくれるね」
「なんだよ、あいつに何かされたのか」

今更ながら大学生が逃げた方向を睨み付ける竜児。遅い。

「何もされてないわよ。しつこくナンパされただけ」
「ナンパって………お前簡単に追い払えるだろう。てか、何でそんなに嬉しそうなんだ?」

わかっちゃいない。わかっちゃいないのよ竜児は、と大河は独りごちながら微笑む。たちの悪い男に絡まれているところを、さっそうと現れた恋人が救ってくれたのだ。こんな嬉しいシチュエーションが他にあるのかしら、と目を線にする。
竜児はいつでも自分を助けに来てくれる。クリスマスにはちゃんといいことが起きる。

「あぁ。ほんとに、ほんとに、私クリスマスだーーい好き!」

両手を広げ、紺に染まった空を見上げて、そう大きく声に出す。町中のイルミネーションを浴びるようにその場でクルクルと回る。

「おい、大河。そんな事してるとこけるぞ」
「竜児は心配性なんだから!」

クリスマスだというのに本当に心配性な奴だ!でも、恋人を想うその心意気に免じてはしゃぐのを止め、歩き出した竜児の横に並ぶ。大河の頬はずっと緩みっぱなし。

「何はしゃいでるんだよ」
「だってクリスマスじゃない」

そういって、笑顔で竜児を見上げ、腕を絡める。

ま、少々はしゃいでこけたってかまわない、と大河は思う。

だって、今年は竜児が横に居る。

(おしまい)



181 : ◆fDszcniTtk :2009/12/08(火) 08:03:38 ID:DCfJDZLo
操作ミスった orz

182 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/08(火) 13:05:05 ID:HtwxbPrm
>>173
今後の展開気になります。
ぼちぼちとがんばって下さい。

>>176
楽しい4年間が期待できそうですねえ。
2828します。

>181
なんか和むな・・・。
うん、とってもいい話だった。
この後の幸せそうなふたりが見えるようです。
乙でした。


183 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/08(火) 13:31:39 ID:1WU2nk4E
改行しないのかい

GJした!

184 : ◆QHsKY7H.TY :2009/12/08(火) 19:41:43 ID:cGK3gEql
>>174-175
ありがとう!
三題噺さんはいつも短期間でおもしろく、ホントに凄い。
書いてて思うけど、面白いのを書ける奴が凄いんじゃない、書き続けられる奴が凄いんだと思う。

>>181
あいかわらず文が上手いなぁ。
氏の作品のお気に入りはシリアル・クリーナーとクリーム・ソーダだったりする。

>>182
ありがとう、がんばる。
>>183
もし俺のこないだの竜児の夢のことを言ってるのなら、ごめんなさい。
どうしても1レスで纏めたくて無理やり詰めたの。


さて、久々に自分に締め切りなんて設けたからか脳がスパーク中。
いつまで続くかわかりませんが、今日も投下します。

185 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/08(火) 19:43:04 ID:cGK3gEql
「おっはよー高須君、たい、が……?」

場所は待ち合わせの駅のホーム。
櫛枝が元気に挨拶してくる……が、俺と大河が不必要に距離を開けてるのに首を傾げ、不思議そうにする。

「お二人さん、何かあった……?」
「「別に」」

同時に同じ言葉を言って、お互い睨みあい、同時に反対側にぷいっと視線をずらす。

「息はいつも以上にピッタリなんだけど……なんかおかしいなぁ」

櫛枝はそんな俺達を見て「うぅ〜む、明智君、わからんぜよ」と唸っていた。

「おはよう!!早いな三人とも」

そこに北村も合流する。

「おは「おぅ、おはよう北村」よ……」

しまった。
わざとではないがまたも大河と挨拶がかぶり、大河の声を打ち消してしまった。
案の定大河は俺をギロリと睨んでくる。

「うん?高須と逢坂は随分と険悪なムードだな、何かあったのか?」
「「別に」」

北村の質問に、これまた同時に応え、睨み合い、同時に反対側にぷいっと視線をずらす。


「ふむ、いつも以上に息はあっているな、あっはっはっは」

「合ってないぞ」
「合ってないわ」

誤解を解こうとこれまた同時に北村に言って、

「凄いな二人とも。今のはピッタリだったぞ。うむ、とても真似できん」

あっはっはと感心される始末。
これ以上は泥沼化になると思い、俺は黙ったが、向こうも同じ事を考えたらしく黙り込む。

「今度はだんまりまで一緒か?仲が良いなぁお前等」

「だから違うぞ!!」
「だから違うの!!」

口を開けばまたかぶる。
かと言って黙っても何故かかぶる。
こんなんでこの旅行、大丈夫だろうか。



***

186 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/08(火) 19:44:24 ID:cGK3gEql
川嶋が合流して、みんなで電車に乗って一路海へ。
席は適当に男子と女子で分けたが、どういうわけか川嶋は俺の隣に座りたがった。

「ねぇ高須君、逢坂さんと何かあった?」

その理由が何かと思っていると、川嶋はそう尋ねてくる。

「別に何でもない」
「本当に?」
「おぅ、そんなことよりみんなに朝飯作って来たんだ。食べてくれ」

俺は適当に話を切って、リュックからおにぎりを取り出した。
タッパに卵焼きとウインナーも用意し、水筒に熱いお茶も入れてきている。
軽いピクニック気分のお弁当だ。

「おおぉ!!凄いね高須君!!大河のお弁当見てて時々高須君の料理食べて見たかったんだよ!!」

櫛枝が嬉しそうに箸を動かしてくれる。

「流石だな、高須」

北村もおにぎりを頬張りながら喜んでくれた。

「ウチにお嫁に来る?」

川嶋は……いやお嫁って……お前な。
そう思って、大河に言われたことを思い出した。

『……アンタ鈍いから気付いて無いだろうけど、あの女アンタに気があるわよ絶対』

「高須君?」
「あ、いや、俺は男だから嫁じゃねぇだろ」

不思議そうにしている川嶋にそう苦し紛れに返す。
大河は、おにぎりの感想をくれなかった。



***

187 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/08(火) 19:45:29 ID:cGK3gEql
「うわぁ、凄い!!」

櫛枝が感嘆の息を漏らし、次いで嬉しそうに叫んだ。
目の前には綺麗な浜が広がるプライベートビーチ。
別荘という割に広そうな家。
普段は住まないのがMOTTAINAIくらいの家だ。

「ここに泊まれるの?」
「ええそうよ実乃梨ちゃん。でもまずは掃除が先かな」

瞬間、俺の背筋がゾクっとした。
先程の話では半年から一年は人が来ていないそうだ。
これは……大変な戦いになりそうだぜ。

「えぇ〜掃除〜?まずは海に行こうよ!!」

櫛枝は言うが早いか海へと駆け出す。

「ようし、俺も」

北村も櫛枝に続くようにベランダに荷物を置いて櫛枝を追いかけた。
大河はフラフラと北村に付いていく。

「私も行くけど、高須君どうする?」
「え?俺は……」



***



「そーれ!!」

北村君がビーチバレーボールをレシーブし、それを私がトスでみのりんへ。
みのりんはそれをレシーブしてばかちーへ。
ばかちーはそれをトスして北村君へ。
そうやって、私たちは四人でビーチバレーをしていた。
あの馬鹿は、案の定来ない。
きっと死ぬほど好きな掃除に夢中なんだ。
だいたい何よ今朝のアレ、嫌がらせ?

「逢坂ー?行ったぞー!!」
「へ?わっわわわわ、とぅ!!」

つい強めのスパイクを打ってしまう。

「おおっと?こいつは良い弾だ」

みのりんは目を輝かせてレシーブ……してボールを直上に持ち上げ、

「アタ●クbP!!」

私と同じようにスパイク。
スパイクと言っても所詮ビーチバレー用のボール。
そんなに固くは無いし、ビニール素材のものだからスピードもたいした事はない。
ばかちーはそんなスパイクを普通にレシーブで北村君へ返した。

188 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/08(火) 19:46:51 ID:cGK3gEql
北村君は、

「とうっ!!」

何かジャンプして……ってうそぉ!?
高い……めっちゃくちゃ高い!!
太陽の光を背中で浴びながら、渾身のスパイク!!……は強すぎてボールは浜でやっていた私たちの場所を大きく通り過ぎ、海へ。

「あ、すまんすまん」

北村君はつい力が入りすぎたと謝り、波にさらわれそうになっているボールを取りに海へと入ろうとし、

「私もいくよ北村君、どっちが先に取れるか競争だッ!!」
「何ッ!?いいだろう、受けて立つぞ櫛枝!!」

みのりんとの競泳になった。

「あーあ、行っちゃったぁ、まぁいいけど。ねぇアンタ」
「……何よ?」
「高須君と何かあった?」
「……別に」

今はあの馬鹿の名前も聞きたくない。
そんな態度を取っていると、

「ふぅ〜ん、まぁ亜美ちゃん的にはいいんだけど?でもアンタはこのままで本当に良いわけ?」
「どういう意味よ?」
「……アンタ気付いて無いの?」
「……何が?」

いちいち核心を隠すような口ぶりが気に入らない。
言いたいことがあるならハッキリと言えば良いのに。

「……やーめた。考えてみたら私がアンタにそれを教えても何の得にもならないし。“お互いに”ね」
「……はぁ?言いかけて止めんの?」
「それよかあの二人泳ぐの速くね?ほらもうあんなとこまで行ってるよ」
「話を逸らすなばかちー。言いたいことがあるならさっさと言え」
「だから言わないって。あーあ、高須君何やってんだろう?」
「あの馬鹿は掃除してるんでしょ。女よりも掃除に興奮するような奴よアイツは」
「ふぅん、“高須君の話”には食いつくんだ」
「………………」

何だってのよ、一体。
イライラする。
このイライラは初対面のファミレスの時以来かもしれない。

「まぁ亜美ちゃんにはカンケーねーけど。さぁて、高須君の手伝いでもしてこようかな」

んっと一伸びして、ばかちーは坂を登り別荘に向かい出した。
私はその背中を見つめ、次いで既にかなり沖にまで泳ぎに行ってしまった二人を見てから、ばかちーを追いかけた。



***

189 :ドラとら!:2009/12/08(火) 19:47:55 ID:cGK3gEql
「ククククク……」

雑巾を絞る。
バケツの水がより一層汚れ、その分床の汚れが消える。
雑巾を絞る。
バケツの水がさらに汚れ、その分テーブル等に付着していた埃が消える。

「ククククク……」

口端から笑みが零れ、

「……キモ」

イキナリ貶される。

「ククククク……え!?うわっ!?」
「何で高須君一人で掃除してんの?少しくらいみんなで先に遊んで、それからみんなでやった方が早いのに」
「あ、いや……」

俺が半年以上掃除をされていない別荘という名の魔屈と戦っているウチに、いつの間にか川嶋が戻って来ていたらしい。

「こいつはそういう奴よ」

と、大河もいたようだ。

「まぁいっか。私も手伝うね」

川嶋が雑巾を手に取る。

「あ、おぅ」

川嶋は何処か別の場所の掃除に向かったらしく、すぐにいなくなる。
場に取り残される俺と大河。
なんだか気まずい。

「あ、たい……」

意を決して話しかけようとしたが、大河は手近にある雑巾を持つとふいっと何処かに行ってしまった。
何だか、急に罪悪感を感じた。



***

190 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/08(火) 19:49:15 ID:cGK3gEql
すぐに北村達も戻ってきてみんなで掃除を始める。
もっとも、櫛枝は窓は綺麗に拭くが桟は拭かないので俺が拭き、北村は掃除機をかけたが隅っこの方には手をつけていなかったので俺が箒で掃いた。
大河は俺が一度拭いたところを拭き直して……いや、何も言うまい。
川嶋は各部屋を掃除しているようだ。
と、

「おい高須、亜美の話だと倉庫に原付があるんだそうだ。ちょっと町まで買い出しに行かないか」

北村が今後のことも考えての買い出しを提案した。
恐らく思い荷物を持つことにもなるだろうから男二人で、それも俺がいれば食材は大丈夫、と踏んだのだろう。

「おぅ、わかっ……いや、それなら大河を連れていってくれ」
「逢坂を……?」

俺は、今朝とさっきの件を思いだし、次いで昨日大河が言っていたことを思い出す。

『竜児、私この旅行で北村君に告白しようと思うの』

俺は言えば手伝ってやると言った。
気持ちの整理はついてないが、大河はきっと本気で北村が好きなのだろう。
だから、さっきの罪悪感も手伝ってこれくらいのお膳立てはしてやることにした。



***



「それなら大河を連れていってくれ」

竜児がそう言った時、私は言いようの無い寂しさと、自分でもよくわからない怒りを感じた。
昨日あんなこと言っておいて、結局手助けはするってワケ?

「私、バイク怖いからいかない」

私が断ったのが意外だったのか、竜児は目を見開く。

「そうか、なら仕方ないな」

北村君はすんなり受け入れてみのりんかばかちーを誘ってくると言い、いなくなった。

「……お前、いいのかよ?」

焦点の合わない目で竜児は私を見つめる。
私は、自分でもよくわからない怒りを鎮める為に、そんな竜児を無視してその場を後にした。
いつもなら、もう少し食らいついてくる竜児が、今日は何も言ってこないのが……寂しかった。

191 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/08(火) 19:50:40 ID:cGK3gEql
程なくして北村君はみのりんを連れて買い物に行き、大量にいろんなものを買い込んできた。

「今日はカレーだね、高須君、辛いのをお願い」
「おぅ」

ばかちーが懲りずに竜児にまとわりついている。
竜児は、あまり私が言った事を気にしてない、というより信じていないようでばかちーにも変わらぬ態度を取っているように見える。
……って、しまった!!私、辛いカレー食べられない!!甘口じゃないと……。
そう思って竜児に手を伸ばそうと思ったが、

『……断る、と言ったら?』

昨日の竜児の言葉が脳裏をよぎる。
なんだかんだで竜児は今まで私の無理難題を聞いてくれていた。
だから、初めて竜児に断られるという経験が、私を珍しく臆病にさせていた。
頼んでも、また断られるんじゃ無いだろうか。
そもそも、今日はまともに話すらしていない。
竜児が何について怒り、断ったのかがわからない以上こちらからは動けないし動きたくない。

「大河ー?どうかしたー?」

みのりんが私の手が止まっている事に気付いて声をかけてくれる。

「ううん、何でもない」

私は、心配かけまいとして仮面を被った。



***



そうして、夕食時はやってくる。
みんなの席の前に出される竜児のカレー。

「俺の普段使ってるスパイスが無かったから、あり合わせでの作り方だけど、櫛枝のリクエスト通りそれなりに辛いカレーにしたぞ」

その言葉が私に再び絶望を与える。
私は辛いカレーは食べられない。
竜児はそれを知っているはずだけど、今辛いカレーと言った以上、今回はみんなに合わせて辛いカレーにしたはずだ。
どうしよう、今からでも竜児に言って何か別な物を………………嫌だ。
自分から折れるなんて、絶対嫌だ。
それじゃ悪いのは私じゃないのに私が悪いみたいじゃない。

「うん、美味しい!!けど、辛い!!でも美味い!!凄いよ高須君!!あんた天才だ!!」

みのりんがさっそく一口食べ、存分に美味さと辛さをアピールしてくれる。
うう、辛さはいらないよみのりん。
目の前の美味しそうなカレーが悪魔に見えて来る。
けど、それとは無関係に匂いが私の胃腸を鳴らし空腹を訴える。
うう、とりあえず一口だけでも食べてみよう。

「あむ……あれ?」

辛くない、いつもの……甘口だ。
私は驚き、そっと竜児を見る。
竜児は私など見ずにもくもくとカレーを食べていた。
竜児の後ろに見えるキッチン、何故か、鍋が二つ出ていた。

192 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/08(火) 19:54:32 ID:cPYb+/6v
wktk

193 : ◆QHsKY7H.TY :2009/12/08(火) 19:55:22 ID:cGK3gEql
とりまここまで。
前回投下分の夢の大河の台詞が文字抜けてたのにショック。
そんなわ『け』ないじゃない、が正しいです。
おかしいなぁ、直してる時に間違って消しちゃったのかなぁ。
まとめ人様、宜しければ纏めるときに修正お願いします。

続きがんばります。

194 : ◆QHsKY7H.TY :2009/12/08(火) 19:57:19 ID:cGK3gEql
>>192
サンクス!

195 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/08(火) 20:09:57 ID:cPYb+/6v
>>194
乙でした!
読ませてもらった

196 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/09(水) 01:13:26 ID:tyOf/ykw
GJ
いいかんじです

197 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/09(水) 01:50:20 ID:BptbE1Th
>>181
くはぁ! 悶死しそうになったw
幸せに満ちた大河がこれほど可愛いとは!

> 自分も町中に溢れる幸せなクリスマスの一部なのだ。
が泣けた。他にも色々、大河の心情を堪能しました。まだまだ行けますねw 
氏の作品はどれも好きですが、You are too beautifulと検察側の証人の表現がお気に入り。


198 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/09(水) 01:55:08 ID:BptbE1Th
>>193
連日の投下、乙です。
2人の喧嘩が新鮮。あみちゃんの絡み方もらしい。
原作に添いつつ、っていうのは難しいと思いますが、違っている部分が楽しめます。
締め切り設定しちゃうと大変だと思いますが、無理のないよう、ぼちぼちで行って下さい!


199 : ◆QHsKY7H.TY :2009/12/09(水) 19:44:27 ID:Qfz4Mnim
>>195-196
ありがとう、最近情景描写が少ない事に気付いてちょっと後悔中。

198
ありがとう、ぼちぼちいきますw


さて、繋ぎ的な話をまた投下します。

>>191続き

200 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/09(水) 19:45:44 ID:Qfz4Mnim
***



ばかちーに決められた部屋に入ってベッドに腰掛け、溜息を吐く。
竜児はどうやらカレーを二つ作ったらしかった。
辛いのと甘いの。
あれは普段の竜児らしい気遣いで、意地を張ってる自分が少し馬鹿らしく思える。
思える、のに……。

「……はぁ」

今だ竜児と会話が出来ない。
向こうは、拒絶とは言わないが、一向に話しかけてこない。
昼間、一度話しかけられたけど、あの時は無視した。
それから、まともなアクションらしいアクションは北村君とのバイクだけだ。

「私、なにやってるんだろう」

本当は、この旅行で北村君に告白するつもりだったのだ。
上手くいくにしてもいかないにしても、一区切りつけるつもりだった。
それが、まさかそのスタートラインにすらつけずにいるなんて。

「それも、竜児が断ったりするから……」

全く、何が気に入らないのかわからない。
私が折角提案してやったのに。
私があいつの好きな奴以外の女が近づくのを阻止してやろうと思ったのに。
それともまさか、あいつの好きな人ってばかちー?
……ありえないわね。
私だって馬鹿じゃない。
最初にアイツの家に夜襲をかけた時に見せてくれなかったノート。
あれにはアイツの好きな人が書いてあったに違い無い。
私にはわかる。
あの時のアイツの表情はそんな顔だった。
目つきの悪さを最大限歪ませて慌てふためく……はて?
ずっと前、それと割と最近、その表情を見た気がする。
う〜ん……思い出せない。
まぁいい、今は昔のことより今とこれからを考えねば。
とにかく、ばかちーと初めて会った時ばかちーのことをあまり知らなかった以上、ばかちーはあり得ない。
こうなったら直接聞き出そうか、そう思っていると部屋の外から声が聞こえた。

「高須君、ちょっといいかな?」

ばかちー……ではなくみのりんが竜児を誘って何処かに行ったようだった。



***

201 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/09(水) 19:46:47 ID:Qfz4Mnim
「どうだい高須君、美味しいかい?」
「おぅ、小豆のモナカは美味いぞ」
「そっか、抹茶はハズレだよ、トホホ」
「あ、俺の半分食うか?」

俺は櫛枝に呼ばれて星空一杯の空の下、バルコニーに来ていた。

「いやいや、甘味処は控えねば。ダイエット戦士としては」

ニカッと笑って櫛枝は抹茶のアイスモナカを食べきる。
一体、どうしたと言うのだろう。
まさか内緒で買ってきたアイスモナカを二人だけで食べるために呼んだ、わけでは無いだろう。

「ねぇ、大河と何かあった?」

そう思っていると、櫛枝はここにきてようやく本題に入った。

「またそれか?別に何でもねぇって」
「嘘。だって高須君ずっと辛そうにしてるもん」

櫛枝は空を見上げて、クスリと笑う。

「人工衛星が動いているよね」
「……ああ」

空に瞬く星に混じって動く光点。
恐らく人工衛星だろう。

「不思議だよね。人工衛星からは私たちが見えるのに、私たちからは人工衛星が光にしか見えない」
「ずっと遠い所にいるからな」
「そうだね」

櫛枝はただ夜空の一点を見つめながら、言葉を紡ぐ。

「ずっとずっと遠いところ、手を伸ばしても届かない程に遠いところにいるから、私たちには見えないんだ。人工衛星にとっては、それほどの距離でも無いのに」
「いや、人工衛星から見ても遠いだろ、地球は」
「そうかな?人工衛星は私たちを点じゃなくきちんと見れるし、難しい計算は一杯あるだろうけど実際に地球に落ちてこようとした時の時間は、案外たいしたもんじゃないよ?」
「それはそうだが……」
「人工衛星からは近く、人間からは遠い。物理的には同じ距離なのに、感じ方はこんなにも違うんだ」

櫛枝の言いたいことが、イマイチわからなかった。
その一言を聞くまでは。

202 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/09(水) 19:47:49 ID:Qfz4Mnim
「高須君は、一体誰の人工衛星なのかな?」

衝撃が奔る。
一瞬にして、言わんとしていることを理解してしまった。
人工衛星からは見えているのに、地球人は人工衛星が見えない。
人工衛星からは近いと思える距離なのに、地球の人からは遠い。
まるで……片思いのようだ。

「知ってたのか?櫛枝……」
「いんや、私は“何も知らない”よ。そしてこれからもきっと“わからない”。でも、私は長く大河と……高須君を見てきたから」
「……そうか」

いいや、櫛枝は理解している。
だけど、それをここで言う気は無く、知らないということにしておくらしい。

「もう一回聞くけど、大河と何かあった?」
「まぁ、あったと言えばあった、かな」

俺は観念したように肯定した。

「そっか……」

それきり、櫛枝は少し口を噤む。
夏の夜に、涼しい風が吹く。

「大河はさ、ずっと独りだったんだ」

ようやく口を開いた時、櫛枝はもう空を見るのをやめていた。

「聞いてるかもしれないけど、家族のことでいろいろあって、今は……ううん、“この前までは”独りだった」
「……この前?」
「君だよ、高須君。大河は高須君と一緒にいるようになってから随分と元気になった」

「……俺は何もしてないよ」
「何もしないでも、“傍らに居続けてあげられる”事が、大切なんだ」
「………………」
「ねぇ高須君、大河の傍らに居てあげて。大河を独りにしないであげて」
「でも、それは俺じゃ……!!」

俺が、何か反論しようとした時、櫛枝はぐっと右の拳を俺の正面に向け、軽く俺の顔、口の辺りを小突いた。

「“一人”になっちゃうのは良いの。でも“独り”は辛いから。大河を“独り”にさせないでいられるのは、きっと高須君だけだよ」

櫛枝はそう言って、大河を宜しく、とウインクをした。



***

203 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/09(水) 19:48:40 ID:Qfz4Mnim
「ごめんね、あーみん」

高須君が、少し困った顔をしながらも一応頷き、バルコニーを出ていってからすぐ、

「べっつにぃ?私もこのまま高須君と上手くいっても後味悪いだけだし」

あーみんが出てきた。

「ってか、アンタもまたチビ虎と一緒で妙チクリンな渾名つけるわね」
「そうかな?」
「そうよ、センス悪いし、趣味も悪い」

そう言うあーみんに、私は笑う。
そんな私にあーみんは、

「アンタはそれで良いの?」

背を向けて聞いてきた。

「うん、もういいんだ」
「物わかりの良いことで。それとも諦めが早い、かな」
「両方違うよ。だって私は……」

そう言って、夜空を見上げる。
決してこちらからは確認出来ず、向こうからは出来る人工衛星。



───────クラスが一緒になって真っ先に話しかけた。
───────大河の為にわざと悪ぶった時のフォローも率先してやった。
───────あーみんと大河の板挟みになっている時に助け船も出した。
───────今もこうして、大河と喧嘩して“落ち込んでいる”時に勇気づけた。



「私は、人工衛星、だから」

私はそう言って、右の拳を自分の唇に押し当てた。



***

204 : ◆QHsKY7H.TY :2009/12/09(水) 19:50:32 ID:Qfz4Mnim
ここまで。
よく書けたと見直してて、物語的には進んでないのに愕然とした俺ガイル。

205 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/09(水) 20:47:32 ID:TOZ/Xghx
ヒャハー

続きが気になる

206 : ◆fDszcniTtk :2009/12/09(水) 21:58:50 ID:sPU8gJvi
>>182-183
サンキュー!

>>184
ありがとう。シリアル・クリーナーが好きだって言ってくれる人は珍しいな。
あれはタイトルの思いつきだけだった割に、書いてる間は楽しかった。
読んで楽しんでもらえて何より。

>>197
やっはー!書いてる間の俺もニヤけて、我ながらキモかったよ。

>他にも色々、大河の心情を堪能しました。
ありがとう。こういう感想は本当に嬉しいよ。



207 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/09(水) 22:07:36 ID:XGJ2zKpi
おおぉう!
なんだいなんだい!?
いつの間にか凄いことになってるじゃないかこのスレw
エンジェル大河の季節は伊達じゃないねぇ!

皆様GJ!!!

208 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/09(水) 23:16:49 ID:79xHndwh
44 名前: ◆wVNPBvxl56[sage] 投稿日:2009/12/02(水) 18:32:46 ID:???
まさかの再規制w
ここでレスさせてください。

18スレ
>>109-112 >>115
サーセンwww
としか言えませんがw
虎注書いたら書きます。

>>113
妄想が広がりますな。

209 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/10(木) 00:16:54 ID:BAVXBNCs
>>204
GJっす。
みのりんの出番が少なめ… と思っていたら、キタキタキター、ガツーン頂きましたー
時間的には進んでいませんが、物語はめっちゃ進んでますよ
そして竜児、やっぱり恐ろしい子w

210 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/10(木) 23:32:09 ID:yxAz9Qno
前作「孤独な月ウサギ・・・」へ感想などありがとうございました。

>>176
24時間、ずっと一緒。
いや、もう、大変なことに。

>>181
読んでるこっちまでが暖かくなりました。
いいなあ、この大河、GJでした。

>>204
超乙です。
続き激しく期待してます。


以下に新作を投下します。
タイトル、例によって未定。
ひたすらまとめ人様のお情けにすがります。
全然、思い付きません。
7レスほど使います。

211 :ノンタイトル ◆x6jzI2BeLw :2009/12/10(木) 23:33:23 ID:yxAz9Qno
改札口を見える柱の影に立ち、ホームからやって来る人並みに鋭い目線を向けている竜児。
既に長い時間、そこに立っているのか、苛立ち感が組んだ腕の先でリズミカルに動く指先にありありと現れていた。
別段、竜児は私立探偵のバイトを始めて張り込みをしているわけではない。
単に人を待っているだけなのであるが、事情を知らない通行人は竜児を避けるように柱の前をよけて歩み去る。
まるでそこに見えない壁があるのではと思わせる光景。
ぽっかりと竜児の前は無人の広がりが生まれていた。
そんな出来上がってしまった空白地帯へ、恐れ気も無く足を踏み入れる人影がひとつ。
竜児の指がぴたりと止まり、あれだけ鋭かった目付きが和らぐ。

「・・・遅いぞ、大河」
「寝坊しちゃった」
悪びれた様子も見せずに言う大河。
「あれだけ俺がモーニングコールしただろ」
「うん、だからおはようって言ったじゃない」
「で、どうしたらこんなに遅くなるんだよ?」
「どうしてかな・・・あれ?おかしいな?」
小首を傾げる大河に竜児は「はあ」と小さくため息。
「大方、また寝ちまったんだろ」
ベッドの中で電話に出ながら、そのまま、また寝入ってしまう大河を思い浮かべて竜児は肩を落とす。
「あ〜俺が起こしに行けたら」
「うん、いいよ竜児、起こしに来て」
「あのなあ・・・俺を犯罪者にしたいのか、大河は」
大河は可笑しそうに笑う。
「ごめん、竜児。今度は気をつけるから」
笑いを収め、大河は謝罪の気持ちを込めて竜児に軽く頭を下げた。
「うりゃ」
その大河の頭を竜児はくりくりと撫でた。
大河は目を細め、竜児にされるがまま。
「これくらいでいいでしょ・・・髪が乱れる」
髪がぼさぼさになるに及んで大河はやんわりと竜児に中止を求めた。
「遅刻した罰だ・・・」
口ではそんなことを言いながら竜児は手櫛で乱れた大河の髪を整えてやる。
整え終えて竜児はひと言。
「よし、大河は今日もかわいい」
「あ、あったりまえでしょ・・・あんたの彼女なんだから」
わずかに顔を赤らめて大河は当然よと胸を張る。
「う〜ん」
竜児はうなる。
「何よ?」
「以前はこんなこと言うと大河・・・真っ赤になって照れてくれたんだが」
効き目が薄れたかとぼやく竜児。
「悪かったわね、どうせ鮮度が落ちたって言いたいんでしょ」
「そんなことねえな」
「どうだか」
顔の下に隠した牙をチラ見せし、大河は竜児を威嚇する。
「大河はかわいいじゃない・・・そう、きれいになった・・・だ」
竜児に真顔でそう言われ、大河は今度こそ本当に真っ赤になった。
「あ、あんた、なにそんなこっ恥ずかしいこと言うのよ・・・こんな駅の改札で」
突き掛かる大河を竜児は軽くいなして言う。
「会いたかった、大河」
「ずるいよ、竜児。先に言わないで」
不満げに大河は口を少し尖らす。
「わりい・・・じゃ、行くか」
そんな大河に竜児は笑みを浮かべ、出発を促した。



212 :ノンタイトル ◆x6jzI2BeLw :2009/12/10(木) 23:34:46 ID:yxAz9Qno

空白の長い一年が終わり、大河は再び竜児の元へと戻って来た。
その大河は都内でも有数のトップクラスの女子大への入学切符を手にしていた。
春から女子大生よと誇らしげに言う大河だったが、少し顔を曇らせた。
一人暮らしを始めることになったんだけど、大学の女子寮に入らないといけないのと打ち明けた大河。
それが一人暮らしの条件なんだと言う。
門限とか厳しくて、何かあると親に通報されるんだと憮然とした表情で文句を付ける。
竜児は過保護な方針を取る大河の両親にある意味、大河がこの一年でどれだけ愛情を勝ち取れたのかが見えて、胸が痛くなった。
大河のことをどうでもいいと思っているなら、マンションに投げ捨てたあの父親みたいなことするはずだが、それしない大河の今の両親。
大河は間違いなく、愛情を受けている。
そう実感できて、離れていた一年が決して無駄じゃなかったことに竜児は感謝した。

その竜児はと言えば国立大学への進学を果たしていた。
今の借家から通うには少し遠いキャンパス。
下宿すればと言う泰子の意見を退け、竜児は遠距離通学の道を選んだ。
経済的にも厳しいと言う事情もあったが、ひとりでする食事の虚しさを考えれば泰子を置いて行きたくないと言うのが竜児の本音だった。
学費こそ祖父の支援を受けた竜児だが生活費などのもろもろまで面倒を掛けたくないと言う気持ちもあり、細かな教材費などの支払いを捻出するためアルバイトを週に何回か始めていた。
泰子は体調のこともあり、夜の仕事の回数を減らすように竜児は望んだ。
やっちゃんは好きなんだよね、この仕事・・・笑いながら言う母親だが過度の飲酒が体に良い訳がない。
それでも、竜児が大学を卒業するまでは働くと言ってきかない泰子。
結局、四年後の卒業を待ってこの世界から足を洗うことを約束させ、今まで通り夜の仕事へ出掛けさせた竜児だが、その出勤回数を減らさせることにしたのだ。
高須家の大黒柱の収入が減れば、家計が厳しくなるのは致し方なく、泰子も竜児のアルバイトを学業へ支障が出ない範囲で認めざるを得なくなっていた。

必然的に日々の学業とアルバイトなどに追われ、竜児と大河が会えるのは日曜日だけとなってしまっていた。
以前はそれでも平日に無理して時間を作り、会っていたふたり。
それが睡眠時間を削る様な真似をしてまで竜児が大河に会いに来ると知って、大河は悩んだ末、会うのは日曜だけにしようと切り出したのだった。
それ以来、大河が竜児を訪ねて来るのが日曜日の慣わしとなり、今日まで続いている。


213 :ノンタイトル ◆x6jzI2BeLw :2009/12/10(木) 23:35:44 ID:yxAz9Qno

「いつもこっち来んの大変だろ?」
歩きながら竜児は大河に言う。
「乗換えが面倒だけどすぐだから・・・それに大橋の街が懐かしいし・・・竜児のとこが一番、落ち着く」
それにと、大河は付け加える・・・竜児に来て貰っても男子禁制の女子寮じゃ入れないでしょと、笑った。
「それとも、女装でもする、竜児?」
「・・・・・・やめとく」
「あ、今一瞬、そうしようとか思わなかった?」
「ねえよ」
「じゃあ、何よその間は?」
「いや、ちゃんと部屋は片付いているのかとか・・・洗濯物は溜まっていないだろなとか・・・考えちまって」
そんなことを真剣に言う竜児に大河は呆れる。
「大丈夫だから」
「あのマンションの惨状を知っている俺としては俄かに信じられねえ」
「ちょっとは信用してよ!」
疑わしそうな竜児の視線に堪り兼ねたように大河は叫ぶ。
止む終えず部屋の様子を写メで送ることを竜児に約束させられる大河。
「こんなにプライベートに干渉して来る彼氏もいないわ、まったく」
「あの頃のおまえにプライベートなんてあったのか?」
そう言われて大河は考え込む。
家のマンションは出入りし放題・・・合鍵まで渡してたし。
家の中の備品は全て竜児に筒抜け・・・備品どころか洋服の管理までさせてた。
もしかしたら、下着の数まで把握されたかも。
おまけに起こしに来いと竜児を呼びつけて・・・パジャマ姿は見せたし、寝顔だって・・・。
なんか、これって・・・。
大河は顔が赤らむ思いだった。
「・・・若気の至りと言う奴よ、うん」
「何だって?」
「独り言よ・・・そうだ、ねえ竜児」
「何だよ?」
「今日のお昼・・・久しぶりに竜児の作ったチャーハン食べたい」
「チャーハンか」
竜児は少し苦い顔。
「何よ。嫌だって言うの?」
喜怒哀楽がすぐ顔に出る大河。
たちまち不機嫌さを身に纏う。
・・・『使えない、駄犬ね』そんな台詞が竜児の脳内を流れる。
そういや、こいつに駄犬って罵られたのはいつが最後だったかな。
そんな物思いにふける竜児だが、大河の声にすぐ現実に引き戻される。
「久しぶりに言おうかしら・・・この・・・」
『駄犬』
大河と竜児の声が唱和する。
そのまま竜児と大河は顔を見合わせ、大笑い。



214 :ノンタイトル ◆x6jzI2BeLw :2009/12/10(木) 23:37:09 ID:yxAz9Qno

「あれ、やっちゃんは?」
高須家の居間に足を踏み入れた大河は泰子の不在に気がついた。
「ああ、今日は昼間のパートに出てる・・・夕飯までには帰って来るけどな」
「昼間、働いてるんだ・・・やっちゃん」
「おう、魅羅乃ちゃんはまだまだ健在だけどな・・・今は週に三回の出勤だ。でも、それだけじゃ食っていけねえから夜の仕事がない日はパートに行ってる」
「やっちゃんも大変なんだ」
「まあな・・・」
そんな話題を打ち切るように大河は鳥かごに近付く。
「ブサ鳥〜、元気」
「た・・・たい・・・たい・・・」
「おお、私の名前を呼んでくれるんだ」
「たい・・・やき・・・ぽっ」
白目をむくインコに大河は鳥かごの外からげん骨をかます。
「はん・・・しょぜんブサ鳥ね・・・ブサブサ」
インコ相手に真剣になってアカンベーまでする大河。
竜児はそんな大河にデジャヴを覚えながら、チャーハンの支度をするため台所へ向かった。


「はあ、やっぱり竜児のチャーハン、おいしい」
かつての2合半と言う勢いはないものの、竜児を上回る食べっぷりで大河はチャーハンを平らげた。
「満足、満足」
満腹感でいっぱいになったお腹を撫でて大河は幸せそうに顔をほころばせる。
「ごちそうさまでした」
「おう・・・こんくらい、いつでも作ってやる」
「じゃあ、毎日作ってクール便で送って」
毎日がチャーハン祭りだと大河は嬉しそう。
「栄養が偏るだろ・・・野菜とかちゃんと食ってるのか?」
「お母さんみたい・・・竜児」
ブーイングする大河。
「好きなものばかり食べてると体に良くねえ・・・ポッキーは週に一箱だぞ」
「はいはい、ちゃんと竜児の言いつけ守ってる。それに何度も言うけど寮だから、賄い付き。バランス考えたご飯が出てくるわ・・・あんまし、おいしくないけど」
「大河・・・ちゃんと作ってくれる人にだな・・・」
「・・・感謝の気持ちでしょ、わかってるわ。・・・だいたい竜児の作るご飯がおいしいからいけないのよ」
誉めているのか、貶しているのかと言いたくなる竜児。
苦笑しつつも、食後のお茶を大河に差し出す。
「ありがと・・・でも、その前に」
そう言いながら大河は食べ終えた食器を台所の流しへ運び、手早く洗い始めた。
居間で食器を洗う大河の後ろ姿を竜児はお茶を飲みながら、眺める。
いつの頃からか、片付け位はするわよと言って、大河は自主的に食器洗いを始めた。
多少は親元での修行の成果か、竜児の簡単な指導チェックが入った程度で、最近ではノーチェックで全く問題ないほど、食器洗いに関しては不安がなかった。
「お疲れさん」
居間に戻って来た大河は竜児の隣に座り、竜児は再度、お茶を手渡す。
「頂くわ」
ずずっとお茶をすする大河。
日曜の昼下がり、まったりとした時間が高須家の居間を流れてゆく。


215 :ノンタイトル ◆x6jzI2BeLw :2009/12/10(木) 23:40:13 ID:yxAz9Qno

ふと、ふたりの間で会話が途切れた。
まっすぐ竜児を見つめ大河は心持ちあごを上に向ける。
竜児は大河を見つめ返し・・・わずかに顔を傾かせた。
それを見て大河はゆっくりと目を閉じる。
そのまま、竜児は大河に顔を寄せた。
お互いの息遣いがわかるほどの距離がゼロになり、触れ合う大河と竜児の口元。
会えなかった時間を取り戻す様にそのまま動かない影が高須家の中にあった。

大河からそっと離れる竜児。
大河は目を開けるなりひと言・・・。
「あんた・・・にんにく臭い」
眉を少しばかり曲げて顔をしかめる大河。
「・・・そう言う大河だって」
一方的な物言いに竜児も反論する。
「だから、チャーハンは・・・まずかったんだよ」
竜児は昼食のメニューがチャーハンになることに乗り気でなかった理由を説明した。
「先に言いなさいよ」
「言えるかよ・・・その・・・何すると・・・こうだからって」
竜児はぶつぶつと歯切れ悪く言う。
「何、遠慮してんのよ?」
「だってよ・・・催促してるみたいで嫌じゃねえか」
「あのね、竜児・・・今さら何回もしてるんだから・・・気にしなくていいの」
「でもよ・・・やっぱりなあ」
変に煮え切らない竜児に大河はクスっと忍び笑い。
「じゃあ・・・この先は今日、遠慮しておく?」
大河はそう言ってにっこりと笑った。


216 :ノンタイトル ◆x6jzI2BeLw :2009/12/10(木) 23:41:40 ID:yxAz9Qno

「いちいち閉めなくていいのに」
「気分の問題だ」
部屋のカーテンを閉める律儀な竜児に大河は苦言を呈す。
「見られる心配なんてないでしょ」
大河の言い分に取り合うことなく、竜児はカーテンを閉める。
やや、薄暗くなる竜児の部屋。
その竜児の部屋の窓の外。
そこはかつて大河が住んでいた高級マンションの寝室の窓がある。
しかし、その窓にカーテンは掛かっておらず、部屋の中がわずかに見て取れた。
そこはがらんとした何も無い空間が寒々と広がっているだけの存在。
「次の住む人、まだ決まらないんだ」
「ああ、全然だな」
大河が出て行った後、一度は誰かが入居したものの、すぐに出て行ってしまい、それ以降、空き家状態のままの旧大河邸。
「意外と使い勝って悪いから・・・そこ」
「そんなものか?」
そんなこと言いながら竜児は大河を布団の上に横たえ、胸元のボタンを手際よく、外す。
広げられた大河の胸元に等高線で表したようなきれいな双子の丘陵地帯が現れる・・・わずかに足らない標高で、雪を被ったみたいに白っぽい山肌をさらす。
じっと見る竜児の視線を受けて、白から赤へと徐々にその色を変えてゆく。
「私だけ、ズルイ」
大河は自分の上着のボタンを全て外し切り、おへそをこんにちわさせた竜児の手を止め、逆に竜児の上着に手を掛けた。
「そう言えば、竜児」
「何だよ?」
「初めての時・・・なかなか上着脱がなかったね」
「大河があんなこと言うからだろ」
「レーズン・・・ね」
さも可笑しそうに大河は笑う。
「俺は気にしてたんだ」
「あれは竜児が悪い・・・」
「俺のどこがだよ?」
「起き抜けの私の前にいきなり上半身裸で現れるんだから・・・おまけにパンツ姿・・・覚えてない?」
「・・・覚えは・・・ある」
「あんな格好で私の前に出て来て・・・あれ、竜児じゃなかったら、即効で葬り去ったわよ。でもびっくりさせられたお返しはしないとって思ってあんなことを言ったの」
「・・・だから、大河が気にすると思って、俺は、その・・・脱げなかったんだ」
「馬鹿ね」
バツの悪そうな竜児に大河は微笑んだ。
そんな竜児に大河は手を伸ばし、自らの山頂へ誘った。


217 :ノンタイトル ◆x6jzI2BeLw :2009/12/10(木) 23:43:09 ID:yxAz9Qno

竜児に満たされていると言う感覚が大河の中心から広がる。
竜児が動くたび、竜児が触れるたび、そこかしこが次第にヒートアップし、大河を惑乱させる。
大河は次第に心のオクターブを低域から高域へスライドさせてゆく。
たったひとり、この世界で、全てを捧げてもいいと思った人。
その人、竜児と深いところで身も心も結びついた時、大河の気持ちは最高潮に達した。
竜児の切迫した響きが大河の耳に届く。
その瞬間、大河はただひたすら愛しい人の名前を呼ぶことで応えた。

真っ白な光がフェードアウト。


大河は自分のすぐとなりに横たわる竜児の胸の上に頭を預け、余韻に浸っていた。
部屋中を満たす残響が気だるい心地よさを産み出す。
大河の髪を優しく撫でる竜児。
「りゅーじ・・・りゅーじ・・・えへへ、りゅうじぃ〜」
これ以上の嬉しさは無いと言った様子で大河の頬は緩みっぱなし。
「竜児だ・・・竜児がいる」
すぐ側に竜児を感じ取れて大河はここぞとばかりに竜児に甘える仕草を見せる。
猫が飼い主に擦り寄るごとく、大河は竜児を慕う。
「なんかもうね・・・竜児でお腹いっぱ〜いって感じ。竜児が居れば何にもいらない・・・」
縁側で日向ぼっこをして、暖まったと言った雰囲気で大河はささやく。
「・・・大河」
「ん、なあに竜児」
竜児は自分の胸の上にいる大河を両手を使って優しく抱きしめる。
竜児の腕に身を任せ、大河は夢見心地。

絶対幸福感とも言うべき感情を味わいながら、大河はこの時間がずっと続けばいいのにと思った。


218 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/10(木) 23:44:29 ID:yxAz9Qno

今回は以上です。
ちょっとだけ大人になった二人を描いてみました。

エロは・・・無いはず^^;
そう見えたとしても、それはあなたの見間違い(笑)

次回は近日中に。
そんなに長い話じゃないのですぐ終わると思います。



219 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/10(木) 23:49:39 ID:CM75UoUd
これはアウトだろ。
脱がす前に止めてほしかった。
言い訳するにしても最後じゃなくて最初に欲しかった。
別に発表する場はあるんだから、別場所に落としても告知だけでもよかった。

あなたはいいかもしれないが不快に思う人はいる。
見通し甘いよ。

220 : ◆QHsKY7H.TY :2009/12/10(木) 23:53:04 ID:rgavKLbg
>>209-210
ありがとうございます。
書き方間違えました。時が進んでない、です。

新作乙です。
くそぉエロだと思った俺は汚れているのか。


ドラとら!の続きもひっそりします。

221 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/10(木) 23:54:44 ID:rgavKLbg
ザワザワしていた。
ばかちーなら止めに入る事ができただろう。
でも竜児を呼び出したのがみのりんならそれも出来ない。
どうして急に竜児を呼び出したのだろう?
それとも、竜児が暇が出来たら声をかけてくれ、とでも言っていたのだろうか。
どうして、こんなにも二人のことが気になるのだろう。

「はぁ」

竜児の部屋の前に立ち、ノックをしようとして止める。
もう先程から何度も同じ行動を繰り返していた。
会って何を話すというのか。
みのりんと何を話してたの?などとは聞けない。
そもそも、まだ私はまともに竜児と話が出来ていない。

「はぁ」
「……何溜息吐いてんだ、人の部屋の前で」

もう一度溜息を吐き、部屋に戻ろうとして……え?あれ?
背中から聞こえた声に振り返り、

「りゅ、りゅりゅりゅ……」
「いや無理に話そうとするな、舌噛むぞ」
「りゅうび痛ぁい!!」
「……言わんこっちゃない」

私は驚きと焦りの余り舌を噛んだ。
竜児はそれ見たことかと苦笑し、部屋に入る。

「あ……」
「?入らないのか?何か用があるんだろ?」

私がどうしていいか迷っていると、竜児は何処かサッパリしたように私に勧めてきた。



***

222 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/10(木) 23:56:01 ID:rgavKLbg
「何?腹が痛いから薬くれ?馬鹿!!なんでもっと早く言わないんだ!!」

俺は慌てて鞄を漁る。

「あ、で、でもそんなに酷くは無いから……」

大河はベッドに腰掛け力なく手を振るが、何だかその様が痛々しい。

「何言ってんだ、普段ならカレーでもおかわり三杯はする大河がおかわりしないなんて変だなとは思ってたんだ、相当酷いんじゃねぇのか?」
「ほ、ほんとにそれほどじゃ……」

大河は何か誤魔化そうとしているが、その素振りが何処かぎこちなく、俺はさらに慌てた。
鞄を漁って数分、最悪な事態が発覚する。

「やっべぇ、腹痛の薬は持ってきてねぇ。まさか大河が腹痛になるなんて思ってなかったから……失敗した」
「あ、だったらいいよ」

大河は何かほっとしたように断るが、そんなわけにはかいかない。

「いや、北村に聞いてくる」
「そ、そんなわざわざ聞きに行かなくても」
「いーや、ダメだ」

俺は部屋を飛び出し、北村の部屋に向かう。
意外とあいつはしっかりしてるから腹痛薬も持っていそうだ。



***



竜児は一体どうしたというのか。
昼間のつっけんどんな態度は全くなく、私の嘘の腹痛にいつも通り慌てて対処しようとしてくれてる。
って、あ、本当に北村君の部屋に行っちゃった。

「ちょっ!?竜児!!」

慌てて追いかけたけど、時既に遅し。

「北村、腹痛薬持ってねぇか!?」

竜児は北村君の部屋に乱入し、

「む?高須?」

北村君はそんな竜児に微妙に驚きながら、メガネをキラリと光らせその筋肉質な体を拭いていた。
ん?きんにくしつ?

「ひやぁぁぁぁぁ!?」

私は声を上げて後ろを見る。

「す、すまん北村!!まさか“着替え中”とは」

北村君はま、ま、ま、まっぱ……素っ裸だったのだ。
……見ちゃった、見ちゃったよぅ。

223 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/10(木) 23:57:07 ID:rgavKLbg
「いやぁ、ちょっと風呂上がりに乾布摩擦をな。っとすぐに着替えるからちょっと待っていてくれ」
「あ、ああ」

私たちは慌てて部屋を出て待つこと数十秒。

「いいぞー」
「……おぅ」

再び入室し、

「ひやぁぁぁぁぁ!?」

私は二度目の悲鳴を上げた。
北村君は上半身は裸のまま手にはトランクスを持っていたのだ。

「ん?どうかしたか?あ、逢坂もいたんだったな、すまんすまん」

北村君はすぐにトランクスを鞄にしまい込む。
何度か竜児のを見ちゃった事があるけど、なんというか、衝撃的だった……。
竜児はそんな私を見て引きつりながら、

「す、すまねぇなノックもしないで。北村は腹痛薬……胃腸薬か何かは持ってきてるか?」
「いや、俺は構わないが……腹痛薬?あるぞ」
「大河が腹痛らしいんだ、良ければ飲ませてやってくれ」
「ああ、構わない」

そう気軽に北村君は言い、

「じゃ、北村に薬をちゃんと飲ませてもらうんだぞ」

竜児はそれだけ言って出て行ってしまった。

「あ……」

何を言う暇も無い。
伸ばした手が、竜児の服を掴むよりも早く……違う。
私が今、一瞬竜児に手を伸ばすのを躊躇ったから、間に合わなかった。

「逢坂?薬の用意ができたぞ」
「あ、ありがとう、北村君」
「辛いなら横になった方がいい」

勧められ、北村君が寝る予定のベッドに少し横になる。
北村君は既にTシャツを着ていた。

「良かったよ、お前達が仲直りしているようで」
「えっ!?」

北村君から、そんなことを言われるとは思っていなかった。

「息が合ってるかと思えば、二人とも全然会話しないし、心配していたんだ。高須はああ見えて、人に怒ったり喧嘩したりする奴じゃないからな」
「うん……」

それは……私もそう思う。
だから、何が竜児をそこまで怒らせたのかすごく気になっていた。



***

224 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/10(木) 23:58:26 ID:SEcwaWWL
>>218
乙!
もっと過激なものでもいいのよ

225 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/10(木) 23:58:33 ID:rgavKLbg
コンコン。
部屋の戸がノックされる。

「おぅ」

返事をすると、入ってきたのは……大河だった。

「大河?薬はちゃんと飲んだのか?寝てなきゃダメじゃねぇのか?」
「へーキよ、もうお腹治ったみたい」

本当にたいしたことは無かったのよ、と薄く笑う。

「ならいいけどよ、じゃあどうしたんだ?」
「えっと……そう、お腹が治ってきたからもうちょっとカレー食べたいと思って」
「大丈夫かよ?」
「ヘーキ、むしろお腹すいた」
「ぷっ、いつもの大河だな、わかったよ、暖め直してやる」

俺は安心して立ち上がり、

「ほら、行くぞ」

本当にいつも通りにそう言って、いつもより半歩遠い位置で、歩き出した。



***



ランプの光源のみに照らされた広く暗いリビング。
こんなに広いというのに、光源はランプだけと電気はケチって竜児の家の時の距離でせせこましくカレーを食べた。

「なんで俺まで……」

竜児は私に付き合ってカレーを一皿食べた。
本当に……私によく気を使ってくれる。

『……断る、と言ったら?』

そんな竜児がなんであんな事を言ったのか、何故だかずっと気になっていた。
私が、私の為に頑張ってくれる竜児に、せめてものお返しと思って考えたことだったのに。
……今日だって、何度か私と北村君を二人きりにしようとしてくれてるのに、私は竜児に何もしてあげてない。

『対等、って言ったじゃない、馬鹿ッ!!』

私に並び立てと言ったあの日、私は竜児と対等なんだと思っていた。
竜児もきっとそうなったと思ってくれてると思ってた。
でも、竜児は自分よりも私を優先する。私は応援されてるのに、応援出来ない。
そういえば、竜児の好きな人は誰なんだろう?それがわかれば応援のしようもあるのに。

「ほら、食べたら寝るぞ」

竜児が立ち上がる。私と竜児の距離がまた遠くなって、

「あ、ちょっ……」

さっきよりは早く手を伸ばしたつもりだけど、また届かなかった。

226 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/10(木) 23:59:48 ID:rgavKLbg
***



部屋に戻ってベッドに腰掛け、思い悩む。
私は一体竜児にどうしたいのだろう?
対等だと思ってるから私の手伝いをするだけじゃなくて私にもアンタの手伝いをさせろ?
……だめだ。
まるで対等という言葉を振りかざして上に立つような言い方だ。
全然対等じゃ無いじゃない。
きっと、対等だと自分に言い聞かせてた私自身が、今まで対等であろうとしていなかったんだ。
私は竜児を知ろうとしなかった、だから竜児の好きな人も知らないんだ。
バフッとベッドに倒れ込み

「!?」

ほのかな温かみに飛び起きた。
ベッドには知らないほのかな温かみ。
それに……、

「やだ、これ鞄に入れてた服じゃない……何で汚れてるの?」

ベッドの掛け布団からはみ出てる服。
それは、まだ仕舞ってあるハズの服で、何故かほんのり濡れ汚れていた。
とっさに飛び退き、体を強ばらせる。
急に正体不明の悪寒が走ってバン!!と部屋を飛び出すと、ちょうど部屋を出てきた竜児がいた。



***



「竜児!!」

部屋を出ると急に大河に声をかけられる。

「どうした大河?まさかお前も?」
「も?ってことは竜児も?」
「……俺は何か長い髪の毛がベッドに」
「私はまだ着てない服が鞄から出てて、しかも汚れてて」
「「………………」」

お互い押し黙る。
ちょっと……いや、結構怖い。

「リ、リビングにでもいようぜ」
「そ、そそそうね」

今一人になるのを恐れた俺達は、そのままリビングに行き、眠れぬ一夜を正体不明の何かに怯えながら一緒に過ごした。
そういえば、喧嘩してからこんなに長く一緒にいたのは、久しぶりかもしれない。



***

227 : ◆QHsKY7H.TY :2009/12/11(金) 00:02:06 ID:S+lAQIJz
とりまここまで。
>>219
気持ちはわかるけどもう少しソフトにいこうぜ。

228 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/11(金) 00:30:47 ID:SbtWW6zm
お二人さんとも乙!!
>>218
けしからん、続けてください。

>>227
ハイペースすぎるw
連日ほんとにありがたいです。

229 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/11(金) 00:34:40 ID:M3+Gqiiz
>>227
タイトル思いつかないならトリップだけでいいと思うよ
ご苦労さん

230 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/11(金) 00:42:12 ID:fu/38GU+
>>218
GJです。

>>227
GJ すごいペースですねぇ
つづき楽しみです。

231 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/11(金) 06:12:47 ID:kr4IZzUZ
直接的な表現じゃないとしても、性描写が書きたいなら
なんでエロパロに貼らないかな…

前にどんだけ揉めたか知らないの?

232 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/11(金) 06:20:54 ID:kr4IZzUZ
あとトリップ付けてる作者ならテンプレくらい読んで
頼むから、ルールくらいは守ってくれよ

少しくらいなら大丈夫って考えがドンドン加速して
取り返しのつかない事態になるんだからさ、本当に頼むよ

233 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2009/12/11(金) 06:21:32 ID:31uigJiF
お題 「丼」「大河」「言葉」



「大河ー!おはよーう!」
「みのりん、おはよう」
「おや、珍しく一人?高須くんは?」
「竜児はちょっと用事があって先に行ってるの」
「そのわりに大河は機嫌良さそうだねえ……さては、昨日何かイイコトがありましたな?」
「あ……わかる?」
「わからいでか。で、具体的にはナニがあったのかね?さあ、このババに話してみなされ」
「え〜……でも……」
「何だよ〜、水臭いぞ大河〜。親友じゃんかよ〜」
「……ん、それじゃ……あのね、昨日、竜児と初めてのデートだったの」
「…………初めて?」
「うん。単に一緒に出かけたり買い物したりじゃなくて、練習だったりもしない正式な『デート』ってのは、初めて」
「それは……まあいいや。それで?」
「やっぱりデートの醍醐味って待ち合わせからじゃない?で、駅で待ち合わせることにしたんだけど……
 私、遅れないようにしようと思ったら逆に早過ぎちゃって」
「ふんふん」
「それで竜児を待ってたらね、ナンパ野郎が声かけてきて。デート前だし穏便に済ませてやろうと思ったんだけどしつこくて」
「あちゃー、それは大変だったねえ」
「腕掴まれて、さすがにぶん殴ってやろうかと思ったんだけどね。ちょうどその時竜児が来て、『おい、人の恋人に何してやがるんだ』って」
「ほー、いきなりそれってのは温厚な高須くんにしては珍しい物言いだね」
「うん、あれは本気で怒ってる目だった。ナンパ野郎もビビっちゃって、もう平謝りで退散してったわ」
「ううむ、さすが高須くん……」
「それが一転してね、私の事をものすごく心配そうに見るのよ。『大丈夫か?変なことされなかったか?』って。
 別に自分でなんとか出来たんだし、いくらなんでも過保護すぎると思わない?」
「いやまあ、それだけ高須くんが大河のことを大事に想ってるってことじゃないかな」
「や、やっぱりそうかな?……えへへ……」
「そうだよ、間違い無い!……で、それから?」
「ん、まあ竜児が助けてくれたのは事実だし、ありがとうって言ってあげたら喜んじゃって。
 口では『おう』ってそれだけだったけど、本物の犬だったら千切れんばかりに尻尾振ってたわね、あれは」
「……前から思ってたんだけどさ、大河ってば高須くんの表情とか的確に理解してるし、ホントによく見てるよねえ……」
「そうかな?そんなこと無いと思うけど……
 それから電車に乗ったんだけどね、ものすごーく混んでて。
 そしたら竜児ってば私を端っこに立たせて、自分はこう、全身でガード!って感じで。
 だけどね、無理にスペース確保してるもんだから自分は身動きとれなくなっちゃって」
「それはまた、大変そうな……」
「でね、そんな竜児の胸元に頬擦りしてあげたら焦っちゃって、もう面白いったら」
「へ、へえ〜……」


「おはよう実乃梨ちゃん」
「おお……おはよ〜あーみん……」
「……なんか妙に疲れてるわね」
「時に言葉ってのは、下手な暴力よりきついものですなあ……」
「何よ。どうしたの?」
「登校途中、延々と……大河に高須くんとのデートの様子を惚気られた……
 いや、話振ったのは私なんだけどさ……」
「……そ、それは……ご愁傷様……」
「砂糖を丼一杯食べさせられたような気分だよ……」

234 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/11(金) 07:00:22 ID:e6LeIhXU
>>227
表現がきつかったのは謝る。

でも、>>218の作者さんが自分でも危ない内容だって理解してるのが尚更許せなかったんだ。
あまつさえ、「これはエロじゃない」とか自分の考え押し付けてるしね。
ガチエロがないって前提で安心してここを読んでる人たちのことをバカにしてる。

235 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/11(金) 09:17:47 ID:JCQ2svfM
>>234
1つ作品の投下と、その反応として意見を言うのは良いと思います。
ただ「バカにしてる」は言い過ぎ。
氏の作品が大好きなので、次の作品が読めなくなったら嫌だなぁ。

236 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/11(金) 10:40:01 ID:e6LeIhXU
私としても氏の作品が読めなくなるのはイヤだけど、安心して読めないスレになることの方がもっとイヤ。
これでも抑えたつもりだけど、まだキツいようなら申し訳ないです。
今後気をつけて配慮してもらえるのなら全く問題ないとは思っているよ。

237 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/11(金) 10:43:55 ID:MhKhL2/q
はいはい。
今度からエロ,微エロはエロパロもしくは避難所って事にして落ち着こうぜ。
次から注意すればいいじゃねぇか。
てな訳で以下いつもの流れで。

そういや最近ギシアンすくねぇな(・ω・`)w

238 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/11(金) 12:04:09 ID:LDfZDY47
>>233

GJ!
毎日大河の惚気話を聞かされるみのりんやあーみんが目に見えるように想像できるw

239 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/11(金) 12:14:09 ID:i100IBQL
>>231-232
またお前かw

240 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/11(金) 12:16:12 ID:i100IBQL
>>237
エロパロだとまとめがイマイチなんだよね
やっぱりここのまとめ人のクォリティ高いからどうしても竜虎ネタはこっちに持ってきたくなるもんだ

241 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/11(金) 12:43:52 ID:X0ElWuj6
おまいら熱いな

>>218
ふつくしい・・・・続きも期待。

つか、この程度の描写でガチエロと騒ぐ人がいるのは驚いた。
テンプレに載ってないことを俺ルールよろしく叩いてる人も冷静になろうぜ?

これまでは「エロはほどほどにな」でまったり進行だったじゃないか
やり過ぎた感があったら注意すればいいと思うけど、
しれっと微エロまで避難所とか勝手に改変は勘弁してくれな?

242 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/11(金) 12:45:06 ID:Sf/skwkR
>>231-232うっといからきえろ

243 : ◆QHsKY7H.TY :2009/12/11(金) 12:57:45 ID:S+lAQIJz
あえて、あえて言おう!!
以前にも書いたがここで俺ルールは通用しないッ!!
あるのは竜虎ルールのみっ!!
おまいら今はエンジェル大河月間だぞ?
良い子にしてないとサンタという熊が来ないじゃないかw
このエロはマズイと思ったら優しく、飽くまで優しく避難所誘導でいいじゃないか。
仲良くやろうぜ。

それと今夜は投下出来ないかも。

244 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/11(金) 13:01:48 ID:OSrRMHTD
乙乙

245 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/11(金) 13:26:09 ID:MhKhL2/q
>>240
俺も実際は竜虎物はここに投下の方が嬉しいんだぞ。
マジでこのスレ(竜虎が)好きなんだから(´・ω・`)

>>241
おおすまん!
つい流れ的に微エロまで入れてしまった。

ならエロはほどほどにな。的な流れでこのスレ盛り上げて行こうぜ。

みんな幸せ!これ一番!

246 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/11(金) 16:16:18 ID:q8Q6rCGD
読んでみたが、アレくらい無問題じゃないか。と、エロスはほどほどにな、と書かれた俺が通りますよw

247 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/11(金) 18:53:38 ID:7dBCwBa3
「素晴らしいな」
「素晴らしいわね」
「こんなに愛してもらってるんだな俺達」
「幸せなスレよね。妬けちゃうくらいに」
「俺と大河が中心にいる限り、不幸な事にはならないだろう」
「私達の夢だもんね。みんなの幸せ」
「おう。そのためならどんな辛い事でも乗り越えてやるんだ」
「頑張ろうね、竜児」
「頑張ろうな、大河」

「それはそうと、なんか最近ご無沙汰よね?」
「まぁ、大作が続いてるからな」
「ちょっと息抜きも必要じゃない?」
「……たまにはいいか」
「素直になりなさいよエロ犬!」
ギシギシアンアン


皆のポジティブさと竜虎とスレへの愛に感動した!
まぁ、なんだ。
ほどほどになw

248 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/11(金) 21:27:03 ID:JCQ2svfM
久々のギシアンが出たところで、いつものスレに戻りましょう。

「だいじょうぶ、だいじょうぶだから」(泰子&大河)

>>218
キレイなお話しだと思った。乙です!
2828というより、ドキドキしたw

>>227
連日の投下、頭が下がります。
大河の戸惑いと葛藤がいいなー
そうか、幽霊も出るかー、先が楽しみっす。

>>233
みのりん、迂闊すぎ。
もう大丈夫なんだろうけど、見方によってはキツイよねw

>>247
こちらこそ有難うー


249 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/12(土) 17:08:23 ID:8nwOhCyT
あの程度でエロ認定する方がおかしい。
が、行き過ぎたエロは論外と考える。
少しでもエロが嫌なら見るなと。いちいち「これは駄目」「エロパロへ行け」だの書くなと。

SS書いている人の方が、グダグダいちゃもん付ける奴よりは遥かにエロい話には敏感であり、自制していると見受けられるけどな。

まあ、何はともあれ、ここは大河×竜児がすべてだ。
SS作家の方々には感謝を。

250 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/12(土) 19:31:56 ID:YC1GH5Cb
あの程度でエロだとは思わないけど、投下前に何かしら警告があってもよかったのかな、とは思った。
少しでもエロが厭なら見るなってのも正論かもしれないが、回れ右くらいできるようにしてあげてもいいんじゃないかな。

251 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/12(土) 21:58:33 ID:5Cb9vaGj
ラブラブカップルのいちゃいちゃに線引きをするのは難しくね?
どこで線を引いても文句言うやつはいるだろうし結局はイタチごっこになる
エロパロみたく注意書き付けると少なからずネタばれを含んでしまうし

雲行きが怪しくなってきたら各自の判断で回れ右すりゃいいんだよ
そうしないで読んでから文句言うなんて、どれだけ親切設計を求めりゃ気が済むんだと

要は自分にとっての黄色信号が見えたら止まれば良いって事だ

252 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/12(土) 22:12:05 ID:Rx4msYgt
書き手の立場から言わせてもらうと、ああいう作品には自分なら前置き書くよ。

「微エロ注意」くらいならネタバレでもなくね?
あと、いちゃいちゃとセックスは別物だぞ?

253 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/12(土) 22:21:59 ID:i+ULmnP7
いつまでくだらない話してんのよ

この駄犬ども!!

254 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/12(土) 23:01:08 ID:MSpcKyOJ
哀れ乳はだまってろ

255 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/12(土) 23:32:54 ID:lla9dk7y
>>254
おや後ろに誰かいるようだぞ… 遅かったか
                        ______
                        \        \
     _, -、                  |,.\        \
.  〃´ ^⌒ヽ               /   \        \
.  i{ /{八人}i              /    ,. i \_______\
  八ハ#゚ 、゚ノハ  パンパン       |    /.| |\||_______||~
  ノノ ノ)iてと八    ..         | .|   | | |  ||          ||
 ( (く/_j」〉ノ )   .  _./⌒..───' | / | | .||          ||
     (_ハ_)     ..  __/⌒ 二二ニニ ノ  U  ||        ||


256 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/12(土) 23:52:54 ID:CtLjaglm
「なぁ、地球って何歳くらいだと思う?」
「はぁ?」
「誕生して46億年って言われてる。西暦はまだ2000年ぽっちだ」
「知ってるわよ。そんなこと」
「じゃあ、俺達の寿命は?」
「最近なら80年くらい?」
「そうだ。地球の歴史に比べたら、俺達の人生なんて一瞬でしか無いんだ」
「そういう考え方もあるわね」
「だから、俺達はその瞬間を一杯楽しんで、堪能しなきゃならない」
「竜児にしてはポジティブな考えでよろしい!」
「だろ? そういうわけで……」
「え? え? ちょっと竜児? なんか目が血走ってるよ?」

ギシギシアンアン


257 : ◆QHsKY7H.TY :2009/12/13(日) 00:04:12 ID:cNVh5ink
みなさんありがとう。

そして落ち着くんだみんな。
落ち着いて避難所に行けば作者さんが書いた謝罪の文が読めるはずだ。
だから次の投下に期待しようじゃないか。
僕も楽しみに待ってます。

ということで、お待たせしました?
ドラとら!続き

258 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/13(日) 00:05:54 ID:cNVh5ink
チュンチュン……。
スズメの鳴く声が聞こえる。

「……朝ね」
「……朝だな」

結局私達は正体不明の恐怖から、ずっとリビングで一夜を明かした。
お互い、一人になるのが恐くて、かといってそれを言うのも恥ずかしくて、ただぼうっとリビングのソファーで肩を揃えて座っていた。
竜児は、自分が起きているから寝ても良いぞと言ってくれたが、なんだかそれも悪い気がして、結局寝なかったのだ。

「……俺、朝飯作ってくる」

朝日が差し始めた頃、竜児はそう言ってすくっと立ち上がった。
ただぼうっとしているのにも疲れてきたのだろう。
気持ちはわかる。

「……一応もう朝だし、大丈夫だと思うから大河は寝てろ。どうしても何かあったら……まぁこの時間なら櫛枝とかを起こしてもちょっと早いくらいだろ」

竜児はそう言って、多少フラフラしながらキッチンへ。
私はというと……何故かキッチン……竜児について行っていた。

「大河?」
「え?あ……」

恐らく、一人になるということのみを理解した脳が、それを拒んだ結果だったのだろう。
だが、不思議そうにしている竜児にそれを知られるのも何か癪だった。

「……手伝うわ、やる事無いし」

だから、口から出た言葉は、確かにその場しのぎのものではあったのだが。

「おぅ、そうか………………おぅ?」

……なんでそこで驚くのよ?



***

259 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/13(日) 00:07:14 ID:cNVh5ink
「おっはよーう!!」

俺達が朝飯を作っていると、櫛枝が起きてきた。

「おはようみのりん」
「おはよう大河、二人とも朝早いねぇ、私が一番乗りだと思ったのに」
「あ、ああ、まぁな」
「え、ええ、まぁね」
「むむ?昨日に引き続き息がピッタリですな」
「「別に」」
「……ありゃりゃ?」

昨日と全く同じように同時に返した俺達を見て、櫛枝は首を傾げる。
俺は特に気にせず料理を作ってしまうことにした。朝は軽めに焼き鮭、卵、冷奴……。

「うし、もうちょっとでワカメの味噌汁も出来る、と」
「……今朝は変わり映えしないというか、唯一普段と違う味噌汁は最悪のチョイスというか……」

大河が皿を運びながら何かぶつくさ言ってるが無視。
あとは昼飯を、と。
……そうしているうちに、北村と川嶋も顔を出してきた。
気付けば、櫛枝を含めて三人は何か話し込んでいる。

「どうした?朝飯ならもう出来てるから食べても良いぞ?」
「あ、ああ違うのよ高須君、今日はみんなどうするのかな、ってハナシ」
「?昨日はみんな海に行くって行ってなかったか?今弁当も用意してたんだが……」

俺はサンドイッチを切り分けながら言う。昼のメニューは卵サンド、ツナサンド、昨日のカレーの残りを使ったポタージュ。

「どれどれ?わぁ美味しそう!!」

川嶋は素早く俺の懐に回りこみ、一つ卵サンドをつまみ食いする。
てへっと軽くはにかみながら食べるその仕草はつまみ食いの悪行に目を瞑りたくもなるが、

「くぉらばかちー!!何つまみ食いしてんのよ!!私だって我慢してるのに!!」

大橋の手乗りタイガーはここでも健在、つまみ食いをした川嶋にくってかかる。

「あぁら逢坂さんいたの?小さくて見えなかったわ」
「この!!竜児、ばかちーのサンドイッチ無しでいいわ、私が全部食べる!!」

ぎゃあぎゃあ騒ぎ出した二人を無視して俺は作業を再開しながら尋ねる。

「で、昼から結局海には行かないのか?」
「あ、そひぇは……このチビ虎頬引っ張るな!!いくらやってももう食べちゃったから!!」
「竜児!!私も一個!!」
「ダメだ、昼の分が無くなる」

大河が、ダメだと言った俺に驚き、悔しそうに歯を噛み締める。
今までの俺だったら一個くらいならあげてたかもしれない。

「へへーん。チビ虎は昼まで我慢しな、さてと、今日の予定だけど、みんなで海で遊んだ後……そうね、この超美味いサンドイッチを食べてから私の知ってる面白い洞窟に行かない?」

川嶋が、わざとサンドイッチの部分を強調して言い、大河がさらに悔しそうにする。

「それはいいけど、川嶋、お前昼のサンドイッチ一個没収な」
「えー!?」
「ざまぁみなさいばかちー!!」

全く、昨日の夜が嘘のような賑わいだ。

260 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/13(日) 00:08:38 ID:cNVh5ink
***



「……で、ここがその洞窟、なわけか」

その洞窟はなんというか、雰囲気でまくりだった。
中からはごぅと音がし、光は無いのか見える限り真っ暗で足場も悪く、岩場にぶつかる波がまるで俺達をこの洞窟へ行くなと言っているようだ。

「こ、ここに入るの?」
「おお!!面白そう!!」
「未確認生物との遭遇か?」

三者三様の反応。
大河は昨日の事もあって怯え、櫛枝は喜び、北村は……何がしたいんだろう?
川嶋はにこやかに笑っている。
……その笑みが、どことなく初めて会った時のあの、“本性”のような意地の悪い笑みの気がしたのは気のせいだと思いたい。

「じゃあ行きましょうか」

川嶋の案内で、全員洞窟に入っていく。
中はいくつも空洞があるのか、奥からは風で変な音が鳴っている。

「雰囲気あるね♪」
「うむ、黄金のフタクミコブラがいてもおかしくないかもしれないな、これは」

……やっぱり、今日の北村は何処か変な気がした。

「さぁて、と。私の案内はここまで。丁度ここから通路が五つに分かれているからみんな別々の道に行ってね」
「え?みんな一緒にいかないのか?」
「何本か分かれ道はあるけど必ず出口に着くから大丈夫。そのほうが面白いでしょ?ビリだった人には罰ゲームとか」

見れば、確かにこの先は五つに通路が分かれている。

「まぁ、面白そうだし良いんじゃない?」

櫛枝は既に乗り気で、「わたしここー!!」すぐに行ってしまった。

「じゃあ私はこっちね」

川嶋もさっさと決めて行ってしまう。

「どうする、北村?」

俺は一応北村に確認を取った。万一を考えての為だ。

「うむ、亜美がああ言うなら大丈夫だろう、別々に行こう」
「そうか、わかった」

本当は、あわよくば大河と二人にしてやろうかと思ったけど、どうもそれは無理っぽいな。

「じゃあ後でな、高須、逢坂」

そうして北村とも別れ、

「じゃあ俺はこっちに行くから大河はそっちで良いか?」
「あ、えと……うん」

大河は一人になるのに多少しょんぼりしたようになりながらも頷き、歩いていく。
その姿に少し胸を痛めながら、俺もさっさと行くことにした。

261 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/13(日) 00:09:57 ID:cNVh5ink
***



正直に言えば、恐い。
私はあまりオバケとかが得意なほうじゃない。
だから、こうやって一人で暗い道を歩くのは好きじゃない。
学校も、一年の時に遅くなってから一人で帰るときは、結構恐かったのを覚えてる。
最近は……いつも竜児がいたおかげで恐いなんて思う暇が無かった。
一歩を踏み出すたびに奥からゴゥ!!と風が鳴る。
音がやや反響してて、恐さに拍車もかかる。
こんな時、いつもは竜児が横にいたんだけど、今はいない。
ただの遊びとはいえ、それが少し寂しく、恐かった。
途端、首筋に生暖かい風が当たった気がした。

「ひぃっ!?」

駆ける。
恐い、気持ち悪い。
やだやだやだ。
カンカンカンとサンダルの音が反響して、ますます嫌な思いを増幅させる。
息が切れて、少し走るのをやめたところで、
カンカンカン。
自分のものでは無い足音が聞こえた。
音が反響して、音源が何処かわからない。
けど、今止まっている自分の足の音では無いのは確かだ。

「あ……!?」

さらに最悪な事態は続き、光原として預かっていた懐中電灯も電池が無くなる。
真っ暗な中に取り残され、嫌な空気が首筋を撫でて風の音と波の音、正体不明の足音が私の精神を追い詰める。

「ひっ!?」

また私は走り出した。
何本か別れ道があったけど適当に走った。
そうして、次の分かれ道に到達したとき、
ドンッ!!と何かにぶつかった。

「ひぃっ!?」
「って……」

余りの恐さに変な声を上げたが、相手が小さく声を漏らしたのを耳から聞いた脳が理解し、暗闇の中注意深く目を凝らす。

「いってぇ、誰だよ一体」

聞き覚えのある声。

「りゅ、竜児!?」
「おぅ大河か?大河も電池切れたのか」

それは……竜児だった。

262 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/13(日) 00:10:47 ID:cNVh5ink
へなへなと気が抜ける。
何故か、安心した。

「お、おいどうした座り込んで」

竜児の慌てように、先ほどまで微塵も無かった余裕が生まれ始める。

「何でもないわよ、ちょっと走りすぎて疲れただけ」
「?まぁ大丈夫なら行くぞ」

竜児は不思議そうな声を出しながら、しかし無事と知ると先を急ぐ事を促す。
竜児は私に背を向け先に行くぞ、と数歩進んで、

「うわぁっ!?」

声を上げた。

「え?竜児?」
「く、来るな大河!!こっちは危険だ!!」

先ほど生まれた余裕があっという間に霧散する。
恐くなる。
暗闇の恐怖。
反響する音の恐怖。
孤独の恐怖。
どれをとっても一級品の恐怖。
でも、今一番恐怖に感じたのは……、

「りゅ、竜児!!」
「だ、だから来るなって!!ん?何だお前、うわっ!?」

駆け出す。
弾ける。
走る。
すぐそこの距離なのにありえないほどのスピードで。
昨日何度も手を伸ばし損なった。
その度に、竜児を遠く感じた。
遠く感じるが、嫌だった。
恐い……竜児が遠くに行くのが恐い!!

「竜児は私のだぁ!!私の竜児に手をだすんじゃなぁい!!」

自分でも、何故そんなことを言ったのかわからないくらいの台詞を大声で宣言し、一足飛びで竜児がいるであろう場所を見て………………光を見た。



***

263 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/13(日) 00:12:18 ID:cNVh5ink
「……だから言ったのに、来るなって」

大河は、俺の忠告虚しく飛び込んできて……見事にびしょ濡れになった。
そう、ここは出口付近であるとともに海水が結構溜まってる場所だったのだ。
既に、俺達二人を覗く三人は到着していた。

「いやぁ、大丈夫かい大河?ごめんよ」

櫛枝が大河に手を貸しながら謝る。

「なんでみのりんが謝るの?」
「実は、昨日の晩の事があってもまだ高須君と大河が仲直りしてなさそうだったから、この肝試しっぽいのを私の発案で企画したんだ」
「昨日の晩って、まさかあれは……!?」
「そう、私なの。ごめんね、ちなみに北村君とあーみんも共犯」

こうして、俺と大河の身に起きた不可思議な事の真相は明らかになった。



***



花火がバチバチと音を立ててカラフルに光を放つ。
あれから謝罪を受けた俺達は別荘に戻り、最後の記念に花火をやることにした。

「高須君、ほんっとうにごめんね」

櫛枝はもうしつこいくらいに謝っていた。

「だからもういいって。終わってみれば面白かったし」
「そうかい?気を使って無いかい?」
「おぅ」
「そっか……大河とは仲直りできそうかい?」
「仲直りも何も、喧嘩はしてないよ俺達」
「そっか」
「おぅ」

俺は笑って花火を櫛枝に渡す。

「折角の花火だ、楽しくやろうぜ」

櫛枝は頷いて花火に火をつける。

「なんだか、高須君昨日より良い顔するようになったね」
「……そうか?」
「うん、なんか吹っ切れたカンジ」
「まぁ似たようなもんかな。吹っ切れたっていうより、理解して、決めたっていうか」
「理解して……決めた?」
「おぅ、俺は“人工衛星”なんだって。そんでもって、きっと地球のずっと周りを彷徨うだけで終わる“人工衛星”だろうって」
「た、高須君?それは……」
「俺は、地球が元気なら、それで良いよ」

櫛枝が何か言いたそうにこちらを見てくるのはわかっていたが、俺は櫛枝には目を合わせず、北村と花火をしている大河の顔を見ていた。

264 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/13(日) 00:13:24 ID:cNVh5ink
***



日も暮れた砂浜。私は連れてきた四人を見て、最後に溜息を吐く。
これで本当に諦めがつくっていうか、本当の意味で“お詫び”と“お礼”になるっていうか。
そう思いながら、星空を見上げ、動く光点を見た。ふと、昨夜の実乃梨ちゃんの人工衛星の話を思い出す。
私も人工衛星の一つに過ぎないのかしら、そう思って実乃梨ちゃんをみると、辛そうな顔をして高須君を見つめ、高須君はチビ虎を見つめていた。



***



「いいか?家に帰るまでが旅行だぞ?じゃあ解散!!」

その声と同時に、駅に着いたみんなはそれぞれ帰宅しだし、竜児も歩き出した。
そんな竜児の背中を私は見つめる。竜児は気付かず、振り向かない。
竜児の背中を見て、昨日言ってしまった言葉が脳裏にこびりついて離れない。

『竜児は私のだぁ!!私の竜児に手をだすんじゃなぁい!!』

私は、知らず知らずのうちに、随分と竜児に依存し、竜児への独占欲が強くなっていたのだ。
それを昨日思い知って、少しショックになった。
私が北村君と付き合いだしたら、きっと竜児が離れていく。
そうであるが故の竜児との交友関係なのに、それが嫌だ。
かといって、北村君のことを無くせば、きっと今の生活すら無くなり、どっちにしろ竜児との接点は無くなる。
実は今の私の生活が、凄く危ういバランスで成り立っている事にようやく私は気付いた。
そしてその理由が、私の中で竜児が予想以上に大きな存在になっていたことが原因ということも。
北村君とは上手くいきたい、けど竜児とは離れたくない。
北村君のこと無しでも竜児とは離れたくない。
最低限今の生活……竜児が傍に居てくれる為には、“とりあえず私は北村君を好きでいなければならない”

「大河?」

竜児がようやく私に気付いて振り返る。

「なぁ、今日特売あるんだけどよ」
「うっさい、こっちは疲れてるのよ。主婦臭い用事で話しかけないで」

私は、少し不機嫌そうに遠く離れた距離にいる竜児に“近づく”
私から近づかないと、何故か竜児は半歩遠のくようになっていた。
だから、この距離をなんとしてでも護りたいと、いつしか思うようになっていた。



***



一方は自身の気持ちを抑えることを決め、一方は自身の中に渦巻く矛盾に気付こうとしない。
花火の夜に向けた視線。
歩いていく背中を見つめる視線。
そんな二人の“本当の視線”は今だ交わらず。
二人の心に秘めた思いが交差する事もまた、今は無い。



***

265 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/13(日) 00:14:35 ID:cNVh5ink
とりまここまで。
みんな仲良くな!

266 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/13(日) 00:17:50 ID:j5/2aywy
冷静になった。
何はともあれ、>>262お疲れ様で有ります!と言うことを理解した。
続きが待ち遠しくて、胸が切ないです。

267 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/13(日) 01:30:16 ID:jNTWbbh2
>>265
乙です。
うわぁ、なるほどなー
先の展開にwktkせざるを得ない。

268 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/13(日) 19:16:47 ID:6dmzCSSX
>>265
乙!
なんというか、胸がはち切れそうだ……
せつねぇー!!

269 : ◆fDszcniTtk :2009/12/13(日) 20:40:58 ID:4JjI5ZiI
新作投下

タイトル:「条件」


270 :条件 ◆fDszcniTtk :2009/12/13(日) 20:41:40 ID:4JjI5ZiI
高須竜児の日記より

2009年11月x日 晴れ

大河に頼んでもう一度挨拶に行くことにする。結婚は反対されたが、俺も大河もそれは今だけの事だと思っている。だったら早い内にもう一度行って、きちんと大河の両親と仲良くなった方がいい。その方が、2人とも安心するだろうし、俺たちも気が楽になる。

2009年11月x日 晴れ

大失敗。まさかこんな事になるとは思いもしなかった。折角挨拶に行ったのに、却ってぎくしゃくしてしまったかもしれない。

◇ ◇ ◇ ◇ 

「あんたの顔の凶悪さは十分理解していたつもりだけど、まさかあれほどとはね。想定外だったわ」

すっかり空気の冷たくなった欅並木を並んで歩きながら、大河が笑いを押し殺した表情で竜児を見上げる。ダッフルコートに竜児とおそろいのマフラー。星を散らしたような瞳に悪意はないものの、久々に面白いショーを見せて貰ったと言わんばかりの顔をしている。

見下ろす竜児は井戸の底を覗き込む幽鬼のような顔。呪ってやろうと思っているのではない、憮然としているのだ。

「他人事みたいに言うなよ。結局挨拶どころじゃなかったじゃねぇか」
「そうね、あの展開はさすがに予想できなかったわ」

苦笑いで前を向く大河。

昨日、大河の家に二度目の挨拶に行ったまでは良かった。きちんと挨拶をし、家に上げて貰った。テーブルに着いてから『結婚の事は、2人で考え直しました。ちゃんと進学して就職して改めてお願いに上がります』と、切り出すイメージトレーニングも何回も繰り返していた。

だが、何というか。間の悪いことと言うものは、得てして来て欲しくないときにおきるものらしい。「そうだ、竜児!弟見てよ!この前は見てないもんね!」と、大河が切り出したのがまずかった。いや、大河が悪いのではない。
大河なりにアットホームな気分を演出したかったのだろう。誰が悪いわけでもない、運が悪かった。

「そうだな、あの展開は……考えつかなかったな」

271 :条件 ◆fDszcniTtk :2009/12/13(日) 20:43:25 ID:4JjI5ZiI
欅並木を覆う青空を見上げて竜児は嘆息。考えつかなかったのは事前のイメージトレーニングが足らなかったからなのかもしれない。自分達の2人のことばかり考えて、周りのことが目に入って無かったせいかもしれない。大河も困った様に笑いながら呟く。

「あんなに泣くなんてねぇ」

そう、泣いたのだ。大河の弟が。父親は違うとは言え、トラの母親が生んだ、将来ひょっとしたら猛虎に育つかもしれない生後8ヶ月の男の子。それまで機嫌良くおもちゃで遊んでいた子供が、のそりと子供部屋に入ってきた竜児と目があった瞬間に大声で泣き始めたのだ。

初めこそ、あらあらあらといった感じであやしていた大河の母親も、いっこうに泣き止まない長男に次第に焦りの色を濃くしていく。空気を読んで竜児はリビングに退散したものの、泣き止まない。父親からは引き留められたものの、
子供部屋から聞こえる「君が帰るまで泣くのを止めない!」という痛烈なメッセージに負けて、ろくすっぽ話をしないうちに竜児は大河の家を辞さざるをえなかった。

「あのあとどのくらい泣いてたんだ?」
「丸々3時間泣いてたわ」
「3時間…赤ん坊ってそんなに泣けるのか?」

というか、己の顔は3時間人間を泣かせるほどきついのか。心臓をえぐるような事実を突きつけられて竜児は動揺する。そういえば少し疲れが残っているように見える大河は

「私も知らなかったわよ。今まであんなに泣いたこと無いんだもん」

と、呟いてマフラーに顔を埋める。



272 :条件 ◆fDszcniTtk :2009/12/13(日) 20:44:17 ID:4JjI5ZiI
◇ ◇ ◇ ◇ 

2010年3月x日 曇り
まだ春と言うには肌寒い。

大学合格の報告をかねて、大河の家に行くことにする。前回の失敗があるので、今度は子供部屋に入らないように気を付ける。顔さえ見せなければ、大河の弟も泣かないだろう。

◇ ◇ ◇ ◇ 

「まったく……想定外だったぜ」
「まぁ、あんたばっかりが悪い分けじゃないわよ。最初に言っとかなかった私も悪いのよね」

玄関先で溜息をつく竜児を、大河が慰める。奧では弟君の絶叫にあたふたする夫婦の声が聞こえる。

「泣き声、力強くなったな」
「喜んでいいのかな」

竜児を見上げて苦笑いする大河。黒のセーターが小柄な大河の愛らしさを強調していて、思わず抱き寄せたくなる。が、時と場所を考えてがまん。

「気がつかなかったなぁ」

大河の顔を見つめて竜児は溜息をつく。赤ちゃんは1歳にもなると自分の足で歩いてくる。そんなこと思いもよらなかった。

◇ ◇ ◇ ◇ 

2010年4月x日 雨

今日からゴールデンウィーク。

大河の弟が昼寝をしている時間を見計らって挨拶に行く。今日に限って起きていた。泣かれて退散。

◇ ◇ ◇ ◇ 

2010年7月x日 晴。この夏一番の猛暑。

「子供部屋で私が弟を見ておくから大丈夫」と、大河に言われて再度挨拶に行く。しかし、弟君がジュースをこぼしそうになって、慌てた大河がころんだ隙にリビングまで駆け込まれてしまった。俺の顔を見て、あとは絶叫。

もう、走ることができるとは心強い。と思うことにする。

◇ ◇ ◇ ◇ 

2011年3月x日 快晴

大学の春休みは意外に短い。

「もう2歳だし、だいぶ落ち着いたから顔を見ても大丈夫だと思う」と、大河に言われて挨拶に行く。弟君号泣。

かなり落ち込んだ。



273 :条件 ◆fDszcniTtk :2009/12/13(日) 20:45:06 ID:4JjI5ZiI
◇ ◇ ◇ ◇ 

2011年5月x日 快晴

そう言えば、最近は鯉のぼりを見ない。

大河が俺を家に呼ぶのを嫌がってる。

◇ ◇ ◇ ◇ 

「嫌ってわけじゃないのよ」

竜児の通うキャンパスの木陰のベンチに座って、大河が説明する。2人の通う大学の教養部が割と近いこともあって、授業が2コマほどあく時にはこうして大河が遊びに来ることがある。竜児のほうは1コマ空けばラッキーな程度なので、
平日はもっぱら大河のほうからの通いデートになる。

「やっぱ呼びにくいか」

同じくベンチに並んで腰掛けた竜児が苦い笑顔を浮かべる。さわやかな5月の風が吹くキャンパス。白いすっきりしたワンピースにつば広帽子というお嬢様風の出で立ちの大河は、否が応でも年頃の学生達の目を引きつける。そして、例外なく横に座った竜児をみて目をそらす。

「なんていうか。また泣いちゃうじゃない」
「もうだいぶ大きくなったろう。泣かないんじゃないか?」
「そうかしら。て、みんなあんたから目をそらしてるわよ。あんたの顔って20歳になっても目をそらしたいくらい怖いじゃない。うちの弟、まだ2歳よ」

竜児はぐうの音も出ない。祖父の精児に強く進められて大学では運動部に入ることにした。入ったのが合気道部というのが竜児らしい。とはいえ、それはそれ、竜児は竜児。不必要に熱心にトレーニングに励み、わずか一年の間に、それなりにたくましい体つきになっている。
元々の顔つきもあってかなり威圧的な雰囲気が出てきた。性格は相変わらずだが。

「ねぇ、竜児。あんたも言ってくれたじゃない。誰も私達を引き裂こうとしてるわけじゃないのよ。もう、うちの親もあんたの事は認めてるんだし、いいんじゃない?」
「そうはいかねぇ」

と、ここで竜児は持ち前の融通のきかなさを発揮。風薫る五月の空の下、くどいことを言い出す。

「第一に、お前の両親とちゃんと話したのって、結婚を却下されたときだけだぞ。ここでなあなあにはしたくねぇ。それにお前の弟ってことは俺の弟になるんじゃねぇか。兄弟なんだから仲良くしないと」

「うわぁ、あんたそのうざい性格早くなおしてよ」
「お前が単純すぎるんだよ」

◇ ◇ ◇ ◇ 

2011年5月x日 快晴

ゴールデンウィーク最終日。

大河の両親に挨拶に行く。弟君に一目で泣かれた。


274 :条件 ◆fDszcniTtk :2009/12/13(日) 20:45:53 ID:4JjI5ZiI
◇ ◇ ◇ ◇ 

2011年8月x日 雨 じっとりと暑い。

大河の両親に挨拶に行く。いきなり泣かれた。

◇ ◇ ◇ ◇ 

2011年10月x日 曇り

大河の両親に挨拶に行く。大泣きされて退散する。

「猿の惑星」をレンタルした。史上最初に猿が話した言葉が「ダメだ」。今の俺の気分だ。まぁ、意味が違うか。

◇ ◇ ◇ ◇ 

2012年2月x日 雪

玄関で「こんにちは」と挨拶したら奧で泣き始めた。声を覚えられたらしい。

◇ ◇ ◇ ◇ 

三年に進級して二月ほど経った頃。竜児も大河もキャンパスが変わって、少し遠くなった。今日は久々に大河が遊びに来ている。

「竜児、残念なお知らせがあるわ」
「それは残念だな」

幾分投げやりな返事に、なによ、と大河は頬をふくらます。話を聞いてくれても良さそうじゃないと思っているのだろう。だが、竜児としてはここ数日の話の流れからして、これが弟君の話だろうというのはだいたい予想が付く。あとはどのくらい残念かだ。

「まぁいいわ。ともかく、ここ何ヶ月かおかしいなと思ってたんだけどさ、昨日はっきりしたのよ。うちの弟、『高須』って言っただけで泣き出すわ」
「なんだよそれ!」

思わず大声を出す竜児に、殺風景な学食で休憩していた連中が振り向き、次に目をそらす。軽く傷つく竜児の事は放って置いて、大河が続ける。

「うちのパパとママがさ、『そろそろ高須君が来る時期じゃないのか』って話してたのよ。そしたら弟大泣き」
「お前の親父さんとお袋さんに待ち構えられているってのもどう受け取ったらいいかわからねぇが、弟君の方は、首を括りたくなる話だな」
「今度自殺なんかしようとしたら殺すって言ったでしょ。弟は、あれよねぇ」

ジョウケンハンシャと、大河は竜児をまっすぐ見つめながら言う。

食事の前にベルを鳴らすと、ベルを鳴らすだけで犬がよだれを流すようになる。梅干しを見ると唾が出る。訓練次第で頭の働きなしで体が反応するようになる。高須と言うと子供が泣く。いつの間にか顔、声に続き、名前まで覚えられてしまった。
普通顔と名前を覚えてもらえれば友達になれると思うのだが。現代社会は何かが間違っていると思う。竜児が密かに尊敬している、あの穏やかな元国連大使も悲しむことだろう。

だが落ち込む竜児の正面で大河はふっと唇をゆるめて優しい笑顔。頬に桜色が差す。

「だけどさ、おかげで一歩前進したのよ」

なんだ?と聞き返す竜児に、大河はくすぐったそうな表情。

「昨日の晩から、パパとママはあんたの事を『竜児君』って呼んでるわ。そっちだとぎりぎり泣かないみたい。弟を泣かさないように話すには、それしか方法が無いから」
「おう」

これには竜児もびっくり。あの心持ち冷ややかなお袋さんが自分の事を下の名前で呼んでいるとは。感慨深げに目を泳がす竜児に、大河が微笑む。

「だからさ、弟の事は少し気長に考えて。毎回泣かれるのも何だし、しばらく時間置いてみてよ」


275 : ◆fDszcniTtk :2009/12/13(日) 20:46:40 ID:4JjI5ZiI
今日はここまで

276 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/13(日) 22:17:07 ID:ZQqTWgOv
>>275
otu!

277 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/13(日) 22:25:42 ID:J4kCLHlP
>>275
苦難の竜児、頑張れ竜児w
どうやって弟虎を手懐けるのか楽しみです

278 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/13(日) 22:37:42 ID:jlSw8oWl
>>275
おそろいのマフラーでピンときました
続き楽しみにしております!

279 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 00:18:01 ID:M0su++Id
>>275
続く…のか

280 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 04:56:24 ID:4I+EppnR
>>275
この自然な空気がいいなあ
そしてまさかの強敵w竜児がんばれw
続きも待ってます!

281 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2009/12/14(月) 05:23:27 ID:0CSfuSYv
お題 「親友」「頭越し」「ハの字」



「こんなのどう?」
 大河から竜児にメモ用紙(チラシの裏)が渡される。
「『初雪や これが砂糖なら 糖尿病』
 ……パクリの上に字数が合ってねえじゃねえか。どうせパクるなら、そうだな……」
 竜児がサラサラと書き込んだのは、
「『雪山に ハの字ハの字の スキー跡』
 うわ、ひっど。大体スキーでハの字って何よ?」
「ほら、確か斜面を登る時は板をハの字にして歩くんだろ?やったことねえからわからねえけど」
「私も知らないわよ、そんなの。
 ……っていうか、なんでこのクソ暑い中秋だの冬だのの句なんてものを考えなきゃいけないのよ」
「仕方ねえだろ、春夏秋冬それぞれの季語を入れた俳句を作れって問題なんだから。
 とにかくこいつを終わらせれば国語はクリア。後は英語と数学をお互いに写しあえば夏休みの宿題は完了なんだし、さっさとやっちまおうぜ」
「う〜ん……冬……冬ねえ……」
「俺は秋と冬は出来たぞ」
「どんなの?」
「秋が『松茸と 財布見比べ 諦める』で、冬が『冬至来て 南瓜料理に 精を出す』だ」
「……なんか、主婦が作った川柳みたいね」
「う、うるせえ。そういう大河はどうなんだよ」
「そうね〜……あ、冬の思いついた。『クリスマス 白い天使が 舞い降りる』なんてのどう?」
「綺麗は綺麗だけど、なんかもうどっかにありそうだな、それ。
 おう、春でいいのが出来たぞ。『春の夜 桜ひとひら 舞い込んで』」
「あら、竜児にしてはやるじゃない」
「いや、こいつは大河のおかげだな」
「は?何で?」
「ほら、そこの……」
 竜児が指差したのは、襖の穴を塞いでいる薄桃色の桜の花。
「大河がくれたそいつを見て思いついたんだ」
「なるほど……それなら後で感謝の気持ちを示しなさいよね、具体的に。
 ん〜と、春で『親友と 二人で歩く 春の朝』」
「おう、なかなかいいじゃねえか。二人ってのは……」
「もちろん私とみのりんよ」
「ん?朝……登校の時なら二人じゃなくて、俺も一緒に居るんじゃねえか?」
「竜児はアウトオブ眼中だからいいの」
 竜児ははあ、と溜息一つ。
「そろそろ休憩にするか」
「おやつは?」
「今日はプリンだ。市販のゼラチンで固めたやつじゃねえぞ、ちゃんと卵と牛乳でだな……」
「あ、それならクリーム乗っけて食べたい!あとフルーツも!」
「おい、今から生クリームをホイップしろっていうのか?」
「そうよ」
「おまえなあ……確かに生クリームもフルーツ缶もあるけどよ……」
「ほら、さっきの感謝の気持ち」
「……わかった、ちょっと待ってろ」


282 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2009/12/14(月) 05:24:54 ID:0CSfuSYv
 簡易版プリンアラモードを完成させて竜児が振り返ると、大河は何かを書いていて。
「おう、何か出来たのか?」
 ひょいと頭越しに覗き込めば、
「んなっ!?か、勝手に覗くんじゃないわよこのエロ犬!」
 大河はばたばたとメモ用紙をノートの下に隠す。
「なんだよ、見せてくれてもいいじゃねえか」
「駄目、失敗作だもの」
「失敗?」
「季語を入れ忘れたの」
「おう、なるほど」
「なんかあっさり納得されるのもちょっとムカつくけど……それより早くプリン!」
「おう、今持ってくる」


『虎と竜 二人並んで 見る夕日』――逢坂大河・作

283 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 10:03:26 ID:1qn4vrbF
う〜ん、いいっ
スッゴク、いい感じです。



二人並んで、のところは、「二匹寄り添い」に変えるのもありかとおもいます。

とにかく、感動した

284 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/14(月) 12:50:46 ID:/kTtYb2R
>>275
乙!
竜児がかわいそうすぎるw

>>282
乙!
日常な感じがいいねぇ

285 : ◆fDszcniTtk :2009/12/15(火) 00:30:53 ID:AzSnQ5BI
>>276-280, 286
ありがとう!


タイトルが良くない気がするけど、いい案も浮かばない。

286 :条件 ◆fDszcniTtk :2009/12/15(火) 00:31:35 ID:AzSnQ5BI
◇ ◇ ◇ ◇ 

2012年8月x日 雷雨
しばらく家に来るなといっていた大河が、急に来いと言い出した。なにか裏がありそうだが、聞けば怒るかもしれないし、とにかく訪ねることにする。

◇ ◇ ◇ ◇ 

2012年8月x日 晴れ

立秋。

弟君に大泣きされた。

◇ ◇ ◇ ◇ 

「大河、方針を変えよう」

祖父の家に2人で遊びに行った帰り道で、竜児が話を切り出した。夏休みもそろそろ終わりがはっきり見えてきたが、相変わらず暑い。強烈な西日の中、涼しげなワンピースに白いつば広の帽子の大河が、帽子の下から顔を覗かせて竜児に聞く。

「方針って?」
「弟君の事だ」

大河は随分竜児を呼ぶことに積極的で、またすぐにでも来いという。だが、このままでは同じ事の繰り返しで、埒があかない。しかも、弟君は竜児の声や名前だけで泣き出すという変な条件反射を獲得してしまった。
もともと大河の両親にちゃんと挨拶をするのが目的だったはずだが、公共事業のようにだらだらと遅延する内に、いつのまにか弟君攻略が目的になりつつある。確かに「将を射んとせばまず馬を射よ」と言いはするが。

「人間相手にこんな事をするのはどうかって思っちまうけど、仕方ない。条件反射を別の条件反射で塗りつぶすんだ」
「どうするの?」

いぶかしげに問いかける大河に、竜児は前の方を睨み付けながら、

「これからお前とデートするときには、必ず子供が喜びそうな食べ物を持って行く」
「あんた、うちの弟を食べ物で釣る気?」

おう、お前もチャーハンで釣ったからな、とはさすがに言えない。言えないが、

「釣るっていうか、そもそもお邪魔するのに手ぶらだった俺も悪いんだ。学生だからって甘えてた。だから、これからはちゃんと手土産を持って行く。でも、今は行くことすら出来ない。だから大河、こっから先はお前の任務だ」
「任務って何よ」
「弟君は俺の名前とイメージを結びつけてる。だから大河、お前が弟君に俺からだって言ってお菓子をあげるんだ」
「つまり…えーと、竜児の名前を聞くとおいしいものを食べられる、って条件付けるわけ?」
「そうだ。そのときに『ほーら、高須のお兄ちゃんが持ってきてくれたよー、おいしいよー』って、言うんだ。そうしたら、弟君の中で俺の名前とお菓子が結びつく」
「あんた変な顔してる」

ぷっと吹き出す大河に竜児は不機嫌な顔。

「笑ってる場合かよ」
「でもさ、竜児。もし、弟の中でお菓子とあんたの顔が違う風に結びついたらどうなるのよ。お菓子を見ると泣く子になるの?」
「……そうならないことを祈ろうぜ」

竜児は暑さにあえぐように呟く。


287 :条件 ◆fDszcniTtk :2009/12/15(火) 00:32:17 ID:AzSnQ5BI
◇ ◇ ◇ ◇ 

2012年8月x日 晴れ

大河に説明して小さなチョコを渡した。俺の名前を出したら泣いたらしいが、とりあえずチョコを食べて機嫌を直したらしい。

◇ ◇ ◇ ◇ 

2012年11月x日 雨 寒い。

最近は弟君は俺の名前を聞いても泣かなくなったらしい。大河は喜んでいるが、お袋さんは俺の事をムシバランス呼ばわりしているらしい。軽く落ち込む。次からは麦チョコを少しだけ、ティッシュに包んで渡すことにする。

◇ ◇ ◇ ◇ 

2013年2月x日 晴れ 風が冷たい

前の国連大使のニュースが流れたときに弟君が目を輝かしていたらしい。どうやら名前の印象は完全に好転したようだ。

泰子が風邪をひいた。寝相が良くないと思う。

◇ ◇ ◇ ◇ 

2013年3月x日 晴れ

桜の開花宣言が出た。

明日、大河の家に挨拶に行く。四年になる前になんとか一度家に上がりたい。


288 :条件 ◆fDszcniTtk :2009/12/15(火) 00:32:58 ID:AzSnQ5BI
◇ ◇ ◇ ◇ 

「ご無沙汰しています」

玄関でしっかり挨拶した竜児に返ってきたのは、奥の部屋で聞こえる泣き声ではなくて、大河の父親の暖かい笑顔だった。

「やぁ、竜児君。久しぶりだね。あがんなさい」
「はい」

声が感動で震えそうになるのを必死でこらえる。婚約者の父親が下の名前で呼んでくれた!

通されたリビングは、以前来たときとあまり変わらないように思える。広々として安っぽさがかけらも無いのは2人の収入を想像すると、あたりまえだろう。まぁ、高須泰子さんの家が見劣りするのは当然だが、別に恥じることもない。

大河の母親はキッチンの中から「いま料理で手が離せないの、ごめんなさいね」と素っ気なく声を掛けてきた。なにしろこちらは母親の手元から大河を2度連れて逃げているのだから、そう簡単に心を許してくれるとも思っては居ないが、あれから何年も経つ。
それだけにここに来るのに時間がかかりすぎたな、と痛感する。

まぁ、座ってと椅子を勧められる。父親は奥の方にも声を掛けるのだが、

「大河も来なさい」
「うん、そっちに行きたいんだけど」

ちょっと困った様な声が返ってくる。苦笑する父親の顔をみて竜児も振り向き、唐突にならないようゆっくり部屋を覗き込んでみると

「おう」

蝉が一匹、大河にしがみついていた。こざっぱりした部屋着の大河に、がっしりと子供がしがみついている。身長差から見ると、仲のいい姉弟にしか見えないが、よく考えてみると2人は姉弟だ。まぁ、年の差17歳の姉弟なのだが。
ぱっと見たところ7歳くらいしか違ってないように思える。

どうやら弟君は突然の客の来訪に困ってお姉ちゃんに甘えているらしい。姉弟仲のよいことは素直に喜ばしい。一方で「そいつは俺の女だ」と思わないこともない。両親の前だから間違っても口には出来ないが。

弟君が、そっと竜児を見る。目があった。

「おう、久しぶり。覚えてるかい?」

ポケットからいつも大河に渡していたおひねりを取り出して差し出す。しかし竜児の精一杯の笑顔が怖かったのだろう、ちいさく「ひっ」と声を上げて大河の薄い胸に顔を埋める。

嫉妬やら、屈辱やらで複雑な顔になる竜児のうしろから、父親が「ほら、挨拶して」と促すが、弟君は大河にしがみついたまま。しがみつかれた大河も困った顔で、「今日、ダメみたい」と苦笑い。

もっとも、この日大河の弟は最後まで泣かなかった。空腹に負けて夕食の席についた時には竜児の顔を見ないようにしていた。それでも、泣かなかった。つまり、竜児はついに鉄壁の要塞を打通したのだ。
それがどれほど竜児にとって意味のあることなのかは、大河の母親が時折見せる、何かをかみ殺すような複雑な顔を見ればわかる。

弟君は4月から幼稚園の年少組らしい。

「幼稚園じゃ、何があっても泣かないでしょうね。当然よ、真の恐怖を知ってるんだから」

とは、上機嫌だった大河の飛ばした軽口。


289 :条件 ◆fDszcniTtk :2009/12/15(火) 00:33:44 ID:AzSnQ5BI
◇ ◇ ◇ ◇ 

2013年5月x日 晴れ

大河の家に遊びに行く。弟君は相変わらず挨拶をしてくれない。だが、大河の後ろで恥ずかしそうに笑っていた。

◇ ◇ ◇ ◇ 

2013年8月x日 雷雨

大河の家に遊びに行く。弟君にお菓子を手渡せた。

◇ ◇ ◇ ◇ 

2013年10月x日 朝から断続的に雨。

台風が直撃。すごい風だった。

明日、大河の家に遊びに行く。

◇ ◇ ◇ ◇ 

「じゃ、これで失礼します。お母さん、おいしい料理、ごちそうさまでした」
「気を付けてね」

頭を下げる竜児に、大河の母親が困った様に笑う。困ろうがどうしようが、竜児の勝ちだ。根っこでは竜児を嫌っていないらしい彼女にとって、何年間も素っ気ない態度を続けるのは至難の業だったのだろう。ここ半年で、竜児は完全にこの家のリビングに溶け込んだ。
相変わらず弟君は話をしてくれないが。

父親に送られて玄関で靴を履く竜児に大河が奧から声を掛ける。

「竜児ちょっとタンマ!………ほら、早くして!」

大河に後ろからせかされて、来年年長組に上がる弟君が玄関にやってくる。表情は、知らない人に子供が良く見せる照れ笑い。彼にとって竜児は知らない人ではないが、なにしろこの照れ笑いを獲得するのに3年半かかった。

前に押し出されてきた弟君の前に、竜児がしゃがむ。かつて無い接近に一瞬玄関が緊張に包まれるが、無事クリア。

「なんだい?」

ん、と無言で差し出されたのは折った画用紙。

「俺に?」

そう、と頷く。後ろを見ると大河はニヤニヤ笑い、父親もどういう表情をしたらいいのかわからないといった顔をしている。

受け取った画用紙を開いた竜児は、思わず

「おう」

と、大きな声。

290 :条件 ◆fDszcniTtk :2009/12/15(火) 00:34:32 ID:AzSnQ5BI
渡されたのはクレヨンで描いた運慶・快慶作「東大寺南大門金剛力士像 阿形」。ではなくて、たぶん以前来たときににっこりほほえみかけた竜児の顔だろう。その証拠に絵の横にはたどたどしい文字で「おにいちゃん」と書いてある。
「ん」の波がひとつ多いのをここで突っ込むのは野暮だ。

つり上がった目の中で大きくぎらぎらと輝く白目、ぎゅっと収縮して狂気を振りまく黒い瞳。近寄るものをすべて食い殺しそうな耳まで裂けた口。自分の顔が就学前の子供の目にどう映っているのか突きつけられて、竜児は気を失いそうになる。

そこで竜児が言葉を失ったのがあまりにおかしかったのか、リビングの奧から苦しげな声が漏れてきて、やがて爆笑に変わった。

「あーーはっはっは、ごめんなさい。ごめんなさいね!竜児君。でも、『ちゃん』は余計だわよね、おほほほ!ひーっ苦しい!」

何を言われても口答えできない状況の竜児は、苦い笑みを浮かべたまま黙って絵を見つめるしかない。畜生、覚えてろ。お前の娘は必ず俺が奪ってやる、と思っているのだ。絶対幸せにしてやるから覚えていやがれ。

「これ、お兄ちゃんを描いてくれたのか?」

うん、と頷く弟君。そうか。そうだよな。俺は似てないと思うけど、気持ちはありがたいよ。横に、おにいちゃんと書いてくれてるし、否定のしようがない……ちゃんが余計……『おにい』?…『鬼ぃ!』?……。
娘と血がつながっていることをしっかりとその口の悪さで証明している母親はおいといて、竜児は弟君に礼を言い、微笑んで頭をなでてやる。おとなしくなでられると、弟君は、はにかみ笑いを浮かべたまま大河の背中にしがみついて隠れてしまった。

「竜児君、すまないね。気を悪くしないで欲しいんだが」
「いえ、そんな」

女子供と違って、竜児と大河の父親は大人の会話。

「この絵ですが、いただいてかまいませんか?」
「ああ、かまわないよ」
「竜児、焼いて捨てたりしたら承知しないわよ」

可笑しそうにニヤニヤ笑う大河に『焼くかよ』と軽く突っ込む。こういう凶暴な顔の絵が好きそうな永遠の23歳を1人知っているから、帰ったら見せてやろう。

「じゃぁ、これで失礼します」
「ああ、気をつけて」
「竜児、またね」

リビングの奧からはまだ腹痛に耐えるようなくぐもった笑いが聞こえてくる。 だが、

「おにいちゃん、また来てね」

小さく発せられたその一言に、瞬時に場が凍り付いた。父親も大河も目を丸くして弟君を見る。声を掛けられた竜児も呆然。リビングの奧の笑い声も止まる。1秒、2秒、3秒、注目に耐えかねて弟君は奧に逃げ込むが、

「やった………………やった………やった。やったやったやったやったやったやったやったやったーーーっ!」

続いて謎の興奮状態に陥った大河は喜びに顔をくしゃくしゃにしたまま、いきなりサンダルをつっかけ、竜児を玄関から押し出す。

「竜児、送っていくわよ!いきましょ!」
「おう、なんだ?」

そのままバタンと扉を閉めて、2人は夜の住宅街へと出て行った。


291 :条件 ◆fDszcniTtk :2009/12/15(火) 00:35:23 ID:AzSnQ5BI
◇ ◇ ◇ ◇ 

「あの娘ったらはしゃいじゃって」

玄関から戻ってきた夫を迎えたのは、打って変わってちょっとしらけた感じで食卓に座っている大河の母親の長い溜息。頬杖を突いて不愉快そうな顔をしているのは、たぶん演出だろう。

「そんな事を言ったって、言い出したのは君だぞ」

気の強い妻のこのくらいの言動にたじろいでいては、夫は勤まらない。柔らかい笑顔を浮かべながら戸棚からウィスキーを取り出す。琥珀色の液体を注いだグラスを口に近づけると、アルコールを含んだ強い香りがふわりと顔を包む。

「あんなの冗談に決まってるじゃない」
「冗談でも、もう反対できなくなったね」

大河の母親はふっと力を抜いて遠い目。

「あーあ、大河本当に結婚しちゃうのかしら。早いと思うんだけどな。あの子美人だし、あんな岩おこしみたいな男の子じゃなくたって選び放題なのに」
「岩おこしはひどい」
「じゃぁ、お不動さん」

くくく、と笑いながら夫は呟く。

「不動明王が怖い顔をしているのは、悪しき心をくじき、弱き心の人を助けるという、仏様の強い意志の表れだそうだよ」
「なによ。あなたどっちの味方なの?」

意地を張ってふてくされた顔をしている妻を見ながら、ふと、思う。そうだ、次は竜児君とウィスキーでも呑もう。


292 :条件 ◆fDszcniTtk :2009/12/15(火) 00:36:06 ID:AzSnQ5BI
◇ ◇ ◇ ◇ 

そのころ、

「やったー!やったやったやったー!」

すっかり暗くなった住宅街で大声を上げてはしゃぎながらめちゃくちゃにぶら下がってくる大河に、竜児は半切れ状態だった。

「大河、おい大河!なんなんだよ、いきなり。説明しろよ!お前何喜んでるんだよ!」

ぐいと引き離されても、大河は満面の笑み。キラキラと輝く瞳で竜児を見つめ、やがて頬を赤く染める。

「だって」

と、言葉を切り、こみ上げる喜びを呑み込むように目を閉じると、もう一度竜児を見つめて、

「ママがね、言ってたのよ。あの子が竜児と話すようになったら結婚を認めてやってもいいって」

とんでもない家庭内約束を披露してくれた。今度は竜児が大声を上げる番だ。

「はぁ?なんだよそれ!」
「『はぁ』じゃないわよ!喜びなさいよこの鈍感犬!」

満面の笑みを浮かべた大河が、目を細くして嬉しそうにガスガスとサンダル・キックを入れてくる。向こう臑に走る激痛も余所に、竜児は体中に鳥肌を立てて、

「待て、ちょっと待て。認められたんだな、俺たち結婚認められたんだな!」
「だから喜びなさいって言ってるでしょ!やったやったーっ!結婚だーっ!竜児と結婚!」

呆然と立ちすくむ竜児の右手をとって、大河はぴょんぴょん跳ねながら町内会に朗報を喧伝する。腕を上下に振る。左右に振る。あはははは!と声を出して笑う。
暗くなった空の下でしばらくいいように手を振り回されていた竜児は、ようやく正気を取り戻すと、

「おう、って、何だよ。俺たちまじめなのにあんまりじゃねぇか、その条件」

と、三白眼を揺らしてみせる。しかし、かつて手乗りタイガーと呼ばれたその女は相変わらず顔を崩して目を線にしたまま。

「馬鹿ね竜児ったら。ほんとにお馬鹿さんなんだから。あんた、とっくに私の恋人として認められてたじゃない」
「え、いや、だけど」
「だから、ママの照れ隠しよ。あんたは高校生のときに、二回、私をママの前から連れて逃げたでしょ。ママはそれにちゃんと理由があるのはわかってるけど、振り上げた拳を黙っておろせる程素直じゃないのよ。
怒ってないけど、怒ってないって言いたくないの。5年も経つのに、強情よねぇ」

293 :条件 ◆fDszcniTtk :2009/12/15(火) 00:36:57 ID:AzSnQ5BI
お前の強情は母親似だな、と、竜児は呆然としながら思うが、口にはしない。口にしたらどんな目に遭うやら。

「だからね、弟があんたに口をきいたら、なんてのは冗談よ。冗談なんだけど、条件を出した以上、引っ込められないでしょ。あんたと私の結婚を認める理由を無理矢理つくっちゃったのよ『条件なんだから仕方ない』って自分に言い訳するために。
ほーんと、素直じゃないんだから」
「えーっと、だから、何なんだよ」
「あーもう、1から10まで説明しないとわからないの?あんたと私の結婚は、ずっと前からうちでは暗黙の了解事項だったの。それに正式にお墨付きが出たの。もう、すねたっていじけたって反対する人は居ないの!わかった?」
「弟君のおかげでか?」

左手に持ったクレヨンの金剛力士像を見る。

「そうっ!」

大河がにっこりと笑いながら、星を散らしたような瞳で竜児を見上げる。

「ねぇ、何か言うことはないの?」

そう急に言われても。

いや、急な話じゃない。そもそも大河の家を訪れ始めたのは、自分を婚約者として認めさせ、結婚を認めて貰う為だった。確かにそうだった。あれから何年だ?そう、4年だ。4年も経っている。そして今、その願いが叶った。

竜児は立ち尽くし、前方を見る。右に目をやり、左に目をやり、たぶん「通りで騒いでる馬鹿がいるな」とでも思っているのだろう、住宅地の家々を見る。あの家の灯りひとつひとつに幸せな家族が居て、自分たちがここにいて。
左手の絵を見、冷たい空から2人を柔らかく照らす月を見た。あうあう、と言葉無く口を動かし、そして、目の前で自分を見上げる女に視線を戻す。キラキラと月の光に輝く瞳を見つめる。2人の横を家路に向かうのであろう女性が歩いて行く。
迷惑そうにこちらに視線を向けるが、慌てて目を背ける。

「ちょっと、竜児、ねぇったら!」
「お、おぉぉ………うぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!大河ぁぁぁーーーっ!」

いきなり心臓からわき上がってきた激情に一声吠え、やおらかがむと婚約者の細い体を抱きしめる。通り過ぎていった女性がびくっと体を震わせて、振り返らずに走って逃げていく。

「きゃははは!竜児ーーーっ!」

乱暴に抱え上げられた大河は、それでも目を細めて大きな口を開け、歓声を上げて竜児の頭を抱きしめる。竜児、竜児と恋人の名前を呼びながら大声で笑う。竜児も同じ。大河、大河、結婚だ!と。
どう見ても危ない精神状態の2人は、そうやってしばらく大声で静かな住宅街に叫び続けていた。


294 :条件 ◆fDszcniTtk :2009/12/15(火) 00:37:46 ID:AzSnQ5BI
◇ ◇ ◇ ◇ 

夜中、スタンドの電気だけを点けて日記を前に今日のこと…正確にはもう昨日のことを振り返る。

泰子は弟君の似顔絵に腰をくねらせて興奮しながら、竜児と大河がまた一歩前に進んだことを泣いて喜んでくれた。

北村祐作は、傍から見たら単なる滑稽劇のような話をうんうんと30分あまりも聞いた後、電話の向こうで「よっかったな、お前達」と心から祝福してくれた。

興奮は風呂から上がっても冷めず、ようやく落ち着いてきたのは1時過ぎで、泰子はとっくに夢の中。今、竜児は一人でこれまでの事を噛みしめている。携帯のディスプレイには、さっき大河から届いたメールが『眠れないよ』と。

これからもいろいろなことが起きるだろう。何より、本当に結婚の申し込みをするのは就職して、生活が安定してからだし、結婚の準備を考えると貯金も必要だろう。2人で生きていくために何が必要か、考えなければならないことはたくさんある。

だけど今日は大きな意味のある一日だった。

ほんの少し残っていたもやもやがすべて吹っ切れた日だった。だからこの重要な一日を忘れないよう、竜児は乱暴で大きな字で日記に今の気持ちを記すことにした。



『やったぜ!』



(お・し・ま・い)


295 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 00:52:29 ID:Fey3RZRL
竜児がいいねぇ。
おとして、おとして、最後に上げる。
最後への持っていきかたがうまいなぁ。

感動しました。GJでした。

296 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 01:06:25 ID:PtKB2sBu
あぁ、幸せだ。
幸せだな、こいつらw
ありがとう、俺もやる気出てきたよ!

297 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 12:42:57 ID:3Qo+md0l
>>294
乙!
幸せってこいつらのためにある言葉だなぁw
なんだかこっちまでハッピーな気持ちになれたよ。
GJ!

298 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 17:00:44 ID:wfz326BZ
>>294
ぎりぎりと引き絞られた弓から矢が一斉に放たれたような感じ! 
それも10本ぐらいまとめてw  こういう構成もあるんだなー
本作品だけでなく、氏のこれまでの作品で描かれていた竜児と大河母との確執(意地?)も
まとめてスカッとして、心地よい感じです。
「奪ってやる」とか竜児の本音にも2828しました。
あと、母親が大河を愛している雰囲気も伝わってきて、じわっときた。
とにかく、GJでした!

299 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/15(火) 17:26:29 ID:kj6L+6WX
GJ!すげー良い話だった

この話をそのままアニメにして欲しい

300 : ◆fDszcniTtk :2009/12/16(水) 07:34:28 ID:i3YWaKGU
ムシバランスじゃなくて、ムシバラスだった orz

>>295-299
サンキュー!

思ったより好評で嬉しい。

>>298
原作に出てきた母ちゃんがえらくきつい感じだったんで、たぶん竜児の事だってちょっとやそっとじゃ
認めないだろうな、って思ってた。



301 : ◆QHsKY7H.TY :2009/12/16(水) 20:48:00 ID:tdQZ/5Uz
条件、相変わらず良かったです。
良かったね、二人とも!

さて、お待たせしました?
ドラとら!続きいきます。

302 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/16(水) 20:49:16 ID:tdQZ/5Uz
夏休みが終わると、学校ではそろそろ学園祭の時期になる。
今年のウチのクラスは男子が団結してメイド喫茶をしようと企み、この夏独●三十路に突入してしまった担任、恋ヶ窪ゆり先生の謀略によってプロレスショーになってしまったのだった。

「……なぁにがなってしまったのだった、よ。冗談じゃないわ」

大河は昨日のLHRで決まった内容に大変ご立腹のご様子だ。
昨日はどうでもいいと何処吹く風だったのだが、今日学園祭実行委員の春田が責任を感じてとか言って台本を作ってきたのだ。
その内容がちょっとアレな内容だった。
別にアレと言ってもR指定なわけではない。

「何で私が悪の親玉なんてやらなきゃならないのよっ!!それにばかちーが正義ってのが腹が立つ!!あのアホロン毛!!」

それだった。
春田の台本はヤンキー高須と悪の手乗りタイガーがクラスのみんなを洗脳し悪に染め、川嶋にそれを助けて貰うというような内容らしい。
何でもプロレスで戦うらしい。
櫛枝はボクシング漫画のセコンドとアタック25の児玉きよしを足して二で割るらしい。
担任の赤い糸を切ろうとする描写もあるらしい。

「まぁ、確かに無茶苦茶だな」

台本を読み終えて俺は苦笑する。
よくもまぁここまでカオスにしたものだ。
案外アイツはこういう才能があるのかもしれない。
普段はアホだけど。
大河はウチの卓袱台に頬杖をつきながら不満そうに台本を睨み付ける。

「やってらんないわよ、全く」

不機嫌さを辺りにまき散らし、高須家のエンゲル係数を上昇させながら大河は自身の不満を押しとどめる。
昨日今日で一体どれだけ食うんだコイツ。
川嶋の時もそうだったけど、腹が立つと食うタイプだな大河は。
そう思いながら昨日今日での冷蔵庫の減り具合を見て溜息を吐き、お茶を淹れて卓袱台についた。
と、

『ブゥーン、ブゥーン』

大河の携帯が鳴る。
だというのに大河は携帯を取ろうともしない。

「おい、鳴ってるぞ」
「ん?ああいいの。ほっといて」

?珍しいな、そんなこと言うなんて。



***

303 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/16(水) 20:50:19 ID:tdQZ/5Uz
次の日、帰宅途中にまた大河の携帯が鳴る。
大河は携帯を取り出すと軽く舌打ちして取らずにしまった。
さらに次の日、大河は休み時間中に携帯が鳴り、苛立たしげに何か操作していた。
それから数日は、携帯は静かだった。

「今日はアンタに食事代払う日よね」
「おぅ、お前最近苛立ってるのか良く食うからなぁ、おかげでパッツンパッツンだ」
「何よ、あれぐらいで大げさな」
「飯六杯を四日続けて食う奴を大げさとは言わん」
「細かいことをネチネチと……」

大河はブツクサと文句を言いながらコンビニのATMに行き、いつもこちらが驚く程のお金をおろして来る……のだが。

「あれ?」

今日は疑問符が飛び出る。

「どうした?」
「お金が……なんでも無い」
「何だよ?」
「別に。ちょっと待って」

大河は財布にカードをしまうと、

「ちょっと郵便局行くわよ」

そう言ってコンビニを出る。
そうして、郵便局で大河はお金をおろし、いつも通り俺に一万円札を渡してきた。

「今日はどうしたんだ?今まで郵便局なんて使わなかったのに」
「別に、ちょっとした私用よ」

そう大河は何でも無いように話す。
この日から、大河は浪費をしなくなったように思う。
この時、俺は大河がどんな状態にいるのかわっていなかった。



***

304 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/16(水) 20:51:26 ID:tdQZ/5Uz
文化祭準備は着々と進んでいく。
櫛枝は何故か眼帯に禿げのカツラをしてるし、俺や大河はいかにも悪者が着そうな服を着てるし、わざわざ担任の赤い糸を演出するための太い赤い糸まで用意した。
最初は嫌がっていた大河も、渋々練習には参加してるし、全てが上手く回っていた。
この時はそう思っていた。

「いよいよ明日だな、学園祭」
「そうね、これが終わればようやくばかちーにわざと負けるという屈辱も終わるわ」

大河は口をとがらせて言うが、最近はその川嶋とも上手くやっているようで、前ほどの刺々しさは無かった。

そうして、学園祭当日はやってくる。



***



「これが担任の赤い糸だ!!さぁ切っちゃうぞぉ切っちゃうぞぉ!!」

能登が芝居ぶった動きで大きなハサミを巧みに扱い糸を切ろうとする。
途端、

「やめてぇ!!切らないでぇ!!」

観客席にいたゆりちゃん先生が発狂したように暴れ出した。
ざわつく観客。
切ろうか切るまいかの所で他の2−Cの面々に先生は連れて行かれ、

──────プッツン。

糸を切る。

「あああああああああっ!!!」

遠くで先生の叫び声が聞こえた気がした。



***



「いや、大成功だったね」

舞台裏でみんなで祝杯を挙げる。
予想以上の人の入りようだった。
ちなみに糸を切られたゆり先生は、

「はい、みんなご苦労様!!あと午後にもう一回公演があるからねー!!」

取り乱すことなくみんなを纏めている。
そう、あれすらも予定のウチ、つまり“やらせ”なのだ。
ホント、考えた春田はこういうことは凄い、あと酷い。
ゆり先生も、勢いでプロレスショーにしてしまった手前、このお願いを断れなかったらしい。
だが条件として、自分のいる前で糸を切らないこと、切った糸は必ず修復してから処分することなどを条件にしてきた。
……先生も必死なんだと改めて実感した。
とりあえず公演が終わったことでひとまず休憩。
俺たちはみんなで学園祭を回ることにした。

305 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/16(水) 20:52:39 ID:tdQZ/5Uz
「……ってか、メイド喫茶多くない?」
「……多いな」

辺りは多種多様なメイド喫茶で溢れかえっていた。
それもこれも、今年の学園祭のクラス優勝の賞品が凄いからだろう。

「まぁなんと言っても電源と冷蔵庫は大きいわよね」
「何せ狩野屋の割引券だ、みんなやる気もでるよな」

……イマイチ大河と意見が合わなかったが良しとしよう。
とにかく欲に目がくらんだ奴等……俺たちもだが、一番儲かりそうなもの、メイド喫茶を他のクラスはやったのだろう。
結果、かぶりまくり、客を得られずに俺たちのような奇をてらったクラスが人気が出てる、と。

「それよりお前、昼からのアレ、用意は良いのか?」
「ああ、ミスコンのこと?まぁどうでもいいんだけど」
「馬鹿、お前なら結構いけるぞ?うまくすりゃ優勝だ」
「そ、そうかな?」
「おう、そうしたらお前、北村とも上手くいくんじゃねぇか?」
「そ、そうかな……」
「……?なんだよ?」

最近、大河は北村の話題を出すと暗くなるようになった。
別に嫌いにはなっていない、と思うのだが。

「まぁとにかく、午後の公演終わったらちゃんと準備しろよ?」
「う、うん」

大河、暗いなぁ。



***



午後の公演も大盛況で終え、そろそろ夕方のミスコンが始まる。
大河のドレスは俺が仕立てた。
純白の大河の服に少し手を加え、泰子が以前誰かから貰ってきた天使の羽根を付けてみた。
これぞ天使だ、と思う。
それに、最初に会ったのがクリスマスだったせいか……大河には白がよく似合うと思う。

「ほら、良いだろ?」
「アンタって本当にこういう事は何やらせても無駄に器用ね」

大河はそう言いながら服を着て、周りから賞賛を浴びる。

「絶対いけるよタイガー!!」
「可愛い!!」

大河は満更でもなさそうな顔で、ふと久しぶりに振動しているケータイを手に取る。



─────途端、彼女の表情が消えた。

306 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/16(水) 20:53:45 ID:tdQZ/5Uz
「……やっぱり」

そう言う大河は、先程珍しく振りまいていた愛想を回収するかのように笑わなくなってしまった。

「本番だよー!!」

呼ばれて出て行く大河の後ろ姿が、少し寂しそうだった。



***



司会をやることになっていた川嶋が、どこの女王様だという出で立ちで鞭を振りながら司会を続ける。
確か自分はモデルだから出たら可哀想だしとか言ってたが、ありゃ全員司会に目を向けて客を食う気だ。
珍しく殊勝だと騙された自分が情けない。

「手乗りタイガーと言えばお馴染み、逢坂大河さんでーす!!」
「おおぉ!?……おぉ?」

現れた大河に皆一様に息を呑むが、やはり大河に覇気が無い。
だが、それが逆に儚さを伴った人気を呼んだ。

「おおおおおおおおっ!?」

白く細い腕が、ドレスから伸びやや俯いた表情が弱々しさを思わせる。
小柄なのも相まって、それは本当に天使のようだった。



***



幕切れは呆気なかった。
ダントツで大河。
大河が一位だった。
そうして、大河が今だ弱々しく俯いたままでミスコンのティアラを貰おうとした時、急にステージが暗くなる。

「なんだ?」
「どうしたんだ?」

そんな疑問の声が上がるのと同時、ステージは再び電気が点き、生徒会の面々が立っていた。

「おめぇら!!これにてミスコンは終了だッ!!ミスコンの次はミスターコンテストッ!!名付けて福男レースを開催するッ!!」

307 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/16(水) 20:54:47 ID:tdQZ/5Uz
女生徒会長、狩野すみれが、男のような喋り方で急にそんな事を言い出す。

「優勝者、福男にはミスコンの逢坂大河にティアラ贈呈、そしてダンスを申し込む権利が与えられるッ!!」
「おおーっ!?」

ダンス……とは後夜祭のファイヤーダンスのことだろうか。

「さらに!!私がこの三年間使用してきたノートもソイツのもんだッ!!」
「おおおおおっ!?」

会長……通称兄貴ノートと言えばこの学校の憧れだ。
なにせ三年間ずっと成績トップ。
そんな人物のノートがあればこれからのテストも怖くない……と思う。

「私はこの文化祭が終わり次第、アメリカに留学するッ!!おめぇら、最後に私に気合いみせやがれッ!!」

瞬間、体育館の生徒のみならず生徒会の面々にも衝撃の表情が奔る。
聞いていない……という顔だ。
たしかあの女の子、さくら、だったっけ?
さくらは妹のハズだが、姉の事を聞いていなかったのだろうか。

「コースは既に外に出来てる!!校舎を一週マラソンして一番早かった奴が勝者だッ!!挑戦者は速やかに表に出やがれッ!!」

途端、痰を切ったように生徒は外に出だした。



***



「会長……」
「北村、私はもうアメリカに行くと決めたんだ」

どうしていつもこの人はそうなのだろう。
もう少し、あともう少し待って欲しかった。
せめて、自分が会長になるところを見て欲しかった。

「俺は会長、貴方が……!!」
「……北村」

言おうとして、言わせてもらえない。

「……はい」
「お前は行かないのか?」

くいっと外に親指が向けられる。
ああ、だから貴方って人は。

「行きますよ、必ず勝ち取ってみせます、会長のノート」
「……まぁ通称兄貴ノート、大事に使ってくれ」
「……まだ俺は勝ってませんよ?」
「……今言ったじゃねぇか、絶対勝ち取るんだろ?」
「……はい!!」

これで負けられなくなった。
俺は、グラウンドへと駆けだした。

308 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/16(水) 20:56:18 ID:tdQZ/5Uz
***



「よぉ大河、良かったな、ミスコン優勝出来て」
「……うん」

みんなが駆けだして行ってすぐ、トボトボと大河が歩いてきた。

「何だよ?随分暗いな?」
「……うん」

どうにも、様子がおかしい。

「どうした?」
「竜児は外に行かないの?」

大河からは少しの拒絶の意を感じた。

「ああ、目的が無いからな、兄貴ノートはちょっと欲しいけど」
「……そっか。……ねぇ、私ってさ、結局なんなんだろうね?」
「……は?」

急にわけのわからない事を言い出す。

「私ってさ、オマケなのかな?」
「何言い出すんだお前?」
「ほら、みんなだってノートが目当てじゃない?このレース」
「まぁ、そればっかりとは限らんぞ?」
「わかるよ、いっつもそうだし、やっぱりそうだったもの」
「どうしたんだ?」

俺は余りの大河の様子のおかしさに急に怖くなった。
何か、今までの俺が知る大河じゃないような気がして。

「私さ、この前から急に父親が電話してきてたんだ。出なかったけどね」

言われて、携帯が鳴っても出なかった時期を思い出す。

「いっつもそうなんだ。アイツ、新しく結婚した相手と折り合いが悪くなると私に言い寄って来て、でも結局ヨリを戻してそのまんま」
「っ!?」

何だ、それは。

「それにさ、今度は騙されないってずっと電話無視してたらこの前銀行の口座、生活費の口座を空にされたの。笑っちゃうでしょ?」
「………………」

何だ、それは。

「あの時はこんなこともあろうかとって別に自分で作っといた郵便局の口座に入れといたお金でなんとかなったけどね。それもそんなにたいした額じゃないし」
「………………」
「で、いい加減着信拒否にしてたら今度はメールでさ、一緒に住もう、学園祭見に行くよって。馬鹿だね私、そんなわけないのに少し信じちゃってた」
「………………」
「さっき、ミスコン前に急にさ、ヨリ戻したからやっぱり一緒に住むのは無し、これから旅行に行く、だってさ。本当に、私ってなんなんだろう……」
「……んな」

何なんだ、それは。

309 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/16(水) 20:57:24 ID:tdQZ/5Uz
「私ってさ、義理の母親の代えで、兄貴ノートのオマケで、誰にも必要とされてないのかなって。ああ、でもまたちゃんとお金は入金するって。ホント、それは助かるんだけどさ」
「……っけんな」

何なんだ、それは!?

「私……」
「ふざけんな!!」

いつの間にか、俺は声を荒げていた。

「竜児?」
「俺がお前を認めてやる」

キツイとよく言われる目を、限界までつり上げる。

「へ?」
「俺がお前の為に走ってやる」
「で、でも竜児は……」
「俺が!!傍らに居続けてやる!!」
「あ……」

それは、こいつに言われた事。



─────アンタはこれからも私の為に私の傍らに居続けなさい!!



“大河”と呼ぶようになった日に、言われた事。

「でも、私は……」
「例え、お前が北村と上手く行っても、俺はお前の傍らに居るよ」
「っ!!」

大河は驚いたように目を見開いた。
意外と、自分は大河の中で重要な人物になれていたらしい。
それが少し、嬉しい。

「俺とお前の距離が変わらずとも、俺はお前を見ている。約束する」

俺はそれだけ言って、まだスタート前の副男レーススタート地点に走り出した。
優勝者はティアラ贈呈、そしてダンスを申し込む権利。
……絶対に、負けられない。



***

310 : ◆QHsKY7H.TY :2009/12/16(水) 20:58:51 ID:tdQZ/5Uz
今日はここまで。
ちょっと気持ちが逸って少し駆け足気味になったかも。

311 : ◆Eby4Hm2ero :2009/12/17(木) 05:20:54 ID:K1sSUDYI
>>310
乙です。

まさかここで北村が絡んでくるとは……

312 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2009/12/17(木) 05:23:13 ID:K1sSUDYI
お題 「さかのぼる」「殴る」「さようなら」



 日曜日の朝。
 借家の二階に続くボロい外階段も、今は天国へと昇る梯子のよう。

 三年になってからというもの、学校ではクラスが違うし、弟の世話もあるし、大河が竜児と一緒に過ごせる時間は一日にせいぜい数時間程度。
 一般的な高校生カップルとしては十分なのかもしれないけど、一時は家族同然の生活をしていた二人にとってはやはり物足りなくて。
 だから、特に約束とかをしたわけではないのだけれど、自然に休日にはほぼ一日一緒に居るようになって。
 その時間はとても嬉しくて、大切で。

313 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2009/12/17(木) 05:25:26 ID:K1sSUDYI
 ドアの前でちょっとシミュレーション。
 やっちゃんはそろそろ出かけた後のはずだから、いきなり竜児と二人きり。
『竜児、おはよう』
『おう大河、早かったな』
『うん、竜児に早く逢いたかったから……』
『大河……俺も逢いたかったぜ……』
 思わずにへらんと笑みが浮かぶ。
 いけないいけない、気持ちを落ち着かせるために深呼吸。竜児にあんまり締まりの無い顔を見せるわけにもいかないし。
 ノブに手をかけ、いつものようにドアを開けると、
「だから、このコンマから後はその前の単語の説明になってるんだよ。それが繰り返されてるから、訳す時には後からさかのぼる形でだな……」
「……あ〜、なるほど〜。さすがは高っちゃん」
「おい、ホントにわかってるんだろうな?」
 聞こえて来たのは竜児ともう一人の話し声。
「……竜児?」
「おう大河、早かったな」
「あっれ〜?なんでタイガーがこんな時間に?」
 大河の声に振り返ったのは、竜児と元クラスメイトのアホ……もとい、春田浩次。
「なんではこっちのセリフよ……ねえ竜児、どうしてこのロン毛虫がここに居るわけ?」
「いや、それがな……」
「あ、俺?俺さ〜、なんかこのままじゃ本気で卒業ヤバいらしくってさ〜。でもさ、高っちゃんならすっげ〜頭いいじゃん?」
「ゆりちゃんに泣きつかれたんだよ、学校だけじゃフォローしきれないからって。ほら、うちには兄貴ノートがあるし」
「でも、何で今日なのよ?私が来るのはわかってるでしょ?」
「おう、俺もそう言って断ろうとしたんだけどさ……『あらちょうどよかった。逢坂さんも成績優秀ですもんね』って」
「あ、あの独身(30)……!」
「まあ、ゆりちゃんには色々と迷惑かけちまったしさ……どうにも断わりきれなくて」
「あ、タイガーが来た理由わかった!高っちゃんとタイガーってばラブラブだもんね〜……フヒヒッ!
 いいよね〜、俺も瀬奈さんとラブラブしたいんだけどさ〜、瀬奈さん今課題で忙しくてさ〜」
 ぶちり、と、何かが切れた気がした。
「そうね……教えてあげる。まず『さようなら』は英語で『good-bye』って言うの」
「ほえ?」
 きょとんとする春田に大河は続ける。
「それから『お父さん』は『father』、『お母さん』は『mother』」
「やだなタイガー。いくら俺がアホだからって、それぐらいはわかるよ〜」
「いいから続けて言ってみなさい」
「え〜とね、『ぐっどばい、ふぁーざー、まざー』」
「それじゃ今生の別れの挨拶も済んだ所で、速やかに天国に送ってあげるわ!」
「ひえぇぇぇぇぇっ!」
「ま、待て待て大河!」
 春田に飛びかからんとする大河を、竜児が慌てて制止する。
「どいて竜児、そいつ殺せない!」
「駄目だ、こんなことで大河の手を汚させるわけにはいかねえ!」
「ひいぃ、お助けぇ〜〜!」
「でも、こんな、こんなアホ毛虫のせいで、せっかくの竜児との時間が……!」
「今週だけ、今回だけだ!今度の期末を乗り切れば、後は夏季講習とかでなんとかなるはずだから!」
「……わかったわ」
 大河の体から力が抜ける。そして春田を睨みつけ、
「竜児に免じて、今から勉強を教えてあげる。でもね、
 憶えられなかったら殴る。
 忘れたらぶっとばす。
 赤点をとったら……殺す。
 わかったわね?」
「は、はいぃ……」


 それから卒業までの間、春田浩次はギリギリながらも一度も赤点をとることはなかったという。
 教師によっては奇跡とまで呼ぶその真実を、知る者はごく僅かしかいない。

314 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/17(木) 05:37:57 ID:a1UngIv0
GJ
早起きは三文の得〜

315 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/17(木) 07:56:25 ID:fv0v8f0n
>>313
今生の別れ(w

「彼女は忙しいのでこっちのカップルの邪魔をしに来ました」ってのは、嫌がられるよなぁ


316 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/17(木) 09:51:08 ID:D981XRPZ
>>313
乙です!

317 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/17(木) 12:00:20 ID:pnsjYhVi
待ってましたとも!
今日もGJ

318 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/17(木) 21:03:43 ID:IT1HGmbu
>>310
乙!
待ってたよw
北村と竜児、この勝負は気になるねぇ。

>>313
乙!
春田www
確かにそれは奇跡だw

319 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 01:06:59 ID:gw9oEzc0
昔やったくだらない悪戯をまぜて1つ。

 いつもの帰り道。夕日が2人の影を道路に伸ばしている。竜児は狩野屋の特売
でお目当ての大特価牛肉をゲットできてちょっと上機嫌だ。ちょっと後を歩く竜児
に大河が話しかけた。
 「ねえ、竜児。」
 「あぁ?」
 「私達、他の人から見たらどんな風にみえるんだろうね。」
 「さあな。」
 夕食のメニューに思いをはせていた竜児は適当な返事をした。
 「あのね、竜児。」
 「なんだよ。」
 「腕組んで歩こうか。」
 「ば、馬鹿。そ、そんなこと・・・」
 背中から聞こえる大河の声に竜児はどきっとして振り返ると、大河は腕を胸の
前で組み、仁王立ちのポーズでにやにやしている。
 「変なこと考えた?私にぞんざいな返事をした罰だ。」
 「あほ。」
 「あほって何よ。」
 「くだらないことをやった罰として、バッグを半分持てよ。」
 大河は意外なことに素直にバッグの反対をつかんだ。
 「これでいいんでしょ。」
 そこからアパートまでは無言だったがまんざらでない時間だった。

 おしまい

320 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 01:29:52 ID:XSue7bUS
>>310
乙です。 なるほどそうなるのか。
これはワクワクせざるをえない。

>>313
GJ! なんかゆゆぽが本当に書きそうな感じだ。
大河があのセリフを言うとわw

>>319
さりげない話なのに、とても2828、じんわりしてしまう

321 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 06:25:22 ID:7xZVEt8A
>>319
「私にぞんざいな返事をした罰だ」という、大河は「どんな風に見えるんだろうね」と
問いかけたときに、どう答えてほしかったのか。

ほのぼのしている割に、ラストのバッグまで含めて良く計算されてる。

で、大河と竜児、どっちが前歩いてるんだ?(w


322 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 12:29:40 ID:ZN098+OA
>>319
じんわり来るw
GJ!

323 : ◆QHsKY7H.TY :2009/12/18(金) 19:37:24 ID:is2Lps5D
みなさんありがとうございます。

うおお、一瞬シ●ナを幻視した。
しかし竜児にデレデレな大河カワユス
春高w



二人で一緒に持つ、とな?イイヨイイヨー!!
大河の腕組もうにキュンときた俺は末期。



さてご期待ワクワクありがとうございます。
ドラとら!続きいきます。

324 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/18(金) 19:38:32 ID:is2Lps5D
「……どいてくれ」
「ぁあ!?んだとコ……ひっ!?ど、どうぞ!!」

スタートラインに既に立っていた生徒を押しのける。
普段なら落ち込むこの凶眼も、今日ばかりは感謝しよう。
俺は高校に入ってから運動らしい運動をしていなかった。
中学の時にバトミントンをやってはいたが、それもご無沙汰。
現役運動部とのかけっこになれば負けは必死。
ならば少しでも勝率を上げる必要がある。

「よーい、スタート!!」

生徒会の合図でスタートが切られる。
途端、全員ダッシュ。
部活でもここまで早いダッシュは無いんじゃないかというくらいに素早いダッシュ。
一歩目を踏みしめて、背を引かれた。

「!?」

気付いた時には誰かが俺の襟首を掴んで転ばす。

「やっちまった!!ごめん高須君!!」

名も知らない生徒。
俺の凶眼に怯えながらも勝ちたいが為にやった行為だろう。
それを卑怯だとは思わない。
俺もこの眼を使ってスタートラインの一番前に立った男だ。
だが……、

「上等だ!!」

今日だけは引き下がるワケには、負けるわけにはいかないんだ!!

駆ける!!
走る!!
目の前にいる奴の首根っこを掴んで後ろに放り投げる!!
若干よろしくないことをしているが、今日だけは許して下さい神様。

「ひっ!?ヤンキー高須が追い上げて来たっ!?」

怯える生徒を千切っては投げ千切っては投げ……ずに追い抜くだけに留める。
だが、最初のアドバンテージを失ってしまったが為に前にはまだ随分と生徒がいる。
それを巻き返そうと急ぎ、校舎の角を曲がった所で一度こけそうになりつんのめる。

「うおっ!?」
「ぎゃっ!?」

運動不足故に足がもつれたのだが、それが幸い。
予想もしなかった運動部の妨害をカウンターでかわしてしまった。
具体的に言って、かがんだ頭が相手の顎に入ったっぽい。
まさかレースに出ずに仲間の為に他の奴を妨害するやつまでいるとは思わなかった。
が、今は情けをかけてる暇も考えてる暇も無い。

「わりぃな!!」

駆け出す。
妨害者がいるならそいつらに後続を邪魔してもらえれば言うことは無い。

325 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/18(金) 19:39:56 ID:is2Lps5D
まだ他にもいるだろうから、前の奴等も手こずるハズ……って、なんだこりゃ!?
前の通路。
ここはもともとフェンスによって遮られ狭くなっている通路で、そのせいか生徒がギュウギュウ詰めだ。
これじゃあ前になんて行けやしない。
けど、そんなことを言ってもいられない!!
俺は覚悟を決めるとフェンスに上ってフェンスの上、恐らく幅10cm程も無いんじゃないかという場所をがむしゃらに走る。
途中、そこまでするかぁ!?などと聞こえたが、そこまでする必要が今はあるんだ!!

が、そうバランス感覚に自信があるわけでも無い俺だ。
俺を見て真似する奴もいるようで、フェンスが揺れて俺は転倒しそうになる。

「おわぁっ!?」

もうダメだと思って思い切りフェンスのてっぺんを蹴る。
跳ぶ、いや飛ぶ。

それでギリギリ通路を抜ける事に成功する。

「うおおおおおっ!!」

疲れた足に鞭打って走り抜ける!!

背後にはたくさんの生徒がいるのだろう。だが、前にはもう生徒がいない。
先程、何処かの運動部が前にいた誰かを邪魔していて、俺はその隙に前に躍り出た。
そう、今、前には誰もいない!!
ゴールが見える。
ゴールにいる大河も見える。
驚いている顔が見える。
あとトラック半周程度。
このまま行けば……!!

「やるな高須、ソフトボール部に欲しいくらいの足だ」
「!?」

背後……否、横から知った声。

「だが俺とて負けられない。会長の、すみれさんの思い出は俺が貰う!!」

横からは俺をスローで追い抜いていくメガネをかけた親友。
大河の思い人であり、学級委員であり生徒会副会長。
そいつが……待て、今なんて言った?
北村、お前も大河をオマケ扱いするのか?

「ふっざけんなぁぁぁぁ!!お前も大河はオマケかぁぁ!?」

326 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/18(金) 19:41:49 ID:is2Lps5D
筋肉が悲鳴を上げる。
これ以上の加速は元来無理だと体が告げる。
明日絶対筋肉痛になるとか、そういや湿布切らしてるとか、足がもつれて転びそうだとか、そんなことはどうでもいい。
これじゃ買い物大変だとか、明日からつらいだろうなとか、怪我するかもしれないなとか、そんなことはどうでもいい!!

「む!?」
「負けるかぁ!!」

追いつく、追い抜く!!引き離す!!!!!

大河の元へ。
大河の元へ。
大河の元へ!!

「たい……が……!!」

あと一歩、それを踏み込むだけで恐らく北村を追い抜いて勝てる、というそんな時に。

どうしてこんな時に。
俺の頭って奴は余計な事を思い出すんだろう。



──────高須君は、一体誰の人工衛星なのかな?



──────北村君に告白しようと思うの。



俺は……、一瞬一歩を踏み出すのを戸惑った、そう、戸惑ってしまった。



「ゴォーーール!!!!!!」



近いハズなのに遠くで終わりを告げる声が聞こえる。



「一着は……!!」



「……北村祐作副会長!!」



ゴール付近にいた一年の審査員が高らかに言う声はさらに遠く、



「……と、高須竜児さん!!なんと同着です!!」



その言葉が、俺に“負け”を伝えた。

327 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/18(金) 19:43:21 ID:is2Lps5D
***



正直驚いている。
最後の追い上げ、まさか追いつかれ、追い抜かれるとは思っていなかった。
最後の最後、ゴール一歩手前で高須が失速しなければ負けていたかもしれない。
きわどい戦いだった。

「高須、良い走りだった……高須……?」

健闘を讃え合おうと、高須に話しかけ、高須の顔が信じられないくらいに青くなっていることに気付いた。
無理に走りすぎて酸欠になっているのかもしれない。

「大丈夫か高須!?」
「……すまん、今は一人にしてくれ」

高須はそう言うとフラリと立ち去る。
危なそうな高須を一人にしておけなかったが、後夜祭の時間も押している。
副会長としてはそちらも動かなければならない。
生徒会一年の生徒に高須の様子を見て貰うことを頼み、俺は会長と逢坂が待っているゴールの“その先”へと向かった。



***



「あれ?竜児は?」

同着一位となった竜児。
本当に来てくれるとは思わなかった……んだけどこの場に竜児が来ない。

「すまない、高須は少し体調が悪そうだった。先程少し一人にしてくれ、と」
「え?」

驚く。
しかしそれも仕方のないことかもしれない。
あれだけの走りを帰宅部の竜児がしたのだ。
気持ち悪くなって当然かもしれない。
まったく、無茶しちゃって。
頬が、少し緩む。

「北村、時間も押している。同着一位のお前がティアラの贈呈をしてやれ。すまないが逢坂、時間の都合上そうさせてもらうぞ」

あ、そういえば一着がティアラ贈呈するんだっけ。
女生徒会長の鶴の一声で、私は北村君にティアラを贈呈してもらえることになった。
あ、もしかしたらこれは竜児が気をきかせたのかもしれない。
でも、もしそうなのだとしたら、何かもやもやして嫌だ。
あの、旅行に行ってからから燻っていた気持ちが、そのもやもやを後押しする。
北村君にティアラを贈呈され、嬉しい気持ちの反面、ここに居るはずの竜児がいない事に、胸が締め付けられた。

(竜児、私の傍らに居るんじゃないの……?)



***

328 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/18(金) 19:44:18 ID:is2Lps5D
グラウンドの隅ででかい図体を縮こませて座る。

「………………」

グラウンドの中心にはどでっかい炎が立ち上がり、校内外放送でダンスのメロディーが流れる。
皆一様に楽しかったという顔をして、近くにいる人間と踊ろうと手を取り合っている。

だが、俺はとてもそんな気分になれない。
結局俺は負けたんだ。
同着一位と言えば、勝ったのと変わらないと言う奴もいるだろう。
無論、俺とてそれはわかっているつもりだ。
けど、俺にとってそれは負けだった。
がんばってがんばって、ようやく同着一位だったなら、また違っただろう。
だが、そうじゃなかった。
俺はあの一瞬、確かに北村を抜いて、勝っていて、大河を見た。
大河を見て、大河が待っているのは俺じゃない、と思ってしまった。
別に大河の表情がどうのというわけじゃない。
俺が勝手に今までのことを思い出しただけだ。
そしてその迷いから、足が若干止まった。
“だから”同着だった。
俺は北村が生徒会長の為に走っていると途中で聞いた。
その思いにだけは負けるわけにはいかないとがんばった。
あと少しで勝てるところまで行って、結局足を止めたのは“俺”のほうだった。
酷い裏切り行為だ。
俺は、大河の気持ちを裏切ったんだ。
誰もそう思わなかったとしても、俺は自分で自分が許せない。
俺は……負けた……最低だ。

「罪悪感は……まだアリアリ?」

ふと、耳元で声がして顔を上げると、そこには川嶋がいた。
珍しい。
こいつのことだからたくさんの男子にダンスを申し込まれていると思っていたのだが。


「あ、その顔、何でいるんだって顔してるね、亜美ちゃんショック」
「………………」
「何よ無視?高須君の予想通りたくさんの男子のダンスの申し込みを待ってもらってまでここに来たんだけど?」
「……俺の予想なんてまだ言ってないぞ」
「顔に書いてるから」
「………………」

俺は押し黙る。
わかっちゃいた。
隠し通せるものでも無い。

「ねぇ、タイガー待ってたみたいだったよ。祐作がティアラ贈呈しちゃったけど」
「……そうか」

「何?勝てなかった事に拗ねてるの?」
「………………」
「ふぅん、そうなんだ?でも亜美ちゃんは慰めてやんない」
「………………」
「そうやってふさぎ込んでたら誰かが助けてくれると思っていたら大間違いだよ」
「……別にそんなつもりはない」
「あっそ」

川嶋は呆れたように溜息を吐いてそう言うと立ち上がる。

329 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/18(金) 19:45:51 ID:is2Lps5D
「高須君にとってタイガーってなんなの?」
「………………」
「だんまり?、まぁいいけど。でも、優しさだけじゃ相手を逆に傷つけるだけよ」
「………………」
「“ヤマアラシ”の高須君は近づいても自分と相手を傷つけてしまうのでしたぁ」
「………………」

俺はただ黙って川嶋の言葉を聞いていた。
何処か馬鹿にするようでいて、そうじゃない言葉を。
けど、何も言わない俺を見て何を言っても無駄だと思ったのか、



「……傷つけるのが嫌なら、自分の針を折りなよ」



最後に、川嶋は小さくそう呟いた。



***



「すまないな、逢坂」
「う、ううんいいの」

私は北村君と踊っていた。
あの女生徒会長が、ちゃんと勝者の権利を使え、と言ってきたのだ。

「高須、どこ行ったんだろうな」
「う、うん」

北村君は私に竜児を当てたかったようだ。
たぶん、一人でティアラの贈呈したのを気に病んでいるんだろう。
本当に竜児はどこに行ったのだろうか。
体調はもう大丈夫なのだろうか。
それとも体調不良は演技なんだろうか。

「高須と踊りたかっただろう?」

北村君は私を随分と気にしてくれてる。
いや、私と竜児を、か。

「走ってる時に高須が言ってたよ、逢坂はオマケか?って」
「!?」

少し、足が止まる。

330 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/18(金) 19:47:10 ID:is2Lps5D
「確かに、俺はあの時、逢坂の事を考えて無かった、すまない」

胸が、詰まる。
さっきから話していてわかっていた。
北村君は“そういう意味”で私を見ていない。
それでも、これが最後の機会だ。
竜児が言っていた。
北村君と上手く行こうと一緒に居てくれるって。
それなら勇気千倍だ。

「あの、北村君」
「うん?」
「私、“あの後”から北村君のこと……!!」
「逢坂」

北村君は、私の言葉を押しとどめた。

「お前が言おうとしてることは何となく想像がつく。だがその前に確認させてくれ。お前と高須は付き合ってるんじゃないのか?」
「っ!?竜児とはそんなんじゃないの!!ただ家が近所なだけで……」

思いもよらぬここでの竜児の名前に心臓が跳ねる。
けど、その次の北村君の言葉で私の心臓は限界以上に跳ね上がった。



「なら、嫌いか?」



「!?」



竜児が、嫌いか?
嫌い?
誰を?
竜児を嫌い?
嫌いじゃない。
嫌いじゃない嫌いじゃない。
嫌いじゃない嫌いじゃない嫌いじゃない!!

331 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/18(金) 19:47:58 ID:is2Lps5D
「嫌い……じゃない。竜児は優しくて、いつも私のことを手伝ってくれて……何があっても傍に居てくれるって……」
「そうか、良かった」
「……良かった?」
「ああ、高須の事を良く理解してくれるお前なら、きっと“良い友達”でずっといられる」
「え、あ、うん…………と、とも、ダチ……?」

その言葉の意味を深く理解する前に、

「高須が傍にいてくれるのが嬉しいんだろう?ならそれは、その言葉は俺が聞くべきじゃない」
「……あ」
「だって本当は逢坂は……高須が好きなんじゃないのか?」

高須が好きなんじゃないのか?
高須が好きなんじゃないのか?
高須が好きなんじゃないのか?

「私……は……」

炒飯を出してくれた竜児。
悪役ぶってまで私をかばおうとしてくれた竜児。
大河と呼んでくれた竜児。
水着を用意してくれた竜児。
何も言わなくても二つカレーを作ってくれた竜児。

……今日だって、私のために走ってくれた竜児。

私は……そんな竜児が……。

「うん、そうだね。やっとわかった。私が北村君を好きでいようと思った理由」
「……?」



「私は……竜児が………………好き、になってたんだ」



やっと、モヤモヤが晴れたような気がした。



***

332 : ◆QHsKY7H.TY :2009/12/18(金) 19:48:59 ID:is2Lps5D
ここまで。
クリスマス、間に合うか……?

333 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 19:53:05 ID:eNR5ARRe
松坂梅召喚

334 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 19:53:51 ID:eNR5ARRe
誤爆w

335 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 21:14:22 ID:M83QRYUH
>>332
がんばるんだ

336 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/18(金) 23:23:41 ID:JmMKLvGc
間に合わなくても誰も責めやしないよ
いつまでも待ってます

337 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/19(土) 12:35:00 ID:4lx3jjeQ
>>332
乙!
竜児の凹みっぷりになんか涙が出そう。
まだクリスマスまで時間はあるさw
無理はしないで頑張ってくれ!

338 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/19(土) 13:06:56 ID:erzyT6fG
>>332
ありそうでなかった竜児と北村のぶつかり合いが熱いね!
あーみんの言葉も考えさせられたなぁ、今日も面白かった。

間に合わなくても大丈夫、ちゃんとOST聞きながら読むからw

339 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/19(土) 19:19:25 ID:3SPdag5X
>>321
著者です。
うわぁなんてこと。遺憾だわ。
竜児先行でお願いします。

340 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/19(土) 19:32:55 ID:mpsyAyYy
>>339
どんまいどんまい。

また面白い作品投下してくれるのを待ってるよ

341 : ◆askgvpoGB. :2009/12/19(土) 23:47:30 ID:erzyT6fG

こんばんは。

>>30>>31>>32>>33
感想ありがとうございました。
無駄に気合を入れ過ぎた回だったので具体的な感想がとても嬉しかったです。

またもや間が空いてしまいましたが、次レスより>>28の続きを投下します。

342 :【 - holding hands - 】 52 ◆askgvpoGB. :2009/12/19(土) 23:49:21 ID:erzyT6fG


――あれから……どのくらい経っただろう?

タイガーのお母さんがまだ来ていないって事は、一時間かそれより長いくらいか……
さっきの実乃梨ちゃんとのやり取りがあって、その後ボンヤリしてたらすっかり時間の感覚が無くなったみたい。

カチャ― と、静かにドアを閉めた音が聞こえた後、あたしたちはただ無言で見ていた。
高須君がしっかりした足取りでタイガーのいる部屋に入って行くのを。
ドアが開いた時に高須君の目が大きく開いて、何かを叫んだように見えたけど、すぐに見えなくなってしまった。

「おうおう、カッコ良かったねぇ、男の背中だったねー高須君!」
「ったく……手間掛けさせんなっての。あーもう、マジで疲れたんですけどぉ?」
「はぁぁぁぁ…………おじさんも疲れたわい」
「ちょ? そ、そんなところに座り込まないでよ」
「いやいやぁ……気が抜けたぁ〜 もうダメだぁ〜」

そう言いながら、言葉とは裏腹の可愛い女の子座りでペタンとドアの前にへたりこむ実乃梨ちゃん。
やっぱり、あたしたちは緊張してたのかもしれない、高須君が来るまで安心出来なかったのかもしれない。
その証拠に、今はもう大丈夫って気持ちになってたし、何より、

「あたしも……どっと疲れた。隣いい?」

一仕事終えた時のような達成感みたいなものが全身を包んでいた。

「おうさ!」

その返事を聞いて実乃梨ちゃんの肩に手を置いて隣に屈み込む。
照れ笑いを浮かべながらこちらを向いた実乃梨ちゃんが何かに気付いたようにジロジロと人の顔を見てる。

「ん……どうしたの?」
「あー、えっと、だね……あーみんのご尊顔が……あれだ……」
「あれって?」
「化粧が剥げまくりんぐ……」
「ええっ!?」

女優の本能でとっさにミラーを探そうとエコバッグに手を突っ込んで、すぐに思い止まる。

「いや……別にどーでもいいかな。だってあんたらだけじゃん?」
「え、そんなんでいいの?」
「すっぴんだってあたしはあたし。それに、化粧が落ちたって亜美ちゃんこーんなに可愛いもん」

と、いつもの調子で言ってみる。

「そうは言うけど、髪の毛も結構大変な事になっちゃってるよ?汗もかいてるみたいだし」
「あー走ったからかな」
「そっか……今度はあーみんが高須君と走ったんだよね……大河のために……」

などと気色悪いくらい優しい視線を送られる。
見当違いも甚だしい。そんなんじゃない。全然、全く、これっぽっちもそんなんじゃないっていうのに。


343 :【 - holding hands - 】 53 ◆askgvpoGB. :2009/12/19(土) 23:51:19 ID:erzyT6fG

「さ……さーてと、ファンデだけでも塗っとくかなー」
「おうおう、可愛いやつめ〜」
「やめろっつーの」

肩口辺りであたしを突付くようにからかわれて思わず頬が熱くなる。
それを同じく肩口で跳ねのけるようにしてエコバッグを覗いてみると、

「あーあ、ぐちゃぐちゃ」

三人分の小物が散乱してて酷い有様だった。
幸運な事に化粧品が混じってどれが誰のか分からないなんて事にはなってない。
隣でうりうりしてくる筋肉バカも、お腹の赤ちゃんと愛しの旦那様の事しか考えていないチビ虎も、
驚くべき事に化粧品を持っていないのだ。持っててリップ。いや、今日は持って来てないんだ、きっとそうだ。

「…………」

なんてこと……あたしの高級化粧品が何だか哀れに見えてくる。
一人だけおばさんになったみたいなこの劣等感は何だろう……?

「あ……お、お尻が冷えちゃうよ?こっちの椅子で座ろう?」

一瞬浮かんだその気持ちを隠して、何でも無いように実乃梨ちゃんに話しかける。

「そうだね、実はちょっと冷たかったんだ」

あっけらかんと笑うその顔はつやつやすべすべで健康そのもの。
記憶の中にあるタイガーの顔も、高須君特製の朝昼晩飯でつるつるぷるぷるになってたし。

「…………ったく。もうちょっと実乃梨ちゃんも身体を気遣った方がいいよ?」
「らーじゃー!」

と言いながらどっかりと長椅子に腰を下ろす。
あたしも「ふいーっ」と言いながらその隣に座って実乃梨ちゃんに寄り掛かる。
あぁ、肌年齢といい、このため息といい、おばさんくさい。なんて事を思っていると、

「頑張ってるかな……大河……」

独り言のように実乃梨ちゃんが呟いた。

「……うん。きっと二人で頑張ってるよ」
「……だよね」

そうやって……お互いの体重を半分預け合うような形でボンヤリと、何を言う事もなく、ただ時間だけが過ぎていった。


◇ ◇ ◇


344 :【 - holding hands - 】 54 ◆askgvpoGB. :2009/12/19(土) 23:53:56 ID:erzyT6fG


――それから……どのくらい経っただろう?

今までの事を思い出してたらまた少し時間が経ってたみたい。
どのくらい掛かるんだろう?早く終わるといいんだけど……と思ってると、実乃梨ちゃんがビクっと動いた。

「……今、聞こえなかった?」
「え?」

そう言うが否や、勢い良く立ち上がってドアの前まで歩いていく実乃梨ちゃん。
耳の後ろに手をあててダンボのように動かしながらキョロキョロと何かを探している風だ。

「みのりん集音器に反応アリだよ! 泣いてる……泣いてるよ!」
「えぇ!? き、聞こえないよ?」

驚いたまま立ち上がり、実乃梨ちゃんの横に立つけど、口をつぐんでいれば何も物音はしない。
ましてや産声なんてこれっぽっちも。
……可哀相に、元から良く分からない電波を受信してそうだったけど、ついに幻聴まで……なんてことを思う。

「ううん、間違いないよ! 絶対そうだ! 絶対そうだよ!」

だけど、当の本人は鼻息も荒く興奮状態。
その場で両手をバンザイしながらくるくると回りはじめた。

「………………」

この野性児め……と、半ば呆れ顔でそれを眺める。
ドアを二つ挟んでる上に、妊婦さんの声が聞こえないように防音だってしっかりしてるだろうに。

「いやったぁ―――っ!」
「きゃっ!?」
「やったよ、やってくれたよ! たいがーっ!」

と叫びながら、あたしの首根っこにしがみついて猿のように跳び上がって喜んでる。

「ちょ、ちょっとー!?」

本当に産まれたの?なんて感じで実乃梨ちゃんを疑ってるわけじゃない。
でも、今一つこのテンションに付いて行けない。だって聞こえないんだもん。
だからここまで、体全部を使って喜びを表現するほどの実感が湧かないっつーか。


345 :【 - holding hands - 】 55 ◆askgvpoGB. :2009/12/19(土) 23:56:50 ID:erzyT6fG



―――――――ぁぁぁ!



「―っ!?」

……今のは……もしかして……

「……き、聞こえた!!!」
「だろー?さっきから言ってんじゃーん!」

息を詰めるようにして微かに聞こえてくるその声に耳を澄ます。
実乃梨ちゃんの顔から目を離し、タイガーのいる部屋の方にものすごい勢いで顔を向けると、
分娩室のドアが開いてて看護士さんが慌ただしげにナースステーションに走っていく姿が見えた。

……あれが開いたから、あたしにも聞こえるようになったのか。

「おぎゃあ」だか「ほぎゃあ」だか、良く分からないけど……どこか懐かしい感じがする泣き声が響いてくる。

「………………」

息を継ぐ暇もなく、命の限りに一生懸命泣いているその声は新しい世界の驚きに満ちていて、
高須君とタイガーに……パパとママに初めて会えた喜びの声にも聞こえる。

そんな泣き声に耳を澄ましてると、なんだか良く分からないものが身体の中を走り抜けた。

「きゃ―――っ!!!」

突き抜けるような衝動に身を任せ、自分でも驚くくらい大きな歓声を上げてしまう。
そのまま両手を広げて隣にいる実乃梨ちゃんに思いっきり抱き付いた。

「すっごい、すっご――い!!!」
「うわわわ!? あーみん、は、はげしっ!」
「きゃ―っ!!! きゃ―――っ!!!」

まるでおバカな子になっちゃったみたい。でもどうにも止まらない。

「聞こえる! 聞こえるよ、実乃梨ちゃん!」
「ぐわうわう!?」

抱き合ったまま激しく飛び跳ねてると、今度は実乃梨ちゃんが振り回されて目を白黒させている。
とそこに、先生らしき人が分娩室から出て来たのが見えて、ドアの前に近寄る。
こちらに気付いた先生はひとつ微笑んで、軽く頭を下げて背を向けた。


346 :【 - holding hands - 】 56 ◆askgvpoGB. :2009/12/19(土) 23:58:47 ID:erzyT6fG

「あたしらいつ行けるんだろ?」
「清拭とかするんでしょ?」
「知らない、早く見たい見たい!」
「私だってー!」
「あーん、まだかな!?」
「あっ、そこのナースさんっ! こっちだよこっち!」

二人してぎゃーぎゃーうるさいったらない。
でもま、いーんじゃん?嬉しい時くらいガキみたく騒いだってさ。

「あーみん、あれ何?何?」
「わっかんね!」
「あーもう、まだかよー!」
「勝手に入ってっちまうぞー!」
「いっちゃう?いっちゃうかい、あーみん!?」

……止める役?そんなのいねーよ!

看護士さんの姿が見える度に大げさなリアクションをしていたらようやく気付いてくれたらしい。
ギョッとした顔をしたのはあれか……あたしも実乃梨ちゃんもガラス窓にべったり張り付いていたからだろうか。
きっと向こうから見たらひっどい光景だったに違いない。
少しだけ怯えた表情を覗かせながら、おずおずとこちらに向かって来た。

「来たよきたよー!」
「早くしろっつーの!」

看護士さんからはニッコニコに笑ってるようにしか見えなくても、扉のこちら側では酷い言いようではあるが……
幸いにもその言葉は聞こえなかったようで、ゆっくりとドアを開けてくれた。


347 :【 - holding hands - 】 57 ◆askgvpoGB. :2009/12/20(日) 00:00:00 ID:pd5/lJzW

「ご友人の方……ですよね?」
「「 はい!!!」」

超音量の超ハモりで答える。

「しーっ! ようやく赤ちゃんも落ち着いたんですから、大きな声出さないように……」

と、小さな子供に諭すような感じで怒られた。

「あ…………」
「ごめんなさい……」
「それじゃ、お母さんもベッドに移したし、そろそろ入れますよ」
「やったあっ!」
「ん待ってましたっ!」
「だーかーらー! お静かに……お願いしますね?
 赤ちゃんも今はすっかり泣きつかれて寝てるんですから、起こさないように!」

と言われて初めて泣き声が止んでいる事に気が付いた。

「はーい」
「はぁーい!」

素直に返事をして大人しく看護士さんの後に付いて歩き出す。
もう少しで部屋の中が見える位置で一旦止まると静かにこちらに振り返り、
分かってますよね?と視線で問われる。
二人して無言で首を縦に振ると、半身になって中に入れるよう道をあけてくれた。

「…………」
「…………」

いよいよだよ! と無言で顔を見合わせる。
実乃梨ちゃんも待ちきれない様子で瞳をキラキラと輝かせながら頷いた。
今にも飛び込んで行きそうな実乃梨ちゃんを片手で制し、胸に手を当てて軽めの深呼吸。

静かに……静かに……起こさないように……

「では……どうぞ……」


348 :【 - holding hands - 】 58 ◆askgvpoGB. :2009/12/20(日) 00:01:57 ID:pd5/lJzW


看護士さんに促され、開け放たれたドアからゆっくりと室内に足を踏み入れる。

まず目に飛び込んで来たのは眩しい光。
白いカーテンが開かれていて換気のためか窓も開いている。
窓の向こうが眩しすぎてハレーションを起こしたみたいに真っ白になっていた。
壁も白い、床も白い、所々に置かれている器具も光を浴びて色が見えない。

――そんな真っ白な部屋の片隅に二人がいた。
いや……二人と、小さな一人……か。

真っ白なベッドとシーツに包まれるようにタイガーが横になっている。
そして、そのすぐ隣には生まれたばかりの赤ちゃんがいた。

ベッドの上半身の部分が斜めに少し持ち上がっていて、ここからでもタイガーの様子が良く分かる。
その長い睫毛が閉じそうなくらい伏せられて、穏やかな光を湛えた瞳が我が子を見守っている。

「寝ちゃった……?」
「おう?分からねえな……」

静かな声で話す二人の間では、小さな命がすやすやと眠っているように見えた。
タイガーの長い髪の毛が赤ちゃんの方にふんわりと流されていて。
その……栗色の髪の毛が……まるで親鳥の羽のように優しく雛鳥を包んでるみたい。

「泣き疲れた……とかかな?」
「そうかもね……」

ベッドの横の椅子に座って高須君が身を乗り出している。
さっき見た硬い眼差しは……どこかに溶けて無くなってしまったようだ。
あたしが見た事もないような優しい視線を二人に送っている。

あんたら……そんなに顔を寄せて……間違ってもそのままキスとかしないでよね?
なんて思いながら横にいる実乃梨ちゃんと笑い合う。


349 :【 - holding hands - 】 59 ◆askgvpoGB. :2009/12/20(日) 00:03:49 ID:erzyT6fG

「は、始めまして……パパですよぉ〜?」
「……バカね……分かるわけないじゃない」

そう言ってくすくすと笑うタイガーの左手は、高須君の右手をしっかりと握り締めている。
二人の腕は綺麗な半円を描いていて、それは雛鳥を外敵から守る境界線のようでもある。
なるほど、恋人繋ぎってやつはちょっとやそっとの力じゃ離れない。
ましてやこの二人なら、一体どれだけ頑丈なんだろうか?

「……あったかい……ね」
「……おう」

タイガーは赤ちゃんの方に身体を向けながら指先で赤ちゃんの頭を撫でていて、
高須君も上半身ごと身を寄せていて、寒いわけでもないのにお互いを暖めあってるようにも見える。
こんなに広いベッドなのに、そんなにせせこましく使わなくってもいいじゃん、なんてのは言い過ぎか。

ま、あたしでも……そうすると思うし……

「何だか……あたしらお邪魔みたいね……?」
「こっちに気付くまで……静かにしてようか……」

ヒソヒソと二人で囁きあう。
案の定と言うか何と言うか……二人はこれっぽっちもあたし達に気付く様子もなく、赤ちゃんに夢中になってる。

「ふふ……ちっこい手……」
「作りもんみてえだな……」

などと失礼な事を言うが、あんなに小さな指が動いてるのを見ると不思議な気持ちになる。
高須君の左手が赤ちゃんの指に触れると、条件反射みたいにきゅっと高須君の人差し指が握られた。

「……おっ?」

あの小さな指一本一本に血が通っていて力を込めて握ってるんだと思うと、その事自体に感動すら覚える。
端から見てるあたしでさえそうなんだから、自分の子供だったらどんな気持ちになるんだろう?
どこか潤んでいるように見える高須君の瞳を見ながら、遠くない未来の自分を思い描く。


350 :【 - holding hands - 】 60 ◆askgvpoGB. :2009/12/20(日) 00:07:59 ID:pd5/lJzW

「おうおう、ほら……見てみろよ大河。こんなに小さい手なのに、俺の指をしっかり握ってるぜ?」
「…………そうね」

囁くように同意して、繋がれた手と手を見つめていたタイガーがゆっくりと高須君の方を見上げた。
指先の感触に夢中になっているのか、高須君は全く気付かない。
そんな高須君の様子を眺めながら、まるで水面に花びらが落ちた時のようにほのかな笑みが浮かんでくる。
その花びらはもうすぐ咲くであろう桜の花びらに違いない。
淡い色合いの唇から波紋が広がっていくみたいに柔らかな表情を作るタイガーに見とれながら思う。

――こんなに優しい声を出せる子だっただろうか?
――こんなに穏やかに笑う子だっただろうか?

「…………ふ」

と思わず口元がほころぶ。
本当に今日は驚く事ばかり。

「おっ?おうっ?ぎゅーってしてるぜ、結構強いんだな」
「そうなの?何か楽しそうね」

赤ちゃんの指はここからじゃ良く見えない程で、高須君の人差し指の第一関節をようやく包めるくらいしかない。

「はははっ、 くすぐってぇな」
「あっ、ずるい。私も握って欲ーしーいーなー」

無邪気に楽しんでる高須君と、そんな高須君にさえヤキモチを焼くタイガー。
赤ちゃんの頭を撫でていた右手で、今度は自分の番よと言わんばかりに赤ちゃんの手をつんつんする。
それに反応するように「ぅぁ……」と声を出して起きてしまったようで、もぞもぞと全身を動かし始めた。

いやいや、自分らが遊ぶために起こすなよ…………なんて突っ込みは胸の中にしまっておこう。

「あっ、こら……」
「……へへへ」

竜河ちゃんがあうあうと口を開けるのに合わせるように二人の口も動くのが微笑ましい。
三人でテレパシーでお話でもしてるんじゃないの?と思ってしまう。
タイガーがぽぁぽぁと可愛らしく口を動かしてるのを高須君が気付くのと同時に、
タイガーも高須君の口がポカっとまん丸に開いてるのに気付いて、二人して一瞬固まる。
それからすぐに、その子を……竜河ちゃんをビックリさせないよう、声を抑えながら目を細めて、
軽く肩を震わせて、まるでお腹の中がくすぐったくて堪らないような感じで心底おかしそうに笑い合っている。

「…………」

見ているだけで眩しくなるような二人の笑顔に立ちくらみにも似た感覚を覚える。
これが正真正銘の、あてられたって奴か……


351 :【 - holding hands - 】 61 ◆askgvpoGB. :2009/12/20(日) 00:09:37 ID:pd5/lJzW

お手上げだよ、と肩をすくめながら実乃梨ちゃんと視線を交わして、ゆっくりゆっくり静かに近づいて行くと、

「おう?」
「あ、二人とも来たね」

と、ようやく気付いてくれた。
お邪魔しちゃったかなと思ったけど、あのまま永遠に気付かれなかったら立場が無い。
それに……竜河ちゃんを起こしたのはあたしたちじゃないもん。と少しばかりの自己弁護。

「よっ、お二人さん」
「おうともさー! 大河、頑張ったね!」

実乃梨ちゃんの言葉に少し照れたように笑って、

「大したこっちゃないわよ、こんなの」

なんて、さらりと言ってのける辺りが小憎らしい。

「どうよ?この子、可愛いでしょ?」
「ちっちゃくって真っ赤っかでかっわいいよぉ〜大河ぁ〜!」
「いや……しわくちゃでよく分かんないよ……」
「でっしょー?」

と、実乃梨ちゃんの言葉には反応するけど、あたしの冷静な意見はスルーされる。

「私のように超絶美人になるに違いないもんね、見てなさいよっ」
「いやいや、竜河は俺に似るんだもんなぁ〜 なぁ〜?」

なんて言いながら、ふやけきった顔をして高須君が竜河ちゃんをあやしている。
その人差し指をしっかりと握ってる竜河ちゃんの指が、本当に本当に小さくて、目を奪われていたんだろう。
今は近くで見るから分かる。高須君の左手も……あたしたちと同じように真っ赤になっていた。

「みのりん、私の奮闘っぷりを聞いてくれる?……んもう苦労したわよー」
「何だい何だい?隅から隅までドドーンと聞いてやるぜ〜」

……軽い感じで実乃梨ちゃんと話す口調と、高須君の左手のギャップに目を見張る。
タイガーに握り締められたのであろう指の付け根とか指の間が真っ赤を通り越して赤黒くなっている。
拳骨の辺りや手の甲には爪の跡みたいなものと血が滲んだ跡……一言で言えばボロボロだった。
それは……二人の闘いの証のようなもので……高須君がタイガーと共有した産みの痛みってやつで……


352 :【 - holding hands - 】 62 ◆askgvpoGB. :2009/12/20(日) 00:12:27 ID:pd5/lJzW

「…………ぷっ……ふふ………あははははっ」

そこまで考えて唐突に吹き出してしまった。

「おう?」
「あーみん?」

……なーにが『大した事ない』よ。こんな時まで意地っ張りなんだから……とタイガーを見る。

「ふぇ……?」

キョトンとした顔であたしを見ていたタイガーが一言。

「あんた……余りにもこの子が可愛いからって、人さらいはやめてよね?」
「しないしない……くっくくく………あはっ、ごめんごめん……何でもないの」

ついにおかしくなったのか、このバカチワワは?とその顔が雄弁に語っている。
今は余裕たっぷりに見えるけど、きっと高須君の前じゃ泣き喚いて暴れて大変だったのかな、なんて思う。
離さないであげてと言ったのはあたしだけど……言わなくても高須君は絶対離さなかっただろうけど、
その結果こうなるとは思ってなかった。いったいどれくらいで治るんだろう?と、いらぬ心配をする。

「まぁいっか……でね、みのりん。さっきの続きだけど……」

――でもまぁ?

「な、な、川嶋?ほら、目元とか俺にそっくりじゃねえかよ、見てみろって!」
「目元は……タイガー似になってくれた方が、いいんじゃないかなぁ?」

――高須君はそんなのすっかり忘れてるみたいにデロンデロンだし?

「そんでさ! 私は最後に気合を入れてね! うおぉりゃあああぁ! って叫びながらね!」
「ほう!? おおー! やっぱり気合だよね! 魂の叫びだね!?」

――タイガーは実乃梨ちゃんに誇らしげに武勇伝を語ってるしぃ?

「あんたら……少しは落ち着きなって……ほら、泣いちゃうでしょ?」
「ちっせぇ口とか大河似だよな、可愛くなるぞー?あぁ早く目が開かねえかな、なぁなぁいつ頃かな?」
「何かね、お腹が軽くなりすぎちゃって自分の体じゃないみたい。すっごく変な感じなの!」

――そんなこと言うほど亜美ちゃん野暮じゃねーから……安心しなさいよ、タイガー?





【 - holding hands - end - 】


353 : ◆askgvpoGB. :2009/12/20(日) 00:14:54 ID:pd5/lJzW

本日はここまで、ありがとうございました。



と言う事で……Endは付けましたが、この物語はまだもう少し続きます。
Endを付けた理由はごく個人的な理由というかワガママというか、ま、大したこっちゃありません。
とはいえ激務が続いているので次回の投下も不明です。なるべく年は越したくないんですが……

それでは〜

354 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/20(日) 00:20:21 ID:UhjtXZLt
>>353
GJでした
大河と竜児が幸せそうなのがなんともすばらしい。
なによりあーみんいい女w


次回も待ってます!!

355 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/20(日) 01:13:34 ID:kzU7blqU
>>353
おつ!!

356 :sage:2009/12/20(日) 01:20:53 ID:JIjdlDru
>>353
忙しい中お疲れ!!
次回も楽しみにしています!!


357 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/20(日) 02:10:04 ID:9H+USjSo
竜児ってなんでこんなに愛くるしいの?

358 : ◆Eby4Hm2ero :2009/12/20(日) 03:50:31 ID:/PB9wI67
>>353
大作乙&GJでした。
「家族」な竜児と大河(と竜河)がいいですなあ。


359 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2009/12/20(日) 03:51:52 ID:/PB9wI67
お題 「世界」「姿」「2−C」



「すみません、ちょっといいですか?」
 突然かけられた声に竜児と大河が振り返ると、そこには汗だくの若い男が一人。
「宗教やアンケートならお断りよ」
「いや、そうじゃなくてですね……今そこでTVの生中継やってるんですけど、ちょっとしたゲームに参加してくれるカップルを捜してるんですよ」
「カップルじゃないからパス」
 にべも無い大河に目を丸くする男に、竜児は軽く頭を下げる。
「すみません、本当に俺達カップルってわけじゃないんです。ですからそういうのはちょっと……」
 立ち去ろうとする二人を、男は慌てて呼び止める。
「ま、待って下さい!この際カップルじゃなくてもいいです!もう時間が無いんですよ!賞金も出ますしお願いします!」
「……なあ大河、困ってるみたいだし、とりあえず話だけでも聞いてみねえか?」
「まあ、いいけどね。竜児の悪鬼羅刹の如き姿は放送コードにひっかかるんじゃないの?」
「そんなわけねえだろ……多分」


360 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2009/12/20(日) 03:53:19 ID:/PB9wI67
「はい、大橋商店街からお送りしています夕どき中継、続いてはこのコーナーです!
 『二人のために世界はあるの・ラブラブカップルシンクロクイズ!』」
「ちょっと!ラブラブでもカップルでもないって言ってるでしょ!」
「お、落ちつけって大河。そういうコーナータイトルってだけなんだから」
 あてがわれた席から立ち上がろうとする大河を、竜児は慌てて制止する。
 レポーターは一瞬驚いた表情を見せたものの、そこはさすがにプロ、すぐに笑顔に戻って、
「今回の参加者はこの元気なお二人です。えー、それでは自己紹介をお願いします。まずは彼氏の方から」
「は、はい。大橋高校2−Cの高須竜児です」
「いや〜、学校とクラスはいらないんだけど」
「す、すみません。ちょっと緊張してて……」
「高校生ってことは今は夏休みだ、いいねえ〜。それじゃ、可愛らしい彼女の方もどうぞ」
「逢坂大河よ」
「カップルじゃないって言ってたけど、それじゃお二人の関係は?名字も違うし兄妹ってわけじゃないよね?」
「はあ?私がこんな顔面凶器男と血が繋がってるわけないじゃない」
「……ただのクラスメイトです」
「……ああ、でも、ただのクラスメイトが一緒に買い物したりするのかな〜?」
「まあ、家が近所なんで……」
「ちょっと!いつまでもくだらない話してるんじゃないわよ!ゲームだかクイズだかするんでしょ!?」
「あ、はいはい、それではルールの説明です。今からお二人に質問をしまして、答えをそれぞれフリップに書いていただきます。
 その答えが二人とも同じであれば正解。違えば不正解。一問正解するごとに賞金が千円! 五問全問正解すると賞金はなんと、一万円になりま〜す!」
 二人が向かう机の上にはお互いの手元が見えないように衝立が置かれ、目の前にはマジックと数枚のフリップが。
「竜児、間違えるんじゃないわよ」
「お、おう」

361 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2009/12/20(日) 03:55:40 ID:/PB9wI67
「それでは第一問!彼女は彼氏のことを普段なんて呼んでいる?」
 とん、と立てられた二枚のフリップには『竜児』『竜児』
「はい正解!これはちょ〜っと簡単すぎたかな〜?」
「まったくね。こんなの間違えるわけないじゃない」
「まあいいじゃねえか大河、最初はサービス問題なんだろ」
「第二問!彼氏の星座は何?」
 竜児は『うお座』
 大河も少し考えてから『うお座』
「はい、これも正解!順調だねえ〜」
「俺、大河に話したことあったか?」
「何言ってるのよ、ばかちーとお弁当食べた時に話してたじゃない」
「おう、そうだったか」
「それじゃあ第三問!彼女の好きな食べ物は?」
 大河はすぐに『肉』
 竜児はしばらく悩んで、やっぱり『肉』
「またまた正解!……え〜と、肉?」
「えと、わりと何でも好きだとは思うんですけど、具体的に何と聞かれるとまずは全般的に肉かな……と」
「なによ、悪い?」
「い、いや、元気でいいんじゃないかな?次行こう、第四問!彼氏の趣味は?」
 今度は同時に『掃除』『掃除』
「これまた正解!男の子で掃除が趣味ってのは珍しいね?」
「そうですか?身の回りが綺麗になるのは落ちつくし、気持ちいいと思うんですけど……」
「それにしたって竜児の場合は度が過ぎるのよ。趣味を通り越して殆ど掃除フェチよね」
「えと、次行きましょう!いよいよラスト、第五問!高校生だとこれはちょっと難しいかな〜?
 彼女のお気に入りのパジャマの柄は何?」
 これは二人とも少し考えて、出した答えは『猫』『猫』
「なんと、これも正解!パーフェクトで一万円獲得おめでとうございま〜す!」
「やったわね、竜児!」
「おう!」
「だけど、よくパジャマの柄とかわかったね〜。ただのクラスメイト……なんだよね?」
「え、あの、それは……」
「偶然よ、偶然」
「本当に〜?」
「当たり前じゃないの。何よ、竜児が毎朝起こしに来るんで私のパジャマ姿を見慣れてるとでも言いたいの?」
「い、いや、別にそこまでは……。あ、そうだそうだ、賞金の一万円は何に使うつもりかな?」
「そうですね……大河、どうする?」
「ん〜……肉のいいやつ!……そうだ、鹿児島産黒豚!」
「おう、それじゃ晩飯はトンカツ……たまにはカツ丼にするか?チャーシューや角煮、豚しゃぶって手もあるな」
「やっちゃん見てる〜?今日はご馳走だよ〜」
「…………えー、以上、大橋商店街からお送りいたしました〜」

362 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/20(日) 07:40:07 ID:/rmVH2IV
>>361
次の日は職員会議ものだぞ。ゆりちゃんの皺がまた増える(w

363 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/20(日) 13:37:38 ID:K4Fcyo7p
キモイ

364 :sage:2009/12/20(日) 14:04:37 ID:1xZHQNks
>>361
いいね。
オレはあからさまにベタベタするのより
こうゆう実はベストカップル的なの好きだぜ!!

365 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/20(日) 14:21:24 ID:7OkV6AfL
横柄で粗暴な大河は、一回竜児にボコボコにされて屈服されてこそ存在意義がある

366 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/20(日) 14:30:00 ID:ouvPiZRL
>>364
メアドのところにsageと書くんだ

367 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/20(日) 14:45:06 ID:fQ/DV0kI
うまれた
おめ

>>353
なんかあーみんの化粧品なんちゃらのくだりがリアルだな
俺には到底思いつかないぜ

368 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/20(日) 16:11:52 ID:fQ/DV0kI
>>359-361
良い

369 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/21(月) 12:42:35 ID:CVNhBBZg
>>353
ひとまずお疲れ様でした。
俺もあてられそうだw
高須一家の微笑ましい光景にニヤニヤがとまらないw
優しい気持ちになれたよ。
GJ!

>>361
乙!
流石のシンクロ率w

370 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 02:21:35 ID:omZuTpPs
初期オープニングの竜児の格好けっこうシュールじゃないか?
パンツにエプロンwww




ちょっとした変態に思えてくる

371 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 06:25:09 ID:/MgixlhX
そうか?日常的に家事やってれば、あんなもんだろ。

7巻の巻頭カラーイラストの竜児はリアル変態だが。

372 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 06:29:41 ID:KC/CgTf8
そうだな
以前上裸でエプロンつけずに揚げ物やったときは大変だったぜ

373 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 09:59:09 ID:5aBmc6zd
うむ

374 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 12:44:53 ID:KM6VV8QE
「暗くなるの早くなったわね」
「今日は冬至だしな」
「一番昼が短いのよね」
「おう、そうだ」
「じゃあ今日は夕飯早くしない?」
「なんでだよ?」
「決まってるじゃない! 夜が一番長いんだから堪能するのよ!」
「おう……なんか嫌な予感がするぞ……」

夕飯後
「さあ竜児!」
「おう」
「夜はこれからよ!」
「やっぱりか!」

ギシギシアンアン

丑三つ時
「大河……ちょい休憩……」ゼェゼェ
「何よ。だらしないわねぇ」
「お前な……ぶっ通しは流石に……」ゼェゼェ
「ふふん。日頃の運動不足があらわれてるわね」
「……」ゼェゼェ
「もー。夜明けまでまだ時間あるんだからしっかりしてよね」
「ふぅ……さて、本気でいくか」
「え……?」
「覚悟しろよ?」
「ひゃー!」

ギシギシギシギシギシアンギシギシギシギシアン

375 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 19:28:38 ID:mDv3wvxF
 4作目の投稿ですが、これは思いつきのネタなのでヤングには辛
いかも。わかったあなたは30代以上?

 夕食後、泰子は仕事に出かけた。竜児は台所で食器の後片付けと
明日の朝食の仕込みをしている。大河は居間に寝そべり足をばたば
たさせながらファッション誌を眺めている。
 「そういえば、大河?」
 「なに?」
 雑誌から顔をあげずに曖昧な返事をする。
 「前から聞こうと思っていたけど、お前、最初に家に来たとき
木刀持っていただろ?」
 「そうね。」
 「なんで、木刀なんかもっているんだ?」
 「・・・。」
 やっと雑誌から顔をあげた。
 「十六夜念法って知ってる?」
 「いや。」
 「そういうのが出来るかなと練習したのよ、昔。」
 また雑誌に視線を写した大河は、これ以上面倒なことを聞くな
というオーラを放っていたので竜児はそれ以上掘り下げられず、
何故か木刀を持っているんだと理解した。

376 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/22(火) 21:13:03 ID:y+fT9quw
改行するなら文節でした方がいいよ

377 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 01:33:31 ID:NaiMW/Kz
「ねえ竜児」
「おうどうした」
「そういえばこの家って、コタツないのね」
「・・・そういえばそうだな。とらドラ!ノ全テとか設定集を軽く見た限りでも、『テーブル』とか書かれてるしな」
「せっかくコタツでみかんとか似合いそうな風景なのに、勿体無いわよ。
 掃除には偏執的なくせに、日本的な美的感覚を持ち合わせてないのかしら。遺憾だわ」
「うーん・・・・確かに俺もそう思わなくもないけどな・・・・
 だが、駄目だ。
 あんな自堕落なものを与えたら絶対炬燵から出てこれなくなるだろ。
 あまつさえそのまま惰眠を貪るに決まってる。
 そんなだらしない生活は許しません!」
「けちー」
「いやな・・・お前もそうなんだけど、主に泰子がな・・」
「あー、なんか納得だわ・・・・・。やっちゃん絶対コタツで寝て風邪とかひいちゃいそう・・・」

「そんなことより夕食の支度手伝えよ。
 今日は肉じゃがだぞ。せっかくお前も皮むきくらいは出来るようになったんだからな」
「はいはいわかったわよ。この腕前とくと披露してやろうじゃない!」

そんな冬至の日の高須家の風景。
嵐のようなクリスマスイブの前日はいつもどおりの光景だったのだけど・・・・

378 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2009/12/23(水) 05:31:16 ID:pV+OmVhz
お題 「近く」「お手洗い」「長く」



 オープンから数ヶ月が経っても、ラーメン屋『十二宮』には入り口から長く延びる行列が。
 その先頭近く、店内まであと数メートルという所に竜児と大河は二人並んで。
 竜児が凶眼を眇めて見やるのは、前に並ぶ連中を追い散らそうというわけではもちろんない。
「ひーふーみー……次の次かその次ぐらいには入れそうだな」
 残り人数を確認して振り向くと、大河はなぜか僅かに顔を赤らめつつもじもじとしていて。
「ね、ねえ竜児……どうしよう……」
「おう、どうした?」
「その……お、お手洗い、行きたくなっちゃった……」
「……何!? おい、大丈夫か?」
「まだ限界ギリギリってわけじゃないけど……けっこう、近い、感じ……」
「我慢するってわけにはいかねえか……しかたねえ、そのへんのコンビニでトイレ借りるか」
 そう言いながら列から出ようとする竜児を、しかし大河は押しとどめる。
「私ちょっと行ってくるから、竜児はこのまま並んでて」
「おい、もうすぐ順番来ちまうぞ?間に合わなかったらどうするんだよ」
「その時は竜児一人で食べちゃって」
「まさか、大河一人で並びなおすつもりじゃねえだろうな?」
「ううん、残念だけど今日は諦めるわ。外で待ってるから」
「……」
 竜児は無言で大河の腕を掴み、行列から外れて歩きはじめる。
「ちょ、ちょっと竜児!?」
「馬鹿かお前は」
 その横顔はあからさまに不機嫌で。
「大河を放っぽったまま一人で食うラーメンが旨いわけねえじゃねえか」
「でも、せっかく並んだのに……」
「そんなもん、また並びなおせばいいだけじゃねえか、二人で。何だったら明日なり明後日なりにまた来るんでもかまわねえ」
「ちょっと竜児、そんなに引っ張らないで!痛い!」
「お、おう!すまねえ」
 慌てて手を離す竜児。大河は心配そうに覗きこむその顔を見て、溜息を一つ。
「……やっぱりあんたは馬鹿だわ」
「うるせえ」
「そんな馬鹿な所を好きになっちゃった私も馬鹿かもね」
「……お、おう……」
「さ、もう一度並びましょ。早くしないと時間が無くなっちゃう」
「おい、大河……トイレは?」
「……そ、そうだった……」

379 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 07:28:43 ID:v82z9DbY
やっぱ馬鹿だわ(w

380 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 08:24:12 ID:GoxeGSrl
>>378
まさにモジモジ妄想状態

381 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 14:12:05 ID:IS4+0/5U
>>375
全然わからなくてごめんよ……

>>377
言われてみれば炬燵無いね。
暖房器具も見当たらないけど、冬はどうしてるんだろうw

23日まではこの雰囲気だったのかと思うと切ないね

>>378
乙!
いつもと違う意味でもバカップルw

382 :まとめ人 ◆SRBwYxZ8yY :2009/12/23(水) 15:16:28 ID:zUWXHchH
まとめサイト更新しました。
おそらく今年最後の更新。

さあてコミケのサークルチェックでもするかぁー!


あ、今年のクリスマスは中止にしませんよ?
竜児と大河のこと考えたら中止に出来ないだろう、jkェ…

383 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 16:25:49 ID:sdnV0PBe
お、規制解除

384 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 22:44:39 ID:v82z9DbY
新作一本投下。3レスの予定。

385 :メリー・クリスマス ◆fDszcniTtk :2009/12/23(水) 22:46:09 ID:v82z9DbY
「あーあ、高須君本当に来ないんだもんなぁ」

生徒会主催、第二回クリスマス・パーティーも無事終了。撤収作業もあらかた終わった体育館。パーティーの熱気もひいて、寒々しいがらんとした空間の片隅で、ブリッ子仮面のはげかかった亜美がぐちぐちと独り言を呟く。

「亜美、そう言うな。高須は独りじゃつまらないだろう。わかってやれ」
「だってさー、独りで寂しいだろうからって折角誘ってあげてんのにさ。ノリが悪いよね。亜美ちゃんつまんなーい」
「まーまー、あーみん先輩。怒んない、怒んない。愛しの大河の居ないパーティーじゃ、高須君だって楽しめないってものでげしょう」
「あれー?、そういうみのりちゃんだって、さっきから溜息ばかりじゃない?」

意地悪そうな笑みを浮かべて毒をはらんだ流し目をくれる亜美に

「そそそそんな、おいら殺気なんか発していませんぜ。これでも相手に感づかれずに盗塁を決める名手って言われてんだ」

実乃梨が椅子を傾けて言い訳をする。

2年生主体の実行委員会が忙しく右に左に歩き回る中、北村祐作、川嶋亜美、櫛枝実乃梨の三年生三人は隅っこのパイプ椅子に座ってさっきからお疲れ気味の会話ばかり。サボっているのではない、無理矢理排除されているのだ。

第一回に続いて、第二回のクリスマス・パーティーでもツリーの調達には亜美が一肌脱いだ。運搬も昨年同様生徒会執行部に次女が在籍している、かのう商店が担当。職員室では、幾ら何でも芸能界やら特定の商店と結びつきが強すぎないかという意見も出た。
とはいうものの、その芸能界と結びつきの強い本人に頼みこんで学校紹介パンフに登場させてしまった弱みが学校側にはある。

結局の所、パーティーは生徒会の目論見通り、大橋高校一の不幸男率いる生徒会の手によって無事開催された。ちなみ現在の生徒会の非公式スローガンは「不幸はこっちで引き受けた」。
学校一の不幸男が生徒会に居る以上、それ以上不幸な目に生徒を遭わせることはないから心配するなというものだが、おそらく前の年の生徒会長のネタのパクリだろう。とにかく、スローガン通りと言えるかどうか、ツリーを白球が直撃する等というイベントは発生しなかった。

そういことだから、パーティーの影の立役者である亜美がこの場に居るのはいいとしても、生徒会の先輩にあたる北村祐作や、それこそ無関係な櫛枝実乃梨が居るのは少々場違いである。本人達は「俺は亜美の幼なじみだぞ」「おいらは去年迷惑を掛けちまったからな」等と言って
手伝いを無理矢理やっていたのだが、結局のところそのあたりは言い訳に過ぎない。だから、狩野姉妹の妹の方に無理矢理パイプ椅子をあてがわれて、おとなしく端っこに座っているのだ。

待ち人来たらず、といった面持ちで。

「まぁ、二人ともそう残念がるな。おれもひょっとしてと思っていたから残念でないと言えば嘘になるが、今日高須が来ないのはあいつ等がうまくいってるということだろう」
「ま、そうなんだけどさ」
「そうだよね。高須君と大河、うまくいってるんだよね」

眼鏡の元生徒会長の言葉に、二人とも笑みを浮かべる。

◇ ◇ ◇ ◇ 

「大河が行けねぇから」

というのが、高須竜児がパーティーを断った理由だった。今年から家族と暮らし始めた逢坂大河は、クリスマス・イブを普段は忙しくて帰りの遅い両親と家で過ごす。婚約者である竜児と一緒に過ごすわけではない。その点について

「いいの?高須君」

と結構ねちっこく問いただしたのは亜美だったが、竜児は笑みを浮かべてはっきりそれでいいと言い切った。家族とクリスマス・イブを過ごすことこそ、大河が求めてきたものだから、と。口にはしなかったが、やがて結婚する自分たちは、
焦って今から2人きりで過ごすことはないと、自分に言い聞かせているのだろう。

竜児らしい筋論とも言えるし、あるいは大河の意地っ張りが感染しつつあるともとれる。

そう言うことならパーティに来いと、祐作も亜美も実乃梨も誘ったのだ。二人っきりで過ごすのなら邪魔をするほど野暮じゃないが、独りで膝を抱えているのなら学校に来い、みんなと楽しめ、と。

しかし、それも竜児は断った。母親の泰子とクリスマス・イブを祝う準備があるのだとか。そうはいっても、お好み焼き屋の店長である泰子が帰ってくるのは夜の9時過ぎだろうと言うと、いやいや、泰子の元同僚の開くパーティーにゲストで呼ばれているからどうのこうの。

ようするに、気乗りがしないらしい。

◇ ◇ ◇ ◇ 

386 :メリー・クリスマス ◆fDszcniTtk :2009/12/23(水) 22:46:52 ID:v82z9DbY
「あーあ、素直じゃないんだから」

と、薄ら寒い天井を見上げてぼやく亜美に、笑いながら祐作が

「いや、むしろ素直なんじゃないか?」

と優しい笑みで呟き返す。

「あーみん、まいったね。おいら達、高須君に二度振られたらしいぜ」
「え?祐作。あんた高須君に横恋慕してたの?」
「馬鹿を言え、俺は会長一筋だ。男色を差別視するつもりはないが、俺にその気は全くないぞ」
「てか、『会長』ってあそこのさえない男の子なんですけどぉ」
「俺が『会長』とお呼びするのは後にも先にも狩野先輩お一人だ」
「あーみん、あのさえない会長、おいらの情報網によると彼女持ちらしいぜ」
「えーっ、どうなってるのよ。クリスマス・イブにこの仕打ちって何?神様、私が何か悪いことしましたか?」
「いや、神が居るかどうかは別として、お前のパーティでの働きには俺は感謝してるぞ」
「祐作なんかどうでもいい!」
「ひどい!」
「あーもう、頭きた!今日はダイエット中止!実乃梨ちゃんやけ食い付き合ってよ。祐作は支払いよろしく」
「オーライオーライ、まかせろあーみん。地獄の底まで付き合うぜ。おいら達二人、振られシスターだもんな」
「だからやめてって。つか、私別に高須君に振られてないし」
「おー、素直じゃないねぇ」

生徒会の片付けもようやく終わり、ほんとのほんとに総員撤収。体育館を出ると、外は凍るほど空気が冷たい。

生徒もほとんど帰ってすっかり暗くなったクリスマス・イブの学校。自称振られ少女の上にも、自称清純派姫系美少女の上にも、想い人が海の向こうに行ってしまった生徒会の舅の上にも、きれいな星が輝く。

◇ ◇ ◇ ◇ 

387 :メリー・クリスマス ◆fDszcniTtk :2009/12/23(水) 22:47:32 ID:v82z9DbY
着信一件。

『竜児、今どこ?』
「家にいる。食事終わったのか?」
『終わった。今ママは片付けしている。私は弟の様子見たところ。あんたなんでパーティーいかなかったの?』
「独りで行ってもな」
『独りの子のためのパーティーなのに。みのりんたち待ってたんじゃない?』
「そうかもな」
『ごめん、私がわがまま言ったから』
「馬鹿言え。お前は家族と過ごすクリスマスをずっと望んでたんじゃないか。お前の夢が叶ったんだ。俺は本当に嬉しいよ」

ちょっと間が空いたのは長いメールを打っているのか、あるいは親に呼ばれたのか。それとも。

『ねぇ、竜児。私何度も言ったけど。あんたの彼女にしてもらって本当に幸せだよ』
「俺もだ」

以前の大河は竜児の前でだけ泣き虫だった。今の大河は家族の前でも泣き虫だろうか。

少し暖房の効きの悪い部屋、独りで寂しいだろうと言われればそうなのかもしれない。でも、その先にずっと楽しい未来があるとわかっている、今日だけの独りのクリスマス・イブ。これに不満を漏らすようでは、大河をずっと守っていくなんてとても言えないだろう。
だから、これで結構、竜児はずっと柔らかい微笑みを浮かべている。

『もっとメールしたいんだけど、呼ばれちゃったから』
「行け、そっちのほうが大切だ」

そう、今は大河にとって家族こそ大切だ。父親と母親と弟と過ごす、暖かくて幸せなクリスマスのあかりの一つに加わることこそ、大河にとって大事だ。今日の竜児は寂しくなんかない。むしろ幸せと胸を張れる。だって大河が幸せに笑っている。

だから今夜は一言だけでいい。

『メリー・クリスマス』
「メリー・クリスマス」

388 : ◆fDszcniTtk :2009/12/23(水) 22:49:07 ID:v82z9DbY
>>382
いつも乙です。

そうそ、クリスマスの中止は阻止しますよ。

389 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/23(水) 23:58:01 ID:3cbuKmEd
暖かいね、いいね、いいクリスマスだ。

390 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/24(木) 00:57:26 ID:1tOTX3O7
×かのう商店
○かのう屋

391 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/24(木) 01:32:27 ID:xmTf9bGB
おつ!!

392 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/24(木) 12:38:29 ID:Pxpa97lc
>>382
神様仏様まとめ様ぁ!!
いつもありがとうございます!

>>387
乙!
最後の数行で泣きそうになったw

393 : ◆QHsKY7H.TY :2009/12/24(木) 19:00:14 ID:z8SzuzCa
どうもお待たせしました。

>>335
ありがとう!頑張ったよ。

>>336
ありがとう!ホント嬉しいよ!

>>337
ありがとう!間に合ったよ!

>>338
ありがとう!まさかそこまでしてくれる人がいるとは!

>>353
生まれたぁ!!生まれちゃったよ!お赤飯炊かなきゃ!!

>>361>>378
どっからどうみてもカップルwいつも乙です!!
いいねぇ竜児、つい忘れちゃう大河w

>>377
そういや暖房器具見た記憶が無いなw

>>382
乙です!!
何か自分だけあんなに絵を使って貰っていいのかと恐縮してしまいます。
本当にありがとう、そしてお疲れ!!

>>388
あ〜三年のクリスマスはこんな感じなのかな?
昼間に会うくらいはあってもいい気がするけどそれをしないのがむず痒い!!GJ!!





さてドラとら!クリスマス編行きます!!

394 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/24(木) 19:01:48 ID:z8SzuzCa
季節は随分と寒い時期まで来た。
少し前に学校では生徒会選挙があり、北村は無事、というか順当に会長へと就任した。

その時の北村が嬉しそうではあるものの少し寂しそうで、本当に見て貰いたい人が今はここにはいないんだと思わされた。
俺は学園祭の後、北村が狩野すみれ会長……いや、前会長を好きだった事を北村の口から聞いた。
それは何というか衝撃的な言葉だったが、その時は自分のことで一杯一杯で深く考える事が出来なかった。
だが、この選挙の時にそれがどういう事なのかハッキリと理解した。
北村が好きになった女性はもう日本にはいないのだ。
そして北村はいなくなられて尚、前会長を好きでいる。
それが指し示す事柄はたった一つ。

「北村は前会長がまだ好きって事は大河の思いは……」

……報われない。
現段階ではという枕言葉がつくが、それでも大河が北村に受け入れてもらえる可能性は少ないということになる。

「……はぁ」

冷たくなった手に息なのか溜息なのかわからない吐息を吹きかける。
今日は久しぶりに一人での帰宅。
大河は用事があるとか言って一人で何処かに行った。

「俺、どうしたらいいんだろう」

学園祭以来、俺はどことなく大河を避けていた。
そんな俺の態度に気付いているのかいないのか、大河も何処かよそよそしい。
けど、学際の終わった晩に、

『アンタ、傍にいるって言っておいて今まで何処に行ってたのよ!!』

と言ってくれたのは嬉しかった。
だからこんなことじゃいけないと思いつつ、学際の時の自分自身を許せなくて、ずるずると時は過ぎ、気付けば町はたくさんの色鮮やかなイルミネーション飾り付けるくらいの時期になっていた。
二年前、大河と初めて会った時期がもうすぐやってくる。



***

395 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/24(木) 19:02:53 ID:z8SzuzCa
『以上、恋のお悩み相談失恋大明神からでした』

最近日常と化していた北村の恋の相談コーナー。
会長に答えをもらえずにアメリカへ行かれてしまった北村が、自身を少し皮肉って作ったコーナー……らしい。
そんなコーナーが今日も無事に終えた時、普段とは違い放送が続いた。

『生徒会からのお知らせ、もうすぐクリスマスですね。皆さんの予定は決まっていますか?生徒会ではクリスマスパーティーを企画中です』

途端にクラスがざわつく。
クリスマスパーティー。
今年最後の学校行事となるかもしれない。

『有志を募って準備を行い、自由参加のイベントを考えています。興味のある方は生徒会の者に気軽に声をかけてください』

クラスの奴等がざわつく。
参加者は多そうだ。



***



「ねぇ竜児」
「……ん?」

私は帰宅途中、久しぶりに竜児に話しかけた。
ここ最近はめっきり会話も減っていたけど、ここはがんばらねばいけない。

「アンタ、クリスマスパーティーに参加しなさいよ、そんでアンタの好きな子に告白しちゃいなさい」
「……は?」

何を急に言い出すのかと思えば、といような顔で竜児は素っ頓狂な声を出す。

「これがラストチャンスかもしれないわよ?来年は忙しいだろうし、あ、何だったら手伝ったげる」
「……いや、俺は……」

竜児は案の定どもる。予想の範囲ではあったが、だからといって引く気は無い。
覚悟を決めて今まで踏み込まないようにしてきたその“場所”に踏み込む。
だって、これは必要な事だから。
もしも竜児が好きな人と上手くいけばきっと私も諦められる。
でも振られたら私にもチャンスが来る。
だから多少強引でもここは引けない。

396 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/24(木) 19:04:02 ID:z8SzuzCa
「グダグダ言わない!!いい?私はクリスマスって大好きなの。良い子でいなきゃならないの。だからアンタの恋を応援してあげる」
「……よくわからんが、何で良い子でいなきゃならないんだ?それと俺の恋とどう関係するんだ?」
「わからない?良い子の所にはサンタさんが来るのよ?」
「……お、お前まさか」

竜児が可哀想な者を見るような目で私を見てくる。
流石にちょっとカチンと来る。

「ちょっと!!わかってるわよそれくらい!!でも小さい頃にサンタさんに私は会ったの!!夢かもしれないし親かもしれない。それでも私は嬉しかったの!!」
「そ、そうか」
「そうよ、その時サンタさんは私が良い子にしてたらまた来るよって言ってくれたのよ。だから私はクリスマス限定で良い子になるの」
「……まぁそれはそれで大河の自由だが、それと俺の恋の応援とのつながりがわからん」

「バッカねぇ、私はクリスマス限定の良い子よ?天使のようにどんな人にも等しく手を差し伸べるわ。そう、今の私はエンジェル大河!!エンジェル大河の前に人は平等なのよ!!」
「……エンジェル大河の前に人は平等、か」

竜児は少し感慨深げに言葉を反芻する。もう一押しだと思う。

「エンジェルと言えば弓、弓と言えばキューピットじゃない、ほらほら、どーんと大船に乗ったつもりでいなさい!!」
「月並みだが泥船で無いことを祈るな」
「何よいちいち難癖つけてくるわね、で、やる気は?」
「いや、俺は……」

竜児は一瞬顔を伏せる。
マシンガントークで気を紛らわせていたが、内心はパニックだった。
慣れないことはするもんじゃない。
竜児、呆れてないだろうか、今ので私を軽蔑していないだろうか。
そのうち竜児は顔を上げて、

「俺は……告白しない」
「……へ?何でよ?今なら全面バックアップありなのよ?」

それでは困るのだ。

「いや、俺は今の自分の恋を諦めようかと思ってるんだ」
「……なんですと?」
「俺は、今の恋を……諦めようと思う。いろいろ考えて、俺じゃダメかなって」

なんてこと……予想外の展開だ。
しかし、これはおあつらえ向きではないか。
早速エンジェル大河になった分のお返しが天から送られたのかもしれない。
だって竜児が恋を諦めるって事は、今はフリーってことじゃない!!

「そ、そう。だったら尚更パーティーには出ないとね」
「ん?何でだ?」
「アンタ、クリスマスに男一人で寂しく家で過ごす気?根暗にも程があるわ。今年最後に楽しみなさいよ」

そうだ、それでそのパーティーで、私に告白させて欲しい。
家だったらやっちゃんに聞かれちゃう恐れがある。
別に嫌じゃないけど、ちょっと気まずい。
何とかパーティーで二人きりになって……いや、最悪帰りの時でも良い。

「……そうだな、“最後”にいいかもしれねぇな」
「やった!!決まりだからね!!」

私は、喜びの余り飛び跳ね、クリスマスに思いを馳せた。



***

397 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/24(木) 19:05:09 ID:z8SzuzCa
次の日からクリスマスパーティーの準備が始まった。
毎日放課後に残って準備、ツリーはばかちーが仕事場で見た大きな木を借りられる事になった。
飾り付けやイベント、話し合い等準備することは多かった。
それでもクリスマス当日を思うとドキドキして楽しかった。
どうなるだろう?断られるだろうか?それとも驚きながらも受け入れてくれるだろうか?
そう思うたびに一喜一憂して毎日を過ごした。

「あのね竜児、クリスマスはこーんなでっかいローストチキンを食べよう!!」
「お前な、インコちゃんに恨まれるぞ」
「それとねそれとね、クリスマスって言ったら手羽先かしら?」
「お前の口からは肉以外に出てこないのか、あと鶏肉はダメだって」
「えーとえーと、じゃあこーんなでっかいケーキ!!イチゴを一杯ラッピングして……」

「まったく、それを作るのにどれだけ大変だと……今の時期イチゴは高いんだぞ?」

竜児は私のはしゃいだ言葉に一つ一つ律儀に返してくれる。
クリスマスはもう、目前だった。

「うう、さぶっ!!」

帰宅途中は特に風が冷たい。
日が落ちるのも随分と早くなった。
竜児も寒そうに赤いカシミヤの長いマフラーをして……?

「……アレ?そのマフラー何か見覚えがあるような」
「……!!……そ、そうか?」
「う〜ん、何処だっけ?いや、いつだっけ?」

どうにもこの構図、“竜児が赤いマフラーをして手をポケットにいれていない姿”に見覚えがある気がする。

「……う〜ん思い出せない。まぁいいや、ちょっとそれ貸して」
「お、おい?」

私は竜児の首に巻かれてる赤いマフラーをひったくると自身の首に巻き付ける。
スーっと冷たい空気が遮られ、少し竜児の匂いがした。

「お前、クリスマスまでは良い子でいるんじゃなかったのか?」
「んー?良い子でいるよー?」
「人からマフラーを奪うのは良い子のすることなのか?」
「奪ってないもん、借りただけだもん」

私が得意気にそう言うと、竜児は溜息を吐いて諦めたように制服の襟を立てた。

「竜児、まるでヤンキーみたい」
「誰がヤンキーだ」
「そう見えるってだけの話」
「誰のせいだ誰の」

竜児は呆れつつも私にマフラーを返せとは言わなかった。
その優しさが嬉しかった。



***

398 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/24(木) 19:06:12 ID:z8SzuzCa
「じゃあいい?タイガー、もう一回最初からやるよ?」
「はいよっと」

曲に合わせてばかちーと踊る。
歌詞は覚えたし、歌は多分大丈夫。
これはサプライズ。
私とばかちーでの突然のライブ。
きっとみんな、竜児も驚く。

「……っと!!」
「なかなか様になってきたわね」
「でもバレないように練習してるから結構厳しいよ」

踊るのは私とばかちー、そしてクラスメイトの香椎奈々子。
同じ衣装を着て三人で歌って踊るつもり。
竜児の驚く顔が楽しみだ。



***



「えっとこれとこれと……ああくそ、何でこんなに冬は物がたけーんだ」

俺は一人で買い物をしていた。
最近時々大河は何処かに行く。
まぁ何かパーティーの準備に借り出されてるのだろう。
俺も何度かそんなことがあって一人で行ったりするし。
それに今日はそのほうが都合が良い。
俺の中でこれで“最後”にするために、今日はその準備をする日なのだから。
大河はきっと驚くだろう。
喜んでもくれるだろう。
それを見て、俺はこの気持ちを封印するともう決めたんだ。



***

399 : ◆QHsKY7H.TY :2009/12/24(木) 19:06:59 ID:z8SzuzCa
クリスマス当日。
いよいよやってきた当日。

「竜児、準備出来た?」
「おう」

私は黒いドレス。
竜児には私が持っていた黒いスーツを上げた。
それ父親の、と言ったら嫌がっていたが、着ないなら捨てると言ったら渋々MOTTAINAIと言って受け取ってくれた。
まぁ●万円はする代物だし、持ち主がまだ一回も着ていなかったからほとんど誰のものでもないいいスーツなんだけど。
そのスーツを着た竜児はカッコ良いけどどこからどうみてもアッチ系の人で。

「いやぁん、パパにそっくりぃ♪」

というやっちゃんの言葉に結構ショックを受けていたのは笑った。
準備を終えた私は、借りたままの赤いカシミヤのマフラーをして竜児と二人で歩いて学校まで行く。
会場の体育館は既に賑わっていた。
ばかちーが用意してくれた大きな木にみんなで飾り付けしたツリーが中央にあって、辺りにはテーブルとこれまたばかちーが手配したフルーツポンチ。
なんでもこれはサンプルで、感想を書けばタダでいいとのこと。
ばかちーもやるわねぇと思いつつフルーツポンチを配っている竜児に目が……は?

「あ、ああああんた何やってんのよ?いつの間に!?」

つい先程まで隣にいた竜児が、気付けばその三白眼をつり上げてオタマ片手にフルーツポンチを容器に入れている。

「お、おう。これやってた奴が要領悪そうだったんでつい」
「つい、じゃないわよ、どこまで几帳面なのよアンタ」
「い、いや、そのなんていうか……悪い……あ、そこのお前、歩きながら食べるな、零れるだろ!!」

謝りつつ周りに目を向ける竜児に苦笑する。
こいつは、クリスマスになっても変わらない。
っとと、そろそろ時間だ。
私は隙を見て竜児の目を盗み、場を離れる。
場所はステージ裏。

「タイガー、奈々子ちゃん、準備は良い?」
「ええ」
「大丈夫よ」

私たちは微笑み会い、体育館の照明を落とした。



***

400 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/24(木) 19:08:54 ID:z8SzuzCa
辺りが急に暗くなる。
何だ?と思うとカーテンがかかっていたステージが開いていき、中からは香椎と川嶋と……大河が出てきた。
音楽に合わせて踊り、三人は歌っている。
あいつが時々いなくなっていたのはこの為だったのか。
大河が俺を見て……ウインクをした。
いや、正確には俺じゃないかもしれない。
周りの男子がそれに反応して騒いでいるし。

「今のタイガー見た?超可愛いくね?」
「今のって俺にやったのかな?」
「バーカ、んなわけあるか、サービスだろ」
「あー亜美ちゃんも可愛い〜♪」
「香椎って結構美人だよな」

女子の話題で男子は盛り上がり、これでもかというくらいに熱くなっている。
さて、俺の方も少し席を外さなければ。



***



「上手くいったね」

私たちはステージでのライブが上手く行ったことに満足していた。
みんなに大盛況だったし、竜児ウインク気付いたかな?
そう思いながら私たちが会場に戻ると、今度は私たちが驚かされた。
先程まではテーブルにあったのはサンプルのフルーツポンチのみ。
ところがどうだ?
今はテーブルにぎっしりと料理が乗っているではないか。

「何これ?ちょっと祐作!!どういうこと?私にお金使うなっていっておいて自分は何をしたわけ?」
「お、落ち着け亜美、いや実は俺も驚いている。まさかここまでとは」

テーブルには、大きなローストチキンがとその周りを手羽先で囲ってある皿が一杯あった。
他にも簡単なポテトサラダ等があるが、驚いたのが大きいケーキ。
恐らくスポンジを三段重ねにして大きくしているのだろう。
これでもかというくらいにイチゴがついていて、それはとても見栄えのいいものだった。

けど何か、どれも見覚えのあるメニュー。

401 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/24(木) 19:09:52 ID:z8SzuzCa
「実は高須に相談したら俺が作るって言ってくれてな。俺や生徒会の面々も手伝ったんだが、ここまで凄い料理になるとは思っていなかった」

何でも学際での収入は学校費として預かりになり、行事の予算に回したりするらしい。

今回は、学際の収益が多く、このイベントにもお金が僅かに使えたということなのだそうだ。

「竜児……」

あの日に言った私の希望を、竜児はきちんと聞き届けていたんだ。
無理のようなことを言いつつ、結局は願いをかなえてくれる竜児……あれ?

「ねぇ北村君、竜児は?」
「ああ、あいつなら帰ったよ、何でも泰子さんと約束があるからって」
「……え?」

ナニソレ?
私聞いていない。
それにやっちゃんは今日は仕事のはずだ。
行きがけにも、

『二人ともあんまり遅くならない程度に一杯楽しんでくるんだよぉ』

って言ってたし。
……どういうこと?
胸騒ぎがする。
私は会場を飛び出した。



***



俺は寒空の中を歩いていた。
結局俺は大河が俺の作った料理を見る前に出てきた。
やっぱり、大河の顔を見たら未練が残りそうだから。

「……さむ」

首元がスースーする。
そういや大河にマフラー取られたままだった。
大河、料理喜んで食ってるだろうか。
まぁあいつ肉好きだし大丈夫だろう。
俺はそのまま帰ろうとして、足を止め、本当に何気なくとある場所へと足を向けた。



***

402 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/24(木) 19:10:50 ID:z8SzuzCa
竜児がいない。
走っても走っても見あたらない。
家に帰ったならこの道を使う筈なんだけど。
おかしい。何かおかしい。
私は嫌な予感に駆られながら足を急がせる。



***



「変わってないな、ここは」

寒い冬空の下、俺はかつての幼稚園前に来ていた。
今年も、やっぱりボランティアはやっているようだ。
けど、案の定俺には誰も来ない。
先程一人近づいてきたが、ぎょっとして逃げられた。
ここから俺の恋は始まった。
だから同じ日にここで終わりにしようと思う。
今年は……いや、今年もだれも俺には配りに来ない。
大河のような子は今年はいないらしい。
当然だ、そう何人も彼女みたいのがいてたまるか。

「……冷えてきたな」

体が冷える。どうやら俺はまたポケットに手を入れていなかったらしい。
今日はこの手を暖めてくれる子はいない。
寒い空の下、雪がちらつき始めていた。



***



「はぁ……はぁ……」

結局竜児の家まで来てしまった。
竜児には今だ会えない。
帰っているのかと思ったが家の電気はついていないし、鍵もかかってる。

「まさかもう寝た、とか?」

言ってからそんなわけは無いと自分に突っ込む。
それでも念のためと私は渡されてた合い鍵で家に入る。
中は……やっぱり暗いし寒い。
人がいるなら暖房を入れてるはずだが入っていないようだ。

「竜児、いるの?」

私は恐る恐る声をかけながら高須家を迷走するが、何処にもいない。

「竜児、入るよ?」

竜児の部屋にも入ってみるが、帰ってきた形跡すら無い。
どうなっているのだろう。竜児は何処に行ったのだろう。
念の為ケータイでばかちーに聞くが、やっぱり竜児は会場にもいない。
出て行ったのは間違い無いようだ。

403 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/24(木) 19:14:03 ID:eaZjezl/
支援

404 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/24(木) 19:46:51 ID:tNeHqGAu
だがそれなら一体何処に行ったのだろうか。
私は竜児の部屋を見渡す。
相変わらず整頓されている部屋。
竜児の匂いの籠もった部屋。
ふと、机の横の本棚、一番下にあるダンボール箱に見覚えがあった。

「これは……」

最初に夜襲かけた時に持ってきたダンボール。
そういえばこの中には……。
電気を点けてダンボールを漁る。
この中に、一つだけ見たいものがある。

「……あった」

それは一冊のノート。
確か好きになった人の為に考えた詩が書いてるノート、だったかしら。
竜児はこれだけはダメと言って見せてくれなかった。
きっとこの中には竜児が今まで恋いこがれた人の事が書かれているのだろう。
どうしようかと迷い、私は結局それを開いた。
今の竜児の手がかりは何も無い。
もしかしたら気が変わってココに書かれている人に告白しに行ったのかもしれない。
竜児には電話しづらいし、そう思うと手が止まらなかった。
そうして開いた最初のページに書かれていた人物は……。

「何、これ……」

私が想像していないものだった。



─────逢坂大河嬢に捧ぐ─────



「う、嘘……」

まさか書いてあるのが自分の名前だとは思わなかった。
この時ようやく竜児があの時見せたくないと言った意味を理解した。
途端込み上げてくるのは嬉しさ……よりも罪悪感。
私は竜児に何度恋の応援をお願いした?
なんて残酷だったんだろう。
今ならわかる。
旅行の時に『断る』と言った意味が。
私は……最低だ
私を好きな竜児に、私を好きだった竜児に今まで何て酷いこと……“だった”?
今自分で思った事に戦慄し、恐怖する。
彼は何て言っていた?

『いや、俺は今の自分の恋を諦めようかと思ってるんだ』

そうだ、竜児は諦めると言った。
つまりあの時、竜児は私を諦めると言ったんだ。

「そ、そんな……」

その場にへたり込む。
首から借りていた竜児のマフラーがぼとりと落ちた。

405 :ドラとら! ◆QHsKY7H.TY :2009/12/24(木) 19:48:44 ID:tNeHqGAu
そのマフラーを見て、唐突に二年前の今日を思い出す。
その日、私は竜児と会っているではないか。
まさか、竜児はその時からずっと……?
ノートを見る限り、そうなのかもしれない。
だからなのだろう。
散々竜児を傷つけた私は、竜児に見切りをつけられたんだ。
私が竜児の事を好きになって、ううん、好きな事に気付いた時にはもう、竜児は私を好きじゃなくなっていた。

「……いやだよぅ」

こうなってはきっと、竜児はもう私を好きにならないだろう。

「……そんなのいやだよぅ」

そしてそれは自分のせい。

「……何が平等よ」

全然平等なんかじゃ、対等なんかじゃ無かった。

「……竜児がいいのに」

私は、ようやく見つけた、気付いた一番欲しい物を、手に入れることが……出来ない。


「……竜児が好き、なのに」

視界が霞み、ボタボタと竜児の部屋の畳みを濡らしていく。

「……せっかく気付いたのに」

もう、私の求めたものは、手からこぼれ落ちてしまったのだ。

「……竜児しかいない、のに」

赤いカシミヤのマフラーから、部屋から、そこら中から竜児を感じつつ、ここにはいないというのが現状で。






「りゅうじぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!」






泣き叫ぶその声は、雪降るクリスマスの夜に解け、今は部屋の主に届くことは無い。



***

406 : ◆QHsKY7H.TY :2009/12/24(木) 19:50:17 ID:tNeHqGAu
ここまで。
今日の投下は俺からとらドラ!好きのみんなにクリスマスプレゼントだ。
次の投下は来年かな。
支援感謝!
規制うっかりしてて別口から投下で時間かかった。
ID違うけど本人です。



407 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/24(木) 21:42:07 ID:H525qGcO
軽く目が潤んだ・・・

まじで!

408 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/24(木) 21:44:31 ID:9SEvssDa
GJ!
やばい続き気になるぅ!

409 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/24(木) 21:55:32 ID:B0utvDV6
>>406
GJ! プレゼント有難う!
今日のこのクリスマスイブに、リアルタイムで見てるようで、せつねぇ。
早く2人の想いが通じ合えるように!

410 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/24(木) 23:06:24 ID:c6qSPtJR
GJ!続きがすごい楽しみだ。
ああ…この乾ききった心に温かい何かが満たされていく…


411 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/24(木) 23:12:00 ID:HNtiF1sG
そう持ってきたか……!
いい意味で予想裏切られました。
GJです。

412 : ◆fDszcniTtk :2009/12/25(金) 00:35:55 ID:1vlSd9j5
>>389-393
サンキュー!

まとめ人様、お手数ですが収録時には「かのう商店」を「かのう屋」に訂正願います。

>>392
そこまで没入してもらえるなんて、作者冥利に尽きるよ。

>>393
昼間は学校だ(w



413 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/25(金) 03:02:02 ID:lCCTeq4x
>>406
もつ!!

414 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2009/12/25(金) 06:31:57 ID:lxc1HzoC

随分とご無沙汰になってしまいました。
「とらドラ!, again」を書いているVW.RtTKf1Eです。
この話もちょうどクリスマスで進んでいますので、この「大河の日」に
投下させてもらえたら、と思います。

(お願い)
1−3レス目に、量は多くありませんが、ラブシーンがあります。
苦手な方はすいませんが、パスされてください。
10行ほど空けて、投下します。


前スレ >163
ttp://tigerxdragon.web.fc2.com/index/SS11/578h.html

の続きとなります。以下、8レス使います。


415 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/25(金) 06:32:58 ID:lxc1HzoC













手を繋いでアパートの階段を登り、大河の部屋の扉を閉めた瞬間から、
2人はもう数えきれないぐらい、何度も何度もキスをしていた。

自分の唇が相手に触れている時間が、そうでない時よりも確実に長い程、
ただただキスを求め、唇を重ね、唇で触れあった。

玄関を閉めた瞬間、扉を背に座り込んだ竜児の上に大河が飛び乗って。
大河が「着ぐるみ、邪魔」と言って、竜児のクマを脱がせながら。
竜児が大河を抱き上げ、浴室へと運びながら。
電気を消したまま、2人一緒に熱いシャワーを浴びながら。
濡れた身体を1枚のバスタオルで拭いあいながら。
布団を引っ張り出す大河の後ろから、竜児が覆いかぶさるように。
そして、1つの布団にくるまりながら。
膝を折り、背を丸め、身をよじり、背伸びし、額をこすりつけ合い、あごに手をあて、頬に触れながら、
あらゆる形で唇を重ねあった。
2人が想いを通い合わせてから昨日までのキスの数は、今日の僅か10分あまりの時間で
塗り替えられただろう。

やがて、唇を押しあてる先は互いの全身へと広がっていく。
言葉はほとんど交わしていない。密着した肌の熱と身体の動きで、互いの存在を確かめ、
狂おしいまでの想いをぶつけるように、吸い、重ね、絡ませ、触れあった。

2人の顔が再び正面に向きあった時、ようやくそれは止まった。



416 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2009/12/25(金) 06:35:39 ID:lxc1HzoC

* * * * *

ねぇ、竜児…
ん?
許して……くれる?
何を?
ずっと…離れていたこと。
離れてなんかいたか?
え? でも…
大河は離れてなんかいなかった。ずっと俺の傍にいたぞ。たぶん、俺も大河の傍にいただろ?
…………。
大河?
……う……ん、そだね…… いたよ… 竜児はいつも私の傍にいた。いつも竜児と話してた。
だろ… どんな時でも傍にいるんだよ、俺達は。


ねぇ、竜児…
おう。
怒らないで聞いて。本当に、みんなに助けてもらっていいの…かな?
…怒らねぇよ。俺も聞いてみた。半端な話じゃねぇって。でもみんな、当たり前って顔してたよ。
どうして…?
仲間だから… だってさ。
仲間って言っても、高校の時とは違うよ?
分かってるさ。もう、みんな立派な社会人だ。
みのりんは、私がいなかったら今の自分は無いって、みんな思ってるって言ってたけど…
ああ、その通りだ。
ほんと…に?
本当だ。
どうして…?
櫛枝と川嶋と北村は説明しなくてもいいよな。
う、う…ん
能登と木原は、仲間でのドタバタからお互いを理解していったそうだ。その中心にはお前がいた。
そ、そうだっけ…?
春田は高校ん時、お前にちょっかいかけてはブン殴られてたから、彼女ができたんだって言ってた。
なにそれ? 
わかんねぇ。でもあいつ、確かにそう言って笑うんだよ。
バレンタインの時にアホロンゲにチョコ買ってあげてた彼女?
ああ、今もうまくいってるみたいだ。今日も2人でこのクマを持ってきてくれたんだぜ。
ほんとに?
大橋からわざわざな…
じゃあ香椎… 奈々子は?
香椎は、ただ「フフッ」って、微笑むだけだった。でも何か思うところはあるんだろうな。
お色気ボクロは相変わらずね… でも狩野すみれは? 私、ブンなぐったんだよ?
唯一無二の人間なんだそうだ。
え?
狩野先輩に右フックを喰らわせた奴は後にも先にもお前だけ。それだけで助けるに値するらしい。
……らしいっちゃ、らしいんだけど……
そういえば、北村と狩野先輩、結婚するぞ。来年の夏には子供も生まれるらしい。
うそっ!? でも…… ありえないことじゃないわね。
ああ。北村、頑張ってきたもんな。
北村君と狩野すみれの子供か… 北村君、とうとう夢が叶ったんだね
ちょっと淋しいか?
バカ、そんな訳ないでしょ? 怒るよ
すまんすまん…


417 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2009/12/25(金) 06:36:57 ID:lxc1HzoC

ねぇ、竜児…
どうした?
私達も赤ちゃんできちゃったら、どうしよう…?
そりゃ、とても素敵なことだな。大丈夫だ。心配すんな。
…ほんとに?
…ああ、あたりまえだろ。大河の子だ、きっと可愛いぞ。
アンタに似るかもよ。
いや、大河の遺伝子に勝てる気がしねぇ。
ふふっ…


ねぇ、竜児
なんだ?
覚えてる? 前の…
ああ、覚えてる。てか、忘れられねぇ…
…ヘンタイ
そう言うお前はどうなんだ?
えっ… 私は… 私も…覚えてたわよ。
じゃ、お前もヘンタイだな。
う、うるさいわねぇ…
フッ…
そこ、気持ち悪い笑い方しないの


ねぇ、竜児
うん?
いいよ……
わかった……


「んっ………」

* * * * *


418 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2009/12/25(金) 06:39:47 ID:lxc1HzoC

深夜。竜児はまだ眠りの世界に入り込むことが出来ずにいた。
大河との再会の興奮が冷めないのか、うつらうつらとしては目覚めを繰り返している。
眠り込んでしまったら、また大河がどこかに行ってしまうのではないか、そんな緊張感も
僅かに残っていたのかもしれない。

周囲を見回すと、視界に入ってくるのは見慣れない部屋の光景。しかし、腕の中には見慣れた顔があった。
すっかり牙を抜かれた子虎は、姿を消すことなく、竜児の腕の中で丸くなり、柔らかな寝息を立てている。
目の前には小さな豆球の光に照らされ、白く浮かび上がった大河の小さな額。
竜児は思わずそこに軽くくちづけをする。

「ずっと傍にいた…」心の結び付きをそう表現してみたものの、こうして触れることのできる喜びと
安心感はなにものにも代え難い。愛おしいという気持ちが止めどもなく溢れ出してくる。

薄明かりの下、大河の顔がもっとよく見えるように腕をずらし、身体をよじる。
計り知れない痛みを伴ったはずの日々も、大河の容貌に毛ほどの傷もつけることができなかったらしい。
ふうわりと広がる髪の柔らかさも、整った長い睫毛のカールも、ガラス細工のように優美な曲線を描く
あごのラインも、磁器のようにきめの細かな頬のミルク色も何も一つ変わらない。
いや、頬の曲線は少しだけシャープになったように見えた。それは痩せたとかやつれたいうものではなく、
しっかりと強い意思を表しているようで、むしろ頼もしく見えた。

「そっか… 大河も大人になったんだな…」
離れていた間の痛みなんか、もうどうでもいい。今、こうして目の前に大河がいる。それ以外に何を
望むことがあるだろう。大河が選んだ道を共に歩む。大河が願うことを叶える。2人でならきっとどんな
ことも乗り越えられる。そう信じることを固く心に誓った。

「本当に… よく… 1人で頑張ってきたよな。たい…が…」
部屋の中、うず高く積まれた本の山を見ながら、竜児は大河が過ごしてきた不安と痛みの日々を思った。
どうしてこんなことに、と何度も思っただろう。何もかも捨てて、逃げ出したくなる時もあっただろう、
でも大河はそうしなかった。しっかり自分の足で立ち、やるべきことを考えて、実行してきた。
見えないこと、分からないことへの疑問と苛立ちを繰り返してきただけの自分とは、大きく異なる。

「どうして、そこまで頑張れるんだ? 大河」
そうつぶやきながら、大河を見る。その時、バーで聞いたマスターの言葉が竜児の脳裏に浮かんできた。
(きっと君達のような関わりのある人間に害が及ぶのを防ぎたい、という思いがあるんだろう…)
竜児の腕に包まれて、穏やかな表情を浮かべる大河の寝顔もそう告げているようだった。
「俺を、泰子を、みんなを守るため、か…」

起こさないように、大河の髪に優しく触れる。ゆっくりと指を通して、柔らかな髪を撫でていく。
指の間から伝わる、滑らかな感触に胸の奥から熱いものがこみあげてくる。
思わずその小さな身体を強く抱き締めそうになり、竜児は済んでのところで踏みとどまった。
こんなによく眠っているのに、起こしちゃいけない…

「りゅうじぃ…」
大河の口から竜児の名前がこぼれた。起こしてしまったかとヒヤッとしたが、すぐに規則正しい寝息を
立て始めるのを見て、竜児は安堵の息を漏らす。つらい夢を見てるのでは?と一瞬心配したが、
大河の口元に笑みが浮かぶのを見て安心する。きっと夢の中でも2人はすぐ傍にいるのだろう。

夢でも目が覚めてからも思いっきり甘えていいんだぞ、大河。もう1人じゃないんだから…

今、一体、何時だろう?  
少し冷静になった頭で、ケータイを確かめようと枕元を手で探りかけて、竜児はハッと気づいた。
「ケータイ、車の中だ… 櫛枝の… 着替えも財布も… またやっちまった… 着ぐるみしか、ねぇ…」
緊張感が脱力と共に抜けていくのと入れ替わりに、眠気の波が竜児にも押し寄せて来た。

「…まぁ、朝になれば、櫛枝が迎えにきてくれる、よな…」
暢気にそう考えると、竜児は大河のつむじあたりに顔を埋め、甘い香りを胸一杯吸い込みながら、
大河が待つ夢の世界に入っていった。

* * * * *

419 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2009/12/25(金) 06:42:54 ID:lxc1HzoC

「竜児、起きて」
「…ん?」

「こらっ! 起きてって言ってるでしょ!」
「んあっ…?」

ぼーっとした頭で目をあけると、電灯の光を遮って、視界一杯に逆さまを向いた大河の顔。
深夜、竜児の腕の中にいた子虎は、本来の姿を取り戻したようで、影の中でもその大きな瞳に
強い力を宿している。

「な、なんだよ、いきなり。お、お早うぐらい言えよな…」
目をこすりながら身体を起こし、窓の方を見ると、眠りに入る前と同じ暗闇に覆われていた。

「まだ日も昇ってねえじゃねぇか…って、えっ?」
ちょっとなじるような口調で振り返ると、ふわっと広がる白のフリルスカートに、スタンドフリルの同じく
白のブラウス、オフホワイトのカーディガンを身にまとった大河が枕元でふんぞり返って立っていた。

「お、お前、その恰好…」
二十歳過ぎてて、そのフリフリはないだろう、というツッコミは毛ほども思いつかなかった。
やっぱり大河はこういう服が似合う。大河には怒られるだろうが、10代でも十分通用する。

「お早う。もう6時過ぎてんのよ。いい、私は毎日朝6時半にママの家に行く。朝ご飯を一緒に食べて、
8時までに弟を保育園に送るのが日課なのよ。今日は土曜日だから保育園はないけど、いつもの時間に
私がママのところに行かず、居所が分からなかったら、ママからマスターに連絡が行くことになってる」

竜児は枕元に転がった目覚まし時計に気付いた。針は6時10分を指そうとしている。
ギリギリまで寝かしておいてくれたということか。

「でも今日はママのところには行かない。アンタと一緒に行動するの。次どうするか考えるんでしょ?
どこへ行けばいい? 私は腹括ったわよ。まさか、何の考えも無しでここに来たんじゃないでしょうね!」

矢継ぎ早の言葉に竜児は降参の意志を両手をあげて見せた。
「ああ分かったよ。すぐ出よう。でもその前に、やっぱり大河はその恰好が似合うよな…」
「はぁ? ななな、なに言ってんのよ。私が昨日みたいな地味な服ばかり着てると思ってんじゃない
でしょうね? 我慢できるワケないでしょ、この私が。ほら寝言はいいから、早くアンタも着替えて」

竜児は、そこでようやく眠る前に気づいたショッキングな事実を思い出した。
「あ、あのさ、大河…」
「何アンタ? またグズ呼ばわりされたいの?」
「いや、無いんだ、着替えが。櫛枝の車の中なんだ。ケータイも財布も。クマの着ぐるみだけ…
で、今、櫛枝がどこにいるか分からない…」

「…………………」
微妙な沈黙がしばし流れたあと、大河がおもむろに口を開く。
「アンタ、ちゃんと成長してる? いつまでも高校生みたいに間抜けなことしてたらダメよ」
まさかこんな台詞を大河から言われる日が来ようとは、誰が想像しただろうか?
「う、うるせぇな。昨日はお前を取り戻すのに必死だったんだよ」

はぁーと大河は溜息をつきながら、スカートのポケットからケータイを取り出すと、
「分かってるわよ。ほら、さっさとみのりんに電話して。悠長な時間は無いわよ」
そう言いながら、ケータイのボタンを押して、竜児に差し出してきた。

「お、おう、ありがとな、ってお前、ケータイ持ってんじゃねぇか!!」
「はぁ? ケータイ持ってんのなんて当たり前でしょ! 番号はあの時変えたけどね」
大河はバツが悪いのを隠すように、つっけんどんな口調で、ぷいと横を向く。



420 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2009/12/25(金) 06:44:57 ID:lxc1HzoC

…ったく、ケータイ持ってるんだったら、イタ電でも無言電話でモールス信号でもいいから、
元気でいるサインぐらい送ってこいよな… 
竜児はそんな無茶をぶつぶつ言いながら、2コール、3コールと鳴らすが、実乃梨は出ない。
留守電になってしまったら、お手上げだと焦り出したところで、ようやく繋がる気配。

「…ひ、ひゃい? もひもひ?」
相当寝ぼけているのだろうが、間違いなく実乃梨の声だ
「櫛枝! 今どこにいる?」
「た…たきゃすくんかい? 大河は元気かね? すまんがもうちーっとばかり爺を寝かせてくれんかのう? 
昨日の夜からあーみんと語り合って、寝たのがかなーり遅かったのだよ… ふ、ふわぁぁぁあわわわ……」
「わ、わかったから、話が済んだら寝てていいから、今どこにいるんだ?」

ケータイの向こう側、実乃梨の方から、ピーピーピーと甲高い嫌な音が聞こえてくる。
これはひょっとしてバッテリー切れの…警告音??
「あーみんが取ったホテルの部屋だよ。すっげーいいとこ。ちょっとそこから離れているけど」
「だから場所は? 名前は?」
警告音が一際高くなる。
「えと、なんだっけ? あー、電池切れちゃいそうだよ。すまんねぇ高須君、一眠りしたらまた連絡す…」

プー プー プー プー
大河のケータイが虚しく電子音を響かせる。
「き、切れた… また連絡するって、俺のケータイはお前の車ん中なんだよ!」
「どうしたの?」
「バッテリー切れだってよ。川嶋が取ったホテルにいるってとこまでは分かったんだが、
場所がどこか聞く前に切れちまった」

「もう… 仕方ないわね。ほら、ばかちーにも掛けな」
大河は亜美のケータイの番号を押すと、再び竜児に渡した。

プルルルルルル…
2コール、3コールと鳴らし、繋がったと思った瞬間、竜児が声を出す前にあっさり切れた。
「あ、あいつ出もしねぇで切りやがった!」
「知らない番号からの着信は無視する気ね。腹黒のばかちーらしいわ。ほら、ぐずぐずしないで
もう1回掛ける!」

竜児は慌ててリダイヤルの操作をする。が、もはや発信音すら鳴らず、
「お掛けになった番号は電波の届かないところに…」
というお決まりのアナウンスが繰り返されるのみたっだ。
「ダメだ… 電源切りやがった……」
「やるわね… じゃ、直接行くしかないか。 竜児、2人が泊まっているホテルは知ってるの?」
「いや、川島が来てるのも知らなかった。あいつ海外でロケのはずだったんだが。あ、さっき櫛枝が
ちょっと離れているけど、すっげーいいとこ、って言ってたけど…」

「ふん、ばかちーが安い所に泊まるはずはないわね。少し離れてて、ばかちー好みの所といえば…」
しばし大河は思案顔。やがて思い当たるホテルがあったのかニターっと笑顔を浮かべ、
「うん、きっとあそこだ。行くわよ、竜児」
「行くってどこに?」
「大河様に任せなさい。でもその格好じゃ目立ちすぎて電車には乗れないわね。ちょっと距離あるけど、
まぁ丁度いい、タクシー使うか… 竜児、すぐにクマを着て! いつまでパンツ一丁でいるつもり?」
「お、おうっ!」

再び着ぐるみを身につけるや否や、竜児は部屋の外に押し出されてしまった。でも振り返ると、
ブーツに足を突っ込み、竜児のマフラーを嬉しそうに首に巻いている大河がそこにいる。
今度は一緒だ。

竜児は、大河の背後に回ると、マフラーの端をそっと結んでやるのだった。

* * * * *


421 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2009/12/25(金) 06:48:42 ID:lxc1HzoC

ゆっくりと白みだした空の下、部屋を出た2人は、昨夜、実乃梨が車を止めた大通りでタクシーを拾った。
大河は竜児が聞いたことも無い地名とホテルの名前らしきものを告げ、「急いで出して下さい」と
短く運転手に伝える。竜児の格好に最初ギョッとした中年の運転手も「そういえば、今日はクリスマス
だったっけ…」とつぶやいて、納得したように車を発進させた。

その時、車の時計が6時半ちょうどを示した。間髪をいれず、大河のケータイが鳴る。

「大河! あなた今どこにいるの? 何があったの?」
高校2年のバレンタインデー、ケーキ屋のバイトを終えた2人の前に、泰子と共に立ちはだかった
大河の母の迫力ある声が、ケータイの小さな受話部から漏れ聞こえてくる。

「ママ、ごめん。私、今、竜児と一緒にいるの。ううん… ウチにはいないよ。今、タクシーで移動中。
でね、ママ、今日は竜児と一緒にいる。これからの事を2人で考える。夜には必ず帰るから、行かせて欲しい」
「何言ってんの、すぐ帰ってくること。いいわね、大河」
思わず身をすくめてしまいそうな鋭利な声。しかし大河はひるむことなく、言い返す。
「お願い、ママ。今日だけは見逃して。ちゃんと帰るって約束するから…」

大河と母親は暫くの間、「帰ってきなさい」「帰らない」と押し問答を続けていたが、最後は
“イイ子にしてきた私を信じて”と哀願する大河の言葉と、走り出したタクシーを追い駆けるすべの無い現実に、
日が暮れるまでに帰ってくること、定期的に居場所を電話で知らせるという条件付きで、母親がしぶしぶ
折れたのだった。

大河がようやく電話を切って、一息つく間もなく、竜児の血が凍りそうな事態が起こった。
「お嬢ちゃん、あんまりママを心配させちゃだめだよ。まぁクリスマスだしね、彼氏とハメを外したいのも
分かるけど、ほどほどにしないといけないなぁ。おじさんにも高校生の娘がいるから、分かるんだよね」

人の良さそうな運転手が、元2-Cのクラスメートなら絶対しない、大河の逆鱗に触れる3ポイントシュートを
鮮やかに決めたのだ。
「大河、ちょっと待っ…」
竜児はマイナス273℃まで肝を冷やしながら、なんとしても大河の次のアクションを抑えるつもりだった。
時速60km以上で疾走中のタクシーの中では、ビンタ☆や掌底はもちろん、どんな罵声も運転手を驚かせて、
大惨事を招き兼ねない。せっかく会えたばかりなのに、2人揃って天国へいらっしゃい、は、勘弁願いたいと
心の中で手を合わせつつ、口を塞ぐか、身体を張る準備。

しかし、大河は思わぬ反応を見せた。
「やだ、運転手さん。私、子供っぽく見られちゃうけど、20才過ぎてるんですよ。もう立派な社会人なんです」
敬語!?
「え、そ、そ、そうなのかい?」
運転手が振り返って、大河の顔をまじまじと見そうになるのを、竜児は慌てて「前みて、前!」と制する。
「ほんと、ママの方が子離れできてなくて、困ってるんですよね」
「そ、そりゃ失礼しちゃったなー」
「あ、運転手さんも気をつけた方がいいですよ、娘さんにあんまり口うるさく言うと、嫌われちゃいますよー」
大河は怒りの素振りもみせず、どもりもせず、にこやかな笑顔で運転手と他愛も無い会話を続けている。
その横顔を呆然と見ながら、竜児はおもわずつぶやいた。

「大河、お前、変わっ…」
たよな…と言いかけて、竜児は言葉を呑む。その言葉を口にすると、離れていた長い時を客観的に認めて、
大河に伝えてしまうような気がして、イヤだったのだ。
「なによ!?」
「…いいよな…」
「へっ?」
「だから、お前、かわいいよな。やっぱり…」

振り返った大河の顔は、瞬時に首から額にかけて、真っ赤に染め上げられていく。
「へっ? んなななな、何言ってんのよ、朝っぱらから、アアアアンタは、この変態…」
「「犬!」だろ」
「なっ!」
「ハハハッ、若い人はいいねー。こっちまでドキドキとしちゃわーな…」


422 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2009/12/25(金) 06:51:55 ID:lxc1HzoC

やがてタクシーはバイパスから高速道路のインターチェンジに入り、本線に合流するループに差し掛かる。
軽いGがかかった時、2人の手がそっと触れた。ドキッとして、2人同時に手を放す。
昇り始めた朝日の光の下で見つめ合い、互いにそっと頬を赤らめる。

大河は、着ぐるみの赤手袋を外した竜児の小指を、その小さな手で握った。
昨夜はあんなに想いをぶつけ合い、何度も愛し合ったのに、ずいぶんと控えめな接触だとも思うが、
明るいところで顔を見ると、気恥ずかしさが先に立つ気持ちが、竜児にも良く分かる。
まるで高校生に戻ったように、頬を赤らめながら、竜児はギュッと大河の手を握りなおすのだった。

「大河。お前、本当によく頑張ってきたよな… それから有難う」
目が覚めたら真っ先に言おうと思ってたことを、竜児はようやく大河に伝えることができた。

「あ、ありがとうって、なんで? 私、竜児につらい思いをさせたのに…」
今度は運転手に聞かれないよう、俯きながら、小さな声で大河がつぶやく。
「守ってくれてたんだろ。俺達を」
そう言いながら、竜児は握る手に力を込めた。

「……う…ん。ありがと。でも最近はね、このままじゃダメかなとも思っていたのよ。いくらママが稼げるって
いっても、自由に動けないと限界あるしね…」
「そもそも肩代わりにしようなんて、普通は思うわねぇけどな…」
「まぁね。ママもアタシも意地っ張りだし、なまじ稼げるもんだから、やったらぁ!って思うのよ」
「そこんとこの金銭感覚はやっぱりついていけねぇな」
「それに返すのは目的じゃなくて、手段だし。やっぱりさ、他人じゃないのよね、あいつ…」

大河に幸せなクリスマスの記憶を刻んだ、家族の原型。3人で過ごした当初はきっと楽しい時もあったに
違いない。その父親に酷い目に合わされて、大河はどんな思いでいるのだろう。

「ねぇ竜児、まさかみんなでお金出すなんて話、してるんじゃないでしょうね?」
「それは無い。社会人1年目でどうにかするって額じゃないしな。まぁ1人を除いては、な」
「ばかちー、ね。"亜美ちゃんのヌードは3憶円よ”なんて言ってるかと思ったけど」
「なんでお前分かっ…」
「言ったのね。冗談のつもりだったんだけど、あのバカ…」
口では悪態をつきながら、大河の目は慈しみに満ちていた。

「ねぇ竜児… 何かいい方法、あるかな?」
「北村が言ってた。相手のルールに合わせる必要はない、って。俺もそう思う。そもそもまともな話じゃ
ないんだから、普通に返すとかじゃなく、根っこから変えていく方がいいと思っている」
「根っこからって?」
「そこは俺もまだ思いついていない。でもみんなでいろんなピースを持ち寄って考えれば、今までと
違う方法が見つけられると思う」
「うん… そうなるといいね…… ねぇ、竜児、ちょっと肩借りていい? なんか眠くなってきちゃった」
大河は小さなあくびを1つ。「はわわわわ」と言いながら、小さな手のひらで口を押さえている。
その様子がまた、可愛い。

「眠れなかったのか?」
「4時ぐらいかな? 早くに目が覚めて、アンタの顔見てたら、眠れなくなっちゃった…」
「そ、そうだったのか? よくこんな顔眺めてて退屈しなかったな…」
「退屈なんかするわけない、だって久しぶ… いや、何でもない…」
「…ああ、いいぞ。まだしばらくかかるんだろ。ゆっくり眠れよ」
「う…ん… ありがと」

朝の穏やかな光に直接照らされても、眠気には勝てないらしい。色素の薄い、長い睫毛が金色に輝きながら、
ゆっくりと合わさると同時に、大河がゆっくりと竜児の方に傾いてくる。

「大河はさ、隠れてなんている必要はない。堂々と光の中を歩めばいい。きっとそうなるから…」
「りゅう…じ… そのセリフ… クサ過ぎ……」
そう呟くと、大河はすぅーっと柔らかな寝息を立て始めた。

* * * * *

423 : ◆VW.RtTKf1E :2009/12/25(金) 06:58:55 ID:lxc1HzoC

1レス目にトリつけるの忘れてしまいましたが、今回はここまでです。
またやたら長くなってしまいました。

前回の投下時にはたくさんレスを頂いて、本当に有難うございました。
心底、嬉しかったです。
間隔が開いてしまったのは、大河が帰ってきて、気が抜けたわけではありません。
年末年始にもう少し話を進められるといいな、と思っております。

424 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/25(金) 08:41:12 ID:pQNcfcT8
トリ無くてもIDで抽出出来るから大丈夫

425 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/25(金) 08:44:30 ID:uwwXDW91
心底嬉しい

訳:べ、別にレスなんていらないんだからね!


GJです

426 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/25(金) 12:20:57 ID:SWMtS3nX
逆だw

427 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/25(金) 15:21:36 ID:WBATbBQp
め 迷惑ばかり かけたけど
り 理不尽なこと 言ったけど
く 苦しい日々も 乗り越えて
り 竜児が傍に いてくれる

428 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/25(金) 18:05:27 ID:N6oqCQ3u
>>423
待ってたよー!!!
問題は山積みだけど、ラブラブな二人が嬉しい
車内での初々しい手繋ぎに萌えたw
ところどころ、空白の期間を感じさせる描写が切ないね
GJでした!

429 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/26(土) 02:20:19 ID:5wHwZFwR
>>423
なんつーんだろう、うまく言えないけど、
慣れてないはずなのに当たり前のような大人の会話にドキドキしたよ!
年末年始で筆が進むよう応援してます!

430 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2009/12/26(土) 03:40:32 ID:/NHIFwix
お題 「迷惑」「事態」「人差し指」



「おっはよう高須くん!」
「お……おはよう櫛枝」
「あれ?大河は?」
「おう、大河なら昨日結局課題が終らなかったらしくてさ、朝一で仕上げて提出するって先に……メールとか行ってねえか?」
「うんにゃ、何にも」
「あいつ、連絡するの忘れやがったな……」

 完全に想定外の事態だった。
 いつもならば、実乃梨が居る時には必ず大河か北村が傍に居て……
 それが唐突に二人きりである。嬉しくないわけではないが、正直どんな顔をすればいいかわからない。
 笑えばいい……というわけにはいかないだろう。意味も無くニヤニヤしていたら、ただの変な奴である。
 結局の所、竜児は実乃梨をまともに見る事も出来ず、その一歩前を歩く。


431 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2009/12/26(土) 03:42:27 ID:/NHIFwix
「だけど、あの大河がよくそんなに早起きできたねえ?」
 そんな竜児の心中を知ってか知らずか、後から話しかける実乃梨の口調はいつも通りで。まあ知らないのだろうけど。
「いや、まあ……なんとかな」
「あ、ひょっとして高須くん、大河起こさせられた?」
「お、おう」
「いつもいつも、大河が迷惑をかけてすまないねえ」
「いや、別に迷惑とかじゃ……」
「本当に?」
「……おう」
「本当の本当に?」
「……まあ、ちょっとは……迷惑なことも、あるけど……」
「正直でよろしい。親友の私が言うのも何だけど、大河はワガママで乱暴で甘えん坊だからねえ。甘えん坊将軍!ちゃちゃちゃ〜、ちゃ・ちゃ・ちゃ・ちゃ〜」
「いやでも、大河が居てくれてよかったってこともあるからさ」
「ほほう、どんな?」
「えっと、お一人様数量限定の特売品が二人分買えるし、今日だって早起きした分時間があったから水周りの掃除ができたし、それに……」
「それに?」
 『それに、こうやって櫛枝と話すことができた』……と、言えるなら苦労はないのだけれど。
「その……お袋が大河のことをえらく気に入ってるしさ」
「へー、そうなんだ……ねえ高須くん、一つ聞いていいかな?」
「おう?」
「高須くんはさ……大河のことをどう思ってるのかな?」
「どうって聞かれてもな……」
「普通は……っていうか、一年生の時に大河に近づいて来た男の子達はさ、大体が大河の本性を知ると離れて行ったんだよ。そうでなくても、少なくとも積極的に近づこうとはしなくなった。
 だけど高須くんは違うよね。どれだけ大河に振り回されても、変わらずに大河の傍に居る」
「いや、それは大河が……」
「高須くんが本気で拒絶すれば、大河は高須くんから離れるよ。大河は……そういう子だから」
 確かにそうだろう。それ以前に、一度は『解放』されたのを、竜児が自分で大河の傍に戻ったわけだが。
「……なんか、放っとけねえんだよな。櫛枝なら知ってるかもしれねえけど、あいつはドジだし、実はけっこう泣くし……」
「それは同情?それとも哀れみ?」
「そんなんじゃねえよ。あえて言うなら……共感、かな……いや、ちょっと違うか?」
「共感?」
「俺も大河も、色々とままならないことがあってさ……きっかけは偶然……みたいなものだったけど、お互いのそういう所を知っちまって……
 そうしたら、そんな相手がどこかで転んでるかもしれねえとか、一人で泣いてるかもしれねえとか思ったら、放っておけねえじゃねえか」
「ふうん……」
「あとはそうだな、何と言うか……やっぱり大河は強くて……腕っ節じゃなくて、心がさ……そんなあいつに並び立てるようにっていうか……その……上手く説明できねえけど……」
 ぱあん!と、突然実乃梨が竜児の背中を叩く。そして竜児を追い抜くとくるりと振り返り、
「わかった!」
 そう言ってにっこりと笑う。
「な、何が?」
「高須くんがいい奴だってことが、だよ」
「お、おう、ありがとな」
「そうだ、そんな高須くんにイイ事を教えてあげよう」
「おう、何だ?」
「大河の弱点は……ズバリ耳だ! 不意打ちでふ〜っと息吹きかけてやると、『ひゃん!』とか言ってか〜わいいんだぜ〜!」
「……はあ?」
「ちなみに私の弱点は背中だ! 部活で着替えてる時なんかに、人差し指でつつ〜っとやられちゃったりするんだよね〜」
「お、おうっ……」
 思わず想像してしまって、顔を赤らめる竜児。
「く、櫛枝……おまえは俺に何を言いたいんだよ……?」
「大河をよろしくってことさ!」
 実乃梨はニカっと白い歯を見せてサムズアップ。
「さあ、学校で大河が待っている!急ぐぜ走るぜ高須くん!」
「おい!? ちょ、ちょっと待てよ!」

432 : ◆VW.RtTKf1E :2009/12/26(土) 08:19:20 ID:xvB2OI6e
>>424-426
有難うございます。

>>425
フォロー頂いて、すいません。確かに投下直後にこう言ったら、ただのレスくれくれ君ですね。
気をつけます。

>>428-429
2人の雰囲気を読み取ってもらえて、嬉しいです。
そろそろ問題の方も解決していかねば、です。

>>431
みのりん、やっぱいい奴。
でもこうして少しずつ、竜児に惹かれていっちゃうんだろうなぁ
人差し指&ひゃん! に笑ろた




433 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/26(土) 22:52:04 ID:6c9PVAVI
>>431

三題噺さん、いつも堪能させてもらってます。
今回も2828させてもらいました。

434 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 03:03:40 ID:owG5CgKt
大河を増殖させて10人くらいに増やすわ
全部竜児に面倒みさせる

435 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 05:54:22 ID:hqdzS3in
>>434
今脳内ではるかさんとリアル手のりタイガーが戦ってる。
律っちゃんと竜ちゃんがいないと収まりません。

436 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 15:10:09 ID:NeB7VG0m
今頃竜児は火の玉となって大掃除中か

437 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 17:44:53 ID:IhHJcx9E
>>436
竜児! もういい加減にしなさいよ!
ねぇ、早くご飯、ご飯ーーーー

438 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/28(月) 18:07:11 ID:vHe4UEE0
>>437
脳内再生されたわwwww

439 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/29(火) 02:42:25 ID:tJoEWkAn
大河「もう今年も終わりよ竜児」

440 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2009/12/29(火) 04:34:32 ID:9hD7+xzH
お題 「牛乳」「亜美」「パンフレット」



「亜美、ちょっといいか?」
 お昼の放送を終えて教室に戻って来た北村が、亜美に声をかける。
「なによ裕作」
「いや、さっき先生にこいつを渡すように頼まれてな」
 そう言って北村が差し出したのは薄い冊子。
「……ん?」
 パックの牛乳を啜りながら、なんとはなしにそれを眺めていた竜児の脳裏にふと浮かぶものが。
「なあ北村、それってひょっとして来年度の学校案内のパンフレットか?」
「おお高須、よくわかったな」
「いや、偶然話してるのを聞いたことがあってさ。だけど川嶋、あれって断わったんじゃなかったのか?」
「ちょっとした心境の変化よ。事務所通して正式な依頼もあったしね」
「なになに、亜美ちゃんこのパンフに載ってるの?」「うちの学校も思いきったことするわねー」
 傍に居た木原と香椎がきゃいきゃいと騒ぐ。
「レアアイテムだよねそれってレアアイテムだよね」「俺、先生に頼んで十部ぐらい貰っちゃおうかな〜」「何?あーみんのパンツですとな?」
 さらには話が聞こえたのか、能登と春田、それに実乃梨が周りに寄ってくる。
「実乃梨ちゃん、パンツじゃないから。パンフ。それに載ってるっていっても制服写真のモデルだけだし」
 言いながら亜美はパラパラとパンフをめくり、学校行事を紹介しているページでふと手を止める。
「あれ?これってひょっとして高須君とタイガー?」
「何!?」
 竜児が覗きこむと、亜美が指差すのは体育祭の、創作ダンスの写真の端っこ。
 確かにそこでは身長差のある二人が……抱き合っていて。
「小さいが、確かに高須だな」「この後頭部は大河だね、間違いない」
「だけど、なんで抱き合ってるわけ?」「うふふ、気分が盛り上がっちゃったとか?」
「高須、いつの間にこんなことを……」「高っちゃんい〜な〜」
「ちょ、ちょっと待て!これはコケかけた大河を受け止めただけだぞ!見てなかったのか?
 というか、この後『あんたのアシストが下手なせいだ』って殴られたんだぞ俺は!」
 慌てて弁明する竜児。だが、
「いや、その時は高須の方は見てなかったな、たしか」「実乃梨ちゃん、タイガーに何か聞いてない?」「いや〜、聞いてないねえ〜」
「もしそうだとしても、ちょうど抱き合ってる瞬間に写真撮られるのって……」「ちょっと運命的かもね?」
「今更照れなくてもいいじゃん。もうタイガーとは正式に恋人なんっしょ?」「高っちゃんい〜な〜」
 ニヤニヤと、竜児に向けられる生暖かい視線×7。
「た、大河……今すぐ戻ってきて助けてくれ……」


441 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/29(火) 16:22:22 ID:qkMCjboW
GJだ!

「りゅ、竜児……今すぐ来て大掃除を手伝ってくれ!」

442 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/29(火) 17:02:21 ID:+rjzf896
>>441
「馬鹿野郎、なんで俺がいちいち人の世話を焼かなきゃいけねぇんだ。だいたい俺が幾ら掃除が
好きだからって……ちょっと待て……おい、大河!何やってんだ!そうじゃねぇだろ!机の後ろ
掃除する前に引き出し戻してどうるんだよ!重くて動かせなくなるだろ。お前の部屋の掃除手
伝ってるんだからまじめにやれよ!……おう、お待たせ。えーと、なんだっけ。そうだ、俺が幾ら
掃除好きだからって他人の大掃除まで手伝うほど暇じゃねぇんだよ!じゃあなっ」


443 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/29(火) 23:35:44 ID:WnIo1uRJ
「ふぅ、今年の大掃除も実に有意義だったな」
「あんた、一体何時間掃除してたのよ……」
「朝から夕方までだから……って大河も手伝えよな、もう終わっちまったけど」
「いいのよ、私は手伝わなくても」
「なんでだよ?」
「これから掃除するから」
「何言ってんだよ、もうどこも綺麗だし、掃除は夜遅くにするもんじゃ
ねぇし……いってぇ、急に押し倒したりすんなよ」
「ほら、竜児のここ……まだ汚れてるじゃない。キレイにして、あ・げ・る」
「いや、もう風呂入ったし汚れてなんか……ってオイ、ちょ、大河さん!? んむぅ―――――っ」

ギシギシアンアン

皆さん、少し早いですが良いお年を。

444 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/30(水) 00:18:46 ID:6tjYGoyX
>>440
2828した。年の瀬まで乙です!
皆、楽しそうだ!

>>443
ギシアン納めktkr
>>442からの流れで、来ることを期待していたよw


445 : ◆v2bv8PLLqU :2009/12/30(水) 00:59:44 ID:ih/2ML7u
 物事にはタイミングというものがある。一つでもずれると結果は全く別物になるという。
「次のニュースです。政府は来年度からの導入を予定している子供手当てについて……」
雨音が奏でる中、テレビの大きめな喋り声を手持ち無沙汰で聞き流している子虎。
 だがそれは、次の瞬間、
「……じ、ねぇ竜児ってば!」
「おう、って胡椒を余計に出しちまった……」
「あんた大丈夫、あーあどうすんのよ?」
「すまん、考え事してたもんでな」
「ふ〜ん、聞いてあげてもいいわよ。食材を駄目にした罰としてね」
「分かったって。2年生の文化祭の時のことだ。お前の親父がお金を振り込まなくていろいろ困った」
「あぁ、あの話……」
「俺はお前に親父の気持ちを理解しろって態度で接した」
 子虎は眉を動かし怪訝そうな顔で覗き込む。
「さっきの子供手当てのニュース聞いてたんだが、仮にその時施行されてたら、
お前の気持ちには気付けなかっただろうな」
「……へぇ、音は聞こえてるのね」
「お、落ち着け! お金の心配をしなくて済むから親父の狙いも分からなかったし、
そうすれば喧嘩してたとはいえ櫛枝との仲も違うものになってたかもな」
「そうね、悪い意味で」
 緊張感が走る。
「あんたが福男レースに参加して無ければみのりんの印象には残らないだろうし、逆に関係悪化してたと思う。少なくてもあんたを見直すことは無かったでしょうね」
「そりゃ言い過ぎだろ大河」
「あら、へたれなあんたのことだからきっかけ失って、『はいさようなら』になってたわよ」
 それに今の関係だって……と言いかけて口をつむぐ。
「はいはい。そう考えると、子供手当てが無かったことには感謝しなきゃいけないかもな」
「もう、すぐ考え込む。そのおかげで今こうしてここにいるんだから、私に感謝しなさい」
「おいおい」
 穏やかな風が窓から流れ、竜虎とも表情が綻んだ。
「それより夕食はまだかしら?」
「コショウを振り掛けすぎたからまだ時間かかるぞ」
「新たな味に出会えると思えばいいじゃない。あんたが作ったこと自体がご馳走なんだから」
「お、おう」
「ただし不味かったら、明朝ごみ収集場にいることになるわよ♪」
「へいへい」
〜物事にはタイミングというものがある。一つでもずれると結果は全く別物になるという。
良い方向にも悪い方向にも転がるが、それらもひっくるめて人生だ。〜
 いつの間にか雲一つ無くなり、カーテンを揺らす風がすごく暖かい。
 そんな夕暮れ時のひとコマ。

続かない

446 : ◆v2bv8PLLqU :2009/12/30(水) 01:01:36 ID:ih/2ML7u
以上です。

※実際の某与党政策とは何ら関係ありません。

447 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/30(水) 05:54:03 ID:kKwESR3C
『おめでタイガー』

「まったく、どいつもこいつも……」
「おう大河、どうした?」
「年賀状!pixivとか見てみなさいよ、来年が寅年で人の渾名が『手乗りタイガー』だからって何枚も何枚も……!」
「まあいいじゃねえか、それだけ支持されてるってことなんだから」
「支持っていうより安直なだけじゃない。自分がネタのくっだらない駄洒落を連発されて、恥ずかしいったらありゃしないわ」
「……まあ実害があるわけじゃないし、気にするなって」
「……りゅ〜う〜じ〜?」
「お、おう?」
「今、妙な間があったわよねえ……まさか、あんたまで私の年賀状を……?」
「い、いや、俺のは別に寅年だからとかじゃねえぞ。単に俺の婚約者を紹介します的な……」
「余計恥ずかしいんじゃボケぇぇぇっっっ!」

《忙しいのもあって、タグ検索のチェック完了が物凄い勢いで遠のくorz》

448 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/30(水) 06:50:26 ID:CGpis8K1
>>445
はっはっは。ゴミ箱に捨てられるのは料理人であって、料理は捨てないんだ(w

449 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/30(水) 08:05:45 ID:CGpis8K1
>>447
2年後は『私の婚約者を紹介します』的なバカップル凶眼年賀状があちこちに配布されることに…

450 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/30(水) 11:41:29 ID:rkg1lzwJ
>>449
噴いた!

2年+2日後の元旦。とある神社にて…

「みのりん、あけおめ! 久しぶりだね。今年もよろしく!」
「ようよう、大河、あけましておめでとうございますです… ハッ、あわわわ」
「何だよ、櫛枝、人の顔見るなり、泡食って」
「いやー、新年早々、年賀状で強烈な打撃を喰らってさぁ」
「それと俺の顔と何の関係があるんだよ」
「ま、高須君も2年前の寅年でやったからね。おあいこだね」
「寅年? 年賀状… おい、大河、吹けない口笛吹いてんじゃねぇよ… あ、待て、こら、逃げんな…」
「あーあ、亜美ちゃん、なんか悪い初夢見そう…」
「川嶋まで! おい、大河、どんな写真使ったんだよっ…」

451 :こんなパラレルワールドは嫌だ:2009/12/30(水) 15:13:27 ID:lfc/k77z
※まとめには入れないでください。

「おい、まさかこれって」
「アホロンゲじゃないでしょうね……」

遡ること数分前。
「警察によりますとこの高校生は29日午前に、
「DSゲームの改造コードの入れ方をどなたかご存知ですか?俺にはさっぱり…」と、
ゲームを無料で取り込むためのコードを問い合わせました。
この書き込みに他のユーザーから「R4(注:マジコン)とか使ってるの?」などと、
問題点が指摘されています。
調べに対し、この高校生は「arl」などと意味の分からない記述をしているということです」


「っていう初夢を見たんだよ〜」と春田。
「お前、結局何が言いたいんだ」
「高っちゃ〜ん、それ分かったら苦労しないよぉ」

452 :時期を外した!:2009/12/30(水) 19:07:46 ID:4ajZrqrZ
インスピレーションが一週間前に閃いてくれれば!
少なくとも時期は外さずにすんだものを…と臍をかみながら投下〜。

453 :都市伝説?:2009/12/30(水) 19:09:34 ID:4ajZrqrZ
<趣旨>だってクリスマス過ぎてから思いついたから仕方ない


【幸せのホーリー手乗りタイガー】


 大橋高校に様々な逸話・伝説を残した『幸福の手乗りタイガー』には、クリスマスに関するものもある。
 曰く、独りさみしいクリスマスを過ごす者が、寅の方角に設けた祭壇にトンカツ(黒豚ならなお良し)を捧げ、「ホーリー・ナイト」の歌曲を流すと、心癒すミニスカサンタが降臨されるという。
 信じるか否かは個人の自由。
 しかしダメで元々。だまされたと思ってやってみてはいかが?

  ***

「だまされた―――――!!」

 恋ヶ窪ゆり(31歳独神・高校教師)、死亡。
 ちーん。

  ***

「…なんで実乃梨ちゃんが出てくるのよ」
「というか、あーみんがそんなロンリー・クリスマスを送っていたとは思いもよらなかったですよ真剣に?」

 手乗りタイガーのミラクルパワーによって召喚(?)されたミニスカサンタは、珍しくやや顔を曇らせて、ベッドに背を預けて床で膝を抱え込む友人の顔を覗き込んだ。
 現役人気女子高生モデル・川嶋亜美。
 普段から仕事で学校を休むことも多く、時には海外ロケなんてこともある彼女は、きっとクリスマスは超多忙!超過密スケジュール!
 だから皆、そんな彼女を気遣い敢えてクリスマスのお誘いをかけなかったのだけど。
 そして彼女は彼女で、友だちとクリスマスを過ごしたいがために事前にやり繰りして、がんばってがんばって、どうにか時間を作って。
『え〜〜?クリスマスぅ?ごっめーん、どうしても外せない仕事があってぇ、というかもう目白押し。人気商売はどうしたってそうなるのよねぇ〜〜☆で・も・ね?ちょっとだけ、ちょっとだけならなんとかなるかも、よ?』
 な〜んて、事前に台詞もバッチリ仕込んでさあ来い誘ってくるがよい愚民共!オホホホホホホホオ〜〜〜と内心、心待ちしていたのに。
 みんな「ちょっとだけ」以降の台詞を言う前に「あ、そうだよねやっぱ。ごめんね〜〜」とあっさり引き下がってしまわれて。

「うむうむ。プライドが邪魔して今更自分からは誘えなかったというわけなのね。…これも若さ故の過ちというものかのぉ」
「しみじみ頷かないでよ。っていうかアンタ、その…ミニスカサンタはもうなんていうか露出が多い割りにいやらしさは感じさせない健康的な感じがそれはそれでとっても・すっごく・イイんだけど…。
 なんで、ハゲヅラ?」
「ハゲヅラは乙女のたしなみだよ?」
「オトメ愚弄すんな!地球人類にそんな風習はねぇ!!」
「わたくし全てを超越する女、櫛枝みのりん!」
「女子高校生としてのたしなみを越えなくていいから!アンタ素材はいいんだからフツーにしてるだけで十分いけてるんだし!ああもう、自分の美貌を大事にしない女ってなんかムカツク!!せっかく可愛いのに!」
「あははー、あーみんみたいな美少女に褒められるなんて、オラァ幸せだぁ!」
 ケラケラ笑いながら、一応は亜美の意向に応えてハゲヅラはキャストオフする実乃梨である。
「まーいいさ。結果として…今夜は私とあーみん、あぶれ者同士でクリスマスってーワケだね」
「あぶれ者…なんだろう、今、サクっと心に何かが刺さったような気がするわ…」
「気にしないキニシニャーイ。それに結果としては、私にとってはウハウハだよこの状況?」

 声までニヤけている実乃梨に何か言い返してやろうと口を開け、亜美は――そっと口を閉ざした。
 だっていつも元気で笑みを絶やさぬ友人が、さっきまでの自分と同じくらい、沈んだ顔をしていたから。

454 :都市伝説?:2009/12/30(水) 19:12:09 ID:4ajZrqrZ

「実を言うとさー。私もあーみんと似たような事情なんだわ、これが。
 私、いっつもバイトばっかりだし、去年は…その、高須くんの…アレもあったけど、正月休み無しで勤労してたから。おまけに今年は受験生だし、周りから気ぃつかわれちゃって。
 でもね、私としては…あーみんとさ。心置きなく話せる友だちとさ。一緒に、のんびりまったり過ごせればそれでいいや、って。
 みんなと思いっきりはしゃいで騒いで、ってのも大好きなんだけど、バイトと受験勉強で疲れがたまってるのは確かだし、正直、いい骨休みではあるかなってーねー」
「ちょっとアンタ…ぱんつ見えてる」

 自分の右側に立膝を抱えて座り込んできた実乃梨は、なにせミニスカサンタな格好なものだから大胆にサービスしまくっている。もっとも、二人きりだし元からそのあたりについては淡白な実乃梨はまるで気にしてはいない。
 だから亜美もそれ以上は何も言わなかったけど…同性だしそんなこと気にすることはないけれど…太腿の白さに、妙にドキッとしてしまって。
 いつもの異常なハイテンションは、半ばは作られたものだと知っている亜美だから、今のやや沈んだ表情の実乃梨が素顔を晒しているのだとわかる。

「…心置きなく話せる友だちならタイガーでもいいじゃん。むしろ喜んで迎えてくれると思うよ?」
「高須くんもね」

 たった一言の切り返しで、亜美は何も言えなくなってしまう。

「はは。ごめん。あーみんも…まだ吹っ切れてない?」
「ちょ、なによそれ?」
「まあ…吹っ切ってはいるよ。私は。少なくとも、いつもは」
「…………」
「でもね。まだ…まだちょっと、ダメなとこ、あるんだよね。特にクリスマスはまだ。
 やっぱりね、どうしてもね、ちょっと。ほんと…ちょっとだけ。
 私の選択は間違ってなかったって、もうそれは絶対に揺るがない。後悔なんてしてない。
 でもね、でもさぁ…ちょっとだけ、ホントちょっとだけなんだよ…ちょっとだけ」
「はあ。なっさけねー。思いっきりひきずってるじゃない。何がちょっとだけよ」
「あーみんだって引きずってなけりゃー、独りで部屋にこもっちゃいねっぺ〜?」
「アタシは遠慮してやってるだけよ。どーせあのバカップル、今夜は二人で普段の三割増くらいでイチャついてるに決まってるんだから。そんな所に行けるかってーか近寄りたくもねー」
「あ〜。そりゃ確かにな〜。お邪魔虫にはなりたかねーしなー」

 …………。
 …………。

「私はさ。傷の舐めあいなんて、したくない。ああ私たちってなんてカワイソウなのぉ〜なんて自己憐憫の涙に陶酔するシュミなんて、持ち合わせてない。
 それだけは、言っとくから」
「うん。ごめんなあーみん。グチきいてもらっちゃって」
「私たちはさ。みんな、落ち着くべきところに落ち着いたんだと思う。パズルのピースのように、自分の、自分だけの、自分がいるべき所に収まったんだって」
「そのとおりだよ。色々あったけど、でも今は本当に、これで良かったって思う」
「自分のやりたいことを、自分で見つけて、自分で決めた。当然のことを、やるべきことをやった。それだけのことだよ」
「そうだね。そうだよね」
「だから……いいじゃんよ」
「うん…」

 亜美は右手で彼女の左手に触れる。
 実乃梨はそっと、握り返してきた。

455 :都市伝説?:2009/12/30(水) 19:13:36 ID:4ajZrqrZ
「でもさ…簡単には割り切れないから…簡単に忘れられる気持ちじゃなかったから…大事だったから…宝物だったから…。
 理屈じゃないんだよね、こういうの。
 痛いものは、どうしても、痛くてさぁ…ダメに…なっちゃうんだよねぇ…」
「よわっちい」
「うん…弱虫だなぁ…わたし…」
「――ったく」

 いつしか自分に寄りかかり、肩に顔を寄せている実乃梨から顔を背け、亜美は近くにあったティッシュを引き寄せた。

「あーみんは強いね…私なんかより、ずっと強いや…」
「強くなんかない。私だってアンタが思ってるほど、強くなんかないよ。
 ズルいのよアンタは。
 ……先に泣かれちゃったら、もう、受け止めてやんなきゃいけないじゃない」
「はは…ゴメン…ゴメンな、あーみん…」
「いいから…ほら」

 ティッシュを2・3枚とり、それで実乃梨の顔を濡らしているものを亜美は拭き取って。
 ――ヌルッ。

「?……赤…って血ぃぃぃ!?」
「ふ…ふひゅっ…」

 実乃梨の目から零れ出ているのは、涙。
 でも鼻からは真っ赤な「心の汗」がたらりと一筋。

「いやもう…なんていうかですね。こうさっきからのやりとりにもう…あーみんへのラブ?パトス?が滾ってですね。
 もう私の百合棒が辛抱タマランのですよ…!」
「ちょ…そこはたまって!たまってよお!?」
「無理!も、もはや拙者、あーみんが可愛すぎて…いただき、MOS!」

 ほ―――――――――、や―――――――――――――――!!!?

 ………そして聖夜の空に、一人の乙女の悲鳴が遠く遠く、響き渡っていった。

  ***

「はっはっはっはっは!メリークリスマスだな、木原!」
「ま、まるお!?ウソ、手乗りタイガーの奇跡ってホントに…って―――!?」
「はっはっはっはっは!どうした木原?いきなり真っ赤な顔で回れ右なんかしたりして?」
「ど、どうしたじゃないでしょ!?ま、まるお、なんで裸なのぉ!?」
「それは俺がサンタクロースだからだ!」
「どのへんがっ!?」
「ほら、このサンタ帽とか」
「帽子だけかいっ!?いやその、まるおマッチョで逞しいなぁとは思うんだけど、その、イキナリ積極的すぎっていうか…過程をすっ飛ばしすぎっていうか…」
「さ、納得できたところで早速、木原を癒してあげよう!英語でいうところのヒーリングだな!」

 かぽーん・かぽーん。

「ひぃぃぃぃぃ!?なんかその腋の下鳴らす音いやあああ!?ていうか、ちょ、ちょっと待って…」
「おお。そうだな」
「ほっ。と、止まった…」
「おおい、能登〜。お前も早くこいよ〜」
「よぉ木原〜」
「えー?能登ぉ?なんでアンタまで……ってなんでアンタまでマッパ――――!?」
「うむ!俺たちはプリティサンタだからな!」
「裸だよー、俺たち裸だよ〜〜」
「ぎぃやああああああああああああああああああ!?
 へ、変態!ヌーディスト!レイプマ〜〜ン!
 誰か助けて――――――――――!!
 お〜〜〜か〜〜〜〜さ〜〜〜〜〜〜れ〜〜〜〜〜〜〜〜る〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!?」

456 :都市伝説?:2009/12/30(水) 19:15:20 ID:4ajZrqrZ
 ―――はっ。

「麻耶?しっかりして麻耶!?」
「…ななこ…?」

 目を開けると、照明を落とした自室の天井。
 そして傍らには、ベッドに横になっている自分を心配そうに覗き込む友人がいてくれた。
 何故かミニスカサンタの姿で。

 ――うわ〜、奈々子ってこういう格好だと…スタイルでは亜美ちゃんに一歩譲るとしても、ムネは亜美ちゃんよりおっきいもんなぁ。
 色々とぱっつんぱっつんだわ〜〜。

「奈々子。何気に失礼なこと考えてない?」
「え?そんなことナイデスジョ?」

 ボーカロイドみたいな口調で否定する木原さんです。
 そんな友人の胡散臭い態度はスルーして、奈々子は寅の方角に捧げられたトンカツを見て、悲しげに頭を振った。

「そっか…麻耶…さみしかったのね。
 あの天然鈍感な北村君には相手にされるどころか気づいてももらえない日々が続いて。
 一方でホントは仲直りしたいのに、いまだに顔を会わせる度につい憎まれ口を叩いちゃう能登君のことがなんだかちょっと気になって…。
 悩みが多くて、でもどうしていいかわからなくて、何だか変な悪夢まで。…ぬくもりが欲しかったのね、麻耶…」
「いやあの、奈々子?…ひゃう!?」

 さり気なく伸びてきた指につつつ、と顎の下を撫でられて、ちょっと艶っぽい声が出る。

「麻耶…私たち、友だちよね?」
「う、うん…」
「その寂しい心を暖めることは、私にはできないかもしれない…。
 でもせめて身体だけは、一時だけはその寂しさを忘れさせてあげることくらいはできるかもしれない…」
「え、いや、別にそこまで深刻には…って身体だけって、ええ?」
「大丈夫。怖がることなんて、なにもない。私を信じて、全部まかせて…」
「え、え、え、奈々子、え、ええええええ!?奈々子ってもしかしてソッチのヒト!?」
「失礼ね。そんなわけないでしょ」
「そ……そう、ですよネ?」
「でも友だちのためなら、私、ソッチに目覚めても…うん、今、目覚めるから…!」
「目覚めなくてもいいから―――――――――――――――!!!」

 ………そして聖夜に響く乙女の悲鳴がもう一人。

457 :都市伝説?:2009/12/30(水) 19:17:23 ID:4ajZrqrZ
  ***

「――会長!?」
「何度言ってもわからん奴だな北村。もう私は会長ではないぞ」
「すいません会…いえ、先輩」

 堂々と窓から不法侵入してきた想い人、狩野すみれ嬢を、北村祐作はごく自然に、鷹揚に招きいれた。
 普通ならアメリカ留学中の彼女がどうして、とか色々疑問が湧き上がってくるものだろうが、北村はさして驚きもしない。
 元からマイペースで、自覚はないが少しずれたところもある北村ならではだが、本人自身はそれに加えて、こう考えている。
 狩野すみれという人は、こういう人だと。
 一見無茶で、荒唐無稽なことでも、不思議とやり通した上に、その無茶がごく自然に当然になる人だと。
 だから、北村が一番初めに口にした疑問は、彼女の服装のことだった。

「それにしてもそんな薄着じゃ寒かったんじゃないですか?」
「はっ!こちとらこれくらいで縮こまっちまうようなヤワな鍛え方はしてねぇよ」

 そういうって相変わらず豪快に笑うすみれの姿は、一言で説明すればミニスカサンタ。
 より正確に言えば、上半身は何も身につけておらず、ミニスカートを吊ったサスペンダーで胸の先を辛うじて隠しているという、去年のパーティで北村が披露したヌーディサンタの女性版である。
 妹に較べれば慎ましいサイズだが、それでも十分に女性らしい胸の膨らみを惜しげもなく晒したその姿は、さすがの朴念仁たる北村であっても、完全に無心ではいられなかった。

「その、先輩。…ぶしつけですが、胸の先が痛くないですか?」
「直球だな北村。だが尤もな疑問か。…ホレ、ちゃんと二プレス貼ってるから」

 乙女の恥じらいとか慎みとかを隣の銀河系まですっ飛ばした奔放さで、わざわざ見せるすみれである。お姉さん、妹だけじゃなく貴女も十分、エロです。

「なるほど!納得です」
「…ちっ」

 しかし素直に納得しているバカが一名。半端ねぇ鈍感っぷりを今日も遺憾なく発揮しています。

「ところで、今夜はいったい何の用事で…?」
「ふぅ。…去年お前らが企画したクリスマスパーティ、大成功だったそうだな?」
「ええ。お蔭様で今年も開催することができました。今後、大橋高校の伝統行事になってくれれば嬉しいのですが」
「うむ、私もそう願う。よくやったな、北村。まずはそれを褒めておこう」
「あ、ありがとうございます会…先輩!」
「だがそれを誇らしく思う反面、口惜しいというかしてやられたというか…対抗心がメラメラ燃え上がってきてな。
 私が現役の時に、何故、こんなステキ企画を実現させることができなかったかと…。
 だから敢えて、去年のお前を模した格好までしてきたのだが」
「先輩…そんなことで張り合わないでください。全く妙な所で子供っぽいんだから」
「私はまだ19歳だ!子供だよ!」
「来年は成人式でしょう。しかし…わかりました。そういうことなら自分も…!」

 ばっ!と思い切り良く北村は服を脱ぎ捨てた。すみれが止めるヒマも無い。
 そして現れたその姿は…!

「ふふっ。実は自分もこれから今夜のパーティに乱入しようと目論んでおりました!」
「…え?」

 元祖ヌーディサンタ!降・臨!

458 :都市伝説?:2009/12/30(水) 19:18:30 ID:4ajZrqrZ
「フッフッフッ…わかりますよ先輩!引退したのだから後は次世代の者に任せねばと思いながらも、ついあれこれ口を出したくなるその気持ち!自分も現役を退いて、先輩の心情は理解しているつもりです!」
「え、あ、うん」
「いやあ、先輩も一緒に来てくれるとは、これは嬉しいサプライズです!正しく聖夜の奇跡、クリスマスプレゼントですね!
 ――さあ、これから一緒に幸太の奴を冷かしてやりましょう!!」
「あ、うん、それもありだけど…え、このままで行くのか!?」
「勿論です!鉄は熱いうちに打たねば意味がありません!俺は今、最高に燃えています!」
「いやあの、だからだな、私としてはクリスマスの夜にこんな露出過多な格好でやってきた意味というものを考えて欲しいというか…まあパーティに乱入というのもそれはそれで…」
「さー行きましょう!いざ討ち入り!」
「お…おう!そうだな、うむ、やはり勢いは大切だ!北村、お前も成長しているな!!」

 そして、露出過多な男女二人組はクリスマスの夜に出撃していったのでありました。

 ―――三時間後に逮捕。

  ***

「メリークリスマス竜児!…ってあれ?」

 軋む階段を気づかれないように慎重に登り、勢いよく高須家のドアを開けて飛び込んで。
 そこで大河は、当然そこにいる筈の人物の姿を見出せず、狭いアパート内を見回した。
 電気は点いており、鍵も開いているから竜児は当然いると思っていた。
 だが視界の中で動くのは、今まで眠っていたらしい篭の中の不細工インコだけ。
 几帳面でエコロジーな竜児が、電気や戸締りを忘れて外出したとは考えられなかった。
 やっちゃんこと泰子は今日は職場の忘年会兼クリスマスパーティにお呼ばれとのことで、久しぶりに午前様になりそうだ、という話は事前に耳にしている。
 だからこそ、今日のサプライズをおもいついたのだが。
 ミニスカサンタ姿の大河は、アパートの前で脱いだコートをいれた袋を置いて、上がり込んだ。
 一応、居間から続く泰子と竜児の部屋、狭い風呂場とトイレを見て回るが、やはり無人。

「竜児…りゅーじ?」

 呼びかけても、応えてくれる人はいない。
 ――やっちゃんが外出して、クリスマスを竜児が一人で過ごすことを聞いて、大河は「じゃあ今年はうちに来なさいよ!義父さんとママも、弟もあんたが来れば喜ぶから!」と口にしかけて、慌ててそれを飲み込んだ。
 竜児を我が家のクリスマスに招待する。
 それはそれで凄く魅力的な考えだった。去年はずっと高須家の半居候として毎日お呼ばれしていた自分にとって、逆におもてなしする側になるというのは凄く新鮮だし、竜児への良いお返しだとも思ったから。

459 :都市伝説?:2009/12/30(水) 19:20:35 ID:4ajZrqrZ
「竜児…竜児?…竜児どこ?」

 でも、より強く思ってしまったのだ。
 二人きりで。
 竜児と二人きりでクリスマスを過ごしたいと。
 去年、竜児が私にしてくれたみたいに、今年は私がサンタさんになって竜児を訪ねたい。
 そして今年の聖夜はずっと…最後までちゃんと、一緒に過ごしたいと。

「竜児…竜児…竜児…竜児…」

 どうしたんだろう。まさか…何か、何かあったのだろうか?
 いやだ。
 なんだかすごくいやだ。
 これじゃまるで、去年のようだ。
 こんな風に何度も竜児を呼んで、でも、竜児は行ってしまった後で。自分が送り出してしまって。
 取り返しがつかなくて。幸せな夢が終わって。

「りゅうじ…」

 その夜、何度その名を呼んでも…いつもなら応えてくれる竜児は、傍にいてくれた竜児は。
 いなくなって。

「りゅ…」

 どこにもいなくなってしまった。

「やだ…りゅうじ…」

 ごん、ごん。

「!」

 突然の響きに、息を呑む。
 反射的に音の方へ振り向いて。
 洗濯物を干す狭いベランダに、そいつは居た。
 大きな目玉。毛むくじゃらの身体。
 そして大きな頭には不釣合いな、でも並みのサイズはあるサンタ帽子。

 見間違えるわけがない、クマのサンタが窓ガラスの向うで、ゆっくり手を振っていた。

「あ…」

 ゆっくりと、サッシを開けてやると、クマはのそりと入ってきた。
 後ろ手できっちり戸を閉めるあたり、几帳面な性格が知れる。

「あ…あ…」

 うん?というように首をかしげるクマ。
 近づくと、やっぱりクマはどこか埃っぽい臭いがした。
 でもそれでいい。全然いい。こいつはこうでなくちゃ。

「あ…あは…あはは…」

 ついに堪えきれず、笑いが口から漏れてしまう。
 だってこんなの、耐えられない。耐えられるわけがない。

460 :都市伝説?:2009/12/30(水) 19:21:40 ID:4ajZrqrZ
「あはははははははははははははは!!来た!来た!来ちゃったよ――!!
 今年もサンタさんが来てくれたよ!
 もう相変わらずクマ!なんでクマなのよ!でもやっぱりクマがいい!全然いい!!」

 力いっぱい飛びついて抱きつくと、クマはがっしりと受け止めてくれた。
 私の全部、丸ごと受け止めてくれる手が。包み込んで、優しく頭を撫でてくれる手が。
 この広い世界で、ここにしかない。
 世界で最高の、たからもの。
 いつもなら階下の大家さんに気兼ねするのに、今夜は去年のように自分を抱えてくるくるとクマは回ってくれた。

「あははははは!あははははははははははは!」

 さっきまでの怖れの反動だろうか。笑い声は止まってくれない。
 自分でもテンションが上がりすぎて、怖いくらい。

「あはははは、あはははは、あはははははははははは…はは…」

 ぐにゃりと世界が歪んだ。
 クマが歪み、光が歪み、視界の端で歪んだ虹を作る。
 涙で視界が滲む。
 歪んだ世界で歪んだクマが、それでもありありと心配そうに自分を覗きこんでくる。
 その身体を、逃がさないようにきっちり捕まえて。

「なにやっとんじゃこの駄犬がああああああああああああぁぁっ!!」

 足払いをかけ、ドターン!と背中からクマを倒してやった。
 素早くその上に乗っかり、抵抗するヒマも与えずクマの頭を奪い取る。

「ぐおおっ…なにしやがんだ!」
「それはこっちのセリフ!ったくまーたこんなの借り出してきて!もしかしてアンタお気に入り?」

 そこに現れたのは、目つきばかりが凶悪に鋭すぎるけど、世界で一番やさしい奴。
 高須竜児。
 私の横に並び立つ、唯一の竜。

「…いや…だって去年は喜んでくれたからさ…クマだけど全然いい!って」
「黙れ!っていうか今年は私がサンタになってお返しする筈だったのに、ぶち壊しにしやがって!
 エロ犬のあんたが喜ぶようにってミニスカサンタで来てやったってのに!
 返せ!私の純情乙女ハート!!」
「…人のことエロ犬呼ばわりする品性で純情かよ…」
「…アンタ、その元から薄い眉毛、いらないみたいね?」
「止めろ!指をワキワキさせるな!抜くのか?抜くのか眉毛!?……っつ!?」

 不意に何かに驚いた様な竜児の顔が、一瞬で真っ赤になった。
 慌てて顔を背け目を閉じる竜児はいかにも不審気だ。

461 :都市伝説?:2009/12/30(水) 19:23:00 ID:4ajZrqrZ
「ちょっと。人と話するときは相手の顔を見ろ。…こっち向け!目を開けろ!」
「や、やめろ!痛い!く、首がもげる!もげるから!」
「あんたが無駄な抵抗を止めれば痛くないわよ?それとも…もっと痛くして欲しい?
 破くよ?まぶた」
「お前怖ぇえよ!マジビビリ入ったよ!だから…うわ、人の身体の上で屈むな!つ、つまりだな、その…見えちまうだろ、色々と!…そんな露出の多い服だと…隙間から…」
「……え?」

 微妙に視線をずらしながら、観念したように喚く竜児の言葉の内容を吟味し。
 ノースリーブのサンタ服の胸元に視線を落とす。

「……ッ!?み、みたの…」
「み、みてねえ!見てないぞ!み、見えそうにはなったけど…」
「ほほほほほ、ほんと!?」
「お、おう!俺はお前にウソはつかねぇ!絶対だ!」
「う、うん…それは…信じてるけど…」
「でも…お前でも、谷間を作ることはできるんだな…」
「やっぱいっかいころすううううううううう!!!」
「できれば殺さない方向で――――!お、俺は一応、褒めたつもりなんだ〜〜〜!!」

 ああ。なんでこうなっちゃうかな。
 普通は恋人同士のクリスマスって、もっとロマンチックなイベントのはずなのに。
 でもこれはこれで楽しいからいいんだけど、ね。

「とにかくメシにしよう!な!ケーキ買ってきてあるし、去年の分も併せて牛ドーン!豚ドーン!で準備したんだから!」
「やっぱり鳥ドーンは無しなんだ…仕方ないけど」

 不承不承、竜児の上からどいてやる。解放された竜児はとりあえず上体を起こし、畳に座り込んだ。まだ身体はクマのヌイグルミを着込んだままだから、億劫そうだ。

「でもさ、さっき私がベランダ見た時には居なかったよね?どこに隠れてたの?」
「あ〜…柵の下にハシゴ立てかけておいてな。柵の下にぶら下がってた」
「…ったく!そこまでする普通!?竜児いなくって、私、すっごく心配したんだからね!
 もしかして何か事故にでもあったんじゃないかって…そう考えたらどんどん不安になってきて…」
「……ごめん」

 竜児はそっと後ろから私を抱きしめて、頭を撫でてくれる。
 私に何かあれば、すぐにこんな風に気遣ってくれる。大事にしてくれる。慰めてくれる。
 私を幸せにしてくれる。

「優しいね。竜児はやっぱり、世界で一番やさしいヒトだよ…」
「俺はそんな奴じゃねえよ」
「なにそれ。アンタ以上に優しい人間なんて、どこにもいないよ」
「…お前がいるじゃねぇか。世界で一番優しいのは、大河だよ」
「…おだてても何もでないよ?」
「そんなんじゃねぇ。俺は本当に、そう思ってるから。
 お前くらい、他人に優しくできる奴は、いない。俺にはお前みたいなことはできねぇ。
 だからお前が一番なんだ」
「…意味わかんない。竜児はそれこそ誰にでもすっごく優しいじゃない。
 竜児だったら本当に、本物のサンタクロースにだってなれると思う」
「それこそ、無理だ。だって」

462 :都市伝説?:2009/12/30(水) 19:39:44 ID:vR3om9O/
 一旦言葉を切って。

「だって俺は、お前にしか優しくできねぇ。俺が本当に優しくなれるのは、お前だけだ。
 俺は、たった一人のためのサンタクロースにしか、なれない。
 だからさ。今夜も、そして来年も、その次も、ずっと。俺はお前のサンタクロースになろうって思ってる」
「…………り、」
「お前だけのサンタでいい、なんて考える奴は、他の奴のサンタにはなれねぇ。
 だから本当には、俺は優しくなんかなれないんだ。
 でも大河は違う。お前は他人の幸福のために、一生懸命になれる奴だ。他人のために、自分を磨り減らしてしまうような奴だ。
 ならせめて、俺みたいな奴がお前のサンタにならなきゃ、あまりにも不公平じゃないか」
「………」
「俺はそう思ってる。それでいいだろ?」

 世界は不公平に、できている。
 本当はサンタクロースなんて、どこにもいない。
 でも、もしかしたら、本当は、そうじゃないのかもしれない。
 だって私は、竜児に巡りあうことができたから。

「…あ、ところで大河、今日は門限何時だ?後で送ってやるから。
 ていうかお前、本当にクリスマスは俺の家で良かったのか?だって新しい家族との初めてのクリスマスなのに」
「ううん、いいの。だって私はアンタとのクリスマス、本当のクリスマスは、今夜が初めてになるんだから」
「そうか。…そっか」

 あ。照れてる。顔は見えないけど絶対こいつ照れてる。ぷくく。

「で、何時頃に帰る?」
「来たばっかなのにもう帰りの心配なんかしないでよね」
「おう。だがバカ騒ぎしすぎて遅くなったら、お前のご両親に申し訳ないし」
「あ、いいのよその辺は。だって義父さんもママも、竜児のことスッゴク気に入ってるもの。
 今年は私がワガママ言ったけど、来年は絶対家に招待しなさいって」
「おおう。そりゃまた、光栄なことで」
「だからさ。そんなママたちの意向も汲んで、今夜はいっぱい楽しまなきゃ」
「おう!…で、我ながらしつこいと思うが、門限は何時だ?」
「…ったく空気読まない駄犬ね。
 あのね、実はね、……ママ、やっちゃんと同盟組んでるの」
「――あ?」
「なんていうかね、その…やっちゃんは30代、ママは40代のうちに初孫を抱きたい母親同盟…」
「――ああ?」
「だからね、つまりね…その、門限…ないの…」
「――あああ?」
「だ、だからぁ……もう、気付いてよ!お泊りOK!むしろ今夜は帰ってくるな!!って感じ!
 勿論うちのママだけじゃなくやっちゃんも了承済み!!!
 ああもう言っちゃる!
 ……ク、クリスマスプレゼントは、わ、わ、わ、た、し、なのよぉぉぉぉぉぉ!!」
「――ああああああああああああああああああ!?」
「こら逃げるな!一緒にいるんだから!絶対、離れないんだから!」
「いやそれは基本的には俺も同意だけど!お前のことすっごい好きだから!
 でもちょっと待って欲しいというかもしかしてこの話、前回と繋がってる!?」
「ええいゴチャゴチャわからんことを!
 ええとね、そうだ、ママとやっちゃんが竜児がゴネたらこう言えって言ってたことがあった!」
「なんだよそれ…!?」
「えっとね…えっと…その…」
「なんだよ…?」
「あの、あのね…」
「うわくそお前かわいすぎるわ畜生!顔真っ赤でプルプル震えてくっそ、し、辛抱、辛抱!」
「あのね…えっと…そう、『中出ししたら合意』なんだって!」
「そんなわけあるかああああああああっっ!!?」

 ………そして聖夜の空に、一人の少年の悲喜交々入り混じった複雑な絶叫が響き渡った。

463 :都市伝説?:2009/12/30(水) 19:42:57 ID:vR3om9O/
  ***

 そして、とあるラーメン屋にて。

「秘技・六道輪廻―――!!」
「「「おおおおお〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」」」

 名物店主の技で飛び散る熱湯のしぶきを、カウンターの客たちはむしろ恍惚の表情で受け入れる。

「えいっ、春田くんバリアー♪」
「あちゃあああっ!?ひ、ひどいよ瀬奈さあん☆」

 そんな中に、見た目やや不釣合いだがそれはそれであり?みたいな?微妙な年の差カップルの姿もあったりして。
 色々あるかもしれないけれど、とりあえず幸福の手乗りタイガーの助力は必要なさそうな。

 ――かくして、聖なる夜は過ぎていく。
 皆に、幸多からん事を。


   <了>

464 :都市伝説?:2009/12/30(水) 19:51:22 ID:vR3om9O/
しゅー、りょー。
実はゆりちゃん先生は最初はオチに持ってこようかと考えてたんですが。
色々考えて、結局は出だしの掴みに持ってきたわけですが…今でもちょっとこれでよかったか、迷ってたり。
春田、いらねぇんじゃね?的な?

…実はもう一本、投下ネタは完成済みがストックされているのですが、今宵はこの辺でー。

465 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/30(水) 23:43:31 ID:rkg1lzwJ
>>464
色々とカオスだが、GJ!
噴いたらいいのか、感動したらいいのか、とにかく緩急がナイスなでした。
ゆりちゃんも春田もいて、やっぱりarlメンバーでなくっちゃね。
そして元会長カップル、自重しろw

466 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/30(水) 23:54:54 ID:1WSCb0Xa
>>464
ほや吹いたw
勢いがあって面白かったよ!

もうすぐ大晦日か。
きっと大河と竜児は大掃除、年越しそば、初詣、姫初め等々イベント盛り沢山なんだろうな

467 : ◆fDszcniTtk :2009/12/31(木) 00:52:55 ID:VonE8bSl
新作投下

山なし、意味なし、落ち無し、エロ無し。4レスほど。

「干支談義」


468 :干支談義 ◆fDszcniTtk :2009/12/31(木) 00:53:57 ID:VonE8bSl
「ねえ竜児。おなかすいちゃった」
「まったくお前はよう。二言目には『お腹すいちゃったな』だよ」
「えー、口ではああいっていますが、般若のようににっこりと笑ってエプロンを装着中です」
「誰に話しかけてるんだよ」
「みのりんに聞かせてあげようと思って送信してるの」
「やめなさい!」
「ちぇ、うるさいなぁ」
「で、何にするか?あまりもんでよければ例によってチャーハンは15分で出来る。リクエストがあるなら聞くけど、食材がないなら買い物に出かけることになるぞ」
「うーん。竜児のチャーハンは魅力的よね。でもここはひとつ年末だし」
「年末だし?」
「来年の干支にちなんだもの」
「無茶言うな。虎の食材なんか日本中探してもあるもんか」
「白虎ラーメンとか」
「熊本に行け」
「白虎隊って会津なのにどうして熊本なの?不思議よね」
「まぁ白虎は四獣のひとつであって、会津の専売特許じゃないけどな。ひょっとしたら旧会津藩士が薩摩憎しで田原坂で戦った警視庁抜刀隊にちなんでるんじゃないか?」
「自分で話を振ってて何だけど、竜児、キャラが壊れちゃってるわよ」
「おう、すまねぇ」

◇ ◇ ◇ ◇ 

「ねぇ、竜児。やっぱり寅年っぽい食べ物って無いのかしら」
「ストレートには無理じゃねぇか?虎つながりでタケノコってのはありかもしれねぇけど」
「なんで虎だとタケノコなのよ」
「虎と言えば竹林だろ。竹林ならタケノコだ」
「ちょっと苦しいわね」
「酔っぱらいを虎と呼ぶよりいいとおもうけどな」
「何で酔っぱらいを虎って呼ぶの?」
「昔は女性が『酒』って口にするのははしたないとされたんだよ。だから、『ささ』って言ったんだけど、ささといえば竹林、竹林と言えば虎。転じて、虎と言えば酔っぱらい」
「もういいわ。ねぇ、なにか寅年料理作ってぇ」
「だから無理だっていってるだろ!こんな『><』顔してもダメだ。食材が無ぇよ!」

◇ ◇ ◇ ◇ 

「仕方ないわね。寅年はタケノコで我慢するわ。じゃ、竜児。他の干支も考えましょうよ」
「はぁ?」
「竜児はチャーハン作りながらでいいから」
「お前が考えろよ。俺が作ってる間に」
「竜児も一緒に考えるの!じゃ最初は子年ね。ネズミ!」
「いきなりハードル高ぇ!」
「ネズミは食べたくないわね」
「お前が食べたいといっても俺は作りたくねぇよ」
「食用ネズミって居ないのかしら」
「食いたいのかよ!」
「好奇心よ好奇心。私はゲテモノには手を出さないわ。竜児は例外だけど」
「お前さらっと酷いな」
「えへへ。怒らないでよ」
「食用ネズミはあるぞ。確か南米で食ってる」
「やっぱり有るんだ。でもお正月には食べたくないわね」
「正月じゃなくても俺は嫌だ。仕方ねぇ。握り飯で手を打て」

469 :干支談義 ◆fDszcniTtk :2009/12/31(木) 00:54:43 ID:VonE8bSl
「おむすびころりん?」
「おう」
「仕方ないわ。正月らしさにかけるけど、ネズミよりはおせちに近いわね」
「数の子入れてやるよ」
「……竜児、数の子っておいしいって思う?」
「静代さん達に何度か無理矢理食べさせられたけど……正直うまいとは思わねぇな。ありゃ縁起物だろ。俺もお前も次に子年がまわってくる頃には数の子の味がわかる程度には人生経験積んでるんじゃないか?」
「なんてことかしら。たかがお握りを食べるのに人生経験が必要だなんて」
「俺はたかが冬休みの一日をお前と過ごすのに、これほどハードルの高い会話を要求されていることに驚きを感じるよ」
「はいはい、文句言わない。子年はお握りでいいわ。楽しみにしてる。ほんとよ。じゃ、次は……えへへ、丑年です!」
「自慢になるが、牛肉料理ならいくらでも浮かぶぞ」
「牛どーーん!」
「ど真ん中を平押しでステーキってのもいいな。俺、テレビでみて鉄板焼きの料理人かっこいいなって思ってたんだ」
「あの、『か、か、かん!』てやつ?」
「おう。脂の多い厚めの肉をな、目の前で料理するんだよ。味付けは塩こしょうでも十分だが、特製ソースも捨てがたい。お前の前で油を引いて、薄くスライスしたニンニクを炒めるんだ。うまそうな匂いが立ちこめた後にはカリカリのニンニクの付け合わせが出来てる」
「ああ、よだれがでそう」
「すき焼きも捨てがたい。野菜、しいたけ、糸こんにゃく、豆腐、そしてもちろん主役は高い肉」
「高いお肉!」
「砂糖を溶いた醤油で柔らかい肉を煮込んでなぁ、そいつを解いた卵で」
「解いた卵で……ねぇ、竜児。すき焼きって煮てるのになんで『焼き』なの?」
「おう、わからねぇ」
「ま、いいわ。丑年はステーキかすき焼きね。じゃぁ、寅年は……わ、わ、わ、わたし?」
「赤面しながら下ネタ飛ばすなよ!てか、お前がお前食ってどうするんだよ。タケノコでいいじゃねぇか」
「え、えーと。たまには私の方で竜児をおもてなし」
「気を回すな。てか、何度も言ってるけど俺はお前を」
「わかってる!ごめん、えへへ。変なネタ振っちゃったね。竜児の気持ちはわかってる。大事にしてくれてるのもわかってる。ごめん」
「お、おう」
「竜児、顔赤い」
「お前も赤いぞ」
「えへへ。じゃぁ、寅年はタケノコ。次は卯年。兎って食べるよね」
「おう。昔は日本でもよく食ってたらしいぞ。今でも探せば肉が手に入るんじゃないか?」
「日本で食べてたの?!」
「兎は一羽二羽って数えるだろう。江戸時代、『鳥だから食っていい』って言い訳につかってたんだよ」
「何てご都合主義なのかしら。そして可哀想なうさ公。毛はマフラーに、肉は料理に」
「よだれをじゅるじゅるしながら言っても説得力ねぇよ。ちなみにカシミヤは兎じゃねぇ。兎の毛も何かに使うらしいけどな。兎食いたいか?」
「そうね。興味あるわ」
「じゃ、うさぎ年までに料理調べとくか。フランスじゃシチューらしいぞ」
「それも惹かれるものがあるわね。和食でも洋食でも楽しみにしてるわ。じゃ、辰年……は竜児?」
「俺を食うのか!てか、下ネタから離れろ!顔を赤らめるな」
「ねぇ、竜児。私達あと二年経ったらこんな恥ずかしい話も平気でできるようになるのかな」
「俺はもっともっとお前との距離を縮めたいと思うけど、下ネタが飛び交うような間柄だけは遠慮したいよ」
「そうね、ロマンスに欠けるわよね。じゃぁ、辰年の料理は?」
「まぁ、ネズミと同じだな。さすがに竜の肉は売ってねぇぞ」
「竜に似てるもの?タツノオトシゴとか?」
「小さすぎて食えねぇんじゃねぇか?」
「あれ?なんか着信した」
「メールか?」
「みのりんだ。『タツノオトシゴ料理は実在する!』って」
「おい、どっかに盗聴器有るんじゃねぇか?」
「あ、マイク入れっぱなしだった」
「早く切れよ!まったく。ま、料理があってもタツノオトシゴなんて食材近所の商店街じゃ売ってないしな。それ以外で竜か。中国じゃトカゲ料理があるらしいけど」
「嫌ぁ!」
「じゃぁ、鯉は死ぬと龍になるっていうから、鯉料理か」
「鯉料理?!ちょっと興味有る。食べてみたいけど、鯉って魚屋さんに売ってるの?」
「……売ってねぇな。しかたねぇ。再来年は二人で鯉料理食いに行こうぜ」
「恋料理。えへへへ。考えてみたら竜児が料理してくれたものは全部辰年向きな気がする。いろんな意味で」
「お、おう」

470 :干支談義 ◆fDszcniTtk :2009/12/31(木) 00:55:27 ID:VonE8bSl
「じゃぁ、巳年」
「蛇料理は日本にもあるが、食材が手に入らないだろう。てか、手に入っても俺は料理したくねぇ」
「そうねぇ。じゃ、これもお店探して二人で食べに行く?」
「そうするか」
「午年」
「馬肉は結構売ってそうだな。甘く煮込んで佃煮にするか」
「楽しみ!じゃぁ次は」
「話の腰を折るようだが、チャーハンできあがりだ。ほら、お前の好きなカブチャーハン」
「やったぁ!いただきまーす!」

◇ ◇ ◇ ◇

「ごちそうさまっ!おいしかったよ」
「おう、お粗末。今、茶を入れてやるから待ってろ」
「ねぇ、竜児。未年は?」
「羊肉ならジンギスカンだけど、家じゃ料理しにくいな。これも外食か」
「外食が続くわね。竜児のお料理が食べたいのに」
「そうか。それなら家で料理できないか調べてみるよ」
「うん!じゃぁ……申年……」
「嫌だな」
「考えたくないわね」
「アフリカじゃ猿の姿焼きを」
「嫌ぁ!」
「中国じゃ生きた猿の脳みそを…」
「やめろバカ犬!」
「悪い悪い、泣くなって。ほら、お茶」
「折角おいしいチャーハンだったのに、バカ竜児が変なこと言うから台無しだわ」
「悪かった悪かった。中国にはサルノコシカケって食材があるらしいけど、料理っていうより薬だな」
「椅子を食べるのは嫌よ」
「椅子じゃねぇよ。キノコだ」
「キノコでもお薬はいやだわ。竜児、シーモンキーは?」
「食えると思えねぇ。こりゃ難関だな。あきらめろ」
「ええ?何かないの?」
「あー、じゃぁ柿なんかどうだ?」
「なんで柿なのよ」
「さるかに合戦で投げたろう」
「そんな武器を食べるだなんて。じゃぁ、蟹にしましょうよ」
「犠牲者食うのかよ!さるかに合戦じゃ猿が柿食ってたぞ」
「蟹がいいの。いいじゃない。さるかに合戦で死んだ蟹を食べましょうよ。捨てちゃMOTTAINAIでしょ」
「酷い。じゃぁ、蟹な。大河、蟹味噌好きか?」
「食べたことないけど。竜児は?」
「俺も無ぇ。けど酒に合うらしい。だいぶ先だけど、二人で日本酒飲みながら蟹つつくのもいい感じじゃないか?」
「そうね。お酒も蟹味噌も知らないけど、とても素敵な感じがするわ。私お酌してあげる」
「おう、楽しみにしてるぞ」
「じゃ、次は。えーと、酉年」
「鳥料理なんていくらでも考えつくな」
「鳥どーーん!」
『ヤメロ!バカ!』
「お、インコちゃん久しぶりにしゃべったな」
「あら、まだ生きてたのねブサ鳥」
「お前インコちゃんにまた酷いことを」
「ま、いいじゃない。酉年が来る頃にはブサ子も死んでることでしょうよ。心置きなく鳥を食べられるわ」
「生々しい未来を描くんじゃねぇよ」

471 :干支談義 ◆fDszcniTtk :2009/12/31(木) 00:56:13 ID:VonE8bSl
「ねぇ、鳥料理」
「クリスマスのロースト・ターキーもいいけど、うちで作れる料理じゃねぇな。和風に筑前煮なんかどうだ」
「いいね、うんうん。私好きよ」
「庶民風にチキンカレー」
「お正月よ。カレーなの?」
「そうだった。棒々鶏」
「大好き!」
「鶏は和洋中どれもうまいからな。いっそ定番料理3種でどーんと行くか」
「行こう行こう!」
『ヒトゴロシー!』
「インコちゃんなんて言葉を覚えてるんだ!」
「ブサ子、あんとたは人間じゃないでしょ。黙ってないと今すぐ竜児にしめてもらうわよ」
「しめねぇよ」
「ちっ。じゃぁ最後。亥年」
「イノシシか。ストレートに猪鍋と行きたいが、肉が手に入らないかもな。豚でどうだ?」
「いい!豚肉大好き!」
「高級豚肉でトンカツもいいな。それか青椒牛肉絲。それとも蒸して脂を抜いてぷるぷるに仕上げるか」
「ぷるぷる!」
「豚キムチもいける」
「ねぇ、竜児。お正月料理を忘れないで」
「おう、そうだった。豚はそれこそ鶏よりも料理の範囲が広いぞ。旨みが出るしな。今の内に案を練っておかないとアイデアが多すぎてまとまりそうにねぇ」
「ああ、素敵。早く豚年来ないかしら」
「亥年だ」
「おあとがよろしいようで」

472 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/31(木) 02:34:05 ID:MBXu2HGe
>>467-471
こういう単に竜児と大河がダラダラ話してるだけっての、けっこう好きw

ところでちょいとツッコミや無駄な薀蓄などを。

>ネズミ
「野生のネズミ類は肉の味が濃くて意外に旨いんだぜ。ちょっと油っこいがな(本当)」byコルボ@モンスター・コレクション

>すき焼
本来は農民が文字通り農具の『鋤』を鉄板代わりにして食材を焼いていたものが、
明治時代に流行した牛鍋とごっちゃになって広まった……という説があります。

>亥年
干支って実は国によって微妙に違って、確か中国では豚年だったかと。

ところで戌は?


473 :干支談義 ◆fDszcniTtk :2009/12/31(木) 06:42:54 ID:VonE8bSl
「いけない!竜児、戌年忘れてた!」
「もういいだろ。犬は食いたくねぇよ。昔は食ってたらしいけど」
「何言ってるのよ。犬を食べられるかどうかじゃなくてお正月のスペシャル料理を食べられるかどうかが問題なんじゃない」
「だからあきらめろって。スペシャル料理って言うけど子年なんか握り飯だぞ」
「つべこべ言わないで考えるの!」
「いてて!まったくよう。じゃぁ、吉備団子」
「桃太郎?」
「そう、おしまいおしまい」
「それじゃ酉年も申年も吉備団子になっちゃうでしょ!」
「あ、申年吉備団子にするか。蟹は無理がありすぎる」
「だめだめ!申年は蟹。戌年は吉備団子なしよ」
「あー、めんどくさいな。って、お前も考えろよ」
「へ?あ、うん………うーん」
「おい、あまり真剣に考えるな。湯気が出そうな顔してるぞ」
『シンジャエ』
「うるさい!」
「インコちゃんなんて事を」
「じゃぁ、お餅」
「はぁ?」
「花咲じいさん」
「ああ、あれか。犬のお墓の後に出来た大木で臼を作る話」
「そ。戌年はお餅にしよう!」
「俺に餅をつけと言うのか」
「あ、私つきたい!」
「嬉しそうに手を挙げるな!だめだだめだ!お前がついたら絶対こね役の手が砕ける。一生が台無しだ」
「なによ、つまんない」
「てか、餅なんか毎年食うだろう」
「そっか。じゃ、わんこ蕎麦」
「ただのだじゃれだろ!てか、おれは嫌だ。普通食う方が音を上げるのに、お前相手だと入れる方が音を上げることになる」
「竜児、文句が多すぎるわよ」
「企画に無理がありすぎるんだよ!」
「何よ、ちょっとは私のアイデアに乗ってくれてもいいじゃない」
「さっきから散々つきあってるじゃねぇか」
「ほんとに意地悪なんだから。意地悪犬………あっ」
「おう?」
「ねぇ、竜児」
「ほほ赤らめて嬉しそうにわらうんじゃねぇ」
「名前呼んだだけじゃない」
「今日のお前はその笑顔だとろくな事言ってねぇんだよ。だいたい………お前、戌年で俺の顔見て笑うって」
「えへへ」
「下ネタやめろって言ったろ!」
「下ネタじゃないもん。愛のある思いつきだもん」
「やっぱ下ネタじゃねぇか!」
「大丈夫、戌年が来たら私達は大人。きっと夫婦!」
「だから下ネタはやめろ!」


(来年がいい年でありますように)

474 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/31(木) 08:31:15 ID:JY3CY4e2
>>473
楽しそう! テーブルでだらだら喋ってる姿が眼に浮かぶわ。 GJ!
戌はそうくると思ったw てか、何気にエッチだw 
みのりん、鼻血の放物線描きながら、メールしてるぞきっと。
鯉料理は妊婦に良い、と言われてるけど、竜児が大河に作ってあげる日は近そうだ

>>466
さっきまで見落としてたが、さりげなく「○初め」とかはいっててw

475 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/31(木) 14:26:54 ID:e8Qgy0GV

『紅白歌合戦、勝者は〇組でーす!!!』

大家「おっと、今年も強かったねぇ……今年もサブちゃん良かったねぇ……」
大河「……っしゃー! 私の勝ちね、竜児!」
竜児「はいはい、分かった分かった」
大河「約束、忘れるんじゃないわよ?」
竜児「……ったく、しょうがねえなぁ」
大家「……何だろうね?何にしても賑やかなことだね」

ゴーン―― ゴーン――

大家「うんうん。ゆく年くる年はやっぱりいいね、除夜の鐘が良く聞こえるよ」
竜児「よし、それじゃ準備だ。っと、その前に片付けるか」
大河「えー、そんなの明日起きてからでいいじゃない?」
竜児「だーめーだ、ほら、食ったもんを綺麗にして新年を迎える。当たり前の事だろう?」
大河「はいはい……ったく、うるさいんだから!」
大家「おやおや、後片付けかい。いい心がけだねぇ」

ガタガタガタ――

大家「こっちもお茶入れてこようかねぇ。おじいさんのお茶も替えてあげようねぇ」

パタパタパタ――

竜児「俺が洗うから、おまえはあっちの準備してこいよ」
大河「あらそう?割と乗り気じゃない?」
竜児「しゃーねぇだろ?その、あれだ……約束……だしな」
大河「ふふふ……とか何とか言っちゃって実は?」
竜児「……うっせぇ」
大家「……おじいさんや、あたしゃ一人だけど、お二階さんが賑やかだから寂しくないよ?」

コポコポコポ――

大家「来年は……おじいさんの元に行けるかねぇ?ふふ、まだまだ元気だから行けそうもないよ」
竜児「おっ?なかなかいいじゃねぇか、たまにはこういうのもいいかもな……」
大河「なんせど真ん中だしね! 正月くらいどーんと広いところってのもいいわよね!」
竜児「だな。お、もうすぐ新年だな、大河……」
大河「そうね……今年も色々あったわね……」

『こちら東京港区の増上寺よりお届けしています。どうやら10秒前からカウントダウンを行うようです』

大家「おっと、もうすぐだね。正座して待たないとね」
大河「竜児っ、今年もお世話になりました」
竜児「っておま……まぁ、いいけどよ、こちらこそお世話しました……っと」
大河「何よそれ!? こういう時はウソでも何でもお世話になりましたって言うのよ?」
竜児「はいはい。っつーか、こんな格好で言うのも何だかな……」
大河「細かい男ねぇ……」
大家「しかし、静かにしてると本当に良く聞こえるね……来年こそはリフォームでもしようかね」


476 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/31(木) 14:29:15 ID:e8Qgy0GV

『あっ、そろそろカウントダウンが始まるようです。お茶の間の皆さんも準備をお願いします』

竜児「おっ?あと10秒だとよ。ほら、横になれ、大河」
大河「うん……あ、竜児、分かってると思うけど……」
竜児「ん?何だ?」
大河「先走らないでよ?これを逃したら来年まで待たなきゃならないんだから」
竜児「分かってるって……もうガキじゃねーんだから、そんな失敗はしねえよ」
大河「……どうだか」
竜児「そんなことより、大河の準備は…………うおう!? おま、大河……これって……」
大河「へへへ……だって……」
竜児「おや、後少しで0時だね、0時になったら天国のおじいさんにご挨拶しようかね」

『今、カウントダウンが始まりました。8……7……6……5……』

竜児「よし、こっちはOKだ」
大河「私も……いつでもいいわよ」
竜児「なぁ、大河……挨拶してからか?それとも……」
大河「そんなの……決まってるじゃない……」
竜児「……お、おう」
大家「…………?」

ゴーン―― ゴーン――

『4……3……2……1……0! 新年あけましておめでとうございます!』

大家「どれ……新年あ……」
大河「あふーん!」
大家「!?!?」

ギシギシ――

竜児「うおっ……す……すげえぞ……」
大河「ば、ばか……いいから…………」
大家「……ま…………まさか……いや、いけないいけない。おじいさんへ挨拶する途中だったよ」

ギシギシ―― ギシギシ――

大家「おじいさんや……新年あけましてお……」
竜児「おおおおおっ!!!」
大家「!?!?」
大河「りゅっ! 竜児っ!? はげ……しっ……ああっ!」

『会場はものすごい熱気に包まれています! 新年のご挨拶があちらこちらで繰り広げられています!』

大家「…………………………ご……あい……さつ?」
大河「ああんっ! 竜児っ! 竜児っ!」
竜児「大河っ! こっ、今年も! よろしくな!!!」
大河「うんっ! うんっ! 今年……も…………よろ……しくううううっ!」

ギシギシアンアン! ギシギシアンアン!

大家「新年くらい……静かに過ごさせておくれよ―――っ!!!」
大河「りゅーじーっ!!!」
竜児「大河ーっ!!!」

ギシギシアンアンゴンゴン!!! ギシギシアンアンゴンゴン!!!


477 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/31(木) 14:30:18 ID:e8Qgy0GV

今年最後の投下がこれとは、我ながらヒドイw

それでは皆様、よいお年を〜

478 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/31(木) 17:04:32 ID:kObzkXfw
年越しながらこの2人は…w

479 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/31(木) 18:12:56 ID:SRhRL0fx
108の鐘の音に合わせるのかと思ったwww
違って良かったよw
GJ!

そして現在478KB!
おみくじ出来る方スレタイよろしくです

480 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/31(木) 22:19:17 ID:E0rk++hv
48 名前:大橋高校の生徒さん[] 投稿日:09/12/31 22:18:26 ID:???
【とらドラ!】大河×竜児【ニコニコ妄想】Vol19

481 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/12/31(木) 23:03:33 ID:B5HCx1oV
>>480
おつ!

おまいら来年もよろしくな

482 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/01(金) 00:04:48 ID:sHwn+nxB
大河の年だオメ

483 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/01(金) 00:55:07 ID:E+aeAHJq

「竜児、あけましておめでとう!」
「おう、大河、あけましておめでとう!今年もよろしくな」
「今年はどんな年になるかしらねぇ」
「そりゃ、いい年に決まっている。今年は寅年。大河の年だからな!」
「あーあ、年賀状ネタで散々使われてたわね。ま、いいけど。好きにすれば」
「お前なぁ… アニメも原作も終了して、もうすぐ1年になろうとするのに、ずっと愛着を持ってくださる皆さんに失礼だと思わねぇのか?」
「かんけーない」
「こ、こいつ、きっぱり言い切りやがった」
「だって、わ、わたしには、そ、その、りゅ、竜児がいれば、他に何もいらないんだから」
「おう! 嬉しいけど、なに今更もじもじしてんだ?」
「う、う…・ん だってさ、竜児と一緒に、こんな穏やかなお正月迎えるの、初めだなーって思ったのよ」
「そういやぁ、そうだな。 今まで色々あったもんな。 わかったよ、大河。 ほら、こっちこいよ」
「うん! 竜児、だーいすき」
「俺も大好きだぞ、大河」
「えへへへぇ。今年もきっといい年だね」
「ああ。大河も俺も仲間達も、ここにいる皆さんも、な」
「うん!」

オチ無し、ギシアンも無し。 ただのバカップル話になってしまった…

484 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/01(金) 18:29:25 ID:b0RLCEuu
>>480
サンクス!

>>483
乙!
その感じがイインダヨw

スレ建てチャレンジしてくる

485 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/01(金) 18:35:21 ID:b0RLCEuu
【とらドラ!】大河×竜児【ニコニコ妄想】Vol19
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1262338222/

新スレできたよー。
仲良く使ってね。

あと、みんな今年もよろしく


486 : 【大吉】 【1862円】   ◆Eby4Hm2ero :2010/01/01(金) 21:42:23 ID:d/T9M8Ab
あけましておめでとうございます。

>>485
スレ立て乙です。


べ、別に元日だから投下するわけじゃないんだからねっ!
投下タイミングがたまたま一月一日と重なっただけなんだから!

487 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2010/01/01(金) 21:44:29 ID:d/T9M8Ab
お題 「半目」「頬」「バスタオル」



「なあ大河、水色のバスタオルどうしたんだ?」
 唐突な竜児の質問に、大河の動きが止まる。
「……なんの話?」
 視線を逸らす大河を、竜児は半目でじっとりと見つめて。
「バレねえと思ったか?だけどな、色が同じのとすり替えても、古いのと新品とじゃ肌触りが違うんだよ」
「だから、それをなんで私に言うのよ?」
「勿論俺じゃねえし、泰子にも確認したけど知らないって言ってたしな。
 となると後そういうことが出来るのは、ここ最近積極的に洗濯を手伝うようになった大河しかいねえじゃねえか」
「…………」
「別に怒ってるわけじゃねえんだよ。ただ、何でなのかが気になってさ」
「……竜児、ごめんなさい」
 急に竜児の方に向き直り、頭を下げる大河。
「お、おい大河?」
「あのね……あのバスタオル、ドジやらかして駄目にしちゃったの……だから……」
「おう、そうだったのか……使い込んだタオルの一枚ぐらい、そこまで気にしなくてもよかったのに」
「ううん、だって完全に私のミスだったんだもの」
「まあ、なんだ。次そんなことがあった時は、捨てる前に俺に見せてくれよ。
 汚れやシミだったら取れるかもしれねえし、破れたりしたとしても雑巾に縫い直すとかで再利用できるしさ」
「うん、わかった」
「悪かったな、責めたてるような言い方しちまって」
「いいの、悪かったのは私の方なんだし」


 さて、実の所そのタオルがどうなったのかというと。

 ベッドの上に広げて、頬ずりするように顔をうずめて、息を吸う。
「ん……竜児の匂い……」

 実は、大河の部屋にあるのです。

488 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/01(金) 23:38:34 ID:ICLpUDoz
>>486-487
新年早々、投下乙です! って、ツンデレw
やけに素直な大河が殊勝だと思ったら… 
てか、竜児こええ、騙すにはあと3年ぐらいの修行がいるな。

489 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/02(土) 01:33:46 ID:HtimcpyT
>>487
乙!
やるな……この大河w



「あ、竜児のここ、固くなってる」
「……おう、あんまり触るなよ。くすぐったいから」
「一体どうしたらこんなになるのよ?」
「それは……日々の鍛錬の賜だ」
「物は言い様ねぇ。アレを『鍛錬』と呼ぶとは恐れいったわ」
「意外と力仕事なんだ。お前もやってみればわかる。そしてきっとハマる!」
「あんたみたいな変態と一緒にしないでよ。あんなの喜んでやるのは竜児だけよ」
「おう……そう言われると反論できないな……」
「掃除のし過ぎで手にタコができるなんて。まぁ、竜児らしいけど……」
竜児の右手の人差し指には高須棒を使い込んだ者にしか出来ない「高須棒タコ」がある。
しつこい汚れやカビとの壮絶な闘いによって徐々に皮膚が厚くなったのだ。
大河は手を繋いだ拍子に今更ながら気づいた。そのタコの部分を指で弄くりながら微笑む。
「……この感触、意外と好きかも」
「おう、おま! くすぐったいって!」


490 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/02(土) 13:40:42 ID:2Py0lcPx
「りゅーじーっ!りゅーじーっ!」
「いい加減、それやめろよ」
「いいじゃない。応援してるんだから」
「いや、だけどよ」
「あら、男の焼き餅はみっともないわよ」
「ちぇっ」

東洋大学 柏木竜二選手、5区優勝おめでとう。(2年連続区間新記録更新)

491 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/02(土) 16:25:37 ID:2Py0lcPx
柏木竜二じゃなくて柏原竜二だった

492 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/02(土) 19:36:57 ID:fR3P1+s8
>>490
「ちぇっ」 だけカツオの声で再生されたじゃないかw

493 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/02(土) 23:02:13 ID:W4sYFsc0

「ん……もう少し……」
「……こうか?」
「うん……そこ……」
「よし」
「つっ!?」
「おうっ!?わりぃ、ちょっと強いか?」
「ううん。竜児の人差し指、すごく……いい」
「……ったく、確かにこの部分は硬てぇけどよ……こんな使い方、普通はしねえだろ?」
「具合がいいんだからいいの、細かい事気にしてんじゃないわよ」
「グリグリした方がいいのか?」
「……うん。もっと……して……」
「おう」
「あ……ああぁ、いい……すごくいいよ、竜児」
「痛く……ねえか?」
「ちょっと痛い……けど……気持ちいい」
「おおう……大河のここ、すっげえコリコリしてんぞ?」
「……そんなに?」
「おう、こりゃしっかりほぐしておかねえとな」
「何よ……嬉しそうな声出してんじゃないわよ、この犬……んっ……」
「だっておまえ、痛いだろ、これじゃ?」
「そうだけど……あ、もうちょっと上で……お願い」
「こうか?」
「ああっ!そこ……そこそこ!」
「……どうだ?じんわり効いてくるだろ?」
「うん。来る来る……はぁ……すっごい……」
「そうかそうか、そう言ってくれるとこっちも嬉しいぞ」
「ったく、こんな事でしか私を喜ばせてくれないなんて、駄犬にも程があるわね……」
「……おまえは一言多いんだよ」


「何なの……あれ?」
「お……俺だめだ、鼻血出そう」
「くうーっ!熱いね熱いねぇ!」
「はっはっは。いつも通りの仲睦まじい二人じゃないか。別段俺は驚かんぞ?」


「ほら、左手も休ませてんじゃないわよ。しっかり揉んでよ」
「はいはい……まったく……」
「そう……そこそこ!あー気持ちいい!ちゃんと私好みの強さを調節出来るようになってきたじゃない」
「そりゃ毎日させられてるからな」
「ふふん。毎日ご奉仕出来て嬉しいって言いなさいよ」
「……だいたい、大河が肩凝るわけねえのに……胸もねえし……」
「竜児?」
「いっ、いやいや!何でもないぞ、何でもない!」
「聞こえた」
「おうっ!?何だこの黒いオーラは……」
「復唱すると、『余分な脂肪が一切付いてないから肩こりなんて無縁ですよね、大河さん』だぁ!?」
「いやいやいやいや、言ってない言ってない!」
「しっかり聞こえたって言ってんでしょー!?」
「う……やばっ!」
「あっ!?まてこら竜児ーーーっ!」



ゴメン、勝手に連想したw
書いた後に昔どっかで見た事あるような気がしたんだけど、
埋め時期だし気にしないでおこう

494 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/02(土) 23:48:44 ID:WJu069jr
大河にはちゃんとおっぱいあるぜ!ごめん嘘

495 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/03(日) 00:49:36 ID:42bH5o5f
「駅伝で新記録出した奴の名前って竜二なんだな。俺とは大違いだ」
「私にとって竜児はあんただけ。他の奴がどうでも関係ないわ」

てな会話が繰り広げられたのだろう

496 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/03(日) 07:44:24 ID:oay2vw19
      ある日>>494 の靴箱に
       手紙が届きました・・・
          _____
         / ヽ____//
         /   /   /
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       /              /ヽ__//
     /  夜道に気をつけろ  /  /   /
     /   2−C 高須    /  /   /
    /   ____     /  /   /
   /             /  /   /
 /             /    /   /
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/   /   /


497 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/03(日) 12:52:56 ID:C6xznmyv

これ竜児が作ったのかw
ttp://twitpic.com/wd3ar

498 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/03(日) 21:23:25 ID:ViPRlsvJ
>>490
箱根駅伝は福男レースだったのかw

>>493
ワロタw

>>497
吹いたw
しかし、竜児ならばもっと凄い事を書きそうではある

499 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/03(日) 23:05:42 ID:aXDoaREV


500 :あけおめー:2010/01/03(日) 23:40:41 ID:H2zwwLlK
竜児は細かくて仕事も丁寧だがセンスはイマイチw
とらドラ!Pでは丑年ってことで芋版作ってたなー。
…そうか、大晦日〜正月の風景はゲームではやってるんだな。IFだけど。

501 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/04(月) 00:00:35 ID:B85QHMcA
「おい大河、お前御守り間違えて買ってるぞ。これ安産祈願のやつじゃねえか」
「あらほんと。でもまあ、いずれ必要になるんだし別にいいじゃない」
「いや、御守りの御利益ってのは基本一年間なんだよ。本来はその後神社に納めるんだ」
「細かいわねえ……つまり、一年以内にコレが必要になればいいわけね?」
「え?」
「さあ竜児、勝負は今から二ヶ月よ!」

ギシギシアンアン

502 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/04(月) 00:16:09 ID:Yr7dov3p
二ヶ月がリアルすぎんぞwww

503 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/04(月) 00:17:51 ID:xiGzSwFB
──それは、とある昼下がり
「お前の親父には、世話になったぜ」
「やめろ! 大河に手を出すんじゃねぇ!」
「手は出さないさ。少し預からせてもらうだけだ。親父によろしくな」
「たいがぁああ!!」

──唐突に
「竜ちゃん、ごめんね。パパが迷惑かけてごめんね」
「……本当に、親父がそんなことを……」

──運命は動き出す
「……竜ちゃん、コレ。パパの置きみやげ」
「け、拳銃じゃねぇか!?」
「お墓まで持って行こうと思ってたけど、大河ちゃんのためなら」

──助けを待ってるヤツがいる
「待て高須! それは危険すぎる!」
「そんな計画、亜美ちゃん信じらんなーい」
「でも! そうしない限り、大河が……!」
「……バカなあんたが死んじゃったら、一番苦しむのは、タイガーなんだからね……」

──この命に代えてでも護りたいヤツがいる
「狩野屋から差し入れだ! 武器は揃ってんだろうな? 弾が無ぇ、なんて言わせねぇぞ! 持って行け!」
「アニ……じゃなくて、狩野先輩!?」
「話は聞いた。なかなか良い根性してるじゃねぇか。そういう真っ直ぐなバカは嫌いじゃないぜ?」

──俺が行かなきゃ
「銃を握るのは初めて……じゃなさそうだな、小僧」
「おおう!?俺、今、撃った……?」

──誰が行く?
「竜児……どういうこと?」
「忌々しいことに、あのクソ親父の血が通ってるのは本当らしい」

──覚悟なら出来てる
「大河、良く聞け。俺はお前が大好きだ! お前が好きだから、ここまで来れた」
「……あんたって、ホントに……。こんな時にそんなこと言ったら死んじゃうって決まってるんだから!」
「泣くんじゃねぇよ、大河。いいか? これだけは忘れるな」

──俺は竜だ。いつでも、いつまでも虎の……お前の傍らにいる

「りゅうううじぃぃぃいいいい!!!」

超ド級ラブコメアクションクッキングムービー!
劇場版「とらドラ! 〜燃えよドラゴン〜」
2828年4月1日 全国一斉ドーロショー

「高須くん!君なら……いや、君だけが大河を救える!行ってくれ!!」
「櫛枝!?」

かみんぐすーん?

二番煎じでごめん
埋めネタってことで一つご容赦を。


504 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/04(月) 14:24:32 ID:MSXaguwL
──それは、とある昼下がり
「お前の親父には、世話になったぜ」
「やめろ! 大河に手を出すんじゃねぇ!」
「手は出さないさ。少し預からせてもらうだけだ。親父によろしくな」
「たいがぁああ!!」

──唐突に
「竜ちゃん、ごめんね。パパが迷惑かけてごめんね」
「……本当に、親父がそんなことを……」

──運命は動き出す
「……竜ちゃん、コレ。パパの置きみやげ」
「ほ、包丁じゃねぇか!?」
「お墓まで持って行こうと思ってたけど、大河ちゃんのためなら」

──助けを待ってるヤツがいる
「待て高須! それは危険すぎる!」
「そんな勝負、亜美ちゃん信じらんなーい」
「でも! そうしない限り、大河が……!」
「……バカなあんたが死んじゃったら、一番苦しむのは、タイガーなんだからね……」

──この命に代えてでも護りたいヤツがいる
「狩野屋から差し入れだ! 調理器具は揃ってんだろうな? 鮮度が悪ぃ、なんて言わせねぇぞ! 持って行け!」
「アニ……じゃなくて、狩野先輩!?」
「話は聞いた。なかなか良い根性してるじゃねぇか。そういう真っ直ぐなバカは嫌いじゃないぜ?」

──俺が行かなきゃ
「包丁を握るのは初めて……じゃなさそうだな、小僧」
「おおう!?俺、今、捌いた……?」

──誰が行く?
「竜児……どういうこと?」
「忌々しいことに、あのクソ親父の血が通ってるのは本当らしい」

──覚悟なら出来てる
「大河、良く聞け。俺はお前が大好きだ! お前が好きだから、ここまで来れた」
「……あんたって、ホントに……。こんな時にそんなこと言ったら死んじゃうって決まってるんだから!」
「泣くんじゃねぇよ、大河。いいか? これだけは忘れるな」

──俺は竜だ。いつでも、いつまでも虎の……お前の傍らにいる

「りゅうううじぃぃぃいいいい!!!」

超ド級ラブコメアクションクッキングムービー!
劇場版「とらドラ! 〜燃えよドラゴン〜」
2828年4月1日 全国一斉ドーロショー

「高須くん!君なら……いや、君だけが大河を満腹に出来る!行ってくれ!!」
「櫛枝!?」

かみんぐすーん?

-----
>>503
直感の命ずるままに改変してしまった。

505 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/04(月) 20:09:28 ID:yM9D7T7C
パパ料理人wwwww

506 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 00:48:32 ID:tFZb6w2p

──それは、とある昼下がり
「お前の親父には、世話になったぜ」
「やめろ! 大河に手を出すんじゃねぇ!」
「手は出さないさ。少し預からせてもらうだけだ。親父によろしくな」
「たいがぁああ!!」

──唐突に
「竜ちゃん、ごめんね。パパが迷惑かけてごめんね」
「……本当に、親父がそんなことを……」

──運命は動き出す
「……竜ちゃん、コレ。パパの置きみやげ」
「高須棒のオリジナルじゃねぇか!?」
「お墓まで持って行こうと思ってたけど、大河ちゃんのためなら」

──助けを待ってるヤツがいる
「待て高須! サンポールは危険すぎる!」
「そんな勝負、亜美ちゃん信じらんなーい」
「でも! そうしない限り、大河が……!」
「……バカなあんたが死んじゃったら、一番苦しむのは、タイガーなんだからね……」

──この命に代えてでも護りたいヤツがいる
「かのう屋から差し入れだ! 掃除道具は揃ってんだろうな? 品揃えが悪ぃ、なんて言わせねぇぞ! 全部持って行け!」
「アニ……じゃなくて、狩野先輩!?」
「話は聞いた。なかなか良い根性してるじゃねぇか。そういう真っ直ぐなバカは嫌いじゃないぜ?」

──俺が行かなきゃ
「重曹を使うのは初めて……じゃなさそうだな、小僧」
「おおう!?俺、今、混ぜた……?」

──誰が行く?
「竜児……どういうこと?」
「忌々しいことに、あのクソ親父の遺伝子だったらしい」

──覚悟なら出来てる
「大河、良く聞け。俺はお前が大好きだ! お前が好きだから、ここまで来れた」
「……あんたって、ホントに……。こんな時にそんなこと言ったら死んじゃうって決まってるんだから!」
「泣くんじゃねぇよ、大河。いいか? これだけは忘れるな」

──俺は竜だ。いつでも、いつまでも虎の……お前の傍らにいる

「りゅうううじぃぃぃいいいい!!!」

超ド級ラブコメアクションクリーニングムービー!
劇場版「とらドラ! 〜燃えよドラゴン〜」
2828年4月1日 全国一斉ドーロショー

「高須くん!君なら……いや、君だけが大河の部屋をキレイに出来る!行ってくれ!!」
「櫛枝!?」

かみんぐすーん?

-----
>>503-504
気が付いたら、さらに改変してしまった。スマン

507 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2010/01/05(火) 04:36:45 ID:u4+TlVo7
お題 「百回」「忍び」「ライン」



 AM7:00。
 さすがにちょっと早過ぎた。
 見上げた先、木造一戸建て二階の借家で、竜児は朝食を食べている頃だろうか。
 今行けば、久しぶりに竜児の料理を堪能できるだろうが……再会がいきなり食事に乱入というのは、やはりちょっと……
 それに、どうせなら竜児のご飯を楽しむのはきちんとお腹が空いてる時にしたいし。
 というわけで我慢我慢。

 AM7:20。
 もうすぐ竜児に会える。
 最初に何と言おうか?
「竜児、久しぶり」
 ……もうちょっとロマンチックに行きたい。
「竜児……大好き」
 ……天下の往来で言うのはちょっと恥ずかし過ぎる。
「竜児、ただいま」
 ……悪くないが、無難すぎるだろうか?

 AM7:30。
 いつもならば、そろそろ出てくるはずなのだが……
 始業式だし、身支度に時間がかかっているのだろうか?

 AM7:35。
 竜児ではなく、一階から大家が出てきて道路を掃きはじめた。
 見つかって色々聞かれるのも面倒なので、電柱の陰に隠れることにする。
 ……このまま一旦竜児をやりすごして、後から忍び寄って驚かせるというのも面白いかもしれない。

 AM7:40。
 竜児はまだ出てこない。
 ひょっとして、何か用事があって早く出たとか?
 いや、始業式からそれは無いだろう。
 ともかく、復学初日から遅刻は出来ないし、いつまでもこうして待っているわけにもいかない。
 デッドラインまではあと20分。

 AM7:45。
 遅い。あのグズ犬は一体何をしているのか。
 これは、後で何かペナルティを課してやらねばなるまい。
 例えば『好きだ』と百回言うまで許してやらないとか。

 AM7:50。
 階段を駆け降りる足音。
「おはようございまーす!」「わー! 急に声をかけるんじゃないよ!」
 この声、間違いない、竜児だ!
 電柱の陰から飛び出せば、久しぶりに見る竜児の姿。
「大河」
 いきなり名前を呼ばれて心臓が跳ねる。
「おまえは、どんなふうに歩き出す?」 
 あれ?
 竜児は足を止めず、真っ直ぐこっちに歩いてくる。
 ひょっとして私に気づいてない!?
 呆然としている間にその姿はどんどん近づいて――衝撃。
「うぐっ!?」
「ったあ!」


508 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 11:49:54 ID:KcJmjR/D
>>507
45分も待ってたとは!それで視界に入ってないんじゃ、猛然と体当たりしてくるよなぁ。

>>506
「俺、今、混ぜた?」で拭いた。もとい、噴いた。

509 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 20:50:34 ID:lcHUo1hm
──それは、とある昼下がり
「お前の親父には、世話になったぜ」
「やめろ! 大河に手を出すんじゃねぇ!」
「手は出さないさ。少し預からせてもらうだけだ。親父によろしくな」
「たいがぁああ!!」

──唐突に
「竜ちゃん、ごめんね。パパが迷惑かけてごめんね」
「……本当に、親父がそんなことを……」

──運命は動き出す
「……竜ちゃん、コレ。パパの置きみやげ」
「く、鍬じゃねぇか!?」
「お墓まで持って行こうと思ってたけど、大河ちゃんのためなら」

──米を待ってるヤツがいる
「待て高須! 自給自足は危険すぎる!」
「そんな稲作、亜美ちゃん信じらんなーい」
「でも! そうしない限り、大河が……!」
「……バカなあんたが死んじゃったら、一番苦しむのは、タイガーなんだからね……」

──この命に代えてでも食べさせたい飯がある
「狩野屋から差し入れだ! 農具は揃ってんだろうな? 苗が無ぇ、なんて言わせねぇぞ! 持って行け!」
「アニ……じゃなくて、狩野先輩!?」
「話は聞いた。なかなか良い根性してるじゃねぇか。そういう真っ直ぐなバカは嫌いじゃないぜ?」

──俺が育てなきゃ
「鎌を使うのは初めて……じゃなさそうだな、小僧」
「おおう!?俺、今、刈った……?」

──誰が炊く?
「竜児……どういうこと?」
「忌々しいことに、あのクソ親父の血が通ってるのは本当らしい」

──覚悟なら出来てる
「大河、良く聞け。俺はお前が大好きだ! お前が好きだから、ここまで来れた」
「……あんたって、ホントに……。こんな時にそんなこと言ったら死んじゃうって決まってるんだから!」
「泣くんじゃねぇよ、大河。いいか? これだけは忘れるな」

──俺は竜だ。いつでも、いつまでも虎の……お前の傍らにいる

「りゅうううじぃぃぃいいいい!!!」

超ド級ラブコメアクションファーマームービー!
劇場版「とらドラ! 〜燃えよドラゴン〜」
2828年4月1日 全国一斉ドーロショー

「高須くん!君なら……いや、君だけが大河を満腹にできる!盛ってくれ!!」
「櫛枝!?」

かみんぐすーん?

すまんかったw

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