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【とらドラ!】大河×竜児【ニコニコ妄想】Vol19

1 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/01(金) 18:30:22 ID:b0RLCEuu
ここは とらドラ! の主人公、逢坂大河と高須竜児のカップリングについて様々な妄想をするスレです。
どんなネタでも構いません。大河と竜児の二人のラブラブっぷりを勝手に想像して勝手に語って下さい。
自作のオリジナルストーリーを語るもよし、妄想シチュエーションで悶えるもよし、何でもOKです。
次スレは>>970が立ててください。 もしくは容量が480KBに近づいたら。
    / _         ヽ、
   /二 - ニ=-     ヽ`
  ′           、   ',
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  ∧    〈 ∨ ∨ ヽ冫l∨
    ',   /`|  u     ヽ
    ', /          /
    /  ̄\   、 -= /                   __
  / ̄\  `ヽ、≧ー                    _  /. : : .`ヽ、
 /__ `ヽ、_  /  、〈 、           /.:冫 ̄`'⌒ヽ `ヽ、 / 〉ヘ
/ ==',∧     ̄ ∧ 、\〉∨|         /.: : :′. : : : : : : : . 「∨ / / ヘ
     ',∧       | >  /│        /: :∧! : : : :∧ : : : : | ヽ ' ∠
      ',∧      |、 \   〉 、_       (: :/ ,ニ、: : :ィ ,ニ=、 : : 〉  ,.イ´
      ',∧      |′   ∨ ///> 、  Y: '仆〉\| '仆リヽ:|\_|: :|
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  ,'            |            /. : : : :|:///∧ : ∨///: : : : : : : : : . \

まとめサイト
ttp://tigerxdragon.web.fc2.com/

前スレ
【とらドラ!】大河×竜児【モジモジ妄想】Vol18
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1258620217/

2 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/01(金) 18:31:14 ID:b0RLCEuu
過去スレ
【とらドラ!】大河×竜児【ラブラブ妄想】(1スレ目)
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1231122796/
【とらドラ!】大河×竜児【ニヤニヤ妄想】(2スレ目)
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1234443246/
【とらドラ!】大河×竜児【デレデレ妄想】(3スレ目)
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1236695653/
【とらドラ!】大河×竜児【イチャイチャ妄想】Vol4
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1237819701/
【とらドラ!】大河×竜児【ベタベタ妄想】Vol5
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1238865504/
【とらドラ!】大河×竜児【スキスキ妄想】Vol6
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1240317270/
【とらドラ!】大河×竜児【ドキドキ妄想】Vol7
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1241386432/
【とらドラ!】大河×竜児【アツアツ妄想】Vol8
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1242374673/
【とらドラ!】大河×竜児【フワフワ妄想】Vol9
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1243354181/
【とらドラ!】大河×竜児【クネクネ妄想】Vol10
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1244280781/
【とらドラ!】大河×竜児【ワクワク妄想】Vol11
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1245146459/
【とらドラ!】大河×竜児【モフモフ妄想】Vol12
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1246704738/
【とらドラ!】大河×竜児【ナツナツ妄想】Vol13
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1248388647/
【とらドラ!】大河×竜児【ユラユラ妄想】Vol14
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1249487623/
【とらドラ!】大河×竜児【モグモグ妄想】Vol15
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1251296860/
【とらドラ!】大河×竜児【ハフハフ妄想】Vol16
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1253001418/
【とらドラ!】大河×竜児【アマアマ妄想】Vol17
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1255435399/
【とらドラ!】大河×竜児【モジモジ妄想】Vol18
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1258620217/


3 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/01(金) 18:32:31 ID:b0RLCEuu
【※CAUTION※超重要事項!※CAUTION※】

非エロ(ギシアンレベルまで)はここに投下

ガチエロは新避難所に投稿、ここへは告知誘導のみ

アク禁に巻き込まれたなど直接投下できなかった非エロ作品の代理投稿は作者が望んだ場合に可

大河×竜児ラブラブ妄想スレ 新避難所
http://jbbs.livedoor.jp/anime/7850/

★関連スレ
竹宮ゆゆこ105
http://love6.2ch.net/test/read.cgi/magazin/1253937059/
【竹宮ゆゆこ】とらドラ3!【◆Daiko/D50o 絶叫】
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/comic/1244814492/
【フラゲ】とらドラ!総合ネタバレスレ 3版目
http://love6.2ch.net/test/read.cgi/bookall/1236595750/
【間島淳司】とらドラジオ!【喜多村英梨】
http://atlanta.2ch.net/test/read.cgi/netradio/1229772543/
【PSP】とらドラP!part10【ポータブル】
http://jfk.2ch.net/test/read.cgi/handygame/1254273765/
とらドラ!総合 
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/nhkdrama/1227538758/
【田村くん】竹宮ゆゆこ 27皿目【とらドラ!】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1260805784/

★キャラスレ
【とらドラ!】キャラ総合スレ
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1222905488/
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http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anime2/1261404042/l50
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【とらドラ】川嶋亜美×高須竜児
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1249892546/
■とらドラ! 総合スレッド Part.1■
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1215959570/


4 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/01(金) 18:33:13 ID:b0RLCEuu
まとめサイトより

Q、1話の机が吹っ飛ぶシーンどういうこと?超能力?
A、ちがいます。ラブレターを鞄に入れてたら人が来たので、ロッカー隠れようとして凄い勢いで移動したんです。

Q、とらドラ!ってどんな作品なの?
A、とらドラ!は高校生特有の『思春期』という限られたひとときの中、
 友達と過ごしながら楽しいと感じたり、ある時は落ち込んだり、
 またある時は恋に悩んだりしながら、毎日を過ごしていくという作品です。
 (雑誌インタビューより)

Q、何クールですか?
A、2クール25話(DVD8巻構成)です。

Q、会長とあーみんの区別がつきません。
A、川嶋亜美(あーみん・ばかちー):前髪が朝倉風、ややたれ目、胸がおおきい、モデル
  http://www.tv-tokyo.co.jp/contents/toradora/images/chara/ami.gif
  狩野すみれ(会長・兄貴):前髪ストレート、ややつり目
  http://www1.atwiki.jp/toradora?cmd=upload&act=open&pageid=19&file=up49532.jpg

【一目でわかるとらドラ!一話】
@猛獣が襲い掛かってきた
Aお腹がすいていたのでご飯をあげた
B「気に入った。これからも飯つくってくれ、毛づくろいとかも頼むわ」
C襲われそうだし、ほっといたら死にそうなので、しぶしぶ飼うことに
Dご飯あげたら、ちょっと尻尾ふった
Eいろいろあって付き合うことになっておしまい ←今ここ

実際は竜児を犬扱いしている大河こそが飼われている側っていうのが面白い

とらドラ! まとめwiki
http://www1.atwiki.jp/toradora/
とらドラ! AA保管庫(仮)
http://monabase.net/toradora


5 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/01(金) 18:33:55 ID:b0RLCEuu
この板の設定

1レスあたり最大4096バイトで改行は60行まで可能
半角で4096文字・全角で2048文字です

Samba24規制は40秒です
一度書き込んだら40秒は書き込めません

バイバイさるさん規制は40秒以上開けて投稿しても
スレッドに同時に書き込む人数が少ないと発動します
ROMってる人は割り込みを遠慮せずむしろ支援する方向で応援よろしくお願いします

●を持っていると上記の規制は無効化されます
ただし調子に乗ってSamba24規制無視して連投しているとバーボンハウスに飛ばされます
たっぷり二時間は2ちゃんねる自体にアクセス出来なくなるので注意

●売り場
http://2ch.tora3.net/

年間33$(だいたい3500円〜4200円前後 円高だと安く買えます)
登録メルアドはプロバイダのメールアカウントのみ フリーメールや携帯メールは使用不可

携帯もってんならこの方法で簡単なんじゃないか?

1:http://get.ula.cc/pc/ こっから携帯で新規口座作って12000狐PをGET
2:http://bainin.ula.cc/sale/maru/ ここから●二週間お試し券を買う
3:http://maru14.ula.cc/ ここでお試し券を交換
4:完了メールきたら専ブラのログイン設定にIDとパスいれる
5:今までと同じように書き込める

2週間過ぎたらまた同じ手順やればいいだけ。数回分あるし一月半規制続いても安心
iPhoneだったりしたらクレクレするしかないんだろうけどさ

お試し●の交換・利用について
1つの●をPC+携帯で共有可
同じメアドで試用期間内に重複登録はできない。14日経過後、期限切れメールが届いてからであれば、同じメアドで交換可
同一アカウントから期間が重複した交換をするには、メアドを複数用意すれば可能
ちょっと間使えなくてもいいという人は期限切れのメールがきてから再申請してください

栄光のニダーラン @ wiki
http://www36.atwiki.jp/nida-run/pages/1.html


6 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/01(金) 20:28:18 ID:1ZLS3p0I
>>1
乙です!
新年早々に新スレたぁ、縁起がいいや!

7 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/02(土) 17:53:51 ID:iq0eRIPK
>>1
久ぶりにアニメ全話見てきた

いつ見ても面白い


8 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/02(土) 22:18:12 ID:W4sYFsc0
>>1乙!あけおめ!

9 :いいのかなぁ:2010/01/03(日) 23:47:49 ID:H2zwwLlK
改めてあけおめです。

さて新しいスレに初めて投下…させてもらう!
うう、なんか緊張してお腹が…

えーと、事前に一言申し上げておきたいのですが、私は、下な話は、嫌いじゃないですが好きでもありません。
ほんとだよ?ウソジャナイデスジョ?

10 :検温:2010/01/03(日) 23:50:18 ID:H2zwwLlK
<趣旨>下なネタは控え目に!


【検温】


 大河がカゼをひいたらしい。
 朝から頭が重く、少し熱っぽいとのこと。

「とりあえず熱、計ってみるか」
「そうね。…時期的にインフルエンザ怖いけど、熱はそんなに高くないし。ただのカゼならそれにこしたことないしね」
「…体温計がないんだけど、お前もってないか?」
「えー!?あんたが知らないのに、私がわかるわけないじゃんよ!?」
「基礎体温のチェックは女子高生の身だしなみだろ?オギノ式は世界共通だぞ」
「そっ…そうなの?ど、どうしよう、わたし計ってない…」
「大丈夫だ。どうせそうだろうと思って、俺が毎朝検温して記録してるから」
「ナニ勝手なことしてんだこのエロ犬!?」
「ちなみに今月は…あと10日後くらいかな?安全日」
「そ、そうなの?ってナニしれっとのたまってやがるこのドエロス愚犬!!?」
「だって大事なことじゃないか」
「……アンタいま、限りなく素で言ったね?素そのものね?
 え、でもそれなら今朝も私が寝てる間に検温してるんじゃ?」
「いや…実は今朝から探してたんだけど見つからなくて、体温計。お前しらないか?」
「…さっきも言ったけど、アンタがわからないのに私が知ってるわけないでしょ。
 ったく普段から整理整頓を欠かさない片付け魔のくせして、必要な時に必要なものを無くすなんて、どこまで間が抜けてるわけこの役立たず!あー、怒ったら余計に熱が上がったような気がするわ」
「とにかく熱が高いかどうかはみてみるか」
「えー?体温計ないのに…あ、わかった、おでここっつんとかそんなエロいこと考えてるってわけねこのドsukebe発情犬!」
「んー…ちょっと違うかな」

 え?と不思議そうな顔をする大河の両頬に、ごく自然に竜児は手を伸ばし。

「あむ…っ!?」
 気づいたときには大河の唇は塞がれ、竜児の舌が口内に侵入していた。
「う…く…」
 その行為はキスなどという生易しいものではなく、
「く…ひいっ…」
 強引で、圧倒的で、
「ぐう…む〜〜〜〜!?」
 抗えず、逃げることすら許さず、
「う…ううううううううぅぅ…」
 奪い、貪り、全てを喰らい尽くしても更に求められて、
「……………っ、」
 それなのに、頭を捕まえて放さなかった手はいつしか優しく髪を撫でてくれていて、
 なにより、決して不快ではなくて。絶対に嫌なわけはなくて。

「……くぅん……」
 開放された時には、逆に物寂しささえ感じてしまった。

11 :検温:2010/01/03(日) 23:52:59 ID:H2zwwLlK
「うむ。とりあえず口内検温を試みたわけだが」
「あっさり現実に戻るなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!ってかコレ検温!!?」
「まあ…熱いのはわかったが、実際に体調不良で発熱があるのかは、よくわからなかったな」
「うわーこんなことしといてしかもわかんねーだってー。ちょっとコイツ殺しちゃってもいいよね私?」
「正確に体温を測るためには…まあ普通は腋かな」
「WHAT?」
 思わず外人になる大河には構わず、やはり自然に、いつのまにか手は伸びてきていて。

 ワキワキワキ。
「みにゃああああああああああああっ!?突然のワキワキカーニバル!!?」
 ワキワキワキワキワキ。
「ふひゃはひゃひゃひゃいひょへふっほほほおう!?く、くす、くすぐっちゃらりゃりゃりゃりゃりゃ――ぃ!!」
 ワキワキふにふにワキワキふにふに。
「ふひゃっほふふふふぅぅってちょ、ちょ、そこ!ワキちがう!ちがうってい、いやああああ…あふぅぅ…」
 ワキふにふにふにふにふにふにふにふにふにふにくりくりっ。
「ひっ、ひゃっ、はう、ふにゃあ、みにゃう…くひぃ!?」
「こら、暴れるな。そんなに暴れられたら余計に体温が上がるから、ますますわからなるじゃないか」
「あ、あ、あ、あんたドコ触ってんのよぉぉぉぉ!ていうかくりって!最後のくりくりっって!!?」
「…………」
「む、無言で指の匂いかぐなぁぁぁぁぁぁ!」
「いい匂いだぞ。俺、大河の匂い好きだからな」
「ここここの匂いフェチ!!?」
「…冬場は気がつくと俺のマフラーに顔を埋めてフニャフニャ鳴いてるお前には、言われたくない」

 はう、と口を閉ざす大河を他所に、竜児は考え込んだ。

「しかし、結局熱があるのかないのかよくわからんな…」
「今の行為もどこまでも検温なんかいアンタ…素直に体温計買ってくるか、とにかく病院に行く?あんまり行きたくはないけど」
「なあ大河」
「なによ」
「あと、直腸検温ってのがあるんだけど」

 …………。

「ちょ、ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待ったあああああああああああああああ!!?」
「ちょっと恥ずかしいかもしれないが、やはりこれが一番確実だと思うし」
「ちょっとじゃないし!っていうか今日のアンタ強引すぎだ――!!
 ステイ!ステイよ竜児!
 とにかくステイ!速やかにステイ!なにがなんでもスティってあ〜〜〜〜!?」
「だから暴れるなって。ちゃんと熱が計れないだろ」
「検温!?やっぱり検温!?こ、この検温の鬼め〜〜〜〜!!ええいもっと色々考えなきゃいけないこととか!あるでしょ大事なことが!?
「おおう!そうだな、大事だよなこれは」

12 :検温:2010/01/03(日) 23:54:20 ID:H2zwwLlK

 …………。

「りゅうじ?あの、とっても素朴なギモンなんだけど…その手に持ってる果実を模した容器はいったいナニ?」
「おう。知らなかったのかこのお嬢様め?これはイチジク浣ちょ…」
「皮肉で言ってんじゃああああぁぁ!乙女の前でカンチョーとか言ってんじゃNEEEEEEEE!!!
だ…だいたい…だいたいねっ!アンタ、そんなもん、しかも今気づけば結構な量を、ど、どどどどどうしよってのよぉぉ――!?」
「大河。…お前、もしかしてとんでもない勘違いしてないか?
 いくら果物の名前がついているからって、これは医薬品だ。流石にコレを食材に料理は作れねぇ。
 あと量に関しては、この前特売があったから」
「マジボケするなぁぁぁ!私、さっきからの慣れないツッコミポジションに、思いっきり途惑いっぱなしだよ!」

 両の拳を天井に突き上げてがおー、と吼える子虎さまに竜児は慈愛に満ち溢れた微笑を向ける。見かけは修羅界で永劫の闘争に明け暮れる悪鬼羅刹のような面構えだが。
 竜児はやさしく、やさしく大河の頭を撫でながら、言った。

「いいか大河。ちゃんと事前に処理してキレイにしておかないと。
 孕む心配ないからってゴム無しでやっちゃうと、尿道炎になっちゃうこともあるんだからな」
「何の心配だ―――――――ッ!?
 優しくステキに微笑みながらイチジクつまむな!!
 ス、スカート捲くるなあ!ひっ、やめ、ちょ…ぱ、ぱぱんつ返してぇ!!
 せ、せめてトイレに………!?」

 一拍の間を置いて。

「ひ―――――――――――、ひゃ――――――――――――――!?」

 ――ギシギシAnAnギシギシAnAn

  ***

「――と、まあこんなステキな看病イベントが発生していたのではないかと」
「だーっ、何かと思えば妄想オチかよ。アホくさっ」

 昨日、熱を出して学校を休んだ親友をネタに好き勝手な妄想をダダ洩れしまくる実乃梨に、軽く亜美がつっこむ。
 そしてネタにされた親友の方は。

「みのりん♪とりあえず歯ぁくいしばれ?」
「そんな可愛い顔と声で拳をギリギリ握り締めるな。喰いしばった歯ごと持っていかれそうで怖いぞ」

 コートを着たまま竜児を椅子に座らせ、その彼の膝の上でコートに包まれている大河の姿は、手乗りタイガーではなく仲良し親子カンガルー。
 一応病み上がりなんだし防寒には気をつけないと!という理由は、6億歩譲っても学び舎で公然ラブラブするための言い訳にしか見えない遺憾な状態である。

13 :検温:2010/01/03(日) 23:57:27 ID:H2zwwLlK
「まったくみのりんもそこの万年発情チワワとつきあうようになって、ちょっと色ボケが感染しちゃったんじゃない?」
「うわはははは!そぃつぁ違うぜ大河?みのりんだって今時の女子高生、元からチョイと下な話はあーみんほどじゃぁねぇが、大好物さね!」
「あれ…なんだろう…さり気なく私、裏切られてる感じ?」
 ビミョーに傷ついてる亜美である。
「まあ…昨日はそれはもう、スタンダードかつ王道な看病イベント発生だったわね。おかゆふーふーからア〜ンのコンボとか」
「…玉子粥を土鍋三杯おかわりする病人ってのもどうかと思うんだが」
「…三杯分、ふーふーア〜ンって?…それはそれで大変ね、高須君」
「いいんだよ。好きでやってることだし」
「…さり気なく惚気られてしまった。でも王道ってことは、汗拭いてもらったり…着替えとかあ?」
「ほんと思考が下いよねばかちーは。竜児もそれくらいの攻撃で顔を赤らめるな。キモいから」
「お、おう。……せ、せいぜい添い寝してやったくらいだぞ」
「腕枕でね」
「……大河よぉ。一見らぶらぶ発言だが、要は年頃の男女が同衾しましたって内容を聞かされた気がするんだがねぇ?」
「人のこと散々下いネタで弄ってくれたみのりんにとやかく言われたくないでーす。っていうかちょっと気になってたんだけど、なんでギシアンのアンが「An」なの?」
「え?それはもちろん後ろの方だからアナ…」
「実乃梨ちゃんスト―――ップ!流石の私もそこまで無分別な発言はしないし止めるよ!?」
「おお…認めた…」「自分がエロいこと認めましたなあーみん…」「川嶋…」
「今までさんざ下なコト言っといて、なんでみんなして亜美ちゃんをそんな目で見るわけ!?スルーしとけよそこは!
 大体ねぇ、実乃梨ちゃんはBLとか読みすぎなんじゃね!?マンガなんかじゃ簡単にズポヌポ抜き差ししてるけど、あれはやおい穴だから!フィクションだから!
 実際にそんなので感じちゃうのってド変態のアブノーマルだし!! リアルにやったらケガするって話だよ!祐作が言ってた!!」
「……あーみんって実は墓穴掘りっていうかカモネギなタイプだよねぇ。
 それはそうと北村くんがそのようなことを?どれ、もそっとそのあたり、詳しくこのババに聞かせてくれないものかねぇ」
「はうあ!?」

 赤くなった顔を隠すように頭を抱え込む亜美を心の底から楽しそうに弄くる実乃梨という、二人の友人の仲良しっぷりを微笑ましく眺めながら、相変わらず竜児のコートに包まったままの大河は、彼の胸にこつん、と後頭部を当てた。

「………変態さんか。そうだよね、それがフツーだよね」
「…………」
「…でも…なっちゃったものは…しかたないってゆーか…」
「…おう…」
「………りゅうじのばか………」
「…すまん。まさか処方された薬が座薬だったとは」
「…りゅうじ?」
「おう?」
「りゅうじは、その…そっち、興味あったわけ?っていうか、その…えっと…」
「――好みってわけじゃ…なかった。でもお前、あんな可愛い悲鳴あげて、顔真っ赤にして…抑えられなかった。ほんっと、スマン」
「…いいわよ。最終的には私のことなんだし。ただ…さ?」
「うん?」
「壊れないように気をつけて…あと、尿道炎?」
「……お、おう!」

   <しゅー、りょ――――!>

14 :検温:2010/01/04(月) 00:03:33 ID:02v4YkPt
えーと。
…とりあえずギシanレベルってーことでー。
……いやあのですね、ほれ、前のクリスマスの話から続けてこれ投下して、
まかり間違って今年最後の締めくくりにでもなったらマズイよねーって日を置いたんですよ?
………今年のオープニング飾るのコレかよって、いま、ひしひしとやっちまった感が来てますがね!

いやホント…下いネタはほどほどにね?

15 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/04(月) 01:19:12 ID:guiwWvgV
>>14
新年から良いものを…。
GJです。


16 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/04(月) 14:14:20 ID:ALkxNMvh
クリスマスの奴と合わせて楽しませてもらったよ
所々カオスっぷりが半端ねえがそこが良い!!

17 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/04(月) 21:43:14 ID:xxxxgpfy
>>14
会話のテンポがいいねぇ。すごい萌えたw
GJです!

18 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 20:24:11 ID:KcJmjR/D
夕食後の高須家。久しぶりに夕食にお呼ばれした大河は、寝そべって
足をぱたぱたさせながら、テレビと後片付けをしている竜児を交互に
眺めている。

その大河の視線が突然薄型テレビの画面に釘付けになった。

「ひゃぁ!竜児、見てみて。体重190kgですって」

一仕事終わった竜児が手を拭きながら居間に戻ってテレビを見る。

「うわっ、なんだこりゃ。どこかで何かがおかしいって気づかなかったのかよ」
「いやぁねぇ」
「てか大河、お前もそうとう食ってるから気を付けろよ」
「何よ、私は太らない体質だもん」
「とかいって秋は小太りしてたじゃげふっ!」
「余計なこと言わないの」
「何だよ……て、あ、飯食ってるぞ」
「ほんとだ、すごい量……え?」
「あ、好きなもの、肉、肉…おい」
「ななななによ、偶然よ……あ」
「……たらこスパが好物……」
「……ねぇ、竜児」
「そんな捨てられた子猫みたいな声だすんじゃねぇ」




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今日見たテレビ番組がショッキングなので飛んできました

19 :前スレ503:2010/01/05(火) 21:03:05 ID:Vtmq+7Jx
前スレ埋め立て乙でした。

>>504>>506>>509
吹いたwww
とらドラとこのスレにはそっちの方が合ってるねw
>>503が改変に見えてくるから不思議!
おまいらありがとう!

>>507
大河さんいろいろお疲れ様ッス!
竜児の鈍犬具合にこっちがイライラするw

>>14
これは……すごいものだww
テンポが良くてサクサク読めたよ。
うん、まぁ、下ネタは程々になw

>>18
すげー。
大河4,5人分か……

20 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 21:33:55 ID:6wc0A5rn

>>19
ナイスな、前スレ>>503の投下があったからこそ!
とらドラ!の懐の深さが分かる展開ですねw

21 : ◆x6jzI2BeLw :2010/01/05(火) 21:43:15 ID:wbfQa1wl
先日はお騒がせしまして失礼しました。
年も改まりましたので、作品の投下を再開したいと思います。
ご意見やメッセージなどありがたく読ませて頂きました。

それでは前スレの続きを投下します。
まとめ人様にタイトルを付けて頂きました>ありがとうございます。

以下、8レスほど使用します。

22 :Bon Voyage!2 ◆x6jzI2BeLw :2010/01/05(火) 21:44:30 ID:wbfQa1wl

「ねえ、竜児」
「おう」
買い物に出掛けようと借家の階段を先に降りきった大河が振り向いて言う。
「少しだけ時間、ある?」
「あんまりねえけど・・・」
スーパーの夕市が始まる時間を気にする竜児がそう言うと大河は少し残念そうな顔をした。
「・・・今度にする」
「何だよ?何かあるのか?」
遠慮するなよと竜児は大河に発言を促す。
「ん・・・あのね。・・・久しぶりに学校が見たくなったの」
「学校って?・・・大橋高校のことか」
大河はこくんとうなずいた。
「何でまた?」
「何でかな、自分でもわかんない」
どうしてそんな気分になったのか大河自身も分からないのか、不思議そうな表情を見せる。
「・・・ちょっとだけ、寄ってくか」
「いいの?」
「いいさ・・・その代り、タイムサービス品が売り切れたら夕食メニューは変更だぞ」
「ありがとう、竜児」
顔をほころばせる大河に竜児は優しい気分になる。

かつて通い慣れた通学路を大河と並んで歩きながら、竜児が言い出す。
「あれから、ちょっとしか経ってねえんだよな・・・つい昨日のことみたいに思えるけど」
「あれから?」
「おう、毎朝、こうやって大河と並んで学校へ行ってた頃からさ」
「そうだね・・・竜児と一緒に通えたのって一年足らずだったけど・・・とても充実した一年だった」
大河は少しだけ遠い目をして、空の一点を見つめた。
「私、思うんだよね」
「ん?」
「もしも、あのまま・・・私がママの下に帰らなかったら・・・ずっとあのマンションに住んでいたら・・・どうなったのかなって」
「何も変わらねえだろ」
大河は少し考える素振りを見せ、小さく首を振った。
「違うのかよ?」
「今と同じじゃないと思う」
きっぱりと大河は言い切った。
大河の聞き捨てならない台詞に竜児は勢い込んで聞き返す。
「ど、どう違うんだよ。まさか、俺とおまえの関係が変になってるとか言うんじゃないだろうな?」
「言わないよ。私は竜児から離れるつもり無いから・・・竜児も、そうでしょ?」
「ああ・・・そうさ」
安心したと言うように竜児は声のトーンを落とす。


23 :Bon Voyage!2 ◆x6jzI2BeLw :2010/01/05(火) 21:46:01 ID:wbfQa1wl

「竜児と気持ちが通じ合えて・・・すぐだったよね・・・私が黙って居なくなっちゃったの」
「・・・そうだったな」
あの時の気持ちを思い出し、心の古傷が痛むような錯覚を竜児は覚えた。
書置きひとつ残して大河が母親の下へ旅立った、高2の冬。
そして長い、長い冬が終わり、春が来るまで一年と言う時間が必要だった。
大河が居ない一年・・・竜児は自分がどうやって過ごして来たのかと思う。
「あのまま、一緒に居られたら・・・楽しかっただろうなって思うの・・・夏休みはずっと竜児の家に居て・・・一緒に受験勉強するの。思い出もいっぱい作れて・・・何か想像するだけでも楽しい」
本当にそう思うのか大河は目を細める。
「そして、大学生になって・・・学校がもし違っても、お隣同士だから、きっと前みたく毎日、会えて・・・こんな今みたいに、会いたいのに会えないなんて、こと無かった」
「・・・大河」
「竜児・・・誤解しないでよ。今が嫌だって言ってるんじゃ無いんだから」
竜児の目を見ながら大河ははっきり言う。
「おう」
「だから、もしそうなっていたら・・・・・・多分、駄目になってた・・・私」
意外なことを伝える冷気を伴った大河の声。
「だ、駄目って?」
狼狽を感じながら竜児は大河に先を続けるように促した。
「竜児を嫌いになるとかそんなんじゃないよ・・・私が、今の私じゃないってこと」
大河の言い回しは難解で、竜児はその真意を掴みかねた。
「今の私じゃない?」
オウム返しのように竜児は聞き返す。
「うん・・・ずっと前に竜児、言ったよね・・・私は虎で竜児は竜だって」
「ああ、確かにな」
大河と知り合って間もない頃だったよなと竜児はその頃の記憶をたどる。
「そして、こうも言ったよね・・・竜と虎は並び立つって」
竜児は無言で頷いた。
「今ね・・・はっきり自覚出来るんだ。私はちゃんと自分の足で立ってるって・・・ちゃんと竜児の側に立っているって思えるの」
「そんなの・・・昔からそうだっただろ?」
「うん・・・だから、あのまま私がママのことも無くて、竜児と一年間離ればなれになんなっかたら・・・私、きっと竜児の側に立っていない」
「それって?」
「ううん、私が居なくなるとかじゃなくて、私はずっと竜児の側にいる・・・でも、それは並び立つんじゃない・・・多分・・・竜の背中に乗ってた・・・何もかも任せ切りにして」
少し顔を伏せる大河。
竜児は大河の言わんとするところが大体、理解できた。
すなわち、あのままだったらすっかり主体性を無くして完全に竜児に寄り掛かるだけの自分になっていたと大河は言いたいのだと。
「・・・そんなこと、ねえよ・・・大河は、何があっても大河だ」
自信なさげにうつむき加減に歩く、大河の頭を竜児は軽くポンと叩いた。
「・・・竜児」
顔を上げ、竜児を見る大河。
「それに今ははっきりしてんだろ・・・ちゃんと俺と並んで歩いてる・・・少なくとも俺は大河を背負ってる感じはしねえ・・・そうだろ?」
「うん・・・じゃあ、あの一年は・・・」
「無駄じゃなかった・・・いや、それ以上だ」
竜児のこのひと声に大河は安堵の表情を浮かべる。
「ずっと気にしてた・・・竜児の気持ちも考えないで、黙って行っちゃって・・・戻って来てからも竜児は変わらないで私を見てくれる・・・どれだけひどいことしたのかなって・・・」
「おいおい・・・寒い川の中で誓っただろ・・・あん時の気持ち、今も変わっちゃいねえ・・・むしろ強まってるくらいだ」
「・・・竜児」
「大河と離れて見て・・・見えて来たものとかいっぱいある・・・どんだけ、お前が大切か、だってことだ」
もうお前しか考えられないとひたむきな視線で竜児に見つめられ、大河は体が震えるような思いを感じた。
そのまま泣きたくなる様な予感を覚えた大河は照れ隠しのように竜児の左腕にしがみ付き、顔を埋めた。



24 :Bon Voyage!2 ◆x6jzI2BeLw :2010/01/05(火) 21:47:09 ID:wbfQa1wl

「全然、変わんないね」
「当たり前だ」
大橋高校の校舎は竜児と大河が通っていたその頃のまま、ふたりを出迎えた。
日曜日でも部活動があるのか、開いたままになっている正門。
「ねえ、竜児」
「おう」
「ちょっとだけ、入ってみない?」
「まずいだろ・・・もう生徒でもないのに」
「だって竜児は卒業生だし、私も元、在校生」
何の遠慮がいるのと大河に主張され、竜児はしぶしぶ同意した。
まあ、見咎められたら身分を明かせば問題ないだろうと竜児は考える。
俺たちのことを覚えている先生も残っているだろうし・・・と大河に引っ張られながら竜児は楽観することにした。

「懐かしい」
さすがに建物の中に入るのは憚られるので、外から昇降口を覗き込む。
「右から3番目だったよね?・・・2年の時の靴箱の場所」
「4番目じゃねえか、確か」
「3番目よ、絶対!」
「その自信は何処から来るんだよ?」
確信あふれる大河の物言いを竜児は不思議がる。
「だって・・・転んだから」
言い難そうに大河は自信の根拠を明かす。
「靴を履き替えようとして・・・バランス崩したのよ。で、そのまま強引に靴を履こうとして・・・こう、まっすぐ、あの柱に・・・」
激突したと大河は言う。
だから、柱の位置から考えて3番目しか有り得ないと大河は根拠を説明した。
「・・・ドジめ」
如何にも大河らしいと、その時の光景を想像して竜児は可笑しくなる。
「言うんじゃなかった」
やや憮然としながら大河はつぶやく。
「次、行くわよ」
まだ、笑い顔を収めない竜児をその場から引き剥がすべく、大河はすたすたと歩き出した。
そのままずんずんと竜児を後ろに置いて歩く大河は見覚えのある場所で足を止める。
「・・・ここ」
そこは校庭へ続く校舎脇の通り道。
教室棟と管理棟のふたつの校舎をつなぐ空中回廊のすぐそば。
大河は一瞬で時間がさかのぼった様な気がした。
目を閉じた大河の向こうで笑う北村の姿。
告白されて振った北村に告白し返したあの日。
気持ちは届かなかったけど、その代りに大河がここで得た物がある。
それは・・・。
「・・・大河、勝手に先に・・・」
目を開け、振り向いた大河の視界いっぱいに飛び込む追い掛けて来た竜児の姿。
あの日もこうやって立ちすくむ大河に声を掛てくれた。
「・・・泣くかと思った・・・でしょ」
やんわりと大河は台詞の修正を求める。
「・・・何で、大河が泣く・・・?」
そう言い掛けて竜児もはっと気が付く。
「ああ、ここだったよな・・・俺はそこから降りて来て」
竜児が指し示す校舎の外に付けられた非常階段。
「泣くかと思った」
竜児は何年前かの台詞を再現した。



25 :Bon Voyage!2 ◆x6jzI2BeLw :2010/01/05(火) 21:48:14 ID:wbfQa1wl

「そうよ、あんたはそう言ったのよ」
「竜虎の誓いか・・・俺とお前の原点みたいな場所だな」
「初めて、竜児が私の名前を呼んでくれた場所でもあるわ・・・大河って」
「そうだったかもしれねえな。でも、俺はお前に蹴飛ばされた痛い思い出しかないぞ」
「失礼ね、蹴っ飛ばしてないわよ」
「こらこら、歴史を改ざんするな。真実は認めろ」
「はいはい。ごめんなさい、悪うございました」
一ミリ足りとも心のこもらない謝罪の言葉を大河は口にする。
「おまえなあ」
「ふんだ、とっくに時効でしょ、そんなこと」
苦笑する竜児に大河は開き直る。
そのまま大河は竜児に背を向け、後ろで手を組む姿勢で告白する。
「今だから言うけど・・・あんたに、竜児に初めて名前を呼ばれた時、電気ショックみたいにピリッとしたの。馴れ馴れしいとか全然思わなかったし・・・」
「それにしちゃ、散々な言われようだった気がするぞ」
「素直じゃなかったからね」
はっきりと言い、大河は竜児へ向かって振り向く。
「だから・・・自分の気持ちに気が付いてるのを誤魔化してた・・・もっと素直になれば良かったって今は少しだけ後悔してる」
「・・・大河」
「もしかしたら、この学校で竜児とクラスメートでもなく、お隣さんでもなく、友達でもない・・・今と同じ関係で歩けたかもって・・・恋人らしいこと何ひとつ出来ないまま、高校生活終わっちゃったからね」
もったいないことをしたと大河は叶わなかった夢を繰り言の様に言う。
「でもな、大河」
「うん?」
「あの一年があったからこそ、俺は安心してお前を見ていられる・・・これでこそ、俺のパートーナーだってな」
「・・・竜児」
竜児の柔らかな目線の前に大河は冬の陽だまりのような温もりを感じ取っていた。
「ホント、大人になったと思う、大河・・・」
「それじゃまるであの頃の私が子供みたいじゃない」
竜児の言葉尻を捕らえて大河はチクリと抗議する。
「違うのか?」
おどけた調子で竜児は大河をからかう。
「竜児!」
「わりい、ちょい、言い過ぎたか」
わずかに怒気を見せた大河に竜児は平謝り。
「いいのよ、それくらい・・・あの頃と違って大河様の心は広いから」
これまた、おどけた調子で竜児に言い返す大河。
「あ、でも罰ゲームね」
急に思い付いたのか大河が言い出す。
「何のゲームだ?」
竜児に構うことなく大河は話を続ける。
「竜児、手、繋いで」
そんなことお安い御用だと大河が差し出す右手を竜児は左手で握り返した。
「しかし、珍しいよな、お前がそんなこと言い出すなんて」
「目を閉じて、竜児」
「まだ、あんのか?・・・これでいいか?」
大河に言われるまま目を閉じる竜児。
「そうね、それでいいわ」
目を閉じた竜児を前に大河は続ける。
「・・・今から、魔法を掛けるから、時間がさかのぼる魔法・・・竜児、笑わない」
竜児の口元が緩むのをめざとく見つけた大河が注意する。
「お、おう、わりい」
「いい、私がこれから10、数えるから・・・数え終えたら・・・目を開けて・・・いい?」
竜児は無言で頷いた。
「ひとつ・・・ふたつ・・・みっつ・・・1年くらい戻ったかな・・・四つ・・・五つ・・・六つ・・・2年くらい戻った・・・七つ、八つ、九つ・・・十・・・今は高3の冬・・・」
目を開ける竜児。
大河の言う罰ゲームの意味が分かり、竜児は胸が少し熱くなった。
ならば、徹頭徹尾、乗ってやろうと瞬時に決め、行動に移す。


26 :Bon Voyage!2 ◆x6jzI2BeLw :2010/01/05(火) 21:49:14 ID:wbfQa1wl


「わりい・・・ホームルームが長引いちまって」
急いで駆けて来たと言う演技を交え、膝に手を沿え前屈みになり、息を切らせて竜児は言う。
一瞬、え?と言う顔をした大河だがすぐに表情を改め、いつもの調子で言い返す。
「遅い、竜児。待ちくたびれた」
「しょうがねえだろ、センター試験まで後、わずかなんだ。担任が気合、入りまくりで・・・」
「そっか・・・国立・・・理系、選抜クラスだもんね」
少しつっかえながら大河は言う。
「ふ、そういう大河のとこは大丈夫なのかよ?私大文系クラスは?」
「へ、平気・・・まだ試験まで時間あるし・・・」
そう言いながら大河は『ああ』と内心、思った。
竜児とは違うクラスなんだ・・・大橋高校3年生の私は・・・。
「竜児なら、きっと大丈夫・・・志望校、受かるよ」
現に受かってるし・・・と大河は続く台詞を飲み込む。
「大河も・・・だな・・・この間の模擬試験、A判定だったろ」
「う、うん・・・そうだけど」
「ホント、頑張ったよな、大河」
アドリブでやっているお芝居なのにと、大河は胸の内が熱くなるのを抑えられなかった。
本当にあの受験を前にした不安定な時に竜児から励まされているような気分になってしまったのだ。
決して、史実では味わうことの出来なかった思いを追体験する大河は気持ちだけが高3になっていた。

「この間の文化祭・・・楽しかったね」
「おう・・・2年連続、ミス大橋だもんな、大河」
「そ、そうね・・・当然よ・・・何しろ、あんたの彼女なんだから」
竜児は夢想する。
もし、大河が3年生になって出場していたら・・・きっとまたあのティアラを抱くことが出来たはずだと。
その時は堂々とダンスを申し込んで、みんなの前で大河と踊ってやったさ。
「後夜祭・・・争奪戦・・・すごかったね」
2年の文化祭であったすさまじいバトルを思い浮かべながら大河は言う。
「おう・・・あれは前代未聞だったな・・・ミス大橋にダンスを申し込む権利を獲得するレース」
「竜児、頑張ったんでしょ?」
「頑張るも何も、出場者が俺しかいなかった・・・不戦勝だ」
「え?どうして?」
「当たり前だろ・・・大河はもうフリーじゃねえ・・・俺の・・・高須竜児の彼女なんだから・・・ダンスを申し込もう何て奴はいない」
「あ・・・」
大河は手を口元にあて、竜児を見る。
「・・・そうだよね・・・竜児は私が座ってる席までゆっくり歩いて来て」
大河の脳裏に浮かぶ3年生の竜児・・・ミス大橋と看板が出ている特設席へ向かって校庭を横切り、大河へ少しずつ近付く竜児。
竜児の脳裏に浮かぶ3年生の大河・・・ミス大橋と看板が出ている特設席でわずかな微笑みを浮かべ、竜児が来るのを待っている大河。
「そっと、手を取って」
「俺は大河に言った」
「覚えてる、私」
「俺と踊ってくれるか?」
「・・・喜んで・・・私、そう言ったわ」
「俺は大河の手を引いて」
「一緒に踊ってくれた・・・竜児」
シンクロするふたりの想い。
バーチャルな世界だったけど、大河と竜児は確かにダンスを踊っていた。


27 :Bon Voyage!2 ◆x6jzI2BeLw :2010/01/05(火) 21:50:14 ID:wbfQa1wl


「ところで、なんでこんなとこで待ち合わせなんだ?」
明らかに下校の待ち合わせ場所にしては不自然なところ。
変化球を投げる竜児に大河は少し返答に詰まる。
「そ、それは・・・そ・・・そう、みのりん・・・みのりんに」
とっさに大河が口にした親友の名前。
「ああ、櫛枝か・・・あいつ、さっさと体育大への推薦、決めちまってノンキそうだよな・・・引退したソフト部へ戻って練習してるなんて」
竜児は大河に上手く話を合わせ、会話を続ける。
「だから、その練習を見に行こうって」
それが待ち合わせの理由だと大河はこじつける。
実際、校庭の方からは人のざわめきが聞こえて来て、どこかの部が練習している雰囲気だった。
「じゃ、行って見るか」
竜児はすたすたと歩き始める。
これには大河の方が慌てた。
急いで竜児の後を追い掛け、校庭の見える場所へ出る。
そのバックネット越しに見える校庭でソフト部のユニフォームを身に纏った少女達が一列になってランニングをしていた。
列の先頭で掛け声を上げるショートと言うには伸び過ぎた髪の少女。
・・・おおはし〜ふぁいお〜ふぁいお〜
バックネットの裏に並んで立つ私服姿の竜児と大河に訝しげな視線を向け、ふたりの前を走り抜けていく。
その瞬間、確かにふたりは櫛枝実乃梨の声を聞いた。
・・・お、たいが〜、やっほー・・・あれ、高須君も・・・相変わらず仲良しで・・・ババは少し妬けるでえ〜




28 :Bon Voyage!2 ◆x6jzI2BeLw :2010/01/05(火) 21:51:05 ID:wbfQa1wl

校庭の遠くへ走り去るユニフォームの列。
竜児の袖を引っ張り、大河はその場を離れる意思表示をする。
「行こ、竜児」
「お、おう」
まっすぐ正門を目指して歩く大河。
竜児はその後を追い掛けながら、大河に話し掛ける。
「そうだ、今日の晩ご飯、何がいい?・・・学校帰りに買い物寄るだろ?」
「100グラム、88円の牛肉で焼肉・・・」
「・・・妙に具体的だ・・・な・・・」
言い差して竜児は気が付いた。
それはこれから行く予定のスーパーの夕市で売られるはずの特売牛肉。
竜児が狙っている商品でもあった。
「魔法はもうお終い・・・遅くなっちゃったけど、まだ間に合う?」
大河は「ごっこ」の終了を告げた。
「もういいのかよ?」
「うん・・・いくら想像しても・・・それは本物じゃないから・・・」
少しだけ寂しげな大河の横顔。
竜児はそれを見て、堪らなくなる。
もしかしたら、共有出来た時間・・・それはもうどれだけ望んでも取り戻せない。
「大河」
「何?竜児」
竜児を見上げる大河。
「うまく言えねえけどよ・・・思い出は大切かもしれねえ・・・だけど、そんなもの、年を取ってから考えればいい・・・これからたくさん、俺とお前の思い出を刻むんだ・・・この学校で、お前と過ごせなかった時間は正直・・・辛く感じた」
「・・・竜児」
「女々しいかもしれねえけどな・・・どれだけ、大河が側に居てくれたらって何度も思った」
少しだけ表情に辛さをにじませ、大河は竜児の次の言葉を待った。
「でもさ、どんだけ長くても夜は朝になるはずだし・・・冬の次は絶対に春が来る・・・大河は帰って来るってそれだけを信じて待ってた」
「じゃあ、今は春なの?」
「ああ、本当の春はまだ先だけどな・・・今は大河が居てくれる・・・それだけでも十分、俺には暖かいぜ。・・・だからさ、今、この瞬間を大事にしたいんだ」
「・・・竜児」
目尻が少し下がった大河は笑いを堪える様な顔をして、竜児を上目遣いに見た。
「何だよ?」
「・・・クサすぎ・・・・・・でも、嬉しい」
そう言った大河は柔和な笑顔を浮かべ、それから密着させるみたいに竜児へ体を寄せた。
「・・・大河?」
「へへ・・・こうすればもっと暖かいよ」
笑顔でもぞもぞと大河は竜児に擦り寄る。
「そうだな」
竜児は寄り添う大河に腕をまわしてより強い一体感を求めた。
「・・・暖かい、竜児」
夕暮れ迫る校舎脇に伸びる長い影はそれからしばらくの間、ひとつに重なったまま動かなかった。



29 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 21:52:09 ID:wbfQa1wl
以上です。
続きはまた、後日に投下します。

30 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 22:30:20 ID:6wc0A5rn
>>29
うおおおー、おかえり! また戻ってきてくれて嬉しいです!
アニメエンドからの空白の1年の振り返りが、せつないけど、甘酸っぱい。
たまらん!

31 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/05(火) 23:45:26 ID:vIVgWF/l
>>29
おかえりw
待ってたよ、今日も切なくてステキング!

32 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/06(水) 03:18:02 ID:E9+8zy8T
前スレ
>>507
いい補完だわ、これ
GJ!

33 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/06(水) 21:34:53 ID:mz1+d6r/
>>29
おかえり!
切ないよ〜
だけど甘いよ〜

34 : ◆fDszcniTtk :2010/01/06(水) 23:37:59 ID:S9la1SMt
新作投下

「パパと呼ばないで」

4レスくらい。

35 : ◆fDszcniTtk :2010/01/06(水) 23:39:09 ID:S9la1SMt
「ねぇ、パパ?」

猫なで声を出す娘に『パパ』と呼ばれた男は思わず口に含んだウィスキーにむせそうになる。料理をしていた妻も驚いた顔でこちらを振り返っている。

「な、なによ、そんな顔しなくてもいいじゃない」

と、顔を赤くしてふくれて見せたのは、長女の大河。18歳。まだ大学に入ったばかりの青春まっただ中である。娘に声を掛けられたくらいでウィスキーにむせそうになる父親というのも変だが、しかしそこはそれ。どんな家庭にも事情がある。

男が娘と一緒に暮らし始めたのは、つい1年前である。結婚相手は再婚で、別居中の娘がいるのは知っていた。が、それが元の夫と仲がこじれて結局こちらで引き取ることになった。引き取ることには別段不満も何も無かったし、娘も妻に聞かされた程には規格外でもなかった。
この一年は義理の父娘にしては十分以上に平穏だったと言える。

それが偶然ではなく娘の懸命の努力によるものだということにも、彼は気づいている。気づいた上で気づかぬふりを通していた。重要なことは、早く本当の家族になることだ。必要以上に気遣ってぎくしゃくしてもはじまらない。

が、それはともかく、その義理の娘が、今目の前で初めて自分を『パパ』と呼んだのだ。これは偉大な一歩と言っていいだろう。この一年間、彼女はかたくなに母親を『ママ』自分を『おとうさん』と呼んでいた。
それが居心地の悪さから来るのか、照れだったのかは別にして、とうとう彼女は自分を『パパ』と呼んでくれた。軽い感動に胸が熱くなる。

「いや、悪かった。何だい?」
「あのさ?お酌してあげようか」

おお、とこれまた胸が熱くなる。年頃の娘にお酌をしてもらえるとは。義理かどうかなど関係ない。照れくさそうに笑っている仕草も可愛いし、いよいよ本当の家族になれたのかもしれない。

「うれしいな。だけど大河。ウィスキーのお酌はあまりかっこよくないから、日本酒にしよう」
「そうなの?」
「ああ。女性のお酌が一番絵になるのは日本酒だな」
「そうなんだ」
「高須君にきれいなお酌をしてやればいちころだぞ」
「あなた!」

今日は既に結構まわっている。酔いに任せてつい軽口が突いてでた。キッチンから射殺すような言葉が飛んできて、思わず首をすくめる。目の前で娘が笑っている。妻は娘の恋人の高須竜児君に対して幾分態度が固い。


36 : ◆fDszcniTtk :2010/01/06(水) 23:39:56 ID:S9la1SMt
立ち上がり、棚にならんでいる瓶の列から日本酒を取り出す。四合瓶だとお酌には大きすぎる。少し考えて伊万里の一合とっくりとぐい飲みをテーブルに並べ、とっくりに日本酒を移す。

「さぁ、教えてあげよう。大河、右に座って」
「右のほうがいいの?」
「そのほうが絵になる」

おとなしく右の椅子に移ってくると、娘が信頼しきった表情で見上げる。こんな顔はほとんど初めて見た気がする。

「どう持つの?」
「右手でとっくりの下を持って。今日は冷やだけど熱燗の時には火傷することもあるから気を付けるんだ」
「やけどに気をつけるのね」
「左手は人差し指と中指をとっくりの首のあたりに添える感じで。そう、力は入れなくていい。脇を締めたまま腕を伸ばしてお酌をする。とっくりがぐい飲みに触れないように。うまいうまい」

母親似で人並み外れた美貌の娘が神妙な顔でお酌をしてくれている。父親冥利に尽きるな、と思う。

「こんな感じ?」
「ああ、上手だ。絵になってる」

品のいい味の日本酒をぐいとあおって娘に微笑む。娘も嬉しそうに笑っている。

「ねぇ、パパ。私も呑んでいい?」
「ああ、少しくらいならいいさ、呑みなさい」

そういって機嫌良く立ち上がり、ぐい飲みをもう一つ取り出そうとしたときだ。

「待って」

キッチンから声がかかった。

「大河、あなた麻酔アレルギーがあるでしょ。お酒飲んで大丈夫なの?」
「え!?」

そんな話は聞いていない。娘を見ると、複雑な表情をしている。どうやら本当にアレルギーがあるらしい。

「あるけど…でもシャンパン飲んだことあるよ」
「いつ呑んだのよ」
「中学生の時…」
「お医者さんはいいって言ったの?」
「ううん、お医者さんには聞いてない」

妻は険しい顔で唇を噛んでいる。前の夫の軽率な行動に怒っているのだろう。リビングに気まずい空気が流れる。


37 : ◆fDszcniTtk :2010/01/06(水) 23:41:28 ID:S9la1SMt
「麻酔アレルギーがあるとアルコールはまずいのかい?」
「わからないわ。わからないから最初にお医者さんに聞くべきでしょ」

正論だ。

「大河、あなたシャンパンどのくらい呑んだの?」
「ひと口くらい」
「そう」

ほっとした様子だが

「ねぇ、ママ。お酒も一口くらいならいいんじゃない?」
「ダメよ」

これは妻が正しいだろうと思った。日本酒だから悪いとは思わないが、ずるずるとなし崩しにしてもいいような話ではない。しかし、娘も食い下がる。今度は自分に向かって

「じゃぁ、さ……私こんどお医者さんで調べてもらうから。ね、そしたらパパと一緒にお酒飲めるし」

とにっこり笑う。それなら文句はない。心配も払拭出来るしいいことだらけだろう。

ところが、

「待ちなさい」

これにも妻が待ったをかける。つかつかと歩いてきてテーブルの前で娘を見下ろす。今まで見たことのないような厳しい表情をしている。

「あなた、何企んでるの?」
「な、何よ。企んでるって。変なママ」

そう言って娘がぷぃっと顔をそらすのを見て、ようやく妻が何らかの図星を突いたらしいことに気づいた。

「高須君ね」
「竜児は関係ないわよ」
「あなた、高須君とお酒飲むためにお医者さんでアレルギーの検査受けたいんでしょ。そのためにお酌するなんて言い出したのね。絶対ダメよ。二十歳になるまで許しませんからね」
「ちっ」

人形のように愛らしい娘の顔からいきなり飛び出した、壁に突き刺さるような舌打ちに思わず息を呑む。どうやら知らない間に恐ろしく巧みな作戦に取り込まれていたようだ。『パパ』と呼んだのは自分を懐柔するためだったらしい。
パパにお酌してあげる。パパと一緒に呑みたいの。ねぇ、お医者さんで検査受けていいでしょ。猫なで声も甘い笑顔もすべては恋人とのデートの為だったか。

しゅるしゅると幸福感がしぼむ横で妻と娘はなにやら高度な神経戦を交しているらしい。


38 : ◆fDszcniTtk :2010/01/06(水) 23:42:17 ID:S9la1SMt
「いいわ。ママじゃ話にならないわね。ねぇパパ、これから私がお酌してあげる。ママ抜きで仲良くしましょ」

振り向いて自分を仰ぎ見た娘の、満面の笑みにはめ込まれた決然としたまなざしに思わずたじろいだ。うなじのあたりに立った鳥肌が、この二人は間違いなく血がつながっていると告げる。どうやら逃げ場はないようだ。
ダメだと言えば母親譲りの気の強い娘は、親の見ていないところで黙って自分の限界を調べ始めるだろう。そうなると、何が起きるかわかったものではない。

だったら、あきらめて医者に連れて行くしかない。その方が安全だ。妻の心配もわかるが、幸い恋人の高須君は少し堅すぎるくらいの性格のようだから、酷い呑ませ方はしないだろう。

結局、義理だろうが実の子だろうが、どんな子供も一緒だ。信じてやるしかないのだ。

「よし、いいだろう。そのうち医者に連れてってあげよう。だから今日はもう一杯お酌しなさい」
「やった!」
「あなた!」

妻は不満なようだが、信じてやるしかないではないか。だったら、せめて、しばらくは娘のお酌を楽しむことにしよう、と腹の中で苦笑する。そのうちよその男に奪われることがわかっているとしても。

(おしまい)


39 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/07(木) 06:26:14 ID:gr1+A1q3
>>38
乙!!!
そしてGJ!!!

29日から巻き添え規制くらってずっと書き込めなかったぜ…やれやれだ

40 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/07(木) 15:57:08 ID:Xko8mdv0
>>38
GJ!
新しいお父さん、いい人だなぁー
前の弟君の話と合わせて読むと一層いい感じ。
地の文がうまくてとても読みやすい。

でも大河、お酒は二十歳からだぞw 酔っ払った大河も見てみたいが、
文字通り大虎になったら、電車に頭をぶつけかねない。
竜児がいれば、安心だろうけどね。

作品タイトルが懐かしい…なんて言ったら、年齢がバレるな

41 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/07(木) 22:04:28 ID:14nZlRKQ
親父さん渋いw

42 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/07(木) 23:01:54 ID:ujUYLTMm
>>38
和やかな一家団欒が微笑ましく、嬉しいな
作戦でもこんな風に振る舞えるのは、大河が本当に心を開いてる証拠だろうねー
GJでした!

43 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 07:36:00 ID:eOxBNI8j
イイハナシダナー

44 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/08(金) 08:21:20 ID:rTlI/yxW
>>39-43
ありがとう

>>40
俺も年バレだ(w

>>42
なんかもう、自分でも甘すぎると思ってるんだけど、
新しい家族の間で大河が苦しむ話なんか、書けないよ。

45 : ◆VW.RtTKf1E :2010/01/09(土) 02:19:06 ID:qp7fzwtg

とらドラ!, again の続きを投下させてもらいます。
7レスほど使います。

前スレ
>>422
の続きとなります。

46 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2010/01/09(土) 02:23:24 ID:qp7fzwtg

「お二人さん、着いたよ」
タクシーの運転手が、2人に声を掛けてきた。
大河が眠ってしまった後、寝付きが悪かった竜児も眠気の波に飲み込まれ、2人は手を繋いだまま、
一緒に眠り込んでしまったのだ。窓の外を見ると、日はすっかり昇り切り、さわやかな朝の陽射しが
あたりに降り注いでいる。

「お金払っとくから、早く降りて」
大河に促されて外に出ると、竜児の正面には陽光きらめく海、右手には多数のヨットが浮かぶマリーナが
あり、奥に小さな遊園地らしきものも見える。反対側には南欧風のデザインと大きなガラスドームを持つ
瀟洒な建物が、澄みきった空の下に映えている。竜児は自分がひどく場違いな所に来ている気がしてきた。

「ここはどこだ…?」
「説明はあと、ほら、さっさとみのりんの車を探して」
タクシーから降りてきた大河が駐車場を指差しながら言った。
「え?」
「2人はみのりんの車で移動してるんでしょ? ここに泊まってたら、その車があるはず、そんなことも
分かんないの? 竜児」

竜児が慌てて駐車場を見渡すと、高そうな車が並ぶ中、ちょっと場違いな白いライトバンが1台、
遠慮がちに端の方に止まっていた。
「あれだ!」
クマの頭を掴んだまま小走りで車に駆け寄り、窓から覗き込むと竜児の衣類を入れた紙袋がポツンと
荷室に置かれている。

「ったく、櫛枝も不用心だな…」
「誰もあんたの服なんか盗まないわよ。無事だったんなら、細かいことは言わないの」
大河がケータイをコートのポケットに仕舞いながら、竜児のあとを追ってきた。
「財布もケータイも入ってるんだよ… しかし大河、川島と櫛枝がここにいるって、よくわかったな」
「大したことないわよ。ちょっとした知識と推理。セレブ気取りのばかちーがありきたりのホテルに
泊まるはずないからね。みのりんの”すっげーいいとこ”でピンと来たのよ」

腕を組んで、偉そうに胸を張る大河を見ながら、竜児はその成長っぷりを再び目の当たりにする。
勘も読みもずいぶん進化したようだ。おかげで助かったのだけど… 

「さて、竜児。作戦立てるわよ」
「作戦?」
「今、2人のケータイ鳴らしてみたけど、さっきと同じだった。こうなったら叩き起こすしかないと思う」
「2人が起きるのを待ってもいいんじゃないか? メッセージとか入れてもらって」
「そんな悠長なこと言ってていいの? 私はイヤよ。時間はできるだけ無駄にしたくないの」
「分かったよ。お前がそう言うなら…」
「いい、ここはただのホテルじゃない。エステとかサロンとか何とかテラピーとか、ちょっと金持ってる女が
身体を磨きに来るとこなのよ。男はカップルじゃないと入れない。ましてや凶悪ヅラのあんたなんか、本来、
一生縁のないところよ」
「2人で入れば、一応、俺達もカップルだろ」
「一応じゃないでしょ。とにかく、"友達に会いに来ましたー"って訪ねても、簡単に会わせてくれるわけ
ないから、私の言うことをよく聞いて…」
ごにょごにょと大河が耳打ちしてくる。さっきから散々な言われようだが、ここは大河に任せるしかない。
「じゃ、行くわよ、竜児。早くクマを被って」

* * * * *


47 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2010/01/09(土) 02:26:33 ID:qp7fzwtg

「だーかーらー、友達だって言ってるでしょ! 早く部屋に案内しなさいよ」
朝の静かなホテルのフロントで、大河の声がひときわ高くなる。
朝食の時間にはまだ早く、フロントにはホテルのスタッフが1人だけ。宿泊客の姿は無い。

最初は、“昨日パーティで賭けに負けて、罰ゲームでこのクマを連れていかなくちゃいけないんです!” 
と変な理由を作って、バカ丁寧に頼んでいた大河だが、相手が返事を渋っているうちに、ガマン出来なく
なってきたらしい。といっても以前の暴虐さに比べると、25分の1ぐらいに希釈されているが。

「ケータイに掛けたけど繋がらないって言ってんでしょ?。内線掛けても受話器を外されたみたいだし」
「ですから、もしお客様がご友人で間違いないとしても、直接、確認できないとご案内は出来かねます…」
クリスマスの朝に厄介なことを…という表情丸出しのフロント係は、川島亜美が宿泊していることを
何度かのやりとりでしぶしぶ認めたが、部屋に案内することは何とか回避しようとしている。

ホテルとしてはもっともな対応だよなぁ… 竜児はクマの中で成り行きを見守りながら、思っていた。
ましてや、有名人相手にトラブルになったら、大問題になるかもしれない。だが、いつまでもクマの
恰好でいるのも困りものだ。

「だから間違いないって、何度言わせれば気が済むの?」
そう言うと大河はケータイを開いて、カウンターの上に置き、待受画面をフロント係に見せた。
亜美のケータイのものと同じ、高校の卒業式の夜、弁財天国での打ち上げの時に撮った画像だ。
「ほら、これが私、こっちがばか、いや川島亜美、私たちは友達。分かるでしょ!」
大河の居場所を見つけるきっかけとなった画像。離れていても、互いを結びつけ合う絆がここにもあった。

「大河、それ…」
竜児は声を掛けるが、なおも渋るフロント係に大河はだんだんヒートアップしていて、耳に届かない。
「朝、起きた時にこのクマが準備できてなかったら、罰金なのよ! どうしてくれんの?」
と、このままではフロント係を振りきって飛び出し、客室を片っぱしからノックして回りかねない。

竜児は一歩前に出て、大河の肩を掴むと自分の方に振り向かせた。
「なによ!」
「大河、作戦変更だ。次は俺に任せろ」
「竜児?」
駐車場では、”あんたが凶悪ヅラ見せたら、ややこしくなるから、クマ被って立ってるだけいい”と
言っていた大河だが、これ以上任せっぱなしという訳にはいかない。竜児はもう一歩前に出て、
クマの頭をゆっくり取ると、フロント係を軽くひと睨みした。
「ひっ…」
フロント係が小さな悲鳴をあげる。だが、竜児はもうこんなことではいちいち傷つかない。
相手の目をじっと見ながら、声を低くしてゆっくりと話しかける。

「あんたの言うことはもっともだ。が、川島亜美の評判を聞いたことがあるだろう? 俺は彼女を
よく知っているが、もし自分の友人が冷たくあしらわれた…と聞いたら、怒るだろうな… 凄く」
竜児は一旦、言葉を切って、相手が勝手に想像力を働かせるのを待つ。今まで話したことの無い口調。
元ボクサーに自分が脅された時をイメージしていた。

「忠告しとくが、女優やモデル仲間の噂を甘く見ない方がいい… さて、どうするのがいいと思う?」
亜美の評判を竜児は知らないが、芸能人の悪い噂って、こんな風に広がるんだろうな… 川島すまん…
と心の中で亜美に詫びながら、竜児はフロント係に向かって、一層、目を眇めた。
「ち、ちょっとお待ちください… 今、支配人と確認して参りますので」
フロント係は急に額に汗を浮かべると、カウンターの奥の部屋に引っ込んで行った。

振り返ると、大河が目を丸くして、ぽかんと口を開けていた。見たことの無い竜児の姿だったのだろう。
「駆け引きはこういう風にやるもんだ。大丈夫、きっとうまくいく」
「わ、私だって、次はそういう風に言おうと思ってたわよ…」
大河が拗ねたようにぷうっと頬を膨らませる。
「お前が先に色々情報をインプットして騒いだのが良かったんだ。いいコンビネーションだったよな」
「え? あ、う、うん…」
2人の連携がうまくいって嬉しいのか、大河の膨らんだ頬に笑みが広がってくる。
「ほら大河、どうやら支配人とやらが出てきたぜ…」
竜児が大河の前に拳を突き出すと、大河は嬉しそうに自分の拳をコツンと当てた。

48 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2010/01/09(土) 02:29:24 ID:qp7fzwtg
* * * * *

結局、竜児と大河、支配人とフロント係、客室係の2名を加え、総勢6名の一行で、亜美と実乃梨の
泊まる部屋に向かうことになった。ホテルの人間が男ばかりなのは、万一何かあった時、力づくで
押さえつけるためだろう。4人がかりで大河を止められれば、だが。

「あの、くれぐれも騒ぎになりませんよう、あと、今回の対応はご内密に…」
揉み手をせんばかりに支配人が竜児に声を掛けてくる。ちょっと脅しが効きすぎたようだ。
友達を訪ねるだけなのに、さすがに竜児も引け目を感じる。

念のため、スタッフの1人が部屋のドアをノックしてみたが、予想どおりなんの反応も無い。
「鍵、開けて」
大河が短く言い放つ。今度は誰も反論せず、マスターキーのカードがドアノブの上の孔に差し込まれる。
カチッと乾いた音が解錠を知らせた。

「竜児、アンタはここでステイしてなさい。いくら親友だからって、年頃の乙女の寝姿をむやみに
見せるわけにはいかないからね。あ、あんたたちもね。何があっても、勝手に入ってきちゃダメよ」
大河はホテルのスタッフをジロリと見回すと、ドアを開け、すたすたと中に入っていった。

奥は結構広いのだろう。戸口から様子を伺うと、人が動いている気配を感じるが、声はよく聞こえない。
やはり2人ともぐっすり眠り込んでいて、大河が呼びかけても、目を覚まさないのだろうか…
と思った瞬間だった。

「うぉおおおおらぁあぁあ、起きろぉぉぉぉ!!!!!」
虎の雄叫びが部屋中に響き渡った。

「えっ、なに? なになになに? 痛っ! だ、だれだれだれだれ?!」
「うわーぉ、茶色のふわふわ妖怪だ! だー、よーしよしよしよし」
「ほらぁ、起きて! あんたたち、いい加減、目ぇ醒ませっつうの!」
「ちょ、ちょ、い、痛い痛い、って、タイガー? なにしやがんだこの野郎っ」
「おう、朝からいい気持ちのいい張り手だねぇ!」

支配人が部屋の奥を指差しながら、泣きそうな顔で(ほ、本当に大丈夫なんですよね…?)と目で訴えて
くるが、飛び込んでいって、寝間着姿で悲鳴を上げられても問題になるので動けない。
「いや、た、たぶん、だいじょうぶと思…う…」
竜児もちょっと自信なさげに答える。

雄叫びと叫び声はすぐに治まり、変わって静寂が部屋を支配した。
「?」
竜児は首を傾げる。静寂のあとに聞こえてきたのは、すすり泣く様な声、それも複数。
まさか大河の一撃がそれぞれの急所に入って、泣いてるわけ…じゃないよな?

ホテルのスタッフに目配せして、ここに待つように告げつつ、竜児は恐る恐る部屋の奥に入っていく。
クローゼットやパウダールームがゆったりと作られていて、ベッドルームへの通路は思いのほか長い。

「大河! 櫛枝! 川嶋!」
やっと空間が広がったところで、竜児は3人の名前を呼んだ。

2つ並んだクイーンサイズのベッド。その間に3人は立っていた。
大河を真ん中に実乃梨と亜美が肩を寄せ、抱き合ったまま、3人共泣いていたのだった。
大河が涙声で2人に告げている。
「みのりん、ばかちー、2人の活躍、ずっと見てたよ。凄く励みになった。おかげで頑張れた…」
「あんたは、頑張りすぎなのよ」
「あーみん、いいじゃん。こうして大河は帰って来たんだし。それに大河があーみんのこと素直に
褒めるのって、珍しいよ」
「まぁね。って、それ、いつも私がバカにされてるってこと?」
「大河はさ、私達の輝きをちゃんと見てくれてたんだ。それだけでもう何も言うことは無いよ」
「まーた、実乃梨ちゃんは恥ずかしいセリフを…」

竜児は戸口の方を振り返ると、腕で大きく◯印を作って、スタッフに無事を知らせるのだった。

49 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2010/01/09(土) 02:35:32 ID:qp7fzwtg

* * * * *

「竜児、おかわり! もう1回取ってきて」
「おまえなぁ、朝からどんだけ食うんだよ。もう4回目だぞ」
「あら、ここの食事はちゃんとカロリーコントロールされているから、ちょっとくらい多めに食べても
太ったりしないわよ」

ホテルのレストランの個室で、4人は朝食のテーブルを囲んでいた。
感動の再会のあと、竜児はようやくクマの着ぐるみを脱ぐことができ(車の中で着替えさせられたが)、
身だしなみを整えた実乃梨と亜美、2人を待っていた大河とレストランで合流したのだった。
ホテルは、女優である亜美と地元ソフトボールチームの選手として名が知られている実乃梨に配慮して、
個室を用意してくれたのだが、朝食はビュッフェスタイルなので、誰かが取りに行かなければならない。

「そういう問題じゃねぇ。俺はお前らの食い物を取りに行ってばっかで、ちょっとしか食ってねぇんだよ。
たまには自分で取りに行けよな」
「あら、ばかちーやみのりんが出てったら、大騒ぎになるわよ。私もできるだけ人目を避けなきゃねぇ… 
ということで、この役目ができるのは竜児だけ。お願いね。そろそろデザートもいいかしら?」
「ったく。やれやれだ…」
最初から負けとわかっているが、一言いわずにはいられなかった竜児は、立ち上がって個室を出ると
朝食の品々が並べられたテーブルに向かっていった。

「相変わらずだねぇ、キミたちは…」
「ホント、その変わらなさに感心しちゃうわ。あんたたち、実はこっそり会ってたんじゃないの?」
テーブルの向こうでは、実乃梨と亜美が呆れたように、大河と竜児のやり取りを見守っていた。
「んなわけないでしょ。ばかちー、何言ってんの?」
「ったく、人が心地良く眠ってるのに、ぶん殴って起こしやがって」
「あら、優しく声を掛けてあげてる時に、起きないそっちが悪いんでしょ?」
「まぁまぁおふたりさん、そんな君たちの姿も相変わらず、だぞ!」
「実乃梨ちゃん、そんなことないでしょ? こんなチビトラと一緒にしないでよ!」
「へへーんだ。みのりんも変わらず、私の味方だね」
「おうよ! マイハニー」
「ちょ、ちょっと、私だけ悪者? なんで?」
「べーっ、だ」
大河が亜美に向かって、あっかんべーをして、2人が掴み合いになった時、皿いっぱいに4人分のデザートを
載せて、竜児が戻ってきた。
「こぉら、お前ら仲良くしろよな。ほら、豆乳ケーキに寒天を使ったゼリーとプリン、ヨーグルトにフルーツ
パンチ、飲み物は櫛枝は苦目のコーヒー、川島は紅茶でいいよな。大河にはミルクたっぷりのカフェオレだ」

「「「うわぁぁぁ、おいしそうぅぅぅぅ!!」」」
3人が目を輝かせながら、一斉に身を乗り出してくる。
「お前ら、高校の時とまるっきり変わんねぇじゃねぇか? ま、確かにカロリーは低そうだな。牛乳や
ヨーグルトはローファットのものを使っているらしいし、ありがちなダイエット食品と違って、見た目も
美味しそうだ。俺もちょっと挑戦したくなるな…」
「うっさい、ごちゃごちゃ能書き垂れてると、アンタの分も食べるわよ」
「おい待て、大河。デザートまでおあずけにするつもりかよ…」

* * *

食後のドリンクをすすりながら、ようやく大河が真剣な顔で切り出した。
「で、次はどう動く? 竜児はまだ具体的な方法を思いついてないって言ってたけど…」
「わりぃ、川島、櫛枝。それを話しあう為に大河は母親の制止を振りきって、今日ここにやってきたんだ」
「私は、ばかちーの貧相なヌードなんか見たくないんだからね」
「高須君、喋ったの?」
「あ、いや、あの、ちょっと誘導尋問に引っかかっちまって」
「…ったく、余計なんだから。ていうか誰のヌードが貧相だって? いい、タイガー。ちゃんと考えてるわよ。
昨日実乃梨ちゃんと話して、だいぶ固まってきたんだから。亜美ちゃんのアイディアに驚きなさい……」


50 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2010/01/09(土) 02:42:32 ID:qp7fzwtg

亜美のアイディアを大河と竜児はじっと聞き入っていた。
実乃梨の相槌と補足を挟みつつ、10分足らずで話は終わった。
「どうよ? このプラン、完璧でしょ?」
「…川島、本当にそんなことできるのか? それにリスクが高過ぎねぇか?」
「何言ってんの? 亜美ちゃんが嘘つくわけねぇし…」
「それに高須君、これぐらいやんなきゃ! だよ」
「ねー、実乃梨ちゃん」「おうよ、あーみん」
亜美と実乃梨は、顔を見合わせてニッコリ。これで決まり、という勢いだ。

「た、大河はどうだ…?」
「ばかちーの言う通りに事が進むか、私には分からない… 願望もあるしね。でも腹ぁ括ったからには
なんだってやったるわよ… それに竜児、あんたの言ってたことにも合うんじゃない?」
「そ… そうか…」
「ほら、タイガーがいいって言ってんだから、これで進めようよ… 高須君が慎重なのは、性格的にも
立場的にも分かるけど、他の選択肢ってそう無いと思うよ」
亜美が竜児の目をまっすぐ見つめながら、声を低くして言った。こういう時の亜美が本気だということは、
竜児も長い付き合いで良く理解している。

「また、みんなで話そうよ。北村君や能登君たち、狩野先輩にも意見を聞いてみればいいよ」
実乃梨が出した助け舟で、ようやく竜児も頷くことができた。
「わかった。大河、一度皆で話し合ってもいいか? 年末にでもまた集まって、このアイディアにもっと
詰めてみたい。結果はまた伝える」
「私はいいよ。ただ、問題がある」
大河の目に一層の力がこもる。大河が誰かの為に動く時、誰かを守りたい時に見せる目だと竜児は感じた。
「なんだ?」
「ママよ。今回の件の全てを分かっているのはママだけ。ママの協力がなかったら、実現は不可能だし、
やるなら、きちんと話して分かってもらいたい。私はこうしてみんながいるし、じっとしてるより、
動く方が性に合ってるけど、ママは大人な分、さっきの竜児以上にリスクを避けたいと抵抗すると思う。
そこをクリアしない限り、先には進めない…」

大河のお母さんを説得? 無愛想と相手の心のえぐり方では、娘が見習いに見える程のあの母親を? 
それぞれ何らかの接触機会があった3人は同じことを考え、それがいかに難しいことかを瞬時に理解した。

「タイガーなんで? だって今の状況から抜け出せるんだよ?」
「その分、リスクはあるでしょ」
「最初の関門は身内、かぁ…」
実乃梨が気付かなかったとばかりに呟く。
「亜美ちゃんは遠慮しとくからね。身内の説得は身内、よね」
「もちろん、私もやるわよ。でもちょっと、自信ないかも…」
日常を共に過ごしている肉親だからこそ、異を唱えにくい…と大河の声が消え入るように小さくなる。

「大河、俺にやらせてくれないか?」
竜児がきっぱりとした声で言った。
「竜児が?」
「あらぁ? さっきは反対とか言ってたのに?」
「ちゃかすなよ、川島。いずれにしろ、俺達は行動を起こす。それを理解しておいて貰わなきゃいけない。
なぁ、大河、正月は家にいるか?」
「もちろん。仕事もお店も3日までお休みだし、どこかに出掛けることは無いから、ママの家に居るけど…」
「じゃあ、元旦は色々あるだろうから、2日はどうだ? 俺が大河のお母さんと話す」 
「ママの所に来るの?」
「ああ。お前はお母さんを説得しようとするな。川島の計画も話さなくていい。ただ、俺が一度会って
話をしたい、と言ってることを伝えてくれないか?」
「…分かった。帰ったらママに話してみる。でも…大丈夫?」
「心配すんな、考えていることはある。勝算なんて分からないけど、ぶつかってみるよ。細かいことは
みんなと話してから、な」
「う…ん…」
「おうおう、さすがは高須君! 漢だねぇ!」
張り詰めていた空気がほぐれて安心したのか、実乃梨がいつもの調子で明るく声を張り上げた。
亜美も余計なことは言わずに黙って頷いている。

51 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2010/01/09(土) 02:52:00 ID:qp7fzwtg

「今日話せることはここまでよね!」
大河が急に明るい声を張り上げた。
「お、おうっ…」
「じゃ、ばかちー、案内して」
「案内するって、どこよ?」
「決まってるじゃない、エステよ、エステ。ただ朝ごはん食べて、喋るためだけにはるばるタクシー
飛ばして来る訳ないでしょ? 馬鹿じゃないの?」
「「「はぁ?」」」
竜児、実乃梨、亜美の声が綺麗なユニゾンで揃った。

「いやー、一度来てみたかったのよ、ここ。昔はママとよく行ったけど、ここんとこ、エステはご無沙汰
だったから、いい機会だわ。みのりんは今日練習ないよね?」
「我がチームの筋肉乙女達も、クリスマスに練習したら、さすがにブーイングだぜ…」
「じゃ、一緒にやろ。ばかちー、まさか泊まっただけで帰るなんて言わないわよね。ばかちーがいれば、
VIP待遇で人目にも付きにくいし…」
「ちょっと待った。大河、駐車場で時間を無駄にしたくないって言ったのは…」
「私達をぶん殴って起こしたのは…」
「だーかーらー、日が暮れるまでにママのところに帰らなきゃいけないんだから、それまでに頭のてっぺん
から足の先まで磨くわよ。ほら、ばかちー、さっさと案内しなさい!」

「「「たっ、たいがぁぁあぁぁあー!!!」」」

* * *

「竜児、アンタもやってもらったら? その凶悪ヅラがちょっとはマシになるかもよ?」
という大河の誘いを丁重に断わり、エステだかなんとかテラピーだかに楽しげに向かう3人を見送った後、
竜児は、朝食の時間が終わって、ひと気のないレストランの席に座った。

北村や能登、春田に奈々子と連絡を取り、大河の無事の報告と次の集まりについて相談する。
幸い、皆、大晦日の夜は空いている様で、また弁財天国に集合することが決まった。
能登が少し気になる報告をしてくれたが、詳しくは竜児が大橋に戻ってから聞くことにする。

「どうせ今頃、大騒ぎしてんだろうなぁ、あいつら…」
大河と亜美のどつきあいに実乃梨が引っかき回す様子を思い浮かべ、竜児は目を細め、口元を軽く歪ませる。
10m程先でホテルのスタッフが「ひっ」という短い悲鳴をあげたが、竜児の耳には届いていない。

ツヤツヤになった3人が戻ってきたのは、昼食を挟んで、たっぷり半日あとの午後半ばだった。
亜美は映画の宣伝のスチル撮影があるから、と仕事の顔に戻ると、さっさとタクシーに乗り込み、
「高須君に会えたからって、気ぃ抜くんじゃないよ」
と大河に言い残し、駅に向かって去って行った。

「じゃあ、我々も行きますかね… 家まで送るよ、大河」
実乃梨の声をきっかけに、3人はライトバンに乗り込んだ。

* * * * *


52 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2010/01/09(土) 02:59:24 ID:qp7fzwtg

「大河、お母さんの家はこのあたりかい?」
地図を確認しながら、実乃梨がゆっくり車を路肩に寄せる。
「うん、この先は道が狭いから、ここでいい。すぐだから大丈夫。ママに見つかっても厄介だし…」
そう言いながら、助手席に座っていた大河は、後部座席の竜児の方を振り返り、少し寂しげな表情を見せる。

「よし、大河、高須君。必ずまた会えるけど、しばしのお別れだ。みのりんは、ちょっくらコンビニで
飲み物を買ってくるから、その間、ゆっくりと名残りを惜しみたまえ!」
「ちょっ、みのりん!」「おいっ、櫛枝!」
実乃梨はひらりと車を降りると、振り返る2人の呼び掛けも聞こえないかのように、車の後方にある
コンビニへと駆け出して行った。

「あいつは余計な気を回しやがって… なぁ、たい… おうっ!」
竜児が視線を前に戻すと、振り返ったまま、もじもじと俯いている大河がそこにいた。
顔が赤く見えるのは、車の中まで差し込む西日のせいだけではないだろう。

「…ったく、大河、ほら…」
竜児は背もたれに置かれた大河の指先に、そっと自分の手を重ねた。
「へっ…?」
慌てて顔をあげた大河は、竜児の顔が思いのほか近いのに驚き、さらに顔を赤く染める。
一瞬見つめ合った後、大河のまぶたがゆっくりと閉じ、同時にあごの先がわずかに持ち上がる。
竜児はその小さな唇に、自分の唇をほんの1、2秒だけそっと重ねた。
昨夜の、求め合う強いキスではなく、約束を確かめるような、優しい、穏やかなキス。

唇が離れた後、互いの視線を重ね合わせる。竜児の手が大河の指先を軽く包む。
「じゃ、また来週な」
「うん、待ってる!」
次に会う日を約束できる。その嬉しさで2人の胸ははち切れんばかりになっていた。

コンビニを出て、歩いてくる実乃梨の姿が視界に入ったのだろう、大河が視線を外し、実乃梨に向かって、
大きく手を振った。
「みのりん、戻ってきたよ。じゃあ行くね、竜児」
「気をつけて帰れよ。あと、くれぐれも無理はするな」
「分かってる。ママと話したら、また連絡するから」
「ああ」
大河は助手席から車をするりと降り、竜児も後に続いた。

「やあやあ、おふたりさん、儀式は済んだかね」
「みのりーん、そんな風に言われると恥ずかしいよ〜」
赤くなった顔を隠すためか、大河は実乃梨の胸にドーンと飛び込んでいく。
実乃梨は「よーしよしよし」と言いながら、大河の髪をわしわしとひとしきり撫でまわすのだった。

* * * 

「じゃあね。またね」
「うん、またね」 「またな」
短い言葉を交わした後、大河は歩き始めた。少し進んでは振り返り、また進んでは2人の方を振り返る。
まるで今日の出来事が夢でなかったことを確かめるように。

「あいつ、あんな歩き方してたら、また転ぶぞ、ドジの癖に」
「大丈夫だよ、大河なら。凄く… 大人になってた」
竜児と実乃梨は、少しずつ小さくなっていく大河の姿を見つめたまま、肩を並べていた。

「そうだな。 ところで櫛枝、気ぃ使わせて、済まなかったな…」
「こっちこそ、なんか焚き付けちゃってごめんね。大河の幸せそうな顔、見てみたかったんだ…」
「そうか…」
「良かった。本当に良かった。でも本番はこれからだね…」
「ああ」

路地の角に差し掛かった大河は、2人に向かって大きく手を振ると、母親の家に向かって駆けて行った。

53 : ◆VW.RtTKf1E :2010/01/09(土) 03:02:15 ID:qp7fzwtg

今日はここまでです。
ねっちりねっちりと展開が遅いのですが、そろそろ動いていければ、と思います。

54 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 04:43:06 ID:Qaub14GW
>>53
力作乙であります
ゆっくり休んでくれ

55 : ◆Eby4Hm2ero :2010/01/09(土) 04:47:37 ID:MAEXIeLa
>>45-53
乙です。

やはり大河は元気なのがいい……
あと竜児とラブラブなのがw

いよいよ本格的に問題解決に動き始めるようで、期待してます。

56 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2010/01/09(土) 04:49:25 ID:MAEXIeLa
お題 「顎」「見せる」「花びら」



「しっかし、この家はあんまり変わってないわねえ」
 ぐるりと部屋を見まわして、大河は嬉しそうに呟く。
「そりゃまあ、一月半……じゃねえ、大河がうちに来るのは三ヶ月ぶりか。まあ、それぐらいでそんなには変わりゃしねえよ」
「うん……ちょっと安心した」
「あ、そうだ大河、和紙の封筒ってまだ持ってるか?あったら一枚分けて欲しいんだけど」
「和紙の?たしか幾つかあったはずだけど……」
「あ、ひょっとして何種類かあるのか?それならさ、その、なんだ……」
「何よ? はっきりしないわね」
「あの、薄桃色の、ほら……ラブレターの時のやつがさ、欲しいんだよ」
「何で?」
「いや、その……」
 妙に言葉を濁しながら竜児が指差して見せるのは、襖に貼られた白い四角形。
 大河の記憶では、そこには桜の花と花びらが舞っていたはずで。
「……ちょっとあんた!これどうしたのよ!?」
「……色々あってさ、その……うっかり破っちまったんだよ」
「うっかりって……あーあ、気に入ってたのに……」
「おう、俺もだ。だから、とりあえず直しはしたけどやっぽり落ち着かなくてさ。けどこのへんじゃ同じ封筒が売ってねえんだよ」
 大河は襖を見ながら顎に手を当てて思案顔。
「そうね……あれならまだ何枚か残ってるけど……何日か待ってくれない?」
「おう、それは構わねえけど……何でだ?」
「今度は忘れずに中身を入れてくるから」

57 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 05:06:24 ID:Qaub14GW
    / _         ヽ、
   /二 - ニ=-     ヽ`
  ′           、   ',
  ',     /`l  / , \_/ |     大河〜
  ∧    〈 ∨ ∨ ヽ冫l∨
    ',   /`|        ヽ
    ', /          /
    /  ̄\   、 ー /                   __
  / ̄\  `ヽ、≧ー                    _  /. : : .`ヽ、
 /__ `ヽ、_  /  、〈 、           /.:冫 ̄`'⌒ヽ `ヽ、 / 〉ヘ
/ ==',∧     ̄ ∧ 、\〉∨|         /.: : :′. : : : : : : : . 「∨ / / ヘ
     ',∧       | >  /│        /: :∧! : : : :∧ : : : : | ヽ ' ∠    りゅうじりゅうじぃ〜〜〜
      ',∧      |、 \   〉 、_       (: :/ ,ニ、: : :ィ ,ニ=、 : : 〉  ,.イ´
      ',∧      |′   ∨ ///> 、  Y: '仆〉\| '仆リヽ:|\_|: :|      わーい だっこだっこ〜
      / /     |     └<//////> 、 八!`´、'_,、 `´イ. :|////7: !
    /_/       |、       ` </////>、\ ヽ丿  /. : :|//// : .丶
    ,'          |′         ` <//∧ : > </.: : :////〉: : : . ヽ
    ,'          |            / 个:<〉. :〉》《/.: ://///: : : : : : . \
   ,'           |、          〈 . : :│: |/. :/│/.:///////: : : : : : : : : . )
  ,'            |′           \:ノ. : |: :/W/.:〈//////: : : : : : : : : :ノ
  ,'            |            /. : : : :|:///∧ : ∨///: : : : : : : : : . \

58 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 09:39:37 ID:MGhVZ/Cj
>>53
大人になってもやはり大河は大河だなw
段々と「らしさ」を取り戻してるのがいいね!

>>56
そのラブレターは甘すぎてヤバイだろw

59 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 11:59:10 ID:ioFmpiVl
>今度は忘れずに中身を入れてくるから

ポワワ━━━━━━(*´Д`)━━━━━━ ン!!

60 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 12:00:34 ID:ioFmpiVl
ttp://areya.tv/up/201001/08/07/100109-0150250998.jpg
何で高須くんがいるの?

61 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 12:35:04 ID:ll+XBo2I
>>60
まさかの女体化……だと……

62 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 15:16:05 ID:24s5qkSR
>>56
超ナイス

>>60
ワロタ。監督が一緒だから。なんちゃって。
ttp://amatawarui.up.seesaa.net/image/up54964.jpg

63 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/09(土) 17:55:48 ID:eMdveFes
>>53
みのりんに乗せられつつもすぐに
その気になるあたりが好きだな。
そうだよなぁ、別れて帰る前にキスしたいよなぁ〜w

64 : ◆VW.RtTKf1E :2010/01/09(土) 22:41:20 ID:qp7fzwtg
>>54 >>55 >>58 >>63
有難うございます!
やっぱり、大河は弾けているのが楽しいですね。 勿論ラブラブも…
続きは出来あがり次第なので分かりませんが、ちゃんと解決できるよう、頑張ります。

皆さんに1つお尋ねなのですが、亜美の父親の職業の設定、って、何かあったでしょうか?
原作3巻、プール対決のあとのスドバで、
「両親そろって高額納税者よ!」
って、亜美が言ってましたが、他に何かあれば…  見落としているかもしれませんが、
原作、スピンオフ[2巻+とらP、DVD特典]、アニメ全話、ドラマCD vol.2まで見ています。

>>56
最後の一言にドキッとしました。
三題から生まれる展開の工夫がいつも凄いです。

>>62
凄いラフ画だ! てか、黒子が北村になっててかわいそう… あ、変態つながりかw

65 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 12:19:56 ID:h/28CFRP
特に設定はないと思う

大物女優が結婚する相手だし
芸能関係かその他の実業家ってところじゃね?
不自然じゃない範囲で好きに考えればいい

66 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 15:44:57 ID:JhTjhWCn
>>62
そういえば制作J.C.だったな

67 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 20:18:30 ID:xkagIT+o
>>64
和気藹々としてるメンバーを見るとほっとするな
別れ際の、次がある幸せを噛み締める雰囲気がいいなぁ

あーみんパパの職業設定は無かったような…叔父夫婦のは明かされてるけど
大変だと思うけど自分のペースで頑張ってね。いつまででも待ってます!

>>56
にやにやが止まらんw

68 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 22:02:17 ID:HMVOW/se
>>29です。
コメントなどありがとうございます。

以下にBon Voyageの続きを投下します。
9レスくらい使います。

69 :Bon Voyage!3 ◆x6jzI2BeLw :2010/01/10(日) 22:03:39 ID:HMVOW/se

「牛が豚に化けた」
「仕方ねえだろ・・・タイムサービスが売り切れちまったんだから」
エコバッグ片手に家路を戻る竜児と大河。

あれから急いでスーパーに駆けつけたものの、無情にも売り場には完売の2文字が並んでいた。
止む終えず、お買い得品とPOPの付いた豚肉で妥協することになったのだが、大河はやや不満そう。
「久しぶりにおいしいお肉がいっぱい食べられると思ったのに」
「寮の食事にだって出るだろ?肉」
「出るには出るんだけど・・・鳥とかが多くて・・・それに量も少ないし」
はっきり言って足らないと大河は苦情を申し立てる。
「信じられる?こお〜んな小さなお茶碗、一杯でごちそうさまなんて」
両手の指先を使って小さな円を描き、同じ寮の同居者たちの食事ぶりを大河は皮肉る。
「ま、人、それぞれだからな」
それが普通で大河が平均を超えて大食らいなんだとはあえて言わず、竜児は大河をなだめる。
「で、どうする?しょうが焼きにでもするか?」
「ん・・・それもいいけど」
大河は少し考え込み、違う提案をして来た。
「カレーがいい・・・ポークカレー・・・うんと甘いの・・・これだったらいっぱい食べられる」
「よし、カレーだな。野菜はどうする?」
「たくさん入れて」
「おう、任せとけ」
竜児は買い物カゴにカレー材料となる野菜を次々に放り込んでいった。


高須家に灯る明かり。
台所のガスレンジに置かれた湯気を上げる鍋から食欲を刺激する良い匂いが漂い始める。
「もう、そろそろ?」
鍋の前でまだかまだかと待ち構える大河の姿。
「あと、もう少しだ・・・本当は出来た後に少し置くといい味になるんだがな」
「もういいよ・・・早く、早く・・・」
お腹を空かせ切った子供みたいに大河は竜児をせかす。
「わかった・・・ちょっと待て」
竜児はお玉を取り出すと、鍋に差し入れ、少量を小鉢によそり味を確かめる。
「あ〜、ずるい、竜児ばっかり」
すぐ食べるんだからいいだろと言う竜児の意見に耳も貸さず、大河は私もすると味見を要求した。
「しょうがねえな・・・ほら」
竜児は自分が使った小鉢を大河へ渡し、カレーを少量、たらしてやる。
大河は軽くふうと息を吹きかけるとカレーを口に含み、味わうように飲み下した。
「ん・・・合格」
味見の後で偉そうに審査する大河。
「当たり前だ・・・時間が無くても俺は手抜きはしねえ」
急ぐならカレールーを使うところだが、竜児はそれをしなかった。
中途半端に妥協はしたくなかったし、それに何より大河には少しでもおいしい物を食べさせてやりたかったと言うのが竜児の本音だった。



70 :Bon Voyage!3 ◆x6jzI2BeLw :2010/01/10(日) 22:04:32 ID:HMVOW/se

「それよりか・・・もう少し包丁の使い方、練習しろよ」
流しの片隅に置かれた三角コーナーに入る生ごみ。
大河が剥いたジャガイモの厚い皮が横たわっている。
皮を剥いたと言うより、身をこそげ落としたと言った方が正解に限りなく近いシロモノ。
「・・・ジャガイモはでこぼこがあって剥き難いの」
「ほお・・・じゃあ、でこぼこがなければきれいに剥けるんだな?」
「あ、当たり前よ」
つまらない意地を張ると墓穴を掘ると言うけれど、大河がまさにこの状態。
じゃあ、剥いてみろと竜児が大河へ渡したのは真っ赤なりんごだった。
「デザート用に買ったんだが・・・ちょうどいい、剥いて貰おうか」
ほらと竜児に手渡されたりんごを見つめ、大河はあうあうといった感じで右往左往する。
やがて、ままよと決心したのかおもむろに包丁を掴み、りんごに刃先を向け、おぼつかない指先で皮を剥き始める。
最初こそ薄かった皮は段々とその厚みを増し、下へ行くに従って削り落とされる身が増える。
最後に剥き残した皮が点々と残るまだら模様の下半身スリムなりんごが出来上がった。
剥き終わったりんごを皿の上に置き、大河は身を縮めた。
「・・・大河はさ・・・刃先を立て過ぎるんだ」
てっきり、竜児のお小言が出ると思っていた大河は穏やかな声に竜児を見上げた。
竜児はまだ皮の剥けていないりんごを手にすると軽やかに包丁を当て、滑る様にりんごの皮を剥いて見せた。
「わ〜」
竜児、上手と大河は小さな歓声を上げる。
「・・・ほら、見てないでやってみろ」
竜児は大河へ包丁とりんごを渡す。
「・・・うん」
自信無さそうに受け取ると、大河はゆっくり皮を剥き始める。
そんな大河の背後から竜児は手を差し伸べ、小さな大河の手を包むようにしてアシストする。
「・・・竜児」
首だけ振り向いて竜児を見上げる大河。
「いいから・・・集中しろ」
「うん」
りんごの皮剥きを再開する大河。
竜児は大河の右手を軽く押さえ、左手でりんごを廻すように大河の指先を操った。
二人羽織のまま進むりんごの皮剥き。
薄く剥け始めるりんごの皮に大河は嬉しそう。
「見て、見て、竜児・・・こんなに薄い」
「ああ、ちゃんと使えばきれいに剥けるんだ」
「・・・うん。もうちょっと練習する・・・使い方」
「急に上手くなれって言っても無理だから、少しずつやれよ」
「分かった、竜児」
竜児としては大河が包丁を使ってあれこれやってくれるようになっただけでも大いなる進歩だと思っている。
それに加えて向上心を持って取り組もうとしている点も評価してやりたかった。
昔の大河ならりんごの皮が剥けなくて何が悪いとうそぶいただろうにと竜児はしみじみ感じてしまう。
りんごをきれいに剥き切ってしまい、竜児が手を放そうとすると大河は「ふっ」と鼻を鳴らす。
「何だよ?」
「・・・もうちょっとだけ・・・このままでいて」
「あ、ああ?」
生返事を仕掛けて竜児は今の状態に気が付く。
大河への包丁レッスンに気を取られていたが、ポジショニングはどう見ても背後から大河を抱き締めているとしか見えなかった。
大河は後頭部を竜児の胸に預け、心地良さそうに目を細める。
包丁とりんごをそっと台の上に置き、竜児は大河の手を取ったまま、大河を受け止めていた。



71 :Bon Voyage!3 ◆x6jzI2BeLw :2010/01/10(日) 22:05:24 ID:HMVOW/se

「ただいま〜・・・わ、いい匂い」
「おう、お帰り」
「あ、やっちゃん。お帰り〜」
台所から居間へ鍋を運んでいた竜児と食器を並べていた大河が同時に返事をする。
玄関を開けて泰子は家中に漂うおいしそうな匂いに鼻を動かす。
「大河ちゃん、来てたんだあ」
そして大河を認めると嬉しさをいっぱいに表す泰子。
「やっちゃん」
「大河ちゃん」
玄関先で両手を抱えるようにする泰子を目掛けて大河が抱き付いた。
「会いたかったよ〜」
「私も、やっちゃん」
それはまるで生き別れた親子が感動の再会をするかのよう。
「・・・毎週、毎週、よく飽きねえな」
竜児はそれを見て冷ややかだ。
なにせ毎週ふたりはこれをやっているのでいい加減、うんざりもしてくると言うもの。
「ふん、竜ちゃんにはわかんないのよ・・・ねえ、大河ちゃん」
「ねえ、やっちゃん」
そう言ってうなづき合うふたり。
お互い、分かっててふざけあっているのだ。
まあ、害は無いと知りつつも、三文芝居の観客としてはいい加減、演目を変えて欲しいと言わざるを得ない。
「泰子もいい加減にしろよ・・・早く、手を洗って、うがいしろ・・・風邪が流行ってるんだから」
「ふわ〜い」
そう返事をしながら洗面所へ向かう泰子を見送り、竜児は食卓の上を整えていった。


三人でする食事。
たったひとり大河が加わるだけで、こうも雰囲気が変わるのかと竜児は思う。
泰子とふたりだけでの食事でもそれなりに会話はあり、賑やかなのだが、大河が居るだけで食卓の華やかさが全く違う。
そのせいか、泰子も竜児もいつも以上に食が進み、炊飯器が空になる。
とにかく大河は良く食べ、良くしゃべった。
その大河はと言えば満腹になったお腹をさすりながら、満足そうに横になっている。
以前の竜児なら、注意するところだが、もう竜児は何も言わない。
呆れて、あきらめた訳ではなく、なぜなら大河がすぐ起きることを知っているからだ。
その証拠に大河はまもなく立ち上がる。
「せーの」
掛け声と共に反動をつけ上半身を垂直にすると、食器を片付け始める大河。
「竜児」
「おう」
「とってもおいしかった」
「そっか、それは良かった」
竜児を見つめ、大河はそう言うと食器を重ねて台所へ運ぶ。
後片付けは私の仕事と大河は心得ているらしく、その動きはよどみが無い。
鼻歌交じりに台所の流しで食器を洗う大河の後姿。
その姿を横目で見ながら泰子が言い出した。



72 :Bon Voyage!3 ◆x6jzI2BeLw :2010/01/10(日) 22:06:24 ID:HMVOW/se

「竜ちゃん」
「何だ?」
「大河ちゃん・・・いい娘になったね」
「そうだな・・・あいつが家に来た頃は・・・食うだけ食って終わりだったもんな」
「それもあるけど・・・いじらしいじゃない・・・出来るところを頑張ろうって」
「まあな」
「絶対、放しちゃ駄目だからね」
と、ここだけ真剣な目をして竜児を見る泰子。
「ああ、そんなつもりは全くない」
「あ〜早く、大河ちゃんが竜ちゃんのお嫁さんにならないかな」
やっちゃん、それが今から楽しみと頬杖をついてニコニコ笑う。
竜児はわずかに顔を赤らめると泰子から視線を逸らす。
「・・・分かってる・・・けどよ・・・許されるなら明日にだって・・・そう言う気持ちはある」
「そうよねえ・・・竜ちゃんも大河ちゃんも学生だし・・・あ、学生結婚ってのもロマンチックじゃない?」
「それが出来るなら・・・そうしてるさ」
あきらめ口調で竜児が言う。
「新しい大河ちゃんのお父さん、けじめとか厳しそうだもんね」
「ああ」
竜児が同意する。
大河に対して過保護とか過干渉とかそんな感じは全く無いが、大河の義理の父親に当る人物は筋や理屈を重んじるタイプの人間だった。
別段、竜児と大河の交際に反対しているとか、婚約なんかは認めないとか、そう言うことは無く、竜児も何度か会ったが、竜児のことを子供扱いせず、対等の関係として接してくれた。
それだけに竜児としては自分が大河の相手として相応しいことを証明しなければ、最終的なゴーサインをもらえそうにも無かった。
でも、20歳になれば、親権者の同意など無くても籍は入れることが出来る。
竜児とてチラリとそんなことを考えなくもなかった。
だけど・・・と竜児はそこで立ち止まる。
みんなで幸せになるんだと母親の下へ帰った大河の行為が無に付す危険性がそこにはあった。
ひとりの脱落者もだすことなく、大河とウェディングマーチを聴きたいと竜児は熱望しているのだ。
バージンロードを進む花嫁を先導するのはやっぱり父親の役目だろ・・・それが居ない式なんて・・・。
竜児は考え込む。
・・・どうしたら、大河を幸せにしてやれるんだろう?
大河に聞いたら、「今でも十分、幸せ」とか言いそうだけどな、あいつ。
普通は好意があることを相手に告げて、了承されたら付き合って、付き合いが深まったらプロポーズだろ。
一番最初に、プロポーズしちまったもんな、俺。
竜児は自分がとった手順が間違っていたなどとは思っていない。
思ってはいないが、どれだけ大河を待たせてるんだろうと内心、忸怩たる思いを抱えていた。

「竜児?」
「おおおう」
いきなり竜児の目前に大河のドアップ。
竜児は思わずのけぞる。
「何、驚いてんの?」
変な竜児と大河は笑う。
竜児が物思いに耽っている内に、いつの間にか大河は洗い物を終え、台所から戻って来ていた。
「何度、呼んでも返事しないんだもん、竜児」
だから、顔を近づけたと大河は言う。
「おう、わりい」
まさか、おまえのことを考えていたからなんて言える筈も無く、竜児は適当な理由でその場を取り繕った。
「はい、竜児の分」
差し出されたガラスの器。
中にはきれいにカットされたりんごが入っていた。
「大河?」
「竜児がずっとぼうっとしてるから・・・私がやっちゃった」
切り分けるくらいなら上手でしょと大河は微笑む。
大河が洗い物を終えたら竜児が用意しようとしていたデザートのりんご。
「・・・サンキュウな、大河」
泰子の前でなかったら、竜児はそのまま大河を抱き締めてしまいそうだった。
その泰子は目の前で繰り広げられる竜児と大河の遣り取りを幸せそうな顔で眺めていた。


73 :Bon Voyage!3 ◆x6jzI2BeLw :2010/01/10(日) 22:07:27 ID:HMVOW/se

テレビに映し出されるドラマの内容が佳境に入って行くに従って大河の口数が少なくなる。
ドラマの前半はその内容について竜児とあれこれ話していたはずなのに・・・。
では、大河は内容がシリアスになって来たから画面に見入っているのかと言えば、そうでもない。
それを証明するように大河の視線はテレビ画面と居間に置かれた時計との間を行ったり来たりしていた。
なぜ、大河がそんなことをする理由を竜児は嫌と言うほど知っている。
どうしてかと言えば、竜児も大河と同じ様なことをしているからだ。
それは迫り来るタイムリミットへのカウントダウン。
大河が今、住んでいるのはあのマンションではない。
都内にある大学の女子寮だ・・・それも門限付きの。
大河に残された時間は後10分足らずだった。
それを過ぎると寮へ帰る時間が遅くなり、大河は門限破りとなってしまう。
「・・・大河、そろそろ」
動こうとしない大河に堪りかねたのか竜児が婉曲に催促する。
「まだ、大丈夫・・・終わりまで見てから帰る」
そう言った大河だが心がここにあらずと言った感じで、テレビ画面の内容をほとんど見ていないのは明らかだった。
単なる時間の引き延ばしに過ぎないのだが、それは出来ない相談でしかない。
「・・・大河!」
やや強い口調で竜児は大河に警告する。
大河は何ともいえないような表情を見せ、黙ってテレビをリモコンで消した。
やがてノロノロとした動きで立ち上がると、ハンガーに掛けておいたコートを手にする。
その時、ふすまが開き隣の部屋に居た泰子が顔を覗かせた。
「帰っちゃうんだ・・・大河ちゃん」
しゅんとした顔つきで泰子は残念がる。
「うん・・・また来るね、やっちゃん」
コートを片手に泰子の前に立つ大河。
「ちゃんとご飯食べて・・・風邪引かないようにしてね」
「大丈夫・・・竜児が作ってくれたはちみつ金柑があるから」
泰子の心遣いに応えて大河は明るく言う。
「じゃね、やっちゃん」
「・・・いってらっしゃい、大河ちゃん」
朗らかに言う泰子。
その言い回しのわずかな不自然さに大河は怪訝な想いに囚われる。
「だって、ここはもう大河ちゃんのお家だから」
大河の心の動きに機敏に反応して泰子は説明する。
単に大河は寮へ出かけるだけで、またここへ帰って来るんだから『バイバイ』とかじゃなくて『いってらっしゃい』が相応しいのだと・・・。
大河は嬉しさと喜びが混ざり合ったいい表情を見せると泰子に別れの挨拶を言い直した。
「・・・行って来ます」
「はい、行ってらっしゃい」
泰子に見送られて玄関へ向かう大河。
「じゃ、俺、大河を送って行くから」
コート姿になった竜児も大河を追って玄関へ向かった。

明かりの消えたマンションをチラリと見やって大河は駅へ向かって歩き出す。
追い掛ける様にして竜児は大河の横に並び、大河と一緒に歩みを合わせる。
夜の帳が落ちた路地にふたりの吐く息だけが白く流れ、すぐに消えて行く。



74 :Bon Voyage!3 ◆x6jzI2BeLw :2010/01/10(日) 22:09:19 ID:HMVOW/se
しばらくの間、ふたりの間に会話はなく、無言のままアスファルトに足音だけが響いていた。
横を通り過ぎる車から大河をかばう様に竜児は大河の手を引く。
その大河は何も言わず、引かれた竜児の手に自分の腕を絡ませた。
「大河?」
ちょうど腕を組んだ姿勢になり、そのまま大河は前を向いて歩き続ける。
「歩き辛い?」
「・・・いや」
「そう・・・じゃあ、このままでいい?」
「俺は別に構わねえけどよ・・・大河の方こそ、手を繋いで歩いた方が楽じゃねえのか?」
「いいの・・・この方が」
「どうしてだよ?」
竜児の疑問に大河は足を止め、組んでいた腕を放し竜児の手を握る。
手を繋いだ姿勢を作り出すと、大河は思いっきり竜児を引っ張った。
「・・・いきなり、何する・・・」
引っ張った衝撃といきなりだった為、竜児は大河と繋いだ手を放してしまった。
空白になった己の手のひらを見て竜児は大河の言いたいことが理解できた。
「そういうことかよ」
「・・・うん」
繋いだだけの手じゃ、振り解けてしまうかもしれない・・・だけど、しっかり組んでおけば絶対に離れない、そう大河は言いたかった。
「ほらよ」
竜児は大河が手を組み易いように腕を突き出した。
その竜児の腕に大河はがっちりと自分の腕を交差させ、竜児とひとつになった。

「もうすぐ冬休みだね」
大河が待ち遠しそうに言う。
「ああ、そうだな」
休みになれば、竜児も大河も一緒に居られる機会が増え、共に過ごせる時間が増える。
だからふたりともそれを心待ちにしているのだ。
「大河の予定はどうなってるんだよ?」
「私?・・・クリスマスイブまではこっちに居る」
それは暗にイブを過ぎれば実家に帰ると言うことを、大河は言っているのだった。
「イブか・・・俺の家でホームパーティでもするか?」
「やっちゃんは?」
「泰子はその日、魅羅乃ちゃんだ」
「ふ〜ん」
しばらく何かを考える様な大河の仕草。
「ねえ、竜児」
「おう」
「やっちゃんが仕事に行く前にみんなでホームパーティして・・・それから、ちょっとだけ出かけない?」
「俺は構わないけどよ・・・何処へ行くんだ?」
「クリスマスのイルミネーション・・・見てみたい、竜児とふたりだけで」
私、少しおしゃれするから、竜児もばっちり決めて、普段出来ないことをたくさんしようと大河は目を輝かせてはしゃぐ。
「だけどよ・・・おまえ、門限が・・・」
言いかけた竜児の口をノンノンと大河は指先でふさぐ。
「門限、破る気か?」
驚愕する竜児に大河はまさかと笑う。
そんなことしたら、実家に報告が行って大変なことになるじゃないと分かりきったことを大河は言う。
「それなら・・・どうやって?」
大河の説明はこうだった。
イブの日に実家に帰ると帰省届けを出せばその日はもう寮へ帰る必要が無い・・・だから門限は気にしなくていいし、実家へは25日の夜までに帰れば問題ない。
「ね、いいアイディアでしょ」
そう言って笑う大河。
竜児はその裏にある大河のメッセージを受け取った。
外泊したって構わない・・・大河はそう言ってるのだった。
「そうだな・・・そうするか」
少し迷ってから竜児はそう答えた。
竜児の了解が取れたのが嬉しいのか、大河のテンションが上る。
あれこれ、楽しいクリスマスプランを語り出し、大河はひどく楽しそうだ。
そんな大河を見ながら、竜児自身も気分が高揚していくのを感じていた。

75 :Bon Voyage!3 ◆x6jzI2BeLw :2010/01/10(日) 22:10:41 ID:HMVOW/se

上りがあれば下りもある。
いつまでも上り続けることは出来ない。
楽しい気分で盛り上がった気持ちも駅が近付くに従って徐々に冷えて行く。
まもなくやって来るしばしの別離。
少なくなった口数のまま、気が付けば駅の改札口が見えて来てしまった。
名残惜しそうに大河は組んでいた腕を解いた。
「・・・竜児」
「ああ」
「今日はありがと・・・また、来週だね」
「おう、楽しみに待ってる・・・今度は寝坊するなよ」
「大丈夫・・・多分」
頼り無さそうなことを言い、大河は顔を伏せる。
「・・・あのね・・・何でもない」
何か言い掛けてやめる大河。
「何だよ?言い掛けて止めんなよ」
顔を伏せたまま、大河は顔の下で指を絡ませもじもじする。
「私・・・竜児が・・・とっても・・・あ〜もうなんて言えばいいの」
上手いボキャブラリーが出て来ないのか、大河は身をよじる。
「・・・竜児が、竜児のこと・・・」
顔を上げ、竜児をじっと見つめ、何かを伝えたいのか必死な様子の大河。
言いたい言葉は分からないけど、それがネガティブな内容でないことだけは分かるし、好意の気持ちを伝えたいんだと言うのも竜児には分かった。
そんな大河の気持ちに応えてやりたくて、竜児は人目を気にしながら大河をぎゅっと抱き寄せた。
「・・・いいよ、それ以上言わなくて・・・大河の気持ち・・・分かるからさ」
それだけ早口で大河の耳元でささやくと竜児は大河を腕から解き放つ。
公共の場所でそんな振る舞いをしてしまうなんて、日頃、礼儀とかマナーにうるさい竜児にしては思い切った行動だった。
「・・・竜児」
大河は竜児をすぐ側で真下から見上げる。
目と目が合い、大河は微笑む。
ものすごく大切な物を慈しむ様なその笑顔を竜児の胸に焼き付けるようにして、大河は改札を駆け抜けた。
ホームへ昇る階段の下で振り返り、竜児に手を振る大河。
階段へ消えて行く大河を見送った竜児は大河を乗せた電車が走り去る音が完全に聞こえなくなるまでその場から動けないでいた。


竜児の前から来る通行人が竜児を見て慌てて道を譲る。
まっすぐ家に帰る気がしなくて、竜児は闇雲に歩き回っていたのだ。
ひどく難しい顔をして・・・。

大河が自分に好意を寄せてくれているのは分かり過ぎるほど分かっている竜児。
それに対して自分はこれからどうやって応えて行けばいいのかと考え込んでいるのだ。
・・・大河の幸せがいちばんだ。
・・・じゃあ、どうしたら大河を幸せに出来るんだ?
・・・側に居てやるだけでいいのか?
答えを見つけられないまま、竜児はいつしか人気の無い公園に足を踏み入れていた。

やり切れない気持ちを誤魔化すように竜児は公園の中を走り回った。
ぜいぜいと息が切れ、やがて限界を感じた竜児は近くのベンチへどっかと腰を下ろした。

・・・プロポーズはした。
・・・でも、その実行は伴っていない。
・・・では、すぐに出来るのか?
・・・答えは否だ。
・・・厳密には出来るが・・・それは望んだものじゃねえ。
・・・大河は待っているんだろうか?
・・・その実行を・・・。
・・・結婚すれば・・・ずっと一緒に居られるのか?
・・・今は無理だ。

・・・収入も無く、学費すら面倒を見てもらってるこの俺が・・・どうやって・・・。


76 :Bon Voyage!3 ◆x6jzI2BeLw :2010/01/10(日) 22:13:44 ID:HMVOW/se

竜児は頭を抱えた。
どうすればいいんだと、詰まった物を吐き出すように竜児は大河の名前を大声で呼んだ。
「たいが〜!!!」

その瞬間、竜児のコートのポケットで携帯が震えた。
竜児が携帯を手にするとディスプレイにメール着信の文字。
大河からの着いたよコールだった。
受信処理を終えたメールの本文が画面に映し出される。


無事、着いたよ〜 BY大河

そっけない一行だけが竜児の目に飛び込む。
大河らしいメールだなと竜児が画面を切り替えようとした時、それに気がついた。
縦方向へのスクロールバーが現れていることに。

更に下に何かあるのかと竜児は画面を下へスクロールさせる。
竜児が思ったとおり、文章が続いていた。

えっとね・・・さっき、面と向かって竜児に言うの出来なかったから・・・
・・・・・・竜児・・・愛してる・・・ずっと
気がつくかな、ここ

笑いを意味する絵文字で締め括られた大河のメール。

携帯のバックライトが消え、文章が見えなくなる。
竜児は真っ暗な携帯画面を見つめ・・・竜児は笑い出していた。
大河にしてやられた・・・そんな気分だった。

そうだよな・・・大河。
お互いの気持ちがしっかり繋がっているなら、形式なんか不要だ。
そんなもの後から付いて来る。

俺はただ、手の届くところでおまえさえを見ていればいい。
これから大河とふたりで歩いて行く道。
決して平坦な道のりばかりじゃないって思う。
だけど、繋いだ手をじゃねえ・・・組んだ手だ。
絶対に離さねえ。

そう、改めて誓う竜児。

BON  VOYAGE  今から始まるふたりだけの物語〜♪
出会ったあの日から これからも・・・・・・♪

その時、風に乗ってどこからか聴こえて来たメロディが竜児の耳に届く。
それはすぐに聴こえなくなったが、竜児の胸にすっと沁み込んだ。

・・・良い旅を・・・か。
竜児はつぶやく。
見えない何かが背中を押してくれている様な気がして竜児はベンチから立ち上がる。
空を見上げた竜児。
中空高く昇った月影に大河の笑顔を浮かべ、竜児は心の中から大河へメールを返信する。

俺もだよ・・・大河・・・俺もおまえのことを・・・

                   ・・・愛してるさ。いつまでもな。




77 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 22:14:53 ID:HMVOW/se

以上で、この話は終了です。
読んで頂きましてありがとうございました。

より深く結び付いた竜児と大河を書いてみたかったんですけど。
上手く表現出来てなかったかも知れませんが・・・。


78 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 22:21:21 ID:rZaUomOQ
>>77
連載お疲れ様。よかったよ。まぁ、誰でも作品書き終わったら後悔はあるさ。次の作品まってるよ。


79 :とらドラ!で三題噺 ◆fDszcniTtk :2010/01/10(日) 22:24:28 ID:rZaUomOQ
お題 「顎」「見せる」「花びら」
>>56 への返歌(って言い方も変だ)


「だからさ」
と、向き直って頬を桜色に頬を染め、ほほえみかける大河。
竜児はふと嫌な予感がした。いや、どうやら大河がラブレターを書いてくれそうだと言うのは、とても嬉しいのだ。素直に嬉しい。しかし、薔薇の花びらを思わせる大河の唇はちょっと秘密を含んでいるようで、
「竜児も返事を書いてよね」
懸念はずばり的中。大河の言葉も竜児の心臓に命中。口を三角にし、頬をぷくぷくとふくらませて幸せそうに目を線のように細め、ラブレターの返事をあらかじめ約束させようとする大河。一方、
「ちょ、ちょっと待てよ。お前返事って何だよ」
竜児のほうは思わず挙動不審。前髪のあたりをいじくりながら、目を伏せてもごもごと口ごもる。顔は既に真っ赤だ。
「あら、書いてくれないの?それってとっても酷いわよ」
と、大河も顔を赤らめながら、しかし楽しそうな表情で竜児にじりじりとにじり寄る。 別段グーをちらつかせているわけではない。むしろ腕を後ろで絡めて、もじっと体をくねらせているだけだ。なのに、たじたじと後退する竜児はあっさり部屋の隅に追い込まれて逃げ場を失う。
「別に書かねぇなんて言ってないだろう」
「じゃぁ、書いてくれるのかしら」
「馬鹿野郎、男が軽々しくそんなこと口に出来るか」
と、顔を背ける竜児に大河は、
「あれ?竜児『ラブレターが恥だなんて思わねぇ』って言ってくれなかったかしら。箱を開けて山のようなみのりんへのラブレター見せてくれたわよね」
と、細めた目で竜児をコーナーに縫い付けたまま、顎をしゃくって押し入れのあたりを示す。
万事休す。ぐうの音も出ない竜児に大河はにっこり破顔してとどめを刺す。
「ね、だから今度は書いたらため込まないでちゃんと渡して」


80 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/10(日) 23:05:46 ID:2dn+LQRm
>>77
乙です!
二人羽織でのりんご皮むきシーン、悶絶した。
やっちゃんの「いってらっしゃーい」もいいね。
大学生に成長したの2人の結びつきがうまく描かれていたと思います!
竜児が悩むのも、大河が吹き飛ばすのも、とてもらしい。
GJしたぁ!

>>79
まさかの続きもの!
くねっとしながら追い詰める大河さん、ぱねっすw 
竜児の、大河へのラブレター、見てみたいなぁ…


81 : ◆fDszcniTtk :2010/01/11(月) 00:58:42 ID:8L/G0Mml
あ、きちんと書いとかないとまずかったな。

>>79>>56 を書いた人と別ね。続き風に書いてみた。

82 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/11(月) 01:03:40 ID://F3IdRg
竜児に書かせたら大長編ラブレターが出来上がりそうだなw

83 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/11(月) 02:01:11 ID:TKfWB8M0
>>81
OK
だが面白かった

84 : ◆Eby4Hm2ero :2010/01/11(月) 06:25:07 ID:n6uyOOf7
>>79
お……おお……GJ!
おねだり大河が可愛くて可愛くて……

三題噺を続けててよかった。

85 : ◆VW.RtTKf1E :2010/01/11(月) 10:49:34 ID:sFqNyyS5
>>65 >>67
回答有難うございます。
あーみんの父親の仕事は特に設定無しということで、色々考えてみます。

ところで、
>>46-52 の投下で、「川嶋」と「川島」が混ざっているのに今、気づいた。(ほとんどが「川島」で間違っている)
なんという初歩的なミス orz
まとめ人様、いつもすいませんが、可能ならまとめの際、修正頂けると幸いです。


86 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2010/01/13(水) 02:23:42 ID:l01RgGqy
お題 「窓ガラス」「追いついた」「日付」



 季節は次第に秋の様相を深め、黒板の日付が近づく受験本番を意識させ始める、そんなある日の昼休み。
 ようやく秋雨前線は抜けたものの、窓ガラスの外、天を覆うのはどんよりと灰色の曇り空。
「アメリカ留学って……北村、本気か?」
「ああ、去年からずっと考えててな。やっぱり俺は狩野先輩の後を追いかけたい。
 追いかけて追いかけて……追いついたらもう一度、きちんと想いを伝えたいんだ」
「そうか……だけど、あの兄貴に追いつこうってのはかなり大変じゃねえか?」
「覚悟の上さ」
「しかし、お前がそこまで考えてたとは……俺なんてようやく志望校を絞った所だぞ。なんかものすごく取り残された気分だ……」
「何を言う、高須はある意味俺達よりずっと先を行ってるじゃないか。なんせ婚約まで済ませているんだからな」
「確かにそうだけど、実際に結婚するためにはやっぱりきちんと大河を養っていけるようにならねえと」
「だが、高須も『覚悟の上』なんだろう?」
「俺のはそんな大仰なもんじゃねえよ。ただ、『みんな幸せ』を目指したいだけさ」
「いや、端から見てると十分に大仰で大変そうだと思うぞ、それは」
「そうか?まあ、どっちもまだまだ先は長いってことか」
「ああ、だからこそやり甲斐があるってものだけどな」
「それもそうか。頑張ろうぜ、お互いに」

 帰り道、隣を歩く大河がふと顔を上げる。
「あ……竜児、あれ見て」
 指差したのは彼方の空、雲間から差す日差しが輝くヴェールのようで。
「あれって『天使の梯子』っていうんだって」
「おう、綺麗だな」
 言いながら竜児は大河の肩を抱き寄せる。
「竜児?」
「いや、なんとなく……」
「ふうん」
 呟いて大河は竜児に体を預けて。
 そのまま二人は、同じ光を見続ける。 

87 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/14(木) 07:21:18 ID:zc31BQ+N
>>86
乙です! さりげない感じがいいです。
そうだよなぁ、こいつら高校生なんだよなぁ… と何故か改めて思ってしまった。

>>56 >>79
まさかのコラボレーション! GJっす! 

88 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/14(木) 07:33:41 ID:qNlOrirj
>>86
おつです!
続き期待

89 :代理:2010/01/16(土) 00:33:51 ID:oIXBcgtz
◆QHsKY7H.TY 投稿日: 2010/01/15(金) 19:26:50 ID:???

遅くなりましたが明けましておめでとうございます。

新スレも乙でございます。
皆様既にたくさんの良作を投下され、寅年まっさかりですね。
私も寅年生まれとして大変嬉しく思っております。

さて、昨年のクリスマスに投下したドラとら!の続きを投下します。
皆様今年も宜しくお願い致します。


と思ったらアク禁でした。
ですのでこちらに投下させて頂きます。
代理投稿歓迎。


90 :代理:2010/01/16(土) 00:35:49 ID:oIXBcgtz
ドラとら! ◆QHsKY7H.TY:2010/01/15(金) 19:31:08 ID:???

クリスマスの晩。
寄り道をしてから暗く冷たい家に帰るとそこには、



──────高熱を出した大河が倒れていた。



***



インフルエンザ。
そう診断された私は新年早々入院していた。
シャレにならない。
何だって大晦日やお正月といった食事イベントに入院なんてしなきゃならないのか。
多分竜児のことだから随分と豪勢なおせちを作ったことだろう。
伊達巻、茶碗蒸し、煮物、数の子……ああ、食べたいものが浮かんでは遠ざかっていく。
あれも食べたい、これも食べたい。
食べ損ねて面白くない。
全く持って面白くない。
そうでも思わないと“やっていられない”

「……はぁ」

吐く息は小さく、しかし重い。
真っ白な病院のベッドで考えるのは、いや気を紛らわせる為に想像するのは、竜児。
溜息の理由も竜児。
今だに熱でぼーっとする頭で考えるのはクリスマスの夜の事。
私は竜児の帰りを待っていた。
きちんと確認しようと泣きながら思っていた。
けどそのうち段々体が重くなって、頭が痛くなって。
気付けば病院だった。
なんでも竜児が救急車を呼んでくれたとか。
なんでも竜児がずっと看病してくれたとか。
なんでも竜児がいろいろやってくれたとか。
けど、その竜児は私が元気になってくると思いのほかそっけなかった。
いや、正しくは“そっけなく感じてしまう”だ。
竜児は今までよりも突っ込んだ話し方や視線を送ってこなくなった。
それは他の周りの人間と分け隔て無いレベルで。
今までが竜児は余程私を特別視してくれていた事が実感できた。
出来てしまった。
だから、悲しい。
それが実感できるということは、竜児にとって私はその辺の知り合いAに成り下がってしまったということだからだ。
ほんと……シャレにならない。



***


91 :代理:2010/01/16(土) 00:38:57 ID:oIXBcgtz
ドラとら! ◆QHsKY7H.TY:2010/01/15(金) 19:32:22 ID:???

大河は新学期前には退院していた。
もうすっかり良いようでおせちを食わせろと言ってくるほどだ。
まぁ気持ちはわかる。
ある意味寝正月だったのだから。
だが、おせちの残りはもう無いし諦めて欲しい。

「やだ」

が、流石は大河。
諦めるということを知らない。
でもここのところ、わがままが酷くなった気がする。
今までは「使えない駄犬ね」で終わったはずなのに、最近は妙に絡んでくる。
まるで構って欲しいように……って何を考えてるんだ俺は。
自分に都合の良い考えを振り払い、大河を宥めつつ餅を焼いてやる。
毎年コレだけは一杯あるからな。
きなこにあんこ、砂糖醤油でも美味しい。
薄く切ったものを揚げて塩を振って掻き揚げにしてもいいし。
結局その日、大河は渋々餅を食べて帰った。
さて、もう少ししたら学校が始まる。


***


「大丈夫、なくならないから、ね?そんなに変わらないわよ、うん」

新年早々、我らが独身ゆり先生はそんな意味のわからないことを言い出した。

「先生!!意味がわかりません!!」

流石はらが学級委員にして生徒会長、北村。
みんなの気持ちを代弁してくれた。
対してゆりちゃんは数拍置いてから、

「えーっと、修学旅行は沖縄のホテルが火事で焼けてしまい雪山スキーに変更になりました、うわぁ良かったねぇ♪」

わざとらしくブリキ人形のように手まで叩いて笑みを顔に貼り付けた、が、

「「「「エエエエエェェェェェェェェェエエエエエーーーーッ!?」」」」

みんながそれで納得する筈もない。
次々と批判の声が上がる。

「マジありえない」
「ナンセンス!!」
「断固拒否だ!!」

2−Cの生徒達に次々罵られていく独身(30)だが、ここでくじける程先生も俺等との付き合いは短く無かった。

『ギュィィィィィィィィン!!』
「「「うわぁぁぁ!?」」」

爪で黒板を引っ掻いたき、その音にみんなが苦悶の表情を浮かべている間に、

『人生なんでも思い通りにはなんねーぞ!!』

先生自身の体験談(現在進行形)が板書されていた。

92 :代理:2010/01/16(土) 00:40:37 ID:oIXBcgtz
ドラとら! ◆QHsKY7H.TY:2010/01/15(金) 19:33:40 ID:???

***


あの担任、何考えてるのかしら?
まだ耳がジンジンするわ、全く。
竜児との会話の無い帰宅途中、私は痛む耳をさすりながらそう思っていると、

『ヴヴヴヴヴヴヴ』

携帯のバイブが鳴る。
誰よ、こんな時に。
竜児との会話も弾まず、修学旅行先も急に変わった事でイライラが募っていた私はむしゃくしゃしながら携帯を取る。



──────得手して、こういう時ってのはろくな事が起きない。



だが今回は輪をかけて悪い。
悪い時には悪いことが重なるというが、けどなにもこんなタイミングで……とも思う。
ケータイにはメールが一通。
内容を見ていくうちに、神様ってのは、世界ってのはどこまでも私に残酷なんだと理解した。

「……大河?どうかしたのか?」
「……別に」

奇しくも、久しぶりにまともに竜児から声をかけてもらう原因にもなったのだから、尚タチが悪い。



***



最近、大河の様子がおかしくなった。
いや、正確にはあの日メールが来てから、だろうか。
ここ最近大河は、朝は自分で起き、食事も昼こそ俺の弁当だが朝は自分で摂りはじめるようになった。
いや、それ自体は悪いことではなく、むしろ良いことなのだが、やっぱり胸にポッカリと穴が開いてしまう。

「はい、じゃあ修学旅行の班は……」

LHR中も上の空で大河はボーッとしている。

「逢坂さんはどこの班がいい?」
「……どこでもいい」

一体どうしたのだろう?
大河を諦めようと決意したのに、こんな大河を見ると余計に気にしてしまう。
そんな資格はもう無いのに。
もうすぐ楽しい修学旅行だというのに、俺の心は晴れない。
そうして憂鬱なまま今日も一日が過ぎ、いつも通り力なく帰宅支度をしていると、

「ねぇ高須君」

櫛枝に話しかけられた。


93 :代理:2010/01/16(土) 00:42:24 ID:oIXBcgtz
ドラとら! ◆QHsKY7H.TY:2010/01/15(金) 19:34:57 ID:???

***



「大河と何かあった?」

櫛枝の第一声はそれだった。
人気の無い所に呼ばれ、不安そうにこちらを見つめるその様は本当に大河が心配なようだ。

「いや」

だから俺も正直に答える。
無論内心までは吐露しないが。

「でも二人とも何か変だよ?」
「俺にもわからねぇんだ、少し前に大河が誰かからのメールを見てからずっとこんな感じで」
「メール?どんな内容だったの?」
「いや、聞いてねぇ」
「高須君本気?」

ギロリと睨まれる。
何だよ、俺何か悪いコトしたか?

「今までの高須君なら大河がこんなになった原因のメールくらい探ろうとする筈だよ、高須君去年の学際からなんかおかしいよ」
「……別におかしくはねぇよ」

一瞬去年の学際からという言葉にドキリとする。

「いいや、絶対おかしい。何があったの?
「だから何も無いって。俺だって大河がどうしてこうなったのか知りたいぐれぇだ」
「じゃあ何でその原因のメールを聞いたり調べたりしないのさ」

櫛枝の目は怒っていた。
そんな目で見られ、ずっと同じ言葉を並べられながら責められるウチに、自分の中で溜まっていた物が、あふれ出しそうになる。

「櫛枝には関係無いだろ!!」
「関係あるよ!!大河は大事な親友だ!!」
「なら俺に聞かずに大河に聞けよ!!」
「っ!!」
「……あ」
「……わかった、もういい」

言い過ぎたと思った時には遅かった。
櫛枝は冷たい雰囲気を纏って背を向ける。

「……大河を独りにしないでって、言ったのに。見損なったよ高須君」

櫛枝はそう言い残すとその場から歩いていってしまった。



修学旅行まで、あと二日。


***

94 :代理:2010/01/16(土) 00:45:35 ID:oIXBcgtz
ドラとら! ◆QHsKY7H.TY:2010/01/15(金) 19:35:56 ID:???

「本当になんでもないってば」

学校帰りに急にみのりんに呼び出され、喫茶店に座って切り出されたのはここ最近の私のことだった。

「嘘、絶対何かあったよ。私にはわかる、何でも言っておくれよ」

昨日竜児も呼び出されていたようだから、恐らく同じ事を聞いたのだろう。
ごめんね、竜児。私を諦めたと決意した竜児にとって、この質問はきっと辛かっただろうね。
私は何でも無いとしつこいくらいに言ってテーブルにあるジュースを飲む。

「もう、何で隠すのさ?って今日はパフェじゃ無いんだね?」
「えっ?あ、うん」

しまった、と思う。
いつもはパフェなんて高価なものを頼んでいたから、いきなりジュースだけっていうのは少し違和感があったかもしれない。

「……やっぱり何か隠している」
「そ、そんなこと無いって」

私は必死に取り繕うが、

「メール、って何?」

ドキン、とする。
竜児、だろうか。まさかあのメールの内用を知っている、とか?

「昨日高須君が大河は誰かからのメールを見てからおかしくなったって言ってた」
「き、気のせいじゃない?」
「そう?じゃあそのメールってなんだったの?」
「た、ただの迷惑メールだよ」
「ふぅん」

ほっと安堵する。竜児はどうやらメールの内容までは知らないらしい。
けど、その安堵がまずかった。

「とう」

みのりんは素早く手を伸ばしてテーブルに置いていた私のケータイを取る。

「あっ!!」

私が取り返そうとした時には遅く、

「止めてみのりん、見ないで!!」

必死にお願いするが、

「な、何これ……!?」

みのりんは例のメールを見てしまったらしい。信じられないものを見たような顔でみのりんは顔を強ばらせる。

「お願い、竜児には、言わないで……」
「大河……」

どうしようもなくなった私は、これだけは譲れないと泣きながらにお願いした。

修学旅行まで、あと一日。

95 :代理:2010/01/16(土) 00:46:54 ID:oIXBcgtz
◆QHsKY7H.TY 投稿日: 2010/01/15(金) 19:37:46 ID:???

ここまで。
間が開いてしまったのもあって少し急ぎ足気味になってしまいました。

次回、最終回の予感。



96 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/16(土) 00:51:27 ID:oIXBcgtz
>>95
乙です。
ラスト、じっくりと書いてください。
GJでした。

97 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/16(土) 03:13:42 ID:0//oomFN
投下も代理も乙
ためにためてる感じだから消化不良気味だけど
その分次回のカタルシスに期待せざるを得ない!

98 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/16(土) 05:50:31 ID:qmUuMoey
>>95
おつです

99 : ◆fDszcniTtk :2010/01/16(土) 15:58:26 ID:rFWFVQUU
新作投下

「高須竜児最期の日」

3レスくらい。

100 : ◆fDszcniTtk :2010/01/16(土) 15:59:53 ID:rFWFVQUU
「ブレンドコーヒーお待たせいたひぃぃぃぃぃっ!」
「おうっ!?」

松の内も開けた最初の土曜日。

大橋商店街に面した喫茶店「須藤コーヒー・スタンドバー」に、ウェイトレスの悲鳴が響く。危うくコーヒーを客にぶちまけそうになったのだ。悲鳴に店の客が振り向くが、すぐに目をそらせたのは、コーヒーをかけられそうになった男が物騒きわまりない目つきで
ウェイトレスを睨み付けているからだ。

だが、男は『ねぇちゃん、クリーニング代10万円払えや。体でもいいぜ』と、思っているのではない。心臓が止まるほど驚いているのだ。ちなみにコーヒーはかかっていない。

「し、失礼しました!」

真っ青な顔で奧に下がるウェイトレスに男は溜息をつく。切り裂くようにつり上がったまぶた中で、大きくぎらぎら光る白目。その中央でぎゅっと小さく縮まって狂気の光を振りまく黒目。
絵に描いたようなプロフェッショナル仕様の反社会的三白眼を揺らめかせて憮然とコーヒーを呑む男の名前は高須竜児。怖い系の人でもなんでもない。それどころか、恐ろしいほどの威圧感を振りまく彼は社会人ですらない。高校三年生。まもなく大学受験を迎える身である。

「ったく。なんでいつもいつもコーヒーこぼしそうになるんだよ」

と、彼が独りごちるのも無理はない。竜児の知らぬ事ではあるが、「時折訪れる切れまくった目つきの高校生君への接客」は、なじみ客の間でスドバと呼ばれるこの店の知られざる新人いじめ、もとい、名物行事である。注文を取るのは先輩アルバイト、
コーヒーを持って行くのは新人、というフォーメーションのもと、「わー怖い!きゃぁっ!」というイベントが何度も飽きずに繰り返されている。

101 : ◆fDszcniTtk :2010/01/16(土) 16:01:31 ID:rFWFVQUU
実のところ竜児は怖くないいどころか、不良ですらない。母親思い、友達思いの心優しい成績優秀、品行方正な男子高校生なのだ。一言で言えばよい子である。竜児が大橋商店街界隈でもっとも目撃されているのは、ゲーセンでもたばこの自動販売機の前でもなく、
スーパーマーケットだったりする。ちなみに特売日やタイムセールスを狙っていけばかなりの確率で遭遇できる。だからこそ、行きつけの喫茶店で知らぬ間にいじられていたりするのだ。

その竜児、今日は人待ち顔でコーヒーを飲んでいる。年上のお姉さんの態度に軽く落ち込みながら溜息をついてコーヒーをすすること5分。待ち人はようやく来た。

「高須君、ごめん。呼び出したのにまたせちゃったね」
「おう、気にするな。それより珍しいな。櫛枝が呼び出すなんて」

現れたのは真冬だというのにひまわりのように明るい笑顔を振りまく少女。名前を櫛枝実乃梨という。竜児と同じ学校に通うソフトボール少女であり、竜児と同じく受験生で、今年体育大学への進学に挑戦する。去年の今頃は山のようなバイトをこなして学費を準備していたが、
さすがに最近は控えているらしい。最近入った情報では両親が折れてOKを出したので体育大学の学費もかなり家から出るとか。そう言うわけで、未だ空は明るいが今日の実乃梨は勤労少女ではない。

コートを脱いで竜児の向かいのソファに腰掛け、若干ビクビクしながら注文を取りに来たお姉さんに紅茶を頼むと、実乃梨は「高須君は最近どう?」などと世間話を振ってきた。どうもこうもない。勉強漬けである。一年前、同じクラスの逢坂大河に劇的なプロポーズを行って
その場でOKをもらった竜児は、是が非でも大学に進んでちゃんとした会社に就職しなければならないと意気込んでいる。もともと成績のいい竜児だが、将来の粘着気質もあって、ことごとく弱点をなくそうと必死で勉強をしているところだ。

「そっか、高須君頑張ってるんだね」
「櫛枝はどうだ?」

竜児、実乃梨、大河の3人は2年生のとき同じクラスだった。その後進学コースに進んだ竜児や大河と違い、実乃梨は体育大学進学希望と言うことでクラスはバラバラになっている。そういうわけで、なかなか顔を合わすこともない。

「私は勉強もしてるけど、トレーニングのほうが時間が長いかな」
「受験勉強のときもトレーニングか。まったくお前は頑張るよな」

竜児の言葉に、実乃梨が笑顔を返す。

102 : ◆fDszcniTtk :2010/01/16(土) 16:02:16 ID:rFWFVQUU
実は去年の今頃、竜児は実乃梨に振られたばかりで呼吸すら辛いような毎日を送っていた。1年生の頃から実乃梨のことを好きだった竜児は、2年生のクリスマス・イブに告白を押しとどられる形で振られ、結局その後完全に2人の間は「なしよ」になったのだ。
今は2人とも落ち着いていて、だからこうして喫茶店で話をすることも出来る。

外は寒い風が吹いているが、店の中は適度に暖房がきいていて快適だ。2人の話も随分弾んだ。

「で、何の用なんだ?話って」

竜児がそう切り出したのは10分ほどおしゃべりした後だった。たいした話じゃないけど、と学校で実乃梨に呼び止められたのが下校の時だった。ちょっと2人で話がしたいと。

水を向けられた実乃梨は「いけない、忘れてた」と首をすくめて笑い、すっと姿勢を正した。

「あのさ、少しまじめな話なんだけど」

微笑みは消え、竜児を射抜くような視線で見つめる。キラキラした瞳に見据えられて竜児はおもわず息を呑み、つられて姿勢を正す。

「なんだ。改まって」
「あのさ。本当にまじめな話だから正直にこたえて欲しいんだけど」
「おう」
「高須君、私の事。まだ引きずってる?」

103 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/16(土) 22:04:13 ID:lsogoTfK
面白い内容を無改行と原作者に似せた文体で台無しにしてるな
一応ここはアニメキャラ板だぞ

104 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/16(土) 23:43:17 ID:3hVk1VM+
>>95
GJ!
最終回wktkしながら待ってます。焦らず書いてくれ
代理さんも乙です

>>102
おし…まい…?
続きがめちゃくちゃ気になるんですが!

105 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/17(日) 00:11:15 ID:0YbGSUvk
>>77です。
コメントありがとうございます。

>>95
GJです。
続き待ってますね。
悔いの無いように書いて下さい。

>>102
そこで終わりますか・・・
乙でした。


以下に新作を投下します。
タイトルは例によってお任せで(汗

4レスほど使います。

106 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/17(日) 00:12:28 ID:/MCDYqMl
ちょ、そこできるの?w
続きが気になるぜ…

107 : ◆x6jzI2BeLw :2010/01/17(日) 00:13:14 ID:0YbGSUvk

バタンと借家のドアを閉めるなり、竜児は大河に声を掛けた。
「大河」
「何よ?」
「ぼさぼさだぞ・・・髪」
「え?やだ」
竜児にそう指摘され、両手で頭を隠す様にする大河。
何せふたりとも季節外れの強風が吹く中、学校から歩いて帰って来たのだから仕方が無い。
風速15メートルの風に煽られまくった大河の髪はふんわりを通り越し、寝起き同然の乱れ髪になっていた。
ぼさぼさの髪なんて散々、竜児に見られているとは言うものの、それはあくまでも朝起きた時に限られる。
普段の日常で平気でいられるほど大河とて大雑把ではない。

「こっち、来いよ」
だから、竜児の俺が直してやるよという声に素直に従った。
竜児は泰子がいつも使っている鏡台の前に大河を座らせると、五本の指を使い大河の髪を梳き始める。
絶妙な力加減で竜児は大河の髪を毛先に向かって下の方から何段階に分けて手櫛を入れて行く。
それが心地良いのか大河は目を閉じ、喉を撫でられた猫みたいな表情を浮かべる。
手櫛を終えると竜児はブラシを片手に大河の髪を整え始めた。
「竜児?」
「何だよ?もうすぐ終わる」
「そうじゃない・・・ずいぶん慣れてるみたいだけど」
女でもない竜児が何で長い髪の手入れの仕方を知っているのかと大河は不思議に思ったのだった。
「ああ、たまに泰子のを手伝うことがあったからな」
「やっちゃんの?」
「おう」
最近でこそ少なくなったものの、泰子の毘沙門天国への出勤が遅刻寸前ということが何回かあり、魅羅乃ちゃんへ変身するのを竜児が手伝ったこともあるのだ。
その場合、化粧の手伝いなど竜児が出来るわけも無く、必然的に泰子の髪を整えてやることになったのだが。
「あれこれ、言われてさ・・・それで慣れてるんだよ」
「ふうん」
竜児の説明に納得する大河。
「ほとんど絡まねえな・・・大河の髪」
小気味良いくらいにブラシが髪の中を通る。
「そう?」
「ああ、トリートメントとか手入れはしっかりやってるんだな」
感心するように言う竜児。
「あんまり気にしてない」
あっさり言う大河。
「おま・・・少しは気にしろよ」
実際、大河はそんなに自分の髪にあれこれ手間を掛けた覚えが無いのだ。
もちろん女の子である以上、無関心という訳ではないが、自然体のままやって来たと言うのが偽らざるところだった。
「似てるんだよな・・・泰子と大河の髪質」
ブラシを当てながら竜児がボソッと言う。
「やっちゃんと?」
「おう」
枝毛とか痛みが目立つんだよと竜児は泰子の髪の現状を憂う。
「だから、大河もちゃんと手入れとかしておけよ・・・せっかくきれいな髪なのに・・・もったいない」
お得意の決め台詞で話を終えると竜児は手入れの終了を告げた。



108 : ◆x6jzI2BeLw :2010/01/17(日) 00:14:48 ID:0YbGSUvk

「ありがと、竜児。一応、お礼は言っておくわ」
竜児の整えてくれたやり方が満更でもなかったのか、誉められたのが嬉しいのか大河は機嫌よく言う。
鏡の中の大河は片手を使って髪を首筋から肩へ向かってなびかせる。
そして、そのまま中腰になって鏡を覗き込み、指先で自分の頬をぷにっと押す。
「何やってんだよ?」
大河の行為に不審を感じた竜児が聞く。
「余分なお肉が付いてないかどうか見てるの」
「普通、腹とか足じゃねえのか?」
「うるさいわね・・・私の場合はここなの」
それはまた変わったところでと竜児は思わざるを得ないが、下手な反論はリスキーなのでやめておく。
仕方なく竜児は黙り、大河の好きにさせた。
鏡に向かい、小首をかしげながら大河はチェックに余念が無い。
背を向けて前かがみになった大河の姿勢は嫌でも長い髪をより長く竜児に見せた。
「そう言えば、大河っていつから伸ばしてるんだよ?髪」
ふと疑問を覚え、問いを発する竜児。
「小学校、入った頃よ」
さっきのご機嫌が続いてるのか大河はすんなり回答を出す。
「へえ、きっかけとかあったのか?」
竜児の合いの手に・・・。

「うん・・・うっかり間違えられたから、男の子に」
思わず、ぽろりと言ってしまう大河。
言ってしまった後で大河は鏡に向かい真顔になる。
「ねえ・・・竜児」
「おう」
「私・・・今、何か口走った?」
「ああ、何か間違えられたとか」
大河は大きく目を見開き、せっかく整えてもらった髪をくしゃくしゃにする。
「みのりんにすら話したことの無い、忌まわしい記憶を・・・」
ぶつぶつと大河はつぶやき、竜児をキッとにらみつけた。
不愉快なことを思い出したじゃない、どうしてくれると竜児を指弾する大河。
「責任、とってよね」
半オクターブ下がった大河の声。
別に俺は聞きたくないぞと言う竜児をその場に座らせ、大河が語り出すそのいわれとは・・・。



109 : ◆x6jzI2BeLw :2010/01/17(日) 00:16:03 ID:0YbGSUvk

「逢坂大河・・・字だけ見たらどう思う、竜児」
「どうって・・・普通だと思うぞ、俺は」
「ふ・・・普通って言うのはばかちーみたいな名前を言うのよ」
「川嶋が・・・か?」
「名字はいいの・・・問題は名前よ」
美少女戦士みたいな名前だといつか大河が言っていた川嶋の名前・・・それは亜美。
「川嶋・・・亜美・・・でしょ。竜児はこれを字で見た時、どう思う?」
さっきと同じ問いを繰り返す大河。
「女の子らしい名前じゃねえのか」
字面を思い浮かべながら竜児がそう言うと大河は顔色を変え、竜児に噛み付く。
「そうよ!女の子らしいのよ!!どっからみてもそうじゃない!!!」
「お、落ち着け、大河」
暴れ馬を扱うかのように、どうどうと大河を制御する竜児。
「・・・それに引き換え・・・大河なんて・・・どうみたって、女の子に見えない」
シュンとしながら大河は黒歴史とも言うべき、トラウマを竜児に打ち明ける。
「何だったか忘れたけど、小学校1年生くらいの時、全校集会で校長先生から私も含めて何人かが賞状を貰う事になったの」
「すげえじゃねえかよ」
「うん、それは良かったんだけど・・・問題が起きたの。ひとりひとりが校長先生に名前を呼ばれて前に出ることになって・・・」
大河はここで声色を少し変えて、その時の再現を始める。
「櫛枝実乃梨ちゃん・・・高須竜児くん・・・川嶋亜美ちゃん・・・逢坂大河・・・くん・・・」
泣き笑いのような顔をして大河は自分の名前を呼んだ・・・くん付けで。
これで分かるでしょと大河は目で訴える。
「・・・何て言ってやればいいのか」
竜児は大河へ掛けるべき言葉をとっさに見つけられない。
校長先生も「逢坂大河」と言う名前の持ち主が女の子だとは気が付かなかったんだろうな・・・無理もないと竜児は思う。
「それだけで終わらないのよ」
どよーんと沈みながら大河は話を続ける。
「ショートに近かった髪型・・・スカート、穿いてた・・・その時の私・・・・・・で、聞こえたのよ・・・後ろの方で男女とか言いながら笑う声が・・・」
髪を伸ばそうと決心したのはそう言う理由からと大河は話を締め括る。

「災難だったなとしか言えねえけど・・・な」
「・・・いいのよ、もうあきらめてるから、この名前」
手乗りタイガーなんて言う呼ばれ方をされる羽目になったのもこの名前のせいと大河はうんざりしたように付け加える。
「なあ」
「何よ、竜児?」
「聞いたことあんのかよ?自分の名前の由来・・・」
「あるわ、一度だけ・・・呆れるような理由だったけど」
「どんな?」
「・・・間違えたんだって、男の子と」
大河の話した内容はこう言う事だった。


110 : ◆x6jzI2BeLw :2010/01/17(日) 00:17:51 ID:0YbGSUvk

母親のお腹の中に大河が居た頃、医者は大河を男の赤ちゃんでしょうと出産前の性別診断を誤診した。
その上、大河自身もお腹で暴れる子だったから絶対、男の子だと大河の両親は思い込んだ。
そんな訳で、産まれて来る子のために男の子用の名前しか用意していなかった。
「・・・で、産まれて来れば、私は女の子で、両親とも大慌てと言うわけ」
雄々しく育って欲しいと準備された名前・・・あれこれ考えてせっかく用意したのだからとそのまま流用されることが、両親の間で合意に至るまで長い時間は必要とされなかった。
「はは、ひどい親でしょ」
乾いた笑い声と裏腹に大河の表情は湿り気を帯びる。

「そっか・・・でもな・・・俺は好きだぞ、大河」
何気ない竜児のひと言に大河はえ?と言う顔になる。
「・・・す、好きって?」
ドキっとしながら聞き返してしまう大河。
思わず、大河はくるりと竜児に背を向ける。
鏡台の鏡に映る自分の顔・・・ほんのちょっぴり赤くなっているのが分かる。

「あ・い・さ・か・た・い・が・・・大河・・・いい名前じゃねえか・・・俺はいいと思うぞ」
鏡の隅で竜児はうんうん頷きながら大河の名前を誉めちぎっていた。
好きなのは名前のことかと分かり、大河は落胆に似た心境を味わう。
なんでそんな気分になるのか理解できないまま・・・。

「ありがと・・・気を遣ってくれて」
でも、竜児にそう言われるとこの名前にも愛着が湧いて来そうだと大河は思う。

「もう一度、やってやるよ」
大河が自分でくしゃくしゃにしてしまった髪。
竜児はブラシを手に大河の背後に立つ。
「うん、お願い」
大河は自分でも驚く位、素直に返事をしていた。
竜児にブラシを当ててもらう鏡の中の大河は自然に笑みがこぼれる。
「何だよ?嬉しそうだな」
鏡を覗き込むように竜児が言う。
そう言われて大河は急に渋面を作る。
「べ、べつ、いいでしょ」
さっさとやりなさいよ・・・このグズ犬が・・・といつもの罵倒を始める大河だったが、その口元が笑っているのを隠し切れていなかった。



111 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/17(日) 00:19:47 ID:0YbGSUvk
以上です。

ふと思い付いて書いてみました。
大河はどんな理由で髪を伸ばしたのかと気になったもので・・・。

112 : ◆Eby4Hm2ero :2010/01/17(日) 05:59:09 ID:NS4NgAM6
>>107-111
GJ!
ほろ苦い甘さがいいですね。

113 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2010/01/17(日) 06:00:06 ID:NS4NgAM6
お題 「夕暮れ」「ポコ」「突き上げる」



 夕暮れの迫る喫茶店。
 高須竜児は世界を滅ぼさんとする決意の顕れとして、その拳を突き上げる……わけではなく、
「おう北村、こっちだ」
 高校以来の親友を呼ぶために片手を挙げただけで。
「おお高須、遅くなってすまない」
「いや、元々無理言ったのはこっちだし」
「しかし高須、ずいぶんと疲れているというかやつれているというか……結婚準備というやつはそんなに大変なのか?」
「……そんなにひでえか?」
「うむ、あまり言いたくないが、この席の周りだけ妙にガランとしてるのは間違い無く高須の顔のせいだな」
「なんか、やるべき事が後から後からポコポコポコ湧いて出てきてな……仕事の方もあるし。
 北村も覚悟しとけよ。狩野の兄貴とそろそろじゃねえのか?」
「ああ、その前に入念に下調べと準備をしておくことにしよう」
「まあ忙しいのは確かだけど、これはこれで楽しいんだけどな」
「そんなものか?」
「大河なんて毎日テンションが高くて、別の意味で大変だぞ。なんか『正式に夫婦になる瞬間が日々近づいてくるのが嬉しい』とか言って」
「なるほど、それならマリッジブルーってやつとは縁が無いようで安心だな。
 それじゃ、これが元2−Cメンバーの今の連絡先のリストだ」
「おう、ありがとう。本当にお前が帰国しててくれて助かったぜ」
「しかし、今時高校二年生の時のクラスメイトを全員招待というのは珍しいんじゃないか?」
「そうかもしれねえけど、あの一年があってこその俺と大河だからな。色々迷惑もかけたし、きちんと報告してえんだよ」
「今でも迷惑だったと思ってる奴はそう居ないと思うけどな。まあ、その真面目さが高須らしいが」
「おう、そうか?」
「ところでだな高須。次に会う時は何と呼べばいい?」
「は?」
「いや、お前達二人とも『高須』になるわけじゃないか。どう呼び分けたものかと思ってな」
「……そのへんはまあ、好きに呼んでくれ」

114 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/17(日) 06:31:48 ID:mvk0CkqZ
>>113
お疲れさま!
グッジョブ!

115 : ◆fDszcniTtk :2010/01/17(日) 07:28:52 ID:5tQdEYmI
>>110
昨日風強かったね。二人の間の空気からすると、時期的には作品中12月のころになるのかな。
大河の名前ってきっと父親からの連想も入ってるよね。

>>113
>今でも迷惑だったと思ってる奴はそう居ないと思うけどな。
思ってなくても聞けば文句言う人はいるよな。亜美ちゃんとか亜美ちゃんとか亜美ちゃんとか。あと、亜美ちゃんとか。

北村が結婚後の大河をどう呼ぶのかは、考えると確かにめちゃめちゃおもしろい。あだ名ではなく「逢坂」と
呼び捨てにしていたのは北村の堅さであり優しさだろうけど、まさにそれが裏目だ。

大河 => 今更人の嫁さんを呼び捨てか
タイガー=>あだ名で呼ぶには遅すぎる
奥さん=>距離感ありすぎ
お前=>たぶん竜児に殴られる

ま、気まずい空気に耐えながら「大河さん」と呼んでやってくれ(w

>>103-106
コメントサンキュー。(つづく)って書いときゃよかった。移動先からなので操作性わるくて四苦八苦してる。
すまん。

それから退避スレの 71の人、応援ありがとう。規制解除されるといいな。

つーことで「高須竜児最期の日」続き投下。

116 :高須竜児最期の日 ◆fDszcniTtk :2010/01/17(日) 07:30:30 ID:5tQdEYmI
間があった。真剣に竜児を見つめる実乃梨を見つめ返す。一体何を切り出そうとしているのか竜児にはわからない。わからないが、答だけはわかっていた。

「俺は、引きずってねぇ」

はっきりと、そう言えた。今は大河だけを愛している。そう思う気持ちに一点の曇りもない。バレンタインデーの放課後、実は実乃梨も竜児の事を好きだったと知らされた。知ってなお、未練らしきものは不思議と浮かばなかったし、
その時、それまで聞かされなかった心の内を話してもらって、本当に実乃梨の事には決着が付いた。

「そっか」

と、竜児の答を聞いた実乃梨は緊張を解く。

「私も引きずってない。今の気持ちはあのときと同じ。自分の夢にまっすぐ向かってる」
「おう、俺はそういうお前を応援してるぜ」
「ありがとう」

微笑んでこたえた竜児に実乃梨が、かつて彼の心を融かし尽くしたひまわりの笑顔を向ける。竜児はこの笑顔が好きで恋に落ちたと言っていい。実乃梨の前で胸が怪しくざわめかなくなった今でも、この笑顔は好きだ。その竜児の目の前で、

「で、高須君。君を男と見込んで頼みがあるんだが……『漢』と書いて『おとこ』と読む心意気で、ひとつ聞いちゃくれないかね」

がらりと実乃梨の口調が変わる。そもそも櫛枝実乃梨はこういう女の子だった。つかみ所の無い陽気さで、がっちりと竜児のハートを掴んでいた。いつも意味不明の言葉を口走る実乃梨が普通に話してくれるようになって、まだ1年も経っていない。

「な、なんだよ」

いきなり前のめりになってにぃっと笑いながら迫る実乃梨に竜児が気圧される。思わず照れ隠しにコーヒーを含む竜児は

「あのさ、大河が昨日ぽろっと口を滑らせたんだけどさ、私宛のラブラブレターがたくさんあるんだって?」

盛大にむせた。

むせながら、全身の血管が開くのがわかる。体温がかっと上昇する。見なくても、自分の顔が赤いだろう事が想像できる。

「ほうほうほう。その反応。どうやらネタはガセじゃなかったらしいね」

117 :高須竜児最期の日 ◆fDszcniTtk :2010/01/17(日) 07:31:45 ID:5tQdEYmI
実乃梨が嬉しそうに笑う。そう、ネタはマジだ。竜児の手元には、櫛枝実乃梨あての、出せなかったラブレター、うっかり書いた詩集、ドライブの時に演奏する曲目リスト、同オリジナル編集MDなどが、段ボールひと箱残っている。
それを知っているのは大河だけだ。ゴールデンウィークの頃、竜児はこの箱を捨てようとした。我ながら未練がましいと思ったから。だが、大河に止められたのだ。折角だし捨てるな、取っておけと。

とはいえ、誰が引っ張り出して読むわけでもない。今は押し入れの奧で眠っている。おそらくはそのまま、何十年もあけられずに時を過ごすはずだったのだ。それを実乃梨に漏らすとは、一体大河はどう言うつもりなのか。

「お前……いや、大体大河はなんでお前にばらしてんだよ」

目がつり上がっているのは、照れ隠しに怒って見せているのだが、残念ながら不良も目をそらす竜児の凶眼は実乃梨には通じない。はじめっから竜児におびえないところも、竜児のハートを引きつけた実乃梨のチャームポイントだった。
だからこうして竜児の突き刺すような視線を真っ向から浴びながらも

「高っちゃーん。こえーよ、怒んないでよ。これ、春田君のまね。似てた?」
「似てねぇよ。てか、話をそらすな」
「まぁまぁ、大河はうっかり口を滑らせただけだから。慌ててたよ。あとで大河をしかったりしたら絶交だぜ」

にっこり笑いながら釘を刺すことを忘れない。

「怒るなって言っても……普通怒るだろう。こんなこと漏らしやがって」
「高須君はまじめだから怒るのもわかるけどね。お互い引きずってないことだし、実害はねえべさ」
「そうだけどよ」

そうだけど、やはり腹はおさまらない。以前好きだった相手に秘めたラブレターがあると知られる。いったいどんな羞恥プレイなんだ。あのドジ虎め、あとでとっちめてやる。と、小さな婚約者を思い浮かべながら竜児はテーブルの下で拳を握る。
本当に喧嘩になったらとっちめられるのは暴力で劣る竜児だろうが。

視線を落としてコーヒーカップを相手にぶつぶつと文句を言う竜児に、実乃梨は相変わらず脳天気な笑顔を浴びせかける。

「そこで高須君、前振りはいいとして、ここからが本当のお願いなんだが」
「……なんだよ」
「ものは相談だが、とういか、一生のお願いだ。おいらにその手紙読ませちゃくれないかい?」
「おうっ!?」

思わずのけぞる。背中がソファの背もたれにぶつかってワンバウンドするほどのけぞった。もう、赤面などと言う生易しいものではない。顔から本当に火が出そうだ。その竜児に追い込みを駆けるように、実乃梨が顔をずいと近づけてくる。笑顔がかすかに狂気をはらんでいる。

118 :高須竜児最期の日 ◆fDszcniTtk :2010/01/17(日) 07:33:09 ID:5tQdEYmI
「ね、読ませてよ。私宛に書いたんでしょ?」
「ま、待て。櫛枝。あれは、その……」
「高須君、みみっちいことは言いっこなしだ」
「いや、ダメだ。あれは、そ、そうだ。プライベートなものだ」
「でも、おいら宛に書いたんだべ?おいらのものでもあるよな」
「ねぇよ!」

思わず大声を出した竜児に、またもや店内の人が振り返り、そして目をそらす。目をそらしたいくらい、竜児の表情は逼迫していた。あえて言葉にすれば、顔つきが裏返っている。しかし、いつもなら傷つくそんなシチュエーションにも、竜児はかまっていられない。
今や実乃梨は完全にソファから立ち上がり、テーブルに手を突いて竜児に向かって乗り出している。

「なぁ高須君。聞いてくれよ。君だから話すけど、この不詳櫛枝、生まれてこの方ラブレターってものをもらったことがないんだ。あるのは滑り込みで勝ち得た名誉の負傷だけなんだよ」
「そ、そうか。意外だな。お前はモテるのかと思っていたが」
「いやぁ、嬉しいこといっちゃってくれるねぇ。でも残念。おいらみたいなオッペケペーに目を掛けてくれた優しい男の子は高須君だけだったよ」
「おう。これでも俺は見る目があるからな」
「うんうん、聞いてる聞いてる。大河がいつも『竜児の見る目は確かだ』って言ってたからね。高須君はおいらのどこが気に入ったのかい?肩?腿?ひょっとしてバラかい?だとしたらダイエット戦士としては複雑な心境だぜ」
「バカ言え。そりゃ肉屋の話だ」
「おっとコレは失礼。ジョークが効き過ぎた。おいらは高須君が女の子を肉付きで選ぶような男の子だとはこれっぽっちも思ってないぜ」
「あたりまえだ」

死ぬほど乾いた喉に仰け反ったままコーヒーを流し込む。味なんかわからない。熱いかさめているのかすらわからない。そもそも、これは現実だろうか。たちの悪い夢じゃないのか。いや夢であってほしい。そう、きっと今にも目が覚めるだろう。
しかし、願いむなしく現実の喫茶店の一角で、相変わらず実乃梨は満面の少々狂った笑みを浮かべて竜児に迫っている。

「櫛枝、とにかく座れよ」
「いけねぇ。ちょっと興奮しすぎた。鼻血が出るかも」
「出すなよ」
「鼻血はともかく高須君、私はまだラブレターって奴をもらったことがない」
「おう」
「このままじゃ、男の子に恋文ひとつもらえないまま高校生活が終わりそうな勢いだ。それともなにかい?高須君は、一度は思いを寄せた女の子にそんな寂しい思いをさせて平気なのかい?そんなことで国連大使が勤まるのかい?」
「わけわかんねぇよ。大体、矛盾してないか?」
「矛盾?なにが?」

首をかしげる実乃梨を睨み付けるように竜児が見据える。睨んでいるのではない、必死なのだ。

119 :高須竜児最期の日 ◆fDszcniTtk :2010/01/17(日) 07:34:44 ID:5tQdEYmI
「おまえ、あのヘアピン『私はそれを受け取らない』って受け取らなかったじゃねぇか。あれだけぴしゃりとけじめをつけといて、今更……その……ラブレター読ませろって、何だよ」

後半は小声になる。さすがに人の多いところで自分の口からラブレターなど言えない。それ以上に、選んだ話題が繊細だというのもある。1年前、竜児はクリスマス・イブに実乃梨に渡そうとしてかわいらしいヘアピンを買っていた。
だが、それを実乃梨に渡すチャンスはなかった。ヘアピンは迷走し、実乃梨の髪を飾った後、雪山で崖から落ちて、それからしばらくあれやこれやで竜児の心は毎日崖から転がり落ちるほどはちゃめちゃに乱れたものだった。

結局、すべてが収まるべき所に向かって突然動いた2月のあの日、実乃梨は改めてそのヘアピンを拒んだのだ。竜児はその時の実乃梨の決然とした視線を忘れられない。夢に向かって歩く。それ以外の余事は忘れる。それが何だ、ラブレターを読ませろだと?

「矛盾ねぇ。ふむ。そう言われると矛盾しているようだが」
「ほらみろ」
「してないよ」
「何でだよ!してるだろ!」

冬の柔らかい光が窓からさし、店内は穏やかな色に包まれている。なのに竜児の周辺だけは空間が歪んだように異常事態真っ只中だ。そういえば1年前の今頃、竜児は大河と、同じくクラスメイトであった川嶋亜美を相手にこの喫茶店で気まずい思いをしている。
ひょっとしたら時期と場所が決定的に悪い大橋商店街のグランド・クロスなのかもしれない。

憤る竜児を放り出したまま、実乃梨は満面の笑みで勝手なことを言う。

「あのときは、まだ高須君のこと少し引きずってたもん。あれはもらえなかったよ。でも、もう引きずってないからラブレターを読んでも大丈夫さ」
「じゃぁ、あのヘアピン……」
「高須君にはさ」

と、竜児の言葉を遮り、ひまわりの笑顔が続ける。

「あれを私に渡す理由がもうないよね」
「……ねぇよ」

竜児はそう答えざるをえない。顔を背けたのは1年前の恋の疵がつらいからではなくて、言い合いに負けたのが悔しいから。そのくらい、あのヘアピンを渡す理由がなくなってしまっていた。

「聞けば高須君、ラブレターどころか詩集もあるって言うじゃないか」
「あ、ある」
「私用に編集したMDもあるとか」
「お、おう。あるぞ」
「見せて。読ませて。聞かせて」

ほとんど無意識に、竜児は席を立っていた。そのままでは自分のコーヒー代をかつての想い人に押しつけてしまうとか何とか、そんなことが全部吹き飛んでいた。いたたまれない。というか、ここにいたら死ぬ。警察は死因を『羞恥』と発表するだろう。

しかし

「おおっとう。見くびってもらっちゃ困るぜ。高須君、君はおいらの目を盗んでベースを離れることが出来るとでも思ってたのかい?だとしたら関東ベスト4の強肩もなめられたものだぜ」

逃げようとした竜児の手首は、がっちりと実乃梨に掴まれてしまっている。素振りで鍛えられた実乃梨の手のひらはごつごつとしていて、とても振り切って逃げられそうにない。かつての想い人の顔つきは、捕食者のそれだった。

◇ ◇ ◇ ◇
(つづく)

120 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/17(日) 16:58:30 ID:9rNVCva3
>>113
結婚まで秒読み段階か、幸せそうなのが伝わってきていいね!
そういえば「逢坂」と呼んでるのは北村だけなんだよね
いろいろ想像すると楽しい
いつも思うことだけど、着眼点が鋭くてすごいです

>>119
続いてよかったw
竜児は捨てようとするけど大河が止めるって、想像つくなぁ
その辺は竜児のほうが悶々としそう。自覚してないときですら、独占欲つよかったし
しかし大河、ぶっちゃけすぎw
どうなる竜児!続き待ってます!


121 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/17(日) 19:20:46 ID:L6D0mBFg
>>113
結婚しても、北村は「逢坂」って呼びそうなきがするなぁ。

>>119
おお、続きキター!!
大河らしいドジだなぁ。
しかし、過去の好きだった人の話は本人にしたら辛いなぁ。(いい線ついてます。)
>>120同じく、続き期待!!



122 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/17(日) 22:59:41 ID:UA7ltZOo
>>111
乙です!
いつも氏のお話は、2人の踏み込みきれないギリギリのところがいいっすね。
しかし竜児、大河の髪を梳けるなんて、役得じゃねぇか! と言っておく。 俺にもやらせろ! おや? 誰か…

>>119
なんという羞恥プレイ!
みのりんの追い込み、歪みねぇな。 しかし、いいテンポだ!
出さないラブレターを書いたことのある身としては、それだけは勘弁してあげてと擁護したいところw
次の展開に期待!

>>113
GJした。大河のテンションの高まりに比例して、竜児の顔はさらにやつれていくと…
>>121
私も、北村の大河の呼び名は「逢坂」だと思ってしまう。

「逢坂、いや、もう違うんだったけな、何度もスマン」
「もういいよ、北村君。逢坂ってあだ名だと思うことにする。あれだけど、なんか他の呼ばれ方も変な感じだし」

もしくは「高須夫人っ!」とか

123 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/18(月) 01:34:35 ID:2Th3tdSK
>>119
長い一日だった
とにかく乙です!

124 : ◆fDszcniTtk :2010/01/18(月) 06:28:22 ID:HbV42SWQ
>>120
>>121
>>122
>>123
コメントありがとう。今回のネタは、自分で書いていてホントひどいって思うわ(w。ちょっとみのりんのキャラ壊しすぎかも。すまん、みのりん。

125 :高須竜児最期の日 ◆fDszcniTtk :2010/01/18(月) 06:29:03 ID:HbV42SWQ
「竜児、ほんとにゴメン」
「お前、さっきからそればっかだぞ」

ちゃぶ台に向かって居心地悪そうにちょこんと正座する大河にお茶を出し、竜児はその隣にちゃぶ台を背にして座って天井を見上げる。普段行儀のよい竜児らしからぬ姿だが、これからかつての想い人がラブレターの詰まった箱を取りに来るとあっては、竜児とてペースは乱れる。

結局あのあと……昨日だが……竜児は豪腕投手の気迫に押されてスドバのソファに縫い付けられたまま嫌な汗をかくこと1時間。とうとう根負けして手紙を見せることを了承してしまった。ちなみに、実乃梨によれば大河のほうは口が滑ったときの尋問で、
あっさり「竜児がいいなら」と言ってしまったらしい。道理で昨日の大河は朝から落ち着きがなかった。

スドバで完封勝利した実乃梨はそのまま大河に電話をかけて翌日……つまり今日……の午後に竜児の家に来るようセットした。どうやら、彼の豪腕少女は善は急げと段ボール箱を担いで帰るつもりのようだ。
が、さすがに婚約者の居る男の子の家に独りで上がり込む訳にはいかないと、当の婚約者を呼び出したわけだ。

上がり込まないという選択肢はないらしい。

ついさっき、早めに来た大河に昼飯を食わせたばかりなのだが、どうやら自分の口が呼び起こした事件に珍しくもかなりへこんでいたらしい。出会った頃は竜児の外傷だの心の傷だのには気を遣ってくれなかったのに、変われば変わるものだ。
昼飯前に『食欲無いから、大盛りじゃなくていい』と言って竜児を慌てさせた大河だったが、『やっぱりおなかがすいてきた』と食事中に(!)言い出して竜児の分を半分平らげてしまった。

それほど深刻でもないようで一安心である。

とはいえ、おなかが落ち着くとやはり後悔におそわれるらしく、それが先ほどの会話へと続く。

「あのさ」
「なんだ?」

後ろ向きにちゃぶ台に肘を突いていた竜児が、声をかけられて大河を見る。大河は湯飲みを両手で持ったまま前に突き出すようにちゃぶ台に突っ伏している。

「あんたが手紙を捨てるって言い出したとき、私『せっかくだからとっときなよ』って止めたじゃない」
「おう」
「あれってさ、『とっとけばいいじゃない』じゃなくてさ、とっといてほしかったんだ、私」
「何でだよ」

前を向いていた大河がちゃぶ台に伏せたまま竜児に顔を向ける。顔の片方をぺたんと台に当てたまま、照れたようなくすぐったそうな表情を浮かべている。頬は桜色。瞳は竜児の向こうをみているよう。

「だって、思い出なんだもん」
「お前の?」
「そ」

大河は同じ姿勢のまま視線をそらせて、それでもバラのつぼみのような唇には笑みを浮かべたまま。

126 :高須竜児最期の日 ◆fDszcniTtk :2010/01/18(月) 06:29:56 ID:HbV42SWQ
「あんたにとっては災難だったろうけどさ、あの夜は私の大切な思い出。だって、竜児に初めて優しくされた日だもん」
「やさしくした覚えはねぇけどな」

苦笑する竜児に大河もほほえんで

「そうね。きっとあんたは私にぶん殴られないようにっていろいろ考えてたんでしょうね。でもさ、竜児はおなかすかして倒れた私を放り出さずにベッドに寝かせてくれた。チャーハン食べさせてくれて、『ラブレターのどこが恥だ』って勇気づけてくれた。思い出なのよ。
あの日のことは全部大切な思い出。ベッドもちゃぶ台もチャーハンも、破れたふすまも、あんたが私の封筒で作った花びらも、あんたがみのりんに書いたラブレターも」

そういうと、照れくさくて耐え切れなくなったのか、顔を前に戻す。

「だからさ、こんなことになったの、ほんとに悪いと思ってる。だけど、わかってよ」

そうささやくように言う大河に、きつい言葉を返すことのできる竜児でもない。

「心配するな。怒ってなんか無いって」
「ほんと?」
「おう」
「ぜんぜん?」
「……おう」

くすくすと大河が笑いながら体を起こす。

「竜児は嘘つけないね」
「今怒ってないのは本当だぞ。昨日ちょっと頭にきただけだ」

ほんの少しムキになって語調を強める竜児を、笑顔の大河が見上げる。ちょっとの間黙ったまま視線を交差させたあと、ふと竜児も降参したように笑顔になる。そして少し身じろぎしたのが合図だったように、大河がまぶたをゆっくりと閉じて……

◇ ◇ ◇ ◇

「私ってバカよね。どうしてこんな優しい男の子に殴り込みかけたりしたんだろう」
「お前がバカやらかさなかったら、俺はお前を知らずに終わってたけどな」

2DKのぼろい借家。大河は卓袱台に向かったまま。竜児は卓袱台に背を向けたまま、ちょっと無理に体を伸ばしてついばむようなキスの合間。ささやくように言葉を交わす。

「私が殴り込まなかったら、竜児はみのりんと付き合ってたんじゃないかな」
「冷静に考えてありえねぇ」
「そう?」
「言い出せないまま終わってたろう。そもそも、今となっちゃお前以外の女と付き合ってる俺なんか、想像すらできねぇ」
「もう」

お世辞なんか言ってもダメなんだから、とでも言いたげに微笑む大河の、奇跡のように柔らかい唇をふさいで小柄な体を抱き寄せる。

127 :高須竜児最期の日 ◆fDszcniTtk :2010/01/18(月) 06:31:00 ID:HbV42SWQ
「……竜児、だめ。みのりんが来ちゃう……」
「……まだ大丈夫だ」

そう言ってまた唇を奪う。

何度繰り返しても、竜児はキスに慣れない。いや、大河の唇に慣れないというべきか。最初のキスからそろそろ1年だが、未だに大河の唇は、触れる度に竜児の脳髄を焼き尽くそうとする。閉じたまぶたの裏に黄金色の火花が飛ぶ。
腕の中で生々しく体温を伝える体に心臓が跳ね、全身を熱い血液が駆け巡るのがわかる。

実乃梨がもうすぐ来るのはわかっている。こんな事をしていてはいけないのもわかっている。でも、わかっていても竜児は止めることが出来ない。

大河を腕の中に抱きしめてキスを交わす度に、竜児は自分の中の留金が外されていくのを感じている。この女は大事にしなければならない、守らなければならないと強く思う一方で、一番遠ざけておかなければならない敵は自分の中にある情欲なのだ。
それを知った上で、それでも大河に触れずにはいられなかった。そして触れる度に、仕草や態度に出さなくても、その情欲を固く閉じ込めている留金は外されていくのだ。

二人は婚約しているのだから、いずれは肌を重ねる日がくる。しかし、竜児はその留金が全部はずれる日が思っているより早く訪れるのではないかとずっと恐れていた。自制心の終わりという形で。二人共十分に合意ができていればいい。
でも、もし竜児だけが我慢できなくなったら……。

そんな気持ちを知ってか知らずか、大河の方は何の迷いもなく竜児の腕の中に体を預け、その度にまるでまだどこにも消えていないことを確認するように抱きしめ返してくる。

「……竜児……あのね……私ね……あんたが……」
竜児の腕の中、上気した顔で、それでもしっかりと竜児の瞳の奥を覗き込むような目で大河が何かを伝えようとする。だが、強く抱きしめあいながら体温を高めていく2人の頭を、絶妙なタイミングで冷やす救世主が現れた。

『ピンポーン』と。

慌てて離れて思わず顔を見合わす。そして同時に声を殺して笑う。

「私、ひょっとしてみのりんに助けられた?」
「バカ言ってろ」

笑顔で睨み付けて竜児が立ち上がり、『櫛枝か?』と声を掛けながら玄関に向かった。

◇ ◇ ◇ ◇ 

(to be continued)

128 :代理:2010/01/18(月) 11:52:27 ID:2dsZQO+S
名前:まとめ人 ◆SRBwYxZ8yY 投稿日: 2010/01/18(月) 01:46:04 ID:???
まとめサイト更新しました。
相変わらず規制中なのでこちらで報告ー


私のプロバイダーで悪さを働いているのは誰だァ!


129 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/18(月) 15:31:28 ID:pA9Q2a3N
>>127
コメディ調にはじまって、しっとりいいお話、最後にラブラブ…
うおー素晴らしいです!悶えまくり!
次回も超期待

>>128
まとめ人様、いつもありがとうございます!

130 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/18(月) 18:53:03 ID:VT0wNKrC
>>127
もう、GJ過ぎますね。
続きも期待。

>>128
乙です。
いつもありがとうございます。


131 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/18(月) 23:27:06 ID:0ci8nYbp
>>127
キスだけで悶え殺す気ですか!

>>128
まとめ人様、いつも本当に有難うございます。
代理の方も乙です。

132 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/19(火) 01:01:07 ID:9SYWakYm
>>127
125あたりでニヤニヤしてしまった。
でも、そうだねぇ。
大河とって、ラブレターの箱はすばらしい思いでだったのかもね。
着眼点も*GJ*でした。
続きがどうなるか、ワクワクするねぇ。

>>128
まとめ人様、いつもありがとうございます!!




133 : ◆fDszcniTtk :2010/01/19(火) 06:32:27 ID:jBxvnnS70
>>129-132
ありがとう。キスシーンがあると評価が高いな……て、違うぞ、俺。

>>132
振り返ったとき、大河にとってあの晩の事はすべて忘れられない思い出だと思うんだ。

134 :高須竜児最期の日 ◆fDszcniTtk :2010/01/19(火) 06:33:09 ID:jBxvnnS70
「やあやあ高須君。本日はお招きに預かり恐悦至極」
「招いてねぇよ。お前が押しかけてきたんだろ。あがれ。大河来てるぞ」

大河とのキスで火照った顔を見られたくなくて、わざとぶっきらぼうに言うと、さっと振り向いてすたすた奧へと引っ込む。

「おお、大河、大河、あんたはどうして大河なのさ。チャーハンの匂いがするな。さては2人でラブラブご飯タイムだったかい?邪魔しちゃってわるいねぇ」

みのりーん、と部屋から手を振る大河の顔が赤いのは、半分ぐらい図星だからだろう。

「ほほう。ここが高須君ちか」
「お前来るの初めてだったな」
「近所に来たことはあるんだけどね」
「そうなのか?」
「大河んちに何度もあがったべさ」
「言われてみればそうだ。ん?修学旅行の準備の時、お前覗いてなかったか?」
「こまけーことはいいんだよ。てか、高須君。話をそらすなよ」

ちっ、と大河譲りの舌打ちを飛ばしながら竜児が苦笑する。そして部屋に戻ると、ノートやら手紙やらの入ったボール箱を持ってきた。どうせなら長引かせるよりとっとと済ませた方がいい。ちなみに例のヘアピンも箱にいれていたのだが、今朝の内に取り出し済みである。

「ほら、これだ」

どさりと、実乃梨の前に置く。大河と一瞬(しゃーねーな)と視線を交わした後、立ち上がって「お茶入れるわ」とキッチンに向かう。

「こ、これが噂の……」

と、ニヤニヤ笑いを抑えきれない実乃梨に、

「ねぇみのりん、どうしても読むの」

大河が弱々しく聞く。やはり、竜児に悪いと思っているのだ。

「大河が高須君の事に申し訳ないって思う気持ちもわかるけどさ。私の乙女心も止められないのよ。かつて私の事を好きになってくれた男の子がいて、その人が書いた手紙が出されないままある。知らなければそのままだったけど、知ったからには読みたいよ。
だって、こんなロマンチックなこと一生に一度あるかないかだもん」

こたえる実乃梨は茶化しなし。静かな言葉が、本心だと告げている。大河はそれでも気落ちしたように下を眺めるばかり。

「大丈夫。大河、これ読んで『やっぱり高須君がいい』なんて言わないよ」
「みのりん……」
「まぁ、逃した魚が大きかったのは確かみたいだなっす」

そう笑うと、

「おうおう、高須君。すまないねぇ、お茶まで煎れてもらって」
「少しでもすまないと思うなら今でも遅くない。あきらめろ」
「やだ」
「そうかよ」

お茶を出す竜児と言葉を交わす。大河と卓袱台の角を挟んで座った竜児は、もう何を言っても無駄といった顔で肘を突いている。 そしてその竜児に向かってパンと手を合わせた実乃梨が目をつぶって頭を下げる。

「高須君、大河、ごめん。そしてわがまま聞いてくれてありがとう。非常識なことしてるってのはわかってるんだ。でもさ、どうしても、どうしても我慢できないんだ。私、高校時代、女の子らしい出来事なんかほとんどなかったからさ」

かつては竜児のなかで、そのキラキラした笑顔、ぴょんぴょん跳ねるような動き、振り向くたびに動く髪、甘い声などによって「ザ・女の子」として神格化されていたのは実乃梨その人なのだが、今更何をいってもはじまらない。持ってけ泥棒、と思うだけである。
大河も何も言えずに眉毛をハの字にして竜児を見上げるだけだ。

135 :高須竜児最期の日 ◆fDszcniTtk :2010/01/19(火) 06:34:45 ID:jBxvnnS70
「櫛枝。もういいよ」
「そっか。ありがとう」

そういった実乃梨の微笑みが、場を少し暖かくする。

「じゃ、仁義も通したし、さっそく読ませてもらうか」
「はぁ?………お、おい!待てっ!」

しばし固まった後、雷に打たれたように、ほとんど一挙動で竜児が飛び上がった。今聞いた言葉が信じられないという表情で実乃梨を見下ろしている。大河は何が起きているのか分からないように目を丸くして竜児と実乃梨を交互に見ている。

「お、お前。『読ませてもらう』って何だよ!」
「え、だって『読ませて』っていったじゃない」
「ここでかよ!」
「そうだよ」

だーっ!と、うなるような声をあげて天井を見上げ竜児が髪をかきむしる。ラブレターを読む!ここでか?勘弁して欲しい、どんな仕打ちなんだ。もう十分気まずい思いをしている。なぜ、これ以上俺をいたぶるのか。俺がそんなに悪いことをしたかと天に問う。

「みのりん……それじゃ竜児が……」
「ねぇ、大河。おいらはなぜ高須君がこれを捨てずにとっておいたか、大河がなぜ捨てさせなかったかは聞かないよ。でも、聞かなくてもそれがきっと二人にとって特別な思いのこもったものだろうってことくらいはわかるさ。だから、これを持ち出したりできない」

勝手極まりない実乃梨の理屈に二人共声が出ない。竜児にいたっては部屋の中に仁王立ちしたまま電撃ショック死でもやらかしたかのように凍りついてる。ひょっとしたら死んだ方がマシだったかもしれない。これから始まるのは公開処刑に近い羞恥イベントなのだから。

「じゃ、早速失礼して開けさせてもらってと。おう、ノートやら手紙やらいっぱいだねぇ。このノートは…」
「おねがい、みのりん!ここで読むのだけは勘弁してあげて」
「いいや、もう誰もおいらをとめられねぇ。なんかすげぇ緊張してきた。ふるえるぞハート!燃え尽きるほどヒート!読むぜ高須君のノート!」

実乃梨が手に取ったノートを開く。竜児も大河もそのノートに目が釘付けになっている。

「おお、おお!これが噂の詩集かい。『櫛枝実乃梨嬢に捧ぐ』」
「せめて黙って読めよっ!!!」
「『君は春/君は風/君を見かける度に/僕の心はまぶしい春の丘を見る/君とすれ違う度に/僕の心は花びらが舞うのを見る』……お、おおおお!これおいらのことを書いてくれてるんだよね!『君』っておいらのことだよね!めっちゃ書き直ししてるじゃない。
いったいどんだけ情熱ささげてくれたんだよ!なんか想像以上だ。感動だぜ高須君!思ってたよりずっと乙女心揺さぶってくれるぜ」

顔を真っ赤に上気させ、鳥肌を立てて、実乃梨が声をふるわせる。

勢いで書いた恥ずかしい詩を音読された竜児のほうは、ぎゃーっ!とひと声、天井に無音で叫ぶと、そのまま頭をかかえて羞恥に身をよじってバッタリと無音で倒れた。錯乱してなお、大家に気を遣っているのだ。
景気が悪いというのに去年の四月から5000円家賃を値上げされた高須家は尋常じゃないほど大家に気を遣っている。

「竜児!しっかりして!」

倒れた竜児に大河が取りすがる。ちなみに値上げの原因は誰も知らぬことだが、この未来の嫁である。一方、竜児を一撃で倒した張本人は目の前の大騒ぎもすでに目に入らないのか、先を続ける。そのあげく、

「『君は夏/君は空/君の笑顔は/大輪のひまわり/君が笑えば/雨雲だって晴れ渡る』……うわーっ、来るよ来るよ。ハート直撃だよ。おいらこんな風に高須君の目に映ってたのかい?!」

鼻から一筋、血が流れて垂れる。

鼻血を垂らしたまま、ページをページをめくり次々と誌を朗読する実乃梨。かつて自分を好きでいてくれた男による暑苦しいほど自分への想いのこもった文章のオン・パレードに、本人も半ばトランス状態。
にぃっと笑みを顔に張り付けたまま瞳孔をかっぴらいて貪るような顔で、ひたすら読み続ける。

いやー!やめてーっ!恥ずかしいーっ!ビクビクビクーーっ!と、耳を押さえて畳の上で体を痙攣させる竜児への正視に耐えない百叩き刑は、このあと実に2時間にわたって続いたという。

(おしまい)


136 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/19(火) 06:50:16 ID:KzD5jrPu0
勃起した

137 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/19(火) 07:15:03 ID:36w76KJy0
ちんこたった

138 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/19(火) 11:47:15 ID:KJm9aKVaO
えれくちおんした

139 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/19(火) 20:06:30 ID:EBjRmGKV0
>>135
また最初から読ませてもらいましたが、本当に緩急の付け方が上手い。
大河って原作とアニメで結構イメージが違うんだけど、氏の作品は
いつも原作大河が浮かんでくるなぁ。
すごく好きだ。
そして竜児、強く生きろww
GJでした!!

140 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/19(火) 21:46:35 ID:+lDnzVvs0
もうやめて!
竜児のライフはゼロよ!
もう勝負はついたのよ!

HA☆NA☆SE!

141 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/19(火) 23:31:17 ID:r9EDaowe0
>>135
ポエマー竜児。は、恥ずかしすぎる!!
なんという羞恥プレイ、そして、なんというジョナサン・ジョースター
みのりん、わかっているのかわかってないのかどっちだw
眉毛ハの字の大河かわいい。
GJ! 楽しかった!

142 : ◆fDszcniTtk :2010/01/20(水) 08:28:01 ID:f3vyqhhP0
みんなありがとう。

>>139
原作大河っぽい?やっぱ原作好きだからかな。今回は特に緩急を強調して書いたので
そこを楽しんでもらえたのは嬉しい。

>>141
はっはっは、耐えろ竜児。北風がバイキングを(ry

最後に、お蔵入りさせるつもりだったけど新作投下。

「逢坂大河最後の日」


143 :逢坂大河最後の日 ◆fDszcniTtk :2010/01/20(水) 08:29:20 ID:f3vyqhhP0
「櫛枝、亜美ちゃんやっぱり来れないの?」
「ごめん、やっぱ無理みたい。久々にあーみんに噛みつかれたぜ。『こんな直前にそんなこと言われたってスケジュール調整つかないわよっ!』って。くわばらくわばら」
「でも亜美ちゃん式と披露宴は出るっしょ?」
「出るって大河から聞いてるぜ?」
「じゃいいか。ていうかー、櫛枝超変わんないじゃん。全日本でもその調子?マジわらえるんですけど」
「オーマイガー。言われちゃったよ。この前海外遠征の時向こうの選手と話してたらさ、チームメイトから『櫛枝英語だと普通だな』とか散々だったぜ」
「でも普通に日本語喋ってる櫛枝って想像つかないかも」
「そうかも。てか、英語しゃべれるんだ。すごくね?」
「片言だぜ。それよりおいらのほうこそ子供と遊んでる木原っちのほうが想像つかないぜ。保母さんって疲れない?」
「えー?子供かわいいっしょ?父兄うざいけど」

都内のちょっとおしゃれな、だけど財布に優しいレストランの一角。年の頃なら23、4の若い女性がテーブルを囲んできゃっきゃうふふと談笑する。面子は3人。用意されているテーブルセットの数は4人分。主賓の逢坂大河はまだきていない。

今日はその主賓のバチャラーパーティーである。つまり、明日、逢坂大河は晴れて長い間婚約関係にあった高須竜児と結婚する。極端に家族との時間を大事にする大河のこと、独身最後の日は家族と過ごすと思われたのだが、
3日前に突然櫛枝実乃梨にかかってきた「みのりんみのりん、知ってた?独身最後の日って友達とパーティーやるらしいよ?」という騒々しい電話によって、その予想は破られた。

二つ返事で幹事を買って出た実乃梨に、大河は旧2ーCの女の子と食事をしたいと言った。大学の友達は大学の友達でパーティーがあるらしい。しかしながら残念な事に、みなそれぞれ仕事がある。話が突然降って沸いたこともあって、
結局駆けつけてくれたのは木原麻耶と香椎奈々子だけである。

もっとも、他のみんなが冷たいというわけではない。麻耶と奈々子は相当無理をして来てくれたのだし、同じく実乃梨が主催する披露宴2次会には、大橋高校旧2ーCの相当数が、ほとんど同窓会のノリで駆けつけてくる。
当日は社会人である高須竜児と逢坂大河の知られざる過去について、盛大に暴露大会が行われるだろう。

144 :逢坂大河最後の日 ◆fDszcniTtk :2010/01/20(水) 08:30:08 ID:f3vyqhhP0
「タイガー時間大丈夫って?」

お色気ぼくろもまぶしく微笑む奈々子に、実乃梨は

「大丈夫じゃないかね?大河って今日は会場のホテルに泊まるし、心配ないっすよ」

と、まるで他人事である。主賓の到着よりも、バスケットから取り出したパンにバターを塗るのに夢中の様子。

「あーあ、結局ウェディング・ドレス着るのはタイガーが一番のりか。私も早く着たいなー。って、櫛枝、バター塗り過ぎっしょ」
「へ?そうけ?」
「櫛枝って前は『ダイエット戦士』とか言ってたじゃない」
「おお、おお、懐かしい過去よ。大橋高校は遠くになりにけり。いやー、トレーナーが厳しくってさ。カロリー供給が追いつかないのよ」

えー、羨ましいとため息を漏らす二人に、実乃梨が「そう思うなら触ってみ」と、二の腕を突き出す。袖からつきだした手は真っ黒に日焼けしていて、普段トレーニング漬けであることがよくわかる。おずおずと触ってみる二人。

「すご、全然脂肪ないじゃん」
「力こぶ触ってみ?」
「きゃーっ、すごいかも」
「すごいっしょ。全身これだぜ。腹なんか蟹と喧嘩できるぐらい割れてるよ。花の乙女なんて過去のことっすよ。今の私は筋肉ゴリラ。バンッ、キュッ、ボンッの木原っちがうらやましいぜよ」
「ええっ!そんなことないよ。私最近わかったんだけどー、胸大きいとオヤジがいやらしい目でみるだけだよ。ていうか、櫛枝も視線エロいし。同世代なら奈々子みたいな大和撫子のほうがモテるみたいなんですけどー」
「あ、それ言えるかも」

と、思い切り肯定する外資系OLに二人が「何々、聞かせて?」とかぶりつきで顔を突き出す。つーか香椎っちのほうが巨乳じゃん。櫛枝なにくらべてんの、超エロイんですけど。うふふふふ、着やせもおしゃれのテクニックよ。とかなんとか。主役が登場したのは約束から5分遅れ、
そんな風にテーブルが盛り上がっている最中だった。

「ごめんごめん、遅刻遅刻。みんな来てくれてありがとう」
「タイガー遅くねー!?」
「タイガー久しぶり、元気?」
「おうおう、大河!どうした?ナンパされた?」
「道に迷った」

ガクッと三人がこけて、テーブルが笑いに包まれる。再会と大河の結婚を祝してワインで乾杯し、ようやくパーティーが始まった。互いの近況を報告し、彼氏が居るものは彼氏の愚痴、上司が居るものは上司の愚痴、
トレーナーが居るものはトレーナーの愚痴をひととおり披露したあと、話はようやく結婚の話題へと向かった。

145 :逢坂大河最後の日 ◆fDszcniTtk :2010/01/20(水) 08:30:55 ID:f3vyqhhP0
「いやー、タイガーと高須君、長かったよね。途中大変だったっしょ」
「そうね、最初のころは焦れてたわよ」

うれしそうに大河が笑う。何年も経ってしまえば、辛いことも思い出の一つである。

「焦れるってどんな感じ?」
「今結婚しないと目の前の幸せが消えるんじゃないかって、毎晩どきどきするの」

おおー!と、3人がサラダをつつくフォークを止める。

「ね、ね、それっていつ頃のこと?」
「3年の時」
「「「うわー」」」
「てか、そんなに早く結婚の事考えてたんだ」
「え、知らなかった?竜児がプロボーズしてくれたの2年のバレンタインデーだよ」
「きゃぁああ!タイガーいつOKしたの」
「その場で」
「「うそー!」」
「それって、あのエスケープの前の日?!ちょっ、信じられないんですけど」

当時の事態をあらかた知っている実乃梨をおいて、麻耶、奈々子は驚愕の事実に呆然としている。

「あれ?」
「へんだよね?」

麻耶と奈々子が顔を見合わせる。

「何が?」

と大河。

「だって、高須君が『俺は告白したぞ』って麻耶に言ったの、確かエスケープの日だよ。あれってバレンタインデーに告白したって意味よね」
「そうよ」
「ええーっ、それおかしいっしょ」
「おかしくないわよ。竜児はバレンタインデーの日にプロポーズと告白してくれて、その次の日二人で駆け落ちするつもりだったんだもん」
「………」
「これこれ大河や、ちょいとばかし話しすぎじゃないかね」
「そうかも。みんなにはないしょね。でもこのメンバーには話してあげる。ちょっとした罪滅ぼし」
「……罪滅ぼし?」

ジェットコースター展開にあうあうあうと口を動かすだけのパニックから立ち直った奈々子が聞く。実乃梨も不思議そうな顔をしている。

「みのりんと、ばかちー、修学旅行の晩に喧嘩したでしょ。あんたたちも居たわよね」
「そりゃ、同じ班だから」
「私は居なかったよね」
「タイガーあのときどこに居たの?」
「部屋に居たのよ。だから私全部聞いてた」
「……え?どこに……」
「押入れの中。ちなみに同じ班の男子も全員居たわ」

3人とも口をあんぐりあけて何も言えない。知っていたのか、と麻耶と奈々子が目を丸くして実乃梨を見るが、実乃梨もフルフルと首を振るだけである。これまで男子数人と大河だけが知っていた事実が、外に漏れた瞬間であった。

「信じられないんですけど」
「うぉぉぉ、全部男子に聞かれてた?穴があったらはいりてぇ」
「男子何してたの?」
「さぁ、靴下の匂いでも嗅いでたんじゃない?」
「まるおひどい!」
「これで私が罪滅ぼしって言う理由わかったでしょ?あんたたちには負い目があるから今日は特別に口が軽かったわけよ。わかったらスープいただきましょ。冷えちゃうわよ」

146 :逢坂大河最後の日 ◆fDszcniTtk :2010/01/20(水) 08:31:46 ID:f3vyqhhP0
ひとり何事もないような顔をして大河はスープを口にはこぶが、さすがに今の情報は衝撃的だったらしい。三人とも挙動不審だ。麻耶は目を泳がしているし、奈々子は気まずそうに笑っている。実乃梨はスプーンをスープに浸したままぶつぶつと呟いている。

三人がようやくペースを取り戻したのは、主菜のサーモンが出されたころである。

「みのりん、お魚なの?私お肉って言ったのに」
「大河、ここだけの情報だ。このレストランのステーキに関する真に驚くべき評価を見つけたが、それを食べるにはおいらの財布は軽すぎる」
「そんなの。はじめっからみんなの分払おうと思って貯金下ろしてきたのに」
「聞くわよね。バチャラーパーティーは結婚する人が払うとか」
「割り勘でいいっしょ」

ペースさえ戻れば、女ばかりの集団である。わいのわいのとかしましい。しかしまぁ、核心中の核心というと、やはり話題は一つで、全員の関心はそこへと導かれるように集まっていく。

「ねぇ、タイガーと高須くんって2年の4月から仲がよかったじゃない。あれって、何がきっかけ?」
「そうそう、それ教えてくれないとだめっしょ。タイガー帰さないから」
「え?それはナイショよ」

ぽっと大河が頬を赤らめてナイフとフォークを止める。となると、ギャラリーが『ないしょ』で納得するはずもない。

「櫛枝は知ってる?」
「いやー、おいらも本当のところは知らない。てか、二人に近すぎて却って聞けねぇっつーか」

実乃梨が笑いながら頭をかく。そうなると、残りの二人は俄然パワフルになる。オレンジ色のライトが美しいレストランで、教えて教えて攻撃に負けてとうとう大河が口を割った。

「実はさ、」
「「「うん」」」
「進級したころは……その……北村くんが……好きだったんだけど」
「「「うん、うん」」」
「驚かないの?」
「何となく感づいてたし」
「みんな気づいてたよ」
「へ、ほんとに?いつ頃?」
「まぁ、いろいろあって、生徒会長襲撃事件のあとは、みんな『そうなんだ』って思ってたわね。あの頃は麻耶が大変で……」

奈々子が笑いながら言うのを、麻耶が押しとどめる。

「その話はいいって!ね、タイガー、続き続き」
「うん。そいでさ。ある日、ラブレターを書いたんだけど」
「「「おお」」」
「間違って竜児のカバンにいれちゃったのね」
「「「………」」」

三人とも手に汗握る展開に目を白黒している。大河の方は顔を赤らめて、可能なら逃げだしたい様子。

「で、取り返そうと思って、夜中に竜児のとこに木刀持って殴り込んだのよ。ぶん殴ったら記憶も飛ぶかなと思って」
「……」
「……」
「高須くん可哀想」

あまりの話に奈々子が苦笑いを浮かべる。

147 :逢坂大河最後の日 ◆fDszcniTtk :2010/01/20(水) 08:32:59 ID:f3vyqhhP0
「その晩あれやこれやあったけど、竜児が北村くん攻略に協力してくれるって約束したから、それで手を打ったの。とまあ、これが私と竜児のはじまり。最初は好きとか何とかじゃなかったのよ」
「そうかぁ、そうだったのか」
「でもそれおかしくね?」
「なにが?」
「だって私、その頃高須くんがタイガーのマンションから一緒に出てくるの朝、何度か見たよ。あのころから絶対二人は怪しいって思ってたもん」
「そういえばそんな話あったよねぇ」
「だって、『毎朝起しにきなさい!』って私が言ったんだから。毎朝起しにくるわよ」
「でも、スーパーマーケットで二人で買い物してるって話もそのころからあったっしょ」
「私、竜児んちでご飯食べてたんだもん」
「あいやー。高須くんが世話やいてたのには気づいてたけど、そこまでだったとは」
「でもタイガー、まるおの事好きだったっしょ?一人暮らしで好きじゃない男の子を部屋に入れるって、平気だったの?てか、朝起こしに来いって、身の危険とか考えなかったの?」
「まぁ、なんかあったらその時はその時よ。ベッドの横に木刀も置いてたし」
「高須くん可哀想」

奈々子がまた苦笑いを浮かべる。

「それに……」

と、大河は言いにくそうに言葉をきって

「竜児がそばに居ると、何ていうか、その、落ち着いたし」

と、唇を尖らせる。ようやく本心を漏らした大河に三人ともにんまり。

「なんだ、やっぱり初めから高須くんのこと好きだったんじゃない」
「えー、だったらまるおから手を引いてくれればよかったのに」
「おうおう、揺れる乙女心だったんだねぇ」
「ちがうって!竜児の事は最初は別に好きとかじゃなくて……」

いいからいいから、となだめられて大河は顔を赤くしている。

「とにかく、最初は竜児のこと好きとかじゃなくて、一緒に北村君攻略作戦やってたの」
「はいはい、そういうことにしとこ」
「あ、そう言えば。あんた竜児に狙われていたの気づいてた?」
「へ、なに?!」

想定外の展開に、思わず麻耶が顔を赤くして自分の体をかき抱くようにする。めをぱっと大きくした奈々子が「何?何?」と身を乗り出す。

「体育の時間にバスケのパスの練習やったじゃない。あのとき、竜児があんたを狙ってたのよ」
「狙ってたって……」
「あんたに竜児がボールをぶつけて保健室送りにするでしょ。そうしたら北村君と私がパスの練習できるって作戦よ」
「なにそれ!」
「おー、ヒットマン高須か」
「うふふ、高須君が麻耶の事狙うって、別の意味かとおもっちゃった」
「そんなわけないじゃん」

だって、と言いかけて大河は瞬間口をつぐむ。麻耶も奈々子も気づいてない。実乃梨は大河と目が合った瞬間に片方の眉を上げて見せただけ。まぁ、この話題は2人とも知っているのだが。あるいは2人とも気を遣ってその話題を避けているのかもしれない。

「でもそれ、超酷くね?高須君そんなことする人じゃないと思ってたのに」
「ま、当初の計画では北村君は男子とパス練習するだろうって竜児は予想してたんだけどね。あんたが組んだからあんたを殺れって竜児に言ったのよ」
「それって黒幕タイガーよね」

テーブルが笑いに包まれる。大河の暴露話はどれをとってもばかばかしくて、彼女たちのテーブルには笑いが絶えない。おしゃべりと笑いに興じるうちに、デザートのアイスクリームが届けられた。

「そうだ、タイガーいつの間に名字変わってたの?」
「へ?」
「招待状、『逢坂』じゃなかったから、初め何のことか分からなかったよ」
「ああ、あれ。名字なんか3年の時には変わってたわよ」
「「え?!」」

148 :逢坂大河最後の日 ◆fDszcniTtk :2010/01/20(水) 08:33:40 ID:f3vyqhhP0
実乃梨を除く二人が驚く。

「櫛枝知ってた?」
「うん。私はね」

実乃梨は話を振られて言いにくそうにしているが、大河の方はさっきと打って変わって堂々としている。手乗りタイガーと呼ばれたころの傲然とした雰囲気すらまとっている。

「そっか、タイガーお母さんのほうに引き取られたんだよね」
「そ。ママは今のパパと結婚して姓が変わってたから、私も無理やり変えられたの」
「気まずかったでしょ?私も新しいお母さんとは最初ギクシャクしたもん」
「あ、そっか。あんた片親だって修学旅行の時言ってたわよね」
「香椎っちのお父さんはいつ再婚したんだい?」
「私が大学に進んでから。合格のお祝いしてもらった次の日に『実は』って切り出されちゃった」
「奈々子けっこう、悩んでたよねぇ」
「すまねぇ。おいら全然気づかなかったぜよ」
「だって、麻耶と亜美ちゃん以外には言わなかったもん。それに櫛枝クラス違ってたじゃない」
「ふーん、あんたも大変だったのね」
「タイガーは?」
「私は気まずかろうが何だろうが、体当たりよ」
「タイガーらしいね」
「竜児がさ、まぁ、いろいろあって。竜児の事だからあんまり話せないけど。お手本見せてくれたわけ。だったら私も頑張るしかないじゃない。だから体当たりよ」
「そっかぁ」
「でも、3年の時『逢坂大河』だったよね」
「そ。姓が変わった届けはちゃんと学校に出したけど、先生には『逢坂で行きます』って言ったから」
「それってありなの?」
「知らないわよ『私…家庭環境が複雑で』って半泣きして見せたらあっさり許してくれたわよ」

あきれる2人。事情を知っているらしい実乃梨は横を向いて吹けない口笛を吹いている。

「お母さん、怒ったんじゃない?」
「怒ったわね。当然学校からは『親の承諾もってこい』って言われたし。『承諾して』って言ったらすごい剣幕で怒ってたわ」
「うわー」
「ほとんどの事は親の言うとおりにしようと思ってたけど、これだけは譲らなかったの。ま、ちょっと子供っぽい当てつけよね。私の事振り回したんだし。大学でも『逢坂大河』で通したわよ」
「ひぇー」
「パパは知らないけどね」
「「「えーっ!」」」
「って、櫛枝知ってたんじゃないの?!」
「いやいや、こいつは初耳だ」
「だって、当てつけたいのはママだもん。さすがにパパは可哀想よ。私に気を使ってるの知ってたし」
「でも普通バレるっしょ」
「大学の話は全部ママに持って行ったから大丈夫。そういうわけで、大学を出るまで私は『逢坂大河』で通してたわよ」
「なんていうか。こだわるわね」

149 :逢坂大河最後の日 ◆fDszcniTtk :2010/01/20(水) 08:34:28 ID:f3vyqhhP0
あきれたような奈々子に大河は少し頬を染めて。

「だって。竜児と出会ったときには『逢坂』だったんだもん。そのままお嫁に行きたいじゃない。」
「あらぁ」
「結局会社じゃ逢坂じゃ無くなったけどね。悪あがきはしたかったのよ」
「高須君は名字のこと、何て言ってるの?」
「竜児?『嫁に来てくれるのなら名字なんて何でもいい』って。えへへ」
「ごちそうさま」
「あちーよ、大河あちーよ」
「高須君優しいなぁ。私も早くそんな優しい彼氏超超ほしいんだけど。ねぇ、櫛枝?全日本にいい人いない?スポーツマンかっこいいしょ」
「みんなウーマンだぜ。そっちのケがあるならおいらは紹介するけど」
「そうか、そうだよね」

独りしょげる麻耶の横で、奈々子が話を大河に向ける。

「高須君、優しくしてくれてるみたいね」
「うん。竜児いつも優しいよ」

このときばかりは、教室で見せたことのない笑顔で大河が笑った。そんなこんなで話も尽きないが、残念ながらずっとずっとガールトークを楽しむことはできない。

「さて、みんな。積もる話はあるけれど、ここらで時間も押してきた。明日はめでてぇ、挙式の日。遅刻があっちゃ、あ、困らあな。てことで、そろそろお開きだべ」
「櫛枝、レストランの人、困ってる」
「まぁまぁ。じゃ、大河。最後に何か一言びしっと決めてくんな」
「え?私?」

振られた大河が目を丸くする。

「当たり前だよ。今日はあんたのためのパーティーなんだから。主賓が挨拶しないでどうするのよ」
「そっか、じゃぁ」

と、大河は姿勢を正すと一同を見回し、目を線のように細めてにっこり笑いながら言った。

「そういうわけで今日は逢坂大河最後の日なのです。これまで応援ありがとう。これからは高須大河をよろしくお願いします」

「大河、あんたこういう時は来てくれた人へお礼を言うもんだよ」

(おしまい)

150 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/20(水) 12:12:37 ID:b2/wFh5r0
>>149
乙です。
なんかいい話読めたなって感じですけど、これを仕舞い込んでしまうつもりだったとは
MOTTAINAI!
GJでした。

151 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/20(水) 20:45:24 ID:HYaAUdmq0
>>149
GJ!
こういう昔を振り返る話っていいよねぇ
ラストの大河の笑顔、かわいいなあ
でもって締めの挨拶が大河らしいw
これをお蔵入りの予定だったとは…公開してくれてありがとう

152 :代理投稿◇QHsKY7H.TY :2010/01/20(水) 23:18:01 ID:TKJ+dBpc0
大河最後の日……乙です。

まとめ人様もいつも乙でございます。

さて皆様たくさんの感想をありがとうございます。

ドラとら!ラスト10レス行きます。

と思ったらまだ規制中でしたのでこちらに。
代理投稿歓迎。

153 :ドラとら!◇QHsKY7H.TY :2010/01/20(水) 23:19:15 ID:TKJ+dBpc0
***



明日から修学旅行というこで、今日は修学旅行で必要になりそうなものの買い物をすることにしていた。
大河はちゃんと準備したのか気になったが、当の本人からは、

「大丈夫」

と太鼓判を押されてしまっているので一人分の買い物だ。
でも本当に大丈夫なのだろうか。
俺の見る限り“全く準備をしている様子”が見られないのだが。
そう不審に思いながら買い物をしていると、

「あれぇ?高須君?」

サングラスをかけた川嶋と鉢合わせた。

「よう、お前も買い物か?」
「まぁ似たような物だけど……ってかなんで高須君ここにいんの?」
「いや、なんでって……明日からの買い物に」
「は?寝てるの?」
「なにがだよ?」

川嶋が俺を睨むようにして見つめ、しかしふっと表情を和らげる。

「ふぅん、まぁいいけど。私は高須君が“針”を折れなくても何の関係も無いし」
「何のことだよ?」
「知らない、か。いよいよ終わりかな、あ〜あ」

川嶋はどこまでも人をくったような言葉を放つ。

「よくわかんねぇ奴だな」
「そう、私はミステリアスな女なの、そんな私のこと気になる?高須君」
「いや」
「……なんかそれはそれでムカツクけど……まぁいいや。タイガ−の決めたことだし」

「大河?」
「んん〜?タイガーのこととなると反応するんだ?反応しちゃうんだ?高須君可っ愛い〜」

「い、いやそんなんじゃ……」
「じゃあ反応しないでよ」
「っ!?」

俺が誤魔化そうとした直後、川嶋は何処までも低い声で俺に怒ったようにそう言う。

「惑星に見捨てられた人工衛星は……ゴミでしかないよ…………なぁ〜んちゃって♪」


川嶋は意味深にそう言うと俺を無視して歩いて行ってしまう。
どこまでが本気で、何処までがジョークなのか、川嶋はそれすら明かさずに俺の視界から消えた。



***

154 :ドラとら!◇QHsKY7H.TY :2010/01/20(水) 23:20:16 ID:TKJ+dBpc0
家に帰ってもどうにも川嶋の言葉が頭から離れない。
それを言えば、櫛枝についカッとなった時からずっとそうかもしれない。
はぁと溜息を吐いて、ふとカーテンの奥の大河の部屋をのぞき見る。
窓越しからのそれは、カーテンがかかっている上に電気も点いていないようで、中の様子などわからない。
櫛枝はともかく、川嶋にも大河のことで責められているような気がしてならない俺は、考えないようにしていた大河のことを考え始め、

『ピピピピピピ』

タイミング悪く携帯が鳴る。
相手は……櫛枝?

「もしもし?」
『高須君?今どこ?』
「家だけど……」
『一人?』
「ああ」
『……ごめんよ高須君、ある意味君が正しかったよ』
「……何のことだ?」
『……大河を泣かせちゃった』
「は?」
『高須君が言ってたメールの内容、それを私は無理矢理見たんだ。大河の為を思えば、見るべきじゃなかったかもしれない。でも私は知っちゃったから』
「な、何をだよ?」
『大河は……修学旅行に行かない』
「へ?」

何を言い出すのだ、急に。

『本当は大河に泣いてお願いされてるんだ、絶対高須君には言わないでって。だからこれ以上私は大河を裏切りたくない』
「お、おい?」
『でも!!そんな大河を助けられるのはやっぱり高須君だけなんだよ!!』
「い、一体何があったんだ!?」
『それは……私の口からは言えない。大河との約束だから』
「おい!!」
『だから、大河の部屋に行って。大河は君に手紙を用意している筈だから。それで君が自分でこれからを考えて』
「ちょっと待ってくれ!!櫛枝!!一体何が何だか……」
『ツー……ツー……』
「おい?おい!!……くそ、切れてる……」

何が何だかわからない。
とにかく大河の部屋へ行けというなら行ってみようじゃないか。



***

155 :ドラとら!◇QHsKY7H.TY :2010/01/20(水) 23:21:21 ID:TKJ+dBpc0
「で、どうやって入れってんだ」

家には当然のように鍵がかかっていた。
ここの家はオートロック。
ちょっとやそっとじゃ開かない。
鍵はこの前、大河が自分の無くしたからしばらく貸した奴返してと言われ、渡していたので持っていない。
そもそも、インターホン鳴らしても出てこないってことは留守だろうし、手紙ってなんなんだ?
わけがわからねぇ。
明日会って聞けば……でも修学旅行来ないとか行ってたしなぁ。

「しょうがねぇな」

俺はケータイで大河に電話をかける。
こういう時は本人に聞くのが一番……あれ?

『現在、この電話は使われておりません。こちらは……』

「な、何だよこれ!?」

俺は焦ってもう一度確認し、確かに逢坂大河でダイヤルするが、

『現在、この電話は使われておりません。こちらは……』

帰ってくる無機質なアナウンスは同じ。
何だかとってもやばいような気がしてきた。
こうなっては是が非でも中に入らなければならない。
でもどうやって…………そうだ。
俺は一つ思いつき、一度高須家へと帰った。



***



「頼むぞ……」

俺が考えた作戦は至極簡単なものだった。
それはウチのベランダから大河の部屋に侵入する、というもの。
普段とは逆の立場に内心苦笑を漏らしながらデッキブラシで窓が開かないか試してみる。

大河のずぼら、というかミスに期待するのはこれが初めてじゃなかろうか。
どうか閉め忘れててくれよ。
そう思いながら俺はデッキブラシを持って……結構難しいなコレ。
ちなみにこんな顔でこんな真似してるのが見つかったらまず間違いなく警察に掴まる。

俺はビクビクしながらもデッキブラシを操り続け……、

「あ、開いた……!!」

大河の部屋に侵入することに成功した。
成功して、テーブルに置いてある俺の赤いカシミヤのマフラーと手紙を見て、驚愕した。

それは……。



***

156 :ドラとら!◇QHsKY7H.TY :2010/01/20(水) 23:22:15 ID:TKJ+dBpc0
竜児へ。
修学旅行楽しかった?
これを見てるってことはきっともう私はそこにいないよね。
ごめんね、何も言わずに行っちゃって。
でも、竜児の為を思ったらこの方がいいかなって思ったんだ。
私さ、前に再婚した父親がいるって言ったよね?
その父親がさ、夜逃げ……しちゃったらしいんだよね。
なんか事業に失敗して一杯借金作っちゃったとかでさ、今もどこにいるかわかんないらしいんだ。
それをママが教えてくれてね、あ、このママってのは本当の母親なんだけど、だから親権を移して自分が私を引き取るって言ってて、そっちに行くことになったの。
それがちょうど修学旅行の日の前の晩だから、私が修学旅行には行かなかったのはそういうワケ。
この前のメールは、そういった話でさ、ママとはそのあとちゃんと電話でも話したし会って話して、まぁこういうことになったの。
あ、ママはさ、再婚してて今お腹に赤ちゃんいるんだよね、男の子だっていうから私お姉ちゃんになるよ。
アンタには世話になったから、一応直筆で理由をこうやって教えといてあげる。
それにさ、一つ謝らないといけないことがあるし。
クリスマスの晩にね、私いつだったかの竜児のポエムノート、最初だけ見ちゃったんだ。

なんていうか、北村君のこと、ごめん。
謝っても許してもらえないかもしれないけど、ごめん。
多分実際に会ったら口じゃ言えないだろうから、こうやって謝罪を文にしたんだ。
それじゃあ元気でね、竜児。

あ、それと、“もう手を冷やしちゃダメ”だよ、きっと竜児の手を掴んでくれる人はいるから。



いい?



神の前に、人は平等なのよ。



***

157 :ドラとら!◇QHsKY7H.TY :2010/01/20(水) 23:23:15 ID:TKJ+dBpc0
「な、なんだよこれ」

読み終えて、立ち尽くす。
じゃあね、ってどういうことだ?
母親に引き取られる?
何の話だ?
真っ暗な部屋には、あったはずの家具がほとんど無い。
もう、ここに誰もいないかのように。
何だか寂しくなって、慌ててこの部屋から、大河がいないという現実から逃げて、自分の家に戻る。
戻って、居間に座って、それで終わり。
持ってきた手紙を何度読み返しても、内容は変わらない。

「櫛枝、俺にどうしろっていうんだ」

頭を抱える。
櫛枝は恐らくこの話を既に知っているのだろう。
だから俺に教えた。
だが、俺がこれを知ったから、どうしろというのだ。
どうしようも出来ないじゃないか。
なにもしようが無いじゃないか。
俺は所詮大河の周りを回るだけの人工衛星……見捨てられたゴミでしか無いんだから。

俺は、俺には、何も出来ない。
そう思った時のことだった。



「……イヤダヨゥ」



声が、聞こえた。

158 :ドラとら!◇QHsKY7H.TY :2010/01/20(水) 23:24:15 ID:TKJ+dBpc0
それは大河の声じゃないのに、大河の声のようで。
振り向くとそこにはカバーが掛かった鳥籠。
ウチの家族であるインコちゃんがいる場所で。
インコちゃんは何かをリピートするように、



「……ソンナノイヤダヨゥ」



大河の声をリピートするように、



「……ナニガビョウドウヨ」



大河の気持ちを代弁するように、



「……リュウジガイイノニ」



そこに大河がいるように、



「……リュウジガスキ、ナノニ」



俺が最も聞きたかったそれを、



「……セッカクキヅイタノニ」



今も胸に燻っている、



「……リュウジシカイナイ、ノニ」



この想いを、



「りゅうじぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!」



突き動かした。

159 :ドラとら!◇QHsKY7H.TY :2010/01/20(水) 23:25:17 ID:TKJ+dBpc0
***



最後の叫びは大河の声そのものを脳内で聞いた。
こうしてはいられない。
俺は学際からずっと大河を好きになる資格は無いと自分に言い聞かせていた。
そんなのは逃げだ。
資格?そんなもの、何処に必要だったんだ!!
俺は携帯を取り出し、

「北村?夜にすまない、頼みがるんだ」

友人に無茶なお願いをした。



***



景色が素早く動いていく。
季節も相まって、このスピードはとんでもなく寒い。
俺は友人に校則違反であるバイクでの送りをお願いした。
歩いていては間に合わない気がしたから。
北村はそんな俺のお願いに、

「高須の頼みだ、いたしかたあるまい」

と行って引き受けてくれた。
駅についた後は北村に礼を言って分かれ、大河を探し始めた。
何となく、直感でこの駅だと感じたのだ。
夏にみんなで旅行に行った駅。
あいつはここを使う、と。
根拠なんて無い。
でも今できるのはこれだけだ



***



『プァーーーン!!』

大きい音が鳴って列車が発車する。
次の列車は、十分後に発射のようだ。
大河がどの列車に乗るのかなんてわからない。
もう乗ってしまったのかもしれないし、別の駅かもしれない。
もしかしたら飛行機ということもある。
それでも俺は探し続けた。

160 :ドラとら!◇QHsKY7H.TY :2010/01/20(水) 23:26:16 ID:TKJ+dBpc0
『プァーーーン!!』

また次の列車が出た。
この時間、列車はほとんど分単位で発射する。
次の列車の発射は五分後。
そんな電光掲示板の表示を見ていると、後ろの方でゴトッと音が鳴った。
振り返るとそこには、

「な、なんで……」

真っ白いコートに身を包んだフワフワロングヘアーの小さなエンジェル、大河が居た。




***



「大河!!」

竜児は私に駆け寄ってくる。
私は咄嗟に……逃げた。
ローラー付の旅行鞄を引っ張りながら駆け足で列車に乗る。

「待ってくれ大河!!」

どうしてここがバレたのかわからない。
なんでここにいるのかもわからない。

「俺は……」

ガタンとローラーが大きな音を立てて列車に乗る。
竜児は流石に中までは入ってこない。
発射まであと三分程度だろうか。
そう思って竜児の顔を改めて見た途端、



「大河が好きだ!!」



告白された。



***

161 :ドラとら!◇QHsKY7H.TY :2010/01/20(水) 23:27:15 ID:TKJ+dBpc0
『白線よりお下がり下さい』

そんなアナウンスが流れ始めたこの瞬間、俺は思いを偽ることなくストレートに吐き出した。

「え……あぅ……?」

大河は驚いて、顔を真っ赤に染め上げて口を奮わせている。

「俺は、ずっとお前が好きだった、お前ももう思い出してるみたいだけど、あのクリスマスからずっと」
「あ、ああああ……」
「確かにお前の言う通り、いつかは俺を理解してくれる人も現れるかもしれない」
「え、えっと……」
「でも、俺はお前がいい、いや、お前じゃなきゃ嫌なんだ、俺の手を暖めてくれるのはお前がいいんだ!!」
「……!!」
「俺は、お前と一緒じゃないと生きていけない!!」

そうやって全て思いを吐き出した所で、

『プシューーッ』

扉が閉まる。
大河は慌てたように丸い窓に張り付いてこちらを見つめている。
結局、大河は俺に一言も返さぬまま、行ってしまった。



***



トボトボと家に帰る。
仕方がなかったとはいえ、何も言葉を返してもらえなかったのはやっぱり少し辛い。
既に時間は日付を超え、三時を示している。
櫛枝にはメールで俺の取った行動を報告した。
返信に、

『よくがんばったよ、高須君』

と書かれていたのが、少し俺の体の重みを軽くした。
家に帰って、死んだように布団に横になる。
多分今眠ったら明日は起きられない。
確か朝五時に学校集合、だったし大河のいない修学旅行に興味は……無い。
あ、でも積み立ててでずっとお金払って来たんだからMOTTAINAIな。
払い戻してもらえるかなぁ。

「……っ……つ!!」

涙が、止まらない。
結局、俺は大河に言うだけで止められなかった。
仕方のないことかもしれないけど、それがとてつもなく悔しかった。
そう悔し涙を流しているウチに、まどろんだ。



***

162 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/20(水) 23:43:29 ID:AGIk+8WBO
支援

163 :代理の代理、ドラとら! ◇QHsKY7H.TY:2010/01/20(水) 23:56:15 ID:JgReydAX0
朝、日の光と共に目が覚める。
時計は朝七時を示し、まず間違い無く自分は寝過ごしたことを悟る。
こりゃあ後で何か言われるな、と思いつつ起きあがり、伸びを一つ。
体の機能は睡眠を取ったため万全だが、心が空っぽなのがわかる。
これから大河のいない生活が始まるのだ。
それを思うと気が重くなり、ノロノロと襖を開けて居間に顔を出し、朝ご飯は何にしようと考えたところで、

「おっそいのよ、この犬」

オレンジが乗った卓袱台に付いて正座宜しく、こちらを睨み付ける子虎が一匹。

「………………」

いかん、まだ寝ているようだ。大河が好きすぎて幻覚を見るなんていくらなんでもどうかしている。

「大変だったんだから!!あ、あああ、アンタが私がいないと生きていけないとか言うから!!し、死なれちゃ困るし!!」

しかし、幻覚にしてはいやにリアルだ、もしかしたら夢という線かもしれない。

「ママにお願いしてちょっとこっちに行ってくるって許可貰うのだって凄く怒られたし始発に乗って来るのだって……ちょっと聞いてんの!?」

バゴッ!!
強力な蹴りをくらい目が覚めた。

「たい─────が……?」

目が覚めて、それが本当に夢だった事に気付いた。
自分は普通に布団の上で時間は七時。最高で最悪な夢を見たと自己嫌悪。
どうせならあれが予知夢だったらいいのに。そういや泰子が自分はプチ超能力者で一回分だけ超能力を使える力を上げるとか昔言ってたっけ。
どうせなら今がいいのにと思いつつ、起きあがって今度こそ朝ご飯は何にしようと考え居間に入った所で、

「おっそいのよ、この犬」

いかん、まだ起きてなかったらしい。
夢の状況そのままに、目の前にはオレンジが乗った卓袱台に付いて正座している少女がいる。

「私寝てないってのにアンタはグースカ寝てるし、ママにお願いしてちょっとこっちに行ってくるって許可貰うのだって凄く怒られたし始発に乗って来るのだって……ちょっと聞いてんの!?」

バゴッ!!
強力な蹴りをくらった。これで目が覚め……あれ?

「何よ、不思議そうな顔をして?誰の為に戻ってきてやったと思ってるの?」

目の前には相変わらず大河。

「た、大河!?」
「まだ寝ぼけてるの?当たり前でしょうが。だいたい私言ったわよね?昔から、虎と並び立つ者は竜と決まってる、私は逢坂大河、アンタはこれからも私の為に私の傍らに居続けなさいって!!」
「いや、でもお前……」
「グダグダ言わない!!アンタの為に戻って来たんだから……返事、言いに来た、んだから……!!私だって、私も……」

オレンジが乗った卓袱台越しに、大河は感極まったように一粒涙を流し、俺の手を暖めるように掴んで、

─────────好きだよ

少し甘酸っぱい、そんな返事を受けた。
聖なる夜から始まった恋。
これから二人にはたくさんの障害が立ちはだかるだろう。
それでも二人はもう絶望に暮れることは無い。
何故なら、思いを通じ合わせた二人を合わせて、世界は、神の前に平等なのだから。


164 :◇QHsKY7H.TY :2010/01/20(水) 23:58:34 ID:JgReydAX0
ここまで。
これで長々と書いてきたドラとら!は終わりです。
皆さんありがとうございました。
まとめ人様もわざわざ区切り毎のアイキャッチを作ってくださり本当にありがとうございました。

全部書き切れたのは皆さんおかげです。
もう一度、皆さん本当にありがとうございました。


あ、蛇足ですが私はキリシタンやキリスト教信者ではありません(爆)


165 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2010/01/21(木) 04:16:01 ID:XS8t9AS10
お題 「睫毛」「返事」「転がり落ちる」



「ふわ〜〜ぁ……」
 土曜の午前中だというのに、大河は大きなあくびをひとつ。
「おい大河、大丈夫か?」
「何が?」
「何がじゃねえよ。さっきからあくび連発してるし、妙に眠そうじゃねえか」
「眠そうっていうか……眠いのよ。このところ弟の夜泣きが酷くて……」
 言いながら大河はまたあくび。
「……少し寝たほうがいいんじゃねえか?泰子の部屋に布団敷くから」
「そこまでしなくていいわよ。そうね……竜児のベッド貸してくれない?」
「おう、そりゃ構わねえけど」
「ん、それじゃお言葉に甘えさせてもらうわね」

「大河、そろそろ昼飯に……」
 そう言いながら部屋に入ると、大河は仰向けですやすやと寝息をたてていて。
 竜児はベッドの端に腰掛けて、微笑みながら穏やかな寝顔を見つめる。
 その長い睫毛に飾られた瞼の下に、輝く瞳があることを竜児は知っている。
 その白磁の如き頬が、触れると驚くほど柔らかいことを知っている。
 その僅かに開かれた薔薇の花びらのような唇が、畏ろしい程に熱く甘いことを知っている。
「大河……そろそろ起きろよ……」
 少し顔を近づけて、囁いてみても返事は無い。あと50センチ。
 大河に覆い被さるようにして、その顔を正面から覗き込む。あと30センチ。
 ベッドが軋み、竜児は瞬間動きを止める。あと20センチ。
 ふわりと立ち昇る甘い香り。あと10センチ。
 唇に微かに大河の息を感じる。あと5センチ。
 大河がぱちりと目を開けた。
 お互いの瞳を見つめながら、三秒の空白。
「……んにゃあぁっ!」どぉん!
 突き飛ばされてベッドから転がり落ちる竜児。
「ああ、あんた、ナニしようとしてるのよっ!」
「おうっ!す、すまねえっ!」
「すまねえじゃないわよこのエロ犬っ!!」


 翌日。
 『竜児、またベッド貸してくれない?』『お、おう、構わねえぞ』
 そんなやりとりから二時間程。
「おい大河……」
 大河はやっぱりベッドの上で目を閉じたまま、声をかけても揺すっても起きる様子は無く。そのくせ息遣いは少し荒くて。
 その瞼は妙に力を入れて閉じられていて。
 その頬はなぜか桜色に染まっていて。
 その唇は何かを期待するかのように微妙に突き出されていて。

166 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/21(木) 07:48:12 ID:86tYQtrH0
>>164
お疲れ!

>>165
大河、後悔するくらいなら突き飛ばすなよ(w

167 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/21(木) 13:19:07 ID:r8tFG8F10
>>149
今度は大河の羞恥プレイかと思いきや、ガールズトーク炸裂で楽しい楽しい。
麻耶と奈々子の2人との距離感と親密度が適度でリアルです。
オチも大河らしく、きれいだ!

>>164
GJ! 乙です。
最後の大河の返事がよかったなぁ。
知り合う前のエピソードが全体通して、いい感じに利いてます。大河がカコイイ!
難しかったと思いますが、よく書き通してくださいました!

>>165
実は大河の反撃がいたずらに対してではなく、目覚めた瞬間、5cmの距離での凶眼に驚いて
だったら、竜児へこむだろうなぁ・・・

168 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/21(木) 14:27:58 ID:HGkuUMcG0
>149
ステーキの評判と財布の中身の関係はのちに「みのりんの大定理」と呼ばれたのだ・・・

169 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/21(木) 18:58:56 ID:nVzoNXJD0
>>164
長編、お疲れ様でした。
楽しんで読めました。
ちょうどラストを読んでいると、エンディング曲のオレンジが脳内再生されて、きれいにフェードアウトしました。
GJでした。
代理と代理の代理も乙です。

>>165
いや〜楽しい、楽しい。
思わず笑ってしまいましたよ。
GJです。


170 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/21(木) 20:36:33 ID:r8tFG8F10
>>164
忘れてた…
インコちゃんGJ!

171 : ◆fDszcniTtk :2010/01/22(金) 08:02:09 ID:mLA+mWTc0
>>164
長期連載お疲れ様

>>165
大河、そんなに構えると竜児だってやりにくいぞ(w

>>150-152, 167
コメントありがとう

>>150-151
いやぁ、竜児が出てこないんでお蔵入りさせるしかないかなって思って。

>>167
> 麻耶と奈々子の2人との距離感と親密度が適度でリアルです。
お、サンキュー!そこ苦労したんだ。

>>168
そしてそれが正しいか否か判明するまで、実に360年を要したのだった。

172 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/23(土) 00:56:12 ID:yXdJXB/u0
幸福屋更新age
ほんに竜児はまっこと恐ろしい男やで…

173 :ちょっとのつもりがまた置いてきぼりですよ:2010/01/23(土) 01:23:33 ID:DyphoyzI0
正月からしばらくこないうちに…また色々と。
ああドラとら!完結しちゃってるし!お疲れ様でした。
あとでゆっくり読ませてもらうとして…ちょいと小ネタなぞ投下〜。

174 :匂いフェチめ!:2010/01/23(土) 01:27:29 ID:DyphoyzI0
<趣旨>においに関する一考察。あと下ネタは控え目に。

【SMELL・完全版】


「…大河?」
「うにゃ?」

 ぐらり、とよろめきかけた身体と心を立て直し、竜児は心の中で呪文を唱える。
(煩悩退散・煩悩退散・煩悩退散・煩悩退散・煩悩退散……よし)

「あー。えっと、大河、さん?」
「ふみゅう?」
「日本語を喋ろ―――!あーもう可愛いなコンチクショウ!」

 あっさり限界を超えかける己の理性を必死に繋ぎとめながら、竜児は自身のベッドに潜り込み、『至福』に浸りきってフニャフニャ鳴いてる婚約者を睨みつけた。
 男のベッドに潜り込んで誘っているのかこの淫乱なビッチめ!よーしそれなら望みどおりにじっくりたっぷりねっぷりどっぷり(成人指定)な(有害指定)で(検閲削除)に可愛がってくれるわ!とりあえず首輪はデフォな!
 ……と考えているわけではない。いや実のところ、越えてはいけない一線ギリギリのところで辛うじて踏みとどまってはいるのだが。
 つまるところ、買い物から帰ってきたら留守中に勝手に上がりこんだ大河が竜児のベッドで丸くなっていた。
 それはいい。いやホントはよくないが、今は脇に置く。
 問題なのは……。

「へ・へ・へ・へ・へ……りゅうじのにおい〜〜。はにゃ〜〜ん…」
「あああああああ!客観的には変態さん100%なのになんでこんな犯罪的に愛らしいんだお前はよう!」

 懐かしのカード捕獲人みたいな甘え声でハニャララホニャララな大河の蕩けっぷりに、血管キレそうな竜児です。がんばれ、竜児?

「んふ〜〜りゅうじの匂い〜〜〜」
「ああもう好きにしてくださいっていうか可愛すぎてタマラヌワ!
 というか――前から不思議だったんだが、…そんなに俺の匂いっていいのか?自分じゃとてもそうとは思えねぇんだけど」

175 :匂いフェチめ!:2010/01/23(土) 01:31:38 ID:DyphoyzI0
 竜児の問いに、少し理性を取り戻した大河はんー、と考えて。

「そうね、基本的には男臭いっていうか犬臭いんだけど」
「…傷つくぞコラ。風呂にはちゃんと入ってるんだけど…臭いのかやっぱ…」
「まあ独特ってことよ。それにちょっとクセがあるくらいが逆にそそるっていうか」
「クセ?」
「例えば……竜児の匂いの49%はおしょう油の匂い」
「……なんか自分でも納得してしまった」
「あと――右手は(くんくん)カレーというかスパイスの香りがする」
「そうか?カレーは最近作ってないけど…自分じゃわからん」
「左手は(すんすん)カビキラーとか漂白剤とか…洗剤の香り、かな」
「マジで?本当ならすごいな、お前の鼻」
「そして顔は……」
「え……」

 ちゅ。

「…とりあえず、今朝の卵焼き…だね」
「…お前それ、嗅覚じゃなくて味覚だろ…」
「えへへ…で、で、ココはぁ…」
「ちょ、ちょっ!お前ナニしやがるっ!?そ、そこは!?
 いやああああああっ!?ズ、ズボン下ろすなあああああああああああああ!!?」

 …すぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ。

「……イカくさい」
「ああああああああああああああああ!!
 下ネタは控えろとあれほど!あれほどぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「スルメのスメル?」
「しかもそんなオヤジギャグまで!!?」
「てゆうか…この臭いの濃さ…もしかして独り繁殖しちゃってたわけ?このエロエロ発情犬?」

 ざわ…ざわ…


176 :匂いフェチめ!:2010/01/23(土) 01:33:08 ID:DyphoyzI0
「わたしというお、お、お、お嫁ちゃん、がいながら!一人でおしべを!
 一人で!一人でそんな非生産的行為に及んで!数億の可能性を無為に!
 なんて卑劣!なんて下劣!併せてヒゲ劣!!!」
「変な日本語を造るな!!全然イミわかんねぇ!!」
「そんな…そんな…そんな無駄な(ピー)があるなら私に注ぎ込みなさいよ!?」
「女の子がそんな下品なこと言っちゃいけません――!!」
「それとも…それともまさか!竜児アンタう、うううう、うわうわうわ、うわ、き」
「それはねえ!それだけは絶対ねえ!俺の嫁は大河だけだ!俺は大河以外の女を知る必要は無いし、知りたいとも思わねぇ!
 俺の嫁はお前以外にはあり得ねえから!」
「え、え、え?えへ…。
 ってなにこっ恥ずかしいコト大声でのたまってくれちゃってるのよこのエロ犬!
 そそそそそ、そ、それにぃ…それに、その…じゃあ、なんで、一人でその…しちゃうのよ?」
「え、いや、そりゃあ…その…そういうこともあるっていうか…」
「やっぱ納得いかない!それって結局…け、けっきょく、つまり、わ、わ、わたしのからだにまんぞくしてないってこと?だ、だからひとりで…?」
「ち、ちがうって!俺はお前の全部、大好きだぞ!?お前くらいかわいくてステキな女の子はどこにもいない!」
「じゃあなんで!なんで一人で!一人繁殖しちゃうのよ!!
 そんなに欲求が不満してるなら、おもう存分私をハケグチにするがよい!」
「お前それ日本語おかしいよ!?っていうかはけ口ってなんちゅう人聞きの悪い…」
「やっぱり私が哀れ乳だから!チビで貧相でガリガリだから!
 えーそうですともフェロモン足りてないわよ色気ないわよいい歳してツルッツルよっ!
 でも最近は心もちちょっとだけもしかしたらうっすらと濃くなってきたような気がするわ!」
「だからそんなこと無いって!お前は十分に魅力的だっ!
 大体…だいたいなぁ。その…一人でその…繁殖した…素材というか…」
「おかず?」
「だから言うなよそういうこと!少しは恥らえ!
 ああもう…言うよ、白状するよ!俺は確かに昨夜、大河を!大河のこと想って興奮しちまったよ!
 で、盛って!も、盛り上がっちゃって!
 ………………が、我慢しきれなかったの!ああもうエロだよ発情犬だよ俺は!
 俺は大河をネタに妄想して下品しました!
 ご、ごめんなさい!!」
「うわ〜〜〜〜…」
「す、素で汚物を見るような目で俺を見るな!見られて当然だけど…」

 いつの間にか仁王立ちする大河の前で、正座してしまっている竜児である。
 まともに自分の顔を見れず項垂れる竜児を、表情を消した顔で大河は見つめていたが。
 ぐい、とやや乱暴な手つきで竜児の髪を鷲掴みにし、強引に顔を上げさせる。

177 :匂いフェチめ!:2010/01/23(土) 01:35:19 ID:DyphoyzI0
「竜児…これは正直に、真面目に答えて欲しいんだけど」
「な、なんだ?」
「なんていうか…ちょっとわかんなくなっちゃって。
 いや、わかることはわかるのよ?その、そーゆー行為に到っちゃうのはこのアホがぁって思うんだけど、まあ、なにせこの大河様のことでエロ犬のアンタが我慢しきれず先走っちゃう気持ちはね?」
「お、おう…」

 抗弁の欲求を抑えながら、とりあえず竜児は肯く。

「私だってそうだから。今はまだ、私たち高校生だから、独り立ちできてないから、まだ一緒には暮らせないから、夜中に時々、切なくて、会いたくて、竜児の傍にいたいって、竜児を感じたいって、
 …たまらなくなること、あるの」
「…おう」
「だからなのかな。…竜児のにおい、好きなの。
 さみしい時、竜児を傍に感じたくて、写真を置いて、録音した声を聴いて…」
「…録音…アレか…」

 実はこの話、微妙に繋がってたり。

「でも、写真の竜児は何も言ってくれない。音声ファイルは、同じコトしか言ってくれない。
 優しく頭を撫でてくれる、暖かい手を感じることはできなくて。
 やっぱり、竜児が遠い。
 でも…匂いはちがう。
 匂いはちゃんと、自分の身体が竜児を感じてるから…この匂いは確かに、確かな、竜児のものだから…だから、竜児の匂いが、…好き」
「…………」
「ごめん。…ちょっと、話それちゃったね」

 髪を解放し、手と膝を畳についた四つ這いに近い体勢で、大河は竜児の顔を覗き込む。

「だからね。だから…竜児、我慢して欲しくないの。一人でそんなことしちゃうくらいなら、もっと、もっともっと私のこと、好きにしちゃってよ。
 好きにしてほしいのよ。
 私、竜児のこと、…す、すきだから。
 一緒にいないときも、さみしくないように。
 二人でいられる時には、思いっきり、竜児のこと好きにして、好きにされたい。
 竜児に好きにされて、好きになってもらいたい。
 私はそうしたい。
 なのに、なんで竜児は我慢しちゃうの?
 我慢しなくていいよ?
 我慢して、…それでそんなことになっちゃうのって、バカバカしいじゃない」
「俺は――」
「わかってる。竜児は真面目だもん。良識的であろうとするのは当然だと思う。
 つまりは、私の言ってることは、ワガママだってことも、ホントはわかってる。
 このカタブツ野郎、とは思うけど…それが竜児だし、そんな竜児が、やっぱり好きだから。
「…………」
「前置き、長くなっちゃったけど。
 これだけは教えて?
 ホントのホントは…私と同じ気持ち、あるよね?」

178 :匂いフェチめ!:2010/01/23(土) 01:37:03 ID:DyphoyzI0
 竜児は、静かに大河を見返した。
 少し困ったように、笑って。
 しょうがないな、ってちょっとだけ楽しそうな目で。
 黙って、黙ったまま。
 小さく肯いた。

「うん。そうだよね。…だからどうだってわけでもないんだけど。
 一応、確認はしておきたかったから」
「おう…」
「あー、でもさー。竜児がそーゆー我慢できずにしちゃったりって、珍しい?みたいな?
 なになに、そんなにたまってたの?」
「だからお前、そういう無造作な物言いは止めてくれ。二人きりの時はまだしも、人前でその調子が出るとヒヤヒヤなんだぞ俺」
「細かい男ねぇ。でもソボクに疑問なんだけど」
「まあ…その…なんだかんだで、俺もお前と同類っていうか…」
「はあ?何ソレ?」
「いやさ、昨夜、洗面所のタオル洗濯しとこうと思って…そしたらタオルからお前の匂いが香って」
「え?」
「で、その…あ〜そーいやお前、顔洗ってこのタオルで拭いてたなーとかだな、つい、その…嗅いだりして」
「ええ?」
「そうやって…大河の匂い、ずっと嗅いでたら…その…むらむらと…」
「キモっ!うわキモ!キモい!変態!よるなこのアブノーマル!!」
「お、お前がそういうこと言うかぁぁぁ!?さっき俺のベッドでフンフン悶えてたのはどこのドナタ様だ!」
「竜児。世の中には『心に棚を作れ』という格言があってだねぇ」
「お前はいつも棚にも置かずに放りっぱなしじゃねぇか!!」
「ほんっと細かいわね。器が小さいったらないわ」
「細かくねぇよ!?ってか大事だろそれは!!」
「うるさいこの匂いフェチ!」
「だから、お前にそんなこと言えるかよぉぉぉぉぉぉ!!」

 メクソハナクソ・五十歩百歩。
 あるいは、朱に交わればなんとやら。
 つまりはいつもどおりな竜虎の二人、だったとさ。


   <了>

179 :おまけ:2010/01/23(土) 01:42:50 ID:DyphoyzI0
実乃梨「女の子はミルクの匂いがするとかそーゆー表現、多いよね。」
亜美 「まあ…割とあるかな?」
実乃梨「ぶっちゃけ、おぱーいの匂いを表現する時
亜美 「だから!チビトラといいなんでぶっちゃけすぎなのあんたら!」
実乃梨「でもよあーみん。給食でこぼれた牛乳ふいた雑巾、あれスゴイ臭いだよね」
亜美 「まあね。…なんであそこまで悪臭に化けるかな」
実乃梨「つまりおぱーいの香りは牛乳雑巾!」
亜美 「違うでしょ!っていうか台無しだアンタ!!」


 オチはないですよ?

180 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/23(土) 03:14:49 ID:zcL3vxUg0
>>174-179
乙www

なんつーか、色々とヒドイ話だw
だが、それがいい!

181 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/23(土) 16:25:52 ID:U8nuSLuV0
うおおおやっと規制解除された

>>164,171
おつでしたー
>>164のひとはまた構想たまったらお願いします!のんびりとw

182 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/23(土) 20:05:27 ID:JvhFHm7S0
>>179
途中の匂いのあたりはちょっといい話っぽいのに…w
GJ!

183 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/24(日) 04:40:03 ID:GM7MFg1i0
デレデレ大河はええもんだすなぁ〜

184 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/25(月) 05:07:10 ID:xTsqRTqR0
お題 「定位置」「変化」「目玉」



「おはよう大河」
「おはよう竜児。今日はちゃんと私が見えてるわね」
「当たり前じゃねえか」
「あら、昨日思いっきりぶち当たってくれたのは何処の何方だったかしら?」
「う……それは昨日散々謝ったじゃねえか」
「よかったわね竜児。もしまた気づかないようだったらその目玉を抉り出して水洗いしてたところよ」

 戻ってきたかつての定位置を歩きながら、大河はちらちらと繰り返し横の竜児を見上げる。
 竜児はといえば、逆に微妙に視線を逸らしつつ、大河の側の掌を握ったり開いたり。
 と、大河がピタリと足を止める。
「おい大河、どうした?」
「……なんか、ずるい」
「はぁ?何がだよ」
「だって、私はずっとドキドキしっぱなしで竜児が気になって仕方ないのに、竜児は平然としてるんだもの」
「俺だって平然となんてしてねえぞ。こうやって大河と一緒に登校できて、幸せなんだけど妙に緊張しちまって……さっきから頭がどうにかなりそうだ」
「嘘。こっち見ようともしないじゃないの」
「それは見ないんじゃなくて、見られねえんだよ。なんか……変に気恥ずかしくてさ。
 正直に言うと、大河と手を繋いでいいものかどうか、ずっと悩んでたんだぞ俺は」
「本当?」
「嘘ついてどうする」
「そうなんだ……そうね……
 ……ねえ竜児、キスして」
「んなっ!?た、大河?」
「ほら、今なら他の人もいないし、そこの物陰なら見られる心配も無いわよ」
「そういう問題じゃねえだろ!何で今、こんな所でキスなんだよ!?」
「あのね、さっきから私と竜児が落ちつかないのって、私達の関係が『恋人』に変化して実質的に間が無いからだと思うの。慣れてないのよね」
「お、おう」
「だったら、それを無理矢理にでも先に進めて、並んで歩くぐらいなんでもないことにしちゃえばいいじゃない」
「……ショック療法みたいなもんか?」
「そう。だからねえ……早く」


「おはよう北村」
「おお、おはよう高須。遅刻寸前とは珍しいな、寝坊でもしたか?」
「いや、そうじゃねえんだけど……途中でちょっと、思ったより時間とられちまって……」


185 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2010/01/25(月) 05:08:20 ID:xTsqRTqR0
>>184
おう、名前入れ忘れた

186 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/25(月) 06:32:15 ID:i3Q0A45O0
>>185
おつ!名前わすれはキニシナイ!

187 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/25(月) 20:17:39 ID:gTUVG1Xw0
>>185
一瞬、新手が現れたのかと思ったw
乙!
このバカップルめwww

188 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/25(月) 20:43:43 ID:0A6LTogt0
>>185
朝っぱらからこいつらはw
GJです!

189 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/25(月) 21:41:49 ID:gTUVG1Xw0
「竜児、足りない!」
「……白米様ならお前がいつも通り二合食ったじゃねぇか」
「そうじゃない!」
「おかずもこれ以上は増やせないぞ。もちろんデザートも無理だ」
「だから違うっての!」
「おう? じゃあなんだ?」
「その、あれよ……し……ん……よ!」
「なんだって? もっと大きな声でハッキリと言えよ」
「だーかーらー! このスレにはギシアンが足りないの! 言わすなエロ犬!」
「言わせたのは悪かった! だからマウントポジションはやめてくれ!」
「……覚悟しなさい! 竜児!」

ギシギシアンアン

気づけば絶滅危惧種


190 : ◆Eby4Hm2ero :2010/01/26(火) 04:52:37 ID:NzCBV8pt0
ちょいと下なの行きます。一応ギシアンレベル……のはず。

191 :ドランクドラゴン! ◆Eby4Hm2ero :2010/01/26(火) 04:54:02 ID:NzCBV8pt0
 時刻はそろそろ金曜から土曜へと日付が変わろうかという頃。
 リビングで婚約者の帰りを待つ大河は、不機嫌顔から次第に心配顔へと。
 確かに遅くなるとの連絡はあったものの、それにしたって遅過ぎではないだろうか。
 と、ドアの開く音と共に、
「ただいま〜」
 聞こえた竜児の声に大河は瞬間表情を輝かせるが、いやいやと首を振って再び不機嫌顔を作り、わざと荒く足音を立てながら玄関へ。
「竜児!あんた今何時だと……」
 大河が絶句したのもむべなるかな。なにしろ竜児はといえば地獄の鬼もかくやといわんばかりの赤ら顔。
「ちょっと竜児!?どうしたのよ?」
 竜児はふらふらと玄関を上がり、
「おう大河、マイスウィ〜トハニィ〜♪」
 ふにゃふにゃともたれかかるように大河に抱き付く。
「お酒臭っ!それに……香水?ちょっと、あんたどこに行ってたの!?」
「おう、キャバクラだ」
「キャバっ……!あんた、私というものがありながら……!」
「仕方ねえだろ、課長に無理矢理付き合わされたんだから。それとも黙って隠してるほうがよかったか?」
「う……それは……でも、それにしたって言い方ってものがあるでしょ!大体あんたはデリカシーが……」
「俺はデカ尻ーより大河の小さな尻の方が好きだな〜」
 むにっ。
「あっ、あんた、どこ触ってるのよっ!?」
「尻」
「即答すんなこのエロ犬っ!」
「安心しろ大河!俺がエロ犬になるのはお前にだけだ!その証拠に店の女の子に迫られてもピクリとも反応しなかったからな!」
「そういう問題じゃないっ!つか、揉むなーっ!」
「……おう、そうか!」
「わかったらちょっと離れて……」
「下だけ揉むんじゃバランス悪いよな。ちゃんと上にもいかねえと」
「っ!そうじゃな……ひぁっ!」
「大河、愛してるぜ〜」
「ちょっ!ちょっと待って竜児!っ!」
「やだ。こんなに可愛い大河を前にして待てるわけねじゃねえか」
「せ……せめて、ベッド、でっ!」
「駄〜目。俺もう我慢出来ねえから。ほら、ちゅ〜」
「そん、んむっ!?ん〜〜〜〜っ!!」


「はい竜児、梅干湯」
「おう、すまねえ……」
 竜児がどんよりと落ち込んでいるのは二日酔いのためだけではない。
「竜児……さっきからそればっかり」
「ほんっと、すまねえ……」
 なにしろ昨夜の醜態を一つ残らず記憶しているのだ。
「……謝るくらいなら、なんであんなになるまで呑んだのよ?」
「いや、ホステスがやたら媚び媚びと迫ってくる店でさ……それかわすのに酒呑んで誤魔化してたら、いつの間にかけっこうな量になってて……その前の店でもそれなりに呑んでたし……」
「そんなんでよくきちんと帰ってこれたわね?」
「実は、玄関まではそれなりに正気保ってたんだけど……その、大河の顔見たら安心して箍が外れちまったというか……」
「ふうん……」
「それで大河にあんなことしちまうなんて……俺は、俺って奴は……」
「……そこまで自分を責めなくても……」
「決めた。俺は金輪際酒は呑まねえ」
「そいうわけにもいかないでしょ。それこそ付き合いだってあるんだし」
「いや、二度と大河に嫌な思いをさせるわけにはいかねえから」
「その私が許すって言ってるんでしょうが。もちろん程々にだけどね」
「お、おう……すまねえ」
「……それに、たまになら……その、強引なのも、悪くないし……」
「……え?」

192 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/26(火) 10:34:25 ID:C4ZQXBKNO
あるあるw

193 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/26(火) 19:10:30 ID:+DmS3Vvt0
>>191
定期的な作品投下、いつも本当に乙です
いちゃいちゃ度の高い話二連発でたまらん!

194 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/26(火) 20:36:57 ID:UYj3wS/r0
ちょい軽なギシアンなら余裕でOK

195 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/26(火) 21:00:17 ID:W45LWiSO0
>>191
いいねこれ、ホームドラマっぽくて。

婚約中より夫婦設定の方がいいんじゃないかな。

196 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/26(火) 22:48:15 ID:aCUSQ13v0
まあ夫婦みたいなもんだし

197 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/26(火) 23:13:39 ID:dppHgINo0
おしどり夫婦とはまさにこのことですな。

198 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/26(火) 23:54:03 ID:/r0pRzbK0
高3から、な。

199 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/27(水) 01:05:12 ID:wtkVZiLa0
>>191 なんか受信した

----

「竜児。ちょっと変じゃない?」
「おう、体調ならすげぇ変だぞ。こりゃ二日酔い夕方まで続きそうだ」
「ちがうわよ。『ホステスがやたら媚び媚びと迫ってくる店』って、あんたの顔見てホステスが
迫ってきたわけ?」
「………」
「ちょっと、こっち見なさいよ」
「やめ!蛍光灯スタンドまぶしい」
「ねぇ、あんた仕事のつきあいとか言ってどこ行っちゃってたわけ?あんたに迫るホステスなんて
居るのかしら。そりゃあのクラスには私とかみのりんとかバカチーが居たけど、基本、あんたって
怖がられるよねぇ」
「いや、あのよ」
「竜児……嘘ついたわね」

大河が目をかっぴらいて耳まで口が裂けそうな笑みを浮かべる。怒りのあまり顔はカタカタと震え、
MK5(マジで殺す5秒前)状態。一方の竜児は昨晩の赤鬼顔もどこへやら、二日酔いのおかげで
取調室の青鬼状態。さぁ、吐け、吐いてすっきりしろ!と迫られ、ついに吐いた。ゲロじゃなくて真実を。

「すまん……ほんとはおかまバーに連れてかれたんだ」

200 :代理投稿◇QHsKY7H.TY :2010/01/27(水) 02:00:15 ID:j97fVK3H0
規制が解けない(泣)

みんなたくさんの感想ありがとう!

代理の人と代理の代理の人代理ありがとう!

避難所での感想もありがとう!

>>165
三題噺ってあんなに短いのに話が上手く詰まってていつもすごいなぁ。
>>184どれだけキスしてたんだぁぁぁぁ!?
>>191酔った竜児と襲われる大河、何か襲った方が途中で逆になりそうなイメージがあるなw


>>167
ありがとう、設定気に入ってもらえて良かった。
最近出番の少ないインコちゃんには最高の舞台を用意したつもりだよ。

>>169
おお?オレンジわかった?

>>171
ありがとう、竜児最後の日と大河最後の日も原作っぽい感じで良かった。

>>179
匂いフェチキターー!
良ければ慌てずゆっくり読んでみてください。

>>181
ありがとう、そうしますw

>>189
確かに最近無かったギシアンキター!!

さて、>>181の方に言った傍から短編行きます。3レス消費。

と思ったら憎き規制。
くそぅ。
まとめ人様が避難所を用意してくれてるからまだ良いけどこれじゃおちおたお礼も書けないな。
まとめ人様、避難所のご用意ありがとうございます。

というわけで代理投稿歓迎。

201 :ヤキモチ◇QHsKY7H.TY :2010/01/27(水) 02:01:19 ID:j97fVK3H0
この春、晴れて恋人同士になった二人は、しかしだからとてそう大きく変わることも無く過ごしていた。
今までほとんど同棲そのもののような生活をしてきたのだ。
当然それは無理からぬことではあるのだが、こんな時、決まってほころびを見つけ、それを大きくするのは大河だった。

「ねぇ竜児」
「おぅ、どうした」

土曜の午後。
お休みの日にはこうして大河は竜児の家に遊びに来る。
慣れ親しんだ実家のような高須家は大河にとっても気持ちの良い場所だった。

「私たち、晴れて恋人同士、になったのよね?」
「おぅ?何だ藪から棒に」
「いいから答えて」

マイ座布団だとばかりに毎回同じ座布団を使う大河は、今日もその座布団に座り、しかし真面目くさったように切り出す。
大河がいることで今日は一緒に買い物でもしようかと思いチラシを見ていた竜児は、大河の真面目っぷりに少々驚いた。
ちなみにこの買い物、二人で遊ぶ為では無く今日の晩ご飯の為の買い物である。
大河は夕方には家に帰ってしまうので竜児の食事は食べられないが、それはそれとして二人だと買い物がはかどるのだ。
メニュー決めはもちろん、お一人様○パックなんていう限定商品にも人海戦術は有効となる。
……閑話休題。
そんないつもと変わらぬ竜児に対して、大河は若干の敵意を持ったような眼差しをしている。

「竜児」
「おぅ、なんだ」

これは何か俺がやったか?と竜児は自身の行動を思い起こしつつ大河にいつも通り反応する。
しかし、

「そう、それよ」
「は?」

大河はビシィ!!と竜児に指を指し、不満そうに頬を膨らませる。

「その返事が悪い」
「は?いつも通りじゃねぇか」
「いつも通りだから悪いんじゃない」

大河は段々と怒りのボルテージを上げていく。

「すまん大河、意味がわからねぇ」

大河のことは大概理解出来るようになったと思っていたが、わからないものはわからない。
不満ですという面持ちをしたまま大河は、

「全然照れっていうか、喜びが感じられない」

竜児にとって意味不明な事を言い出す。

202 :ヤキモチ◇QHsKY7H.TY :2010/01/27(水) 02:02:38 ID:j97fVK3H0
「どういうことだ?」
「あんた最初にみのりんに竜児って下の名前口にされた時有頂天になってたわよね?」

それは二年の時の休み時間。
当時竜児の意中の人、櫛枝実乃梨はデコ職人の内職アルバイトをしていて、クラスの女子達のケータイをデコレーションしていた。
その時に言われたのだ。

『高須君のもやってあげようか?竜児って後ろに』

その日、竜児は家に帰ってから下の名前を呼ばれた事に舞い上がり……閑話休題。
かくして、竜児は確かに以前、下の名前を呼ばれただけで有頂天になった実績がある。

「何か、実は私はみのりんよりも好かれて無いんじゃないかなって思うんだけど」
「いや、それはお前がずっと俺と一緒で違和感が無くなったからだろ?」
「どうかしら?竜児はみのりんの為に結構な詩を作ってたみたいだけど私用には作って無いみたいだし」
「お前、作って欲しいのか?」
「キモイからイヤ」
「なら言うなよ」
「でも、何かこう、何て言うの?ガーッと竜児の思いを表現するような痴態?みたいなものが無いのも自信無くすっていうか」
「痴態って、お前な」
「みのりんの時に散々やっていた変なことを私の時に全くやらないってのは少し自信無くすわけよ、女としては」
「むぅ……」

大河の言い分は無茶苦茶だが、気持ちは少しわかる。
竜児とて、もし自分のことで悶えるような大河を見ればそれこそ通報されかねない凶眼をギラギラさせることだろう。
しかし、それはそれとして、大河だからこそ尚の事そういった姿は見せられないし見せたくない。
だが流石は大橋の虎。
竜児のそんな考えなどお構い無しに無理難題を持ち上げる。

「そうだ竜児、今ここで私に告白してよ。ほら、竜児が一杯作ってた詩風にして」
「えぇ!?」

人には恥というものがあり、羞恥心という心が存在する。

「ほら、今なら私しかいないし誰かに聞かれる心配も無いわ」
「い、いや、でも……」

恥ずかしい。
この上なく恥ずかしい。
ちなみにすぐに詩が頭の中で出来ちゃったのも恥ずかしい。

「いいからさっさと言うのだ愛犬」
「あ、愛犬っ!?」
「ちょ、何喜んでるのよ?」

大河はうわぁ、というように汚いものでも見るかのような目つきで竜児を見る。

「よ、喜んでねぇよ!!ここに来て犬扱いされた事に驚いてんだよ!!」

実は内心ちょっぴり、ほんのちょっぴり料理に使うときの塩ひとつまみ程度には『愛』犬と言われた事にキュンと来たのは内緒だ。
最も大河の態度にそれ以上のダメージを受けたのだが。

203 :ヤキモチ◇QHsKY7H.TY :2010/01/27(水) 02:03:42 ID:j97fVK3H0
「ふぅん、その割りには嬉しそうに見えたけど。まぁいいわ、さぁどんと来なさい」
「い、言わねぇよ!!」
「いいじゃない別に。減るもんじゃなし」
「精神的な何かが磨り減るんだよ!!」
「根性無しねぇ」
「じゃあお前言ってみろ」
「……私?な、なななななんで私が言わなきゃならないのよ!?」
「俺だけなんて不公平だ、お前が言ったら俺も考えるさ」
「ず、ずるい!!なら私も竜児が言ったら言う!!」
「いや、お前そんなこと言って結局言わないつもりだろ!?」
「酷い竜児!!婚約者を疑うの!?」
「逆だ!!お前の行動パターンを見通してんだよ!!」
「……チッ」

お互い一歩も引かぬ口論の末、大河の舌打ち。
ゼェゼェと息遣いを荒くしながら肩で息をし、見詰め合う事数分。

「……なぁ」
「……何よ」
「そろそろ買い物行かねぇか、時間無くなっちまう」
「……そうね」

時計を見ればもう夕方。
日もオレンジになりつつある。
二人はそそくさと外に出てスーパーへと向かい出した。

「大河、今日は何食べたい?」
「う〜ん、言っても実際に私が食べられるわけじゃ無いからあんまり思いつかないのよね」
「そういうもんか」
「そうよ、あ〜あ、早く毎日竜児のご飯が食べられるようになりたい」
「俺もお前と毎日今のような会話のやり取りがしてぇよ」
「………………」
「………………」

お互い、今の言葉を最後に少し口を噤む。
まだ来ぬ未来、それに思いを馳せて。

「……ねぇ竜児」
「……ん?」
「そういえば竜児って私には晩御飯とか好み聞くけど、みのりんとそういう話したことあったっけ?」
「う〜ん、そういやねぇな。多分だけど」
「……そっか」

竜児の言葉に大河は口端に笑みを乗せて、

「ね、手繋ごっか」

小さい掌を差し出し、竜児が何をする間も無く手をギュッと掴む。

「ちょっ、大河?」
「ほら、さっさと行こう」

竜児の困惑も何処吹く風。
大河ははしゃいだ子供のように竜児を引っ張って歩く。
そんな大河は、小さく、小さく小さく、

「……良かった」

そう呟いた。

204 :◇QHsKY7H.TY :2010/01/27(水) 02:04:46 ID:j97fVK3H0
書き忘れてた。
これは最近完結したドラとら!とは一切関係無い三年生の頭くらいの時間軸のお話ですw

205 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/27(水) 10:34:00 ID:gzk4Gg0R0
これよく考えたら一巻の大河は住居不法侵入罪成立しないか?
まぁ竜児が警察に通報してたらバカップルは成立しなかったんだがw

206 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/27(水) 10:35:44 ID:3eMoSOEp0
イブには竜児もやったからおあいこだな

207 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/28(木) 01:20:23 ID:pKTHTpFj0
>>199
納得!
まぁ、ホステスでも仕事なら媚も売るだろうが、こっちの方だとマジかもw
問い詰める大河さん、半端なくこえぇっす

>>204
GJ! ありそうな光景だなー
「愛犬」に噴いた! うまい! 大河言いそう
キュンときている竜児、すぐに詩が浮かぶポエマー竜児に萌えw

208 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/28(木) 18:33:35 ID:OxtotKrOO
>>191
乙!
ドランク竜児すげーw

>>199
そっちか!
凶眼をも恐れぬオカマ……
強敵だw

>>204
乙!
愛犬ワロタwww
この二人は本当に微笑ましいね

209 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/28(木) 19:18:48 ID:xh2glakQ0
大河「ギシアンしていい?」

210 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/28(木) 20:27:38 ID:FD5hxsIi0
>>207
言われてみたら確かにそうだわ。ホステスも竜児の親父さん風の
人には接しなれてるわな。

>>208
むしろモテそうな気がする。

>>209
いいよ(化物語の押野風に)

211 : ◆Eby4Hm2ero :2010/01/29(金) 05:38:28 ID:loGe16Xo0
いつも感想ありがとうございます。

>>199
その発想はなかったwww

212 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2010/01/29(金) 05:39:51 ID:loGe16Xo0
お題 「両目」「目立つ」「言葉」



「……騙された」
 紙袋やら箱やらを両手一杯に抱えて竜児は呟く。
 それを地獄耳で聞きつけ、竜児の目の前でくるりと振り返るのはよそ行きファッションの逢坂大河。
「人聞きの悪い事言わないでよね。私は一言も嘘吐いてないじゃないの」
「そりゃまあ、言葉ではな……」
 珍しく神妙な表情で『竜児、ちょっとつきあって欲しいの……』などと言われ、何事かと思いつつ電車に揺られ……
 何の事はない、こうやって買い物の荷物持ち要員にさせられているわけで。つまり結局の所は、
「ノコノコとついてきた竜児が間抜けなのよ」
 ふん、と前に向き直ってずんずんと歩く大河の後を、竜児は溜息をつきながらついて行く。
(しかし……やっぱり大河は目立つよな)
 少し後から見ているとわかるのだが、すれ違う男の半分ぐらいは大河に目を留めて、さらにその半分ぐらいはそのまま見蕩れている。
 慣れに加えて日々の言動からつい忘れがちになるが、なにしろ大河は人形かお姫様かという美貌の持ち主なのだ。
 対して竜児はどうかというと、大河を見てぽやんとした顔をしていた男が突然両目を見開き、そそくさと視線を逸らすことから推して知るべし。
(……俺と大河って、他の人にどう見られてるんだろうな?)
 片や美少女、片や凶眼。取り合わせのミスマッチといえばこれほどのものはそう無いだろう。
(兄妹……ってことは無いよな、特徴違いすぎるし。うーん……お嬢様にこき使われるチンピラヤクザ、とか……)
 ふわふわと揺れるフリルと長い髪を眺めながら、竜児はぼんやりと考える。
(それとも……ひょっとして…………恋人同士とか、か?)
 と、再び大河が振り返り、
「ちょっと、なにグズグズしてるのよこの駄犬!いつまでご主人様を待たせるつもり!?」
「……それはねえか」
「はぁ?」
「いや、こっちの話だ」
「何よ、気になるわね」
「何でもねえって」

213 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/29(金) 11:04:14 ID:CyM06+FjO
GJ!

でも竜児と大河って恋人通り越して婚約者になるよなぁ。

214 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/29(金) 15:25:09 ID:gEiodOiii
電車移動が多いので、iPhoneでちまちまと入力しています。

215 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/29(金) 20:38:07 ID:wMdjAtYYO
4月にスピンオフ

216 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/29(金) 21:25:43 ID:c+WzUAozO
ネタかと思ったらガチじゃねーか!
アマアマな竜虎が見たいのぅ

誰か代理を頼まれてはくれんか?
じじの乗る新幹線が遅れててのぅ・・・携帯じゃ出来んのじゃ

217 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/29(金) 21:28:14 ID:4Wffh1GD0
>>216
今日は大変だったみたいだね新幹線

218 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/29(金) 22:45:53 ID:LQNDR9d7P
そんなリクエストにお答えしてP持ちの俺が甜菜

97 名前: ◆x6jzI2BeLw[sage] 投稿日:2010/01/29(金) 01:26:24 ID:???
>>95
いいですねえ、この感じ。
さり気なく幸せな感じが伝わって来ます。
乙でした。
早く規制解除されるといいですね。


などと言っている私が巻き込まれました。
こちらのお世話になります。
代理投稿歓迎です。

本スレ>>111の続きとなります。
コメント&感想などありがとうございます。
まとめ人様にタイトルを付けてもらいました。
いつもいつもありがとうございます。

では、以下行きます。

219 :しあわせの逢坂タイガー伝説2 ◇x6jzI2BeLw:2010/01/29(金) 22:47:02 ID:LQNDR9d7P
ただいまと外出から帰って来た泰子を交えて高須家で始まるいつもの晩餐。
居間のちゃぶ台の上で大きな土鍋がぐつぐつと音を立ててたくさんの湯気を産み出している。
「あち・・・はふはふ」
頬を大きく膨らませながら、ハムスターよろしく頬張っているのはもちろん大河だった。
「大河、やけどすんなよ」
竜児の注意など何処吹く風で、大河は鍋から小鉢に移したいい色に出汁の染み込んだお肉を次々にお腹へ収めて行く。
「ほら、肉ばっかりじゃなくて、野菜も食え」
竜児は大皿に用意しておいた追加用の白菜を鍋に補充しながら、しんなりといい食べ頃になったえのきや野菜を大河の小鉢へ送り込む。
「野菜は後回し、今はお肉の時間よ」
そう言いながらも大河は竜児が小鉢へ入れてくれた野菜に箸をつけ、平らげる。
「竜児、おかわり」
空になった茶碗を竜児へ突き出す大河。
「おう」
竜児は大河から茶碗を受け取り、しゃもじで山盛りにご飯をよそってやる。
炊き立てのご飯で満室状態だった高須家の炊飯器に空き室が目立ち始め、竜児が操るしゃもじが炊飯釜の底をこすった。
「ほらよ、何杯目だ?」
茶碗を大河へ渡してやりながら、竜児は感嘆するように言う。
「まだ、四杯目よ」
まだ、まだいけると大河の食の進み具合は絶好調だった。
「ほどほどにしとけよ、また、いつかみたいにお腹が痛くなってもしらねえからな」
大丈夫、もうあんなドジはしないからと大河は涼しい顔。
以前、食べ過ぎで救急病院へ駆け込んでひどい目に大河はあっているのだ。
だから、今日はおやつも間食もしてないし、このくらいぜんぜん平気と咀嚼の合い間にしゃべりまくる。

220 :しあわせの逢坂タイガー伝説2 ◇x6jzI2BeLw:2010/01/29(金) 22:49:57 ID:LQNDR9d7P
「飲み込んでから、話せ」
口中にご飯を含みながら大河が話すせいで、大河の口元からご飯粒がひと粒、竜児へ向かって飛び出す。
「たく、もったいない」
竜児は大河から飛んで来て自分の服の袖口に付いたご飯粒を指先でつまむと、そのまま口に含んだ。
「あれ?」
土鍋の中を掻き回していた大河が首を傾げる。
「どうした?」
「竜児、もうお肉無い」
「ねえって・・・あんだけあったんだぞ」
「だって、ほら」
大河は土鍋の中のお肉指定席付近を箸で引っ掻き回す。
大河の箸に掛かったのはしらたきだけだった。
「おまえ、ひとりでどんだけ肉食ってるんだ」
呆れる様な竜児の声。
「いいじゃない・・・好きなんだし」
無いんだもうお肉と・・・名残惜しそうに大河は未練たらしく土鍋の中を探し回る。
そして見つけたわずかな肉の欠片を大事そうに口へ運ぶ大河。
「はい、大河ちゃん」
そんな大河を見ていた泰子が自分用に取って置いた肉を大河へ差し出す。
「や、やっちゃん、いいよ・・・それはやっちゃんが食べて」
受け取れないと大河は遠慮する。
「好きなんでしょ、お肉」
遠慮しなくていいよ、と泰子に微笑まれ、大河ははにかむ様に肉を受け取った。
「ありがと、やっちゃん」
「それでこそ大河ちゃんだよ」
受け取ってもらえて泰子も嬉しそうになる。
その一連の動作を見ていた竜児はやれやれと言う感じで席を立ち、冷蔵庫から追加の肉を持って来る。
「何よ、まだあるんじゃない、けちけちしないで早く出しなさいよ」
泰子へ向けていた笑顔とはうって変わり、竜児にはこのドケチ犬と言わんばかりの顔を見せる大河。
「言っとくがな、これは明日の弁当用だ」
「じゃあ、食べちゃったら・・・」
「当然、弁当は肉抜きだ」
竜児にそう言われ大河は思案顔になる。
眉間にしわを寄せ、重大な決断を下すかの如くおもむろに口を開く。
「耐え難きを耐え・・・ここは引くわ。竜児!」
「おう」
「仕舞って、お肉」
苦渋の決断だと両手をぐっと握り締め、大河は耐え忍ぶ有様を見せる。
「いいのか?」
竜児はこれ見よがしに大河の前にタッパーに入った肉をちらつかせる。
目線がチラチラとお肉を追い駆け、大河は思わず身を乗り出す。
「ほらよ」
竜児は苦笑しつつ、肉を一切れ土鍋に入れた。
「いいの?」
「ああ、弁当の肉が少し減るけどな」
その辺は上手く工夫してやるさと竜児は請け負う。
「・・・やっぱり、おいしい」
ほくほく顔で最後の一切れとなったお肉をおいしそうに頬張る大河を見ながら、竜児は何とも言えない幸福感を味わっていた。

221 :しあわせの逢坂タイガー伝説2 ◇x6jzI2BeLw:2010/01/29(金) 22:51:29 ID:LQNDR9d7P
「そうだ、竜ちゃん」
流しで食器を洗い終え、手を拭きながら居間へ戻って来た竜児へ向かって泰子が言い出す。
「何だよ?」
「修理だけど、明後日になるって」
「マジかよ」
困った様な声を出す竜児。
「修理って?」
食後の満腹感に浸り、例の如く寝転がっていた大河が起き上がり、口を挟む。
「ああ、家の風呂釜が壊れちまってさ」
風呂に入れないと竜児は言う。
「じゃあ、私の家に来たら」
我が家のお風呂を開放しましょうと大河は言う。
「いいのかよ?」
「うん、全然平気」
「・・・だってさ、泰子。どうする?」
「う〜ん。大河ちゃんのお家の借りてもいいんだけど・・・そうだ」
あごに指先をあて考えていた泰子はいいアイディアがひらめいたと竜児と大河に告げた。

・・・銭湯、行かない?




古きよき時代の建物と言う言葉がピッタリ来る銭湯。
「しかし、よく残ってたよな」
竜児は建物を見上げ感心する。
「これが、銭湯?」
大河は見慣れぬ建物に興味津々だった。
「そっか銭湯、初めてだっけか?」
「うん」
うなづく大河に当たり前かと竜児は思う。
普段があれだからあんまり気にもしないが、出るところへ出ればいいとこのお嬢様だもんな、大河は・・・。
「竜児は来たことあるの?」
「おう、子供の頃にな」

当然の事ながら竜児は男湯の暖簾を潜り、大河と泰子は女湯の暖簾を潜る。
「あんまり、はしゃいで泰子に迷惑掛けんなよ」
別れ際に竜児は注意を怠らない。
何せ、近所の銭湯へ行くだけだと言うのに一泊旅行かと言う位、大荷物を持って来た大河。
ついさっき、一緒に行くかと誘われて大河はふたつ返事をすると、脱兎の如く自宅のマンションに戻り、支度を整えて帰って来たのだ。
「着替えとタオルがあればいいんだよ・・・なんなんだこの荷物は?」
お風呂に浮かべるひよこのおもちゃでも入ってるんじゃないだろうなと言った竜児は大河に荷物が入ったバッグで叩かれたのだが、大河は上機嫌のままだった。
銭湯なんて初めて・・・と高いテンションのままやって来てしまったと言う次第なのだ。

222 :しあわせの逢坂タイガー伝説2 ◇x6jzI2BeLw:2010/01/29(金) 22:52:42 ID:LQNDR9d7P
「大丈夫だって・・・きゃん!」
そう調子よく返事した大河は言い終えるや否や入り口の段差につまずいて派手にこける。
「失敗、失敗」
それでもすぐに立ち上がり、照れくさそうに番台の向こうに消える大河を見送り、ホントに大丈夫かよと竜児は心配になる。
さすがの竜児も女湯までは大河のドジをフォローしてやれないからだ。
なるようになるか・・・と竜児は諦めにも似た境地で脱衣所へ向かった。

中へ入り、大河はもの珍しく周囲を見渡す。
「ねえねえ、やっちゃん、どうするの?」
銭湯の作法を泰子に問う大河。
そんな大河に泰子は微笑むとあれこれ教え始めた。
「この籠に脱いだお洋服を入れるの・・・入れたらあの棚に置いて・・・」
うんうんと大河は頷く。
一通り説明を終えた泰子がブラウスのベルトに手を掛けるのを見て、大河も後に続く。
大河が長めの靴下を脱ぐのに手こずっている内に泰子はさっさと身軽な状態になっていた。
「・・・わっ!」
「どうしたの?大河ちゃん」
大河の視線は泰子の豊かなお胸に注がれていた。
「やん、大河ちゃんのエッチ」
大河の食い入るような視線に、ひょうきんに応じる泰子。
その昔、箸でつんつんしてしまったくらいあこがれる豊年満作な世界を目の当たりにして大河は目が点になる。
そして脱ぎ掛けていた自分のインナーのホックを外す手が止まる。
その下に隠れた飾りの無いありのままの自分があまりにもみすぼらしく感じてしまったからだ。
シュンとしてしまった大河の心の中を優しく包むように泰子が言う。
「きれいだと思うよ。大河ちゃんの」
思い掛けない泰子の言葉に大河のうつむいていた顔が持ち上がる。
「きれい?私のが?」
「そう・・・とっても・・・服を着ててもやっちゃんには何もかもお見通しだよ」
だから、安心してと付け加えられた泰子の声に後押しされて、大河は止めていた手を動かす。
小さな衣擦れの音と共に大河の女の子を象徴する小高い頂が外気にさらされる。
「・・・変じゃない?」
頬を薄いピンク色に染めながら大河が聞く。
「全然・・・思ってた以上にきれい・・・自信持っていいからね」
力強く言う泰子に大河は勇気付けられる。
「でも、ちっちゃい・・・」
自分の手のひらで覆い隠せてしまえそうなカップサイズ。
大河は両手でそれぞれのふくらみを押さえる。
「やっぱり・・・小さいよ」
泰子にきれいと言われて気を良くしたものの、大きさの不足をどうしても大河は感じてしまう。
「そうね・・・今はまだだけど・・・大河ちゃんのこと、本当に大事にしてくれる男の子が現れたら、きっと愛情を込めて育ててくれると思うの」
「・・・愛情込めて?」
「そう」
今、自分が押さえているふたつのふくらみ・・・いつか、自分以外の手が触れる時が来る。
自分はどんな顔でその時を迎えるんだろうと大河は思う。
それは遠い未来なのか、近い将来なのか、そして・・・誰が・・・。
そこまで思い至った大河の脳裏に浮かぶ竜児の顔。
なんでここに竜児がと思ったものの、もう止まらなかった。
あれこれ想像した大河は首から上が熱したニクロム線みたいに赤くなる。

223 :しあわせの逢坂タイガー伝説2 ◇x6jzI2BeLw:2010/01/29(金) 22:54:01 ID:LQNDR9d7P
「竜ちゃんにはもったいないくらいかも」
このひと言に大河が激しく反応する。
「な、なんでそこに・・・り、り、竜児があ・・・」
たった今、想像してたとも言えず、あわあわとうろたえる大河。
「あらあ、大河ちゃん、竜ちゃんのこと嫌い?」
悪戯めいて聞く泰子。
「・・・少なくとも、キライじゃない」
少し間を置いて大河は真面目に答えた。
「だったらいいこと教えてあげる」
「いい事?」
「そう・・・竜ちゃんはね・・・あんまりお胸の大きな娘は好みじゃないんだあ」
「何でやっちゃんがそんなこと知ってるの?」
「何でかなあ」
不思議そうな顔をする大河に笑ってはぐらかす泰子。
その昔、竜児が隠し持っていたHな本をこっそり見ちゃったからとは竜児の名誉のため伏せる泰子だった。



一通り髪も体も洗い終えて、カランの前から立ち上がった大河を泰子が呼び止める。
「何?やっちゃん」
「髪、やってあげる」
長いままじゃ、湯船に入れないでしょと泰子は言い、大河を再度座らせると手早く髪留めを使い大河の髪をアップにした。
「ありがとう、やっちゃん」
「どう致しまして。でも、大河ちゃんの髪、きれいね」
ほとんど枝毛も無くてうらやましいと泰子は大河の髪を誉める。
「全然、そんな風に思ってなかった・・・今日、竜児に言われるまで」
ぼさぼさになった髪を竜児が直してくれたと大河は打ち明ける。
「竜ちゃん、なんて言ったの?」
「やっちゃんとおんなじこと言った・・・きれいだって」
ちょっとは女心が理解出来るようになって来たのかしらねえと、泰子は息子の精神的な成長を嬉しく思った。

224 :しあわせの逢坂タイガー伝説2 ◇x6jzI2BeLw:2010/01/29(金) 22:55:07 ID:LQNDR9d7P
浴槽へ飛び込もうとした大河の足が止まる。
「どしたの?」
泰子の問いに大河は疑問を口にする。
「お風呂がふたつあるんだけど・・・」
同じ大きさの浴槽が仕切りを隔てただけでふたつ並んでいる。
どう違うのかと大河は言う。
この質問に泰子は右が熱いお風呂で左がぬるいお風呂だと簡潔に答えた。
「ふ〜ん」
そう言われて大河は浴槽の隅っこに温度計があるのに気がついた。
右は43度左は39度を示している。
「やっちゃんはぬるい方がいいかな・・・大河ちゃんもそうする?」
・・・ん、そうすると大河は言い掛けて既に熱めの浴槽に肩までどっぷり浸かったお婆さんと目が合う。
その目は「若いのお、お主」と言っているように大河に見えた。
「熱いのにする」
意地っ張り大河の面目躍如なのだが、泰子が心配そうに言う。
「大丈夫?熱いわよ」
「平気だって」
家でも熱いのに入っていると経験者の余裕をかまし、慣れた素振りで浴槽へ足を入れる大河。
つま先から伝わる想像以上の熱気が大河のこめかみをひくつかせる。
「こ、これくらい・・・全然・・・ぬ、ぬるいくらい」
どうにか両足を浴槽に入れたものの、そこから先は恐る恐ると言った感じで大河は体を湯に沈めて行く。
体と湯が触れる面積が増えるたび、あまりの熱さに大河は身をよじる。
「へ、平気よ・・・何よ、これくらい・・・何だっての・・・えい!!」
最後は掛け声と共に一気に全身をお湯に浸した大河。
「ぬるいわ・・・ふへへ」
・・・と、勝ち誇った様子で余裕のあるところを見せて居られたのは1分に満たなかった。
「・・・釜茹での刑・・・げ、ん、か・・・い・・・」
額に大粒の汗を浮かべ、真っ赤な顔をしてすっかり茹で上がった大河が浴槽を飛び出す。
そしてそのまま片足を浴槽の縁に引っ掛け、見事おでこから床のタイルにダイビング。
「きゃあ、大河ちゃん!!」
泰子の悲鳴を耳に大河は己の浅はかさを呪った。
・・・つまんない意地は張るもんじゃないわ。


天井近くにある男湯と女湯の境の開口部から聞こえて来る喧騒に混じって聞き慣れた声の悲鳴。
湯船で寛いでいた竜児は頭に載せたタオルを取り落としそうになる。
・・・何、やってんだ、あいつら。
続いて聞こえる声に竜児は思わず湯船の中で立ち上がり、大声を出す。
「たいが〜!、大丈夫かあ!!」
・・・りゅうちゃああん・・・たいがちゃああんが・・・ころんだああ・・・
泰子の声が反響して聞こえる。
あれだけ言ったのに・・・ドジめ・・・・。
竜児は湯船の中で頭を抱えた。

225 :しあわせの逢坂タイガー伝説2 ◇x6jzI2BeLw:2010/01/29(金) 22:56:38 ID:LQNDR9d7P
「お待たせ」
銭湯の外へ出た大河は待ちくたびれた様子で立っていた竜児に声を掛ける。
「遅いぞ・・・いつまで入ってるんだよ」
「だって・・・仕方ないじゃない。いろいろあったんだから」
言い難そうに大河は竜児に言う。
「まったく・・・怪我とかしなかったよな」
仕方ないと言う口調に心配さをにじませて竜児は大河を気遣う。
「おでこ、ぶつけた」
「どれ、見せてみろ」
そう言うと竜児は大河の前髪をかき分けおでこを顕にする。
少し赤くなった痕が残る大河の白い額。
「もう少し気をつけろ、後に残ったらしゃれにならねえ」
ぶっきらぼうの中にも竜児の真剣な真情が読み取れて大河はただ「うん」とだけ答えた。
少し遅れて泰子が銭湯から出て来たのを確認すると竜児は帰宅を宣言する。


「持ってやるよ」
半分怪我人なんだからと竜児は大河のバッグを奪い取る。
触れた竜児の手の冷たさに大河ははっとする。
「竜児・・・」
「何だよ?」
「ずいぶん・・・待った?」
「ああ、15分くらいな」
「え〜、竜ちゃん、そんなに待ってたの?外じゃなくて中で待ってれば良かったのに」
「中で待ってたら、ふたりとも出て来たのが分からねえだろ」
泰子の声に竜児は大河と泰子を待たせたくなかったと言った。
「・・・ごめんね」
「何で大河が謝るんだ」
「私が・・・ドジしちゃったの・・・お湯に上せて倒れた私をやっちゃんが介抱してくれたから」
だから、出るのが遅くなったと大河は竜児に詫びた。
「いいんだ」
気にすることじゃないと竜児は空いた右手で大河の頭の天辺を軽くポンと叩いた。
「・・・竜児」
大河は竜児を見上げ、申し訳ない気持ちが込み上げて来るのを抑えられない。
「・・・手袋」
そう言うと大河は両手でたった今、頭を叩いた竜児の手を包み込む。
「ちょっとは暖かいでしょ?」
「ああ」
大河がしてくれた人肌の手袋は竜児にとって心地よさ満点だった。
「良かった」
そう微笑んだ大河だったが、ふとさっきのことを思い出し、竜児の手を包む指先に神経が集中してしまう。
・・・もしかしたら、この手が・・・私の・・・。
大河は顔が火照るのを止められなかった。
「・・・何だよ大河。上せたのまだ引いてないのか?」
赤ら顔の大河を見て竜児は言う。
「・・・違うわよ」
大河は竜児から顔を背けるようにして小声で聞こえないように付け加えた。
・・・上せてるのはお風呂じゃなくて、竜児、あんたによ・・・・・・。

226 :しあわせの逢坂タイガー伝説2 ◇x6jzI2BeLw:2010/01/29(金) 23:06:40 ID:LQNDR9d7P
105 名前: ◆x6jzI2BeLw[sage] 投稿日:2010/01/29(金) 01:43:35 ID:???
以上です。

----------------
ほんのり桜色(茹でタコ?)になった大河を見たいと思った冬の夜。
アニメ本スレによるとスピンオフ3巻が四月発売だそうで、久々に本家分も補充できそうです。

227 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/29(金) 23:37:17 ID:pkgjsuKO0
お二方ともGJです!代理の人も乙!

>>212
落ち着いた大河はまたモテはじめるんだろうなぁ

>>213
婚約済みの恋人期間…最高じゃないか
スピンオフで見られるのか…

228 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/30(土) 02:26:36 ID:Zh36VGn40
GJ&お疲れー
大河のもふもふヘアーをもふる竜児を想像しながらゆっくり休んでくれ

229 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/31(日) 08:17:59 ID:lwehwxmb0
「ねえ竜児、知ってる?今日は愛妻の日なんだって」
「なんだそりゃ?」
「1・31の最初の1をIに見たてて、アイ・サ・イ……で愛妻」
「おう、なるほど」
「だからね、竜児……今日は日曜だし、一日たっぷり愛してくれるわよね?」
「おう、まかせとけ」

ギシギシアンアン

230 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/31(日) 09:44:40 ID:vU2QKqRs0
朝起きたら。

虎が一頭勝手に台所に入り込んで炊飯器を睨みつけていた。おう、珍しく早いな、と
声をかけても聞こえないのか知らんぷり。ひたすら、炊飯器ごと食ってやろうと言う目で
睨み付けていた。

炊飯器が壊れていた。

当たり前の発想なら、1.炊飯器が壊れる。2.逢坂大河が朝飯を食い損ねることに腹を立てて
睨み付ける。という、順番だろう。だが、どういう訳か高須竜児は原因と結果が逆かもしれない
と思った。虎が睨み付けたら炊飯器がびびって壊れた。科学的にはあり得ないが、逢坂大河は
そもそもあり得ないような奴だ。

なぜ早起きして高須家まで来ていたのか、大河は何も言わなかった。



231 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/31(日) 16:01:37 ID:+1dZCJXo0
SF !?

232 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/31(日) 16:52:19 ID:vU2QKqRs0
いや、単に思いついただけのネタ。

「そんなあほな。でも大河だし」って、竜児が首をひねってるだけ。

233 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/31(日) 23:48:04 ID:7jk2lyKE0
ギシアンが足りない

234 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/01(月) 04:56:31 ID:zzmg1iAx0
アニメ・原作が終了して大体1年か…。時間が経つのは早いなぁ。
あの頃は、毎週放送を見るのが楽しみで辛くて仕方なかったな。

235 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/01(月) 18:20:04 ID:ii4vMmlU0
>>230

大河かわええ
朝飯つくろうとしたんだろうな

236 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/01(月) 18:32:40 ID:uCEtjfZV0
もっとギシアンしてもいいのよ

237 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/01(月) 22:18:07 ID:kKkedTB00
TouchDiamond使ってるんだが、メール受信画面が封筒のデザインしてるのよ。
で、メールボックスの名前が封筒裏に入るんだけど・・・。

http://u3.getuploader.com/fileup/download/14/20100130093314.jpg

マジゴメンw

238 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/01(月) 22:29:02 ID:/UPAXdUu0
>>237
ラブラブレターww
(もしも迷惑だったらこのまま捨ててください)
ってあったら完璧だw

239 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/01(月) 22:51:28 ID:yaVft/gR0
4月にスピンオフだと・・・!うわさを聞きつけてこのスレにもひさしぶりにきてみた


東京は雪。あの冬からもう1年。
・・・オラなんか書けそうな気がしてきたぞ

240 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/01(月) 23:18:49 ID:IXIjesRT0
でもこれが最後なんだよね
竜虎メインの書き下ろしあるといいなあ…

241 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/02(火) 00:46:04 ID:ZbNomRUJ0
おう、俺もTouchDiamondだ。

夜道に気を付けろ
 2-C 高須

もできるな。

242 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/02(火) 02:34:15 ID:+N0VNMQD0
ギシアンが足りない!

243 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2010/02/02(火) 05:39:43 ID:KzQp0vyH0
お題 「開ける」「耳鼻科」「明日」



「竜児」
 突然呼ばれて横を見ると、さっきまで寝転んでいたはずの大河が起き上がり、目を閉じて唇を突き出して。
 何で急に?と思わないではないが、可愛い恋人のおねだりを無下にするほど竜児も野暮ではなく。
 とりあえず見ていたプリントの事は頭の片隅に追いやって、大河の頬に手を添えて。


「なあ大河、急にキスねだるなんてどうしたんだ?」
 すっかり甘えん坊モードで身体を預けてくる大河の髪を撫でながら尋ねる竜児に、大河はきょとんとした顔で、
「なによ、竜児が誘ったんじゃないの」
「……はあ?」
 直前の記憶を探るが、そんな事実はどこにも無い。
「キスするかって、言ったじゃない」
 もう一度よく考えて……
「……大河、明日にでも耳鼻科に行ってこい。それとも今から耳掻きのほうがいいか?」
「何よそれは」
「俺は『寄付にするか』って言ったんだよ」
 言いながら竜児は、卓袱台の上のプリント――町内会チャリティバザー協力のお願い――を大河に見せる。
「泰子は店を開けるから無理だし、俺と大河だけじゃバザーに出店の手続きとか準備とかできねえだろ。だから寄付で協力するしかねえかって」
「……え?え?それじゃ、私が聞いたのは……?」
「だから、聞き間違いだろ」
 竜児の言葉に、桜色だった大河の頬がみるみる真っ赤に染まる。
「ん……」
「ん?」
「……んにゃあぁぁぁっ!」
 ――手乗りタイガーモード、発動――
「恥ずかしいからって暴れるんじゃねえぇぇぇっ!」

244 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/02(火) 18:11:34 ID:N/fDNq450
ありそうな光景だ

悶えた・・・

245 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/02(火) 19:10:17 ID:nczRXc950
>>243
もうね、竜虎らし過ぎて、萌え死んでしまいそうですよ。

246 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/03(水) 23:01:51 ID:RjNaXK+K0
もだえました。いいなあ。

最近SofTalkの声が隣の部屋から絶えず聞こえてきて眠れないんだす。
誰か隣人に大河ぶつけてくれませんか。
小ネタを投下するよ。
ネットに書き込むの自体初めてだから間違ってたらみんなでサンドバックばりにぼこぼこにしてね。ほぼ設定オリキャラがでるよ。本編と矛盾してたらごめんね。いやな人はごめんなさいスル―してください。
話自体は家に帰った時父ちゃんのバスタオルに「父兼猫用」って書いてあるのを見ておもいついたよ。哀れ父。


247 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/03(水) 23:10:39 ID:RjNaXK+K0
土砂降りの雨の中、男は歩いていた。


龍のブルース

まるで地獄から這い出た悪鬼のような顔で、男は天を睨みつけた。
別にこんな土砂降りをふらせた神様を呪い殺そうと思っているわけではない。
真冬の冷たい雨に顔をしかめただけだ。
その顔が恐ろしいのは生まれついて鋭すぎる三白眼のためだろう。…主に。
そんな顔を見て集団下校をしていた子どもたちは泣きだし、買い物帰りの主婦は傘に顔を隠す。
道行く不良たちも息をのんで道を譲る。
そんな周囲の反応も男は気にしなかった。
いつものことだからである。しかし男はサングラスをかけ鋭すぎる目を隠した。
「ガキに喚かれるのは面倒だな…」とでも思ったのかもしれない。
いや十分怖いけど。かけても。
 
雨の降るなか商店街を別に急ぐでもなく歩いてると、たったったと可愛らしい足音が聞こえ…
「ぎゃあっ!!」
「おうっ」
背中に突っ込んできた。後ろを見るが誰もいない。
不思議に思い右、左を見まわしついでに上を見上げてみるがやはり誰もいない。すると
「どこ見て歩いてんのよこのヴォケっ!!」
凄まじい声が聞こえた。下を見るとまるで人形のように華奢で小さな女が怒鳴っていた。
 雨の中傘もささずには走ってきたのかずぶ濡れの服に、水の滴る長く美しい髪。綺麗なまつ毛にも水滴が付いている。
しかしその下の目には、可愛らしい見た目とは不釣り合いな怒りが浮かんでいる。驚いた。
別にビビったのではなく自分を恐れるどころか怒りをあらわにするものがいたことに。男は、ふと懐かしさを感じた。
…それにしてもいったい何なのだろうこいつは。見たところ小学生のように見えるし周りに親が付いている雰囲気もない。
仕方ねぇな…自分のガキの面倒もみれねぇのか。
「おい、天気も悪いし寒い。暗くなる前に小学生のガキはかえってアニメでも見てろ」
「な、なん…だとおおおおっ!?」
そのチビはどこからともなく木刀を取り出しいきなり振り回してくる。…どこの殺苦挫だおまえは。
「ひ、人にぶつかっといてしかもこのスレンダー美人に向って小学生!?あんたみたいなやつはモ、モル、モグル送りにしてやるわっ」
人にぶつかってきたのはお前だし、スレンダーというより平坦なだけだしついでにモルグだろ。
そこまで言えたら全部言えよ。
と思いながら木刀を避けていてが一向に収まる気配がない。
むしろ当たらないことに腹を立ててヒートアップしている感さえある。
そんな二人を見て通行人が喧嘩か!?と恐れるような表情をする。
とうとう壁際に追い詰められサングラスが木刀にはじかれ飛んでいった時、
「仕方ねぇな、このクソガキが」
「なっ!?」
振り下ろされた木刀を片手で受け止め、それを膝でへし折りついでに川に放り投げた。
そして、眉間に力を入れ最大出力の眼光で睨みつけた。
チビはしばらく茫然としていたが、俺の眼光に危険を感じたのか悔しそうにこちらを睨みながら逃げて行った。
「ばかばかばああああああああああかっしねっ」
と捨て台詞を残して。泣きださなかっただけでも大したもんだ。並のヤクザじゃ相手にもならんだろう。


248 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/03(水) 23:15:18 ID:RjNaXK+K0
しばらくして自分がずぶ濡れになっているのに気が付き、住処に帰ろうと足を踏み出したとき
「…」
マフラーが落ちているのに気がついた。
さっきの奴が首に巻いていたのものだ。暴れていたときに落したのだろう。
しっかりした作りだが大切に使われているのか、擦り切れたようなそのマフラーには T・A という文字と小さなトラの刺繍がしてあった。



住処(すみか)につくと買ってきたビールをあおり、煙草に火をつけ
…なぜか持って帰ってきてしまったマフラーを見て悩んだ。
あの後放っておいてもよかったのだがどうにも気にかかり、目の前の店の店員に見かけたら渡すように頼もうと「おい」と声をかけたところ失神されてしまう始末。
仕方がないので持って帰ってきたのだ。別に明日はやることもないのでまたあそこで会うまで待とうかと一瞬思い
「…馬鹿バカしぃ。」
自分らしくもない考えに首を振る。以前ならこんな他人のことなど見向きもしなかっただろう。
人を騙し、傷つけ、壊して生きてきたのだから。年をとって弱くなったのだろう。
上尾龍杞そう思った。



夢を見た。とても懐かしい女の夢だった。子どもっぽいというより幼い感じの女で、強面の自分を恐れずに傍によってきた。

「たつきちゃん」
「ちゃんでよぶんじゃねえ」
「じゃあたっちゃん」
「…ちゃんじゃねえかよ。そしてついてくんな。」
「へへ〜一生ついてくも―ん」
…なんなんだよこいつは。
「なんでだよ」
「好きに…なっちゃったから」
驚いて後ろにいる女を振り返る。きっと凄まじい顔をしていたのだろう、通行人が腰を抜かしてへたり込んでしまった。
しかし女はこわがった風もなく言う。
「だって龍っちゃんは不良から助けてくれたでしょう?私のヒーローだよ。」
「俺は善人じゃねえ。あのクソガキどもが気に入らなかっただけだ。こんな気まぐれに惚れるようじゃお前ひどい目にあうぞ」
「わーい心配してくれるの?善人じゃないなら龍っちゃんはダークヒーローだね!」
「なんとでもいってろ…」
ぼそぼそといつもの声で男は答えた。頭は良くないし、ドジで(893でさえ)ハラハラするような危なっかしい奴。
でも近くにいてほっとするような優しさをもっていて、何より芯が強かった。いつか結婚してずっと守ってやってもいい。そんな風にも思っていた。目が覚めた後、
「俺が守られてたのかもしれないな。」
女を失ってから幾度となく思ったことをぽつりとつぶやいた。そういえば昨日のガキも相当ドジだった。
性格や言動は似ても似つかなかったが、どこかあいつと同じだとおもった。あいつの夢を見てしまうほどに。だからマフラーを放っておけなかったのかも知れない。
飯買ってパチンコにでも行くか。金はまだある。組には捨てられたが影調布はそのままだった。
このまえ長いツトメを終え出所したばかりのときに押しつけられるようにもらった手切れ金。
まともな仕事などしたことがなかったし、する気もない。金が尽きたらそこで野たれ死ぬんだろう。
――安いビール瓶の転がる汚い床 煙草の匂いがするよどんだ空気 そして流れる憂鬱な洋楽。



249 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/03(水) 23:18:40 ID:RjNaXK+K0
「ぁああああぁあああっもう!!」
 逢阪大河は焦っていた。
間近に迫ったセンター試験にではない。
前生徒会長ノートのおかげで正直言って自分も竜児も(ついでに2−Cの仲良しメンバーも)大学入試はもう何もしなくても大丈夫そうだった。
もちろん竜児は何もしないと小姑みたいにねちねち言ってくるし、万が一でも落ちて「やっと」恋人になれた竜児と離れ離れにはなりたくないので復習はやっているが、それでも他の受験生と比べれば竜児たちカップルは気ままなものだ。
そう、焦っている理由はそんなことではないのだ。またやってしまった。
(あたしって本っ当ドジ!いつもいつもいっっっつもそう!ほんとに竜児がいないとなんもできないのかしら
…自立なんて夢のまた夢…。えへへ…でも竜児はずっと傍にいてくれるって言うからなんも心配ないんだけど…へへへへへぇ♪ 
じゃねーっつーの!せっかく竜児にもらったマフラーが!せっかく!竜児に!もらった!マフラーが!大切なことなので二回言いました! 
あああなに考えてんだあたしは!おちつけ!もちつけおいどん!)
焦ったりにやけたり見ていておもろいほど取り乱してしまっている。
(そうだおちついて竜児に気づかれるまえにみつければ…)
「そういえば大河お前マフラーは…」
「べべっべえ別になくしてなんかいないから!学校に忘れてきただけだし慌てててもいないんだからねっ勘違い竹刀で米っ!!」
どっから出てきてんのよ!びっくりしちゃったじゃない!…あ、そっか竜児と一緒にテレビみてたんだっけ、と思いだす。テレビにはメカ物のアニメが映っている。
「お、おう。そうか。忘れてきただけか。 (もうすぐ新しいマフラーができるぞって言おうとしただけなんだが…)」
あまりの剣幕に慄きつつ竜児が言った。
「じゃ、じゃあ今日暇だし散歩にいてきまーーーーす!」
言うや否や大河は高須家を飛び出していき、なんなんだよと呟く竜児の声と
「げっこうちょうでおじゃる!!」
というテレビの音だけが残る。

母と新しい父、そして弟の居る家に帰るとマフラーを探しに行く準備をする。
「といってもそんなに持ってく物ないな。いったいどこで落したんだろう。多分あの商店街のあたりだと思うんだけど…あ」
思い出した。昨日の学校からの帰り道、竜児は用事があるというから一人で帰ってたら、急に雨が降ってきた。
もちろん傘の用意などしてないから走ってたら、商店街でアイツにぶつかったのだ。THE・ヤクザとの戦い、そして敗北。マフラーの紛失に動転しすぎてあんな大イベントを忘れていたのだ。
…アイツのあの眼は本物の眼だった。威嚇する眼。威圧する眼。自分の強さを知っていてそれでいて決して油断しない眼。
「きっとあそこで落したんだ。でもアイツがまたいるかもしれない…!なら」
部屋の隅のロッカー、その南京錠をはずし一本の木刀をとりだした。明らかに昨日のものとは違う禍々しい雰囲気を放つそれは、使い込んだかのように黒ずんでいた。
なにやら紅いものが付いている気がしたが気のせいだろう。
「ふふ、昨日のようにはいかない。」
といささか危ない笑みを浮かべる大河。その手にもつ木刀の柄には「洞爺湖」ときざまれている。


250 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/03(水) 23:23:14 ID:d/KqVsBP0
もっと!

251 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/03(水) 23:23:51 ID:RjNaXK+K0
夕焼けの中、流れが止まりよどんで腐ってしまった水場のような陰鬱さを放ち、男はパチンコ屋に向かっていた。
本当はもっと住処の近くにあるのだが、男の意思に反して足は昨日の商店街付近のパチンコ屋へと進む。さらにご丁寧に手にはマフラーまで持って。

(会えるわけないだろう。馬鹿ばかしぃ。たとえ返せたとしてもそれがなんだというんだ。馬鹿ばかしぃ。今更こんなことをして普通に戻りたいとでも思ってるのか?このヤクザが?…馬鹿ばかしぃ。)
たくさんの「馬鹿ばかしぃ」が頭の中を回る。それでも大切にされているように見えるそれを見ると、足は勝手に昨日の場所へと向かってしまう。
住処に帰りたくなかったのかも知れない。家ではない。住処なのだ。
何もない誰もいない、生命活動を続けるためにあるだけの空間。生活することと「生きる」ことは違う。
ずっと昔、堅気ではない男に唯一説教を垂れた男が言った言葉だ。

すべて失った今、その意味がわかった気がした。あのからっぽな空間では生きることなどできやしない。
昔男が手に入れるはずだった、そしてもう手に入らない家はもっと温かく賑やかなものだったんだろう。
そんなことを考えていると昨日の場所に差し掛かった。
そこには…



あのマフラーは本当に大切なもの。竜児が恋人になってから大河にはじめてプレゼントしてくれた思い出の。
金がかからないもので済ましちまって悪いな、と竜児は言ったけどそんなの全く気にならなかった。家族として認めてもらった気がした。
母や新しい父の優しさにも気付き始めるきっかけ、母たちと住む場所を…なんていうんだろう、住処じゃなくて …家?そんな風に感じるきっかけをくれた。
それが…
「ない…ないない…ないないないいいいいいいいいいいいいっ!!」
人目も気にせず大河が叫ぶ。昨日の雨で湿ったままの地面を服の汚れも気にせず探し回ったためあちこち泥だらけ、さらに野次馬まで集まり始めた。

あのマフラーが泥だらけになってるなんて考えたくなかった。でも、泥だらけになったマフラーが捨てられてしまっているとはもっと考えたくなかった。
きっと竜児は失くしたことを怒りはしない。そんなことは分かっている。悲しむあたしにに
「泣くなって。俺がまた新しく作ってやるから」
…そんな風にいって泣きやむまで抱きしめていてくれるのだろう。でもダメなのだ。あれだけは失いたくなかった。

あたしは、いっつも竜児に守られてばかりで竜児を守ることなんてできやしない。だからこそ竜児にもらったあのマフラ−ぐらいは大切にしよう、そう思っていたのに。
悲しみ苦しみ悔しさ情けなさ。いろんなものがごちゃまぜになったような感情に襲われ大河の大きな眼に涙が溢れそうになる。どこかで「泣いてる」「かわいそ〜〜う」なんて野次馬の声が聞こえてくる。
「うるさい、うるさい、うるさい!とっとと消えろ!」
そう言って木刀を振り回す。でも探し疲れてぼろぼろの体と心では、ちっとも迫力が出ない。
野次馬は一瞬ひるんだがすぐに元のようにざわめきだす。大切なマフラーも、焦る気持ちも、ついでに周りの野次馬さえどうにもならない。
大河は不甲斐なくて本気で泣きそうだった。ひとりぼっちの迷子の様にその名を呟く。

「うっうっ 竜児ぃ」


252 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/03(水) 23:26:09 ID:RjNaXK+K0
その時。

「…失せろ」

冥界の底から響くような声がした。誰もが振り返り、そして…振り返ったことを後悔した。
そこには鬼がいた。いやそれよりも恐ろしいかもしれない。なんせそれは眼の前に実存するのだから。長身で鍛え抜かれた体躯に服からのぞく傷、そして確かな悪意をもってギラツく …眼。

「…40秒で支度(にげだ)しな!」「3秒もいらないです。はい。」誰もが頭の中でそう思った。

…3秒後、どこかさびれた色合いの古い商店街を背景に、大河と男の二人だけが残った。昨日のヤクザが眼の前にいる。大河にはなぜヤクザがそんなことをしたのかわからなかった。
あの眼は竜児の眼とは違う、僅かに白髪の交じるオールバックと真っ黒の上下の服が余計にそんなことを思わせる。
男を思いっきり睨めつけ言う
「なによ」
「さあな」
「あんたも馬鹿にしに来たの!?今日の獲物は昨日の大量生産品とは違うの!覚悟しなさいよね!?」
涙を浮かべたまま虚勢を張る。ホントは疲れきってせっかくの洞爺湖も無駄そうだった。そんなのあたしが一番わかっている。
「なんとかいいなさいよ!!」
やけくそだった。もしかしたらひどい目にあうかもしれないが、それも馬鹿な自分への罰なのだろうとそんなふうに思った。でも、

「……ほらよ。」

クザは手を差し出しただけだった。そこには綺麗なままのマフラーがあった。大河の目が見開かれ、小さな唇がどうして、なんでと呟いているように見える。ぼそぼそと男は言う。
「大切なもんならなくすな。何があっても離すな。…一回なくしたら二度とは手に入んねぇんだよ。わかったかァ?チビクソガキ」
そして少しだけ表情を緩める。自分がなくしたからこそそんな言葉が出ちまったんだろう。ヤクザが何言ってんだか、と少し自嘲する。
眼の前の少女は震える手でマフラーを受け取った。汚れてしまわないようないよう、しかし全力で抱きしめ大声をあげて泣く。涙の温かさは変わっている。
その姿を見るだけで男は (…来てよかったかもな) 少しだけ思った。
男は懐から出した煙草に火をつけ、野次馬を追っ払うために外したサングラスをかけなおすと、そのまま背を向けパチンコにもいかず住処へ帰って行った。



253 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/03(水) 23:29:07 ID:RjNaXK+K0
我が家の大食漢…もとい大食少女のために早めに夕食(今日は高須特製カレー。もちろん一人分だけ甘口だ)を作っていると、そいつは帰ってきた。
…なぜか泣きはらしたように目を真っ赤にして。思わず駆け寄る。
「た、大河!?」
竜児、とぽつりと言いい、大河はまた泣き出しそうになる。しゃくりあげ、腫れぼったい眼にまた涙がたまっていく。
一体なにがあったのかは分からない、わからないが、こんな時男が女のためにできることは一つだけだ。

「ぐす、りゅ、りゅうじぃいい…はわっ!」

頭と背中に手を回し、壊れそうなほど小さくて華奢な体を引き寄せる。そして抱きしめる。体が震えているのがわかる。抱き寄せた大河も、…ちょっと照れくさくて自分も。
大河の小さな体から心臓の鼓動が伝わる。きっと今は言葉ではダメだ。嗚咽がとまり落ち着くまでどれくらいの時間が経っただろう、大河の頭を胸にうめたまま聞いてみる。

「なにがあったんだ、大河。」
「…マフラーが…なくしちゃったマフラーがあったの。もうびづがらないどおもっでだ。」

俺を見上げ鼻をぐすぐす言わせながらそんなことをいう。さっき抱きしめたせいか顔は真っ赤だ。あ、赤い顔で涙目で上目づかいは反側だろ…。落ち着け野性!頑張れ理性!
こんな時なのに愛しさが止まらず、もう一度ぎゅっと抱きしめた。うわ、鼻水服につけんじゃねぇ!!なんて大声で言ったのは、俺も顔が赤くなったのをごまかすため。
無意識にくっついていることはよくあるけど、意識して抱きしめるのはやっぱり気恥ずかしい。付き合ってても。

それからゆっくりと今まであったことを聞いた。傘を忘れて走ったこと、喧嘩でまけたこと、マフラーが見つからず焦ったこと、
…へんなヤクザが助けてくれたこと。まあ若干誇張してあったが。大河の木刀を片手で白刃取りするなんて地球人にできるはずがない。未来から来たスーパーサイヤ人並だ。

「で、野次馬を邪気眼でぶっ殺して返してくれたの。」
腕の中で甘えながら、俺のお姫様は言った。
「どんなヤクザだよそりゃ…。そうか、でももうこれはいらないな。」
もうほとんど完成している新しいマフラーを見て言う。去年、次のはどんな色がいいと聞くと大人っぽいのがいいと大河が言ったから、色はシックなグレー。
でもまだ前のを使うようだし、俺も泰子も去年のがまだしっかりしている。使えるものをつかわなくなるなんてMOTTAINAIからな。
「うん、このマフラーがいい。それより竜児、相談があるんだけど…」
すっかり落ち着いて、口いっぱいにプリン(慰め、不機嫌時用等汎用菓子型決戦兵器)をほおばった大河が言った。とんでもないことを。

「ヤクザにお礼ってどうしたらいい?」


254 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/03(水) 23:33:35 ID:RjNaXK+K0
それから少したったある日、世間さまはクリスマスシーズンで浮かれ、
イヴに備えイルミネーションに彩られた商店街の中、この前結局行き損ねたパチンコ屋に行くため昼間っからぶらぶらしていた。

「くそ。俺は一体なにしにここまで来たンだよ。」
パチンコ屋に行きたいのならもっと近くにあるのだが、昨日結局目的を果たせず帰ったため意地でも商店街のパチ屋に行こうと思う。
いや実際にはマフラーは渡せたので用件は済んだはずなのだが、そんなことのためにここまで来たとは認めたくなかった。

俺らしくもねぇ。

真昼間から街中を闊歩する眼付のやばいヤのつく人の存在に人々は恐れ戦き、モーゼの海割のように道をあける。
飯時の混雑も無縁である。睨みを利かせるまでもない。目当ての店を見つけ入ろうとした瞬間、

「そこのヤクザ、とまれええい!」

…無視して店内に入る。きっと俺のことじゃない。近くの別の奴だろう。
店の外で「おまえじゃ!」とか「無視スンナ!」とかいう声が聞こえるがきっとそいつも店内に入ったのだろう。騒ぐガキを店の外に残したままパチンコ屋に入るなんてどんな迷惑な奴なんだ。
あ。人のこといえねぇか。ヤクザだし。

三時間ほどして飯でも買おうと店の外に出ると、とんでもなく不機嫌な顔で店のガラスに寄りかかって座っている奴がいる。
薄々気づいていたがやっぱりこの間のチビだった。手には木刀が、標準装備なのだろうか。

「おまえ三時間もまってたのかよッ…」
あきれていう。うらみがましく睨まれるがかかわる気はない。また無視することにして歩き出す。
「あっ!まちなさいよっ!」
と慌てたような声がするがもちろん無視。歩き続ける。十分ほどして後ろを見ると、なんとまだ付いてきている。俺が後ろを見たのに気付いたのか、話しかけてきやがった。

「おいヤクザ」
なんて失礼極まりない奴だ。保護者の顔が見てみたい。
「ヤクザて呼ぶんじゃねえ」
「じゃあ名前教えてよ」
「いやだ。一億円。」
「持ってるわけないでしょ!ガキか!!」

たとえもらったって教えてやるつもりはない。俺みたいな奴の名前を知って、知り合いとでも思われたらロクなことがないからだ。
それに俺には厄介事がある。いつ死んでもおかしくないし、巻き込んで死なれでもしたら気分が悪い。まあ知ったこっちゃないんだがな…
「ねぇヤクザ。」
「結局ヤクザかよ、そしてついてくんな。」
「やだ。目的果たすまで一生ついていって迷惑掛けてやる。」

…なんなんだよこいつは。

「なんでだよ」
「この前の…お礼言ってないから。」

255 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/03(水) 23:40:04 ID:RjNaXK+K0
驚いて後ろにいるチビを振り返る。

きっと凄まじい顔をしていたのだろう、通行人は腰を抜かし、自転車は倒れ、原付はスリップし、車は正面衝突し、飛行機とUFOがニアミスを起こし墜落し、赤と黄色の縞模様を着た赤アフロが揚げ物屋の太った人形をバットで破壊して走って行った。
(いや最後のは俺のせいじゃない。)しかしチビはこわがった風もなく言う。

「マフラーのお礼をするまで帰らない。」
「おっさんは悪い人なんだよ?オジョウチャーン。悪人に見返りを求められて危ないこともわからんほど馬鹿なのか。」
「ばかでもいい。」
「勝手にしろ」

ため息をついて歩き出す。やはり付いてきているようだ。どの道ここじゃ話も出来ねえ。商店街を出るか。
 ヤクザとチビの珍妙な組み合わせの二つの影法師が、街はずれの道を行く。



しばらくして着いたのは、ぼろっちい神社だった。こんなところにあるなんて知らなかったし、聞いたこともない。竜児も知らないんじゃないだろうか。
正月でもないのに巫女さんがいて、組み合わせが不審なのかジロジロこっちを見ていたけどヤクザが一万円賽銭箱に放り投げたら
「ゆっくりしていってね」
と縁側みたいな場所に通された。現金なやつだ。それにしてもひらひらやリボンのついた変な巫女装束だった。
…かわいいけど。今度駄け…竜児に作ってもらおう。
ヤクザが「あれが最近の流行りなのか?」って聞いてきたけど知らないから何もいわなかった。
ここはヤクザが子供の時悪戯をしたら逃げてくる場所だったらしい。ここに来ればなぜか誰も追ってこないから、秘密基地みたいで気にいってたんだと。

いや聞いてないし。はあ、ちっとも本題に入れない。よし、ヤクザに向き合って言う。

「この前は…ありがと」
「よしわかったじゃあな。」

いや待てよ!!これで終わったら何のために竜児が頑張ったかんないじゃないのよ!
さっさと行こうとするそいつを半ば襲うように引き止めていたら、さっきの巫女さんが奥からお茶を運んできた。
…ここに住んでんのかしら。そしてゴミにつっかかっておもっきりこぼした。あーあと思っていたらなんとヤクザが掃除し始めた。なんてシュールな絵だ。
自分のとこはどーでもいいんだがこんなとこよごされんのは我慢ならんのだと。どんなヤクザだ。
ついでに奥に入って行ってキッチン(神社にあるか?フツ―)や居間の掃除までして、さらに背を向けておぼつかない手でお茶を入れ治そうとしていた巫女さんに
「いや、もう汚すなよ…」
と後ろから手を回し急須をとり、お茶まで入れてた。

…なんかどっかで見たことある気がする。こんなお節介をしょっちゅう見ている気がする。ついでに毎日お世話になってる気がする…。
 ちなみに巫女さんは顔が真っ赤になっていたが、風邪でも引いてんのか、と手をあてていた。…にぶい。この鈍さもみたことある気がする。そういえば顔も…見たことある?

「あんたどっかであったことある?」



256 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/03(水) 23:41:17 ID:rn2R/2bS0
C

257 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/03(水) 23:44:58 ID:RjNaXK+K0
「あんたどっかであったことある?」

顔を真っ赤にしたガキが大丈夫だからとどっかに言った後、なぜか呆れたような目でチビがそんなことを言ってきた。
「幸せにも俺は今までの人生の中でおまえのような珍竹林なチビにはあったことがない。」
「チビってゆーな!!」
「じゃあ名前教えろよ。」
「あんたが教えないならおしえない。」
「じゃあチビだ。」
「ちびってゆううううううなああああああ!!」
やれやれ、めんどくさい奴だ。なにやら小さいことがコンプレックスのようだ。じゃあなんて言えばいいんだよ、おっさん困っちゃうぜ、だってヤクザだもんとガラにもなく悩む。
そこでマフラーにしてあった刺繍を思い出した。チビな女とは思えないほどの力と、俊敏さと、獰猛さ。
…ぴったりじゃねえか。

「じゃあ…タイガーだ。」
「…!!」

タイガーが息をのんで驚く。もしかして本名だったのだろうか。んな訳ねーか。どんな名前の女だよ。っとそんなことより。
「礼ってのはなんなんだよ、さっさとしろよ寒いだろ。」
日が傾き、暗くなるにつれて急激に冷え込んできた。今夜は雨が降るらしい。
「ふっふーん。そんなあんたにちょうどいいもんよ!」
と得意そうにチ…タイガーは言い何やらバッグをごそごそとあさり出したかと思うと、

「じゃーん!!」

と細長いものを取り出した。マフラーだった。落ち着いたなグレーに、しっかりしたつくり。こいつが巻いているのとおそろいのものだ。
「貴様にこれをやろう!」
偉そうにタイガーが言う。俺みたいな下種には勿体なすぎる、上品なマフラー。なぜかとてもまぶしく見えた。
「…高かっただろ、それ。いくらしたんだよ。」
ガキの財布に負担をかけたものなんて気が重くて使えねえ、
金を払おうと財布を出すとちょっと拗ねたような顔をして
「これは気持ちだから、お金には代えられないの。それに手造りだしね。」
そんなことを。驚いて三白眼が極限まで鋭くなる。今なら人を殺せる。視線で。
「おまえの!?…まさかな」
「なによその反応。まあ、あってるけど。」
いよいよもってそんなものもらえない。
「このH・Yッてイニシャルは何なんだ。もらえねえよ」
「HENNA YAKUZAでHY。あんたの名前がわかんないから。」
「…それでも勿体なくてもらえな」
「うるさい!」
喚くとタイガーはマフラーを両手に持って広げ、背伸びをして俺の首に(しめあげるように)巻きつけ、笑って言った。
「ふん、まあまあね。似合うじゃない。」
二十年近く前の記憶が、フラッシュバックする。



「たっちゃんにあうううううう!!さすが手作りマフラー。やっちゃん頑張った甲斐あった〜!」
「うるせえよ。」
なんだかへたくそな糸の塊が首にまかれる。これがクリスマスプレゼントだなんて…冗談だろ?冗談だと言っておくれよ、ハニー。
「初めてつくったんだよぉ〜。それにクリスマスプレゼントはもう一ついいものあ・げ・る♪」
「…」
まさかこれもう一本とか言わないだろうな…いややりかねん。こいつと付き合って、いやこいつを俺の女にしてどれくらいになるだろう。
危険日や安全日など気にしなかったからひょっとしたらひょっとするかもしれないが、まあ二人食わせるぐらいのくらいの金は入る立場にいる。
こいつはもうすぐ高校1年…2年だったか?になるらしい。正直どっちでもいいが、こいつは進路がどうとかで悩んでいるようだ。
あんまり気にしていなかった。ガキができるかもしれないことも、こいつの進路も。
このときは。

258 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/04(木) 00:01:50 ID:RjNaXK+K0
それからいくらか時がたち、俺はやらかした。組長…オヤっさんの実子を殴り飛ばしたのだ。

その頃俺らの中で後継ぎのことが問題になってた。
けんかっ早いがとりあえず下に慕われているらしい俺と、
親友(いやろくでなし仲間だから悪友だろうか)の頭がよく人も動かせる男。

そして…オヤッさんのどら息子。

こいつは息子である自分が継ぐのが当たり前だと思っているらしく、気に入らなければ素人にも節操無く手を出す馬鹿だった。
オヤッさんの子だということで年寄り連中は何も言わないし、若いのもビビって縮こまる。

誰も何も言えずにいる中、あいつは…俺のダチは言った。そりゃもうぼろくそに。オヤッさんの目の前で、今までどんな愚かなことをしでかしてきたか。
自分は継がなくてもいいから、人を操れる、慕われるようになれと。はっきりと言い切った。
オヤッさんが渋い顔をしてドラ息子をたしなめ、出て行ったあとそいつは真っ赤な顔をして殺してやると喚いた。
殺すなんて言葉日常茶飯事、いくらなんでもそこまで馬鹿じゃねえだろうと俺たちは思っていたが…甘かった。
ダチが死んだ。次の日に。家族ともども血まみれになっていたらしい。殺されたんだよ。
誰がやったかなんてわかりきってた。俺はドラ息子を殺しに行った。なん発か殴ったところで取り巻きにやられたけどな。
そのときはこれからの立場なんて考えてもいなかった。
ただ煮えたぎる思いで頭が一杯で。
俺が一睨みするだけで縮こまるような玉無しに友が殺されたということで一杯で。
―泰子のことナンザ考えてもいなかったんだ。
その日は特に何も起こらなくて、ほっとして家に帰って、泰子のことを思い出した途端真っ青になった。
その時はもう泰子の腹の中にガキがいるのはわかってた。
まだ泰子のことは誰にも言ってないが、ばれればロクな事にはならないだろう。ガキも一緒に。

俺は泰子をガキを家族を 「家」を捨てることにした。

女を買い、泰子に会いに行った。
「あ〜たっちゃん会いにきてくれたの?やっちゃんうれしぃ〜ありがとう〜あ、赤ちゃんも喜んでるよ!
その人はお友達?はじめましてぇ〜やっちゃんだよ!」

無邪気に微笑む泰子。母になってから前よりももっと優しく強く、いとおしく感じるようになってた。
いつか海の見える場所に家を建てて、休みの日にはガキとキャッチボールでもしようなんて思ってた。
自分がヤクザだということも忘れてしまうほど幸せだったが、それももう叶わない。泰子の笑顔が痛々しかった。
「さよならだ、やすこ」
見せたことが無いほど顔をゆがめ、睨みつけて言う。
「俺はこの女にする。おまえじゃない。…ガキなんて邪魔なんだよ」
「え」
じゃあな、とだけ言い、呆然とする泰子を置いて俺は逃げた。

悲痛な叫びが聞こえてきたのはずいぶん離れてからだった。俺はからっぽになった。
知ってるか?人間は空っぽになっても動き続けるんだぜ。俺みたいにな。
買った女は抱かなかった。そいつは大体のことが分かっていたらしく、どこかに隠れると言っていた。
「すまねぇな。」そういってせめてもの金を渡すと「よくあること」と笑って言った。強い奴だった。

それから数日後、俺は捕まった。ダチを殺した罪で。
もちろんみんな誰がやったかなんてわかりきっていたが頭の実子を突き出すことなんてできず、
この前の喧嘩ごと俺に押しつけて処理した。

ドラ息子のバカはオヤッさんに半殺しにされ、跡はダチの弟がついだらしい。
 
泰子のことは何もわからなかった。俺は…もう女は抱かないと決めた。


259 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/04(木) 00:07:44 ID:reCPN9eE0
「どうしたの?」

ボーっとしていたらしい。気づくとタイガーと巫女さんが心配そうにのぞきこんでいた。

「なんでもねえよ。」

お前を見て泰子思い出したなんて言えるわけがないし、言ったところでわからない。それよりもう夜も遅い。サングラスをかけ立ち上がった。

「送っていきなさいよ。あんたの顔だったら誰も近づいてこないしね」

タイガーが言う。いつもだったら絶対無視するか脅して金でもとるが、そんな気分にならなかった。変なことを思い出したからだろう。

「おう、いいぞ。おっさんがエスコートしてやる。」
「驚いた。ヤクザもエスコートっていう言葉くらい知ってるのね。」

…東京湾に沈めたろか。またゆっくりしに来てねというガキの巫女さん(こころなしか頬が紅い、しもやけにでもなったんだろう)と別れ、タイガーと街を歩いた。
鮮やかなイルミネーションが夜の空気に広がり、幻想的な雰囲気を作り出す。

 タイガーはいろんなことを喋った。
 自分の家族がバラバラだったこと、高校までずっと楽しくない人生を送っていたこと。
 高校で友達と好きな人ができ、ラブレターを別の奴にカバンに入れたこと(笑ったら蹴られた)。
 そいつに恋の手伝いをしてもらったがホントはそいつが好きだと気付いたいこと(ビッチといったら殴られた)。
 今はそいつと付き合っていて、このマフラーはそいつが作ってくれたこと。
 几帳面なそいつもちょっとだらしない母親も底抜けに優しいということ。

 そんなことを聞いたせいか、首に巻いたマフラーからほんのり家族を感じた。俺がマフラ―をこいつの彼氏が作ったと聞いて驚いた時、タイガーは自分のことのように喜んでいた。
 深く愛しているんだな。そいつのこと。きっといい家族になれるだろう。
 そんなことを話していると大型デパートにの前にいた。…そう言えばもうすぐクリスマスだったな。

「ちょっと待ってろ」  

そう言い、店の中で十分ほど時間を使う。レジでアルバイトの少女が

「家族に粋なプレゼントですねぃ旦那。そんなに家族を泣かせたいか!おぬしも悪よのぅ〜」

と言ってきたときは声をあげて笑った。こわくないのかと聞いたら似たような人を知っていると言っていた。
案外俺のガキだったりしてな。外に出るとタイガーが

「何買ったの?教えなさいよ!」

期待のまなざしで見てきたのでエロ本だといった。蹴られた。
それからまた色々なことを話し、タイガーが家の近くまで来たと言った時、俺はさっき買った3つの箱を取り出した。
レジの子が櫛枝流ラッピングなんちゃらとかいってたそれは、きれいに包装されている。

「これが彼氏ので、こっちがそいつの母ちゃんので、…そしてこれがお前の。おっサンタからの早目のクリスマスプレゼントだ。」
「エロ本じゃないじゃない。…中まで来ないの?」

そんなことを聞いてきたがこわがるだろうから、と言って断った。気にしないでいいのにとタイガーは言う。
こいつの家族ならホントに受け入れてくれるだろう。でも、もう十分だった。


260 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/04(木) 00:12:57 ID:reCPN9eE0


「あ、雨。」


 ぽつりと雨が降ってきた。
別れを告げタイガーが走っていく。
帰りを待っていたのか2つの影が建物の前に立っている。
プレゼントを渡したようだ。二つの影がこっちに頭を下げているのが見えた。
 雨脚がだんだんと強くなってきた。
背を向け、歩き出す。
明日から土方仕事でもしようか、そんな気分になった。まともに稼いだ仕事で食う飯は今よりちょっとはうまいだろう。
この寒いのに俺が見えなくなるまで見送るつもりらしい。
 馬鹿で暖かい家族の視線を背に受け、はやあ


「「パン」」


…冷たい空気を弾くような乾いた音がした。
ゆらり、と物陰からだれか出てくる。この世で一番見たくない顔だった。
何もこんなタイミングであらわれなくてもいいじゃねぇか、神様の馬鹿野郎。
久しぶりに見たドラ息子のクソヤローは、ヤクか何かで正気を失っているらしく目の焦点があわない。
もしかして俺が出所するのをずっと待っていたのだろうか、狂ったまま何年も。ご苦労なことだ。
「おまえのせいでおれはあぁっぁぁぁぁぁひぃっ」
何やら喚いていたが、ちらりと見ただけで逃げて行った。

 後ろからタイガーの叫ぶ声が聞こえる。
体から力が抜け、世界が傾いた。倒れる。腹から流れ出る赤、イルミネーションの黄色や緑、走ってくる三つの黒。

そのなかに懐かしい顔があった。

「やすこ。」

久しぶりに見た泰子はあの時と何も変わってなかった。
もう一人はタイガー、そうするともう一人は…

俺とそっくりの三白眼の奴は「彼氏用」のプレゼントをしっかりと持っていた。残る二人と同じように。

なんてこった。

わが子への、最初で最後のクリスマスプレゼント。

倒れた俺を抱きしめて、あの日のように優しく微笑んだ泰子が言う。

「おかえりなさい、たっちゃん。」

神様はこんな奴にもクリスマスプレゼントをくれたようだ。

家族を。



土砂降りの雨の中、男は幸せそうに眼を閉じた。



261 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/04(木) 00:20:34 ID:reCPN9eE0
 これで終わりだよ。カップルの組み合わせは竜虎だけどアクセントぐらいにしか使ってない…

 スレチだったらごめんね。三十年ROMるよ。

 途中で鉄コン筋クリートのパクリじゃん!と思った人もごめん。書き終わって見直してる途中に鉄コンのあるシーン思い出して雰囲気あってると思ってからどうしても我慢できずに一文いれちゃった。

 駄文御免。三百年ROMるよ。

支援してくれた人本当にありがとう。




262 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/04(木) 01:15:27 ID:VlwCyhH30
今までに無い設定の話だね。
面白かったす、GJです。
ROMるのは3日位にしといて、また書いてほしいぞ。

263 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/04(木) 05:20:39 ID:C33rUJ4f0
>>261
お疲れ&GJ
三百年は寿命が持たないから三日に変更しといてくれ

264 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/04(木) 21:35:56 ID:4zbebhiD0
切ねぇ… しかし、イイ!
渋くて本当にGJした。
まっすぐな大河、チラと出たみのりんもイイ。
イ`!

265 : ◆VW.RtTKf1E :2010/02/05(金) 01:18:48 ID:wHI/p/k90
>>261
読みごたえありました。駄文だなんてとんでもないです。凄い大人な感じです。
また機会あれば、別のお話しも読んでみたいです。


さて、ご無沙汰となりましたが、とらドラ!, again 続きです。
繋ぎの展開のはずでしたが、また長くなってしまいました。
8レス使います。

>>52
の続きです。

266 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2010/02/05(金) 01:20:49 ID:wHI/p/k90

大晦日。
TVで年末恒例の歌合戦が始まる頃、弁財天国の店内は、年末の大売出しが終わった商店街の人達や、
おせちの用意で夕食の準備に手が回らなかった家族連れなど、多くのお客で賑わいを見せていた。

店の奥の和室では仲間達、帰省した実乃梨と年末年始完全オフの亜美、能登と麻耶、春田、奈々子に
北村と狩野すみれの合わせて9名が陣取り、竜児お手製のお好み焼きや前回披露できなかった焼うどんが
振舞われていた。

狩野さくらと富家幸太も店にいたのだが、和室ではなく一般のテーブル席に座っている。すみれが
学生の2人を巻き込みたくない(すみれの言い方では“ガキどもはいらねぇ”)と、店から追い出そうと
したのだが、仲間はずれにされたくないさくらとの間で一悶着あり、結局、幸太と北村のとりなしで
不審な人物や泰子が近づいたら知らせる見張り役をすることで落ち着いた。

「やはり仕掛けられていたか…」
和室の一番奥で、狩野すみれが腕を組みながら、深く頷く。
「ええ。能登が取材先から借りてきてくれた機材で調べてみたら、俺の部屋と居間に…」
クリスマスに連絡した時、能登からもたらされた報告とは、竜児の家から何か怪しい電波が出ている
というものだった。今日の午後、能登と麻耶、奈々子が家を訪ねてきて、本格的に探索した結果、
2ヶ所で盗聴器が仕掛けられているのを見つけた。

「で、そいつを見つけたことを気づかれていないだろうな?」
「大丈夫! 私と奈々子が高須君におせち料理のコツを教えてもらって、それを実践するっていう
設定でメッチャおしゃべりしてたから。ねー、奈々子」
「おいしくできたよねー」
麻耶と奈々子が声を合わせて、にっこりと微笑む。

「おう、黒豆をきれいに煮るには、砂糖の濃度を少しずつあげていくのがポイントなんだ。それもちゃんと
冷ましてから次の段階の濃度で煮ないとすぐ皺ができてしまう…」
「誰も今ここで解説しろなんて言ってねぇし…」
片手で頬杖をつきながら、亜美が地獄行きを宣告するような冷たさで言い放つ。
「それに奈々子だって、ホントはそれぐらいのこと知ってるって!」
「うふふふ…」
「そ、そうなのか…」
誰もが知っておくべき知識だと思って披露したのだが、あっさり一蹴されてしまい、竜児は軽く意気消沈。
そんな竜児のダウナーなムードもお構いなしに、春田が割り込んできた。

「ねぇ、なんで俺も呼んでくんなかったの? おしゃべりには自信あるんだけどなぁ?」
「春田、お前しゃべるなって言われた時、ずっと黙り続けていられる自信、あるか?」
能登が眼鏡のズレを直しながら、春田に向かって冷静に問いかける。
「能登っち、ひどいよ。いくら俺だって、そんな時に”おおっ、盗聴器見ぃーつけた”なんて言わねぇよ」
「言うね」「絶対言うよ」「ダメゼッタイ」「てか、言っちゃってるし…」
「みんな、ヒドイよ… ねぇ、亜美ちゃん、みんなに言ってくれよ〜 “仲間はずれは良くないぞ”って!」
「しっかし、いつから仕掛けられてたんだろね? 亜美ちゃんも高須君のひとりごと、聞いてみたかった
なぁ、”やっぱ、亜美ちゃんって、か・わ・い・い・よなぁ!!”なんて言ってなかったぁ?」
「ねぇよ!」
「…亜美ちゃんにもスルーされちゃったよ…」

「お前達の集団コントは相変わらずだな。で、ここは大丈夫なんだろな」
すみれの問いに、能登が探偵から借りてきた最新の探知機を見せびらかしつつ、店、部屋、皆の荷物を
チェックした結果、問題ないことを伝え、さらに取材の時に聞いた盗聴にまつわるおかしな話を始める。
メジャーな週刊誌の第一線にいる能登の話は、軽妙な語り口と相まって、たちまち仲間達を好奇心の渦に
巻き込んでいった。

* * * * *


267 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/05(金) 01:22:10 ID:HRF4dSoc0
wktk

268 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2010/02/05(金) 01:25:06 ID:wHI/p/k90

盗聴器があると分かった時、春田ではないが、竜児は大きな声で叫びそうになった。
亜美の言う通り、いつから仕掛けられていたのかは分からないが、会話を聞かれていたことに加え、
自分の家の中に異物があることに耐え難い憤りを感じたのだ。誰かが知らないうちに家に入って、細工を
していった… 想像を巡らせるだけで、腸が煮えくり返りそうになる… 自然と目がギラついてくるが、
手元では焼きうどんを器用に混ぜ炒めているので、その姿は決して怖くない。

様子を察した北村が、気楽な口調で話し掛けてきてくれた。
「まぁ、確かに高須はいい気はしないだろうが、今は気づかないふりして、奴らを欺いておかないとな。
日々、奴らが泰子さんとインコちゃんの謎の会話を懸命に解読してると考えてみろ、少しだけ愉快だろ」
「まぁな。しかし泰子を誤魔化すために言った話を、奴らに脅された時に繰り返したのはラッキーだった…」

あの時、本当に咄嗟のことだったが、大河に会ったことを否定せず、“駅ですれ違っただけ” という
前日に思いついた話を繰り返した。内容に違いが無かったことで、信憑性は増したかもしれない。
「その後みんなで集まって、すぐに話し合ったのも良かったね」
竜児の向かいに座る実乃梨が、能登の話に加わらず、2人の会話に入ってきた。
「ああ。用心もできたし、対策も打てたしな」

毘沙門天国の常連の皆さんに、今も帰り道を守られている泰子に対し、何か危害を加えられるようなことは
起こっていない。今日も周囲を警戒しつつ、皆ここに集まってきたが、不審な動きは見られなかった。

「すみれさん、意外と奴らも手は限られているのかもしれません。前回、高須が脅されたのも、揺さぶり
を掛けて、本人や知り合いに連絡を取らせる動きを誘発し、情報を得ようとしたんでしょうね」
「まぁ、そんな所だろう。もし何かを掴んでいたら、殴られるぐらいじゃ済まないだろうしな…」
「いきなり深夜に忍び込んきて、“おい高須、吐かなければ、命の保証はないぞ”ってか」
「櫛枝、冗談でもそういうのはやめてくれ…」
竜児はあの男たちが忍び込んでくる様子を想像し、ゾッとする。プロにとっては普通の鍵など、無いのも
同然、と能登が話していたのを思い出す。

「まぁ、確証を得ていない奴らとしては前回の脅しがギリギリの線だったんだろうな。必要以上の事をして、
警察が出てくるリスクは避けたいだろうし、今のところ、盗聴がメインの手段と考えていいだろう」
「じゃあ、高須が盗聴器を見つけたことを気付かれなければ、欺くのに使えそうですね」
「そうだな。ただ周囲への警戒は怠るな。自宅にもできるだけ戻らずに済めば、それに越したことはない」
「はい。幸い向こうでの研修は年明けてからもまだ続きますし、その点はうまく行きそうです。ところで
狩野先輩、俺達の計画はどうですか?」

竜児は、大河を救う計画について、すみれに問いかけた。
クリスマス以降、亜美と実乃梨のアイディアを元に能登と北村と詰めていく過程で、その内容は当然、
すみれの耳にも入っている。北村の発言には意見が含まれていると思うが、やはり非凡な才を持つ、
すみれの口から直接聞いてみたかったのだ。

「確かにリスクは高いが、得られるものも大きい。先手を打って、こちらのシナリオで事を動かすのは
戦いの基本だからな。といっても、てめぇらの中では、もうやるって覚悟を決めてるんだろ?」
「はい。最初は反対したけど、北村や能登達と話すうちに賭けてみる価値はある、と思い直しました」
竜児がはっきりと告げると、実乃梨と、こちらの会話に気づいていた亜美が嬉しそうに大きく頷いている。

「じゃあ、私から言うことは何もない。思いっきりやってみろ。私と祐作は来週日本を離れるが、手伝える
ことは何でも言ってくれ。できる限りのことをさせて貰いたい。」
気がつけば、皆がすみれの言葉に耳を傾けていた。偉大な兄貴の一言に、安堵の声が部屋の中に満ちる。

「計画ってなんだっけ?」
1人だけ、詳しい事情をまだ知らされていない春田が不思議そうに呟いている。
「悪いな、春田! ま、おいおい話してやるから…」
能登が春田の肩をポンっと叩いた。


269 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2010/02/05(金) 01:29:12 ID:wHI/p/k90

「それより高須よ、母親の説得は大丈夫なのか? 差し当たって、最も高いハードルのようだが?」
すみれの言葉に、竜児は先日大河から送られてきた、母親と話した様子を知らせるメールを思い出す。
竜児と会うのは了承。但し、話を聞くためではなく、今後自分達に一切関わらないよう、強く言うつもり、
とのことだった。

「正直、不安はあります。相手は当事者で社会経験豊富な大人で、おまけに大河の何倍も強情と来ている。
でもここで負けたら何も始まらねぇし、明後日は力の限り、俺の考えをぶつけてきます」
座がシンと静まりかえった。大河の母親の性格は、会ったことの無い者にも伝わっている。

そんな空気を全く気にせず、1人だけ陽気な声をあげたのは、春田だった。
「なんの計画か良く分かんないけど、タイガーの母ちゃんを説得したいなら、みんなで行けばいいじゃん?」
「みんな?」
「どうせ正月なんか暇だし、餅食って、テレビ見てるだけだったら、有効に使った方が良くね?」
「そんな風にゴロゴロしてるのは春田だけだろうけど… でもいいな、それ。俺も行くぜ」
能登がいち早く賛同する。
「うん! 私は元々一緒に行くつもりだったけど、数が多い方がこっちの気合いを見せられるしね」
実乃梨が乗ったとばかりに手を挙げる。
「あたしも!」
「わたしも。みんなで行けば、迫力だけは負けないんじゃない?」
麻耶と奈々子も続いてくる。

「いや、みんな無理しないでくれ! 結構遠いし、これ以上、皆に迷惑を…」
「じゃ、明後日、逢坂の所に行ける奴は手をあげてくれ! あ、すみれさんの分は俺が役目を果たすから…」
竜児の言葉を無視し、北村が早速まとめに掛かる。その言葉が終わらないうちに7人の手が綺麗に上がった。
「お、おい、お前ら…」
「あんたねぇ、いつまでもごちゃごちゃ言ってんじゃねぇつうの。行くって言ってんだから、いいんだよ。
タイガーにも会えるわけだしね」
いつの間にか隣に座った亜美が、竜児の頬を指先で突っつく。
「お前、身内の説得は身内で、とか言ってなかったか? 分かったよ… 一応、大河に聞いてみる」
竜児は、ペロッと舌を出している亜美に降参の意志を示すと、ケータイを取り出し、メールを打ち始めた。
「えっと、俺も入れて全部で8人だな… “今、皆で集まっている。2日だが8人で行っていいか?” っと」

暫くして、竜児のケータイからメールの着信を知らせるメロディが流れた。
「“どうせママには言わないからいいけど、ここ、狭いよ” だってさ」
「いいよ。座るところがなければ、立ってればいい」
竜児が大河からの返信を読み上げると、実乃梨が事も無げに即答する。
「分かった。 “構わねぇ” これでいいな」
「ねぇねぇ、それホントにタイガーから返事来てんの?」
竜児の横から、春田がケータイを覗き込んできた。
「おう、間違いねぇ。大河からだ」
「じゃあさ、俺の名前でメール打ってみて “タイガーは俺が守ってみせるぜ! びーあい、春田”って」
「分かった。ちなみに biじゃなくて、byな。 …送ったぞ」

すぐさま竜児のケータイが再びメールの着信を知らせる。
“アホロン毛だけはゼッタイにお断りだわ。このバカ!”
大河も冗談と気づいていて、昔のノリに合わせた返事を書いてきたのだろう。
「わーい、ホントにタイガーだ」
「ほう…」
「確かに逢坂らしい返事だな」
「はい、春田死んだー」
「ねぇ、私にも見せてよ!」
「相変わらず、ね…」
竜児のケータイが大河にまだ会っていない仲間達の間で次々と手渡されて行く。
「お前ら、なんて文面を見ながら、感慨にふけってるんだよ…」
突っ込みながら、竜児も微笑んでしまうのを抑えられなかった。

そうだ。みんなで行こう。そして、自分達の考えを、気持ちを思いっきりぶつけるんだ…
盛り上がる仲間達を見回しながら、竜児は大河に語りかけるように呟くのだった。


270 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2010/02/05(金) 01:33:18 ID:wHI/p/k90

* * * * *

新年が明けて、2日目。
快晴だった元旦とは打って変わって、薄曇りの肌寒い日になった。

竜児達は2人ずつに4組に分かれたうえ、時間をずらして列車にのり、大河の母親の家に向かう。

バラバラの経路で午後半ばに最寄の駅に着くと、最初に亜美と北村、次は能登と春田、麻耶と奈々子、と
少しずつ間隔をあけ、前の組の後ろに不審な人間がいないかを確認しながら、タクシーに乗り込んでいった。
竜児は1人でタクシーに乗り、大橋からずっと竜児の背後に目を光らせてきた実乃梨が、さらに数台後の
タクシーに乗って、後を追う。そんな苦労をして警戒してきたのだが、特に気になる人影はなかった。

しかし、アクシデントは大河の母親の家に竜児が着いた時、起こった。

竜児が平屋の家の引き戸をそっと開けると、玄関の土間には一足先に着いた麻耶と奈々子が、
家にあがるタイミングを測りかねて、ブーツも脱がずに立っている。大河は能登が盗聴器をチェックするのを
案内しているのだろう。

そして、上がりがまちには小さな男の子がふんぞり返って立っていた。

「!」
竜児と男の子、2人の目が会った瞬間だった。
男の子は急に土間に飛び降ると、竜児の目の前で勢い良く跳ね、その腹に強烈な頭突きを食らわせたのだ。

「ふごぉうっ…」
竜児の口から、声とも息ともつかないような音が発され、「ガシャン」と言う音と共に背後の引き戸に
ぶつかった。小さな子供とはいえ、渾身の頭突きを受けた竜児は倒れ込まないようにするのが精一杯。
麻耶と奈々子は「「キャッ!」」という短い悲鳴を同時にあげ、その騒々しい様子に家の奥から大河が
飛び出してきた。

「ちょっと恵児、アンタ何やってんの!!」
「大河姉ちゃん、こいつ悪いヤツなんだろ? 僕がやっつけるっ!」
男の子は素早く1、2歩を下がって体勢を立て直すと、何かの戦隊もののポーズなのだろう、ワンアク
ションを入れて、今度はチョップを食らわす姿勢で、呼吸すら困難な竜児に再び襲いかかろうして……
大河に後ろから羽交い絞めにされた。

「竜児は悪いヤツじゃない! 顔は怖いけど、味方、いい人、お姉ちゃんの大切な人!」
「うそだ! ママと大河姉ちゃんはボクが守るんだ!」
「恵児っ!」
大河の手のひらが、男の子のおでこを打った。といっても強く叩くのではなく、「ぺちっ」といった程度に
手加減されたものだったのだが、それで男の子の動きがぴたりと止まってしまった。

一瞬の静寂の後、男の子は「ひっく…」と一度しゃくりあげたかと思ったら、
「うわわわわわぁーーんっ!」と大声で泣き叫び始めた。
叩かれた痛みで泣いているのではない、竜児に向かっていくのが怖かったのだ。
それを懸命に抑えて、敵だと思った相手に飛びかかっていくあたり、さすがは大河の弟といえる。
勢いを止められると、恐怖心が一気に押し寄せてきたのだろう。

「ちょっと、可愛いかも…」
「男の子よねぇ…」
騒動を目の当たりにして驚きっぱなしだった麻耶と奈々子も、状況が飲み込めたようで、
泣き叫ぶ男の子を愛おしむような目で見ている。
「家の周りも問題ないぜ… おやおや、いったい何ごとだい?」
しんがりを務め、最後に周囲の様子を確かめた実乃梨が、引き戸をガタガタと言わせながら入ってきた。
「えと、高須ボーイ、大河の弟を早速いじめたのけ?」
「いじめてねぇよ! てか櫛枝、大河の弟、知ってるのか?」
「うん、この間エステやってる時に写真を見せてもらったさぁ…」


271 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2010/02/05(金) 01:36:38 ID:wHI/p/k90

大河の弟には悪人扱いされるし、婚約者には改めて言われるし、かつてのクラスメイトの女子達は
妙に納得しているし、顔を怖がられることに耐性のついてきた竜児も、いささかヘコんだ。
でも大河が叫んだ“お姉ちゃんの大切な人”に免じて、気にしないことにする。

「驚かせて、すまなかったな。なかなかカッコよかったぞ、恵児君。はじめまして」
落ち込んだことはおくびにも出さず、竜児は大河の弟の前にしゃがむと、ポンッと頭の上に手を載せる。
「ひっ… っく、ひっく…」
しゃくりあげながらも、竜児を再びキッと見据えるあたり、顔はあまり似ていないが、やはり大河と
血を分けた兄弟なのだろう。

緊張感がほどけて、なごんでいく空気の中で、大河の顔だけが強張っていた。
「これまで恵児にそんな話をしたことはなかったのにね… この子なりにママや私の様子から何か
感じ取ってたのかしら… 子供は怖いわね。うまく誤魔化してきたつもりでも、ちゃんと伝わってる…」
「……そうだな…」
竜児がゆっくりと立ち上がり、顔をあげると、困惑した表情で玄関の様子を見つめている大河の母親と
目が合った。

* * * 

玄関での騒ぎは、結果として竜児達に有利に働くことになった。
当初、大河の母親は竜児に対し、顔を合わせるや否や、余計なことをしないよう捲くし立てて、早々に
追い返すつもりだった。これ以上関わろうとするなら、二度と大河に会えなくなることを脅し文句に。

ところが、大河が時々借りてくるDVDで見た女優が、芸能人オーラたっぷりに、おかっぱ男を従えて
玄関に現われたかと思うと、次はロン毛と変な眼鏡の男2人組が家にあがり込んできて、「シーッと」
言いながら、いきなり家中で怪しい機器を振り回し始める。そして、トドメは泣き叫ぶ息子の姿… 
機先を制することができず、竜児に捲くし立てるどころでは無くなってしまった。

8畳の居間に身を寄せ合うように全員が座ると、最初に口火を切ったのは亜美だった。
「最初に言っときますけど、私達、伊達や酔狂でここに集まってるわけではありません。
色々おっしゃりたいことはあると思いますが、私達の話を聞いた後でお願いします」

ぴしゃりと言い切るその口上は、交渉事では百戦錬磨のはずの大河の母親を一瞬で黙らせる。
伊達に映画界で“女王”のつく異名は取っていない。
「ひゅー…」
「かっこいい…」
思わず、春田や麻耶の口から感嘆の言葉が漏れた。これぞ女優の本気の演技、である。

「恵児くんは、お姉ちゃんと隣のお部屋に行こっか、ご本、読んであげるよ」
さりげなく奈々子が弟を連れ出す。襖を一枚隔てただけで声は聞こえるが、緊迫した様子を目の当たりに
するより、幾分か子供にはいいだろう。
いつも女の人に囲まれて暮らしているので、見知らぬ人でも女性に対する警戒感は低いのか、それとも
雰囲気を察したのか、大河の弟は大人しく、奈々子の後をついて、隣の部屋に移っていった。

「今の状況をどうやったら打開できるか、みんなで一所懸命に考えました」
実乃梨の言葉で、大河の母親への話が始まった。

亜美と実乃梨が中心、途中に能登も加わりながら説明を続け、10分、15分と続いていく。

大河の母親は亜美が言い放ったとおりに、大人しく耳を傾けている。

やがて3人は、キリのいいところで反応を見るべく、いったん話を切った。



272 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2010/02/05(金) 01:39:19 ID:wHI/p/k90

大河の母親は深いため息をつくと、眼鏡を取って、深い皺が刻まれた眉根を揉みほぐす。皆が固唾を
飲む中、手にした眼鏡を軽く振りながら、嘲るような口調で語り始めた。

「大勢集まってどんな話かと思えば、やっぱり子供の考えることね。そんな都合良く、ことが進むはず
ないでしょ、バカバカしいにも程がある、できっこない。私達のことは放っておいて頂戴。あなた達には
関係ないんだから、首を突っ込まないで」

その言葉を聞きながら、つい先日、大河から同じようなフレーズを聞いたことを竜児は思い出していた。
大河も同じことを考えていたのだろう、小さな身体を縮こませたまま、さらに肩をすくませる。竜児と
目が合うと、“今はばかちーとみのりんに任せよう” そんな風に目配せしてきた。竜児も小さく頷き返す。

「経験から得た考えです。あなたはそんな風になったことは無いですよね? どうして頭っから否定
できるんですか?」
亜美が冷静に反論する。
「それにさっきも言ったように、高須君ちには、盗聴器が仕掛けられている。ヤクザの脅しもあった。
私達はもう無関係じゃないんです。手を打たないと、高須君が被害に会うかもしれない」
実乃梨も理解を得られそうな糸口を探して、言葉をぶつけていく。

「それって、あなたたちの言う事を聞かなかったら、私達のことをヤクザにばらすぞっていう脅し?」
「脅す気なんて、そんな… 」
想定外の返答に実乃梨がぐっと拳を握りしめたて、絶句する。まさか脅迫者扱いされるとは思っても
みなかったのだろう。

言葉を失った実乃梨に代わり、亜美が話を続ける。
「昔、タイガーがぷっつりといなくなってしまったあの時、私達は無力でした。友達が苦しんでいると
分かっているのに、何もすることができなかった。それがどれだけ悔しかったか、どんなに自分に腹が
立ったか、ここにいるみんな同じ気持ちです。そして、やっとチャンスが来たんです。私達はこの機会を
二度と逃したくない、もう、あの無為の日々を再び送ることなんか、私は死んでもイヤ!」
その必死な声と姿はさっきのような演技ではなく、心からの亜美の叫びに見えた。

しかし、大河の母親はあくまでも冷静に切り返す。
「それって、ただの自己満足じゃない。そういうのを表す、いい言葉があるわ。お節介、大きなお世話
って言うのよ」
「確かに自己満足かもしれません。でもそれを他人のお節介で済ますのか、自分が利用できるチャンスと
するのか、あなたは選べるんです。タイガーはやると言いました。家族のため、自分のため、皆のために
活かしたいと言っています。あなたは、どうしますか? 本当に無駄だと思いますか?」

「私が……」
誰かの提案を受け入れるかどうかの是非ではなく、自分ならどう使うか。常に自分で物事を動かしてきた
大河の母親のような人間にとって、その言葉は動揺を誘った。

「あ、あなた、とても口がうまいわね。女優なんかより、セールスか能力開発セミナーでもやったらどう? 
きっと流行るわよ」
と咄嗟に嫌味を返すのが精一杯。見方を変えれば、欠点だけでなく、メリットが見えてくる。押し黙った
まま、短時間で猛烈に考えているように見えた。

しかし、やがてニヤリと笑みを浮かべると、一瞬でも言いくるめられそうになったことを悔しがるように
唇をきつく噛み、亜美を睨みつけながら、反撃に転じてくる。
「あなた達の計画ではちっとも問題は解決しないわ。そんなことしても借金は消せない。むしろ、ここから
逃げ出すようなことをしたら、追われる相手を増やして、さらに立場が悪くなるだけじゃない」

「それについては、僕から話をさせてもらいます」
声のした方を見ると、おかっぱ頭の眼鏡男、北村が小さく手を上げていた。


273 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2010/02/05(金) 01:43:02 ID:wHI/p/k90

「あなた、この女優の付き人じゃなかったの?」
「残念ながら、まだ一介の学生です」
(ハーバードのな…)誰かがぼそっと呟いた。

「借金については、不本意かと思いますが、今の旦那さんを頼るしかないと思います」
「なっ…」

「この借金、少なくとも見かけ上は、警察が介入できない契約になっているでしょう。しかし、金融屋も
実はヘタを打ったという焦りがあるはずです。奴らはあなた方を守っているフリをして、追われている
状況を利用していることぐらい、ご存じのハズです。奴らの狙いが旦那さんの会社や財産なら、交渉に
応じる姿勢を見せ、お互いがテーブルにつくことで、相手の弱みも突くことができます。そして、あなたの
本当の目的である、逢坂陸郎の居場所も聞き出せるかもしれません」

「ますます滑稽な話になってきたわね。大体、見せかけだとしても、あの人が他人の借金の肩代わりに
協力するはずないわ。あの人はね、モノを作る才能は昔からあったけど、ただのお坊ちゃんだったのよ。
父親が急死して、会社を継ぐことになったけど、経営の知識なんてさっぱり。私がコンサルタントとして、
依頼を受けて、みっちり仕込んだから、ずいぶんマシになったけど…」
「でもママはパパの人の良さに惹かれて、結婚したんでしょ。クソじじいとは違う、真っ直ぐなところに」
「大河、あなたは黙ってなさい!」
この場で初めて大河が言葉を発するが、母親に軽く一蹴されてしまう。

「今、あの人は親から受け継いだ会社を守るのに必死。恵児が生まれた後、お義母様が亡くなられてからは
特にね。あの人が金融屋を通じて、連絡してきたのは最初だけ。ここ暫くは音沙汰も無いわ。他人の借金
なんだから、私はそれが当たり前だと思うし、はなっからアテにもしていないけれど、あの人の協力を
得ようとしている時点で、この計画は無理ね。話にならないわ」

事前に大河から話を聞いて、皆で考えた通りの展開になった、と竜児は思った。
大河の母親という難物を相手にするにあたり、竜児達はただ大勢で話をしにきたのではない。みんなで
行くと決めた大晦日から丸1日掛けて、母親の性格とこれまでの経緯について大河から情報を得つつ、
展開を予測し、役割を分担したうえで、この場に臨んだのだった。そして、最後は竜児の出番だった。

「あの、大河のお母さん…」
「竜児君ね。あなたウチに行って、あの人に会ったらしいじゃないの。その時だけは連絡があったわ。
今、私が言ったことが誇張でもなんでもないこと、あなたは知っているはずよ」
「はい、確かにそう言われました。でも聞いて欲しいことがあるんです。それは…」

竜児は、大河の母親の目をまっすぐ見据えると、ゆっくり語りはじめた…




274 :とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2010/02/05(金) 01:46:10 ID:wHI/p/k90

* * * * *

薄暗かった空がそのまま闇に変わろうとする頃、大河の母親の家から、1人、また1人と仲間達が出てきた。
皆は玄関先に固まり、最後に竜児と大河が出てくるのを見守っている。

大河は、竜児が靴を履いている間も上着の裾を固く掴んだまま、放そうとしない。
その目は真っ赤で、恥ずかしげもなく洟を何度もすすり、もし皆がいなければ、今にも竜児に抱きついて
泣きじゃくりそうなぐらい、ぴったりと寄り添っている。

「ほら大河っ、もう泣くなよ。みんな待ってるぞ」
「だって、竜児… アンタ…」
「俺は大丈夫だって…」
「でも、私…」

大河だけでない、外で待つ実乃梨や麻耶、奈々子、能登、春田の目も赤く縁取られている。
竜児は、裾を掴んでいる大河の手を取り、優しく引きながら、玄関先に出てきた。

「せっかく、大河のお母さんに計画を認めてもらったんだ。もっと気を引き締めた顔をしろよ、
これからいよいよ始まるのに、そんな泣き顔じゃ、俺は心配になるぞ」
「…う…ん、ごめんね…」
大河は目元に溜まった涙を指先で涙を拭うと、竜児の方にむかって顔をあげ、無理にでもにっこりと
微笑もうとした。

「よしっ」
竜児は大河の頭の上にポンッと手を置いて、ひと撫でしたあと、皆の方に向き直る。
「みんな、今日は本当にありがとう。あと少しだけ、できることでいいから、力を貸してくれないか?
大河が、この家族がまた一緒に暮らせるように」
言い終わると、竜児は軽く頭を下げた。

「おおっ!」「やろうぜ」「もちろんだ」「頭なんか下げなくていいってば」
皆が口々に言葉を返していく。

竜児は、玄関先に出てからもずっと固い表情で腕を組んだままの亜美を見た。   
「特に川嶋、今日は本当にありがとな。次も頼む。今回の計画はお前が主役だ」
「何言ってんのよ。高須君の方こそ、きっちりやんないと全部台無しになっちゃうんだからね」
「ああ、分かっている。こっちは任せろ」
「竜児… ばかちー… みんな…」

竜児は大河の両肩に手を置くと、背をかがめて、真っ直ぐに大河の瞳を見つめた。
「大河、あと少しだ。終わったら、大河がいなかった分もまとめて、派手にパーティをやろう。な、みんな!」
「「「「「「おぉーっ!!」」」」」

暗さを増していく住宅街の片隅で、仲間達の声が強く、しっかりと響き渡った。


* * * * *


275 : ◆VW.RtTKf1E :2010/02/05(金) 01:52:49 ID:wHI/p/k90

今回はここまでです。
>>267 支援、感謝です!

言い忘れてしまいました。今回はオリジナルのキャラが出ています。
話の最初の方にチラッと名前が出ていたのですが、「恵児」は大河の弟の設定です。 
竜児と紛らわしい?  最初に言っとかなきゃ俺、orz

肝心の計画の中身が書いていないので、分かりにくくてすいません。
次から本当に作戦開始! します。

また、いつになるか分かりませんが、書き進めていきたいと思います。


ちょっと暗めだったので、 どなたか2828かギシアンを!

276 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/05(金) 03:30:00 ID:HRF4dSoc0
>>275
おつかれ!
大河の弟を出してくるとはめずらしい

そしてギシアンもほしくなってきた

277 :よっしゃまかせい:2010/02/05(金) 13:11:07 ID:7vhhfsnU0
<趣旨>やっつけだがついに念願の初ギシアンをかいたぞ!

「あのね、この前ネット通販で変わった下着をみつけたの」
「へ…へえ〜?」
「でもさ、それが…とんだ欠陥商品なの。クレームつけてやろうかと思うんだけど」
「そうなのか?ならクーリングオフを考えないと…」
「だってね、……最初から穴を開けてあるんだよ…?」
「ばっ!お、おまえそれ……それは、その、そーゆー商品なんだよ…」
「そ、そうなの?…いま、穿いてるんだけど…見る?」
「……………」
「……………」
「……お前……わかってて買っただろ…」
「えへへ…」

 ギシギシアンアン


 これでいいですか?

278 :よっしゃまかせい:2010/02/05(金) 14:03:23 ID:7vhhfsnU0
<趣旨>もういっちょいってみよう

「竜児、またネット通販で変わった下着を買ってみたんだけど」
「またかよ!高校生がそんなの見るなよ!」
「ママのシュミなんだけどねー。ママ名義で申込みしてるし」
「気づいてくださいお義母さん!娘さんはとんだ素行不良ですよ!!」
「え?ママも一緒に選んでるんだけど」
「うおおおおおおいいっ!?」
「でね、今、穿いてるんだけど」
「またかよ!今度はなんだよ!?」
「それがね、……なんだか妙な突起物が装着されていて……」
「ぐはあああっ!!?」
「ぺにぱん、っていうらしいんだけど…あらやだ竜児、吐血」
「く、くるなっ!もういい!オチはよめた!よめすぎだから!だからやめ〜〜〜〜〜〜〜!!?」

 でも、やることやっとかないとオチないし。

「い〜〜〜や〜〜〜〜〜だ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」

 ギシギシAnAn・ギシギシAnAn


 なんかもう…すっかり下ネタ魔人っすよ自分。

279 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/05(金) 20:31:10 ID:nvrCSJ6P0
>>275
今回もGJです!
本当にキャラの特徴を捉えるのが上手いなぁ。それぞれがらしい
弟君もいいね
次回も楽しみにしてます!

>>277-278
これはwww

280 :多分完成しない長編より抜粋 ◆fDszcniTtk :2010/02/05(金) 22:13:23 ID:s0drwFl40
「ねぇ、竜児」

物思いにふけっていた竜児に大河が声をかける。

「なんだ?」
「あのさ、今年なんだけど」
「おう」
「チョコレート、あげた方がいいのかな」
「はぁ?」

いきなりのひどい話に素っ頓狂な声を上げる竜児の前で大河はうつむいたまま、少し強い風に髪を乱され、手を後ろで組んで足でのの字を書いている。

「だってさ、去年は失敗だったし。いまさら買ってきてあげるのもどうかなって」
「馬鹿野郎、俺がお前の作ってくれるものが嬉しくねぇなんてありえねぇだろうが。去年も言ったじゃねぇか。いい加減わかれよそのくらい」
「だって。だって。去年は私のチョコ食べたら意識が無くなったって言ってたじゃない」
「去年は去年。今年は今年だ」

昨年のバレンタインデーに大河が配ったチョコを食べたのは竜児だけだった。櫛枝実乃梨をして「狂った強度、すなわち狂度」と呼ばしめるほど固かったチョコレートには、誰一人として文字通り歯がたたなかったのだ。
ただ一人、こういう事には恐ろしく頭の回る竜児だけがホットミルクに溶かすことを思いつき、そして飲んだ後に意識を失ったのだった。

また意識を失うかもしれないが、まぁ、命を奪われるわけじゃあるまい。多分。

「なんだよ、期待してたのによ」

ぼそり。と、つぶやいた竜児に、ぱっと大河が顔を上げる。嬉しい!と顔に書いてある。思わず顔をそらす竜児だが

「ほんと?竜児、期待してくれてた?」

嬉しそうに声をあげる大河がさっと、竜児の顔の方向に上体を傾けて見上げる。

「悪いかよ」

妙な照れ隠しのためにわざと不機嫌な顔を作ってよそを向く竜児。大河がささっとそちらに上体を傾ける。

「ねぇ、竜児。チョコ期待してくれてたのね?」
「うるせぇよ」

ねぇ、竜児。ぷいっ、ささっ。ねぇ、竜児。ぷぃっ、ささ。橋の真ん中でワン・オン・ワンさながらの光景が繰り広げられる。竜児はばつの悪そうな顔でかたくなに大河から顔をそらしている。一方で、大河の方は既に喜色満面。
嬉しくて仕方ないといった風で竜児の顔を確かめるべく右に左に体を動かす。バカップル丸出しの二人に、通行人が「いちゃいちゃしやがって」と毒つくが、竜児の作り不機嫌な表情を見ると足を早めて去っていく。

「じゃぁ、私、また頑張る。今年は失敗しないように味見するから!」
「……おう。ほら、もう行くぞ。風邪ひいちまう。」

なんだか俺は、大河がチョコレートを作ると言う度に不機嫌な顔してるなぁ、と妙な反省をしながら歩き出す竜児の横に、追いついた大河が並ぶ。どちらともなくふれあった手をたぐって、握り合った。

鉄の橋の上を風が駆け抜けていく。

281 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/06(土) 03:36:18 ID:g3LwRey+0
>>280
GJ!
お疲れさまです!

282 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/06(土) 04:12:00 ID:87x8TIkg0
GJです
ちくしょうバカップルめ
竜児の周りをウロチョロする大河が目に浮かぶ

283 :◇Eby4Hm2ero:2010/02/06(土) 10:53:35 ID:5lqAS4xa0
只今規制中……
代理投稿歓迎です。


284 :とらドラ!で三題噺 ◇Eby4Hm2ero:2010/02/06(土) 10:56:25 ID:5lqAS4xa0
お題 「向けて」「落として」「竜児」

「大河ちゃん、どうしちゃったんだろうね〜……」
「おう……」
 卓袱台の上には虚しく冷めゆく料理が一人分。
 大河が三日前から突然食事を食べに来なくなったのだ。それだけではなく昼の弁当まで拒否をする始末。
 理由を聞いても『そんな気分じゃない』とかなんとか、はっきり言ってわけがわからない。
 一応コンビニ飯やインスタント、惣菜等で食事はしているらしいのだが……
「あいつ、ちゃんと栄養とれてるのか?野菜食ってないんじゃねえかな……」
「心配だねぇ〜……」
「おう……」


 翌日。
「おう……しまった」
 今日は泰子は早出なので、夕食は竜児一人だけ。だが皿の上には揚げたてトンカツが二枚。
 大河の分は下拵えまでにしよう思っていたのだが、気がついたらいつもの癖で揚げてしまっていたのだ。
「冷めたのを暖めなおすと味が落ちるしなあ……。しかたねえ、明日カツ丼にするか弁当にまわすか……」
 竜児が呟いた時、どばぁん!と久しぶりに響いたのはドアの音と、
「竜児ーっ!おなかすいたーっ!」
「た、大河!?」
「ごはん何?あ、とんかつ!やった!ほらグズ犬、さっさと用意しなさいよ!冷めちゃう!」
「お、おう……」



285 :とらドラ!で三題噺 ◇Eby4Hm2ero:2010/02/06(土) 10:57:05 ID:5lqAS4xa0

 ぱくり、とトンカツを一切れ口に入れ、もぐもぐ、ごっくん。
 たちまち大河は相好を崩し、
「……っくぅ〜〜!これこれ、この味!やっぱ竜児のごはんは美味しいわ〜」
「……それじゃ、何でここんとこ食べに来なかったんだよ」
「んとね、ちょっと再確認したくなったのよ」
「……何を?」
「私、毎日当たり前のように竜児の料理食べてたけど、考えてみればほんの何ヶ月か前までは手料理そのものに縁が無かったのよね。
 それを思い出しちゃって、そしたら、ここでごはん食べてることの意味っていうのかな、考えちゃって……
 で、一度ちょっと離れてみようかなって」
「おう、そうだったのか……心配したんだぞ、俺も泰子も」
「ごめんね、上手く説明できなくて」
「まあいいさ、こうやって戻って来たんだし。さ、冷める前に食っちまえよ」
「うん。ねえ竜児」
「おう?」
「離れてわかったのはね、竜児のごはんが食べられて、私やっぱり幸せなんだってこと」
「おう……」
 竜児の頬に、つうと流れる一滴。
「……あれ?何でだ?」
「何よ竜児、泣いてるの?」
「いや、わかんねえ。わかんねえけど……うん、多分俺も今幸せだから……だと、思う……」
「……よっしゃ!」
 大河が小さくガッツポーズ。
「……え?」
「まさかこんなに上手くいくなんて思わなかったわ。感激のあまり泣き出すなんてね」
「え?え?」
「本で読んだのよ。男の子の気を引くのには『落として上げる』のがいいって。
 竜児にこんなに効果があるなら、北村君にだってきっと……!」
「……おう、そうだな!これなら北村もイチコロだぜ!実際に体験した俺が言うんだから間違いねえ!」
「でしょでしょ!早速北村君用に向けてのシチュエーションを考えないと!」
「ところで大河、お前そもそも北村に冷たい態度がとれるのか?」
「……ゔ」
「それに落とした時、上げる前に完全に気持ちが離れちまう可能性もあるよなあ」
「うう……」
「……憶えとけ、これが『上げて落とす』ってやつだ」
「ううう……」


「ねえ竜児」
「おう?」
「さっき話したのも、嘘じゃないから」
「……おう」

286 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/06(土) 21:02:12 ID:Px3CkO0F0
おおう、数日来なかったらこんなに投下が…!
みなさんGJです!!
今最高にほかほかしてる

287 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/07(日) 02:21:28 ID:Fw4OxH9M0
日曜はこれ読んで自分を癒すとするか

288 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/08(月) 23:22:01 ID:zcrTrwGE0
ああああああ
入試失敗したああうううううう

289 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/09(火) 01:18:00 ID:qmUAyu550
よくあること

290 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/09(火) 02:37:12 ID:VGPtpNLd0
うむ
よくあることだ

291 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/09(火) 13:08:48 ID:riyxcUJ60
なんくるないさぁ!涙は心の鼻血だぜっ!
ヘイヘイ受験ボーイ!声出して行こう!

292 : ◆x6jzI2BeLw :2010/02/09(火) 23:23:58 ID:3A1ErIhl0
>>226
代理投稿ありがとうございます。
コメントなどなどありがとうございます。

再規制されないうちに「しあわせの逢坂タイガー伝説」続きを投下します。
5レスくらい使います。

293 :しあわせの逢坂タイガー伝説3 ◆x6jzI2BeLw :2010/02/09(火) 23:25:14 ID:3A1ErIhl0

「ほら、使ったタオルよこせ」
銭湯から帰るなり、竜児は大河に洗濯するからとバスタオルを出せと求めた。
「大河の家で洗うのもここで洗うのも一緒だろ、ついでだ」
竜児にそう言われて大河はお風呂セット一式が詰まったバッグからくちゃくちゃに丸まったバスタオルを竜児へ手渡す。
「おま・・・いや、いい」
「何よ?文句でもあるの」
使い終わったタオルといえどもきちんと折り畳むのが礼儀だと竜児は言いたかったのだが、悪びれた様子の無い大河に後の言葉が出て来ない。
そのまま洗濯機へ入れてしまおうとベランダへ向かっていた竜児を見送った大河だが急にあることを思い出し、大急ぎで竜児を追い駆けた。
「やっぱ、自分で洗う」
返してと大河は竜児の部屋で自分のバスタオルを取り戻そうとする。
「何だよ、遠慮するなよ」
竜児は取り合わない。
「返しなさいよ、自分で洗うから」
執拗に返却を求める大河は実力行使に出た。
力任せに引っ張る大河に竜児は慌てる。
「大河、やめろ」
バスタオルで綱引き状態の竜児と大河。
「洗ってやるって言ってるだろ」
どうせ家に持って返っても結局、大河の家にある洗濯機で洗うのは俺なんだから同じことだろと竜児は主張する。
「違う、自分で洗う!」
駄々っ子みたいに大声で大河も言い返す。
前にも増してバスタオルを強く引っ張る大河に負けじと竜児も力を入れていたのだが、上質な生地を使ったタオルが痛むのを恐れて不意に力を抜いた。
そのおかげで「わっ」と声を上げ、反動で背中からすてんと転ぶ大河。
「わ、わりい」
もろに大河を転ばせたことに罪悪感を感じた竜児は大丈夫かと大河に声を掛けようとして、銅像のようにその場に固まった。

「もう!竜児!!」
何てことすんのよと起き上がりざまに、竜児を「この駄目犬」呼ばわりしようとした大河も瞬間冷凍された大間のマグロみたいに竜児の前でカチカチになる。
一畳分の畳を挟んでお見合い状態で向かい合う竜児と大河。
そしてふたりの間に落ちている二つの白色もまばゆい物体。
レースの飾りがある小さなお椀が2個付いているのがひとつと赤い刺繍のような飾りが付いた小さな布を張り合せてような木綿製品がひとつ。
しわの寄り具合が明らかに使用後を示していた。


294 :しあわせの逢坂タイガー伝説3 ◆x6jzI2BeLw :2010/02/09(火) 23:26:09 ID:3A1ErIhl0

「み、見んなあ!」
金縛りが先に解けた大河はそう叫ぶと己がついさっきまで身に付けていた物の上に覆いかぶさった。
「わりい・・・」
申し訳なさと言うカクテルでいっぱいに満たされたグラスを片手に竜児は大河に背中を向ける。
思わぬものを見てしまい、驚いて固まってしまった竜児だが、目の前の大河の有様に二度目の驚きを味合う。
「あらやだ、遺憾だわ」とか言いながら平然と拾うであろう大河を予想していた竜児にとって大河のこの反応は予想外。
竜児とて、大河の家に出入りしてあれこれやっていれば乾燥機から取り出し忘れた大河の下着に遭遇したりすることはこれまでにあった。
その時でも大河は平然としたもので、思わず乾燥機の前で固まる竜児に「このエロ犬、くんくんしたりしてないでしょうね」と言いながら竜児の前で片付けたりしていたのだ。


「はあ」
洗濯機の前でため息をつく竜児。
まさか脱いだ物をタオルと一緒に丸めているとはさすがの竜児も気がつかなかった。
だから、大河がバスタオルを必死に取り戻そうとするのを単なるいつものふざけ合いの延長だと思って気にも留めなかったのだ。
洗濯済みのものならいざ知らず、ついさっきまで着ていたものなんて見られたくねえよな、普通・・・。


居間に竜児が入って来る気配を感じ取ると大河は竜児に背を向け、お風呂セットが入ったバッグの前でうつむき加減になる。
何で自分が竜児の前であんな態度を取ってしまったのか、解答の無い方程式に向き合っている気分を大河は感じていた。
平気な顔して拾えば良かったのに・・・今までならそれが出来たはず・・・。
どうして急に出来なくなったのかと大河はあれこれ考えるが答えが見つからない。
竜児と出会った頃ならあのまま、洗濯機まで持って行かせて、自分のあれを見つけた時の竜児のうろたえる様を大いにからかってやろうとか思ったはず。
それなのに・・・あんなにうろたえて取り戻すなんて・・・。
・・・私、どうしちゃったんだろう?

「悪かった・・・少し、デリカシーが足んねえよな、俺」
おずおずと謝る竜児。
大河は無言のまま、竜児を見ない。
「本当に悪かった、ごめん」
取り付く島がないというか・・・相当、あれだなと思いながら竜児が大河に頭を下げた瞬間、竜児は自分の心臓が立てるドクンと言う音を聞いた気がした。
洗いあがりで生乾きになっている大河の大雑把に2本にまとめられた髪。
そこから僅かに残るシャンプーの香りが甘い色をして上り詰めている。
そして髪のすき間から垣間見える大河の白い首筋・・・。
竜児はひとり、我知らず慌てる。
ついさっきまで一緒に居て何も感じなかった相手に異性を感じてしまったからだ。
数時間前には平気で触っていた大河の髪が、何かひどく触れ難いようなものに見えて、竜児は一歩後ろへ下がる。
女の子なんだよな・・・大河も。
当たり前すぎて当たり前じゃなかったことが竜児の目の前に突如、広がった。


295 :しあわせの逢坂タイガー伝説3 ◆x6jzI2BeLw :2010/02/09(火) 23:27:22 ID:3A1ErIhl0


「ねえ・・・竜児」
「お、おう」
相変わらず後ろを向いたままの大河にいきなり呼ばれて、竜児は声がうわずる。
「ひとつ、聞いていい?」
「な、何だよ?・・・俺で答えられることならな」
何となく身構える竜児。
「簡単なことよ・・・竜児は大きなつづらと小さなつづら・・・どっち、取る?」
「は?」
意味不明な質問に竜児は面食らう。
「だから、どっちって聞いてんのよ?」
声にやや苛立ちを含ませながら大河は答えを督促する。
そして言った後で大河は背を丸め、胸の前で両手をクロスさせ目を閉じた。
舌きりスズメかよとぶつぶつ口の中でつぶやきながら竜児は答えを口に載せる。
「大きな方・・・」
竜児がそういい掛けると大河の肩がピクリと跳ね上がり、直後にすっと落ちた。
「・・・って言いたいとこだが、あいにく俺はそんなに欲張りじゃねえ・・・選ぶなら小さい方だ」
竜児がそう言い切ると下がっていた大河の肩が上り、急に精気を得たように生き生きとしだす。
「本当に?」
「ああ、間違いねえぞ」
大河の念押しに竜児も保障を与える。
「・・・良かった」
心底、安心した様な声で大河は言うと胸の前の手を解放し、竜児へ向き直る。


「何の意味があるんだよ?」
振り向いた大河が怒ったり、落ち込んだりしていないのを確認した竜児は大河の前に座り込む。
「別に、ちょっと聞いてみたかっただけ」
あけっらかんでそれでいて嬉しそうに言う大河。
「竜児、手、貸して」
「手?」
こうか・・・と竜児はパーの形になった右手を大河の前にかざす。
「そうそう」
大河はその竜児の右手に自分の手の平を押し当て、そして何気なく空いているもう一方の手で自分の胸元を押さえた。
「えと・・・このくらいだから・・・わ・・・すっぽり隠れちゃうかも」
何をしてるんだと不思議そうに大河を見る竜児。
その大河は右手で竜児の手の大きさを測り、左手で同時に自分の胸のサイズを測っていたのだ。
「やっぱ・・・足んない」
顔に出したがっかり感を急いで引っ込た大河は決意を込めた目で竜児を見る。
猛禽類を思わせる手乗りタイガー仕様の目付きになる大河。
にらまれたと感じた竜児は身の危険を察知し、腰を浮かす。
「借りるわ、竜児」
大河の両手が竜児の右手に伸びる。
本能的に手を引っ込める竜児に大河は舌打ちすると「逃げんな」と一喝。
動きの止まった竜児の右手を掴むや、大河は自分の胸元へ引き寄せる。
もちろん、大河は竜児に触れさせようとしたわけではない。
胸元近くまで近づけて竜児のハンドパワーで己が胸の成長の糧としようとしたのだ。
まったく切羽つまった虎は何をするか分からない。



296 :しあわせの逢坂タイガー伝説3 ◆x6jzI2BeLw :2010/02/09(火) 23:28:53 ID:3A1ErIhl0

大河から逃げようと中腰状態だった竜児は右手ごと大河に引っ張られてバランスを失った。
大河も竜児の右手を力強く引き過ぎた。
このふたつが重なった時、予期せぬハプニングが起きてしまう。
竜児の手は体重にも後押しされて、止まるはずの大河の胸元、数センチ手前の最終ラインをオーバーランした。


その瞬間、高須家の居間は氷河期へ突入。


その直後、大河の悲鳴と声にならない竜児の叫び声が部屋に交錯する。
大河に激しく突き飛ばされた竜児は仰向けに倒れ、後頭部をしたたかに打ちつけたあげく白目を剥いて悶絶しかける。
己が胸元を両手で守りながらも、宇宙人語を発しあっちの世界へトリップし掛ける竜児に大河は狼狽する。
「ちょ・・・竜児、大丈夫?」
慌てて竜児へ駆け寄ろうとする大河にドジの神は優しく微笑んだ。
両足をもつれさせ、大河は見事に転んだのだ、倒れた竜児へ向かって・・・。


体重プラスの加速度を付けて竜児の胸に飛び込むことになった大河。
大きな音を立ててぶつかると、さっきの比では無いくらい広い面積で竜児と大河は胸元を中心に触れ合う。
「ごめ・・・竜児?」
ぶつけた顔面をしかめながら大河は謝る。
そして起き上がろうとした大河は自分でも意味不明な言葉を漏らしてしまった。
「ひ、ひゃああ〜」
起き上がろうとする大河を竜児はそっと腕で抱き締めていた。
普段の竜児なら絶対にしないような振る舞いだが、頭を打ったせいで剥き出しになった意識が竜児を動かす。

「り・・・竜児?」
恐る恐るといった感じで大河は竜児の顔をのぞきこむ。
竜児の意図が読めないからだ。
その竜児は目を閉じたまま、意識がもうろうとしているみたいに大河には見えた。
「ちょっと、あんた、大丈夫?・・・ねえ、竜児ってば」
ぺちぺちと利き手で大河は竜児の頬を軽く叩く。
「ん・・・んん・・・うん」
首をよじりながら竜児がうめく。
その様子に大河はほっと胸をなでおろす。
・・・良かった、大丈夫みたい。



297 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/09(火) 23:30:37 ID:VGPtpNLd0
巨乳タイガーを登場させてもいいのよ

298 :しあわせの逢坂タイガー伝説3 ◆x6jzI2BeLw :2010/02/09(火) 23:31:00 ID:3A1ErIhl0


だけど、この状態、どうしようか?
大河はそう思う。
そんなに強い力で竜児が抱き締めているわけでもないので、振り解こうと思えばそれは大河にとって簡単なことだった。
でも、あえて大河はそうしようとしなかった。
・・・少しだけ、いいかな。
そう思いながら、大河は竜児の胸板へ頬をそっと寄せた。

・・・竜児って・・・大きいんだ。
改めて思う大河。
雛が親鳥に包まれているような安心感を覚え、大河は心が安らぐ。
その一方で、止まらない胸の鼓動を持て余し、思わず深呼吸する。
鼻腔を竜児でいっぱいに満たした大河から笑みがこぼれた。

広い竜児の胸の中に身を横たえて、大河は今までに味わったことの無い甘酸っぱい感情に心が満たされて行くのを感じていた。



秒針が長針を10回くらい追い越した後。
「は〜い、お待たせ・・・ん?どうしたのふたりとも、おふろで上せたのまだ引かないの?」
コンビニの袋からペットボトルを出しながら泰子が言う。
飲み物が無いからコンビニに寄ってから帰ると、ワンテンポ遅れて戻った泰子。
ちゃぶ台の前で向かい合ったまま顔を赤くしてうつむく竜児と大河を見つけ、泰子は不思議そうにふたりを見たのだった。


299 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/09(火) 23:33:02 ID:3A1ErIhl0
以上です。

相変わらずパンツネタでごめん。

しかし、昨年末から規制が多いなあ

300 : ◆Eby4Hm2ero :2010/02/10(水) 05:03:34 ID:16cvyi8W0
>>283-285
代理投稿感謝です。

>>299
乙&GJ!
2828しちまうぜ〜。

301 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2010/02/10(水) 05:05:17 ID:16cvyi8W0
お題 「復帰」「顔」「勉強」



「ねえ竜児、私達何してるのかしら」
 眉根を寄せて呟く大河。
「何って……勉強だろ」
 卓袱台の上、並んで座る二人の前には広げられたテキストとノート。
「せっかく二人きりなんだし、もっと恋人っぽいこととかしたいと思わない?」
「そりゃ、思うけど……復帰したばっかりだから、休学してた間の勉強教えてくれって言い出したのは大河じゃねえか」
「そんなもの、竜児と一緒に居るための口実に決まってるじゃないの。だから、ねえ……」
 寄りかかる大河に、しかし竜児は首を横に振る。
「……いや、駄目だ。勉強するって言った以上は、きちんとしないと大河の親御さんに顔向けできねえ」
「まったく、竜児ってば糞真面目なんだから……」
「おう、真面目と誠実が俺の身上だからな」
「そうだ、ご褒美とかもらえたら勉強にもやる気出るかも」
「ご褒美って……何だよ?」
「そうね……1ページ終らせるごとにキス一回とか」
「……駄目だ。いちいちそんなことしてたら余計な時間がかかりすぎるじゃねえか」
「ぶー。竜児のケチー」
「その……そういうのは、後でまとめて、な」
 頬を赤らめる竜児に、大河はにんまりと笑って。
「このエロ犬♪」
「……嬉しそうに言うんじゃねえよ」
「さー、ちゃっちゃと進めるわよー。やっちゃんが帰ってくる前に終らせないと!」

302 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/10(水) 20:37:17 ID:efz7eJAa0
GJ!
>後でまとめて
まとめて一体なにやるんすかww

303 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/10(水) 21:16:39 ID:HyFov+4f0
ギシアン

304 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/10(水) 21:33:09 ID:BMSolf/J0
ギシギシアンアン!!!

305 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/11(木) 04:08:35 ID:D2Wo2sZK0
今日の〜 仕事は 辛かった

306 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/11(木) 04:09:17 ID:D2Wo2sZK0
しまった、誤爆……

307 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/11(木) 21:46:18 ID:LbjeWGFK0
>>299
乙!
思春期って良いなぁ……
ドジの神様もナイスだw

>>301
乙!
あとでまとめて泰子が帰って来る前に全部終わらせるんですか……ゴクリ

308 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/12(金) 23:42:25 ID:/sKnF9TO0
「おう、大河! 起きろ!」
「……んー」

返事をしつつも掛け布団をしっかりと抱きしめる大河。

「おーい、また櫛枝との待ち合わせに遅刻しちまうぞ」
「……んんー?」

少し眉をひそめた大河は寝返りを打ち、
主を起床させるのに必至な駄犬の姿をチラリと見る。

「先に行けばぁ……みのりんと……」
「おう!? 何ふざけた事言い出すんだお前は!」

不意に想い人の名を出されて狼狽える竜児に大河は続ける。

「あんたみたいなGIYでもみのりんに合わせて歩くことくらいできるでしょー……」
「そういうことを言ってるんじゃ……ねぇ!」

ガバッと一気に大河から掛け布団を奪った竜児は、リビングを指さして言い切った。

「お前に朝飯を食わせないと、1日が始まらねぇだろうが!」

驚いた表情で見上げた大河の眼に映っていたのは、布団だったのか、竜児だったのか。
そのあたりは定かではないが、これ以降、大河の寝起きが若干改善された……らしい。

309 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/13(土) 01:47:08 ID:7AS1vt9N0
>>308
そしてその後ギシアンが増えた・・・と

310 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2010/02/14(日) 05:15:51 ID:QT+fORMI0
お題 「タイガー」「力ずく」「チョコ」



 小さな包みを手に竜児が席に戻ると、そこには不機嫌顔の大河が待っていた。
「……何貰ったのよ」
「今開ける所だ……おう、チョコレートか」
「今あんた、それ女子から受け取ってたわよね。みのりんというものがありながら、そのツラで浮気?駄犬のくせにお子様らしいったらないわね」
「……ひょっとして、『おこがましい』か? ともかく、ツラは関係無いし浮気でもねえ。
 こいつは、この間手芸部にエコバッグの作り方を教えた、その純然たる礼として貰ったんだよ」
「あらそう。それならまあ、いいわ」
 大河はやっと表情を緩めて、竜児に向けてずいっと手を突き出す。
「……何だよ?」
「ちょうどチョコ食べたいと思ってたのよね。それ頂戴」
「駄目だ。人様の感謝の気持ちの品をほいほいと他人に回すわけにはいかねえだろ」
「……チョコレートって犬には毒だから食べさせちゃいけないのよね。私が全部処分してあげる」
「あいにくと俺は生物学的には人間だ」
「ええい、ごちゃごちゃと……いいからよこしなさい!」
「お前、何で食い物のこととなるとそんなに意地汚いんだよ!」
「うるさいうるさい!こうなったら力ずくで……」


「どうだった?渡せた?」
「うん……」
「やったじゃん!これで顔と名前覚えてもらったはずだし、後はガンガンアタックかけて……」
「それなんだけど……私、やっぱり諦めようと思うの」
「なんで!?高須先輩ってば見た目以外は優良物件じゃん!もったいないよ!」
「だって高須先輩って、『手乗りタイガー』だっけ、あの人とものすごく仲良さそうで……私が割り込む隙間なんて無い観じなんだもの」
「う〜ん、そっか……それじゃ仕方ないかもね……」

311 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/14(日) 05:18:58 ID:La7O4RXR0
>>310
やはりきたな
チョコネタ!

312 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/14(日) 11:13:25 ID:TEEbjs330
>>310
ひどい(w

このスレ的には予定調和だけど、竜児可哀想すぎる。


313 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/14(日) 21:05:29 ID:TEEbjs330
「ハイ竜児、チョコあげる」
「おおぅ、ありがてぇ」
「わかってたんでしょ?私があげるって」
「そう思ってもドキドキするもんなんだよ。ありがたくいただくぜ……って、大河、どうした。なんで泣いてるんだよ」
「あれ?そうだね。変だよね。涙なんて」
「変だね、じゃねぇよ!どうしたんだよ!」
「えへへ。『私、普通の恋愛してる』って思ったらじわって来ちゃった」
「いや、まぁお前が嬉しいんならいいけどよ。泣くなよ」
「ふふふ。竜児、ありがと」
「馬鹿野郎、礼を言うのは俺だろうがよ」
「竜児は100点満点の彼氏だけど、もうちょっとロマンスを解してくれたら105点あげてもいいよ」
「ちぇ、何だよ」


314 : ◆x6jzI2BeLw :2010/02/15(月) 01:06:37 ID:aHDsXRSf0
>>307
見た、見られた・・・なんて騒げるのはこの頃だけの特権かも。

>>308
いかにもありそうなひとコマですね。

>>310
タイムリーな投稿、乙です。
竜児は確かに優良物件ですね。

>>313
甘すぎます。超スイートなふたり、乙でした。

さて、「しあわせの逢坂タイガー伝説」続きを投下します。
相変わらず、あれですけど・・・。
コメントなどありがとうございました。

以下7レスくらい使います。

315 :しあわせの逢坂タイガー伝説4 ◆x6jzI2BeLw :2010/02/15(月) 01:08:09 ID:aHDsXRSf0

なんで、ふたりはそんな風にしていたのか?
話は10分ほど前にさかのぼる。



柔らかくて、温かい・・・まるで抱き枕を抱えている様な感触を覚えながら、竜児は夢見心地の世界を漂っていた。
・・・何だろう?これ?
・・・ひどく、手触りが良い。
・・・温かくて、それでいて柔らかい。
・・・ん?
・・・何だ、この引っ掛かりは?
竜児がもぞもぞと手を動かすとやがて小さなパチンと言う音が響いた。


頑丈そうな竜児の胸に顔を埋め、最高級の枕にでも頭を乗せているかの様な心地良さを大河は味わっていた。
大河の後ろへ回された竜児の手が、大河の背中を撫でるようにゆっくり動く。
・・・何か、竜児の手・・・くすぐったい。
・・・ふふ、もっとこうしていたいな。
・・・ん?
・・・え?
・・・ちょ・・・ちょっと、竜児、そこは!

「ふにゃあ〜」
しっぽを踏まれた猫のみたいな声を上げた大河は竜児の胸を両手で突いて跳ね起きた。
そのまま勢い余って尻餅をついた姿勢であとずさる大河。
そして驚愕の表情を浮かべて竜児が起き上がるのを眺める。
「・・・痛え・・・何しやがる・・・」
さっき打ち付けた後頭部と、たった今、大河が突いた胸を押さえながら竜児は半覚醒のまま大河に向き合う。
その大河は竜児を前にして口を半開きにするものの「あうあう」いった調子で意味のある言葉が出て来ていない。
やがて軽度の脳震盪から抜け出した竜児は大河の様子がおかしい事にすぐ気がついた。
「大河?どうしたんだよ?」
問われた大河は両手で自分の肩を抱きかかえてまっすぐ竜児を見ていた。

「り、竜児こそ・・・どういうつもりよ?」
ようやく言語中枢を回復させた大河は言葉を発する。
「どういうつもりって・・・」
そう言い返し掛けて、竜児は自分がのびてしまう前に起きたハプニングを思い出す。
「あ、あれは大河が・・・」
柔らかな感触がわずかに竜児の手に残っている。
事故とはいえとんでもないことしてしまったと、今さらながら竜児は青くなる思いだった。
さぞかし怒っているんだろうなと改めて大河を見る竜児だが、どうもそうじゃないというのが見えて来る。
大河は訳の分からないことを言っていた。
「・・・その、竜児が・・・そういうつもりなら・・・応えるのはやぶさかじゃないわ・・・でも、心の準備とか・・・わかるでしょ?」
何のことやらさっぱりと竜児は思うのだが、そんな竜児の戸惑いを無視して大河は続ける。


316 :しあわせの逢坂タイガー伝説4 ◆x6jzI2BeLw :2010/02/15(月) 01:09:33 ID:aHDsXRSf0

「それに順番だって・・・まだ、あれも交わしてないのに・・・いきなりじゃ・・・私だって・・・嫌」
うつむいて顔を赤らめ、指先で畳をぐりぐりとほじり始める大河。
そんな大河にいつもと違った新鮮さを見出し、竜児はちょっとばかり見とれる想いがしたが、大河の話に割って入ることを忘れない。

「ちょ、ちょっと待て、大河」
「何?竜児」
「何のことだ?・・・話が見えてこねえ」
「わ、私にあんなことしといて・・・とぼけるつもり?」
「そりゃ、さっきのは悪かったけどよ」
わざとじゃないんだと竜児は弁解に努める。
「・・・あんた、覚えてないの?」
やれやれといった感じで大河は竜児がもうろうとしていた間のことを説明してやった。
「竜児はね・・・私をこうやって腕の中に・・・」
途切れ途切れな大河の話を聞き、竜児は驚くばかりだった。
・・・あの柔らかい感触は・・・うわ・・・大河だったのか。
無意識とはいえ身に覚えのある竜児は己のした所業に顔から火が出るような思いを味わう。
それでも次の大河の台詞を聞くまではかろうじて冷静でいられた。
「・・・で、あんたはこんなことをしてくれたの・・・」
そういい終えた大河は最後まで押さえていた肩の辺りから手を放した。
服の上からだったが竜児の目にもはっきりとそれは伝わった・・・大河の胸元で何かがずれたのを。
「大河、それって・・・」
「そうよ、あんたが・・・竜児が外したの!・・・ブラのホック」
言い終えた大河は真っ赤になってうつむく。
天地が引っ繰り返るほどの衝撃・・・と言うのは大げさだが竜児は頭上にたらいの一撃を受けた気がした。
そしてようやくさっき大河が言っていた意味不明な言葉が理解できた。
濡れ衣じゃないだけに竜児は返答に詰まる。


「謝んねえ・・・だけど、大河を驚かせたことは謝る」
「矛盾してるじゃない」
「意識してやったことじゃない・・・でも、そんなことしかねない下地はあったんだ」
そんなことを言いながら竜児はさっき風呂上りの大河の姿を見てときめいてしまった自分の心情を吐露する。
「どきっとしちまった・・・大河がこう・・・何ともいえないくらい・・・かわいらしくて」
語尾はごにょごにょとした竜児だったが大河にはしっかり伝わった。
「え?・・・嘘?」
「嘘じゃねえ・・・大河はかわいい、間違いない!」
思わず力強く言い切る竜児に大河は大きく目を見開く。
数秒間、まじまじと竜児の顔を見つめた大河は目線を下へ逸らすと「ありがと」とつぶいやいた。

「竜児が・・・そんなことする奴じゃないって・・・分かってるつもりだったんだけど、びっくりしちゃって」
大河は竜児の胸を思いっきり突いたことを詫びた。
「俺こそ・・・その・・・なんだ・・・半分無意識とはいえ、大河にあんなことしちまって」
心の底から謝る竜児に大河は笑みを返す。
「いいよ竜児、もう謝らなくて」
竜児の気持ち、伝わったからと大河は体を前のめりにして竜児に近付いた。
そんな大河へ竜児はひどく真面目な顔で言い出す。

「約束する」
「約束?」
「ああ、・・・いつか・・・もしもだけど・・・俺がそんな気になったとしても・・・大河の気持ちを無視したりしねえ」
真剣すぎる竜児に大河は少し嬉しくなる。
「竜児、あんた、先走りすぎ」
笑いながら大河は竜児の鼻先へ顔を近づける。
気持ちを打ち明けあった訳でもないのに、お互い妙な会話をしていると竜児も大河も思ったのだが、不思議とそれが嫌じゃなかった。
間近で見詰め合い、お互いの瞳を覗き込む竜児と大河。
大河の瞳は竜児を映し、竜児の瞳は大河を映す。
言葉以上の物を探して、しばらくの間ふたりはそうしていた。


317 :しあわせの逢坂タイガー伝説4 ◆x6jzI2BeLw :2010/02/15(月) 01:10:58 ID:aHDsXRSf0

「そうだ、竜児」
思い出したように大河は言う。
「何だ?」
「あっち向いてて」
自分の座っている位置とは反対方向を指す大河。
「いいけどよ、何でだ?」
「見たいの?竜児」
そう言われて大河の胸元を見た竜児は黙って後ろ向きになる。
「ちょっと待ってて・・・・・ん・・・あれ・・・あ、もう」
ホックが外れてずれたブラを正しい位置へ直そうと大河は服の裾から手を入れ、調整するも上手くいかず、悪戦苦闘する。
「もうちょっと・・・あ〜やだもう」
更に上手くいかないのか苛立つ大河。
後ろを向いたまま竜児は背後の様子が気になって仕方が無い。
あまりの大河の不器用さ加減に竜児はやってやるよと言いたくなるのを堪える。
・・・もっともそんなこと言ったら、命がいくつあっても足んねえだろうな。
そう思い、苦笑しながら竜児は大河が作業をやり終えるのをじっと待った。

その大河はちっと言う小さな舌打ちをするとがさごそと衣擦れの音を立て始める。
あきらかに上着を脱いでいる気配に竜児は息を呑む。
「・・・大河?」
「うるさい!こっち見たら殺すから」
小手先の修正では上手く行かないと悟った大河はどうやら最初から付け直す気になったらしい。
おいおいと竜児は事の成り行きに呆然とするばかり。
わずか1メートル後ろで脱衣中の大河。
パサとかガサとか布同士が発する音が嫌に耳に響くと竜児は思わざるを得ない。
・・・早くしてくれ。
竜児がそう念じていた時、借家の外階段が甲高い音を立て始める。

コンビニ寄って行くから先に戻っていてと銭湯の帰りに別れた泰子が戻って来たのに相違なかった。
「た、大河、早くしろ・・・泰子が帰って来ちまった」
別に不純なことをしているわけではないのだから、堂々としていればいいじゃないかと人は言うかもしれない。
だけど、ふたりきりの部屋の中で上半身半裸でいる大河の存在を丸く納得させる言い訳を考えるには時間が無さ過ぎる。
いくら泰子でもこのシュチエーションを見て誤解しないはずが無い。
大河も相当慌てているのが背後から伝わって来る。
「や、やだ・・・時間よ、止まれ!!」
パニックを起しかけたあげく、出来もしない魔法の発動を試みる大河に竜児は見切りをつけ、振り向いた。

「大河、わりい」
ひと声、掛けるいや否や、竜児は超高速な技を繰り出し、大河を着付けた。
目を見開いて、ただ呆然と竜児にされるがままの大河。
玄関ドアが開くのと竜児が大河へ最後の上着を着せ掛けるのがほぼ同時だった。

かくして、赤ら顔でうつむく竜児と大河が出来上がった・・・と言う次第である。



318 :しあわせの逢坂タイガー伝説4 ◆x6jzI2BeLw :2010/02/15(月) 01:12:11 ID:aHDsXRSf0

お休みの日は早く眠くなるとか言って泰子は既にふすまの向こうで寝息を立てており、居間はふたりきりだった。

とっさの事とは言え、とんでもないことをしちまったと竜児は頭を抱えたくなる。
後でよく考えれば、大河を自分の部屋に追いやってふすまを閉めればいいだけのことだったのだ。
自分もかなりうろたえていたと竜児は思う。

ちらりと竜児は大河を見やる。
ちゃぶ台で頬杖ついた姿勢でボリュームを落としたテレビを見ている大河だが、竜児の視線に気が付くとつと、目を逸らす。
少し怒っている様だが、いつもと違う大河の様子に竜児は困惑する。
大河が本気で怒っているならとっくに竜児の家を飛び出してマンションに戻っているだろう。
あの後で大河は竜児から少し離れた場所に腰を落ち着かせて、竜児から距離を取る姿勢を見せた。
会話もあまりせず、ときたまちらりと竜児を見る大河。
・・・もしかして、変に警戒されてんのか、俺。
竜児としてはそう考えるしかないのだが、どうも大河を見ているとそんな感じでもなさそうだった。

・・・考えてもしかたがねえか。

「なあ、大河」
「何?」
「さっきのこと、怒ってるなら・・・」
「さっきの?・・・ああ、あのことね・・・いいのよもう・・・私だってやっちゃんに変に思われたくないもん」
竜児のしたことは間違ってないと大河は言う。
「じゃあ、何があるんだよ?」
「何も無いわ」
「嘘、つけ」
「嘘じゃない」
「じゃあ、どうして俺から離れるんだよ?」
竜児が大河へ近付くと、大河は少しだけ竜児から離れようとするのだ。
「バレてた?」
「ああ、バレバレだ」
仕方ないと言う顔で大河は話し始める。
「竜児が・・・頭打ってた時のことは言ったわよね」
「ああ・・・その・・・俺がおまえを・・・ナニしてたって」
抱き締めていたとは恥ずかしくて言葉に出来ない竜児。
「そうよ・・・で、変なハプニングあっていきなり終わって・・・それで・・・」
言い難そうに大河は続けた。
「・・・中途半端って言うの?・・・何だかもやもやしてて・・・変な気分なの」
泰子がいなかったら、そのまままた竜児の胸に飛び込んでしまいそうだったと大河は告白する。
「だから、竜児が近くにいると・・・つい・・・そんな気分になっちゃう」
だから、少し離れれていたと大河は理由を説明する。
そして、ここまで言ったんだから何とかしてよと大河はもはや遠慮会釈が無い。
「ど、どうすれば・・・いいんだよ?」
竜児はためらいながらも大河の要望を聞き出す。
「・・・して・・・ぎゅって」
ちらりと竜児を見た大河は横顔を見せたまま、淡い赤色絵の具をブラシでひと刷きしたみたいな頬を竜児へ向け、大河は求めた・・・竜児の抱擁を。


319 :しあわせの逢坂タイガー伝説4 ◆x6jzI2BeLw :2010/02/15(月) 01:14:17 ID:aHDsXRSf0

おずおずと言う感じで差し出された竜児の両手。
大河は自らゆっくり竜児へ近付き、腕の中へ吸い込まれる。
近付いて来る大河に覚悟を決め、竜児はしっかりと大河を受け止めた。
鼻に掛かったような声を少し上げ、大河は竜児の胸に収まる。
お互いの鼓動が聞こえてきそうな近距離で互いに温もりを確かめ合う。
「・・・暖かい」
心の底から搾り出すように大河は声を漏らした。


「もう、いいわ」
やがて、腕の中で大人しかった大河は顔を上げ、竜児に告げる。
「おう」
ゆっくり、大河の背後へ回した手を緩める竜児。

潤んだような大河の瞳が竜児を捉える。
「・・・ごめんね・・・変なこと頼んじゃって」
「俺は一向に構わねえけどよ」
「うん、こうしているとものすごく気持ちが落ち着いたの・・・何でかな?」
そうつぶやいた大河の肩がやけに小さく見えて、竜児は再び大河を抱き締めたい衝動に駆られた。

「竜児?」
「・・・いや・・・何でもねえ」
再度、大河を腕の中に入れたら・・・それだけで済ませる自信は竜児に無かった。
それでも隣の部屋の泰子の存在が竜児を止めていた。
そんな竜児の気持ちを見抜いたかの様に大河はするりと竜児の腕から身を抜け出すと「帰るね」とひとこと。
「・・・ああ、気を付けてな」


玄関先で靴を履き終えると大河は竜児を真正面から見る。
「ねえ、竜児」
「おう」
「約束・・・忘れないでよ」
「約束?」
「したでしょ」
「ああ、そうだったな」
大河の気持ちを無視しないと約束した竜児。
「・・・良かった」
「何が良かったんだよ?」
「別に・・・これからも安心して竜児の家で昼寝できるかなってこと」
大河は少し悪戯っぽく笑う。
「じゃね、竜児」
「おやすみ、大河」
「おやすみ、竜児」
何気なくした挨拶。
竜児は気づかされる。
・・・おはようって挨拶出来る奴はたくさんいる。
・・・でも、おやすみって挨拶できる奴は・・・


320 :しあわせの逢坂タイガー伝説4 ◆x6jzI2BeLw :2010/02/15(月) 01:15:37 ID:aHDsXRSf0

「どうしたの?竜児」
「いや・・・何でもない・・・そうだ、明日の弁当のおかず、何がいい?」
「お弁当?・・・そうね、サーロインステーキ、ミディアムレアで焼いたの」
「出来るか、そんなの」
「いいじゃない・・・竜児にたっぷり幸運を分けたんだから」
「いつのことだよ?」
「さっき・・・大河様からいっぱい」
茶目っ気を込めて大河は言う。
・・・しあわせの手乗りタイガー伝説。
それは文化祭の後で流れた噂ばなし・・・逢坂大河に触れた奴は皆、幸福を手に入れると言う伝説だった。
「あんだけ、私に触れたんだから・・・竜児は幸運いっぱい」
だからそのおすそ分けで明日のお弁当くらいは豪華にしろと言う。
「わかったよ」
竜児は手を上げて全面降伏。
「ステーキは無理でも、少しは豪華にしてやる」
「本当?」
うなづく竜児に明日が楽しみと言い残して大河はドアの外へ消える。

閉められたドアの向こう。
大河が立てる階段の足音が聞こえなくなるまで竜児は玄関に立ち尽くす。

・・・あの時も思ったけどさ。
・・・大河の幸福は誰が考えるんだよ。
・・・分けてばっかりじゃ・・・駄目だろ、大河。

・・・そうだ、こうすればいいじゃねえか。
・・・大河から幸せを分けてもらったら、三倍返しだ。

・・・名付けて「しあわせの逢坂タイガー伝説」
・・・うん、いいんじゃんねえか。


・・・でも、三倍返しってどんだけ悪徳なんだよ。

そこが大河らしいとひとり笑う竜児の声が玄関先で楽しげに響いていた。




321 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/15(月) 01:16:29 ID:aHDsXRSf0

以上です。

これにて「しあわせの逢坂タイガー伝説」は終了です。
短い間ですが読んでくれましてありがとうございました。


322 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/15(月) 01:21:05 ID:rZEIBEd60
>>321
おつかれーそしてGJ
次は超しあわせの逢坂タイガー伝説が始まる事を祈る

323 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/15(月) 03:31:59 ID:XuLgIy480
>>321
GJ&乙。二人の距離感にムズムズしたw

久々に来てみたけど、19スレ目なのか。
単体カップリングのみで20スレ近く回したのは結構スゴイね。

324 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/15(月) 04:36:24 ID:NInB7e7h0
>>321
乙!
なんというか、ドキドキ感がたまらんですよ

325 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/15(月) 21:18:10 ID:syKe9CIJ0
>>313
(*´Д`)ポワワ

326 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/15(月) 21:26:22 ID:5IMXvXKF0
>>310
乙!
ヤキモチタイガーいいね!
この二人に割ってはいるには玉砕の覚悟が必要だわなw

>>313
乙!
ロマンス5点って配点がなんか大河らしいw

>>321
乙!
なんていうか、こう、原作1巻の後半の方読んでる感じでほんわかした!
竜児のテクニシャンっぷりにも感動したw

>>323
まだまだいくよー!

327 :代理投稿:2010/02/17(水) 23:35:16 ID:9YC3PX/x0
バレンタインも過ぎた今日この頃ではありますが・・・・・書き手さんのISPには規制の嵐が吹き荒れているようです

というわけで転載

123 名前: ◆QHsKY7H.TY[sage] 投稿日:2010/02/17(水) 20:54:52 ID:???
新作投下しようと思ったらまたアク禁だった。

なのでこっちに投下します。
代理投稿歓迎、というかしてくださってる方いつもありがとうございます。

328 :ゲームは一日一時間〜一時間目〜 ◇QHsKY7H.TY:2010/02/17(水) 23:36:23 ID:9YC3PX/x0
「ねぇ竜児、これ聞いてみて」
「おぅ?」

大河はニコニコしながら竜児にプレイステーションポータブル、通称PSPを近づける。

『だーいすき!!』
「おわっ!?」

唐突に聞こえて来たのはここに居るはずの大河の声での大音量による告白。
思わず胸がドキドキしてしまった。

「あー驚いてる驚いてる」

大河はしてやったりとしたり顔。

「な、何だよ今のは」
「竜児『Routes』ってゲーム知ってる?これ結構面白いんだよ」

大河がそう説明していると、何故か発してもいない自分の声がPSPから聞こえて来た。

「ちょっと待て!!何でゲームから俺の声が聞こえてくる!?」
「ああこれ?えっとねぇ、なんとヒロインと主人公の声優が私たちと一緒なのだ!!」
「いや、だからってお前これは……」

PSPから流れてくる大河のバリバリストロヴェリィボイス。

「ああこれ?一旦落ちると甘々になるみたい……って何耳塞いでるのよ竜児」

竜児は耳を塞いで何やらブツブツ言っている。

「これは大河じゃないこれは大河じゃないこれは大河じゃない、そもそも俺にこんな甘い声を大河は出さない」

それを見た大河はニヤリと笑うと差し足抜き足忍び足。
竜児の耳元に近寄ると、小さく小さく、甘く甘く、呟く。

「りゅうじぃ?」
「ひゃー!?」

途端、竜児は大河のような叫び声を上げる。
それを見て大河は大笑いした。

「な、何だよ!!」

竜児は気分を悪くしたのか、そう言い捨てて何処かへ言ってしまう。
一人になった大河はふっと表情を消すと、PSPにポケットから出したイヤホンを繋ぎ、

「竜児の声、聞こえるよ」

トロンとした笑みを浮かべてゲームを再開し出した。

329 :ゲームは一日一時間〜二時間目〜 ◇QHsKY7H.TY:2010/02/17(水) 23:38:07 ID:9YC3PX/x0
「うう、わかる、わかるよぉ」

ふと竜児が気付くと、大河はいつの間にかプレイステーション2、通称PS2をやっていた。
また何か変なゲームをやっているのかと竜児が訝しがりながら見たパッケージ。
それは、

「Fate/stay night?ああ、結構人気出たビジュアル伝記ノベルか」

しかし、そうなると大河が涙ながらにわかると言っている意味がわからない。

「竜児、私この人の英語の授業なら真面目に受ける気がする」
「一気に謎が解けたな、っていうかつまりお前は担任の授業は真面目に受ける気がねぇとそういうことか」

Fate/stay nightには英語教師として藤村『大河』という女性が出てくる。
これがまた冬木の虎と呼ばれているキャラで、しかも大河という自身の名前を気に入っていない。
だというのに、

「虎を深く憎み、同時に深く愛しているなんて……なんて素晴らしいのかしら」
「まぁ確かに似てる部分はあるわな、虎って呼ばれたり、そういや剣道も強いんだっけ」
「そう、そうよ!!この人こそ私の指標となる人物よ!!そうだ、竜児アンタは料理が上手いから士郎よ!!」
「でえっ!?俺そんなに強くねぇよ!!」
「いいのよ!!無駄に細かいし」
「それに俺が士郎でお前が藤ねぇになったら物語的に恋愛要素絡まねぇぞ」
「あ……」

忘れてたとばかりに大河はコントローラーを取り落とす。
瞬間画面では、

『ソコツものがー!!』

とタイガー道場よろしく藤ねぇのデンドエンドった後の画面になっていた。
大河しばし悩んだ後、ポチリと電源を落とす。

「もうやんないのか?」
「ん、ここにエコエコ大魔神がいるから、あんまりゲームやってると電気代云々って文句言われるし」

本当に理由がそれだけなのかはわからない。
わからないが、

「じゃ、買い物にでも行くか」

竜児も大河に習ってゲームの事は頭の隅に追いやった。
ちなみに……あと十分大河がゲームを続けていたら大河の考え通りの事を竜児が言っていたのは言うまでも無い。

330 :ゲームは一日一時間〜三時間目〜 ◇QHsKY7H.TY:2010/02/17(水) 23:40:04 ID:9YC3PX/x0
「なんだ、またゲームやってるのか、大河」
「ん」

大河はこちらにパッケージを見せる。

『龍が如く』

「おぅ、これって結構人気のあるゲームじゃねぇか、確か極道になるゲームだよな」
「そう主人公が堂島の龍って呼ばれるの、これは1だから遥って女の子に出会って……って感じね」
「ほぉ、こういっちゃ何だか珍しく俺たちに絡みのないゲームじゃないか」
「そう?」

竜児がそう言った時、

『おじさん、あれあれ』

画面からは大河の声が聞こえて来た。

「……まさか」
「えへへ」

遥という少女の声は竜児の直感通りだった。
中の人が同じなのだ。
しかし、それだけだ、それだけ。

「これは遥が桐生に護ってもらうんだよ」
「桐生ってのが主人公なのか」
「そう、堂島の龍」
「……ん?龍?」

嫌な予感がする。
龍→竜。
極道→目つき悪い、というか恐い。
護られる少女→大河と同じ。

「全然関係無くねぇじゃねぇか!!」
「そ、そぉ?」
「目を逸らすな!!お前わかっててやってるだろ!?」
「べっつにぃ……あ、そうだ竜児」
「別にって……なんだよ」
「ほら、今画面で遥が桐生に聞いてるじゃない?『ソープって何?』って」
「うぉぉう!?」
「ここで桐生は風呂だって言った後誤魔化しちゃうんだよね、ねぇソープって何?銭湯?」
「さ、さぁ?」

ジトーっと横目でしばらく大河は竜児を睨む。
惚けてないで早く教えろということだろう。

「黙ってないで何とか言うのだこのエロ犬!!」
「エロ犬ってお前絶対意味わかって言ってんだろ!?」
「さ、さぁ?」
「俺と同じ惚け方してんじゃねぇ!!」

-------------------------------------------

331 :代理:2010/02/17(水) 23:47:03 ID:9YC3PX/x0

128 名前: ◆QHsKY7H.TY[sage] 投稿日:2010/02/17(水) 21:08:22 ID:??? 
(抜粋)

今回はちょこっとネタの新シリーズ開拓してみた。
今度はアニメも書いてみるつもり。

ゲームもそのうち四時間目以降を思いついたら書くかも。
他の方で思いついたら方がいたら書いて下さっても結構です。

---------------------------------
ゲームやらないんで分からないけど、甘甘な大河ボイスを聞いて萌え死にたいと思ったりした
そんな雪降る夜の転載作業

332 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/18(木) 00:31:42 ID:Ds2l/0410
乙でした ROUTESか、あれは確かに萌え死んだな きちゅとか

333 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/18(木) 03:57:53 ID:AnXjKanH0
>>331
おつ!
そして◆QHsKY7H.TYの人も乙!
それにしても規制うざいな
最近多い気がする

334 : ◆Eby4Hm2ero :2010/02/18(木) 04:54:03 ID:RnbVzWyO0
>>327-331
◆QHsKY7H.TYさんも代理の人も乙!
中の人ネタは今までもたまにあったけど、
それをメインにしてのアプローチとは面白い所。
そういや四コマ漫画『恋愛ラボ』のドラマCDで、メインの二人が堀江さんと釘宮さんと知った時には思わず噴いたw

335 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2010/02/18(木) 04:55:11 ID:RnbVzWyO0
お題 「逢坂」「綺麗」「午後三時」



 日曜、午後三時。
「暇ねえ……」
 卓袱台の横に寝っ転がりながら大河。
「おう……」
 つけっぱなしのテレビをぼんやりと眺めながら竜児。
「……」
「……」
「ほんっっっとうに、暇ねえ……」
「そんなにヒマヒマ言うなら泰子について行けばよかったじゃねえか」
「だって、やっちゃんのお買い物って洋服じゃない」
「おう」
「否応無しに再確認させられちゃうのがちょっとね……その、サイズ差とか」
「……おう」
「……」
「……」
「ねえ竜児、今日の晩ご飯何?」
「アサリが絶賛砂抜き中だ。バター炒めにするつもりだけど、酒蒸しやボンゴレスパゲティにもできるぞ」
「……」
「……」
「ねえ竜児、しりとりしない?」
「何だよ急に」
「お題は綺麗な物・可愛い物で制限時間は30秒。パスは不可。で、私が勝ったら晩ご飯のおかずはとんかつに変更」
「俺が勝ったら?」
「そうね……今日のご飯の後片付けを手伝ってあげる」
「ほほう……乗った」

「パ……パ……パ……『パンダ』! 『だ』だぞ大河」
「ち、意外に粘るわね。『ダリア』。ほら、『あ』よ」
「くっ、また花の名前か……なんでそんなもんに詳しいんだ、お前は」
「あら、女子の嗜みってやつよ」
「ちくしょう、考えたらお題の段階で知識量的に男子の俺のほうが不利じゃねえか……」
「今更気づいても後の祭ね。ほらあとじゅ〜う、きゅ〜う、は〜ち……」
「あ……あ……あ……」
「よ〜ん、さ〜ん、に〜い」
「あ……『逢坂大河』!」
「……は?」
「だから、『逢坂大河』で『が』だって、ほら」
「え?ええ?」
「綺麗な物・可愛い物だからOKだろ。人の名前は駄目とも言ってねえしな」
「ちょ、ちょっと、それって……その、つまり……」
「ほらあと10……9……8……」
「ま、待ってってば!」
「パスは不可だろ。3……2……1……0!俺の勝ちだな、大河」
「あ……あ……今の駄目っ!反則っ!」
「何がだよ。ルール違反はしてねえぞ」
「そういう問題じゃないっっ!だって、綺麗、可愛いって……」
「客観的に見てそうなんだからいいじゃねえか。違うって言うのか?」
「そ、それは……その……か、帰るっ!」
「お、おい、大河?なんか顔赤いぞ?風邪とかじゃねえだろうな?」
「う、うるさい!ついてくんなエロ犬っ!」
「エロって何だよ!?」

336 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/18(木) 11:05:17 ID:j5sGT2zWO
これはニヤケるwww

337 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/18(木) 12:33:56 ID:Oi9fbGuU0
>>335
うん、2828できるわ、これはwww

338 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/18(木) 22:16:53 ID:XmsORcPr0
>>335
あー、あー、そうだった。竜児は無意識の一言で鳴らした女殺しだった(w

でも竜児、しりとりは全国レベルで固有名詞禁止だぞ。

339 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/18(木) 23:34:45 ID:+ccOifyd0
>>328-330
乙!
ゲームしないから細かいことわかんないけど、面白いw
今後のシリーズも期待してます。

>>331
代理乙!
俺も萌え死にたいと思ったよ

>>335
乙!
この鈍犬はホントにwww
顔が緩みっぱなしです


340 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/19(金) 23:20:43 ID:q5F4KN0k0
「えへへ〜りゅうじぃ〜」
「おう! たいが〜」

竜児の胡座の上に向かい合う様に座った大河は真正面から抱きついた。
それに応えるように竜児も大河を抱き返す。

「いっつもそばにいてくれてありがとう〜」
「水くさいぞ大河。俺はお前のそばじゃなきゃだめなんだ」
「……りゅうじ」
「……たいが」

見つめあった二人は、それが当然のように唇を交わす。
軽く触れあうようなものから段々と情熱的なものへ。
そこが二人の楽園であるかのようにヒートアップしていく。


そんな光景をちゃぶ台の反対側から呆然と眺める人影が二つ。

「ねぇ、実乃梨ちゃん? コイツらに酒飲ませたの誰だっけ?」
「やだねぇおじいさん、もう忘れたのかい?
 "酔わせたら面白そうじゃね?"って言い出したのはおじいさんだぜ?」
「おじいさんじゃねぇし! 実乃梨ちゃんだって楽しそうに酒盛ってたじゃん!」
「おうよ! 盛るぜ〜! 超酒盛るぜ〜! ささ、あーみんももう一杯!」
「や〜ん、実乃梨ちゃんありがと〜! ってコラ!タイガーの服脱がしてんじゃねぇよそこ!」
「……ふぉおおおおお! 高須君ってばカマトトぶってるわりに大胆だねぇ!」
「実乃梨ちゃんも止めてよ!
 あー! 高須君それ以上はダメだって! タイガーも期待してんじゃねぇよ! なんなんだよお前等!?」

-------------------------------------------------------------------------------------------
飲酒は二十歳になってから

341 :おおう…:2010/02/20(土) 03:58:19 ID:oSICw6ca0
ああ〜またちょっとこないうちに新作が〜〜。
…ええい、どうしてこうも揃いも揃って人を萌え殺しそうなモノばかり…ッ!
(そーゆースレだからです)

……この後に投下するのってかなりぷれっしゃーくるんですけど。
もうね、毎度のことですがね、開きなおりますよエエ。

そんなわけで。敢えて。敢えて時期をずらしたバレンタインモノ、投下〜。

342 :WAKAME:2010/02/20(土) 04:00:34 ID:oSICw6ca0
(趣旨)みのりんをシリアス役で。あと、少し痛いかもしれない話で。

【バレンタイン異聞】


「高須くん。…大河は今日も休みなのかね?」
「ああ…」

 朝の登校時の、いつもの待ち合わせ場所。
 いつものように少し早く着いて、いつものように二人を待っていた実乃梨は、この数日精彩を欠く竜児に気遣わしげな視線を向けた。
 今週からずっと、大河は欠席を続けている。
 ちょっとした火傷を負ったというのがその理由。火傷といっても痕が残るようなこともない、ほんの些細なものであり大事をとって休んでもせいぜい1日2日程だろう、という説明を竜児から聞いたのは月曜日の朝。
 だが金曜日になっても大河は一向に復帰せず、それに比例するように竜児の顔も不安げな陰が濃くなっているように実乃梨には思える。

「念を押すけど、病院は出たんだよね?月曜日には」
「ああ。…でも、体調不良というか…具体的にどこが悪いってわけじゃなくて、とにかく元気が無いというか…」
「高須くん。…実はちょっと気になっていたんだけど、火傷は本当に大したことなかったんだよね?」
「ああ。…もう完治してる。というか病院に行くほどのことでもなかったんだが」
「そこなんだよ。…あの病院嫌いの大河が、大したことないのに医者にかかるってのがおかしい」
「……それは……まあ、一応、念のためってことで俺が」
「それに事が起こったのは日曜日……14日のバレンタインだよね」

 ピクリ、と。
 竜児の鋭すぎる眦が、僅かに引き攣るのを実乃梨は見逃さなかった。

「…ズバリ、火傷の原因はバレンタインのチョコ絡みでしょ?」
「…鋭いな、櫛枝」
「大河とのつきあいは君より長いんだぜ?この櫛枝を舐めてもらっちゃあ、いけねぇなぁ。
 でもそう考えれば色々と腑に落ちるね。愛しの高須くんのために張り切って手づくりチョコを贈ろうとした大河が、致命的なドジをやらかしアチャラカパーな事になっちゃってー、って流れ?」
「――うわぁ、全く以てその通り過ぎて何も言えねぇ」

 もう笑うしかない、という笑みを顔に張り付かせ、力なく竜児は視線を逸らせる。
 だが実乃梨は尚も竜児を解放しようとはしなかった。
 足を速め、自分より前に出ようとする竜児の袖を実乃梨はがっしり捕まえて。

「本題はここからだよ。……大河は繊細な子だから、せっかく高須くんに喜んでもらえるように、って頑張ったチョコをおじゃんにしちゃったら、そりゃ落ち込むだろうさ。
 問題は火傷なんかじゃない。不登校になっちゃうくらい、精神的ダメージを負ってしまったんでしょ?」
「…………まあ、そうなるかな」
「なんでそんなことになっちゃったの?」

 袖ではなく、竜児の手首を実乃梨は掴んできた。
 じわじわと――その手に力が込められていくのは、錯覚などではないだろう。

「なんでそんなことになっちゃったの、って訊いてるんだよ?」
「なんでって言われても…」
「高須くんは一体、なにをしたの?それとも…なにもしなかったのかい!?」

 抑え切れない腹立ちを言葉の端々にこぼしながら、実乃梨は竜児の顔を睨みつける。

343 :WAKAME:2010/02/20(土) 04:02:18 ID:oSICw6ca0
「高須くん。私は何も大河のドジを未然に防げなかったことを怒ってるんじゃない。っていうか大河の破滅的かつ破天荒なドジ神様を相手に、それは無茶すぎる要求だってことくらい、私にも高須くんでも無理だってわかってるから」
「おう。……それは確かな事実だが、割と容赦ねぇのな…」
「起こってしまったドジは仕方が無い。やり直しはきかないんだから。
 だから大河のドジにどう対処するか、っていうのが要でしょ。…こんなことわざわざ言わなくても、高須くんはちゃんと分かってるし、分かってると思ったから、私は安心して大河を託せたんだ。
 なのに、私は高須くんを買いかぶっていたのかい?
 大河は強い子だよ。でも、傷つきやすい子なんだ、大河は。
 傷ついて、それで倒れこんでしまうんなら、それはそれでいいんだ。
 倒れこんでしまったら、周りはちゃんと気づくから。気づいて、手を差し伸べてくれるから。
 でも大河は強いから、誇り高いから、傷ついても、傷ついても、我慢して、歯を喰いしばって、膝をついたりしないから、ボロボロなのに、傷だらけなのに、誰にも気づいてもらえなくて、誰も手を差し伸べてはくれなかったんだよ」
「……櫛枝……」
「そんな大河が倒れこんで、立ち上がれないとしたら。
 ――どれだけの深い傷を、負ってしまったっていうんだい、高須くん!!」
「…………」
「目を逸らすんじゃない。私の顔を見ろ!高須竜児!!
 そんな――そんな深い傷を大河に負わせられるのは、キミしかいないんじゃないのか!?
 大河がドジこいた、その時――キミは大河をちゃんとフォローしてあげたのかい!?それとも…それとも…何か不用意に、デリカシーのない言葉で傷つけたんじゃないだろうね!!?
 誰よりも信じているキミに、裏切られることくらい大河にとって辛いことなんて無いんだから!!!」
「そんなことは絶対に無い!!」

 朝の澄んだ大気を震わせる怒鳴り声に、多くは無いが周囲の通りすがった人々が驚いて二人に視線を集中させる。
 だがその視線はすぐに竜児の鋭すぎる眼光に霧散し、皆揃って足早に遠ざかっていく。
 普段、その凶眼で畏怖されてしまう竜児だが、その眼光は見かけだけのものにすぎない。普段なら。
 だが今、長めの前髪から覗く二つの瞳には、本物の怒気に満ち溢れていた。
 それを真正面から受ける実乃梨は、内心はわからないが外見は全く平然として正対している。

「…そう。なら、ワケを聞かせてよ。ちゃんと。詳しく」
「……それは……ちょっと…」
「ちょっと?ちょっとって何が!?
 大河は私の親友だ!一番の親友なんだ!私は大河が悩んで苦しんでるんなら、何とかしてあげたいんだ!
 それともなに?私には話せないっていうの!?」
「……その気持ちは…わかるけど…」
「わかる?わかるっての?だったら教えてよ!確かに、簡単にいえるようなことならすぐに高須くんだって言ってくれる。だから今まで何も言ってくれないのは、やっぱり難しい事があるからだと思う。
 そう思うから、だから敢えて今までは尋ねなかった。
 でもね、もう私、我慢の限界!
 これ以上、ただ黙ってみているだけなんて、耐えられない!」
「………」
「大河だけじゃない!私は高須くんの方も心配なの!」

 制服の胸倉を掴まんばかりの鬼気迫る勢いで、実乃梨は顔を寄せ、詰め寄る。

344 :WAKAME:2010/02/20(土) 04:05:53 ID:oSICw6ca0
「高須くんが傍にいる。大河と高須くん、二人一緒なら、大抵のことはちゃんと乗り越えていける。恐れるものなんて、何も無い。キミたちは虎と竜なんだから。
 …さっきはあんなこと言っちゃったけど、でも、私は高須くんを信じてる。
 高須くんがどれだけ大河のことを大事に思ってるか、私はちゃんと知っている。
 だから、どうしようもなく不安になってくるんだよ。
 高須くんが傍にいても、それでも大河、立ち上がれないのかって。
 そしてそんな大河に、どれだけ高須くんが心を痛めてるか、って」
「櫛枝……」

 必死に自分を見上げてる実乃梨の大きな瞳を見て、竜児は自分が勘違いしていたことに気づいた。
 実乃梨は怒っていたのではない。
 最初から…怒ってなんかいない。
 トモダチが心配で、心配で、たまらなくて、どうしようもなく不安で、怖かったのだと。
 だから、必死なのだと。

「……ごめん」
「あやまるようなことじゃないから。はは、ごめんはこっち。何時になくエキサイトしちゃって」

 今更ながらに周囲を気にして見回したりする二人である。

「…でもなぁ。そこまで真剣に心配してもらって、逆に申し訳ないっていうか。
 だってさ。すごくくだらないっていうか…それもどちらかというと、恥ずかしくて人様には言えないような類のコトでさ…」
「まあ、くだらないかどうかはこちらで判断させてもらうけど。あ、勿論、個人情報の取扱いにはくれぐれも厳重に注意するから。誓約書かこうか?」
「まあ、そのあたりは信頼してるけど。…でもさ、本当に、くだらない話なんだよ…」

  ***

 日曜日、バレンタイン当日。
 前日に言われたとおり、俺は大河の家に出向いていった。
 お母さん達は留守だから、二人っきりで――って。
 勿論、というか当然、バレンタインのチョコ絡みなんだろうなって、予想はついてたし期待もしてた。こいつのことだから、何か子供っぽいサプライズを考えてるだろうな、って。それが楽しみでもあったけど。
 だからインターホン越しにそのまま大河の部屋まで直行しろって言われて、素直にそれに従った。

「大河ー、入るぞ」

 一声かけて、ドアを開けて大河の部屋に入ると、部屋の真中で正座している大河がすぐに目に入った。
 最初の一秒は、なにしてんだ?っていう素朴な疑問。
 2秒目で、大河が正座してるのは防水シートの上だってこと。
 3秒目に、正座した大河の膝と腰を被っているのは、バスタオルってことだった。
 お前なにやってんだ、って口にするより先に、やや緊張した顔と声で、大河の方が先に話しかけてきたんだ。

「ね、ねぇ、竜児。今日はわかってると思うけど、バレンタインのチョコをね…」
「おう。…実は結構、期待してたりするけど」
「へ、へへへ…ほら、去年は…なんかすごいケミカル物質?で歯が立たないチョコになっちゃったじゃない?…ただ湯銭で溶かして固めただけなのに」
「……ただそれだけでなんでそんな謎な硬化現象起こすかなお前?まあ、結局ホットチョコにして飲んだけどな」
「うん。で、今年はそれならそれで、最初から私もそうしようかって思って」

 大河が傍らに置いてあったケトルを右手に取り上げた。
 左手は、膝を被うバスタオルを握っている。
 そして、大河は、こう言ってきたのだ。

「ね、ねねね、ねええ、ねえ竜児?
 りゅ、りゅ、りゅりゅりゅうじ、は、………………わかめ酒、って知ってる?」

 バスタオルの下に、大河は何も身につけていなかった。
 ほとんど無毛の、女の子の一番大事なところを露にして――

345 :WAKAME:2010/02/20(土) 04:07:44 ID:oSICw6ca0
  ***

「なんじゃそらああああああああああああああああああああああああああ!!!?」
「あのドジ…っていうかもうドジとかいうレベルじゃねぇだろ…。そんなとこにホットチョコレートなんか流し込んだらどうなるかなんて…」
「ちょちょちょちょちょ、火傷って!火傷って―――!!」
「だ、だいじょうぶ!大丈夫だっ!ギリギリ、なんとかケトル取り上げて…ほんの少しだけ、上の所にかかっただけだったから!言ったろ?痕も残らないようなって!!」
「あああああああああああ……もううううぅぅぅ…たいがぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜……」
「な?下らないだろ?恥ずかしくって、とても人様には言えないことだろ?
 ったくあのバカ…どこであんな下品なネタを仕入れてきたんだか…」
「も〜〜〜〜!あの子ってばあの子ってばあの子ってば〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!
 そこはホットチョコじゃなく冷ましたココアにしておきなさいってあれほど!あれほど注意しておいたのに!!」
「お前かっ!あんな親父ネタ大河に仕込んだのお前かよっ!!?」
「いやあ……大河がさ、『みのりん、りゅうじをのーさつ☆するにはどしたらいいのかりん?』とかメタタァな甘え声で懇願されちゃったらさあ…みのりんとしては全力で応じずにはいられなかったのですよ!!」
「そういう方向で応じるなあああああああああああぁっ!!
 お、おかげで大河は、大河はなあ……大河は……」
「???………はっ!?ちょっと、ちょっと上の方にだけ…かかっちゃったんだよね…」
「!!?」
「……元から薄かったけど……ほとんど無かったけど……でも少しだけあった…茂みが…」
「い、いうなっ!それ以上、いうなっ!!」
「もしかして…今の大河、下の方までつるっつるのピカピカはげ●君!!?」
「いうなっつったろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?」

 天下の往来で、もはや傍目も気にせず絶叫する竜児であった。

  ***

「やっちゃん。もう大分、良くなってきたし…そろそろお店にいかないといけないんじゃない?」
「う〜〜ん…でもでも大河ちゃん、油断しちゃだめなんだからね。女の子は腰、大事にしなきゃいけないんだから」

 連日、お見舞いと看護に来てくれている未来の義母の気遣いには素直に感謝しつつ、大河はベッドにうつ伏せになった。

「じゃあ、最後に湿布だけ、張替えお願いしてもいいかな?」
「お安い御用でがんすよ♪っていうかもっともっと甘えてくれていいんだからね?」 

 上機嫌な泰子は鼻歌交じりに大河のパジャマを少しずらすと、白い背中と腰の中間に張られた湿布を取り替える。

「いや〜〜〜…それにしても竜ちゃんって、以外にマニアックな好みだったんだねぇ〜〜」
「やっちゃん…恥ずかしいから言わないで…」
「そっか〜〜…竜ちゃん、パイなパンが好きだったんだ〜〜〜〜」
「い、言わないで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
「もー、普段お堅い竜ちゃんが、大河ちゃんの腰が砕けるくらいがんばっちゃうなんて……恐るべし、ツルツルピカピカ☆」
「ううううううう〜〜〜〜〜…複雑だよぅ……」

 バレンタイン・竜児のーさつ作戦。
 実は微妙に性交…もとい成功していたのは、実乃梨にも言えない秘密だったりします。

  <了>

346 :せめて歳のせいだと:2010/02/20(土) 04:13:18 ID:oSICw6ca0
あー。えっとー。

ある意味、イタイ話ではあるかー、とか?

…最近、下い方向のネタしか湧き出てこないのは問題。
きっとこれは歳のせいさ!うん!決して今まで隠れていた本性が出てきたとかじゃなくー。

マ、下ネタハホドホドニネ?

347 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/20(土) 05:46:22 ID:5F7B2cL00
>>346
成功…いや性交しなくてはな!
当然の帰結!

348 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/20(土) 21:14:36 ID:H/tph2D4O
下ネタも好きだぜ、面白かったよ、GJ!

349 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/21(日) 00:35:41 ID:qEBnb3io0
ものごっつ噴いたw

350 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/21(日) 09:07:14 ID:obkVfJXU0
BD化されるかな。そこそこ期待されているはずなんだけど。

ttp://blog-imgs-42.fc2.com/y/u/n/yunakiti/324234_20100221055522.jpg
ttp://yunakiti.blog79.fc2.com/blog-entry-4732.html

4月のスピンオフ発売がひとつのタイミングだと思ってる。そのときBDボックスが
出ないなら、しばらく出ないだろう。商売として難しいだろう事は重々わかっているが
出してほしい。

351 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/21(日) 17:39:48 ID:6fnCJEBp0
BD化されたらクロ、ボックス帯に「ブルーレイ化はオレっちの功績!@トロステ」と
出ていいぞマジで。

前回のベスト3(true tears・ゼーガペイン・かみちゅ!)のうち2つは既にBD化決定、
今回のベスト3(ゼーカペイン・とらドラ!・涼宮ハルヒ)…ハルヒはそのうち
間違いなくBD-BOX出るだろうけど。

352 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/21(日) 22:08:12 ID:gGalYqDP0
大河のおまんまんが高須棒ですりきれる

353 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2010/02/22(月) 03:47:19 ID:p4J4n90S0
お題 「財布」「ポーズ」「肉」



「おう、しまった」
「竜児、どうしたの?」
「ラッピングタイがねえ」
「ふーん」
 大河は気の無い返事を返しつつ目の前のクッキーをぱくり。
「しかたねえ、買って来るか」
 財布を手にした竜児はドアの前でくるりと振り返り、
「大河、一応言っておくぞ。台所のクッキーは泰子が店に持って行く分だから食うなよ」
「あんたねえ……私を何だと思ってるのよ」
「ショック!よっく!ま……じん!」
 ばさばさと羽ばたくインコちゃんを大河はぎろりと睨みつけ、
「ブサ鳥……あんたは一度きっちり教育してやらないといけないようね……」
「やめろ大河、インコちゃんを虐めるな」
「だって、このブサ鳥が……」
「お前がつまみ食いとかしなきゃいいだけの話だろ」
「それはまあ、そうだけど……」
「それじゃ、ちょっと行ってくる」
「ん、いってらっしゃい」


 視線を落とせば卓袱台の上に空になった皿。
 上げて見やれば台所で大皿に盛られたクッキー。
 泰子はまだ寝ているので、部屋で動くのものは一人と一羽のみ。
 落として、上げて、落として、上げて……
 やがて無言で立ち上がる大河。
「だ……だだ……ダメ、ゼッタイ!」
「静かにしなさいブサ鳥。あんたにも欠片ぐらいはわけてあげるから」
「なにもみてナーイ、きいてナーイ」
 それだけ呟いて沈黙したインコちゃんを尻目に、大河は抜き足・差し足・忍び足。
 そろそろと台所に近づいて皿を覗き込めば、ふわりと立ち昇る甘い香り。
 思わずごくりと唾を飲み込んで、手を伸ばしかけた大河の脳裏に蘇るのは竜児の言葉。
『――食うなよ』
 ポーズをかけたように、数瞬大河の動きが止まる。だが、
「……これだけいっぱいあるんだから、ひとつぐらいいいわよね……」
 再び動きはじめた指先がクッキーに触れた瞬間、
「おい大河」
 ぎぎぎ、と、大河が玄関の方に顔を向ければ、そこでは呆れ顔の竜児がドアを開けていて。
「お前なあ……」
「あ、味見よ!味見をしてあげようと思ったの!」
「さっき、一緒に焼いたやつ食ってたじゃねえか」
「でもほらやっちゃんがお客さんに配るやつだし万が一ってことがあったらいけないから念の為に」
 はあ……と竜児は溜息ひとつ。
「食ってもいいぞ」
「ほんと!?」
 たちまち顔を輝かせる大河。しかし、
「その代わり、晩飯のおかずの大河の分の肉の割り当てを減らすけどな」
「う」
 竜児の言葉にその動きが止まる。
「クッキーか肉か、大河が好きな方を選べ」
「ぐぐぐ……」
 クッキーを手にしたまま、眉根を寄せて苦悩し続ける大河。
 竜児は暫らくそれを眺めていたが、やがて再び深い溜息を。
「ちょっと待ってろ。もう少しクッキー焼いてやるから」

354 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/22(月) 12:37:00 ID:fBXVJFxq0
>>353
いかにもって感じで、読んでて楽しいわ、これ。
乙でした。

355 :代理:2010/02/22(月) 17:10:14 ID:/k8UrTNS0
名前:まとめ人 ◆SRBwYxZ8yY 投稿日: 2010/02/21(日) 16:32:53 ID:???
まとめサイト更新しました。

うおおお…携帯で狐ぽをゲットしてお試し●をもらおうとしたらキャンペーン終了で2000Pしかもらえなかった…ッ!
チクショウ!早く規制解けやがれ!

あーBD化しないかナー
消失面白かったナー




−−−−−−−−−−−−−−

まとめ人様、いつも乙です!






356 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/22(月) 18:36:50 ID:5C3NWTBn0
>>353
ありそうww

>>355
いつもありがとうございます!
代理の人も乙!

357 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/24(水) 04:27:00 ID:W8bB+jHr0
>>355もおつ

358 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/24(水) 10:58:52 ID:FsRFlxMN0
355 乙です

359 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/24(水) 21:08:55 ID:yEx6JwLL0
>>346
ワロタw
その状況でエレクトロした竜児を想像するとまた笑えるw

>>353
乙!
本当にありそうな感じでGJ!


>>355
いつもありがとうございます!
あなたのおかげで頑張れます。
代理の人も乙!

360 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/26(金) 01:29:18 ID:dzjbhlZb0
まず大河を脱がします

361 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/26(金) 03:50:08 ID:fj2gkeW90
つむじから爪先まで隈なくナデナデします

362 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2010/02/26(金) 03:53:13 ID:0IfDgIF30
お題 「飲み込む」「ワカメ」「問題」



「ふぁ、みふぇひゅうじ」
「……口の中にモノを入れたまま喋るな」
 呆れたように竜児に言われ、大河はおやつのカステラをごっくんと飲み込む。
「見て竜児、変なのやってる」
「おう?」
 大河が指差したのはつけっぱなしのテレビの画面。ワイドショーの1コーナーで、『好きな味噌汁の具ランキング』
「八位ジャガイモ、七位玉ねぎか……俺はこの二つはセットで使うな。少なくともジャガイモ単品のは作ったことがねえ」
「五位が葱だけど、玉ねぎと別なんだ」
「そりゃまあ、味が違うからな。そういや葱もあまり単品では使わないな。大概豆腐やワカメとセットだ」
「でもきのこ類はざっくりと一纏めで六位になってるわよ」
「おう、確かに……どういう基準なんだろう?」
「というか、お味噌汁できのこってなめこ以外にあるの?」
「割高だからあまりやらねえけど、舞茸もけっこう美味いぞ」
「ふ〜ん」
「四位から上はやっぱり定番だな。大根、油揚げ、ワカメ、豆腐か。なめこの時の大根おろしは具として見ていいんだろうか?」
「……知らないわよ」
「しかし、味噌汁の具って単品より二種類ぐらい組み合わせる事の方が多いよな」
「それより問題は小数意見ってやつよ……キャベツと卵ってアリなの?」
「いや、それは悪くないんじゃねえかな。キャベツの切り方や卵を溶かずに落とすか掻き玉にするかとかで違ってくると思うけど」
「ベーコンと玉ねぎ……なんか洋風よね」
「バターを一欠片入れて、ミソスープって所かな」
「素麺……味噌汁の具の範疇を越えてない?」
「というか、それはもうにゅうめんだよな」
「にゅうめんって?」
「暖かい汁で食べる素麺のことだ。今度作ってやる」
「トマト……」
「聞いた事はあるな、旨み成分が豊富だとかなんとか。トマトの酸味が味噌汁と合うのかどうか……」
「キムチは?」
「それは流石に未知の領域だな……」
「……ねえ、竜児はどんなのが好きなの?」
「おう、俺はやっぱり基本の豆腐とワカメかな。作るのに手間もかからねえし」
「簡単だからって理由はあんまり竜児らしくないわね?」
「味噌汁作る時ってのは他のおかずも並行して作ってるからな。手数が少ないにこしたことはねえよ」
「へえ、そんなもんなんだ」
「大河はどれが好きなんだ?」
「ん〜……何でもいいわ」
「何でもって……作る方としては一番困る解答だな」
「だって、竜児が作るお味噌汁は全部美味しいんだもの。だからみんな好きで、何でもいいの」
「お、おう……」

363 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/26(金) 21:18:19 ID:GvD6zvlh0
ニヤニヤ

364 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/27(土) 00:50:31 ID:dzvugPJv0
大河の子袋に子供を寄生させたい

365 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/28(日) 01:09:22 ID:EKDYYJmW0
>>362
乙!
じゃがいもと玉ねぎの味噌汁が好きです。
しかし、この大河の方がもっと好きです。

366 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/28(日) 11:58:59 ID:L2fjX/Xu0
「りゅうじっ!みて!!」

「おうっ?」


ギシギシアンアン

367 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/28(日) 20:02:55 ID:yKkoHDp60
何を見たんだ
ああ大河のナニか、なるほど

368 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/02/28(日) 22:27:54 ID:7uF61omF0
>>366
このノリは久々だw


やっと時間が出来たんで何か書こうと思ったら何も思いつかない。
これは困った。
とりあえずまとめ読んでニヤついてくるぜ

369 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/01(月) 00:07:23 ID:Un3w2FlQ0
大河が竜児の声録音してニヤつくSSどれだっけ?まとめ読みまくってるが見つからない

370 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/01(月) 00:20:44 ID:lSgxoKb/0
13スレ目のリップサービスかな?
http://tigerxdragon.web.fc2.com/index/SS13/683.html

スレ別・作者別とは別に1スレから最新スレまでのSSが全部載ったリストもあると検索楽になるよな

371 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/01(月) 01:09:49 ID:Un3w2FlQ0
>>370
おお、どうもありがとうアンタ良い人だ、世界中がアンタみたいな人ばかりだったら戦争も無くなるのに

13スレだったのか、もっと以前のスレばっかりチェックしてましたよ
タイトルからだと話の内容までは完全にはわからなかったので
まとめさんのタイトル命名のセンスは素晴らしいのだが

372 :代理 ◇x6jzI2BeLw :2010/03/01(月) 01:59:40 ID:xBQWSzbI0
新作投下しようと思えば規制中。
規制解除はいつでしょう(笑)

そんなわけでお世話になります。
代理投稿歓迎と言うかお願いします。

以下、新作「超しあわせの逢坂タイガー伝説」
たまにはタイトル付けよう・・・って本スレ>>322の意見のままじゃないかw
ちなみに前作と余り関係はなかったりする。

ではいきます。

373 :超しあわせの逢坂タイガー伝説 ◇x6jzI2BeLw:2010/03/01(月) 02:00:32 ID:xBQWSzbI0
「高須、呼んでるぞ」
クラスメートに呼ばれた竜児が声のした方へ振り向くと、教室の入り口にちょこんと立っている大河の姿。
竜児を認めるとお弁当が入った袋を軽く振り回しながら、早くしろと急き立てる。
「おう、今行く」
昼休みが始まったばかりの教室は授業の緊張から解放された緩い空気が漂う。
立ち上がった竜児は既に机を合わせ島を作ってお弁当を広げていた女子生徒から声を掛けられる。
「相変わらず、仲いいのね」
「まあな」
「前みたいにここで食べれば?わざわざ外へ行かなくてもいいんじゃない」
「そうしてもいいんだけどな・・・あいつがさ」
竜児が目線を流す先で仁王立ちしている大河。
あんな小柄な体の何処にこんな存在感を示せるのかと言うくらい目立っている。
「ああ、相当怒ってたもんね、逢坂さん」
くすくすと可笑しそうに笑う。
「りゅーじ」
何、のんびりしてるんだと催促の声をあげる大河に女子生徒は肩をすくめる。
「お待ちかねみたいよ」
「わりい」
ひと声掛けてから竜児は大河の側へ駆け寄る。
「遅い。昼休み終わっちゃうじゃない」
あんたは悠久の時を生きているのかと数十秒の遅刻をした竜児を責め立てる大河。
「怒るなよ」
「怒ってなんかないわ」
その台詞とは裏腹に口調に表れる大河の不快指数。
「何なの?・・・あの女?」
「クラスメートだろうが」
「ホント、面白くないクラスね・・・ああ、不愉快」
そのままぷいっと身を翻すと大河はスタスタと竜児より先に歩き出す。
「大河」
竜児は慌てて大河の背中を追い掛けた。

374 :超しあわせの逢坂タイガー伝説 ◇x6jzI2BeLw:2010/03/01(月) 02:02:22 ID:xBQWSzbI0
このところ屋上へ続く階段の踊り場が大河と竜児のランチ会場になっていた。
三年生になり、クラスも別れてしまった竜児と大河だが、お昼を一緒に取る習慣は二年生の頃から変わっていない。
あの頃は竜児が大河のために弁当を用意していたが、母親と暮らし始めた大河の昼食を心配してやる必要が竜児には無くなっていた。
それでも世話好き竜児のこと。
いつも小さなタッパーに大河用のおかずを用意するのを忘れない。
なにせ、新学期、間もない頃に竜児は大河に弁当を取られているのだ。

「たまには竜児の作ったの、食べたい」
じっと大河に己が作った弁当を見つめられ、竜児としては嬉しくないわけが無いのだが、そこは心を鬼にして断固拒否の姿勢を見せた。
「お袋さんに悪いだろ、ちゃんと自分のを食え」
「・・・うん」
しょぼんとする大河にたちまち鬼の竜児は仏の竜児に早変わりする。
「・・・食え」
弁当箱ごと大河へ差し出す。
「その代り、ちゃんとお袋さんの作ったのも食べるんだぞ」
「いいの?」
「ああ、男に二言はねえ」
「それじゃ、遠慮なく」
以前の大河ならいただきますとそのまま竜児の弁当をきれいに平らげただろう。
だが、目の前の大河はそんなことをしなかった。
自分のお弁当箱のふたへ竜児の弁当を半分移し変えると、隙間が空いた竜児の弁当箱へ自分の弁当の中身を半分入れた。
「これで万事解決」
そう言うと大河はおいしそうに竜児が作った物から箸を付け始めた。

その翌日からだ、ランチの席に大河用の小さなタッパーが付く様になったのは。

375 :超しあわせの逢坂タイガー伝説 ◇x6jzI2BeLw:2010/03/01(月) 02:03:58 ID:xBQWSzbI0
階段の段差をベンチの椅子代わりにして並んで座る竜児と大河。
不機嫌そうなのもお弁当箱を開く頃にはすっかり影を潜め、食欲の旺盛さを見せ付ける。
「あ、それちょうだい」
竜児のお弁当箱へ箸を伸ばし、おかずを掴み取ると大河はさっそく口元へ運ぶ。
「おま、ちゃんと用意してあるだろ」
「お弁当はお弁当箱から食べてこそおいしいのよ」
「なんだそりゃ」
「その代り、これあげる」
そう言うと大河は自分の弁当箱の中から厚焼きたまごを一切れ、箸でつまんで竜児の口元へ持って行く。
「はい、竜児」
「はいって・・・なあ」
ちょっとためらう竜児に大河はじれったさを隠さない。
「いいから食べて」
「お、おう」
遠慮がちに小さく開いた竜児の口中へ大河はたまご焼きを押し込む。

もぐもぐと咀嚼する竜児を大河は見つめる。
「ど、どう?」
ごっくんとたまご焼きが竜児ののどを通過した頃合を見はらかって大河が訊ねた。
「甘すぎるんじゃねえか・・・砂糖が多すぎだ・・・」
お袋さんへ言っておけと続けようとした竜児はどよんと落ち込む大河にうろたえる。
「ど、どうしたんだよ?」
「・・・いいの・・・まだまだだって・・・分かったから」
「まだまだって・・・?」
ここまで言い差して竜児はあっと声を上げそうになった。
大河の落ち込んだ原因に思い当たったからだ。
「なあ、大河・・・もしかして、今のたまご焼き・・・」
こくんとうなづく大河に竜児は自分の予想が当ったことを確信した。
そして同時にデリカシーが足らなかったことを痛感した。
・・・きっと、何回も焦がして、失敗したんだろうな。
キッチンで奮闘する大河を想像して竜児はちょっとだけ胸が熱くなった。

「もうひとつ、もらっていいか?」
「いいのよ、無理に食べないで」
「いや、急にたまご焼きが食べたくなったんだ、ぜひ、食わせてくれ」
大真面目に竜児は大河に頼んだ。
竜児を見つめた大河はややあってぷっと噴き出した。
「し、仕方ないわね・・・食べたいって竜児が言うなら」
これまた大河も崩した顔を再度引き締め、真面目くさってまた同じ様に竜児の口元へたまご焼きを運んだのだった。

376 :超しあわせの逢坂タイガー伝説 ◇x6jzI2BeLw:2010/03/01(月) 02:05:13 ID:xBQWSzbI0
2年C組でこんなことをやっているなら竜児と大河のバカップルめとクラスメートは生暖かく見守ったことだろう。
なにせ、手乗りタイガーとして恐れられていた逢坂大河とヤンキーとして一目置かれていた高須竜児のふたりが、最終的には駆け落ちもどきのことまでやって結ばれるのを逐一目撃して来た当事者なのだ。
多少のことで動揺などするはずが無い。
しかし、クラス替えがあり、必ずしもその辺りの事情を詳しく知らないクラスメートの中にあってふたりのラブラブ振りは行き過ぎた物として一部のクラスメートの反感を買ってしまったのも事実だった。
大橋高校と言う進学校の中でも特に竜児がいる国立理系選抜クラスは受験に対する意識が違う。
昼休みも惜しんで参考書を開いている手合いも無きにしも非ずで、そんな連中から他所でやれとクレームを付けられたのだ。

「ふうん・・・この程度で気が散るなんて・・・成ってないわね・・・そんな脳みそじゃ、おぼつかないんじゃない、志望校」
冷たさの権化の様に大河はクレーム相手に言い放った。
不遜ともいえる顎を上げた姿勢で低い位置から相手を見下す大河にしまったと言う顔をするクラスメート。
すっかり丸くなっていた大河に油断しきって本来、大河が持っている本質を忘れてしまっていたのだ。
まさに虎の尾を踏んだに等しい自殺行為だった。
おまけに学力と言う点から言っても大河は成績上位で、下手をすれば文句を言った奴の方が順位が下でもおかしくないくらい。
進退窮まったと立ち尽くすクラスメートの危機を救ったのはさっき竜児に話し掛けていた女子生徒だった。
立ち往生するクラスメートに言い過ぎたことを謝りなさいと言う一方で大河へも釘を刺して来た。
「逢坂さんも、もう少し控えめに・・・ね」
「・・・帰る!」
ズバリ言われて真っ赤な顔で立ち尽くした大河はそう叫ぶと食べ残したお弁当をそのままにして竜児のクラスを飛び出した。

「言い過ぎたかしら」
大河の去った扉を見ながらつぶやく女子生徒。
さっきの危機に突っ立ているだけで何も出来なかった竜児はこの問いに助かったと素直に頭を下げた。
「しかし、あの大河に良く言えたよな」
驚きを隠さない竜児。
「あら、逢坂さんて正当な理由もなくいきなり何かする人?」
「いや、それはねえな」
「でしょ」
何でそんなに詳しいんだとの竜児の疑問に、元C組にいた竜児のクラスメートの名前を挙げ、自分の親友だからねと種明かしをしてみせる女子生徒。
「逢坂さんが机投げて暴れたとか、クラス中で腫れ物にでも触るみたいにしてたとか・・・」
ネタはいろいろ知ってるわよと楽しそうに笑った。

その日以降、絶対に大河は竜児のクラスに足を踏み入れないようになった。
不愉快千万というわけだ。
「こっち来てよ」
自分のクラスへ来いと言う大河に竜児は首を振った。
「何?来るのが面倒なの?」
「いや、大河のところへ行ってもいいんだけどさ、川嶋がいるだろ」
「ああ、ばかちー。腐れ縁で同じクラスになったのよね」
冷やかされるのがどうもと言う竜児に大河は同意した。
「そうね。ばかちーごときに貴重な昼休みを邪魔されたくないわ」
そんなわけで階段の踊り場でランチタイムを過ごす事になったのだが、これはある意味、貴重な時間ともなっている。
以前は竜児の家に行けば嫌でもふたりだけの時間と言うのがあったのだ。
しかし、母親と暮らし始めた大河にとって、二年生の頃みたいな竜児とだけ一緒に居られる時間と言うのが取り難くなっている。
それがここに居れば誰も来ないので遠慮なくふたりだけの世界を構築出来るのだ。

377 :超しあわせの逢坂タイガー伝説 ◇x6jzI2BeLw:2010/03/01(月) 02:06:07 ID:xBQWSzbI0
「ごちそうさま。今日もおいしかった」
満足気にお弁当箱を片付ける大河。
「たまご焼き、また作ってくれるか?」
「がんばってみる・・・けど上手く行かなくても文句言わないでよ」
「言わねえ、大河が作ってくれるなら」
「そんな風に言われるとプレッシャー感じちゃうけど、少しくらいはお料理、上手になりたいし」
「あせんなくていいんだぜ」
「・・・いつか、やってみたいんだ」
「何を?」
「はい、お弁当って・・・竜児に手渡すの。全部、自分の手作りで・・・それで竜児がおいしそうに食べてくれるの。今の私じゃ全然、無理だけどね」
「一歩ずつ、やってけば夢じゃなくなるさ」
「本当?」
「ああ、今日のたまご焼きだって、味付けさえ間違ってなかったら結構いけたぜ」
「お世辞でも嬉しいよ、竜児」
「世辞じゃねえ、本気で言ってるんだ」
「ありがと・・・竜児」
言い終えると大河は竜児の肩へ自分の頭をそっと載せた。

「大河」
「なんか・・・ものすごく幸せな気分」
目を細くして夢見心地な表情を見せる大河。
「お腹、いっぱいになったからだろ」
「竜児」
ムードないなあと大河は竜児の背中を軽く叩いた。
「おう、わりいな・・・でも、俺もそんな気分だ」
「でしょ」
我が意を得たりと大河は笑う。
そして小さなあくびを漏らす。
「何だか、眠くなっちゃった・・・ねえ、竜児」
「何だ?」
「枕・・・借りるね」
そう言うと、大河はずるずると竜児に沿って体を倒し、膝の上へ上半身を預けた。
「大河、おい」
「予鈴、鳴ったら・・・起こして・・・・・・」
本当に眠かったらしく大河はそのまま寝息を立て始めた。

膝の上で子供のように丸まって眠る大河を竜児は見下ろす。
・・・夜中にミルクをあげる為、何度も起きるって言ってたっけ、大河は。
・・・赤ちゃんの世話も大変だよな。
優しい目で竜児は大河を眺める。
嫁にする・・・一生、添い遂げると誓った少女が全幅の信頼を寄せるみたいにして自分の手の中でまどろんでいる。
竜児は感慨深く、大河を見つめる。
わずか一年前だよな、傷ついた猫みたいに牙をむき出して襲って来たのは。
木刀を振り回した挙句、倒れた大河を思い出す竜児。
大河との二人三脚があれから、始まったんだと竜児は過去を振り返る。
足並みが乱れて、転んだりしたけど、こいつがパートーナーで良かったって思う。
そんなことを考えながら竜児は寝ている大河の柔らかな頬を指先で軽く突付いた。
寝息が少し乱れて、甘えたような声を大河は上げる。

予鈴が鳴っても起きない大河をいたわる様に竜児は本鈴寸前までそのままでいた。

378 :超しあわせの逢坂タイガー伝説 ◇x6jzI2BeLw:2010/03/01(月) 02:07:49 ID:xBQWSzbI0
「・・・ふぇ、朝?」
寝ぼけた声で起き上がった大河はそこに竜児が居るのを認め、不思議そうな表情を浮かべる。
「・・・竜児?ああ、朝ごはんの時間・・・早く起してくれればいいの・・・・・・に?」
パジャマを脱ごうとする動作を見せた大河は途中で手が止まる。
なんで自分が制服を着ているのかと怪訝そうに首を傾け、それから、竜児をまっすぐ見た。
その大河の顔が急速にカラーピンクで侵食されていくのを竜児は黙って見守る。
寝ぼけて以前に住んでいたマンションで竜児に起された気でいたのだ、大河は。
「目、覚めたか?」
「さ、覚めてるわよ、とっくに」
強がりを言う大河だが、顔の火照りはまだ消えていない。
そして、今の時間が本鈴ギリギリだと知り、怒り出す。
「なんで、もっと早く起さないのよ」
少し乱れた髪を気にするように大河は竜児へ洗面所へ寄る暇も無いと文句を言う。
「・・・いや、大河の・・・寝顔があんまりかわいくて」
ずっと見てたと竜児は言う。
「起すのもったいなくて・・・その、悪かった」
女の子の身だしなみまで気を遣ってやれなくてと竜児は大河へ謝る。
「寝顔って・・・ずっと?」
「ああ・・・」
大真面目にかわいいと言う竜児に大河の顔は真冬の電気ストーブさながらに赤みを増す。
やがて、顔の熱さに耐え切れなくなったかのように大河はうつむく。
「なんか知らないけど・・・ありがと」
ぼそぼそと話した大河だが竜児にはしっかり伝わった。



とりあえず、ここまで。

379 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/01(月) 02:10:13 ID:xBQWSzbI0
甘くて最高だった、続きも期待してます。
超ニヤニヤさせて下さいw

380 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/01(月) 02:11:55 ID:7fi0cvUJ0
ニヤニヤしながらリアルタイムで読んでいました。ありがとうございました。
また期待しています。

381 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/01(月) 03:45:40 ID:Bp3pmXIr0
>>372-378
乙&GJ!
代理の人も乙!

俺も超ニヤニヤw


382 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/01(月) 17:51:35 ID:vzo/ZSLm0
>>378
乙!
大河の玉子焼きなんて目じゃないくらいに甘甘だw
代理も乙!

383 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/03(水) 19:27:31 ID:ptZDd2+aO
復活か!

384 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/03(水) 20:53:46 ID:hp4rnlBx0
長かったなあ

385 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/03(水) 21:27:50 ID:FLJncWZi0
ようやくまたニヤニヤできる!

386 :たまには感想も:2010/03/03(水) 23:04:29 ID:c6nY/SPd0
長かったよめっさ長かったよ!っていうか普段あんまりネットしないのに、たまに繋いだ時にこんなことになるとは…

>>369
もう問題は解決したみたいですが、同じ主題のSSはもう一作あり。
14スレ目の「本当は怖い逢坂大河」
…………今にして思えばこれくらいにまとめた方がおもしろいんじゃね?とか思ってますがね…ふふふ…くぅ…

>三題噺の方
なんつーか、その生産力はいったいどこからくるのか。
この執筆ペースで安定したおもしろさ…毎日ヤクルト飲んでるからとか?

>超しあわせの逢坂タイガー伝説
略して「ちょいがー」…ダメですか?じゃあ「あのイ」…もっとダメか。
どうしたらそんなニヤアマな作品かけますか?書けない自分には純粋に不思議。
……やっぱ裏のお稲荷さんに油揚げお供えしないとダメなんかなぁ。

>まとめ人さま
ご苦労様ですお疲れ様です。
要望に対して対応してくださるのはありがたいことですが…無理はなさらぬよう。

自分はあんまりマメに感想やお礼を返す、ってのが苦手な人間なもので、気づいた時には流れを逃して…
ってことが多し。(読み逃しもあると思うし)
でもやっぱここ来るの楽しみなんですわ。…だから、今回は…ふぅ。

さて。久しぶりですし、ギシアンネタでも投下しますかね。
ちなみに元ネタは某パロディ漫画の総帥閣下。

387 :コロ助:2010/03/03(水) 23:06:37 ID:c6nY/SPd0
<趣旨>ノリとしてはまんがサイエンスとかモグタンとかを目指して

「みのりんと!」「亜美ちゃんの!」
「「なぜなに科学質問コーナー!!」」

 どんどんパフパフ〜〜♪

「と、いうわけで突発的かつ思いつきで始まったこのコーナー、身近な出来事や疑問を科学の力でサクッと検証!サクッと解決!」
「指にトゲが刺さった時、5円玉の穴で抑えると、そこだけ肉が盛り上がってトゲが抜けやすいぞ!」
「「お〜〜〜〜ぅ、科学力!!!」」
「櫛枝…特に川嶋…なんか色々、人生振り切りすぎじゃねえか?」
「おおう、みのりんはいつだって人生フルバーストでエンジョイ&エキサイティングだぜ高須ボーイ!」
「……私はまだそこまで人生、捨てたくないんだけど」
「うわっはっはっはっはー。…地獄の底まで相乗りするぜ、あーみん!
 さてさて最初のお題はー?」

Q:よく漫画やエロゲで『エッチがしたくなるお薬』とかあるけど、実際にそれって効果あるんですか?

「というわけでー、ねえタイガー?ここに通販で買ってみた『エッチがしたくなるお薬』があるんだけどー。…飲んでみてくれない?」
「速攻でなんてこと勧誘してんだ川嶋――!?」

 …………。
 ごっごっごっごっごっごっ、ぷはぁ〜〜〜。

「お前もなに躊躇無く一気飲みしてんだ大河〜〜〜〜!!?」
「竜児…りゅうじぃ…」
「おふう…いきなりの赤面・潤み目・甘え声の3連コンボかよ…!」
「竜児…身体が…熱いの…あついよぉ…お薬のせいで…火照るのぉ…」
「ううううう…お前そんなプルプルして上目遣いって…卑怯だよソレ…」
「切ないよぅ…苦しいよぉ…たすけて…………りゅうじぃ…」

 ズキュ――――――ン!!

「な、泣くなよ…俺、弱いんだよ…お前に泣かれるの…ああもう、何でもしてやるよ!大河が笑ってくれるなら、俺は何だってしてやるよ!」
「よし!じゃあ早速こっち来なさい竜児!」
「え?」
「じゃあごゆっくり〜」「わたしら帰るからねー。…あ〜、あほくさ」
「え?え?」
「ねえ竜児ぃ…アレの買い置き、無かったんだけど…生でいいよね?」
「え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?」

 ギシギシアンアン

「――というわけで、まあこんな薬は大抵、ニセモノだから。エロゲなんてファンタジーなんだから、信じちゃダメだぞ?」
「つーか媚薬とかマジでウザキモなんですけどー。こんなの発想からして自分で女をどうこうできない甲斐性なしのキモヲタの願望ダダ漏れじゃね?」

388 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/03(水) 23:10:57 ID:TeU/x03s0
>>387
GJ
>「つーか媚薬とかマジでウザキモなんですけどー。こんなの発想からして自分で女をどうこうできない甲斐性なしのキモヲタの願望ダダ漏れじゃね?」
亜美ちゃん様が黒すぎる・・・SS作者のライフはゼロよっ!!


389 :コロ助:2010/03/03(水) 23:13:11 ID:c6nY/SPd0
<趣旨>チューイせよ!

「みのりんと!」「亜美ちゃんの!」
「「なぜなに科学質問コーナー・ぱーと2!!」」

 どんどんパフパフ〜〜♪

「まだこのネタ引っ張るのかよ…つまんねぇよこれ…」
「はっはっはー、いい感じにやさぐれてるねぇ高須くん!」
「うん…その気持ちはわからなくもないんだけどね…とりあえず、今日のお題はコレ」

Q:よく漫画やエロゲで後催眠とか洗脳で女の子にエロいことしちゃいますけど、実際に可能なんですか?

「――というわけで、大河?このプラプラ揺れる五円玉をみてくれるかな?」
「「ベタだ!ベタすぎる!!」」

 竜児&亜美のダブルツッコミ!!

「…実際のところ、マインドコントロールとかって言うほど自由がきくものでもないみたいだけどね。誰かを殺せ!とか命令しようとしても、普通は人殺しなんて拒絶するでしょ?
 だから、何か他の理由をつけて結果的にそうなるように仕向ける…みたいな。何かの聞きかじりな上にうろ覚えなんだけどね」
「…口先三寸でクラスの男共を手玉にとるお前に言われると妙にリアルっていうか…でもそれなら、万が一にも催眠暗示なんて…」
「りゅうじぃ〜〜〜〜〜〜!!死なないで〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

 すこ―――ん!!

「おおうナイス頭突きだ大河…どてっ腹に風穴が開いたかと思ったぞ…」
「竜児竜児竜児竜児、竜児死なないで!ううん、絶対私が治してあげるから!」
「とりあえず、胃壁が破れたかと思うようなダメージで死にそうなんだけどな…お前の頭突きで」
「い、遺憾よねぇ…ってそれよりも!竜児…竜児は病気なの!このままだと死んじゃうの!突発性INKINTAMA炎で!」
「………なんだその往年のギャグ漫画に出てきそうな病名は?」
「この病気は現代医学でもまだ原因不明…特効薬は無いの。治すためには毎日最低3回の性交が必要なのよ!長期に亘る体質改善療法が!」
「………大河………」
「だから!ぐずぐずしてられないわ!さっそく治療よ!!」
「じゃあごゆっくり〜」「わたしら帰るからねー。…あ〜、あほくさ」
「いや待てよ!?っていうか大河、お前催眠なんて嘘だろ!?あ、目ぇ逸らしたな!?ちょ、やめ…」

 ギシギシアンアン

「――というわけで、こんなの自分で女をどうこうできない以下省略〜」
「あーみんも結構、投げっぱだねぇ〜〜〜」
「つかさー。やりたいならやりゃーいいじゃん。変な理由つけんなよ。つけてもいいけど、そのために他人を巻き込むなっつーの」
「まあ…これも素直になれないオトメのための友情…とか思って納得しようや、あーみん?」
「…爽やかに自己催眠かけてんじゃねーって」

 続きません。

390 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/03(水) 23:26:04 ID:fIPRcltSO
>>389
GJ
これはいいギシアンww
面白かったわぁww

391 :うわ早速:2010/03/03(水) 23:30:04 ID:c6nY/SPd0
>>388
その「GJ」の一言で報われます。え、亜美さま黒いですか?
でも黒くないあーみんなんて…想像できないっ!

……ていうか、最近気づいたんですけどね。
みのりんとあーみん、ってですね。あくまで自分限定なんですけど。
……こう、書いててノリが…琥珀酸と貧乳妹に近いものがあるんじゃないかと…

392 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/03(水) 23:57:41 ID:SRbBCxXh0
「あーみんの黒いワカメ・・・・」
「ちょっ、実乃梨ちゃん突然何言い出すのよ!」
こうですか?わかりません

393 :うわ早速2:2010/03/04(木) 00:17:17 ID:dNrH7iYu0
「なに?ばかちーの黒い“ごはんですよ”がどうしたって?」
「大河……お前…自分が……」
「……なにが言いたい?この駄犬が?」
「……いやあ……なにも……」

(つるぴか)

「私はねぇ〜〜〜〜〜、…正直者が好きなんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「おうっ!?久々の木刀!やばい!やめろ!俺にやばい!俺がやばい!!死ぬから!こ、殺される!!?」
「大丈夫…痛みは一瞬さぁ…」
「そんなふぁいなるふぉーむらいどに言われてもっ!!」


「…そっか。あーみんの場合、ワカメよりも岩のり?」
「何を言ってるのかぜんぜんっ!わかんないんですけど!!?」
「ところでぇ…モデルさんって味付け海苔を前貼りにしてるってホント?」
「んなわけあるかよ!?つかさっきから何の話してるわけ!?」
「いんもー」
「伏字をつかわんかい!!!!」


…もうダメだ自分_| ̄|〇

394 :代理:2010/03/04(木) 00:44:15 ID:k8hl769x0
えーと、この流れをぶったぎってしまっていいのか分からないけどw
転載します

http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/anime/7850/1256747762/140-141

139 名前: ◆Eby4Hm2ero[sage] 投稿日:2010/03/02(火) 04:57:04 ID:???
2chが鯖落ち中なんで、とりあえずこちらに。
復活したら転載します。

140 名前:とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero[sage] 投稿日:2010/03/02(火) 04:57:44 ID:???
お題 「千円」「寄る」「自習」



 五時間目の授業が自習となれば、クラスの大半は友達と駄弁る、雑誌を読む、寝る等々で真面目に勉強しようというのはむしろ少数派で。
 竜児としてはその少数派でありたい所だが、それを許さないのが目の前に一人。
「ねえ竜児、やっぱり晩ご飯はすき焼き食べたい」
「駄目だ」
「すき焼き〜、すき焼き〜、すき焼き〜、すき焼き〜」
「今日は魚の特売日だからサバミソだって言ったじゃねえか」
「竜児だって昨日のテレビ見たじゃない。美味しそうだったじゃない。食べたいじゃない!」
「ああいうのは百グラム千円以上するような高い肉使ってるから美味いんだよ。今のうちの予算で使える肉じゃ、期待外れでがっかりするのがオチだぞ」
「うう〜……それじゃ……せめてお肉!お肉食べなきゃこの衝動が治まらないから!」
「お前なあ……」
「お肉お肉お肉お肉お肉お肉お肉お肉……」
「ああもう、わかったわかった。帰りにスーパー寄るから、安くなってるやつでいいな?」
「わ〜い、竜児ありがと〜!」
「しかたねえ、鯖は明日の弁当に使うか……」
「ほら竜児、四時から豚バラ薄切りがタイムサービスだって!生姜焼き!」
「大河……お前はなんでチラシとか持ってきてるんだよ……まさか最初から!?」
「んん〜?なんのことかしら〜?」

395 :代理:2010/03/04(木) 00:45:20 ID:k8hl769x0
しまったレス版間違えた

141 名前:まとめ人 ◆SRBwYxZ8yY[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 01:41:34 ID:???
要望があったため、全SSをひとつにまとめたページを作成しました。
かなりの量なので携帯で開こうとするとエラーで途中で止まるかもしれませんので注意。
検索等にお使いください。

そして本スレは規制どころか鯖落ち中で近づけやしない

396 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/04(木) 01:25:01 ID:2Cw1HWNJO
規制解除きたー!

>>372
乙!竜虎は飽きないなぁ

397 : ◆Eby4Hm2ero :2010/03/04(木) 01:39:00 ID:GBCU09PX0
>>394
おお、素早い転載ありがとうございます。

では鯖復活記念に突発性ギシアンなぞ。



「竜児〜、甘酒おかわり〜」
「もう残ってねえぞ」
「えー、もう?」
「お前なあ……自分がどれだけ飲んだと思ってやがる」
「無くなったのなら、また作ればいいじゃない」
「残念ながら、俺のは麹を使って作るんですぐには無理だ」
「どれぐらいかかるの?」
「発酵・糖化に8〜10時間ぐらい」
「そんなに!?」
「酒粕ふやかして作るならもっと簡単だけどな。それでも今すぐってわけにはいかねえ」
「……それじゃ、代わりに見た目だけでも似たようなモノを頂こうかしらね」
「何だ?カルピスか?」
「そうね、白くてドロっとした……竜児のカルピス」
「え?」

ギシギシアンアン


398 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/04(木) 02:08:00 ID:eTnRwDegO
きゃあぁぁぁ
カルビスGJ!

399 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/04(木) 02:49:51 ID:m1PmC2v60

鯖落ちしている間、ここ見れないんで、久々にニコ動のとらドラ!MAD巡りで感動して帰ってきてみたら、オマエラ…大好きだ!

んなわけで、1本追加してみようw


「ねぇ竜児? なんでこんないきなり突発性多発的ギシアンが発生してるのよ?」
「ん? そりゃまぁ、みんなスレが復活して嬉しい気持ちを表してるんじゃねぇのか? それにそろそろ啓蟄だし…」
「竜児っ!」
「おう?」
「た…、たしかに最近ママと弟にかまけて、アンタの相手ができなかったのは悪かったと思ってるけど、けいち…って」
「お前、何と勘違いしてる… うぉ、こら、俺を押し倒すな…」
「だまれ! 問答無用!」
「ちょ、やめっ、てぇぇぇえ」

ギシギシアンアン

「それに日付変わったけど、昨日は3月3日! 女の子の日! もものせっく…」
「それがなんの関係、うわぁぁぁあ」

ギシギシアンアンギシギシアンアン

「あーみん、やっぱり日ノ本の言葉とは、なんともいえない奥ゆかしさがありますなぁ」
「これのどこか、奥ゆかしいっていうのよ、それに英語もはいってるっつーの!」
「いやぁ、奥床しいと書いたら、なんかさ、ほらっ!」
「ほらっ、じゃねぇ! 実乃梨ちゃん、さっさと鼻血拭いて!」


>>395
まとめ人さん、超乙です。 一覧にするとホント迫力ありますな、このボリューム。しかも避難所のまで…
すげぇ嬉しいけど、くれぐれもご無理の無い様に! いつもGJっす!
代理の方も乙!


400 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/04(木) 03:40:48 ID:DxbyvU180
おつっした
ギシアンがあればそれでいい

401 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/04(木) 21:46:23 ID:aHE+Jt1d0
なんだこのギシアン祭りはwww

ギシアン職人の皆様GJ!
やはりこのスレはこうでないとw

402 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/04(木) 22:56:15 ID:noyPwqSd0
竜児「ピラピラピ〜ラ、ピラピ〜ラ♪」
大河「誰がびらびらですって!?」
竜児「おうっ!?違う、違うぞ大河!これは今はやりのピラメキーノ体操っていう…」
大河「びらびらをめくりたいの、ですって!?」
竜児「……」
大河「…」
竜児「……しょうがねぇな…」
大河「最初からそうすればよかったのよ。」

403 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/04(木) 23:03:26 ID:noyPwqSd0
>>402
くそ、まさかのギシアン入れ忘れ

ちくしょう!もっともっとギシアンつくってやる!!

404 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/04(木) 23:19:56 ID:m1PmC2v60
>>403
ドンマイ!

405 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/04(木) 23:40:28 ID:noyPwqSd0
「りゅーじ♪」
「おう、料理中にくっつくな、あぶないだろ」
「ごめんね、りゅうじ〜。」
「おぅ、いいんだ。まぁ、その…俺もうれしいから…」
「………」
「…なんだよ、なんかいえよはずかしいじゃねぇか」
「…なにも感じない?」
「?どういう………はっ!」
「…そう、いわれなきゃ当たってるって気づかないのね…。ばかちーのならすぐ気づくのに…」
「大河!おれはおまえの胸が好きだ!いわれなきゃ気づかないなんて、すげぇカワイイ胸じゃねぇか!」
「っ!…このエロ犬///」

ギシギシアンアン


きびしいな…


406 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/04(木) 23:50:24 ID:v+gvoucL0
いやいやGJ!

407 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/04(木) 23:59:41 ID:noyPwqSd0
「雨降ってるね…」
「そうだな」
「外びしょびしょだね」
「…そうだな」
「……ねぇ、りゅーじ…」
「ん?どうした?」
「………」
「?」
「その…ね、…」
「悩みなら何でもいってくれよ。おまえひとりに苦しい思いはさせねぇぞ。」
「大丈夫…そうじゃなくてね…私のね、…」
「………」
「…私のパンツのなかもびしょびしょなのっ!!///」
「!!!!!」

ギシギシアンアン



…すいません。

408 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/05(金) 00:06:09 ID:noyPwqSd0
なんかむなしくなってきたのでもうやめますorz
なんかすいません

409 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/05(金) 00:13:54 ID:gTyuNRjC0
>>408
いやいや、乙っす!

410 : ◆x6jzI2BeLw :2010/03/05(金) 01:37:02 ID:1lk4MIOz0
何と言うギシアンラッシュw
みなさん乙です。

>>379>>382>>396
ありがとうございます。

>>386
何ででしょうね、自分でも不思議です。

それから、代理投稿ありがとうございました。

何やら一時的に規制が解除されているようなので、再規制されない内に>>378の続きを投下します。
7レスくらい使います。


411 :超しあわせの逢坂タイガー伝説2 ◆x6jzI2BeLw :2010/03/05(金) 01:39:04 ID:1lk4MIOz0

ホームルームが終わり、教室の外へ出た竜児を待っていたのは大河だった。
もちろん一緒に帰るためで、どちらか先に早く終わった方が相手の教室の前で待つと言うのがいつのまにか決まりになっていた。
しかしながら、竜児のクラスの担任はあれこれ細かく、いつもホームルームは長くなる。
必然的に竜児が大河を待つよりも大河が竜児を待つことの方が多くなっていた。

「わりい、待たせた」
廊下の壁に背中を預け、足首を交差させた姿勢で待っていた大河は教室の扉から待ち人が現れるとばね仕掛けの人形みたいに飛び寄った。
「竜児」
さすがに教室前で抱き付いたりはしないものの、大河は少しでも竜児の近くに居たいと言う気持ちを隠さなかった。
自分の肩と竜児の手が触れるほど近寄ると早く帰ろうと大河は笑みを浮かべて言う。
これから、下校の通学路で短いけど竜児とふたりだけの時間が待っていると思うと、大河の気持ちは少し弾んだ。
「お先に、高須君」
「おう、明日な」
竜児へ挨拶を交わし、大河を横目で見ながらにっこり笑いながら通り過ぎる女子生徒。
「何よ・・・あれ」
楽しい気持ちに水を差された大河は不愉快さを口元へにじませつぶやく。
「・・・ホント、不愉快なクラスね」


「すっかり桜も終っちまったな」
葉桜になった桜並木を眺めながら竜児はぼんやりと思う。
思い掛けなくも新学期初日に戻って来た大河と桜吹雪が舞う下を並んで登校した時の高揚感。
隣を歩く少女が幻じゃないことを確かめたくて、大河と何度もその名を呼び、そして大河から竜児と呼ばれるたび震えるような感情が込み上げて来たあの時。
あれからまだひと月も経っていない。
「・・・桜餅」
ふいに大河が低い声で言う。
「桜餅?」
「作ってくれるって竜児、言ったでしょ、まだ?」
「今度の日曜日に作ってやるよ」
桜の葉っぱを予め漬けておかないといけないんだと竜児は説明する。
「忘れたわけじゃないから安心しろ」
「良かった」
嬉しそうに言う大河に風情より食い気かと竜児は苦笑い。
「竜児」
「おう」
「作るの・・・手伝って、いい?」
遠慮がちに聞く大河に竜児は優しさで満たされた瞳を向ける。
知らない人が見たらにらんでいるだけにしか見えないかもしれないが、大河にはそれが分かる。
竜児の目線で了承と受け取った大河は猫がじゃれるみたいに竜児の左腕にしがみ付いた。


412 :超しあわせの逢坂タイガー伝説2 ◆x6jzI2BeLw :2010/03/05(金) 01:40:41 ID:1lk4MIOz0

「ねえ、竜児」
通学路を並んで歩いていた大河は裏通りに入った辺りで突然立ち止るとおずおずと切り出した。
「何だよ?」
「・・・して」
主語を省いて言う大河だが、何を求めているのかは態度にありありと出ていた。
上目遣いに心持ちあごを少し持ち上げた姿勢で大河は竜児をじっと見ている。
いわゆるおねだりと言う奴だが、竜児は少しばかり面食らう。
いくら人影が無いとは言っても、こんな往来で大河がそんなことを求めたのは初めてだったからだ。
黙ったまま、なおも竜児を見つめる大河。
どうしたんだよと竜児は思うが大河の表情からは何も読み取れない。
ただひたすら、竜児から恋慕の情を引き出そうと深い泉のような瞳をわずかに動かす。
思わず引き込まれるように竜児は大河へ顔を寄せた。
そして少しばかりのためらいを捨てるとそのまま、ついばむような口付けを交わす。

竜児が離れると大河はふっと息を漏らす。
「急にどうしちまったんだよ?」
「そうしてもらいたい気分になったから・・・別にいいでしょ」
「悪くはねえけどよ、やっぱり時と場所ってもんが・・・」
「ふん、環境が整ってないと駄目だって言うの?竜児」
「そこまでは言ってない」
「じゃ、いいじゃない。文句言うこと無いでしょ」
「・・・ちょっと変だぞ、大河」
突っかかって来る大河に竜児は不審を覚える。
「変?ああ、そうかもね・・・変かもしれない、私」
「・・・あっさり認めるなよ」
竜児は苦笑するしかない。
「・・・竜児のことが離れないの、頭の中から・・・ずっと。もうね、一秒でも長く一緒に居たいってそんなことばかり考えちゃって、止まらない」
「大河」
「もしかしたら、離れ離れになっちゃったかもしれないって思えば、こうして竜児の声が聞けて、竜児に触れられる」
言い終えると大河は竜児の胸へ手を宛てた。
「ママが・・・こっちへ住もうって言い出してくれなかったら、こんな毎日は廻ってこなかった」
「その点は俺も感謝してる・・・あのまま、大河が戻って来なかったらどんなに寂しい三年生になってたか想像もつかねえ」
「だから、満足しなくちゃいけないのに・・・」
唇を噛みながら大河はうつむく。
「すぐ側に竜児がいない・・・たったそれだけのことが・・・辛い」
思えば四六時中、大河と過ごして来たと竜児も思う。
学校は同じクラス、下校すれば家は隣同士で、ほぼ毎食、一緒に食べてた。
ほとんど、ずっとって言ってもいいくらい視界の中に常にお互いを認めて来たんだよな。
それが今じゃ、一緒に居られる時間はかつての半分以下だ。
晴れて気持ちが通じあえたって言うのに、共に過ごせる時間が減っちまったからな。
「・・・今日だけはずっと一緒に居たかったのに」
それが出来ないと大河は言う。
「今日って?何かあったか?」
竜児がそう言うと大河は少しだけやるせないような顔を見せ、すぐ普段の大河へ戻った。
引っかかる物を覚えながら竜児は大河と歩き続ける。
とりとめの無い会話が途切れたところでいつもの別れ道が見えて来た。

今日はまっすぐ帰らないと行けない日だから、竜児の家に寄れないと言い残し、また明日と大河は名残惜しそうに交差点の角を曲がる。
夕陽に向かって消える様に走り去る大河を見送り、竜児も同じ様な寂しさを感じていた。


413 :超しあわせの逢坂タイガー伝説2 ◆x6jzI2BeLw :2010/03/05(金) 01:42:26 ID:1lk4MIOz0

帰宅した泰子との夕食を済ませてしまうと、その後の手持ち無沙汰感を竜児は少し持て余す。
すべき家事をやり終えてしまうと、何もすることが無くなってしまったのだ。
以前なら、部屋の中でごろごろしている大河が居て、「プリン無いの?」だの「たいやき食べたくなった、買いに行こう」だの賑やかで、竜児としてもプライベートな時間を確保することの方が難しいくらいだった。
それが今じゃ・・・この有様だ。
いつも作り過ぎてしまう夕食・・・。
つい大河が居るような錯覚をしてしまう。
食べ切れなかったおかずにラップをしながら竜児は小さくため息をついた。

何か物足らなさというか張り合いの無さを感じながら竜児は机に向かう。
仕方ないから勉強でもと思うのだが、乗り気でないその作業はわずかな時間で集中力が途切れる。
開いたノートへ手にしていたシャーペンを転がし、竜児は椅子の上で背伸びをする。
気分転換にお茶でも飲もうと立ち上がった竜児だが、ふと立ち止まり窓のカーテンを僅かに開け、すき間を覗き込む。
外に広がる暗闇の中に浮かぶマンションが白っぽい外壁をさらし、一画に黒に沈んだ窓ガラスが虚しく見える。
既に明かりを漏らさなくなって数ヶ月が過ぎた。
目の前に居なくても、大河の息吹を感じて居られたあの頃が懐かしいぜと竜児は今さらながらに思った。


・・・んん。
眠っていた竜児は胸苦しさを感じ、睡眠が途切れる。
重石を乗せられたような、何とも言えない不快感と体の自由を束縛された感覚が金縛りを思わせる。
あまりオカルト的なことを信じない竜児だが、このただ事でない事態に恐る恐る目をうっすらと開く。
薄暗い部屋の中、竜児のぼやけた視界に髪の長い少女が自分を真上から見下ろしているのが飛び込む。
竜児の背中に走る戦慄。
思わず「ひい」と大声を出しそうになる竜児だが、その声が外へ漏れることは無かった。
なぜなら、竜児の口を思いっきりふさいだ手があったからだ。
「もご・・・もご」
息が出来ねえと竜児は生命の危機すら感じる。
「ちょ・・・大声出さないで・・・いい?」
驚愕の余り、大きく見開いた目をした竜児はコクコクと頭を振って同意の姿勢を見せる。
口から手が離れるや否や、竜児は絞殺未遂をかましてくれた相手を呼ぶ。
「た、大河〜」
「大声出さないでよ、やっちゃんが起きる」
「そうじゃねえだろ・・・殺す気か」
「力入れ過ぎた?手加減したつもりだったんだけど」
「まあ、いい。それより早くどいてくれ」
竜児は自分の掛け布団の上に馬乗りになっている大河へ早く降りるように求めた。
「ああ、ごめんね」
全然、悪びれた様子も無く大河は布団から降りた。


414 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/05(金) 01:44:46 ID:ti9+tW1/0
>>408
いいよーいいよー!何を恥じる事がある!

もっと大量生産してくれよw
む、久々に浮かんだから一つ。



「あらやだ」
「おう、どうした?」
「大量生産って……恥ずかしくないのかしらね?」
「どういう想像したら恥ずかしくなるのか逆に教えて欲しいくらいだぞ、俺は?」
「あらそう?」
「で、何を大量生産したら恥ずかしくなるんだよ」
「りゅーじ」
「……お、おう?」
「の」
「ん?」
「せーし」
「…………」
「ね?恥ずかしいでしょ?」
「俺はおまえが恥ずかしいよ」
「どっちがよ、毎日毎日そんなに大量生産して恥ずかしくないのかしらねーこの駄犬は!」
「そ、そりゃ仕方がねぇだろ、無くなれば作らなくちゃならねぇんだからな」
「ったく……誰のせいなんだか……」
「お ま え だ」
「さぁ今日も大量に作ってー!そんでもって出しちゃってー!」
「ちょ……言ってるそばからかよ!?」
「当たり前じゃない。何のために話を振ったと思ってるの?」
「無理やりすぎて涙が出そうだ」
「細かいくせに出すものはしっかり出すのよねーりゅーじは」
「う……うるせぇな……」
「ぽいぽいぽーい!」
「おわぁ!?」
「とりゃー!」
「と、飛ぶなー!!!」

ギシギシアンアン

415 :超しあわせの逢坂タイガー伝説2 ◆x6jzI2BeLw :2010/03/05(金) 01:45:21 ID:1lk4MIOz0

ようやく重石が取れた竜児は身を起こし、すぐ側に座る大河と相対する。
「どういうつもりだよ?」
こんな夜中にと竜児は時計を見る。
「2時じゃねえか」
いわゆる草木も眠る丑三つ時と言う時間。
「こんな時間に・・・まさか」
家で何かあったのかと竜児は大河を問い質す。
「何にも無い・・・急に竜児に会いたくなっただけ」
何も無いと知り、竜児は安堵を覚えるが突飛な行動を取る大河へ首をひねる。
「明日・・・ってもう今日か、学校で会えるだろ」
「そうじゃない・・・どうしてもこの時間に会いたかったの」
「まあ、会いたいっていうのは分からなくもねえ」
竜児自身、寝る前までそんな気持ちを持っていたのだ。
「だけど、こんな時間に押し掛けて来るなんて言うのは・・・」
竜児がそこまで言った時、大河が口を挟む。
「まだ、分かんない?」
「分かんないって?何がだ?」
大河は少しだけ悲しそうな目をすると、次の瞬間、掛け声もろとも竜児の脳天へ木刀を突きつけた。
思わず反射的に真剣白刃取りのポーズで木刀を掴んだ竜児は表情を変える。

「・・・そっか、あれから」
「そうよ、あれから」
ニンマリと大河も表情を変える。
「・・・一年か」
竜児がつぶやく。
「思い出した?竜児」
「ああ、思い出したぜ・・・確かに真夜中の2時」
「あれから始まったんだもん・・・竜児と私」
だから、その記念すべき日と時を竜児と一緒に過ごしたかったと大河は言う。
「非常識だって分かってる。本当は来ないつもりだったから・・・」
でも、と大河は続けた。
いつもミルクをあげるんで、その癖で夜中の1時過ぎに目が覚めてしまったこと。
目が覚めたら寝付けなくて、そしたら居ても経っても居られなくなって、家をこっそり抜け出してしまったこと。
合鍵で竜児の家に入り、寝ていた竜児をじっと見ていたこと。

「ずっとって?」
「ん、15分くらい」
竜児は大げさにため息をつく。
「それよりか、大丈夫なのか?家を開けて」
「大丈夫。今日、帰って来ない筈のママが帰って来たから」
面倒はママが見てると大河は言う。

416 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/05(金) 01:45:29 ID:ti9+tW1/0
うわぁごめんなさい!
リロードし忘れちゃった。。。

417 :超しあわせの逢坂タイガー伝説2 ◆x6jzI2BeLw :2010/03/05(金) 01:47:56 ID:1lk4MIOz0

「しかし、今日だってよく覚えてたよな、大河」
「嫌でも覚えてるわよ・・・生まれて初めてラブレター書いた次の日だから」
北村へラブレターを出そうと決心したのはいいけど、書き方が全然、思いつかなくて明け方までかかったと大河はあの時を思い出しながら語る。
「結局、何とか書いたんだけど、そのまま机で寝ちゃったの。で、目が覚めたら遅刻ギリギリで」
よく確かめないまま、封筒をのり付したと大河はいきさつを明かす。
「入れ忘れたなんて全然、思わなかった」
どうやって渡そうかとあれこれ考えたけど、直接渡す勇気が無くて、こっそりかばんへ入れようと放課後、教室に誰も居なくなるのを待って入れたと大河は言う。
「それが俺のかばんだったと言うわけだな」
「そうよ、まさか竜児のかばんだったなんて想像もしなかった」
すぐ取り戻そうとしたけど、竜児が馬鹿力で取り戻せなかったとも大河は付け加える。
「それで真夜中の襲撃か」
「・・・うん」
心なし申し訳無さそうにうつむく大河。
「竜児に怪我させないで・・・良かった・・・馬鹿なことしたと思ってる・・・ごめんなさい」
正座をして両手を膝に乗せ、ぎゅっと目を閉じて頭を下げる大河。
ずっとこのことをきちんと謝りたかったと大河は胸の内を披瀝する。
「もう終わったことさ・・・そのおかげで大河と仲良くなれたんだから、むしろ俺は感謝してるくらいだぞ」
「本当?」
「ああ」
「良かった・・・でもね、大河様の行動がナイスだったから上手く行ったのよ。感謝されて当然ね」
竜児の言葉に顔を上げ、破顔一笑する大河。
「調子に乗るな」
コツンと竜児は大河の頭を軽く叩いた。
叩かれても大河の笑顔はそのままだった。



418 :超しあわせの逢坂タイガー伝説2 ◆x6jzI2BeLw :2010/03/05(金) 01:48:52 ID:1lk4MIOz0

肩の荷が下りたと言うわけではないが、大河はどこかほっとしたような表情を見せる。
そして急に困惑の表情を浮かべ、つぶやく。
「どうしよう・・・困った」
「どうしたんだよ?」
「あのね・・・怒らない?」
上目遣いに大河にそう言われて、竜児としても頷かざるを得ない。

「お腹、すいた」
「腹減った・・・だと・・・夕食、ちゃんと食べたのかよ?」
「うん・・・なんか安心したら急に空腹感が」
込み上げて来たと大河はお腹の辺りを切なそうに撫でる。
「お前と言う奴は・・・」
竜児は呆れながらも立ち上がる。
「大した物は出来ねえけどよ・・・チャーハンでいいよな?」
竜児の台詞に大河は何時にない笑顔を見せると思い切りうなづいた。


明かりも付けずに、出来るだけ物音を立てないように竜児は手早くチャーハンを作り上げた。
深夜にフライパンを操りながら、竜児は思い出に浸る。
いきなり襲って来た奴によくチャーハンなんか作る気になったよなと竜児は我ながら可笑しくなる。
でも、放り出す気にもならなかったし、ほっておけなかったんだよな。
ちょうどお腹すかして泣き声をあげる子猫を前にした心境だったのかも知れねえ・・・。
拾ってみたら猫じゃなくて虎だったけどな。

「ほらよ・・・悪いがスープは省略だ」
大河の前にお皿に盛られた出来立てチャーハンが突き出される。
大河は一年前とは違い、がっつくことも無く味わう様にチャーハンに手を付けた。
「懐かしい味・・・あれからいろいろ食べたけど、このチャーハンに勝る物は無かったわ」
「残り物で作ったやつが・・・か?」
「うん・・・あの時の味、どんなフルコース料理だって叶わない。とってもおいしかったから」
おいしいと言う気持ちが表れた大河はほころんだ顔をさらにくしゃくしゃにする。
「ほんと・・・おいしい・・・おいしいよ・・・りゅうじぃ・・・」
感極まると言うのか大河は笑顔のまま、涙をぽろぽろこぼす。
「あ、あれ、おかしいな・・・なんで泣いてるんだろ、私」
むせび泣く大河は時折、喉を詰まらせながらチャーハンを食べ続けた。
そんな大河へ声を掛けることもなく、竜児は優しい表情のまま食べ終えるのを待った。



419 :超しあわせの逢坂タイガー伝説2 ◆x6jzI2BeLw :2010/03/05(金) 01:49:53 ID:1lk4MIOz0

「なんか、恥ずかしいとこ見せちゃった」
竜児が洗面所から持って来た濡れタオルで目の縁を拭きながら大河は照れたように言う。
「泣きながら食うやつ、初めて見たぞ」
「・・・いいじゃない」
少し口を尖らせて大河は横を向く。
「大河の・・・そんなとこ・・・」
・・・俺は嫌いじゃねえ。
竜児の言葉がつむじ風みたいに大河の内側を吹きぬける。
「は、恥ずかしい台詞」
嬉しいのに顔をつんとさせ大河は依然として横を向いたまま。
「俺は本当のことを言ったまでだ」
ど真ん中のストレートを投げ込まれた大河はあえなく三振する。
「ズルイよ、竜児ばっかり」
負けたという顔をして大河は竜児へ向き直った。

チャーハンの味が引き金になったのか、そんな大河はあれこれ思い出して胸がいっぱいになる。
「何回も泣いたよね、私」
北村くんのことで落ち込んで泣いていた大河の側にいつも竜児がいた。
当たり前のように差し出されるその手を大河は何のためらいもなく掴んで、何度も立ち上がらせてもらった。
「竜児が・・・居てくれたから」
竜児の優しさが大河の胸に浸透するのに長い時間は不要だった。
大河の心の色が竜児一色に染まったのは何時の頃だったろうか。
大河自身、はっきりと線引きが出来るわけじゃない。
ただ、それと気が付いていながら、あえて目を逸らしていたのは事実だった。
竜児の指し示す羅針盤は自分を向いていない・・・そう信じていたから。
だから、いくら望んでも叶わないこと・・・そう思っていたから。


420 :超しあわせの逢坂タイガー伝説2 ◆x6jzI2BeLw :2010/03/05(金) 01:51:17 ID:1lk4MIOz0

「竜児」
大河は最愛の人の名を呼ぶ。
応えるように竜児が大河を見つめ直す。
一年前に蒔かれた種は大きく育って、大輪の花を咲かせる。
「もう、何度も言ったかもしれないけど・・・何回でも言いたいの」
大河は自分を見る竜児をしっかり見つめながら言葉をつむぎ出す。

「大好きだから・・・竜児のこと・・・」
深夜の部屋に響く大河のささやき。
「ここじゃ小さな声でしか言えないけど、本当は大きな拡声器に繋いじゃいたいくらい」
竜児が好きなんだと大声で言いたいと大河は付け加えた。

竜児は言葉で応えるよりも行動で示した。

ふんわりと大河は竜児の腕の中に包まれた。
竜児の手が優しく大河を愛しむ様に触れる。
内から震えるような想いが溢れ出し、大河はすがり付くようなまなざしを見せ、竜児を見上げる。

もう言葉は不要だった。
大河は目を閉じる。

僅かな気配・・・そして、熱くなる口元。

触れ合う一点を通してお互いに想いを確かめ合う竜児と大河。

時計の音さえ遠慮したような静寂の中、大河は今まで感じたことがないような幸福感を感じ取っていた。



と、今回はここまで。



421 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/05(金) 01:53:06 ID:1lk4MIOz0
かぶりましたねwww

>>416
ドンマイ、ドンマイ。

422 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/05(金) 02:49:24 ID:TIxs0Ncf0
乙&GJ!
再び超ニヤニヤw

いやもう、竜児に甘える大河が可愛過ぎる。

423 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/05(金) 03:35:02 ID:nA/o4VUy0
投稿時間帯もいいねぇ。(2時前のプレゼントだね)
仕事で疲れ切った頭に、じんわり溶け込んで、
ニヤニヤさせてもらいましたよ。

ギシアンさんもドンマイドンマイ

424 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/05(金) 08:22:31 ID:cfF1EhpM0
ギシアンは多いほうがいい

425 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/05(金) 20:46:10 ID:EV6CD1L/O
>>421
乙!2828しっぱなし

426 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/05(金) 23:10:40 ID:kS+cLI8b0
>>421
乙!
そうか、こういう1周年もアリだよね。
このほんわかした感じがなんとも心地よいw

427 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/05(金) 23:27:56 ID:t/Iag+xc0
>>421相変わらず素晴らしいっすニヤニヤが止まりません!
>>414のギシアンもニヤけさせていただきました。

428 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/06(土) 01:26:56 ID:/QOr8WSC0
最近になってようやくとらドラアニメで見た。
いやなんでこんな良作見逃してたのかもーホント悔しいぜ!!

このスレもホントいい!ロマンティックが止まらねえ。

ちょっと考えたくなってきましたよ。

429 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2010/03/06(土) 04:29:19 ID:KLvGA6nH0
お題 「迷惑」「同じ店」「戻らない」



 同時に料理を口に運び、大河と実乃梨は同じように眉をひそめる。
「……ねえみのりん、どう思う?」
「……ん〜、なんか微妙?」
「というか、ぶっちゃけちょっと不味くない?」
「むう、やっぱり大河もそう思うかね」
「ここ、雑誌で紹介されてたのと同じ店だよね?クリスピークリーミーみたいに名前が似てる別物ってことないよね?」
「そのはずだけど……というか、連れて来たの大河じゃん」
「私だって本で見ただけで、実際に来るの初めてだもん」
「う〜ん、急に客が増えたせいで味が落ちたのか、はたまた最初から提灯記事だったのか……」
「ばかちーに文句言ってやらなきゃいけないわね」
「いや、あーみんは関係ねーべ。同じ雑誌に載ってたってだけで」
「クレームつけてやろうかしらね……『この料理を作ったのは誰だぁっ!』とか言って」
「やめときな。そんなことしてもお金は戻らないだろうし、他のお客さんの迷惑になるし」
「あ〜あ、久しぶりのみのりんとのデートだってのに、ケチついちゃったわね」
「まあ気にすることないさ。それよりこの後のショッピングを楽しもうぜ」
「……そうだみのりん、今日の夜は空いてるの?」
「ん?今夜はこっちに泊まって明日の朝一で帰るから、多少遅くなっても大丈夫だけど?」
「わかった。ちょっと待ってて」
 言って大河は携帯を手に席を立ち、暫ししてから戻ってくると、
「お待たせみのりん。今日買い物の後、うちに来て。竜児が美味しい料理用意しといてくれるって」
「……え?二人の愛の巣においらなんかがお邪魔しちゃっていいのかね?」
「みのりんなら、私も竜児もいつだって大歓迎に決まってるじゃない」
「しかし、新婚でアツアツの二人に水を差しちゃうってのはやっぱりねえ」
「新婚って……確かにそうかもしれないけど、もう半年以上経ってるんだし」
「いやいや、結婚一年目の夫婦は常にラブラブでなくてはならないって法律にもだね」
「どこの法律よ、それは。竜児も待ってるって言ってたから、ね?」
「ん〜……それじゃ、お言葉に甘えさせてもらおうかね」
「よかった。竜児ったら張り切ってたから」
「そんなに?」
「うん、私が今日はご馳走食べてくるって言ってたから、それに張り合っちゃってたみたい。『8時間煮込んだビーフシチューだ』だって」
「……あれ?今は食事は大河が作ってるって言ってなかったっけ?」
「普段はね。だけど休みの日ぐらいは作らせてくれって竜児が」
「う〜ん、高須君らしいというかなんというか……」
「いいストレス解消になってるみたい。その分拘りが凄いことになっちゃって大変だけど」
「それは……本気で凄そうだね?」
「私としては美味しいもの食べられるからいいんだけどね」
「だけど主婦としては、旦那の方が料理が上手いってのは微妙じゃないかね?」
「まあ……ちょっとはね。でも最初からわかってたことだし」
「それもそうか」
「それに、私が美味しいっていうとものすごく嬉しそうなんだもの。『大河に美味い物を食べさせるのが俺の幸せだ』とか言っちゃって」
「……あ、今のでなんだかちょっとお腹一杯の気分」

430 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/06(土) 07:04:21 ID:T9tiC2Vb0
>>429
GJ!!
脳内再生余裕でした。

431 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/06(土) 19:59:33 ID:5E1yIhPI0
>>429
GJ!
私もお腹一杯w

432 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/06(土) 20:42:48 ID:gaU+/52g0
ギシアン・・・・・

433 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/07(日) 00:08:56 ID:S3Gu/3fEO
>>429
まだまだ空腹だから、また次待ってます
乙!

434 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/08(月) 00:07:59 ID:AzmM7XUr0
「竜児、こっちむいて」
「なんだ?んっ…」
………
「…ぷはぁ……えへへ…」
「あ、あのなぁ…唐突にキスするなよ……」
「ふふっ。りゅうじ顔まっか///」
「!………たいが、あっちむいてみろ。」
「?…………なっ!!ちょっ!?」

ギシギシアンアン

435 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/08(月) 00:58:20 ID:3EVWEGvq0
>>429
乙!
確かに満腹w

>>434
なんかノスタルジックなギシアンだw

436 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/09(火) 05:36:53 ID:pj8EsE6Y0
悩み相談です(自営業・男性・年齢不詳)

 高校の時から交際を始めて結婚した妻がいるんですが、妻が夜の営みでコンドームをつけてのギシアンを嫌がるんです。
自分はまだ二人の時間を楽しみたいんですが、妻は虎のように怖いので逆らえず、今まで一度も避妊をした事がありません。
このままでは子だくさん家庭になって家計が大変です。どうすればいいでしょうか?

437 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/09(火) 15:40:20 ID:Q7w+omuz0
パイプカット

438 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/09(火) 22:48:50 ID:Tn8KwYHK0
>>436

「なぁ、大河。やっぱり避妊しよう」
「やだ」
「なんでだよ?」
「なんでって……じゃあ、竜児は……いや?」
「イヤじゃねぇよ。イヤなわけねぇだろ」
「でしょ? そういうことよ」
「けどよ……」
「ごちゃごちゃうるさい! 今は私だけ見てりゃいいのよ」
「……大河!」
「竜児!」

ギシギシアンアン

439 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/10(水) 00:14:20 ID:ETU9vFKy0
>438
解決してねえw

440 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/10(水) 01:26:06 ID:FpW7513QO
>>438
してねえなwww


「ちょ……ちょっと待ってくれ、大河……」
「何よ? まだまだこれからなのよ?」
「どっからその体力が出て来るんだよ……俺はもうヘロヘロだぞ?」
「ふん。情けないわねぇ……さっきから私が頑張ってあげてるじゃない」
「そうは言っても、俺も腹筋とかも使うだろ?」
「私なんかもう全身運動よっ!」
「…………だから、少し休もうぜと……言ってるわけだが」
「ごちゃごちゃうるさいのよ! はい、休憩終わり! いっくわよー!」
「ちょ!?」
「おらおらー!」
「ぐおっ!? 容赦ねぇ……ちくしょう! 負けてらんねぇ!」


ギシギシアンアン! ギシギシアンアン!


「はぁ……はぁ……」
「ふぅ……ふぅ……やるじゃない、竜児」
「くそ、やられた。これじゃ大河の思う壺じゃねえか……はぁ……はぁ……」
「さ、息を整えたら次のラウン……」
「ま、待てよ! 待て待て! まずは抜いてから言えって、そういうことは!」
「…………ちっ」
「恋人とつながったままの台詞とは到底思えないぞ?」
「むっ……あんた、そういう事言っていいわけ?」
「わーわー! タンマだ! 腰を落とさないで下さい大河さん!」


441 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/10(水) 01:28:33 ID:FpW7513QO

「ふん、最初からおとなしくしとけばいいのよ」
「…………ったく、マジで擦り切れ……って、うおおぉ!?」
「ど、どうしたのよ急に?」

「す  り  き  れ  て  る」
「な ん で す っ て え !?」

「………………」
「………………」
「…………おい」
「………………」
「おい、大河、どうすんだよ、これ?」
「………………ピュー ピュルリー」
「いや、吹けてないから」
「しょ、しょうがないわね、こうなったら……最終手段よ!」
「なに? 何か手があるのか? 頼もしいじゃねえか」
「へへへ。でっしょー?見て見て! じゃーん! じゃじゃーん!」
「…………って、それゴムじゃねえか!」
「これを付ければ……擦り切れてたって平気じゃない?」
「平気じゃねえよ!!! いてえよ! いてえんだよ!」
「あらら、もう付いちゃった」
「うおっ!?」
「素晴らしいわね、最近のは……付けやすいったらないわ」
「おい……まさか……冗談だろ?冗談だよな?」
「ふーふーふーふーふー!」
「い……いや…………いやぁぁぁぁぁ!!!」

ギシギシアンアン!!! ギシギシアンアン!!!




ほら、解決したろ?



442 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2010/03/10(水) 05:30:01 ID:iJpmYSZ70
お題 「こっち」「扉」「好転」



「やっちゃん、おやすみなさい」
「それじゃ、ちょっと行ってくる」
「は〜い、大河ちゃんまた明日〜。竜ちゃんも気をつけてね〜」
 大河は家族の待つ自宅に帰るべく。竜児はその大河を家まで送るべく。
 扉の外に出て、竜児は大河をじっと見つめる。
「なあ大河、どうしたんだよ」
「どうしたって……何が?」
「何がじゃねえ。今日はなんか元気がねえじゃねえか」
「別に、そんなこと……」
「あるって、見てりゃわかる。なあ大河、変に隠さないで言ってくれよ。そりゃ、俺じゃまだまだ頼りないと思うかもしれねえけど……」
「そんなことない!竜児は頼りなくなんかない!」
「それじゃあ、さ……」
「……ん……あのね……私、今幸せなの。ママとはまだちょっとぎくしゃくしてる所あるけど、新しいパパは優しいし、弟は可愛いし」
「おう」
「クラスが違うから前みたいには会えないけど、学校に行けばみのりんや北村君がいて、ついでにばかちーもいる」
「川嶋はオマケかよ……」
「それに何より、竜児がいる。やっちゃんも、ブサ鳥も。こっちに帰ってきてから特にトラブルも無いし、ほんと、人生そのものが好転したって感じで」
「おう、よかったじゃねえか」
「だけどね……だからこそ……たまに、怖くなるのよ」
「……怖く?」
「そう。またちょっとした事でこの幸せが壊れちゃうんじゃないかって。実は私は底無しの穴の上の薄い板に立ってるんじゃないかって」
「そんなこと……」
「頭ではわかってるのよ、そんなことがあるはずが無いって。根拠の無い妄想なんだって。だけど……」
 大河は俯いて、自分の体をぎゅっと抱き締める。
 そうだ、大河はこれまで18年近い人生の大半を、そんな恐怖と、絶望と、闘いながら生きてきたのだ。
 その傷は竜児が想像するものよりずっと深く、昏いのだろう。たとえ今は幸せでも、そう簡単に癒えるものではないのだろう。
 では、自分は――共に生きると誓った高須竜児は――そんな大河に何をしてやれるのだろうか?
「…………大河、ちょっと待ってろ」
 竜児は言うと踵を返して家の中へ。
 『あれ〜?竜ちゃんどうしたの〜?』『おう、ちょっとな』などといったやりとりの後、再び現れた竜児は大河の手を取り。
「ほら、こいつをやる」
 そう言って手渡されたのは青く透き通った、
「……ビー玉?」
「ビー玉じゃねえ、そいつは如意宝珠だ」
「にょい……何?」
「竜の絵でさ、片手に珠を掴んでるやつって多いじゃねえか」
「そうなの?」
「……そうなんだよ。その珠のことを『如意宝珠』って言うんだ」
「ふうん……」
「まあ、竜の力を宿したお宝ってとこだな」
「で、これがそうだっての?」
「おう」
「……ひょっとして、竜児のにょいほーじゅだとか言いたいわけ?」
「おう。だから、もし万が一何かあっても、そいつが必ずお前を守ってくれる」
 外灯の光にかざしたそれは、空を思わせる柔らかなブルー。
「……ぷっ……くくく……」
「大河?」
「な〜にが如意宝珠よ。こんなの只のガラス玉じゃない」
 クスクスと笑いながら竜児を見上げる大河。その瞳はキラキラと輝いて。
「お前なあ……そんな身も蓋もねえ……」
「でも……大事にする」
 大河は胸元で、青い珠をぎゅっと握り締める。
「おう、大切にしてくれ。なんせ俺が幼稚園の頃からの宝物だからな」
「へえ……それじゃ、これからは私の……ううん、私と竜児の宝物ってことね」

443 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/10(水) 09:05:47 ID:OAGFVyrS0
>>441
何してんだww

>442
wktk

444 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/10(水) 09:21:04 ID:h2uySYE20
3スレ目から来てなかったが
すごいことになってるなwwww

445 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/10(水) 12:26:10 ID:ETIgiyVC0
>>442
いつも乙です。
いいですね、こういうしっとりした感じのも。

446 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/10(水) 14:43:28 ID:gywtA7820
電撃文庫更新してた。

スピンオフ3の表紙見て涙出てきたんだけど。

どうしたらいい?

447 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/10(水) 15:15:13 ID:FpW7513QO
うわー見たい!
帰るまで我慢だなw

448 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/10(水) 15:39:21 ID:Gjgma4w50
今更だけどドラゴン食堂とかも収録されるのか
最高すぎるだろコレは

449 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/10(水) 20:41:17 ID:JYllHU410
>>442
いいなあ。心が温まるね
GJでした!

電撃見てきた
久々新しい大河ですんげー嬉しいけど、最後くらい竜虎セットがよかったな…
描き下ろしはどれだけあるのか

450 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/10(水) 21:15:54 ID:gywtA7820
書き下ろしはやっぱ竜児と大河のイチャイチャが見たい!

できれば三年の話とか、もしくは結婚式とかがいいなぁ〜

451 : ◆xNYpA6wwn6 :2010/03/11(木) 01:31:40 ID:KQ0FGxR80
今更だけどちょいと試み

スピンオフか…未読が結構あるから楽しみやなあ。

452 :どめすてっぃくなんちゃらー ◆xNYpA6wwn6 :2010/03/11(木) 01:38:13 ID:KQ0FGxR80
<趣旨>自分は健全だと信じて

【DV】

「あー、食べた食べた」

 存分にその旺盛な食欲を満たし、畳の上で大の字になっている大河を横目で見やりながら、竜児は無言で――物音を立てて虎の機嫌を損なわないよう――注意深く皿を片付け、流しに持っていく。
 触らぬように、刺激しないように――ささやかな平穏を求める竜児の切なる願いを、しかし踏みにじるように、この小さな暴君はキロリと奇妙な目つきで竜児を――竜児の尻を見つめた。

「あー。食後になにか軽い運動でもしたいかなー。したいなー」
「……………」

 ――カンッ!!

 聞こえなかったフリをしようとしていた竜児の右頬を掠め、食卓塩の小瓶のフタが台所の壁にブチ当たった。
 反射的に振り返って、竜児は既にガラス製の小瓶本体の投擲姿勢に入っている大河の姿に、愕然とする。
 何をする、止めろ、塩を粗末にするな、ガラスの破片が飛び散ったら危険だし片づけが大変だろ――喉元まで出かかった言葉の奔流をギリギリ押し留め、竜児は弱々しく、か細く、声を絞り出す。

「ど、…どうした?」
「運動したいな、って言ったのよこの駄犬」
「そ、そうか。運動か。…そうだな、天気もいいし、公園まで散歩に行くか?そうだ久しぶりにバトミントンでもしようか?お前得意なんだろ?よ、よーし待ってろ、すぐにラケット準備するから…」

「五月蝿い」

 右手の小瓶を弄びながら、ただ一言。
 その一言で、竜児は萎縮し言葉を詰まらせてしまう。

「…白々しいのよ。これ以上、私を怒らせないで頂戴?」
「…………」

 怒りはない。むしろ微笑を浮かべ、大河はちゃぶ台に小瓶を静かに置いた。
 大河は怒ってなどいない。
 怒りではない、別の感情に、滾っているだけだ。

「た、たいが…」
「あら?もしかして怯えてるの?おかしな竜児ねぇ…怖いものなんて何もないじゃない?」

 そう。目の前にいるのは最愛の存在。大河にとっての竜児、竜児にとっての大河は、つまるところその一言で説明できる。
 怖れることなど、あろうはずもない。そんなことはありえない。
 本来ならば。

「ねえ竜児ぃ…」

 そんな童女のような甘え声は耳に心地よく。
 小柄で華奢な容姿はまるで穢れを知らぬ人形のような可愛らしさ。
 だがペロリ、と僅かに唇を舐める仕草は、既に情欲というものを知った大人の色香が漂って。
 その瞳に光るものは純粋無垢などとはかけ離れた、肉食獣が獲物に向けるソレ。
 そして大河は、残忍なほどの愛情を込めて命じてくる。

「ズボンを下ろしなさいな、竜児」
「た、大河…」
「ああもちろん…パンツもね」

 そんな要求を恥じらいも無く突きつけてくる恋人に、竜児はしかし、何も言えない。

 ――以前の大河は、ワガママで横暴だがそんなことを言ってくることはなかった。
 そんなことが言えるような女の子ではなかった。
 それが……どうしてこうなってしまったんだろう?
 どこで俺たちは、間違ってしまったのだろう?

453 :どめすてっぃくなんちゃらー ◆xNYpA6wwn6 :2010/03/11(木) 01:40:52 ID:KQ0FGxR80

「あら?恥ずかしいの竜児?…フフ、じゃあ上は勘弁してあげる。脱ぐのは下だけよ、竜児」

 慈悲の衣をまとった無慈悲な命令に、竜児は抗いたかった。
 だが竜児の身体に無数に刻まれた暴虐の痕が、そんな反抗の気概などすっかり奪い取ってしまって久しい。
 ――ノロノロと、竜児は大河の「命令」に従う。従うしかないから。

「フン!なによその萎びた粗チンは!
 まあいいわ、いつものようにすぐに大きくしてあげるから…感謝なさい!」

 淫靡に妖しく笑いつつ、歩み寄る大河から視線を逸らしながら畳に座った竜児は、ともすれば零れそうになる涙を必死にこらえた。
 そして震えながら、その固い足をゆっくりと開き――

  ***

「うぶふぉおおおおおおおおおおっっ!
 ス、ストップ!ストップだあーみん!!は、鼻血どころか……ぐぶぉおおっ、な、なんじゃこりゃあああああああああ!!」

 口からの吐血に、松田優作ばりに吼えている櫛枝の狂乱っぷりが心配ではあったが、それに対処してやれるだけの余裕も既に無かった。
 精神力をゴリゴリと鑢で削られ、必死にこみ上げてくるニガすっぱいモノを堪えつつ、竜児はなんとか声を絞り出した。

「か、かわしま…お前…一体、なにをしたいんだよ…」

 心くつろぐ昼休みタイムを極マニアックな桃色妄想空間に染め上げた大罪人は、向けられた弾劾にしれっと答えてきた。

「え?アンタ達の爛れた夫婦セイ活を亜美ちゃんなりに推測してみたんだけど…なんか問題ある?」
「問題ある?…じゃねーだろ!もう…どこからつっこめばいいのか…」
「まー、極端なデフォルメ補正入っているのは認めるけどー。でも当たらずとも遠からずなんじゃない?高須君、基本総受けだし」
「ふぉおおぅ…あーみん…このえろちーめ!おいちゃん大河に弄られる高須くんを想像するだけで…も、萌えるぜ!超萌えるぜよ!」
「いやあ…実は私も最初はほんの軽いジョークのつもりだったんだけど…なんかすっごくノリが良くって…。
 高須君、プラス首輪!とかさ…」
「あーみん…そいつぁベタだ…ベタだが…。や、やべえ、鼻血の出しすぎで…奥の方が痛ぇ…」
「お前ら…人をネタにそんな方向で盛り上がらないでくれ…。
 大河、お前も何か言ってやって…って大河―――!!?」

 自分の席で撃沈し、机を鼻血で真赤に染めている大河を発見し、竜児は慌ててその小さな身体を抱き起こした。

「り…りゅうじぃ…」
「お、おう!大丈夫か大河!鼻血出しすぎて貧血か!?」
「竜児…わたし…そんなことしないよ…?竜児にそんなひどいこと、しないよ…?」
「わかってる!わかってるって!」
「えー?でももーちょっとソフトにエッチなこと要求はしてるよね?」
「大丈夫!大河は普段はすっげードSだけど、実は信じられないくらいダダ甘なドMだってことは、みのりんちゃんと理解してるからね!」
「…すまんがちょっと黙っててくれ川嶋、櫛枝…いま大事なトコだから」

 あーはいはいと、不満そうではあるがジェスチャーのみで応じる二人に少し安堵しつつ、竜児はおそらく自分同様かなりの精神的ダメージを負っただろう大河に向き直る。

454 :どめすてっぃくなんちゃらー ◆xNYpA6wwn6 :2010/03/11(木) 01:44:18 ID:KQ0FGxR80

「竜児…実はわたし、涙目で足を広げる竜児を想像して、…ちょっと濡れ」
「スト――――ップ!!てかお前もこいつらと同類か―――!!」
「はっはー。やっぱ高須くんは受けだよね!」
「っていうかさー…弄り甲斐があるっていうか…亜美ちゃん、高須君のせいで新たな性癖に目覚めたのかも…」
「元から持ってるモノを人のせいにするなっ!お前は真性サドだよ!!
 ……うん?」

 先ほどから、椅子に座ったままの大河を抱き寄せていた竜児は、自分の胸元を軽く掴んできた手に気づいて視線を落とす。
 そして、自分の腕の中で俯いたまま、大河は呟くように問いかけてきた。

「竜児…竜児は、私が、その…そーゆーこと、ねだってくるの…それで嫌な思いすること、あったのかな?」

 この子虎は、いつも。
 自分が考えもつかないことばかり、口にする。

「……いまのばかちーの妄想話ってさ。まあ…当事者以外はエロジョークな笑い話で済む、って思う」
「うん…そうだな」
「でもさ…男女の立場を入替えれば、これって虐待の話だよね…DVってやつ?」
「…そうだな。ひどい話だよな」
「そう。ひどい話。男女を入替えなくたって、普通にひどい話だよ、これって。
 ……そう考えたら……私、でも私、程度の差はあってもさ…竜児は何かっていうと俺たちまだ学生だからって…
 でも私は、そゆことして欲しくって…したくって…自分の気持ち、押付けて…
 程度の差はあっても…その…ベクトルは同じで………竜児はイヤなのに…む、無理強いしてるんじゃって…それじゃあ私、竜児にひどいこと…してる…わたし………ひどい…?」
「――大河?」

 名前を呼ばれ、ふえ?と子供っぽい仕草で、反射的に大河が顔を上げる。
 そっと、さり気なくその頬に手を添えて。
 逃がさないように。
 竜児は、大河に優しく――しかし相手に自分の意図を気取らせる隙を与えず、…唇を重ねた。。

 うおおおおおおおお、と数瞬の間を置いて、周囲の級友たちからどよめきが沸き立つ。
 ぬぐわああああああ、というかわいくない方のメガネの、僻みな叫びも混じっていたような気がする。
 視界の端で、櫛枝と川嶋がそろって『うわっちゃああ・やっちまったー』と目と口を丸くしているのが映った。
 そして大河は。

「……………!!?」

 周りから更に3テンポほど遅れて、ようやく自分の状況を理解したらしい。
 とっさに首を捻ろうとするが…がっちり頬を掴んで、逃さない。
 弱々しく、こちらの胸を押して身体を引き離そうとするけれど、もう片方の手はしっかり肩に回ってる。
 真赤な顔で「なんで!?」と目で問いかけてくるけど…今は答えない。
 答えないまま、更に大河にのしかかり、大河を蹂躙する。
 その一方的な蛮行に、胸に置かれていた大河の手が、制服越しだというのにギリギリと、痛いほどに爪を立ててきた。
 でも……大河は本当には嫌がっていない。
 戸惑いはあるものの、自分の求めにちゃんと応じてくれている。
 だから、まだ名残惜しいけれど。

「―――ぷはぁ」
「………ななななな、なによ、そのムードのカケラもない息継ぎは!?」
「いやだって…メ、メチャクチャ恥ずかしいし…」
「顔を真赤にしてそんなこと言うなら、さ、最初からするなぁぁぁぁ!っていうかなんなのよいきなり!意味わかんない!!」
「だって、したいって思ったから」
「理由になってない!なんなのよそれ!?」
「…理由にならないか?したくもないのにするよりは、ずっと自然だと思うが」
「そーいうこと言ってるんじゃない!なんなのよいきなり!こんな…こんな、いっぱい人目のあるとこで…!」
「……ごめん」
「あ、あやまるなあ!謝るくらいなら最初からこっ…こんなことするな!」


455 :どめすてっぃくなんちゃらー ◆xNYpA6wwn6 :2010/03/11(木) 01:48:08 ID:KQ0FGxR80
 大河同様、羞恥で顔がまだ赤いものの、それでも大河よりは幾らか落ち着いて、竜児は応じる。

「大河が本当に嫌だったら、すぐ止めるつもりだった。…大河が嫌がるようなこと、無理強いしたくはないから」
「ッ!?」
「それは大河だって同じだろ?…まあ今のは、かなりギリギリだったと思うけど…」

 そっと大河を開放し、竜児は困ったような顔で、亜美を見た。

「なあ。さっきの妄想話だけど」
「なによ?」
「えーと。ほら。大河は普段から物騒な言動が多いし、春田なんか…まあ自業自得だけど、大河を怒らせてしょっちゅう鉄拳制裁されてるからさ。
 …直接的な暴力を除いても、臓腑を抉るような、ある意味もう才能のような罵詈雑言を浴びせて精神的にノックアウトさせることも多々ある、暴虐ヤクザな女だが」

 ぴしっ。

「どうどう大河〜。ムカツクのは分るが全部事実だからー。高須くんは嘘はいってないよー」
「ひ、ひどいよみのりん……」

 大河のことはとりあえず櫛枝が抑えてくれると期待して――後がいろいろ怖そうだが――竜児は言葉を継ぐ。

「そういや川嶋は大河にビンタ張られたよな。初めて会った時」
「まーねー。あの時はなにこのDQN!?とか思ったけど…」
「思ったけど?」
「だんだんタイガーのこと分っていくに連れて…そんな程度じゃ収まらない。リサイクルのしようも無い産業廃棄物女だってしみじみ実感したわ…」
「ころ―――――す!ヌッころ―――――す!!」
「大河……おとなしくしないと、舌いれちゃうぞ?」
「え、やだ、なにみのりん…!?」

 背後の展開が気にはなったが、振り返るのもなんか怖くて逡巡してしまう竜児である。
 が、亜美の方は苦笑しつつもスルーするつもりのようであり、つまり大したことにはなるまい、と信じて竜児は続けた。


456 :どめすてっぃくなんちゃらー ◆xNYpA6wwn6 :2010/03/11(木) 01:50:28 ID:KQ0FGxR80

「でもさ。大河って、売られた喧嘩は買う方だけど、自分から喧嘩を売ることはないだろ?…少なくとも自分の我意を通すために、暴力に訴えることはしない」
「……まあね」

 反射的に否定しようとして、しかしいつも自分の方から大河にちょっかいかけている事実を否定できず、亜美はやや不満気に頷いた。

 ――去年の春。
 俺と大河がつきあっているという噂が流れた時、それを否定するために大河はクラスで暴れ、親友の実乃梨すら、恫喝した。
 それは自分が受けた誤解を解くためではなく、俺の片思いを応援するために。
 狩野の兄貴に殴りこみをかけ、乱闘と流血の挙句に停学になってしまったこともあった。
 でもそれは自分の失恋の痛みではなく、どうしようもなく心を傷つけられた「友人」のために。
 人の気持ちを思いやり、誰かのために全力を尽くすことができて。
 普段はワガママで横暴なくせに、自分が本当に望むものは、なかなか口に出せなくて。
 とてもとても優しくて、でも不器用で、その気持ちを上手に伝えられない。
 逢坂大河は、そんな女の子だ。

「――だから。全然本気じゃないし、シャレで言ってるのは十分に理解してる。
 こんなこと、わざわざ言うまでもないし、きっと言わない方が良いんだろう。
 でも、これはやっぱり譲れないから。
 大河は、誰かを本当に傷つけるようなことは、絶対にしない。それが気に入らない相手でもだ。
 だから、冗談でも、そんな風に大河を貶めるようなことは、言わないでほしい」

 強い口調ではない。
 流暢というわけでもなく、寧ろ所々では口篭りながら、それでも最後まで竜児は視線を外さず、真正面から言い終えた。

「…………そこで『俺が許さん』とか、せめて『言うな』で締め!ならまだカッコつくと思うんだけどねぇ……まあ高須君らしいっちゃ〜らしいけど」

 だるそうにぼやきながら、亜美は器用に左右の眉をそれぞれ別角度に上げた顰め面をしてみせた。

「…でも確かにちょっと悪ノリが過ぎたかも、ね。
 これからは気をつける。…ごめん」

 そう言って、亜美は竜児と――後ろの大河も含めて、軽く頭を下げた。

「…あーみんも丸くなったよねぇ…おいちゃんは嬉しいよ…」
「同感だが…お前ら一体なにをやってるんだよ…」

 チークダンスのような体勢で互いに互いの両手を握り、ギリギリと拮抗している実乃梨と大河の姿に、意味不明な疲労を感じる竜児である。
 というか、その、大河の口元にむちゅ〜〜☆と迫るタコ唇は、性別・女として如何なものか櫛枝実乃梨嬢?

「竜児…」「おわっちゃああああああ!?」

 素早く拮抗状態から抜け出して――背後でいきなりバランスを崩された櫛枝っぽい人影が派手に転倒していたようだったが一顧だにせず、大河は不安げで…でも何か期待しているような瞳で、見上げて。

「竜児…」

 言いたいことは、いっぱいある。
 伝えたい気持ちは、自分の内から溢れ出しそう。
 でも、どうやったらそれを上手く伝えることができるのか、わからなくて。

「竜児…」

 結局、いつもこんな風。言えなくて、伝えられなくて、わかってもらえない。


457 :どめすてっぃくなんちゃらー ◆xNYpA6wwn6 :2010/03/11(木) 01:52:19 ID:KQ0FGxR80
「…おう。まあ、あれだ。シャレだしな。
 気にすることねえし。さらっと流しちまおう。つーか…ああいうネタはホント、勘弁してくれ」

 でも多分、言わなくてもいい。伝えられなくても、わからなくても、そんなことしなくても、ちゃんと自分と同じ気持ち、コイツは持ってるから。

「竜児…さっきはアンタに良い様にされちゃったからさ…リベンジ、したいんだけど」
「すいません勘弁しろ。アレはちょっと調子こいちまったから。もう一回やったら俺は爆死する自信満々だぞ。死ぬから。死ぬって絶対」
「いっそキス殺してやろうかしらねぇ…」
「あやまるから!ゴメンナサイ!つーかキス殺しって容易に想像ついちまって…なんか、自己嫌悪」
「このエロ犬…どうしてくれようか」
「そおねぇ…とりあえず高須君?ちょっと指導室まで行こっか?」
「「え゛」」

 突然の割り込みに振り返り――かけて、その前に竜児の肩にポン、と手が置かれた。

「仲良しなのはいいことだと思いますよぉ。うん。それは絶対」
「せ、せんせい…」「げ、独身」

 ニコニコと――表面上は爽やかに、朗らかに、微笑む元・担任(三十路独身)

「でもねぇ。学校っていうのは、公の場なの。公衆良俗というものを踏まえて、マナーとモラルと常識は、常に頭に置いていて欲しいなあ、と先生は思います」
「あ、あの、先生…いつから、いらっしゃったんでしょうか…」
「割と前から。あれ?前の時間に忘れ物しちゃったかなーって確認に来たらね。あ、忘れ物はちゃんとあったから」
「え、えっとですね、その…反省はしてます…」「反省してまーす」
「反省なんて、言葉だけならいくらでもできるんですよぉ。知ってました?」
「先生!教育者としてその発言はちょっと…」
「黙れやキス魔?」

 そこに優しい先生(30歳・独身)はいなかった。
 ただ、吹きすさぶ風がよく似合う、戦鬼だけが笑っていた。何と戦う鬼なのかはともかく。

「ま、一時間くらいつきあえや、なあ?」
「ひぃぃぃぃぃぃぃぃ!?助けて大河!ってうわあ既にいない!!?」

「さらば竜児…また会う日まで!」
「高須君に較べて、実は割と薄情だよね、アンタ」

 ずりずりと引き立てられていく婚約者を、亜美の影からハンカチで目頭を抑えつつ見送る大河であった。
 そんな大河に亜美はジト目をくれるが、向けられた方はまるで気にしてはいない。

「それより何か静かだと思ったら…みのりーん、なんでそんなとこで寝てるの?」
「……いや気絶してんじゃね?実乃梨ちゃん」

 ――なんだかよくわからんが、今日の大橋高校の午後は、長いものになりそうであった。









 ちなみにその後、普段のラブ度数の高さの割には押さえ気味だった竜虎のギシアン頻度が、やや上がった模様。
 その事で「初孫の顔を見れる日は近い」と祝杯をあげた母親が二人ほど、いたという。


   <了>

458 :避妊はしようね? ◆xNYpA6wwn6 :2010/03/11(木) 01:59:27 ID:KQ0FGxR80
と、いうわけで今更ですが、トリップいれてみましたー。
今後はこれでいきまする。

…受け竜児、書いてて妙に楽しかったのは気のせいだと思いたい。
下いかもしれなくても!自分は大河のちっぱいが大好きだし!つうかもう本当に、大河のせいで好み変わったよ!
だから、まあ、一応ノーマル!な筈!


…でも初投下作が女装ネタだったこと思い出して、ちょっと吐血。

459 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/11(木) 06:57:37 ID:cGa+4J1u0
>>458
GJ!!
教室でこいつらはwいいぞもっとやれw
竜虎はやっぱラブラブが似合うなぁ

460 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/11(木) 14:59:06 ID:tn2Vkiau0
>>458
いいぞ独神もっとがんばれ!w
2828させていただきました。

461 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/11(木) 21:43:41 ID:awxm8tVU0
>>458
乙!
なんてーか、シリアスとギャグっぽいとこの緩急が好きだ。
大河の薄情っぷりに俺と竜児が泣いたwww
下ネタはほどほどになw

462 :まとめ人 ◆SRBwYxZ8yY :2010/03/12(金) 01:16:28 ID:mar9VgzE0
>>458
乙!
ヒュー!今後と言わずこれまでに書いた作品もトリップつけちゃいなYO!
避難所あたりに書いてくれれば後でまとめておきますワ


そろそろ次スレの季節か…

463 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/12(金) 01:29:13 ID:qGOFTuWq0
>>462
いつも乙です

次スレのスレタイでもまた候補考えておくかな

464 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/12(金) 02:26:58 ID:lJUAhOt30
>>441
短いのに面白ぇ。キャラの特徴つかみまくりだ。擦り切れるってどんだけww

>>442
竜の宝珠ネタはいつか誰かがやってくれると思ってた。しんみりなのもとてもGJ!

>>458
別にMじゃないけど、DV大河にドキドキした。Mじゃないけど

465 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/12(金) 06:41:10 ID:2Vft0lIO0
いよいよ来月だ
ttp://dengekibunko.dengeki.com/new/bunko1004.php#new5

466 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/12(金) 23:39:44 ID:vKoYNr/q0
OVA出ないかなあ
アニメは独自エンディング迎えたんだからその後のことちょっとくらい見せろよと思う

467 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/13(土) 21:14:54 ID:sXzDTa9i0
OVA出るんならやはり竜児と大河のラブラブ三年生生活をオリジナルストーリー(パラレル扱い)でみっちりと12話希望

468 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/13(土) 22:39:43 ID:EUTV1csr0
パレレルだったら、そんな展開ないだろ
PSPの大河の扱いを見てると
サブヒロインにライトが当たる予感

469 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/13(土) 23:02:36 ID:oZkrwP7/P
ラブラブ性生活…だと?

470 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/14(日) 03:29:06 ID:jK7YmD9J0
そう、ラブラブ性生活だ

471 :とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2010/03/14(日) 03:51:12 ID:HDEjN8hh0
とらドラ!三題噺「深呼吸」「かわいい」「あくび」


「ふわ〜〜〜ぁ……」
 竜児の目の前で、小さな顔が大きく大きく口を開ける。
「……おい大河」
「何よ?」
「またお前、休み前だからって夜中過ぎまでゲームやってたんだろ」
「ゲームじゃないわ、ネットよ」
「同じだ馬鹿。というかだな、人前でそんなに大口開けてるんじゃねえよ。もうちょっと我慢するとか、せめて口元を手で覆うとか」
「何よ、ばかちーみたいにかわいいフリでもしろって言うわけ?」
「そこまでは言ってねえけど、女子の嗜みとして恥じらいとかそういうものをだな」
「あのね竜児、あくびってのは自然発生的な深呼吸なの。恥ずべきことなんて何も無いのよ」
「そういう問題じゃねえ。お前、北村の前でもその言い訳出来るのか?」
「う……北村君ならきっと、そんなこと気にしないもん」
「おう、あいつならそうかもしれねえな。それでこう言うんだ。『おお、逢坂は実にいい歯並びをしているな。虫歯も無いようだし結構なことだ』って」
「そ、それは……」
「嫌だと思うなら、少しはお淑やかにするんだな」


 一週間後。
「ふわ〜〜〜ぁ……」
 竜児の目の前で、小さな顔が大きく大きく口を開ける。
「……おい大河」
「何よ?」
「この間注意したばっかりなのに、もう忘れたのかよ。男の前でそんなに大口を……」
「うるさいわね、憶えてるわよ。外では、特に北村君の近くではちゃんと気をつけてるもの」
「それじゃあ、何で……」
「あのね竜児、今ここには私とあんたしか居ないわけよ」
「おう、それがどうした?」
「竜児相手に今更恥ずかしがることなんて無いもの。だったら気をつかう必要だって無いじゃない」
「……そういう問題……なのか?」

472 :アゴ  ◆xNYpA6wwn6 :2010/03/14(日) 05:25:05 ID:0KJAGG8m0
<趣旨>神岸あかり・マニアック!



【ア・ゴ☆】


「竜児、お手」
「…お前はいきなり何を言っているんだ」

 日曜日の昼下がり。
 昼食後、天気も良いのにそのままポケ〜ッとテレビなど眺めていた竜虎の二人だったが、子虎のいきなりで脈絡のない言動に、相方はいつものように途方にくれた。
 自堕落ではあるが、それなりに平穏な時間を竜児としてはまったり楽しんではいたのだが。

「なんというか…もう少し、わかりやすくなりませんか俺の人生?」
「そゆこと私に言われても困るんだけど」

 目下のところ、竜児の最大の悩みの種であり諸悪の根源であり、彼の人生そのものである最愛の嫁はアメリカンに肩を竦めた。

「とにかくほら。お手」
「だからなんで!理由を十字以内で説明しろ!」
「あんた犬だから」

 ア・ン・タ・イ・ヌ・ダ・カ・ラ。
 うわー、余裕もって8文字で説明しやがった。

 なんかもー色々と途方にくれる竜児の前で、不機嫌に眉をしかめた暴君が右手を突き出してくる。

「お手」
「……」
「お手!」
「…………」
「お手!!!」
「……………………ワン」

 決して納得はしていない。してはいないが、しかしこれ以上の抵抗は無意味と悟り、竜児はため息まじりに自分の右手を大河の掌に乗せる。

「おかわり」
「わう」
「アゴ」
「……………はあ?」

 今度こそ完全に意味不明な要求に、思わず素に戻ってしまう竜児に大河は。

「アゴ」
「なんだよそれ…?」
「アゴ!」
「いや、だからさ…アゴってなんだよ?」
「アゴはアゴよ。ほら、ア・ゴ!」
「そんなさも当然そうに言われてもだな…」
「ア・ゴ!ア〜〜〜ゴ〜〜〜〜〜〜〜〜!!アゴったらアゴ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
「………………………………………………わぅ」

 観念して――多分これでいいのだろう、と竜児は大河の小さな手に軽く、アゴを乗せた。

「……プ。プクククク…。あ、あんたって…ククク…ほ、ほんとにやっちゃうんだ…あははははははははは!」
「強要してきたのはお前だろ!指差して笑うな!くそ、なんかすげー屈辱的!」
「あははははは!だってだって、アンタどこまで犬根性が染み付いてんのよ!
 アンタ絶対前世は犬!そして来世も犬!未来永劫犬!!きっと現世で人間に生れついたのが何かの間違いなのね絶対!
 もうこの犬チックめ!私を笑い殺す気か!!」

473 :アゴ  ◆xNYpA6wwn6 :2010/03/14(日) 05:31:30 ID:0KJAGG8m0

 大河は左手で口元を覆い、何とか笑いを収めようと努力はしているが、ウププ、クククと小さな笑いをなかなか堪えることができずにいる。
 そして右手は――

「どうだ?どうだこの犬め?気持ちいいか?うん?」
「……まあ、敢えて言うなら……ちょっとだけ気持ちいいというか…くすぐったいというか…」

 大河の白くて細い指先で、アゴの下をさわさわと撫でられるのは、……未知の感覚であり。
 決して不快ではなかった。
 不快ではないけれど。
 大河は、やや上目遣いで竜児を見て。

「竜児…?」
「うん?」
「……だっこ」
「おう」

 両腕を大きく開くと、大河は素直に首にしがみついてきた。
 そんな大河を抱き寄せながら、竜児は自分の胡坐の上に横座りさせる。
 そしてやさしく髪を撫でながら。

「…どうかしたのか?なんか、やなことでもあったか?」
「えへへ…ちがうよ。むしろ逆。毎日が楽しくて楽しくて、幸せいっぱい」
「ならいいじゃねぇか」
「うん。それは…そうなんだけどね」

 なんて言ったらいいのかなー、という顔をしている大河を静かに竜児は見つめる。
 少し前の、自分の気持ちを押し殺していた頃とは別人のように明るい顔。
 もう少し前の、互いに自分の本当の気持ちに気づいていなかった頃とはまた別の、微笑み顔。
 大河はとてもいい顔で笑うようになった。笑えるようになったと思う。
 でも、まだ。

「あのさ…笑わないでね?あきれないでね?」
「笑わねえよ。あきれるかどうかはわかんねぇが」
「なによそれ!?そこはどっちも否定するところでしょ!」
「だけどお前、時々すげぇくだらねぇことで悩んだり落ち込んだりだし」
「ああん…?」
「すごむな。こわいから。暴力反対。っていうか何気に首を絞めるな。死ぬから」
「ったく…この駄犬」

 むー、と膨れ顔になる大河だが、顔を寄せてもっと近くから覗き込むと、やや気恥ずかしげな照れ笑い…未満といった表情になる。
 そんなコロコロと表情を変える大河が微笑ましくて、可愛いと思うのだ。

「…こういうのを、貧乏性っていうのかなあって。竜児のMOTTAINAIは貧乏性っていうか素で貧乏っていうか」
「……エコと貧乏を一緒にするな。で?」
「これでいいのかな、って」
「……なにが?」

 自分の胸に顔を埋めた大河の瞳を見ることはできない。
 きっと、今の顔を見られたくないんだろう、と思う。
 そんな気持ちなのだろう、と思う。


474 :アゴ  ◆xNYpA6wwn6 :2010/03/14(日) 05:34:28 ID:0KJAGG8m0
「こんなに簡単に、欲しいものが手に入って、いいのかなって」
「…………」
「だって、ちょっと前まで、ほんのちょっと前まで、私が本当に欲しいものは、すぐ傍にあるのに私の手は届かなかったから。
 欲しいものは手に入らない。
 そのジンクスは壊したんだから、気持ち、報われちゃったから、これからは違うんだ、変えていくんだって、そう思うしそうしていくんだけど。
 ――でもね。まだちょっと、思っちゃうんだよね。
 私、本当にいいの?って。
 こうやって、竜児に触れて、抱っこしてもらって、いいの?って。
 私のバカみたいな気まぐれに、竜児つきあってくれて、…楽しいんだけど、でも本当にいいの?って」

 ――なんて言えばいいんだろう。
 この、自分の幸福に慣れていない女の子に。
 なんなんだよ、と思う。
 安っぽい憐みなど彼女を侮辱するだけだと分かってはいるけど、でもシアワセに慣れてないって、
 なんて酷い話なんだろうと思う。
 そして、どう言ったら、俺がお前からどれだけの幸せをもらっているのか、伝えられるんだろう。
 この気持ちを伝えるには、どうやったら大河に分かってもらえるんだろう。
 もどかしくて。
 もどかしい。

「大河」
「…なに?」
「あご」
「………は?」
「俺にもやらせろ。あ・ご」
「何ソレ。全然わかんない」
「お返し。対価交換。フィフティフィフティ。だからあご」
「…………なんなのよ、もう」

 ややむくれ顔で、自分の肩から目の前に移動してきた竜児の左手を大河は睨みつけたが、ふっと息をついた。
 そして割とあっさり、先程の竜児のように大河はアゴを乗せてきた。

「うわ。やわらけぇ…すげぇ…」
「うややややややややややややややや…こそばキモくすぐっちゃい〜〜〜」

 アゴの下なんて、他人のそれに触れることなどまずあり得ない場所。
 初めて触れる、大河のその場所は、びっくりするほど柔らかくて、少しひんやりしていて、赤子のように――という表現そのまま。産まれたばかりの大河の弟のように、柔らかで心地よい肌触りだった。

「はぅひゃほふひほふひゃわわわわわわわわわわゎ…う、産毛がサワサワでこそくちゅぐったいよぉ…」
「あ、これ産毛か!なんだろなこの微妙な感じ、って思ってたんだ」
「ひゃうぅ〜〜〜…」

 眉をハの字にして、唇をプルプルさせて微妙な感覚に耐えている大河の顔は、ちょっとクスっとくる珍妙さと愛嬌があって。
 ちょっとアホっぽい面でも、それなりに可愛いこいつは本当に…愛らしくて。

「大河…お前、ホント可愛いな」
「ふぇ?」
「……やべ。ちょっと、抑えきかないかも」
「え?…………ええ?」


475 :アゴ  ◆xNYpA6wwn6 :2010/03/14(日) 05:38:19 ID:0KJAGG8m0
 顔を寄せる。
 アゴを擽るのはやめて、その代わりに頬を指でなで上げた。
 そのまま、大河の左眉にかかっていた前髪を、そっと払う。
 その間、大河は少し固くなったまま、しかし片時もこちらから視線を外そうとせず、じっと俺を見つめて。
 夜空にか細く瞬く、星のような光を浮かべて。

「大河。……俺は、大河が好きだ。…どうしようもなく、す、好きだ」
「竜児…」

 こんな当たり前のことを口にすることすら、まだ恥ずかしい。つい、動揺して声が震える。
 大河も大河で、「好き」といわれた途端、分かりやすく一瞬で真っ赤な顔になる。
 きっと、自分も同じくらい顔を真っ赤にしているんだろうけど。

「…あのさ。き、きす、していいか…?」
「……いちいち確認とるな。というか尋ねるな。なによそれ」
「じゃ、じゃあいいんだな?」
「だから、きくなって。…そんなこと言われたら、ムード台無しじゃない。
 ていうか、なによ、い、いきなり発情しちゃってこのエロ犬…?」

 言葉を遮って、軽く一度。二度。三度。
 四度目は逆に大河の方から唇を合わせてきた。
 そのまま互いに、互いを、強く求めあう。
 それなのに、やっぱり、まだ、慣れない。
 大河はとてつもなく凶悪で最上の、甘美極まる毒だ。
 貪っても、貪っても、飢えは満たされるどころかますます苦しくなる。
 足りない。足りない。足りない。足りない。足りない。足りない。足りない。足りない。
 足りない。足りない。足りない。足りない。足りない。足りない。足りない。全然足りない。
 もっと欲しい。もっとヨコセ。全部ヨコセ。もっと。もっと。
 もっと!もっと!もっと―――――

「………ッ!!」

 脳が灼熱する。焼き切れる。自分が消え失せる――。
 その畏れが辛うじて理性を繋ぎとめ、大河を際限なく求める欲望をなんとか堰き止めてくれた。
 互いにハァハァという荒い呼吸をあげる。その唇と唇の間で、唾液の細い糸がつう、と流れた。

「りゅうじ…」

 自分同様、満たされない飢えに不満の声を大河が上げる。
 しかし大河はすぐにそれを引っ込め、軽く目を瞑った。
 そして抱き寄せられたまま、そっと祈るように、胸の前で両手の指を組む。
 そのまま、無言の時間が流れていく。

476 :アゴ  ◆xNYpA6wwn6 :2010/03/14(日) 05:41:01 ID:0KJAGG8m0
「竜児…?」

 昔、980円で買った壁時計の秒針が三回ほど回った頃、大河が不審と不満が入り混じった唸りを上げる。

「お、おう」
「わ、わたし……覚悟、完了してるからね…」
「?…そ、そうか」
「っていうか…言わせないでよそんなこと…ムードぶち壊しなんだから…」
「そうか…すまねぇ」

 今一つ大河の意図が不明であったが、彼女がやや機嫌を損ねているのは明白なので、素直に謝罪する。
 だがしかし、一体どうしたものか?と竜児が思案する間に、時計の秒針は更に一回転。

「リュ・ウ・ジ?」

 リュとウとジの間に、『一体チミはナニをしているのかねメ〜〜〜ン?』という隠し様もない致死量の苛立ちが混入されている。
 なんだかよく分からんが、とにかくこのままでは非常にまずい事態になるのは確実だった。

「大河…」
「なに!」
「覚悟って…お前、それ一体なにが?」
「………竜児………このチキン野郎……こ、この期に及んで今更バックレようってワケ!?」
「いや、だから…意味がわからんというか…」
「たっ、たしかにまだ正式につきあいだして二ヶ月…いや、離れてた時期を除けば一ヶ月くらいだけど…
 ちょちょちょちょっとつつつ次のステップに入るには早すぎるような気もしないでもないわ!
 でもでもでもキ、キスは済ませたわけだし…つきあって一月でそういうのも今時はフツーっていうか…
 だ、だいたい私たちはフォ、フェ、フィアンセなわけだし!
 竜児、嫁に来いって言ったし!
 高須のおじいちゃんとおばあちゃんにも私のこと、俺の嫁だって言ってくれたし!
 もももも、もう、むしろ、自然というか!当然というか!だよね!?というか遅い?
 そ、そうよ私たちはふ、ふ、ふうふ!夫婦よね!高須夫妻よね!婚姻届はまだ出してないけど!私は高須夫人なのよね!?
 おおう…高須夫人…。表札にも高須の下に竜児と大河が並んで彫られるのね?
「大河…おい大河…」
「…長かった…長かったよここまでくるのに…ついに私たちは本当の意味で夫婦になるのね…
 あ、でも避妊はちゃんとしないと…もしかして、ゴム、ないとか…
 ど、どうしよう…こんなことならママが「嗜みだから」って自分の分けてくれた時、素直に貰っておけば…
 …………。
 で、でもね、竜児、あの、あのね、私…
 最悪、なくても…というか、初めての時は、むしろ、無い方がいいかなとか…」
「大河……大河……!」

 なんだかこう、耳から変な汁が出ているような気分で、竜児は腕の中の『夢見る乙女』を見下ろした。

「大河…」
「あ?なに竜児?」
「その…さっきからお前が何を言わんとしているか、また何を期待しているか、多分理解はしたと思うんだが」
「うん。それで?」
「……あの、非常に遺憾なのですが…俺としては、一応、これで終了してるんだけど…。
 ていうか!俺らまだ高校生だし!
 この一線だけはまだ、絶対に!越えるわけにはいかねえっていうか…」
「なんだとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?」

 バタ――――――――――――――ン!!!

 一瞬で、天地が逆転した。
 自分は座って、膝の上に大河を乗せていた筈なのに、衝撃と共に気づけばマウントを取られ、自分の上に圧し掛かった猛虎が今にもボッコボコにしてやんよ!とばかりに兇悪に、拳を固く、固く握り締めているこの状況。
 あれ?もしかして自分ライフ、ゼロになる風前の灯火?

477 :アゴ  ◆xNYpA6wwn6 :2010/03/14(日) 05:43:05 ID:0KJAGG8m0

「な、なによ!きょ、今日こそは私を手篭めにして猥褻で繁殖な行為に及んで大人の階段を登らせてくれると信じてたのに!
 裏切ったの?裏切ったのね竜児!?この裏切り者!!!裏切ってる!それと〜〜〜、もの〜〜〜〜〜〜!!!」
「どこぞの変態執事かお前は!!?即興で変な節までつけやがって!!」
「うらぎりもの〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
「意味ワカラン!!そりゃ確かにこう、じゃれてて盛り上がっちまったよ!お前が可愛くて可愛すぎてイチャ―ってしたくて!
 キスしたくて、キスしたよ!
 でもそれだけだよ!いつもそうだろ!!?いつもっつってもまだ2,3回しかないけど!!」
「うそ!だってさっきは私のアゴをいやらしく撫で回しながらハァハァしちゃって、『大河…お前は本当に可愛いな…やっべ俺様もう辛抱たまらんウホッ!』って下衆な欲情まるだしに発情してたじゃない!!」
「とりあえずウホッ!は無えよ!!っていうか…ま、まあ大筋ではウソではないかもしれねぇけど…
 あ!そうか!お前…俺は『ちょっと抑えきかないかも』みたいなことは言ったけど…拡大解釈しすぎだよソレ!!」
「はあああああああああああああああああ!?アンタ今更そんなこと言いますか!!?
 あんなにステキな声で『好き』って言ってくれで、あんなに激しくキスしてくれて、求めてくれて、
 もうこんなにされちゃったら私…竜児が望むなら、わたしの全部、竜児にあげる!って思い定めちゃうわよ!」
「あう………そ、その気持ちはすげえ嬉しい…嬉しすぎるけど…」
「なのに……なのに……この、うらぎりものぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
「ご、ごめん!悪かった!俺はそこまでする気は無かったんだけど、確かにそう取れるような思わせぶりなこと言っちまったかもしれねえ!!」
「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!
 バカ!タコ!ハゲ!ハゲ!ハゲ!グズ犬のエロ犬のバカ犬があ!!!」

 人の上に乗っかって、胸板をダダっ子パンチでポカポカしてくる大河。
 猛り狂っているが、しかしうっすら涙ぐんでいて、それだけで罪悪感が胸いっぱいに込み上げてくる。
 それと同じくらいに、擬音は『ポカポカ』なのに実際に身体へ来るダメージは『ドスドス』という感じで、鎖骨と肋骨が悲鳴を上げている。
 ……まあ、殴られるのは仕方ない、と悲壮な覚悟は決めつつも、竜児は言うべきことは言っておこうと腹を括る。

「大河!」
「ひゃう!?」

 仰向けになったまま、胸の上で暴れる大河の腕をつかみ、そのまま強引にもう一度、抱き寄せる。

「今はしない。俺はお前を抱かない。絶対抱かない!」
「な…」
「今は!だ!大河は俺の嫁!それもまた、絶対だ!
 俺と大河は結婚する!そして夫婦になる!そしたらお前の言うとおり、表札には高須姓の下に、竜児と大河って名前を並べて彫る!
 そういうふうに、できてるんだよ、俺たちは!
 でも、そこまで行くのにはまだ時間かかるから…だからまだ、なんだ。
 そのことについては何度も話したし、お前だって了解してるだろ?」

 そう。
 何度も二人で話して、決めたことだ。
 俺たちはまだ高校生で、ガキで、まだまだ独り立ちはできない半人前。
 そんな俺たちが望むものは、自分たちだけのシアワセではなくて、自分たちと、自分たちの周りの大事な家族や友人、みんなが幸せになれる未来。
 そこに到るまでの道程は、まだ長く遠い。そして決して平坦ではない。
 わかってる。ちゃんとわかってる。

478 :アゴ  ◆xNYpA6wwn6 :2010/03/14(日) 05:47:03 ID:0KJAGG8m0
「なあ…大河。さっきの話だけど」
「さっきっていつのさっき?何時何分何秒?」
「すねるなよ。確かにいろいろあってすっかり流れちまってたが…お前が貧乏性じゃないかって話」
「…?…ああ、そういえばそんな話してたっけ」
「さっきは言いそびれてたんだけどさ…結論からいうと、――貧乏性だなそれ」
「よーし竜児、歯ぁ喰いしばれ」
「けなしてるわけじゃねーよ。俺もその気持ちはわからなくもないから。
 俺たちが出会って…一年間。色んな事が、あったよな」
「まあね。…去年の今頃って…何してたっけ。私が北村君に告白はした後だっけ?」
「GW前で…川嶋と知り合う、もうちょっと前くらいだな。
 ……一年だよ。ほんと、まだたったの一年なのに…本当に、色んな事がありすぎた」
「それを認めるのはやぶさかではないけど…確かに、あったよね。たくさん。
 一年前の今頃は、私たち、…今だから言えるけど、もう好きだったよね、心の底では」
「…自覚はしてなかったけどな、お互い。でも、何か、単なるトモダチとか、そんなんじゃないものは、あったよな。
 でも、まだあの頃は全然気づいてなくて。…そもそも、お互い、好きな相手がいたわけだし」
「うん…」
「なあ、大河。この一年、色々あった。ありすぎるくらい、あった。俗な言い方だけど、楽しい事や辛い事、出会いと別れを繰り返して。
 滅茶苦茶、中身の濃い一年だった。
 あっさり簡単に済むようなことなんて、ほとんど無かったよな。ややこしくて、難解で、うまくいかないことばかりだった」
「うん…」
「だからさあ。こんなこと自分で言うと悲しくなってくるんだけど…俺ら、苦労することに慣れちまってるんだよなぁ。
 俺たちの精神的支柱の一本は、絶対『苦労性』で出来てると思うぞ」
「うわ…否定できないのが口惜しいわ…」

 人の胸の上で頬杖をついて、大河はうげーと顔を顰めた。

「――だから簡単に物事が進むと、逆に落ち着かない…慣れていないんだな。
 なにかしっぺ返しがあるんじゃないか――そんな不安を感じてしまうんだと思う。
 それが俺たちの貧乏性とか、苦労性の正体だな」

 これは単なる言い換えにすぎない。
 シアワセに慣れていないのではなく、苦労することに慣れているのだと。
 大した意味のあることではない。
 それでも――それでも。
 幸薄い、というよりも苦労が絶えないという方が、まだマシだと思いたい。
 そう思わないと…色々なものを、恨んでしまいそうで。
 薄幸の少女を見捨て続けた、全てに際限の無い怒りを抱いてしまわないように。

「でもさ。俺たちは――これから始まるんだ。まだ始まったばかりなんだ。
 後ろを振り返るのは、いつだってできる。だから、今はまず前をみて進んでいくことを考えておこう。
 だからさ。だから――ゆっくり慣れていけばいいんじゃないか?って俺は思う」

 そう。大河はゆっくり、幸せになってくれればいい。
 今までの分まで、じっくりと幸福になってくれればいい。
 その横に俺がいて、泰子や大河の家族がいて、櫛枝や北村や川嶋や、みんながいてくれたらもっといい。
 幸せになって、何が悪い。
 幸せを望んで、何が悪いというのか。
 欲しいものを欲しいと、幸せになりたいと、素直に望んで欲しい。
 大河にはそうなって欲しい。
 大河は一年前よりも、本当に幸せに笑えるようになったのだから。
 それが俺にとって一番の幸福だから。


479 :アゴ  ◆xNYpA6wwn6 :2010/03/14(日) 05:48:50 ID:0KJAGG8m0

「――竜児が幸福じゃないと、私は幸せにはなれないよ?」

 唐突に、ぽつりと大河が呟いてきた。
 子供っぽい、何か悪戯を考えてるような目つきで。

「苦労性っていったら、竜児の方がよっぽど苦労性なんだから。アンタ細かいしね。
 いっつもアンタが傍で辛気臭い顔してたら、幸運だって寄り付かなくなるんだから」
「…なんか酷いこと言われてるような気がするんだが、具体的にどこが酷いか指摘し辛いぞ…」
「そういうところが苦労性なのよね。禿げるわよアンタ。――でも」

 期せずして、二人の視線が合った。
 そして、言う。

「私が竜児を幸せにしてあげる…絶対に」
「俺は大河の傍にいるから…独りになんて、させないからな」

 だからずっと一緒にいて。
 二人でずっと生きていくんだ。

 竜児の上で、大河がニヤリと笑った。
 ニヤリはねぇだろ、と思いつつもそれが妙に相応しくも思えて、竜児は苦笑する。
 苦笑したまま――竜児はそっと、大河の背中に手を回す。

「重くない?」
「軽いよ、お前は。全然大丈夫」
「うん――」

 こんな風に、穏やかな幸せが、ずっと続けばいい。
 これからも、自分たちは、二人で一緒にいるから。
 ――そしてそのまま、二つの影が一つになった。


     <了>

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